個人投資家向けIRセミナー
大和田能史氏(以下、大和田):トーヨーカネツ代表取締役社長の大和田です。本日はご多忙のところ、会社説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
当社は、東証の区分ではプライム市場の機械に分類されているもの作りの会社です。これからご説明しますが、大きく3つの事業を手がけています。
1つ目は、物流センターや空港向け手荷物搬送の自動化機器・システムを作る事業です。
2つ目は、エネルギー貯蔵タンクを作る事業です。
3つ目は、生活環境や自然環境に関わる事業です。特に最近、非常に激甚的な災害が大変多くなっている中で、減災などを手がけています。
本日のご説明
本日は、当社の現在・過去・未来についてお話しします。
会社概要
会社の概要、売上・利益、財務戦略、現在の姿をご説明します。
当社は1941年の創立から今年、85年目を迎えました。工業用炉の製造に始まり、終戦後はボイラーを作るようになったことで培った溶接の技術を、そのままタンク製造事業が受け継いでいます。創立当初からの社是は「わが社は常にすすんでよりよきものを作り、社会のために奉仕する」です。いわゆるパーパス経営のはしりではないかと思います。
会社概要
当社のこれまでを大きく支えてきたのがタンク製造事業です。最近10年くらいで主力事業に成長してきたのが物流システム事業になります。この2つが主力事業です。
物流システム事業では、提案から設計、製作、施工、メンテナンスまでをフルサポートしています。タンク製造事業では、スライド右側の写真にあるような大型タンクの設計・調達・工事・メンテナンスを行っています。大きなタンクも作ってきましたが、特に近年は、国内製油所で稼働しているタンクのメンテナンスが柱になってきています。
会社概要
国内外におけるトーヨーカネツグループのネットワークです。国内11社59拠点、海外2社3拠点を展開しています。東京本社を中心に、事業所が千葉にあるほか、物流システムのメイン工場が和歌山にあります。特に物流システム事業は北から南までお客さまが点在しているため、10ヶ所のサービスセンターと4ヶ所のサテライトセンターでお客さまの物流を支えています。
中期経営計画 業績と予想
業績です。2022年度から3ヶ年の中期経営計画を推進しています。当社はおおむね3ヶ年単位で中期経営計画を立案しますが、現在推進している中期経営計画の最終年になる2024年度の業績は、売上高が595億円、営業利益が39億円で増収増益を予想し、ROEは7パーセントくらいです。
スライドでは、ジャンル別に物流ソリューションとプラント、次世代エネルギー開発、みらい創生の売上高と営業利益をご説明しています。最近の業績をけん引しているのは、やはり物流ソリューションです。
タンク事業はプラントと次世代エネルギー開発の2つに分けてご説明します。プラントは、先ほど柱になってきているとお話しした、国内製油所で稼働しているタンクのメンテナンスによる売上高と営業利益を含んでいます。
次世代エネルギー開発で取り組んでいるのは、水素、アンモニアやCO2の貯蔵などです。カーボンニュートラルということで、将来的に原油から水素社会にエネルギーが移行するまでに求められる新しい取り組みです。
現在の売上構成は、6割が物流ソリューションです。プラントと次世代エネルギー開発を足してだいたい2割、みらい創生も2割です。
中期経営計画 財務戦略
財務戦略です。未来に向けた成長投資や研究開発、人材投資を積極的に行おうということで、当初、3年合計で30億円以上としていた配当も計画値を上回る状況です。
成長投資についてご説明します。スクラムソフトウェアや木本産業、坂田電機、マックスプル工業などをグループに迎えています。スクラムソフトウェアは物流のソフトウェア会社です。木本産業は、タンクの世界で実際に作業される方が非常に少なくなってきているのを補うために迎えた、優秀な作業ができる会社です。
主力事業であるため、物流システムの製品開発は行う一方で、研究開発のメインには水素タンクを据えています。当社はタンクメーカーであるため、これからやってくる水素社会に対しては水素を貯蔵できるタンクを作っていこうと研究しています。
水素タンクの研究は2027年度でだいたい一区切りを迎える予定です。そこから、きっと水素社会がくるのだろうという思いがあります。
資本政策・株主還元方針
資本政策です。当社はメーカーであるため、財務の健全性は非常に重要だと思っています。成長投資を行いながら財務の健全性を保つというバランス経営を基本方針としています。
