マクロ環境の急変による主なリスクシナリオと、当社の見立て・対策について
辻庸介氏(以下、辻):代表取締役社長グループCEOの辻です。みなさま、本日もお忙しいところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
「Financial Results」と「Business overview for Investors」の2つの資料に分けていますので、それぞれの資料に沿って進行します。
全社業績ハイライトのご説明に入る前に、トランプ大統領の関税政策等により、足元のマクロ環境が急変しており、非常に不確実性が高い外部環境と認識しています。このような変化について当社がどのように考えているかをご説明します。
まず、当社のような内需型IT企業にとって、関税政策による直接的な影響は限定的と考えています。一方で、マクロ経済の変動を通じて、間接的な影響で事業環境が変化するリスクは存在しており、対応が必要であると認識しています。
主なリスクシナリオとして、景気悪化に伴うIT支出の削減、お客さまの倒産率の上昇、サーバー費用などのプロダクト提供コストの上昇を挙げています。関税等でサプライチェーンが変化した場合、プロジェクト提供コストが上昇するリスクなど、以上の3点を主なリスクシナリオとして考えています。
当社の見立てと対策についてです。1点目の景気悪化によるIT支出削減については、当社はバックオフィスSaaSを企業の基幹システムとして提供しているため、削減対象としての優先順位は比較的低いのではないかと考えています。他方、新規顧客獲得数のスローダウンが生じる場合は、Sales & Marketingコストの適切なコントロールが必要になります。一方で、生産性改善やコスト削減施策としてSaaS/AIの浸透が加速する可能性もあり、逆にチャンスもあるのではないかと考えています。
2点目の中小企業の倒産率の上昇については、お客さまの倒産によって解約率が上昇するリスクや、ファクタリング等の与信の部分で信用リスクの上昇が考えられます。足元では解約率の上昇は見られていませんが、今後も慎重に見ていく必要があり、金融事業における審査基準を強化していくことが必要と考えています。
3点目の、サーバー費用等、プロダクト提供コストの上昇については、社内でのコスト管理の強化、インフラコストの最適化、社内ツール利用の厳格化などを引き続き強化していきます。加えて、採用ペースの見直しも検討していきます。
一方で、円高になると、Amazon Web ServicesさまやGoogleさまのサービスのように、ドルベースでのお支払いで利用しているものについてはコスト減少につながることもあると考えています。現状のマクロ環境の急変によって想定される主なシナリオは以上のように考えており、可能な限りしっかりと対策していきたいと考えています。
2025年11月期 第1四半期ハイライト
2025年11月期第1四半期のハイライトです。第1四半期は、通期見通しの達成に向けて、売上高・調整後EBITDAともに、おおむね順調な滑り出しとなりました。
第1四半期の売上高は前年同期比23パーセント増の117.1億円となりました。SaaS ARRは、前年同期比26パーセント増の321.3億円、これはM&Aが一切入っていないオーガニックな成長となっています。
第1四半期の調整後EBITDAは11.9億円、売上総利益80.3億円となりました。今回、HIRAC FUND売却収入の影響を除くと、調整後EBITDAは5.6億円で、過去最高額を実現しています。収益性の改善を継続して進めています。
さらに、今回新たにMoney Forward Businessドメインの利益計画とキャピタルアロケーションの取り組みを開示しています。もともと社内では計画としてあったのですが、今回新たに開示しています。
Money Forward Businessドメインについては、FY25からFY28にかけて、年平均で7パーセントから8パーセント前後のEBITDAマージン改善を実現していきます。これは今後のお話なので、多少前後はあると思いますが、そのぐらいのペースで改善していきたいと考えています。
FY28のMoney Forward Businessドメインにおいては、EBITDAマージン30パーセント以上、営業利益20パーセント以上の実現を目指します。かねてよりお伝えしているとおり、FY28は全社売上高1,000億円以上、EBITDA300億円以上というターゲットを達成していきたいと考えています。後ほど詳細をご説明します。
