INDEX

春田善和氏(以下、春田):みなさま、こんにちは。冨士ダイス株式会社代表取締役社長の春田です。本日はお忙しい中、当社の会社説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日のセミナーで、記憶に留めていただきたいポイントを3つご用意しました。

1つ目が、当社は世界の基幹産業を支えるニッチトップな存在であるということです。2つ目がニッチトップを支えるものとして、当社は「開発力」「技術力」「営業力」を併せ持っているということ、そして3つ目として、これからも成長を続けていくための道筋についてご理解いただきたいと思います。併せて、株主還元策についてもご説明します。

01 世界の基幹産業を支えるニッチトップな存在

春田:当社は世界の基幹産業を支えるニッチトップな存在ということで、当社の会社紹介ムービーをご覧ください。

会社概要(2025年3月現在)

春田:動画にもあったとおり、当社は昨年6月に創業75年を迎えた、超硬合金製工具・金型の製造メーカーです。

冨士ダイスの「ダイス」は、電線やケーブル、精密なパイプや自動車用に使われるパイプなどを作る時に使われる工具です。

当社は創業以来、超硬合金製を中心とした耐摩耗工具・金型の製造に特化しています。耐摩耗工具とは、金属などに力を加えて所定のかたちにする時に使われる工具のことです。金属などに大きな力を加えるため、摩耗に強いことが求められます。

超硬合金は、ダイヤモンドに次いで硬いと言われています。当社は非常に摩耗に強い超硬合金を材料として、工具や金型を作っています。

スライドには「75th」と書かれたビール缶の写真を掲載しています。創業時にダイスプラグを作り始め、その後さらに精度の難しいものとして、飲料缶を作る工具に挑戦しました。

その挑戦がうまくいった結果、当社は大きく発展しました。75周年の感謝を込めて、またこれからも難しいものに挑戦していく気持ちでこのビール缶を作り、従業員に配りました。

当社は、素材開発力や精密加工技術に強みを持っています。現在は国内だけでなく、海外の2ヶ国に生産拠点を、5ヶ国に営業拠点を展開しています。

関本圭吾氏(以下、関本):御社は歴史が非常に長いですが、どのような経緯でダイスに取り組み始めたのかについて教えてください。春田社長にとっても随分前のことかもしれませんが、なぜ超硬合金製のダイスにチャレンジしたのか、成り立ちなどをご存じでしょうか。

春田:私も聞いた話になりますが、創業者が職業軍人で、戦争が終わった時はなかなか職業に就きにくかったそうです。そこでダイスを磨く仕事をしていた親類のところに修行に入ったそうです。

しかし、1950年に朝鮮戦争が始まり、鉄やダイスが必要になりました。そこで、創業者が生まれた九州で、一人でダイスの事業を興したところから始まったと聞いています。

関本:ダイスは慣れていたビジネスでもあり、日本史の授業で習う朝鮮特需に近いものだったのですね。

春田:おっしゃるとおりです。朝鮮特需そのものだと思っています。

関本:そこからスタートして、今なお続けられているというのは素晴らしいと思います。

ものづくりを支える冨士ダイスの製品

春田:当社の工具や金型は、実は、みなさまがふだんの生活で使われている身近な製品を作る際に使われています。

例えば、スライドに記載しているようなスマートフォンやさまざまな電子機器に使われている半導体、エアコンなどの家電やパイプ椅子、ビールやジュースなどの飲料缶、そして電池缶などです。

他にも、飛行機、車、自転車、オートバイといった輸送関係や、鉄道架線、電線などのインフラ設備など、さまざまなところに使われている鉄系の部品にも使われています。また人工ダイヤモンドを作る工具や、それと同じ技術によって新たな触媒を作る工具など、さまざまな工具を作っています。

代表的な製品例

春田:当社の代表的な製品をご説明します。スライド左側に記載しているのが、当社の工具や製品金型です。これらを使用して出来上がるものが、パイプや線材、電線やケーブルです。異形管とは、建築の精密な部分に使われたり、オートバイの後ろにあるエンジンから排気を出す部分などに使われたりするものです。