株主還元方針は連結配当性向を50パーセント以上とし、100円を下限としています。これを現在の中期経営計画期間中も堅持しています。もし方針が次の中期経営計画で変わることになれば、みなさまにご報告します。2024年度の配当は、中間配当を復活させ、50円の中間配当も行い、年間合計で182円を予想しています。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
最近よくいわれる、資本コストや株価を意識した経営の進捗についてお話しします。
私は社長になって今、3年目です。就任したのは現在の中期経営計画がちょうど始まる時でした。その時の株価が2,452円です。それ以来2年9ヶ月が経ち、2024年12月末の株価は4,385円になりました。スライドに沿って、3つの取り組みをご説明します。
「①事業成長と収益性の向上」です。中期経営計画の中で各事業部が重点施策を十分に推進したことで、2024年度のROEは7パーセントとなっていますが、伊藤レポートのROE8パーセントは1つの基準だろうと思っています。なお2023年度は9.4パーセントに達していますが、これは政策保有株や土地の売却益が寄与した結果です。
「②資本・財務戦略の強化」です。株主還元や成長投資を重視し、適正な純資産の維持に努めてきました。
「③積極的なIR活動の実践」です。本日のように広島でIR活動を行うのは初めてなのですが、みなさまにトーヨーカネツを積極的に知っていただこうと、昨年度から説明会を東京で2回行ったほか、大阪・名古屋でも行いました。
IR活動に取り組んで、いろいろな方々とコミュニケーションを取っていますが、とりわけ1on1を含めて行っている機関投資家のみなさまとの面談回数は、年間50回を超えてきました。次第に効果が出てきていると思います。
このようにして、引き続き企業価値を上げていくとともに、切っても切れない関係にある株価とPBRの2つを上げていくというところにも十分に取り組みたいと思っています。
主力2事業の実績
ここから現在・過去・未来について、今まで当社がどのようなことを行ってきたのか、実績を交えながら少し振り返ってみたいと思います。
創業当時は工業用炉やボイラーを製造していたとお話ししました。戦後ということもあり、これら以外にも、橋や鉄塔など非常にいろいろな物を製造しました。「社会に奉仕する」という社是のもと、必要な物は何でも手がけたものの、もの作りの会社として生産業務が非常に多岐にわたったことで、やはり効率が落ちてしまいました。
そこで1955年、タンク製造と物流システムに経営資源を集中させました。先ほどお話しした大きな2つの事業です。おもしろいことに、2つの事業は、タンク製造がよい時は物流システムが少し落ち込み、物流システムがよい時はタンク製造が少し落ち込む、といったかたちで2つの事業が補完し合った結果、今まで成長できてきたのではないかと思います。
スライドは、タンクと物流システムを納入してきた場所を示しています。タンクは世界に5,700基を納入してきました。少し前の投資家向け情報誌を見ると世界第2位のタンクメーカーと書かれていました。さすが世界第2位のメーカーだけあり、けっこうな数を作っています。
物流システムは特に東南アジアの空港を中心に納入してきました。東南アジア以外にも実績があります。ただし現在の売上比率は国内向けが95パーセントです。リソースを国内に集約しているとお考えください。
実績 物流システム
スライドは、当社の物流ソリューション事業が得意としている業界4つをご説明しています。
生活協同組合(生協)についてです。生協は2つの事業を手がけています。1つは店舗です。もう1つは購入した商品を宅配する共同購入事業です。当社は共同購入事業を支えています。
共同購入は、AmazonなどいろいろなECが出てくる以前から生協が手がけている事業で、供給高は3兆円くらいの規模です。物を売るというところで生協は非常に大きな地位を占めています。
生協の物流センターでは、扱っているいろいろな商品をオーダーに合わせてピッキングしていく必要があります。ピッキングした商品を箱に入れ宅配しています。このピッキングの仕組みを、当社は日本で初めて米国から導入しました。デジタルピッキングなどといわれ、今となっては一般的な仕組みです。いろいろなメーカーが手がけていますが、先駆けとなり導入したおかげで70パーセント以上のシェアを持っています。
