25年3月期実績|売上高・利益(前期対比)

鶴鉄二氏:イーグル工業株式会社、代表取締役会長兼社長の鶴です。2025年3月期の決算概要と、2026年3月期の業績予想についてご説明します。

2025年3月の累計実績は、自動車・建設機械業界向け事業と半導体業界向け事業は不調でしたが、その他のセグメントは堅調に推移し、売上高と営業利益は前期を上回る結果となりました。

経常利益は為替差損が生じたことにより若干の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失と、グループ内組織再編に伴った非支配株主に帰属する当期純利益が増加したことにより減益となりました。

25年3月期実績|営業利益変動要因(前期対比)

営業利益の前期比での変動要因です。自動車、半導体セグメントの売上高の減少や、人件費増、原材料値上がり等が主な減益要因となりました。

一方で、コストダウンや生産性向上、製品価格の値上げ、プロダクトミックスに為替の影響が加わり増益となりました。

25年3月期実績|事業セグメント別 売上高・営業利益(前期対比)

セグメント別の売上高と営業利益の実績です。自動車・建設機械は、内燃機関向けの従来製品の販売減が進み、地域別では特に日本と東南アジア地域が減少し、減収減益となりました。

一般産業機械は年間を通じて好調に推移し、特に石油精製・石油化学プラント向けのアフターサービスが収益に貢献しました。

半導体は、生成AI関連分野を中心に半導体業界は回復していますが、市場での当社製品在庫調整の遅れと新工場竣工等による固定費増加により、損失が拡大しました。

舶用と航空宇宙はそれぞれ販売が伸び、増収増益となりました。こちらの両部門は、過去最高益となりました。

26年3月期業績予想|売上高・利益(前期対比)

2026年3月期の業績予想です。売上高は1,700億円、営業利益は90億円、経常利益は131億円、親会社純利益は85億円の計画とし、為替レートは1ドル145.0円、1ユーロ160.0円を前提としています。

米国新政権の相互関税政策による当社グループ事業への影響は、主に自動車・建設機械業界向け事業における、米国グループ会社での関税負担増を直接的な影響として、本業績予想に織り込んでいます。

一方で、顧客・市場動向による当社グループの生産販売等、間接的な影響は現時点では見通せないことから、今後の事業動向に及ぼすリスクとして注視していきます。

26年3月期業績予想|営業利益変動要因(前期対比)

営業利益の変動要因予想です。主に人件費や償却費等の増加に加え、今期は一般産業機械業界向け事業における新規プロジェクト受注に伴う損失もありますが、コストダウンや生産性向上、販売価格の値上げの継続と、半導体業界向け事業の回復により、前期比で増益の見通しです。

26年3月期業績予想|事業セグメント別 売上高・営業利益(前期対比)

セグメント別の業績予想です。自動車はEV向け製品の販売増が見込まれていますが、従来品目の販売減が続くことと、米国の貿易施策の影響により、減収減益の見通しです。

一般産業機械は今期も受注販売が堅調に推移しますが、新規受注による損失もあり減益の見通しです。

半導体は市場での在庫調整解消と新製品拡販により増収が見込まれ、営業損失は縮小します。

舶用は、アフターサービス販売減により減収減益の見通しです。

航空宇宙は引き続き航空機向けを中心に販売を拡大しますが、将来のための設備投資による償却費増により、利益は若干減の見通しです。

設備投資と減価償却費|実績・計画

設備投資と償却費の実績と計画についてご説明します。2025年3月期は当初計画を絞り込み、112億円の実績でした。

今期も各事業分野での新製品量産や生産拡大に向けた設備投資が控えているため、同程度で推移する見通しです。

各種財務指標|主要KPIの状況・3カ年計画推移

各種財務指標の状況です。当期は特別損失の影響により1株当たり純利益は落ち込みましたが、中期経営計画中の株主還元は計画どおり190億円を目途に実施し、今期も年間100円配当を継続します。

KPIとしているROICとROEは、それぞれ6パーセントと9パーセントを目指す計画ですが、半導体事業の落ち込み等により後ろ倒しになる見込みです。来期以降、収益向上により早期達成を目指していきます。

現時点の経営状況の分析と課題、今後の施策について

今後の事業展開と各セグメントの取り組みについてご説明します。2026年3月期は2024年3月期から開始した中期経営計画の最終期となります。計画策定時から事業環境が変化し、当社事業もスライドに記載のとおりの影響を受けました。

特に2025年3月期は半導体事業が大きく落ち込みましたが、今期から回復見通しにあります。

したがって、来期以降、自動車、建設機械業界向け事業における新製品販売やその他の事業の成長も加味し、さらに収益バランスのとれた事業ポートフォリオの構築を進めていきます。

