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吉田毅氏(以下、吉田):みなさま、こんにちは。明和産業株式会社、代表取締役社長の吉田です。よろしくお願いします。
本日はお忙しい中、当社のIRセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。聞きなじみがないかもしれませんが、当社グループはいわゆるBtoBの会社です。
本日は、目次に沿って、当社グループの特徴や強みをはじめ、成長に向けた取り組み、足元の業績や株主還元などについてご説明します。また、本日説明しきれない点については、参考資料として補足しましたので、お時間がある際にご覧いただければと思います。
会社概要
吉田:会社概要について簡単にご説明します。当社は東証プライム市場に上場しており、従業員数は、連結で518名です。
当社の企業理念「明光和親」は創業当初からのもので、「公正明朗」「社員の和や協調精神」「事業を通じた社会貢献」という3つのメッセージが込められています。
現在と照らし合わせて言い換えると、「公正明朗」はコンプライアンスの遵守、「社員の和や協調精神」は人材を大切にすること、「事業を通じた社会貢献」はサステナビリティを指しており、この理念は創業当初から全社員に受け継がれています。
特に人材については、商社として価値を生み出すにあたり一番大切な資産であり、これまでも、またこれからも大切にしていきたいと考えています。
明和産業とは?
吉田:ここからは、当社について少し詳しくご説明します。当社は、旧三菱商事にルーツを持つ75年以上の歴史がある商社です。設立当初から中国と貿易取引を行うなど中国ビジネスに強く、現在は売上高の約3分の1が中国との取引になっています。
また、長年の中国取引で構築したビジネスネットワークを活かして、東南アジアやインドへ進出し、事業成長を加速させています。
明和産業の原点:1947年、第2次世界大戦後の財閥解体で旧三菱商事の化工品関連部門の従業員等が設立。
吉田:明和産業のルーツは旧三菱商事の化工品関連部門にありますが、化学品だけでなく多種多様な商品を取り扱い、積極的に事業を拡大してきました。1つの例として、創業時のタイの輸入取引についてご紹介します。
当時、当社はタイ米の輸入を行っていました。1993年に起きた「平成の米騒動」でのタイ米の輸入は有名ですが、第二次世界大戦直後の昭和20年代、食糧不足だった日本は、世界各国から米を輸入していました。その中で当社は日本政府とともに、タイからの米や塩の輸入に尽力しました。
また、これをきっかけに、戦後初めてタイの虎を上野動物園に寄贈するという、ビジネスを超えた出来事も実現しました。
利益率は改善中
吉田:当社は化学品を中心に取り扱いを進めていますが、時代のニーズに応じて多種多様な商品の取り扱いながら、積極的に事業を拡大してきました。
その中で創業から1990年代後半まで、当社は取扱商品の数量を拡大し、売上重視で事業を伸ばしてきました。
2000年以降は、より収益力を重視した経営方針に転換した結果、2000年3月期に0.1パーセントであった経常利益率は、2024年3月期には2.5パーセントと収益力が大きく改善し、安定した収益性を確保しています。
取扱製品:競争力の高い、化学品・樹脂、部品など様々な商材
吉田:当社の事業概要をご説明します。当社グループは、4つの事業セグメントで構成されています。
第一事業は、レアアースやレアメタルなどの希少資源や環境商材、金属製品を取り扱う資源・環境ビジネス事業、プラスチック製品などを燃えにくくする材料を取り扱う難燃剤事業、断熱・防水・内装分野を手がける機能建材事業で構成されています。
第二事業は、主に潤滑油など石油製品を取り扱っています。
第三事業は、主に化学品を取り扱うセグメントで、高機能素材、機能化学品、合成樹脂、無機薬品の各事業で構成されています。
自動車・電池材料事業は、持分法適用会社が担う部分が多いため、売上高の割合は低くなっています。自動車の電動化への流れを取り込みながら、自動車本体に使われる部品だけでなく、リチウム電池などに使用される原材料などを取り扱っているため、非常に大きな成長が見込まれるセグメントです。