空港についてです。例えば羽田空港では、床下でぐるぐる回っているソーターというベルトコンベヤでみなさまから預かったバゲージを搭乗便別に仕分けています。みなさまが到着すると、今度はターンテーブルというコンベヤで預かったバゲージをお返しします。この自動手荷物預けシステムのシェアは国内空港の80パーセント以上とかなりの大きさです。広島空港さまにも納入させていただいています。
最近になっての得意分野はAmazonに代表されるネット通販、Eコマースです。ネット通販会社の物流センターでは心臓部を手がけており、30万商品から40万商品を、みなさまに、例えばAという商品とBという商品をセット組みして、当日中に渡します。これは、相当な物流システムが中に入っていると考えてください。細かくご説明すると大変なので、ホームページをご覧ください。
3PLとは、サードパーティ・ロジスティクスのことです。基本的には、いろいろな運送会社が荷主の物流を代行することを指します。3PLのベンダーが代行するので、非常に効率が良くないと儲かりません。したがって、高性能で高品質のマテハンを導入して、なるべく少ない人数でいろいろなことができるようなものを納めています。
以上の4つが、物流システム事業におけるメインの市場です。
実績 タンク建設
次はタンク事業です。
先ほど申し上げたように、当社は世界第2位のタンクメーカーであり、国内外で5,700基以上のタンクに関わる実績があります。特に当社が得意なタンクは、大型タンクのEPCで、設計してから据え付けるまでを行います。
製造した大型タンクの中には、だいたい33万戸の1年分の電力を賄えるだけのLNGガスを入れておくことが可能なものもあります。ガスではなく液化して入れるので、マイナス162度の液体がタンクの中に入っていますが、33万戸は徳島県の世帯数ほどにもなるため、徳島県ではこの1台で1年間の電気を作れるだけのエネルギーがこの中に入っていると思ってください。
2つの事業についてお話ししましたが、もう1つの事業は、2年前から立ち上げた次世代エネルギー事業です。先ほど申し上げましたが、アンモニアとCO2も液化して入れるので、これも低温タンクです。したがって、当社が持っている技術の一番の肝は低温です。それを長い間保持して、ずっと保管できるタンクを作ることができます。
司会者:大型LNGタンクの根本となる技術は、祖業の溶接に関係しますか?
大和田:はい、特に低温タンクはただの鉄の溶接ではなく、ニッケル鉱が入っていて非常に溶接が難しいです。またマイナス162度をずっと屋外で、炎天下の中でも保温するので、非常に特殊な厚板を使います。その厚板を溶接する技術は難易度が高く、それが肝です。
司会者:マイナス162度とマイナス253度は同じマイナスですが、ぜんぜん違うということですね?
大和田:保温材の使用や、保温の仕方がまったく違います。マイナス162度が可能ならマイナス253度もできるだろうと最初は同じことを行いましたが、まったく保温できませんでした。
司会者:でも挑戦しようということですね?
大和田:マイナス253度をどのように保温するかという部分の基礎研究は、去年すでにできています。それを来年度からベンチスケールタンクを作って、実際に検証する部分はこれからです。
グループ中期経営計画
ここまで2つの事業を軸にお話ししましたが、これからの姿と当社事業の展開についてお話を進めます。2022年度から最終年度である2024年度まで、3年間の中期経営計画についてです。
当社はもの作りの会社なので、経営ビジョンは「革新的な技術と実行力で、社会課題を解決する『ソリューションイノベーター』」になりたいということを社内外に発表しています。ここでいう革新的な技術とは、常識的な考えや枠組みにとらわれないで、最先端技術と当社の持っているノウハウや実績を組み合わせて新しいソリューションを創造することを指します。
また、実行力とは文字通りですが、困難なことに臆することなく実行に移すことを積み重ねることが未来を支える力を生むと、私はいつも社員に口を酸っぱくして言っています。
その思いが、スライドに記載してある「未来に向かって行動しましょう」という意味の「ACTION FOR THE FUTURE」です。これを浸透させながら、未来に向けた成長路線を確立するという基本方針を立てて中期経営計画を推進しています。
サステナビリティ
サステナビリティです。これはよく聞く言葉ですが、当社は社会課題の解決を目指すと言っている中で、未来に向かって、同時に社会貢献もする必要があります。そのために優先するべき10のマテリアリティを設定し、活動を見える化して、SDGsの達成に寄与していこうという思いです。
環境についての取組み