加えて、2025年4月2日にメディアのみなさまやアナリストのみなさまにお越しいただき、AIに関する当社の今後の取り組み方針「Money Forward AI Vision 2025」を発表しました。こちらも詳細については後ほどご説明します。
以上が、第1四半期のハイライトです。
「すべての人のお金の課題を解決し、チャレンジできる」サステナブルな社会を目指す
業績の詳細についてお話しする前に、「Business overview for Investors」におけるアップデートを何点かご紹介します。
当社が取り組むべき重点テーマ(マテリアリティ)として、User Forward、Society Forward、Talent Forwardの3つの領域を位置づけています。今回、その1つであるTalent Forwardに関して、2025年4月11日に「Talent Forward Strategy 2025」を公表しました。こちらは毎年更新しているのですが、当社グループの人的資本に関する考え方や今後の成長、また現在の取り組みについて、数字も含めてかなり詳細に掲載していますので、コーポレートサイトからぜひご覧いただければと思います。
急成長しながら組織も大きくなっていく中で、当社のカルチャーを大事にしながら、しっかりと事業を展開できていると自負しています。
Talent Forward Strategyの取組みについての受賞歴
当社のTalent Forward Strategyの取り組みは、ありがたいことに、幾つかの外部機関からもご評価いただいています。2025年版「働きがいのある会社」ランキング大規模部門において、3年連続で入賞し、7位に選出されました。
また、「ONE CAREER 就活クチコミアワード2025」では最高賞をいただきました。数ある企業の中で7位や1位に選ばれるのは、本当にすばらしいことだと喜んでいます。このような取り組みをベースとし、4月1日には優秀な新入社員にも入社頂きましたので、しっかりと事業の成長につなげていきたいと思っています。
ビジョンレポート『Forward Map 2025』を公開(日英)
ビジョンレポート「Forward Map 2025」を公開しました。こちらはステークホルダーのみなさまなどからフィードバックをいただき、2021年より毎年アップデートを続けている統合報告書です。
今回から名称を「ビジョンレポート」へと改称しました。毎四半期開示している決算情報ではお伝えしきれない、当社グループの目指す未来や目的地、そこへ向かう道のりをともに歩んでくれる仲間の思いや取り組みを中心に掲載しています。定量では見えない、定性の部分を深く掘り下げています。
今回、三井住友カードさまの大西社長にもご登壇いただき、インタビューを掲載しています。ジョイントベンチャーの狙いも含め、ぜひご覧ください。
こちらも当社ホームページからご覧いただけますので、一読いただければ幸いです。
1Q連結売上高は前年同期比+23%
長尾祐美子氏:グループCFOの長尾です。2025年11月期第1四半期のハイライトについて、ご説明します。
冒頭に辻よりお伝えしたとおり、売上高・調整後EBITDAともに、通期見通しの達成に向けて順調な滑り出しとなっています。
第1四半期の売上高は、前年同期比で23パーセント増の117.1億円となりました。こちらの数字には、グループジョインによる一過性の影響は含まれていません。
昨年末に発表したアウトルックコンサルティング社やシャトク社のP/Lの連結は、第2四半期から反映されます。
Businessドメイン 四半期 売上高推移
Money Forward Businessドメイン全体の売上高は、前年同期比で21パーセント増となりました。Money Forward Businessの法人ストック売上は前年同期比で30パーセント増と高成長を続けています。
なお、第3四半期から価格改定効果が入ってきますので、Money Forward Businessドメインの成長率も加速していくと期待しています。
