INDEX

岡田祥吾氏(以下、岡田):株式会社プログリット代表取締役社長の岡田です。まず、私から当社についてご説明します。本日のアジェンダはスライドに記載している3つです。まず1つ目は当社の事業概要として基本的な当社のビジネス等について、次に当社の業績サマリーについて、さらに成長戦略についてお話しします。

会社概要

岡田:会社概要です。当社は2016年9月に創業し、現在9期目を迎えている会社です。社員は現在209名です。特徴の1つとして、スライドの右側に記載していますように、東京都がメインとなりますが、現在、全国に11校舎を構え、ビジネスを展開しています。

経営陣

岡田:当社の経営陣です。私、岡田が代表をしています。もともとはマッキンゼー・アンド・カンパニーで、コンサルティングをしていました。取締役副社長の山碕はリクルートキャリア出身、CFOの谷内はゴールドマン・サックス証券出身、社外取締役の相木は、現在、ベイシアの代表をしています。このような多様なメンバーで経営しています。

MISSION

岡田:当社は「世界で自由に活躍できる人を増やす」というミッションを掲げています。世の中には、いろいろな理由によって自らの可能性を発揮しきれていない方がたくさんいると思っています。その障壁や理由を少しでも取り除くことによって、1人でも多くの方が自らのポテンシャルをより発揮してグローバルに活躍できる、そのような世界を作っていきたいと思っています。

当社が挑む日本の課題

岡田:現在、当社が英語教育の授業に取り組む中で考えている日本の課題を1つご紹介します。日本人の成人が英会話スクールに使っているお金は、年間約1,690億円にもなります。

では、日本人の英語力が上がっているのかというと、スライド右側に記載している折れ線グラフにあるように、日本人の世界における英語力ランキングはずっと右肩下がりになっています。

つまり、これだけ英語力を上げたいという意欲を持っている人がたくさんいて、お金をかけているにもかかわらず、その成果が出ていないというのが現状です。

この現状をまずは解決していきたいと思っています。つまり、お金を払って英語学習に投資するのであれば、きちんと成果が出て英語力が上がることが大切であり、当社はそのようなサービスを提供していきたいと考えています。

事業コンセプト

岡田:当社の事業コンセプトは「人×テクノロジー」です。「人の力」と「テクノロジーの力」の2つをいかにうまく融合させるのかということにこだわり、それによって英語学習に革新をもたらしたいと考えています。

事業とサービス概要

岡田:当社の現在の事業ポートフォリオです。大きく分けると2つあります。1つは英語コーチングサービスの「プログリット」です。こちらが当社の祖業となり、売上高の64パーセントを占めています。もう1つはサブスクリプション型の英語学習アプリで、こちらが売上高の36パーセントを占めています。

収益構造:英語コーチングサービス

岡田:まずは特徴の1つである料金体系についてご説明します。いろいろなプランがありますが、当社のメインのプランは3ヶ月のプランになっており、集中的に3ヶ月間英語学習をしていただきます。

いろいろなニーズの中でも、一番多いのがビジネス英会話のニーズです。ビジネス英会話を3ヶ月間で伸ばすことを目的としたプログラムが一番人気のプログラムになります。料金は入会金や消費税をすべて含め、63万2,500円です。端的に言いますと、当社は英語学習業界の中ではかなり高価格帯のハイエンドなサービスを提供しています。

プログリットのコーチングサービスの特徴

岡田:英語コーチングサービスの内容についてご説明します。従来の英会話スクールのようにネイティブの先生が英会話レッスンを提供することはせず、お客さま一人ひとりに英語のコンサルタントがつき、お客さまの自学自習をサポートします。

当社のお客さまは、多忙なビジネスパーソンの方でも1日に2時間から3時間、学習していただいています。それを実現するために生活習慣から見直すコーチングを行いながらサポートしています。