自動車・建設機械業界向け事業|事業環境と将来に向けた重点施策

自動車・建設機械業界向け事業の事業環境と、将来に向けた重点施策についてご説明します。グローバル自動車生産台数に占めるEV等の割合は今後増加し、従来品目の販売減が続く見通しです。また、米国の貿易政策の動向など、事業の見通しは極めて不透明な状況です。

これにより、継続したコストダウン活動に合わせて、さらなる販売価格の見直しを進め、収益確保の取り組みを続けていきます。

また、EVや建設機械向けの次世代主力製品については、スライドに記載の品目を中心に開発拡販を進めていますが、サスペンション用バルブは拡販の目処が立ってきました。内燃機関向けの製品の減少をカバーすべく、今後は次世代主力商品の開発拡販を進めていきます。

一般産業機械業界向け事業|売上高・利益推移とビジネスモデル

一般産業機械業界向けの事業の動向です。本事業は、ドイツのブルグマン社とのアライアンス体制にてグローバルで展開しています。日本、インド、アジアパシフィック地域は当社の連結対象、欧米、中東、アフリカ、中国は持分法適用となります。

本事業は、各プラントに建設されるポンプ、コンプレッサ等にメカニカルシールを納入後、その後のアフターサービスで収益を得るビジネスモデルです。これにより、新規受注時は損失が生じても、投資回収期間にかかわらず正味現在価値がプラスの案件は、積極的に受注を確保していくことにしています。

2025年3月期は、主に東南アジア地域で過去に受注した案件のアフターサービスが増加したため、大幅な増益となりました。

2026年3月期は、各プラント建設のインターナショナルプロジェクトの新規受注案件が控えているために、売上高は増加しますが、営業利益は前期比減の見通しです。

一方で、新規受注による将来のアフターサービスが期待できますので、これらのバランスを見ながら、中長期的な収益拡大に努めていきます。

半導体業界向け事業|売上高・利益推移・今後の事業見通し

半導体業界向けの事業の動向です。2025年3月期は、市場における当社製品の在庫過多により、年度計画からの予想を下回る結果となりました。

一方で、下期後半からの販売は回復傾向に入っており、2026年3月期の販売は、2年前の2024年3月期と同程度と見込んでいます。

今期以降も当社の強みである幅広いシール製品、ラインナップを活かした新製品開発を続けて、半導体製造装置各社、大手ファウンドリーへの拡販を進め、来期以降の黒字回復を図っていきます。

舶用業界向け事業|売上高・利益推移とビジネスモデル・今後の事業動向

舶用業界向け事業の動向です。2025年3月期は、物流増加と地政学リスク等の拡大を背景に、船舶の稼働が活発化し、売上、利益ともに前期を上回る結果となりました。

本事業の主要製品は、1万トン以上の中大型船のスクリュー部分に設置される船尾管シールです。グローバルで60パーセントのマーケットシェアを有しており、新造船納入時とその後のアフターサービスで収益を確保していくビジネスモデルです。

2026年3月期は、主に新造船向けの販売が増加することから、プロダクトミックスにより営業利益が落ち込む見通しです。一方で、船舶の稼働状況によってはアフターサービス増加等も見込まれます。

なお、米国において、中国籍船への入港手数料徴収等の施策が発表されていますが、今後の状況によっては、中国籍の船舶稼働や造船動向に影響がある可能性もありますので、注視していきます。

航空宇宙業界向け事業|売上高・利益推移見通しと航空機・宇宙産業の取り組み

航空宇宙業界向け事業の状況です。航空機分野は、官民ともに航空機エンジン向けシールの販売が増加し、今期も増産計画です。

また、宇宙産業向けもH3ロケット、衛星へのシール、機器製品の販売等も増加し、民間宇宙開発や海外からの引き合いや開発も控えていますので、本事業は今期以降、100億円以上のビジネスに拡大する見通しです。

航空宇宙業界向け事業|再使用ロケット向けシールの開発状況

最後に、再使用ロケット向けシールの開発状況をご紹介します。再使用ロケットのエンジン、ターボポンプにはメカニカルシールが利用されます。

当社独自の表面テクスチャリング技術を用いたメカニカルシールは、非接触状態を安定的に維持しながら作動することで、再使用ロケットに求められる耐久性の向上と、長時間の運用を実証済みであり、現在、エンジンメーカーとの実機適用検討フェーズに入っています。

本機能を提供できる企業は世界でも当社のみと考えています。今後もこのようなシールの先端技術が求められる引き合いは活発化していきますので、当社の技術が活かせる案件は積極的に参画していきます。

以上でご報告を終わります。

(質疑応答なし)