主要取引先:BtoB事業で主要メーカの高品質な製品と当社の機能が販売先の安心感に
吉田:主要取引先および当社の機能についてご説明します。当社は設立時の経緯から、三菱系を含めた主要サプライヤーから、高品質な製品を安定して供給できる体制を確立しています。
また、仕入先と販売先をつなぎ商品を売買する、いわゆるトレーディングが当社のビジネス基盤になっていますが、単に物を仕入れて販売するだけでなく、さまざまな機能やサービスを提供することで付加価値を高めています。
当社の機能の1つ目は、豊富なネットワークです。単体だけでも国内外で約2,600社との取引があり、また中国においては、全土に拠点を設立し供給体制を確立しています。東南アジアにおいても、現地法人を起点にネットワークを確立しています。
2つ目は、物流機能です。日本および中国において、子会社や関係会社の物流・在庫拠点を利用して、お客さまの求める製品・サービスを開発・提供しています。
3つ目は、加工機能です。例えば、合成樹脂やその加工品を取り扱う第三事業では、国内外の加工メーカーを通じて製品に新たな機能を付加し、お客さまの課題解決に貢献しています。
当社はお客さまの求める高品質な製品・サービスを当社独自の機能で提供し、信頼と安心を届けています。
特徴・強み:日本商社のノウハウ×中国起点のアジア・ネットワーク
吉田:当社の特徴・強みは3点あります。1点目は、75年以上の歴史で積み上げてきた、商社としてのビジネス・ノウハウです。当社は、設立当初から海外市場の開拓を進めながら、事業ポートフォリオを常に入れ替え、安定的な収益と実績を積み上げてきました。
2点目は、コスト競争力と成長市場への事業展開に有利な中国で、いち早くビジネスネットワークを確立した点です。中国政府より「友好商社」に指定されるなど、日本の商社の中で有数の確固とした事業基盤を確立しています。
3点目は、ニッチな分野で環境に優しい製品に精通している点です。日本だけでなく中国・アジアにおいて、ニッチな分野で環境技術に優れた日本製品・サービスを取り扱い、環境や安心・安全な社会に貢献しています。
発展経緯:海外は創業時から中国中心に事業基盤を構築、国内は有望な化学品商材を資本参加で開拓
吉田:当社の発展経緯についてご説明します。海外では創業時から旧社会主義国との取引を本格化し、中国を中心に事業を拡大してきました。1962年には中国より「友好商社」と指定され、その後三菱グループの化学品などの輸出に注力してきました。
1990年代に入り、現ENEOSと合弁会社を設立して、潤滑油の製造・販売を強化し、主力ビジネスに育ててきました。その後も、EVの普及が世界で一番進んでいる中国で、電池材料の販売を本格化し、現三菱ケミカルと合弁会社を設立するなど、事業の拡大を進めています。
また、国内については、ビジネスパートナーへの積極的な資本参加で商材を増やし、自動車部品や難燃剤などニッチで優位性のある製品を製造・販売しています。
特徴① 専門商社として、機動的に製品・事業ポートフォリオを見直し、成長機会を追求
吉田:当社は、機動的に製品・事業ポートフォリオを見直しながら成長機会を追求しています。化学品を中心に事業環境の変化、製品需要を見極め、次世代製品や事業を絶えず探索することで、成長の芽を育成・発展させてきました。
また、残念ながらピークアウトした製品や事業の入れ替え・撤退によって、常に経営資源の循環を促進しています。
変化の20年・なぜ収益力が強化されたのか?:専門商社志向へ転換
吉田:2000年代に入り、金融危機、リーマン・ショックなど事業環境の変化を踏まえ、当社は売上高を重視する総合商社的な成長志向から、特徴のある商材やサービスで収益を追求する専門性の高い商社へと転換を進めてきました。
不採算部門の整理と主力部門への集約化を行い、取扱商材の絞り込みを進めることで、経常利益率は2000年3月期から2024年3月期にかけて、25倍の改善率になっています。
特徴② 中国に根ざしたネットワーク:1962年に友好商社指定以後、人口大国で商機を発掘・発展