また、一人ひとりのお客さまにとって、無駄のない英語学習をしていただくため、全員にオーダーメイドでカリキュラムを作り、提供しています。

1日に2時間から3時間学習すると聞くと、ハードルが高いと感じられる方が多いと思います。そこで当社ではそれを実現するために、通勤時間や歩いている時間といったすき間時間をすべて英語学習にあてられるよう、当社が作ったオリジナルのアプリでほぼすべての学習を行っていただける仕組みを整えています。

英語コーチングサービス「プログリット」の独自性

岡田:いろいろなサービスがある英語学習業界における当社のポジショニングです。スライドの図の縦軸に自学学習とレッスンを示しています。先ほどご説明したとおり、当社は英会話レッスンを提供するという従来型ではなく、自学自習にフォーカスしています。

さらに横軸にコーチングの有無を示しています。英語学習アプリ等は、基本的に自分で学習を進めていくものですが、当社の「プログリット」は、コーチがしっかりとついて伴走し、コーチングを行いながら自学自習していくという独自のポジションを築いています。

高いサービス満足度

岡田:「プログリット」の一番大きな特徴としては、何といっても高いサービス満足度だと思っています。すべてのお客さまのアンケート結果をスライド左側のグラフにまとめています。高価格であるため、当然お客さまの期待値も高いのですが、それでもお客さま満足度は一貫して高く評価していただいており、現在も少しずつ満足度が上がっています。

また、スライド中央のグラフに示しているとおり、3ヶ月間のコースを修了した方の継続コースへの入会率は直近で約7割となります。約7割のお客さまが3ヶ月英語学習に取り組まれた後、さらに「プログリット」のコースに申し込んでいただいています。

さらに、新規のお客さまのうち、友人紹介で来ていただく割合をスライド右側のグラフに示しています。全体の約15パーセントから20パーセントを推移しており、多少の上下はあるものの、きわめて高い水準を維持しています。これは、お客さまが満足して「自分の周りにも勧めたい」と感じていただいている証の1つだと考えています。

kenmo氏(以下、kenmo):スライド中央のグラフで示されている通常コースから継続コースへの入会率については、現在、70パーセントほどで推移していますが、継続コースへ入会せずに辞める方と辞めずに継続する方には、それぞれどのような特徴があるのか教えてください。

岡田:継続される方の中で最も多いのは、最初から継続を前提に入会されたのではなく、3ヶ月間「プログリット」の英語学習にコミットし、実際に成果が出たために継続を決められるケースです。つまり「3ヶ月取り組むだけでこれほど英語力が上がるのか」と実感され、「さらに3ヶ月投資したい」とご継続いただく方が最も多い傾向にあります。

一方で、継続していただけないケースは約30パーセントあります。お客さまそれぞれにいろいろな理由があると思いますが、その1つは金額が高いことであると考えています。安い金額ではないため、最初から英語学習への投資金額を60万円と決めて「プログリット」に入会されているお客さまも多く、これが継続していただけない一番大きな理由だと考えています。

kenmo:この継続率について、今後さらに向上を目指すのか、それとも現状の約70パーセントという水準を維持していくのか、今後の方針について教えてください。

岡田:基本的には当然引き上げていきたいと考えています。まだ向上の余地が3割あるため、継続率100パーセントを目指して努力していきます。今後も、お客さまにより満足いただけるようなサービス開発や品質の向上に日々取り組んでいきたいと考えています。

継続的な需要が見込める法人研修市場への参入

岡田:当社のビジネスは創業以来、BtoCで個人のお客さま向けを中心にした事業を行っていましたが、約2年半前に上場してからは法人研修市場にも力を入れてきました。

まだ規模は大きくないのですが、現在313社の企業に導入していただいています。日本を代表するような大企業を筆頭にご活用いただいています。

英語リスニング向上させるならシャドテン

岡田:ここからは、サブスクリプション型英語学習サービスについて3つ続けてご紹介します。まずは「シャドテン」というサービスです。こちらはリスニング力向上に特化した、いわばニッチな分野にフォーカスしたアプリになります。