最終的な製品は、家電、飛行機などの輸送機器、鉄道の架線・電線といったインフラ設備に使われています。

代表的な製品例

春田:金型については、先ほどお話しした飲料缶や電池缶などの製缶工具を幅広く作っています。また今では、スマホやミラーレス、一眼レフのレンズ、赤外線のレンズ、自動車に搭載されているレンズの金型のほか、半導体の封止材の金型を作っています。

代表的な製品例

春田:スライドは鍛造用の工具・金型です。自動車製品や人工ダイヤモンドなどを作る時に使われる超高圧発生装置も、当社の製品を使って作られています。

このように、みなさまの周りになんとなく存在していますが、当社の名前が出ることはあまりないと思います。今ご紹介した製品を使用する機会がありましたら、ぜひ当社を少し思い出していただけると非常にうれしいです。

成長分野と冨士ダイスの関係

春田:スライドには、成長分野として最近手がけているものを記載しています。現在は、先ほどご説明したとおり、ガラスレンズ成形において、当社の金型・工具が使われています。

電気自動車は、ガソリンではなくモーターで動かします。そのモーターを作る工具・金型にも当社の材料や製品が使われています。電池も同様です。

半導体については、半導体を製造する機械装置の部品として納めているものがあります。また、これから流行すると言われているデータセンターの光通信に介在するコネクタを作る工具にも、当社の製品が使われています。

関本:成長分野のお話を業績に落とし込んだ時の考え方について、2点おうかがいします。

依頼を受けるのはもちろんのこと、需要が高まったり、新しいものが出てきたりすることで、そこに向けて御社が提供する製品やエンドのデバイスが増えるのに伴い、売上高や業績が伸びてきたという理解でよいでしょうか?

春田:おっしゃるとおりです。産業の進化や変化にしたがって、当社の取り扱う製品が増えていったと言えます。取引先の数も非常に増えてきています。

関本:お客さまからの「このようなものを作りたい」という声に対して、御社からご提案することもありますか?

春田:あります。加工技術は非常に難しいため、お声がけいただいてから当社も勉強して、なんとかお客さまに届けようとしています。

またお客さまから「このような材料が欲しい」と言われれば、材料も開発します。材料と加工の課題を併せて挑戦してきたのが、当社の今までの歴史だと思っています。

関本:EV用のモーターコアや、自動運転におけるドライバー支援のためのセンサーはまさに今伸びており、今後もさらに拡大していくと思います。このように、他にも期待できる製品があれば教えてください。

春田:まさにスライドに記載している成長分野をはじめ、自動車についてはハイブリッドから世界的には電気自動車へ続々と変わっていくと思います。そうした中では、モーターコアや電池などが増えていくと考えています。

自動運転という意味では、センサーに使われるレンズ用の金型はこれからさらに使われていくと思います。そのような点が、これからさらに伸びを期待できると考えています。

関本:お客さまのほうでそれらを増産したり、ラインを増やそうとしたりする時などに、御社に発注がかかるのですね。

春田:おっしゃるとおりです。

成長分野と冨士ダイスの関係

春田:新しい試みとなる最近の取り組みについてご説明します。これまでは、当社が工具や金型をお客さまにお届けして、部品や最終製品はお客さまが作るというかたちでしたが、このたび人工ダイヤモンドを作る工具を活用し、当社で触媒を開発しました。

この触媒は、非常に多くの水素を発生させることができます。電気をあまり使わずに水素を発生させられるため、電極というかたちにして事業化できないかを検討しているところです。

02 ニッチトップを支える「開発力」×「技術力」×「営業力」

春田:ニッチトップを支える「開発力」と「技術力」と「営業力」について、ご説明します。

耐摩耗工具専業国内トップメーカー

春田:当社は長年にわたり、超硬耐摩耗工具で国内シェアのトップを占めています。当社は素材を提供するだけではなく、素材を加工して提供するため、素材だけの価格と比べると3倍から4倍の付加価値があります。