なお、従前からお知らせしているとおり、第1四半期よりMoney Forward Financeドメインの一部をMoney Forward Businessドメインに統合しています。それに伴い、資料上の移管の数値も、当該影響を遡及して反映しています。そのため、このような移管による一過性の影響は含まれていないディスクロージャーとなっています。
具体的には、前期までMoney Forward Financeドメインに含まれていた法人向けの請求代行事業・売掛金早期資金化サービスは、Money Forward Businessに移管されています。詳細について、Appendixにもスライドがありますのでご参照ください。
これら移管前の旧定義での成長率は、前年同期比で23パーセント増となっています。
SaaS ARR推移
SaaS ARRの推移についてです。SaaS ARRは前年同期比で26パーセント増、中でもMoney Forward Businessドメイン法人ARRは30パーセント増と、高成長を継続しています。
こちらも価格改定効果前の成長率です。
2025年11月期 Businessドメイン 第1四半期ハイライト
Money Forward Businessドメインの主要KPIについてご説明します。課金顧客数は40万事業者を突破しました。注力領域である中堅企業向けARRは116.6億円の規模ながら、前年同期比で41パーセント増と、高成長が続いています。
SMB企業向けARR純増は10億円超と、過去最高額を記録しました。こちらも価格改定を含まない、純増ARRとなっています。
Businessドメインの法人ARRは前年同期比+30%
Money Forward Businessドメインの法人ARRです。法人ARRは前年同期比30パーセント増と、高成長を継続しています。Money Forward BusinessドメインのうちSMBのARRは、確定申告期となりますので、「STREAMED」が成長を後押ししました。
課金顧客数とARPAの成長が継続
課金顧客数とARPAについてです。法人ARPAは増加トレンドが続いており、前年同期比で3パーセント以上増加しました。なお、Money Forward Financeドメインからの移管に関しては、すべて中堅領域に含めるかたちで、スライド上の資料には過去から遡及して開示しています。
会計事務所経由での『マネーフォワード クラウド』活用促進が堅調に推移
会計事務所さまは当社にとって、最も重要なパートナーであり続けています。直近の取り組みについて簡単にご説明します。
全国各地の会計事務所さまにおいて、当社のクラウドサービスの導入や、オンプレミス型のシステムからの切り替えが引き続き進んでいます。
例えば、スライド左側に記載している税理士法人FLAGSさまは、愛知県名古屋市の税理士事務所ですが、全顧問先の会計ソフトを「マネーフォワード クラウド」に切り替える方針を決定されています。当社のプロダクトを活用したDX支援を推進しており、金融機関とも協力しながら、地域全体のDXを進めています。
また、税理士法人FLAGSさまの成功事例は、士業業界内でも注目を集めており、当社のイベントにもご登壇いただくなど、他の事務所の移行のきっかけにもなっています。
当社としては、このような当社プロダクト活用による事務所経営改革の成功事例を積み重ねることが、新規顧客獲得の重要なドライバーになると考えています。
法人顧客純増数と士業チャネルの継続的な強化
法人顧客純増数についてです。今四半期は8,914社となりました。第1四半期は会計事務所さまの繁忙期にあたるため、昨年と同様の動きで減少しています。しかし、第2四半期には1万社程度の水準になると見ています。
こちらはスライド上、第1四半期から旧Money Forward Financeドメインの純増を含めたかたちで開示していますが、第1四半期は同移管による純増の影響はありませんでした。
SMB純増ARRは+10.1億円と過去最高額を更新
SMBのKPIについてです。先ほどお伝えしたとおり、確定申告期の影響により、自動記帳サービス「STREAMED」が好調で、成長を牽引しています。
中堅企業向けARRも YoY+41%と継続して堅調な成長が続く
中堅企業向けは、当社が最も注力している領域です。ARR116.6億円のような規模にもかかわらず、前年同期比41パーセントと非常に力強い成長を継続しています。ARPAも前年同期比12パーセント近い成長になっています。これも想定どおりの進捗となっており、ガイダンスに向けて堅調な伸びを続けています。