シャドテンの特徴

岡田:シャドーイングというトレーニングがありますが、これは通訳者の方々が昔から取り入れてきた、ある意味伝統的なトレーニング方法です。それをアプリで誰でも行えるようにしたもので、非常に使いやすく、シャドーイングを行うなら「シャドテン」と言っていただけるようなアプリになっています。

そして自分がシャドーイングした英語の音声を吹き込むと、英語学習のプロがすべて聞いて、一つひとつ添削して返してくれることが大きな特徴になっています。

シャドテンの添削イメージ

岡田:実際に、スライドにあるように添削されて、良かった点や改善点が毎日返ってきます。

シャドテンの教材追加

岡田:教材が非常に重要となるため、当社のお客さまの多くを占めるビジネスパーソンの方に興味を持っていただけるような教材を次々に追加しています。「TED Talks」という有名な英語プレゼンテーションのサイトと提携し、おもしろいスピーチ等を今後も追加していく予定です。

シャドテンの成長推移

岡田:ビジネスの成長を示す指標として、有料会員数をグラフにしています。直近の2025年8月期第2四半期の有料会員数は8,458名、月間売上高約1億5,400万円となり、「シャドテン」もかなりの規模感に成長してきたと考えています。

スピーキングの「正解」が身につくビジネス特化型発話トレーニング

岡田:2つ目の「スピフル」はスピーキング力を鍛えるアプリです。まだ新規事業の領域のため、売上はそこまで大きくありません。「スピフル」は「シャドテン」のいわば兄弟アプリのような関係で、リスニング力には「シャドテン」、スピーキング力には「スピフル」という構成になっています。

ビジネス特化型 発話トレーニング「スピフル」の特徴

岡田:こちらもとてもシンプルなアプリで、スピーキング力を鍛える口頭英作文という反復練習を行えるのが特徴です。

ビジネス特化型 発話トレーニング「スピフル」の特徴

岡田:「独り言英会話」という機能もあります。英会話レッスンで先生と話すのは気が引ける方もいらっしゃると思いますが、実は独り言で英語を話すことはかなり効果的なトレーニング法のひとつです。独り言で英語を話すと、それをAIが添削してくれるという機能を搭載しています。

ビジネス特化型 発話トレーニング「スピフル」の特徴

岡田:先ほど「『シャドテン』は人が添削します」とお伝えしましたが、「スピフル」は人ではなく、AIがすべてを添削するというかたちになっています。

「いつでもつながる」あなた専用のAI英会話サービス

岡田:次に3つ目の「ディアトーク」というサービスをご紹介します。これは、AI英会話のサービスです。生成AIが非常に話題になっていますが、私は、今後、英会話レッスンというもののあり方も変化していくと考えています。もちろん、人との英会話レッスンにも良さはありますが、AIと英会話の練習をすることが当たり前の世の中になってくると思っており、当社としてはリーディングプロダクトとして成長させていきたいと考えています。

AI英会話サービス「ディアトーク」の特徴

岡田:従来のオンライン英会話では先生と時間を合わせてレッスンするというかたちだったと思いますが、「ディアトーク」ではアプリを開けば、いつでもAIと1日10分英会話の練習をすることができます。AIなので当然予約も気遣いもする必要なく、いろいろな会話をすることができます。

サービスポートフォリオ戦略

岡田:当社のサービス全体のポートフォリオ戦略です。スライドのピラミッド型の図の上位が単価の高いサービス、そして下位に位置するサービスほど単価は安く設定されています。したがって、ターゲット層は下位のサービスになるほど幅広くなっていく構造になっています。

当社の方針としては、上位から順に攻めていくという戦略をとっています。これまで「プログリット」で十分にブランドを築き、「シャドテン」を作りました。そして、「シャドテン」が軌道に乗ったため、現在「スピフル」と「ディアトーク」を打ち出しています。

今後は、この4つのサービスが効果的に循環していくことを目指します。例えば、今はまだ「プログリット」を利用するほど本格的に英語学習に取り組む段階ではないため、まずは「ディアトーク」で気軽に学習を始めていただき、「本格的に英語に取り組みたい」と思われたタイミングで「プログリット」に移行していただくというサイクルを回していくことで、より一層LTVの向上を実現できると考えています。