そのような点が当社の強みであり、安定してトップシェアを握っていられる要因だと思っています。

一貫生産体制により様々なオーダーに対応

スライドに記載しているのは、設計から完成品をお客さまにお届けするまでの製造工程です。最初の受注設計では、営業担当者が実際にお客さまの現場に行き、生産技術などの難しい話をつかんできます。

受注後は原料から作り始めます。原料を押し固めて、焼結によって合金にします。最終的には、お客さまと打ち合わせた寸法にしてお届けします。

金属の粉末を固めて焼くことを冶金と言い、それをさらに加工します。多岐にわたる要望に応えられるように、さまざまな原料・材料を用意しています。多様な加工もできます。こうした点が、当社の強みになっていると思います。

関本:製品の性質上、一貫生産体制は大きな強みだと思います。一方で、「他社にはできないのだろうか?」と思うのが投資家です。この点について御社が認識されていることはありますか?

春田:当社で一貫生産体制ができるようになったのは、偶然のことでした。最初は研磨の技術しかなかったため、その後、加工を極めていこうと考えていました。しかし、創業者が「それだけでは駄目だ」「さまざまな材料を使えるようにならないと、お客さまの要望に応えられない」と考え、早い段階で両方に手を出したことが正解だったのだと思います。

加工は、さらに難しいものになります。飲料缶や半導体など、絶えず精度の厳しいものを追求していくために、挑戦し続けてくることができました。その結果、当社はその両方を持つことができました。競合他社では、加工への対応があまりできないと思います。

難しかったり、大きいものが作れなかったりといった課題に挑戦し続けてきたことが、当社の成功につながっていると思っています。

関本:冶金技術は化学的である一方で、加工は物理的な分野であり、両方を持つことは相当難しいと思います。

春田:おっしゃるとおりです。

高い評価を受ける素材開発力

春田:当社の開発力についてご説明します。当社は高精度なガラスレンズを作る金型の新素材の開発で「2023年度日本機械工具工業会賞」において、最も栄誉ある「技術功績大賞」を受賞することができました。

また、環境面についても廃棄物の削減に取り組んでおり、同時に「環境特別賞」でも表彰されました。

高い評価を受ける素材開発力・加工技術力

春田:業界においてだけではなく、日刊工業新聞社が主催する「2023年 第66回十大新製品賞」でも「高熱膨張ガラス成形用新硬質材料【フジロイ TR05】」が「モノづくり賞」を受賞できました。この材料は非常に期待できると思っています。

また、当社が作った材料のため自分たちで加工できるのは当然ではありますが、この材料を精密に加工する技術についても非常に優秀だと評価され、「2024年度(第8回)精密工学会ものづくり賞」で「最優秀賞」を受賞しました。スライド右側に、昨年9月に表彰された際の写真を掲載しています。

受注生産・直販体制、取引先は約3千社に上る

春田:高い素材開発力と加工技術力を持っていることで、お客さまからオーダーをいただき、受注生産・直接販売を行うのが当社の企業形態です。今では、グループ全体で約3,000社の幅広いお客さまと取引しています。

スライドのグラフが示すように、輸送用機械や鉄鋼が主力ですが、非鉄金属・金属製品、生産・業務用機械、電機・電子、そして素材の提供がそれぞれ約15パーセントとなっています。このように、幅広い産業のお客さまと取引しています。

関本:スライドには御社の競争力や強みが示されています。これ以外にも、例えば「御社の工具でなければ作れない」といったようなものはありますか?

春田:そのようなものはなかなかありませんが、高い競争力があるとすれば、半導体の製造装置に使われている、ガイドレールがあります。これは非常に精密なもので、当社の製品がないと製造装置ができません。これについては自慢できると思います。

また、こちらは作り方が2種類あるためなんともいえないのですが、エアコンの中に入っている銅管があり、これには溝が入っています。その溝付きの銅管を転写して作るロールという製品を作っているところは、少ないと思います。

また、当社の人工ダイヤモンドを作る超高圧発生装置用の工具では、大きいものでは約500キロのものを作れます。これについては、本当に当社でしかできないと思っています。人工ダイヤモンドはかなり小さいものも作れますが、大きいものだけで言えば当社がナンバーワンだと思っています。