全社売上総利益/全社調整後売上総利益/バックオフィス向けSaaS事業”Gross Margin” 推移
売上総利益に関しましてはEBITDA同様、過去最高額となっています。またバックオフィス向けSaaSのGross Margin Rateも86パーセントと安定した水準になります。
EBITDA (四半期推移)
第1四半期の調整後EBITDAは11.9億円と過去最高額となりました。なお、今四半期からEBITDAと営業利益の調整表をAppendixに追加していますので、ご参照いただければと思います。
第1四半期EBITDAの11.1億円は、HIRAC FUNDによる売却収入の影響として4.4億円から4.5億円程度含んでいる数字ですが、同影響を除いたEBITDAも5.6億円と過去最高額となりました。
売上原価・販売費及び一般管理費の構造(対売上高比率、EBITDAベース)
コスト推移のスライドです。広告宣伝費の実額が想定より減少し、本四半期は16億円程度となり、従業員数の純増が減速したため、コスト比率は低下しています。
従業員数の推移
従業員数の推移です。前四半期比37名増となっています。なお、第2四半期はM&Aによる一過性の効果があり、また、新卒入社の時期となるため、従業員純増数は増える見込みです。
従業員1人当たり年間売上高(HIRAC FUND除き)・ARR
生産性を表したスライドです。1人当たり売上高の増加は引き続き重要テーマですが、1人当たりARRや、売上はしっかり上昇しています。
バランスシートの状況
バランスシートです。昨年末三井住友カードさまとのJV設立、マネーフォワードホームへの増資により引き続き高い財務健全性を維持しています。
現預金残高推移分析
プリペイドカード事業やそれに伴う短期借入金の増減はありますが、それらを除いた事業キャッシュフローは前四半期から7.8億円改善しています。なお、今四半期からアウトルックコンサルティング社のバランスシートは連結しています。また、同社取得に関する資金はすべて全額借入で手立てしています。
「Money Forward AI Vision 2025」を発表
辻:ビジネスハイライトの注力分野の取り組みである、AIに関する戦略についてご紹介します。
先日、「Money Forward AI Vision 2025」を発表し、20媒体以上のメディアの方に報道していただきました。
ちなみに右側にあるのが「みーも」という当社の公式キャラクターです。ぜひご愛顧いただければと思っています。
「Money Forward AI Vision 2025」
会見でお伝えしたのは4点です。1点目は「DX」から「AX」、「デジタルツール」から「デジタルワーカー」へ、2点目は社内/既存プロダクトでのAI活用であり、3点目はAIエージェント構想、オープンなエコシステムの構築、4点目は中堅・エンタープライズ企業、金融機関へAXコンサルティングを導入、です。
「DX」から「AX」、「デジタルツール」から「デジタルワーカー」へ
DX(デジタルトランスフォーメーション)が盛り上がっていますが、DXは人がITやクラウドを活用することで業務を効率化することです。かなりDXも進んできましたが、どうしても人が主語になると、前向きに進められる方と「いや、ITはちょっと弱いんだよね」となかなか進められない方と、千差万別になってしまうと思っています。
AX(AIトランスフォーメーション)になると、AIが自律的に動き、業務を変革することができる世界になってきます。これはデジタルワーカーと言われ、まさに人の代わりにワーカーとして働いてくれる世界が今後来ると確信しています。
これは2023年1月に、自身の「note」に「ChatGPT」の衝撃について書かせていただいたものです。それからCEO直轄のチームを急ぎで作り、AIについて取り組みを加速してきました。
いよいよAIエージェントが出てきて本格化してくることから、今回記者会見を行いました。AXの推進によって、事業成長のさらなる加速を実現していきたいと思っています。
AXの推進により、事業成長の更なる加速を実現
当社はSaaSやフィンテックというインダストリー自体が大きく成長している中で、リーディングカンパニーとして成長してきたと思っています。