サブスクリプション型英語学習サービス 価格表

岡田:サブスクリプション型英語学習サービスの価格表です。「シャドテン」は月額2万1,780円、「スピフル」は月額5,478円、「ディアトーク」は月額4,380円となります。

AIの進化と英語学習ニーズへの影響に関する当社の見立て

岡田:少しトピックが変わるのですが、「AIの進化に伴い、英語学習のニーズそのものがなくなるのではないか?」というご質問をいただくことが多いため、そちらに対する当社の考えについてお話しします。

私は、英語学習ニーズには大きく分けてビジネス目的と趣味目的の2つがあると考えていますが、これらは異なるものだと思っています。ビジネス目的の英語に関しては、AIの進化にかかわらず英語学習ニーズはますます高まっていくと考えています。

今後、グローバルでのビジネスがさらに進んでいく中で、日本国内のみでビジネスを展開していこうとするプライム上場企業はほとんどないと思います。ビジネスを拡大していくためには、基本的に人口が減少していく日本から海外へどんどん進出する必要があります。

今後、日本企業はますます世界に出ていかなければならなくなると思います。世界のビジネスの現場では、韓国、中国、ヨーロッパ、アジアといった国々から来る方々は、ノンネイティブであっても英語で話すことができる方がほとんどです。日本以外の国の方々は英語で話すことができると言っても過言ではないと思います。

したがって、日本人のみがAI翻訳を使ってグローバルでビジネスをし、日本以外の国の方たちは普通に英語を話してビジネスするという未来は想像しがたいと私は考えています。日本人も自分の言葉でビジネスを進めていく必要があるのではないかと思います。

一方で、趣味目的の英語学習として、例えば旅行に行きたいといったニーズに関しては、プラスとマイナスの両面があると考えています。プラスの要素としては、AI翻訳等があることで、日本人にとって英語がより身近になることが挙げられます。

今まで「海外に行くのは自分には無理だ」と感じていた方が、「AI翻訳を使えば海外に行けそうだ」と海外や英語に興味を持ち、「少し勉強してみようかな」と考えることでニーズが増えるケースもあると思います。

一方で、「旅行だけならAI翻訳で十分」と考えて英語学習に取り組まない層も当然出てくると思います。このように、プラス面とマイナス面があり、結論としてニーズの総量自体はあまり変わらないのではないかと予想しています。

業績サマリー

岡田:当社の業績についてご説明します。こちらのスライドのグラフには2025年8月期第2四半期までの進捗と今年度の予想を載せています。2025年8月期第2四半期まで非常に順調に進捗しています。

今年度の着地予想としては、売上高57億円、営業利益10億7,000万円と、売上高、営業利益ともに約30パーセントの成長を見込んでいます。

kenmo:先ほど少しご説明していただきましたが、AIの進化に伴い、英語学習自体が不要になるという声もある中で、御社が上場以降約30パーセントの成長を維持してこられた、その要因や背景についてもう少し詳しく教えてください。

岡田:英語学習のニーズは現時点でもなくなっておらず、ますます広がっていることがまず大前提としてあると思います。

一方で、英語学習業界全体が当社のように30パーセントも成長しているわけではなく、当社のシェアが業界の中で着実に伸びているというのが実態です。成長を維持している一番大きな要因は、上場を1つのきっかけとして、当社がこれまで目指してきた世界観が徐々に世の中に浸透してきたことにあると考えています。

具体的には、英会話スクールに行っても英語力が上がらないという状態が長らく続いていましたが、当社は、お金を払っていただくのだから絶対に英語力が上がるサービスを提供しています。

その代わり、お客さまにも努力していただくため、お客さまは大変です。プログリットに入会すれば魔法の力で英語ができるようになるわけではなく、お客さまに努力していただき、その努力を当社がサポートすることでみなさまの英語力が上がるという仕組みです。

創業当時は、この考え方やブランドコンセプトをなかなか受け入れていただけなかったのですが、徐々に受け入れられるようになり、現在その速度が加速しているのだと捉えています。

kenmo:今後3年から5年ほどのスパンでも、これまでと同じくらいの成長は見込めるのでしょうか?