関本:先ほどのお話でもありましたが、大きなものの加工は他社ではなかなかできないのですね。素材と加工の両方に光るものがあってこそできることがあるわけですね。

春田:おっしゃるとおりです。

工具業界 ポジショニングマップ(上場企業)

春田:スライドは工具業界のポジショニングマップです。先ほどからお話ししているとおり、当社が作っているのは耐摩耗工具です。金属のような硬いものに力を加えて、それを所定の形に成形するのが当社の工具です。

そのほかに超硬で使われているものとしては、「切る」というところに焦点を当てた切削工具があります。この分野は大手の会社が多く、群雄割拠で非常に激しい市場となっています。

一方で、耐摩耗工具はマーケットは小さいものの、競合が少ない状況です。スライド左側のように競合が多いところで競争していないことが、当社の特徴だと思います。

03 成長への道筋と株主還元

春田:当社の成長への道筋と株主還元についてご説明します。

中期経営計画2026 連結数値目標

春田:「中期経営計画2026」という中期経営計画を作り、今年公表しました。今年の業績予想は、若干下げるかたちで修正しています。

これは自動車産業と鉄鋼産業が非常に悪かったことが原因です。利益が出ていないわけではありませんが、昨年と同程度となっています。こちらはマーケットの状況を甘く見すぎたと考えています。

当社は受注高180億円を超える実績をもっており、このくらいの注文ならすぐに対応できる構えのため、限界利益率が高くなっています。そのため固定費が非常に高く、売上が想定よりも少しでも下回ると利益率が悪くなり、一方で2026年度や2027年度の目標のように今までの額を超えると、経常利益はスライドに示すように高く出てきます。

「売上高が10億円しか増えないのに5億円も利益が増えるのはなぜか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、このように操業度が上がると、利益率も非常に高くなります。

2025年3月期 業績見通し

春田:今期の業績見通しです。自動車部品メーカーの在庫調整や中国経済の停滞が売上に大きく響きました。スライドに記載のとおり、今期の業績予想は売上高は前期比1.9パーセント増の170億円、営業利益は15.9パーセント減の6億8,000万円です。

中期経営計画については来年に向けて準備を行っているため、最終的には持ち直すと思っています。

中期経営計画2026(2025年3月期-2027年3月期):重要施策

春田:中期経営計画で立てた基本コンセプトは「変化に対応できる企業体質への転換」です。先ほど「挑戦することで企業が大きくなってきた」とお伝えしましたが、その挑戦が甘いのではないかということで、もう一回、76年目から100年目に向かって大きく成長するために、企業体質を変化に対応できるようにすることを心意気としました。そのために、5つの重要施策を定めました。

1つ目は「経営基盤の強化」です。サステナビリティ経営とDX化を軸に組織力を高めていきます。今まではどちらかというと「どんぶり勘定」的なところもありましたが、DXを使って「ドリブン経営」というかたちにしたいと思っています。

2つ目は「生産性向上・業務効率化」です。これはメーカーの宿命であると考えています。今まではどちらかというと従業員の技能に重点を置いていましたが、これからは技術中心ということで、DXを通して自動化や省力化を実現していきたいと考えています。

3つ目は「海外事業の飛躍」です。これから伸びるマーケットは、東南アジアや中国、インドだと考えています。そのような伸びしろのあるところに、日本国内で展開してきたものをさらに広げていきたいと思っています。

北米については、最近は物価高と聞いており、当社の製品でも価格で対応できるのではないかと考えましたが、トランプ大統領の関税の話もあり、これについては考え直す必要があります。

4つ目は「脱炭素・循環型社会への貢献」です。現在、サステナビリティ経営としてスライドに記載しているようなことに取り組んでいます。

リサイクル事業については、当社の使っている原料は作られるところや採掘されるところが限られており、これを国内で循環させてリサイクル率を上げるため、早めに立ち上げたいと考えています。また先ほどお伝えした水素や自動運転などへの取り組みも、今後出てくるのではないかと思っています。