さらにAXの推進によって、AIによる成長を加速させていきたいと思っています。スライドはMoney Forward Businessドメインの法人のARR推移です。SaaSによる成長はもちろんありますが、それにプラスオンしてAIによる成長を乗せていきたいと思っています。
実際に、AIを活用したSaaSの世界市場は2024年から2031年までにCAGRが40.2パーセントと予測されています。さらに伸びるのではと私は思っています。大きなマーケットが出てきているため、しっかり当社もその中でリーディングカンパニーになっていきたいと思っています。
デジタルツール市場からデジタルワーカー市場へ、マーケットを拡大
当社は今まで、SaaSのプレーヤーとしてデジタルツールを提供してきました。これは、おおむね2.2兆円のマーケットであり、中小・中堅企業のIT予算の2パーセントから4パーセントと言われています。
一方、AXは人手の代わりになります。中小・中堅企業などの特にバックオフィスの採用などで悩んでいる企業はたくさんありますが、デジタルワーカーと考えると13.3兆円という大きなTAMになり、人件費の代わりになると考えています。
当社は「AXを推進し、人手不足に悩む中小・中堅企業にAIの力を、そして『デジタルワーカー』を。」ということで、ナンバーワンのバックオフィスカンパニーを目指していきたいと考えています。
AIの社内活用によるインパクト
実際に、どのようなことを行っていくかをご説明します。社内のAIによる生産性向上については、AIによる生産性改善、並びに新規機能によるプロダクトの付加価値向上により、経営目標として1人当たり売上高を2倍以上、FY24の約1,500万円をFY28に約3,000万円以上にすることを目指します。
現在、実際にオペレーション、セールス、開発等々でAIの活用を推進しています。オペレーションにおいては、カスタマーサポート業務のテキスト部分として、年間想定業務量の約4割を削減することができるため、ユーザーさまが増加しても、社内の人員を増やすことなく効率を上げて対応することが可能となります。
セールスにおいては、1人当たりの商談獲得数や受注金額の向上、開発においては、コーディングエージェントという非常に便利なツールを活用し、現状でもエンジニア1人当たりの有効コード生成量が36パーセントほど増加しています。このようなツールを全社員がうまく活用することで、AIによる効果を広げていくことを推進しています。
既存プロダクトにおけるAI活用
既存プロダクトにおけるAI活用についてです。現在、さまざまなサービスでAI活用が進んでいます。当社の「マネーフォワード クラウド会計Plus」「マネーフォワード クラウド契約」「マネーフォワード クラウド連結会計」「マネーフォワード クラウド経費」など、さまざまなサービスにAIを組み込むことで、ユーザーさまの利便性や生産性向上の実現を推進していきたいと思っています。
AIエージェントの提供によって、AIによる業務効率化の先へ
AIエージェントの提供を全プロダクトで推進していきます。某有名企業CEOの「SaaS is Dead」という言葉が話題になりましたが、今までのSaaSとこれからの「SaaS ✕ AI」では何が変わるのかをご説明します。
今まではユーザーさまが、勤怠、年末調整、カード利用報告、会計といったさまざまなサービスにおいて、自身で入力していました。これからはユーザーさまがわざわざ登録する必要はなく、基本的にはAIエージェントがすべて代わりにやってくれるような世界になってくるかと思います。ユーザーエクスペリエンスが大きく変化し、対ユーザーとの接点がAIエージェントになっていくということです。
一方で、ロジック、データにおいては本当に難しいところなのですが、当社は長年培った処理ロジックやデータ保持のやり方がありますので、これをしっかり活かして延ばしていきたいと考えています。
マネーフォワードが目指すAIエージェント
当社が目指すAIエージェントについてご説明します。主な機能は3点です。1点目は、自律的にバックオフィス業務を行ってくれるAIエージェントです。自動的はもちろんのこと、自律、つまり自分で意思決定します。
2点目は、バックオフィスの専門家としての高い専門性を持つAIエージェントです。AIが得意な単純作業だけでなく、専門家として、高い専門性を持つAIエージェントの開発を目指します。