岡田:まず売上規模としては、30パーセントを目安に毎年成長させていきたいと思っています。営業利益については、より高い成長率で成長させていきたいと考えています。

kenmo:高価格帯のサービスであるため、個人的には「そこまでパイがあるのか?」と疑問に感じる部分もありますが、そのあたりについてどう考えていらっしゃいますか?

岡田:まだまだパイはあると考えています。例えば認知度調査を行うと、当社と先行している競合企業の間では認知の差がまだ5倍ほどあります。つまり、当社の認知度は広がっているものの、依然として十分とは言えない状況です。今後さらに認知を拡大していくだけでも、まだまだパイはあると考えています。

kenmo:都内で電車に乗ると御社の広告を見る機会が多いため、すでに認知度は高まっているのかと感じていたのですが、さらに伸ばす余地はあるということでしょうか?

岡田:大いにあると思います。おっしゃっていただいたように、ここ1年ほど、東京都をメインに電車内での広告を出しているため、着実に効果は出ていますが、まだまだ拡大の余地は大きくあると考えています。

売上高の推移

岡田:四半期ごとの売上高の推移を表したグラフになります。2025年8月期第2四半期のグラフの濃いオレンジ色が英語コーチングサービス、薄いオレンジ色がサブスクリプション型英語学習サービスの売上高になっています。英語コーチングサービスよりもサブスクリプション型英語学習サービスのほうが高い成長率で成長を続けています。

なお、2025年8月期第1四半期から第2四半期にかけて下がっていますが、去年も同じ動きをしています。当社の会計上、季節性の特徴があり、それによって第2四半期は毎年下がる傾向にあります。QonQで成長していないということではないとご認識いただければと思います。

売上総利益・売上総利益率の推移

岡田:売上総利益率は約75パーセントと、非常に高い水準を維持しており、この点は当社の特徴の1つとして挙げられると思います。2023年度、2024年度と比較してもさらに上昇しています。

営業利益・営業利益率の推移

岡田:営業利益も高い水準をキープしています。2025年度は第1四半期31パーセント、第2四半期26パーセントと、2024年度と比較してもより高い利益水準になります。投資等もしっかり行っていますが、それでも高い利益水準を出すことができています。

配当について

岡田:配当に関してご説明します。昨年度から配当を開始しています。配当性向30パーセントを目安に、安定的かつ継続的に配当を実施していきます。

毎年利益を30パーセント以上成長させていきたいと考えているため、それに伴い毎年増配していくことを計画しています。今年度も1株当たり18円と、昨年度の1株当たり13円に対して、増配を予定しています。

kenmo:東証グロース市場にいる企業で配当をしっかり出されている企業は比較的少ないイメージがあります。なぜ配当を出そうという意思決定をされたのか、経緯についてもう少し教えてください。

岡田:東証グロース市場にいる企業で配当を出している会社は確かに少ないですが、私としては、端的に言うと、当社の対応を決める上で、他社がどうかはあまり関係ない要素だと考えています。

そもそも株式会社というものは株主からお金をお預かりして、事業を行い、利益を出して株主に還元します。そしてまた投資していただくことで、より大きなビジネスを行うことができ、さらにそれを株主に還元する、これが株式会社の基本的な仕組みです。

当社はその資本市場に乗っているため、利益が出た分をいくぶんか配当として株主に還元することが自然な行動と考え、意思決定しています。

kenmo:2025年4月17日に自己株式取得について発表されましたが、そのあたりの経緯について教えてください。

岡田:還元策としては、大きく自己株式取得と配当の2つがありますが、当社の基本方針として自己株式取得を積極的に行うつもりはありません。

私は継続的に配当を十分に出していく方が良いと考えているため、今後もその予定です。直近のトランプ大統領の関税政策から始まった株式マーケットの乱高下や、当社の株価等を考慮すると、現時点では自己株式を取得することが合理的であると社内で議論し、決定した次第です。