5つ目は「新規事業の確立」です。今までは超硬耐摩耗工具にこだわってきましたが、先ほどお伝えした電極のように、これまでとは違ったものにも挑戦し、多極化、多角化していくことにも目を向けていこうと考えています。

重要施策① 経営基盤の強化

春田:5つの重要施策の進捗と今後の取り組みについてご説明します。まず、1つ目の重要施策である「経営基盤の強化」です。基幹システムはすでに刷新し、昨年10月に稼働開始しています。まだ半年も経っていませんが、来年度にはこちらを目玉に業務効率化を進めていきます。

また、安全と品質についてもう一度確認していきます。今年も、大手を含めいろいろなところで品質の問題が出たと思います。私どもも、ものづくりを安易な気持ちではなく、丁寧に行っていくことを再度確認し、それを効率化につなげていくために品質保証本部を新設しました。

また人的資本という意味では、何事も自分で考え、業務を遂行できる自立型人財の育成を強化します。

当社は創業者がおり、今まではオーナー型の企業でした。しかし10年前に上場を果たし、オーナー型でない会社に転換していくためには、自立型人財が非常に大切になってきます。またそうした人たちが楽しくイキイキできる、働きがいのある会社が作れればよいと思っています。

さらに、昨年12月にサステナビリティレポートを発行しました。また先ほどお話ししたとおり、これからさらに変わっていかなければいけないという意味で、ブランディングプロジェクトを立ち上げています。これについてもそろそろ結果が出てくるため、来年以降新しい動きをしていきたいと考えています。

重要施策② 生産性向上・業務効率化

春田:2つ目の重要施策である「生産性向上・業務効率化」です。今まで技能者が行っていた作業にロボットを導入したり、人が一人一つずつ機械の前に立って作業しなければならなかった工程を自動機に切り替えたりしています。

自動機に切り替えることでオペレーションしている人たちを少なくし、別の場所からデータを送り込むかたちで、製造ラインを変えていくことなどを計画しているところです。

また、材料を大事に使う試みを行っています。これもAIなどを使って「どのように材料を効率よく切り出せるか?」などを検討しており、来年度から実行に移す予定です。

関本:生産性向上・業務効率化についてうかがいます。そもそもの問題として、この加工技術・素材技術を考えた時に、技術者の数がいないと難しいところを自動化・省力化でカバーできるのでしょうか?

もしくは、最後は人の手に頼るところがあるため、人への依存が一定存在するのでしょうか? この部分についてどのように認識されていますか?

春田:これまでは完全に人依存ということで、技能と技術でいえば技能が強くなっていました。最近は工作機械についても数値制御する設備などが入ってきて、入社したての経験が浅い方が使ってもきちんと製品ができるようなものも出てきています。

これからは「技能×技術」というハイブリッド型にしつつ、まだ技能でしかできないものはそれを大切にして残していきます。一方、技術で事足りるものは全面的に技術に移していくことも、話し合って進めている最中です。

関本:最近は機械も進歩してきていますが、自動化を進められるようになってきた印象はありますか?

春田:あります。当社の製品は取引先の数が多いために少量多品種であり、自動化はなかなか難しいところがあります。しかし困難だからといってそこに踏みとどまっていたら先行きがありません。今、自動化を少しずつ始めてかなり成果を出してきており、「考えればできる」という挑戦がキーワードになっていると思います。

重要施策③ 海外事業の飛躍

春田:3つ目の重要施策である「海外事業の飛躍」です。売上を拡大していくために、海外に力を入れていきたいと考えています。まず中国ではBYDのように、電気自動車において最先端をいっているところがあります。当社はそうしたところに半導体やカメラレンズ、電池の金型など、素材での提供というかたちを含めて供給ができています。

昨年には東莞に事業所を作りました。知名度が上がれば売上が増えるため、実際、最初に予定したほどではないものの、ここにきて徐々に伸びてきています。このように、中国で売上が増えているということで、もう少し他の地域にも展開していければと考えています。