吉田:2点目の特徴である、中国に根ざしたネットワークについて、もう少しご説明します。
創業時から長年中国でビジネスを積み重ね、日本企業として中国に有数の事業基盤を持つ商社へ発展してきました。1996年に明和産業(上海)有限公司を設立し、現在100名を超える現地スタッフと中国全土の拠点を活用した供給体制を確立しました。
また、他の商社との違いの1つとして、当社はローカル化を積極的に進めています。多くの商社は、中国に進出する日系企業とのビジネスが中心ですが、当社は過去10年間で中国系の企業とのビジネスが6割以上増加しており、より中国国内に根ざした商社として展開中です。
中国ビジネス展開例:潤滑油
吉田:中国ビジネスの一例である潤滑油ビジネスにおいて、当社の強みは3つあります。
1つ目は、日本製の高品質・低環境負荷の製品に関して専門性を有する点です。2つ目は、中国国内にネットワークを確立している点です。3つ目は、調達から製造、流通、販売までの一貫したサプライチェーンを構築している点です。
各国から高品質でコスト競争力の高い潤滑油原料を仕入れ、ENEOSと設立した天津日石潤滑油脂やENEOS広州に供給しています。そして、ここで製造されるエアコンのコンプレッサーに使用される冷凍機油や、産業機械・建設機械に使用される潤滑油を、明和産業(上海)有限公司が現地で構築したネットワークを活かして販売しています。
特徴③ ニッチな分野で環境や安心・安全に寄与し、サステナブルな社会に貢献する製品に精通
吉田:当社の特徴の3点目は、ニッチな分野で環境や安心・安全に寄与し、サステナブルな社会に貢献する製品に精通していることです。
当社は、環境負荷低減やサステナブル社会に貢献する製品を長年取り扱っています。例えば、潤滑油ビジネスでは、地球温暖化係数を大幅に抑える新冷媒に適した冷凍機油のマーケティングを通じて、環境負荷の低減に取り組んでいます。
また、プラスチック製品などを燃えにくくする素材である難燃剤を開発し、そしてマーケティングによって、火災などの災害から人命を守る安心・安全な社会作りに貢献しています。
今後はアジアなどの成長市場でも、環境負荷の低減に貢献できる製品を提供し、有利なポジションを構築していきます。
中長期経営戦略:中国ネットワークの活用×新規事業創出へ人材投資
吉田:ここからは中長期の成長戦略を中心に、当社の将来性についてご説明します。「中期経営計画2025」の施策として、既存事業の収益性と効率性の向上、新たな領域での事業展開という両輪を回しています。
既存事業では、注力領域であるモビリティ、環境、生活の3つで取り組みを推進しています。これまで培ってきた中国ビジネスでの経験や知見、取引先とのパートナーシップなどを最大限に活かし、中国はもとより、東南アジア、インド、日本を含む東アジアで各種の取り組みを加速しています。
また、新たな事業展開のために人材に対する投資を継続しており、社員一人ひとりが活躍できる環境の整備を進めています。
中国ネットワークを起点とした海外展開
吉田:スライドでは、当社の強みである中国ビジネスの「これまで」と「これから」について、あらためてまとめました。
STEP1です。友好商社時代から2000年までは、中国が進める経済の基盤作りを当社の収益に取り込むべく、主に日本から中国への輸出を中心にビジネスを行ってきました。
STEP2です。2000年代に入って、中国の高度経済成長時に日本企業と共同で中国へ進出し、現地法人を設立、営業・物流拠点を拡充して、中国国内の旺盛な需要を取り込んできました。
足元については、環境対応型の冷凍機油や中古車載電池のリユース・リサイクル事業などを通じて、中国企業とのパートナーシップを深めており、当社の強みである中国ネットワークをさらに強化しています。
STEP3の「これから」については、このネットワークをテコにして、注力領域などの取り組みを東南アジア、インドなど他の地域にも複層的に展開していきます。
1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):中国ネットワークを起点として海外展開を行う上で、何が重要になりますか?