成長戦略

岡田:最後は、成長戦略です。将来について少しお話ししたいと思います。

基本的には、3つの分野に分けています。1つ目は、英語コーチングサービスをどのようにして伸ばすのかです。2つ目は、サブスクサービスをどのようにして伸ばすのかです。3つ目は、新規領域のM&Aです。

ブランディング強化による認知拡大

岡田:英語コーチングサービスの成長戦略についてご説明します。先ほどコメントもいただきましたが、1つ目に、ブランディングを強化して認知を拡大していくことが「プログリット」の成長には重要だと思っています。

したがって、メインの施策は電車広告です。東京を中心に、電車広告を基本的に出し続ける施策を行っています。電車広告を単発で1ヶ月だけ出すのではなく、ずっと出し続けることによって、電車を使う多くのビジネスパーソンを中心としたターゲットのみなさまに「プログリット」を覚えていただきます。

そして、どこかで「英語学習をしたいな」と思った瞬間に「そういえば、プログリットという会社があった」と思い出していただけます。これを第一想起と言いますが、ぱっと「プログリット」を思い浮かべていただけるような世界観を、より広げていきたいと考えています。

法人向けビジネスの強化

岡田:2つ目は、法人向けビジネスの強化です。法人向けには非常に大きなマーケットがあり、まだまだ開拓しきれていません。

スライドの左のグラフでは、先行する大手英会話スクールと当社の取引社数を比較しています。当社はまだ300社程度ですが、同業他社は3,000社、5,000社といった非常に大きな規模でビジネス展開しています。このように、法人向けビジネスの領域には非常に大きな開拓余地がありますので、当社としてもきわめて注力していく領域です。

実際、アビームコンサルティングにこの前四半期にサービスを提供しましたが、非常に満足していただいています。このような企業を1社でも多く増やし、企業へ貢献していきたいと考えています。

データの活用によるサービス品質の向上

岡田:3つ目は、データの活用によるサービス品質の向上です。徹底的にデータを活用することが、「プログリット」を成長させる上ではきわめて重要であり、当社の最も大きな強みの1つだと考えています。

我々は今期で創業から9期目になりますが、すべてのお客さまに毎日2時間から3時間、当社のアプリで自学自習をしていただいています。その結果、大量の英語学習データがどんどんたまっていきます。このデータを徹底的に分析することによって、より効率的な英語学習や、より効果の高いコンサルティングを提供していきたいと思っています。

シャドテンの需要拡大と供給力増強の両立

岡田:「シャドテン」についてです。「シャドテン」というサービスの大きな強みは、大規模オペレーションを実現していることです。現在、毎日、昼夜を問わず、数千件のお客さまのシャドーイング音声データが当社に送られてきます。

数百名のシャドーイングアドバイザーと呼ばれる音声のフィードバックを専門にする担当者が、この数千件の音声データを一つひとつ聞いて添削して返します。この非常に複雑なオペレーションを実現していることが、きわめて大きな参入障壁であり、当社の強みになっていると思います。

スピーキング「トレーニング」としての独自価値の醸成

岡田:「スピフル」についてです。「スピフル」はまだ新規事業で、アプリも発展途上です。したがって、まずはユーザー獲得ではなく、プロダクト開発にどんどん投資して、すばらしいアプリにしていきます。AIを徹底的に使って、より効果的なスピーキング学習ができるようにしていきたいと考えています。

英会話需要の取り込み

岡田:「ディアトーク」についてです。「ディアトーク」はAIで英会話をするアプリです。非常に高い学習効率と、きわめて心地良い、洗練された学習体験を提供し、それが本当の意味での英語学習の効率化につながるということを磨いていきたいと思っています。

一例を挙げると、みなさまの中にもAIと英会話したことがある方もいらっしゃると思います。AIとの英会話のすばらしいところは、人間の先生と違い、毎回、自己紹介などが必要ありません。