3点目は、新たなデータやロジックから、賢く成長し続けるAIエージェントです。ユーザーさまのインプットデータがあると、ラーニングを続けて最適なモデルに成長させます。直近ではOpenAIさまが、「ChatGPT」でパーソナルデータを読み込んで自分仕様のAIに進化させることを実現しました。私も実際に使ってみて、驚きました。バックオフィスにおいても、その会社、その個人を積極的に学んでいくようなAIエージェントを作っていきたいと考えています。
全サービスに、AIエージェントを順次搭載
スライドにはイメージ図を掲載しています。例えば経費領域において、今まではユーザーさまが、月末や月初の時間のない中、自分で領収書の経費精算を登録していました。今後は、我々の「マネーフォワード ビジネスカード」をご利用いただいたり、APIでつながるカードをご利用いただくと、AIエージェントがキックしてくれます。
例えば、「利用報告してないものがあります」とAIエージェントが経費申請を提案します。データをもとに、部門や詳細などもAIエージェントが自動で入力し、「これで間違いないですか?」と確認してくれます。
ユーザーさまが「これでOKです」と返すと、そのまま申請される仕組みです。月末・月初の多忙な時期でも、AIエージェントが代わりに対応してくれるため、本当に楽になります。このようなことが、実現できると思っています。
これは経費における一例ですが、このようなユーザー体験を今後、すべてのサービスに順次搭載していきます。
会計事務所向けにも、様々な顧問業務支援エージェントの提供を目指す
さらに、我々の大切なパートナーである会計事務所さま向けにも、さまざまな顧問業務支援エージェントの提供を目指したいと考えています。
会計事務所さまでは、「お客さまから資料が返ってこない」「振り分けが大変」などによって業務に時間がかかっている部分がありますが、AIエージェントが代わりに資料を回収したり、振り分けたりしてくれます。
さらに、「勘定科目のレコメンドエージェント」や、顧問先に提示するレポートを作成する「レポート作成エージェント」なども可能だと思っています。
ユーザーフォーカスな、オープンなエコシステムを構築
スライドのようなかたちでAIエージェントを作りながら、ユーザーフォーカスな、オープンなエコシステムを構築していきたいと考えています。
スライド中央に、「マネーフォワード クラウド」のサービスがありますが、他社のSaaSサービスや基幹システム、また、コミュニケーションツール、その他のツールもオープンにつなぎ、データマートに入れていきます。そして、そのデータをもとにAIエージェントを提供していく考えです。
これは、我々のAIエージェントに限らず、パートナーのAIエージェントもユーザーに提供していく予定であり、順次、協業いただける企業を募集しています。
AIエージェントの実現を支えるデータマートの構築
AIエージェントの実現を支える上で大切なのが、データマートです。詳細は割愛しますが、AIエージェントが活用できるようなデータのアーキテクチャの構築が非常に重要です。
当然ながら、セキュリティや内部統制も大切なため、そのようなデータマートを構築し、APIを介してAIエージェントにつなげていく取り組みを進めています。
このAIエージェントに、他社やパートナーのAIエージェントもつながっていくかたちで、プラットフォーム化を目指していきたいと考えています。
AIを活用した業務コンサルティング「AXコンサルティング」を提供
AIを活用した業務コンサルティング「AXコンサルティング」も提供していきます。
当社には、マネーフォワードクラウド経営管理コンサルティング社、ナレッジラボ社、アウトルックコンサルティング社などのグループ会社があり、それぞれコンサルティングも行っており、現在500社以上のコンサルティング実績があります。
実は私も本日商談をしていたのですが、バックオフィスのオペレーションをどのように設計すればよいのか、難しいところがあります。そのような課題に対してヒアリングを行い、設計・実装・運用まで支援していくコンサルティングを展開していきたいと考えています。
当社は日本でもトップクラスのノウハウを有していると思います。それを活かし、中堅・エンタープライズ企業向けに「AXコンサルティング」を推進していきます。そして、バックオフィスのノウハウも同時に蓄積し、AIを進化させていきたいと思っています。
金融パートナーとAIエージェントが、様々な地域・事業規模の事業を前に進められる世界に