吉田:当社は創業時から中国ビジネスの開拓を行っており、すでに強固なネットワークを確立しています。
これまで培ってきた物流・人的ネットワークを基盤にして、長年の取引を通じた当社の信用力と中国で一緒に働いてくれている優れた人材を最大限に活かすことにより、競争力のある商材・サービスまたは事業を、中国から日本・東南アジア・インドなどの海外市場に展開することができると考えています。
②STEP2×注力領域の実例:中古車載電池リユース事業化に向けてパートナーと会社設立合意
吉田:ここでは、前のスライドのSTEP2にある、中国国内市場の取り込みと注力領域の1つである環境を組み合わせた事例をご紹介します。
電池材料事業では、トヨタ自動車と中国の国営企業である五鉱グループと共同で中古車載電池のリユース・リサイクル事業を行う合弁会社の設立に合意しました。
EVが世界でいち早く普及している中国では、この中古車載電池が先行して出てきます。中古車載電池にはさまざまな種類があり劣化度も異なりますが、トヨタの技術と当社・五鉱グループの持つ中古電池の回収および製品のマーケティング力によりバリューチェーンを形成し、資源を無駄にしないサーキュラーエコノミーを実現します。
Ken:中国ではEVがかなり普及していると思いますが、そのような中での競争環境や規制の影響について教えていただけますか?
吉田:おっしゃるとおり、中国ではEV化がかなり進んでおり、中国の新エネルギー車(ニューエナジービークル、NEV)の2024年の新車販売台数は1,300万台でした。中国の新車販売台数は全部で3,000万台くらいあるため、そのうちの1,300万台ということは、NEVのシェアは約40パーセントになります。
中国は世界で最もEV化が進んでおり、車載のリチウムバッテリーの材料市場は拡大し続けています。
また今週、2025年1月、2月の新車販売台数が発表されますが、NEVのシェアは50パーセント近くまでいくと思われ、中国はEV化がかなり進んでいる国だとご理解いただけると思います。
一方、中国国内には今、多くのNEVメーカーがあり、競争が激化しています。トップシェアのBYDは日本にも進出していますが、このような新興の自動車メーカーの台頭によって価格は低下し、残念ながら日本車の市場占有率も低下傾向にあります。
このような競争環境の下で、当社が手がける電池材料ビジネスでは、その材料である負極材、正極材の原材料を取り扱っており、ここにおいて品質面や価格面で差別化を図りながら、お客さまに付加価値を提供するビジネスを展開しています。
また、原材料の供給だけにとどまらず、その車載電池のサプライチェーン全体を取り込むことを目指しています。さらに、まだ確立されていない中古車載電池のリユース・リサイクルの分野に、サーキュラーエコノミーというかたちでいち早く参入することを目指しています。
もう1点、規制についてはいろいろな規制があります。1つの例として、2022年8月にアメリカで発効した米国IRA(インフレ抑制法)があります。これが2024年からエフェクティブとなり、中国資本が25パーセント以上の企業で製造されるリチウムバッテリーの材料、部品がアメリカにおいて税控除の対象外になることが決まっています。
これは日米の関係から出ていると思われますが、当社は中国で構築したサプライチェーンの経験を活かしながら、日本のナショナルセキュリティの観点からも、中国に依存しない新たなサプライチェーンの確立に、積極的に取り組んでいるところです。
③STEP3の実例 中国で天津志臻自動化設備有限公司への資本参加
吉田:ここではSTEP3にある、中国系企業の海外進出と環境負荷低減に貢献する事例を紹介します。
当社の中国拠点である明和産業(上海)有限公司は、EV、自動運転車、高性能スマートフォン、IoT機器などの普及により急速に需要を拡大している積層セラミックコンデンサ(MLCC)業界において、主要な生産設備である積層機や切断機の製造・販売事業を手がけている天津志臻自動化設備有限公司(Zizn社)の株式を2025年1月に新たに取得しました。
同社の積層機・切断機は、既存の設備と比較して高性能かつコストパフォーマンスに優れており、お客さまとなる積層セラミックコンデンサメーカーの生産効率を上げ、さらにエネルギー消費が大きい積層セラミックコンデンサ生産工程の環境負荷低減にも貢献しています。