1回自己紹介しておくと当然覚えていますので、次の日に「英会話をしましょう」と言うと、続きの会話から始めることができます。いわゆる無駄な会話がなく、本当にすべき英会話だけにフォーカスできます。これは特長の1つだと思います。

M&Aによる事業領域の拡大

岡田:M&Aについてです。今後、当社がより成長していくためにはM&Aが必須だと考えており、あらゆる領域でM&Aを検討しています。

対象領域としては当然、英語学習領域を検討しています。英語学習領域では成人向け、幼児・子ども向けも検討しています。ToC、ToBどちらも対象としています。

さらに、英語学習以外の領域として、人材育成領域には積極的に入っていきたいと考えています。当社のミッションは「世界で自由に活躍できる人を増やす」なので、英語力を上げることがすべてではありません。

英語力はもちろん重要な要素ですが、あくまで重要な要素の1つであって、それ以外の人材育成領域にもどんどん展開していきたいと考えています。イメージとしては、数億円から数十億円程度のいろいろな案件を検討しながら、進めているところです。

kenmo:M&Aについていくつかうかがいたいのですが、足元では引き合いがかなり来ているような状況でしょうか?

岡田:案件はたくさんいただきますし、逆に当社からアプローチすることも多々あります。

kenmo:その中で、選別がかなり鍵になってくると思います。御社が今まで「プログリット」というブランドを作り上げてきたところとしっかりシナジーを持たせる会社をM&Aしていくことが大事になってきます。一方で、パイを広げていくためには、まったく別のカテゴリーの会社も買収していかなければいけません。このあたりの戦略を、どのようにイメージしていますか?

岡田:どちらのM&Aも並行して常に検討しています。我々とかなり近い、シナジーがあるような領域か、飛び地の新しい領域か、どちらが先でも当社としては構いません。M&Aは出会いといいますか、タイミングによる部分が非常に大きいため、どちらも常に検討して取り組んでいこうと考えています。

kenmo:今のマーケットの株価の反応などを見ると、オーガニック成長に加えて、M&Aによる非連続的な成長を、マーケットは御社に要求しているように見えます。今後3年から5年先のM&Aの計画といいますか、どのような目標で取り組んでいくのかを教えてください。

岡田:具体的な数値目標をお伝えするのはなかなか難しいのですが、当社としてはM&Aを最も重要な経営戦略の1つとして、きわめてアクティブに進めていきたいと思っています。

英語教育は従来、多くの人が、それほど利益率は高くないだろうと考えてきた領域だと思います。実際にそうなのですが、その領域で高い利益率を出してきたことが当社の非常に大きな強みだと考えています。

この利益を生み出す社内オペレーションを他社に移植することができれば、M&Aした後にその企業をより良くしていくことが大いにできるのではないかと思っています。まだ実現できていないので、口頭での話にとどまりますが、今後しっかり取り組んでいきたいと思っています。

今後の展開と市場規模

岡田:今後の当社の展開と、我々が見ている市場規模についてです。もともと我々が創業して今までメインで見てきた市場は、成人向け語学スクールで、約1,700億円の市場規模があります。

そこから、より広い英語学習領域の展開を目指し、幼児・子ども向け語学スクール、オンライン語学学習へと進出していきます。また、留学も、今後日本が強くなる上で非常に重要な要素であり、留学あっせん領域にも進んでいきたいと思っています。

そして、先ほど述べたように、英語学習領域だけではなく、M&Aを通じて、1兆2,000億円という大きな規模を持つ人材教育研修市場へと参入していきたいと考えています。

私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:「シャドテン」のキャンペーンについて

kenmo:直近の決算について、「シャドテン」のキャンペーンがやや不調だったというお話がありましたが、このあたりについてもう少し詳しく教えてください。

ここから先は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

※本登録案内のメールが確認できない場合、迷惑メールフォルダやゴミ箱に自動的に振り分けられている可能性がありますので、今一度ご確認いただきますようお願いいたします。