ASEANは、自動車生産がかなり少なくなったあおりを受けています。ただ、タイについては、日本の生産拠点と同じようないろいろな技術を持っており、そのような意味で多くの会社と取引ができています。売上は若干減っているものの、利益的には遜色はありません。

インドネシアは少し伸び悩んでいますが、最近は電池を作ることに力を入れていることもあり、そのような引き合いが非常に増えています。そのため、これから当社の電池缶製造がインドネシアで活きていくことを期待しており、重点に活動しているところです。

インドについては、実は休眠しています。10年前に設立し、工場を出すという話が決まりかけましたが、どうも需要がないということで、いったん休ませることになりました。

これは良い撤退だったと思いますが、ここへきてその時以上の売上が実績として上がっており、V字回復ではありませんが、Y字回復ぐらいまでは来ていると思います。もう少し続くと本当にV字回復できるのではないかということで、2027年には営業を再開したいと考えています。

重要施策④ 脱炭素・循環型社会への貢献

春田:4つ目の重要施策は「脱炭素・循環型社会への貢献」です。次世代自動車については基本的に継続して取り組んでおり、脱炭素・循環型社会への貢献についておわかりいただけると思います。リサイクルについては、先ほど触れたとおりです。

省資源については、タングステンやコバルトを使わない超硬合金の耐摩耗工具を作ろうということで、昨年リリースしました。実験レベルでは非常に良い結果が出たものの、お客さまの使用条件にうまくマッチングしないため、現在改良版を作っている最中です。

このように、タングステンやコバルトを使わない硬い合金を作ることが大事だと思っています。ちなみにセラミックスのような合金も作っています。このように、硬い合金はまだほかにもあるため、そうしたものを今後も作り続けていくことで省資源へ取り組んでいきたいと思います。

次世代エネルギーについては、先ほどご説明した水素を発生する装置として電極を作っています。各社と一緒に研究を行っている最中であり、今後期待できると考えています。

重要施策⑤ 新規事業の確立

春田:5つ目の重要施策である「新規事業の確立」です。今まで「新規事業を立ち上げる」と言いながらメンバーも揃わず、プロジェクトを片手間で行っていました。しかし「本気を出さなければ駄目だ。専門の部署を立ち上げよう。」ということで、人数は少ないながらも、新事業開発室を作りました。

M&Aについては進行中のものもあり、自動化や合理化、ロボット化について一緒に取り組める会社を探し始めています。まだみなさまにお話できるところまでは至っていませんが、こうした取り組みを継続的に行っていきたいと思っています。

目標指標

春田:株主還元や資本コストについてご説明します。今まで株主還元については配当性向を中心に考えていましたが、これからはDOEに変更します。基本的には安定して株主還元し、さらに少し手厚くしていくことを考えました。

目標はスライドに記載のとおり、ROE7パーセント以上、PBR1倍以上、DOE4パーセントを目途としています。現在DOEは約2パーセントのため、今のおよそ倍だと考えています。

2025年3月期 株主還元・配当

春田:配当については、昨年は記念配当があったため1株当たり32円でしたが、2025年3月期は1株当たり40円で、DOE4パーセントを目指しています。

株価については昨年低めで推移していたのが、今年は少し高止まりした状態となっています。さらにもう何百円か上げていかなければいけないと思っています。

当社コーポレートサイト「投資家情報」ページのご紹介

春田:昨年8月にコーポレートサイトの「投資家情報」ページをリニューアルしました。さまざまなことを見ていただけるように、これからも積極的に開示していきたいと思っています。投資家情報のページをご覧になれば、私のお話以上に、より理解していただけるのではないかと思っています。

私からのご説明はこれで終了となります。ありがとうございました。

質疑応答:国内と海外の売上比率について

荒井沙織氏(以下、荒井):「国内と海外での売上比率を、できれば地域別で教えていただけないでしょうか?」というご質問です。

ここから先は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

※本登録案内のメールが確認できない場合、迷惑メールフォルダやゴミ箱に自動的に振り分けられている可能性がありますので、今一度ご確認いただきますようお願いいたします。