また、現地法人の明和産業(上海)は、海外向け販売代理店契約を同社と締結しました。今後は日本・韓国などの積層セラミックコンデンサメーカーに対し、製品の拡販を担っていきます。
そもそもなぜ当社がこの市場に参入したのかですが、電子機器に欠かせない重要な部品であること、およびAIサーバー等で今後の需要増が大きく見込まれる成長産業であることから、積層セラミックコンデンサ関連市場に目を付けました。
本事業は当社にとって、新たな事業領域への挑戦になります。中期経営計画において、新たな事業を通じて人および会社を成長させるという基本方針のもと、将来の収益の1つの柱にすることを目標にしています。
Ken:出資を通じて積層セラミックコンデンサの市場に参入するとのことですが、競争力の源泉についてお聞かせください。
吉田:出資先である同社は、非常に優れた技術開発力を持っています。例えば、同社の切断機は、既存の切断機に比べ、スピードの速さ、および正確さで大きな優位性を持っています。加えて、価格競争力もあります。
同社は、積層セラミックコンデンサ生産工程の効率化に設備面から貢献するビジョンを持っており、当社も非常に共感しています。積層機・切断機を中心に、彼らの持つ技術開発力をさらに進めていくということで、すでに中国においては非常に高く評価されています。
当社は、この技術開発力を武器に、中国のみならず海外の市場に展開することで、同社のさらなる成長に貢献できるのではないかと思っています。今後は、当社の中国外の販売ネットワークを通じ、極東地域の積層セラミックコンデンサメーカーに販売することを考えています。
直近トピックス:東南アジア・インドで事業を進化。日本で、中国製原料を展開。
吉田:中国ネットワークを起点とした注力領域と、日本および東南アジア・インドへの展開を掛け合わせた事例をご紹介します。
モビリティの領域では、非常に特徴のある中国系の樹脂コンパウンドメーカーとともに、東南アジアの自動車部品メーカーへと需要の開拓を進めています。
また、生活の領域では、電気、電子製品の高性能化に求められる液晶ポリマーメーカーである、中国の寧波聚嘉新材料科技(JUJIA)社と極東地域における代理店契約を結んでいます。
各用途での開発案件を進め、潜在的な需要を掘り起こし、新たな市場を生み出していきます。
新たな事業開発に向け人材への投資継続:事業を創出する人材投資強化とスタートアップとの事業共創
吉田:両輪の施策のもう一方として、新たな事業開発を挙げています。具体的な施策の一部をご紹介します。
当社が新たな領域での事業開発を推進するにあたり、企業内起業家の育成が基盤の1つになると考えています。企業内起業家の育成研修を昨年度から開始し、さらに社内ベンチャー制度を通じた事業化も目指しています。
また、若手社員の海外トレーニー制度を通じ、海外での事業拡大の担い手の育成も積極的に進めています。
さらに、ベンチャーキャピタルファンドの出資などを通じ、スタートアップ分野での事業の取得機会も増やしています。現在300件以上の案件の検討を行い、スタートアップ企業との共創へ向けた対話および交渉を進めています。
キャピタル・アロケーション
吉田:スライドには、「中期経営計画2025」におけるキャピタル・アロケーションを示しています。
営業キャッシュフローの創出や保有資産の最適化などを行うことで、財務キャッシュフローも併せ、3年間で70億円から85億円のキャッシュインとなりました。
これに対するキャッシュアウトは、35億円から45億円を新規投資および既存事業の基盤強化のための投資としています。また、連結配当性向50パーセント以上の方針に則り、35億円以上を株主還元とする予定です。
「中期経営計画2025」の進捗状況 純利益目標は上振れ傾向へ ROEも7%以上に到達
吉田:ここからは、中期経営計画の進捗並びに決算概要を中心に、当社の安定性についてご説明します。
はじめに、中期経営計画の進捗状況です。「中期経営計画2025」では、既存事業、新規事業という両輪を軸に、3つの基本方針と5つの施策に取り組んでいます。