Money Forward Xドメインにおいては、金融パートナーと連携し、金融機関向けにAIエージェント提供する「AXコンサルティング」を展開予定していく予定です。
【再掲】中長期の財務ターゲット
Money Forward Businessドメインの利益計画とキャピタルアロケーションの最適化について、ご説明します。
中長期の財務ターゲットとして、FY28に売上高1,000億円以上(SaaS ARR800億円以上)、EBITDA300億円以上を目指すという目標を掲げています。
中長期財務ターゲット達成に向けたBusinessドメイン利益計画
今回、中長期財務ターゲット達成に向けたMoney Forward Businessドメインの利益計画を公表し、しっかり実現していこうと考えています。
ご覧いただいているとおり、FY26以降はマージン改善を加速していきます。左側のグラフはMoney Forward Businessドメインの売上高コスト比率で、売上高比の原価率と販管費率を表しています。広告宣伝費や人件費などの販管費の入り繰りは、投資の効率を見ながら適宜最適化していくため、こういったかたちでお見せしています。
売上は数十パーセントで伸びているため、それに対しての人件費や広告宣伝費を減らさず、増加率を抑えながらコントロールして利益を出していくというかたちです。
投資の方針は、スライド2行目のCAC Payback Periodは既存方針のとおり、おおむね18ヶ月から24ヶ月以内を目標として、特に中堅領域において獲得効率のさらなる改善を進めていきたいと思っています。
FY25は、純増ARRの最大化に向けて一部投資を加速させる一方、FY26以降は広告宣伝費、並びに人件費外注費の増加ペースを低下させ、FY26はRule of 40を実現していきたいと思っています。
CAC Payback Periodの水準をコントロールしながら、安定した純増ARRの積み上げを目指していきます。FY25の売上高対比販管費率は92パーセントから97パーセントのため、EBITDAは100パーセントから引き算すると、3パーセントから8パーセント程度になります。
FY26のEBITDAは12パーセントから19パーセントで、FY27は20パーセントから27パーセントです。FY28は30パーセント以上と、マージン改善をしていきたいと思っています。
キャピタルアロケーション最適化について
キャピタルアロケーションの最適化についてお話しします。企業価値最大化を目指して、事業リソースを逐次変更していくのが、大きなポイントです。
事業リソースはARR成長率が大きく加速している法人向けバックオフィスで、特に中堅領域に集中しているのはご存知のとおりですが、他のドメインも成長を継続しながら、収益性改善を継続して行っています。
ドメインごとにご説明すると、Money Forward Homeドメインでは三井住友カードさまと、我々の持分が51パーセントの戦略的なジョイントベンチャーを実現し、Money Forward Homeドメインの成長を加速する戦略を推進しています。この取り組みでグループ全体としても約190億円のキャッシュインを実現しています。
また今回、保険代理店事業であるNext Solution社を譲渡しています。
Money Forward Xドメインは、分社化を実施していますが、今後戦略的な事業パートナーさまと資本業務提携を行っていくために、提携の検討を開始していることをご報告します。
Money Forward SaaS Marketingドメインですが、スマートキャンプ社はIPOを目指すことをすでに公表しました。持分譲渡の検討も同時に開始していることをご報告します。
保険代理店事業の戦略の見直しにより、株式会社Next Solutionの当社持分を譲渡
先ほどお伝えした保険代理店事業Next Solution社の当社持分の譲渡ですが、三井住友カードさまとの会社設立を受けて、先方からのご要望や戦略の見直しもあり、三井住友カードさま、並びにソニー生命保険さまへ譲渡し、本取引による売却益を第2四半期に計上予定です。
したがって、非連結になるため、業績の見通しの修正を一部実施しています。全社とMoney Forward Homeドメインの売上高のみを修正し、調整後EBITDAや営業利益は修正せずに進めていきます。