マテリアリティの一番最初に「気候変動による事業環境変化への対応」を挙げています。当社の環境に対する取り組みをスライドに記載しています。
スライド右下にある棒グラフの左は基準年が2019年度ですが、現在は約30パーセントのCO2の排出を削減しています。引き続き、商用車のEV化と太陽光発電の設置を進めながら、カーボンニュートラルの達成を目指します。
4つの事業セグメントとその展望
これからの展望についてお話しします。先ほど1955年から2つの事業でここまで成長してきたとお話ししました。
タンクに関わるプラント事業と次世代エネルギー開発事業では、現状あるタンクのメンテナンスと新しいエネルギータンクの新築を行っています。
第3の柱には、多くの会社がありますが、特に今行おうと思っているのは環境系です。
今、東京周辺では、ビルがけっこう壊されています。地方都市においても、どんどん建物のスクラップアンドビルドが進んできている中で、環境系の1社はアスベストの分析が得意です。
建物を壊す際にアスベストのチェックを行う必要がある法律が2年前に施行されたので、今この会社は非常に忙しいです。また、これだけ多くの会社をいかに組み合わせて、1+1を2ではなく、2.2、2.5にすることが大事だと思っています。
今後グループインするいろいろな会社をつないで、第3の柱にしていきたいと思っています。
物流ソリューション事業の展望
ここからは、当社が各事業に対して、どのような思いで成長させていきたいかについて少しご説明します。
物流ソリューション事業は労働人口減少という社会課題を解決します。物流センターの中では無人化を目指すソリューションを進めていきます。
スライドに記載のとおり、労働人口が2050年には、2020年度比で30パーセントにあたる2,200万人が減少します。私も含めて、65歳以上の人口がすでに3分の1になりました。全部一気に無人になるとは思いませんが、少なくともそこで働いている人たちの負荷を減らしたり、その延長線上で無人化するなどの動きが今後どんどん出てきます。
当社も、物流についてはまだ成長余地があると思っていますので、その成長に乗っていきたいと思っています。
また、先ほどEコマースという話がありましたが、まだ日本はEコマースでものを買う比率は20パーセントを切っていて、中国の3分の1くらいです。Eコマースはまだ伸びていきます。特に当社が持っている仕組みは、そこに本当に当てはまるので、そこの部分については、まだ期待できると思っています。
プラント事業・次世代エネルギー開発事業の展望
タンク事業は、カーボンニュートラルということで、クリーンエネルギー社会の実現に寄与していきます。実際今はまだ石油やLNGに頼っています。原子力や再生エネルギーに移行する流れですが、原子力発電所も、なかなか立ち上がっていかない状況です。
今当社のメンテナンス事業が堅調なのは、新しいエネルギー媒体への移行が足踏みしていて、まだ原油タンクを中心としたメンテナンスがあるからです。しかしこれは自然に減少していきます。減少してきたところに、次世代の水素タンクがうまく入れ替わってくれればという思いで進めています。
したがって、今タンクの売上は少し落ち着いていますが、これから成長市場があると思っています。
みらい創生事業の展望
みらい創生事業の展望です。これは先ほどもお話ししたとおり、いろいろな環境、防災、減災を行いたいのですが、グループインしたいろいろな会社が、まだまとまってシナジー効果を出していないので、これからシナジー効果を出して、「第3の柱」にしたいと思っています。
長期視点でのポートフォリオの将来変化
これは将来のポートフォリオで、規模を円の大きさとして示しています。物流ソリューション事業がどんどん領域拡大して大きくなります。みらい創生事業はシナジー効果を発揮させて第3の柱にしていきます。
次世代エネルギーについて、政府は2030年に水素社会がくると予想しました。しかし、1年、2年経ち、今は2035年になっています。下手すると2040年になる可能性があるという話ですので、ここの立ち上がりは、まだ先になると想定しながら、しっかり準備します。
プラント事業は、思ったよりまだ仕事があります。ただし成長面では違うかと思っています。このあたりはバランスを取りながら経営したいと思っています。
以上で、すべてのご説明となります。
最後に
「ACTION FOR THE FUTURE」、このスローガンのもと、全社一丸となって社員一同がんばっています。ぜひみなさまにも応援していただければと思います。
本日は、お時間をいただき、誠にありがとうございました。