スライドの表に記載のとおり、連結純利益、ROE、株主還元は、当初の計画を上回る水準で推移しています。また、基盤・成長投資金額については、2024年3月期実績は2.6億円でしたが、2026年3月期までの3年間で、35億円から45億円の投資を実行する予定です。
2025年3月期第3四半期 決算サマリー:順調な利益進捗を踏まえて、利益予想を上方修正
吉田:2025年3月期第3四半期決算は順調に推移しており、営業利益、経常利益、四半期純利益は昨年を上回る勢いで推移しています。
中国における冷凍機油の販売が当初の想定よりも低調に推移していますが、難燃材事業や石油製品事業が非常に好調に推移しており、営業利益および経常利益は前回発表の予想から増益の見込みとなりました。
資本コスト・株主還元策:配当性向50%の方針に基づき、今期配当予想を年37円に(前期比+3円)
吉田:最後に、株主還元並びに資本コストや株価を意識した経営の実現についてご説明します。
当社は「中期経営計画2025」において、ROEの目標を7パーセント以上とし、中長期では2桁の実現を目指すこと、および株主還元については連結配当性向50パーセントを基本とし、機動的な株主還元を行うこととしています。
2024年3月期においては、1株当たり34円の配当を実施しました。今年度は増益の見込みを踏まえ、配当予想については、すでに開示済みの1株当たり32円の期末配当から5円増配し、37円に変更しています。
「中期経営計画2025」を通じた企業価値のさらなる向上、およびROE2桁の実現によって、株主さま、投資家のみなさまにとって魅力のある銘柄を目指し、引き続き取り組んでいきたいと思っています。
Ken:これまで実施していなかった、自社株買いを行った背景について教えてください。
吉田:これまで一度も行ったことがなかったのですが、昨年、自己株式の取得を初めて実施しました。これは、当社の株主である三菱商事、三菱ケミカルグループ、AGCの3社が保有する当社株式の一部の売出しが行われたことに関係します。
売出しに伴い、当社株式の需給に影響があり得ると考え、これを緩和する観点から、自己株式の取得を実施しました。
また、自社株取得は株主還元の強化につながると考えています。還元強化および自社株取得によって、PBRを改善する施策の1つになると考えています。
当社は中期経営計画でも、配当性向50パーセントに加え、機動的な株主還元策を行っていきたいとしています。今回の自社株買いは、この機動的な株主還元策の1つだとご認識ください。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて:現状分析・評価〈全体像〉
吉田:スライドには、当社の現状分析と自己評価を示しています。
2025年2月末時点の当社のPBRは0.77倍と、PBR1倍割れの状況にあります。この解消のために、引き続きROEの改善並びにPERの向上に向けた取り組みを実施していきます。
(参考)ROEの推移及び株主還元の推移
吉田:ROEの推移および株主還元の推移のスライドについては、お時間のある時にご参照ください。
(参考)株価推移 <2015年4月〜2025年2月>
吉田:株価推移のスライドについても、お時間のある時にご覧ください。
まとめ
吉田:最後に、本日お伝えしたいポイントを4点にまとめます。1点目に、当社は化学品を主体としたさまざまな事業を展開し、さらに中国に事業基盤を確立している、日本でも有数の商社です。
2点目に、当社は常に時代のニーズを見極め、戦略の軸足を移しながら、堅調に拡大・成長し続けています。
3点目に、中国起点のビジネス展開、および新規事業創出に向けての人材投資は、持続的な成長に通じると考え、これらに取り組んでいます。
4点目に、株主還元に関しては配当性向50パーセントを基本とし、自社株買い等も含めた機動的な株主還元を実現しています。
これからも株主さま、投資家のみなさまのご期待に沿えるよう、当社グループ一丸となって事業活動を推進していきたいと思っています。引き続きよろしくお願いします。
質疑応答:トランプ政権の影響について
分林里佳氏(以下、分林):「国外事業は中国が大部分の売上を占めていますが、トランプ政権の動きで何か影響を想定していますか?」というご質問です。
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