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津村尚史氏:本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。株式会社ジェイテックコーポレーション代表取締役社長の津村尚史です。これより、2025年6月期第2四半期決算についてご報告します。
本日は、ビジネスセグメント、2025年6月期第2四半期の業績、2025年6月期の業績見通し、2022年に策定した「Innovation2030」の現状についてご説明します。
ビジネスセグメント
当社が展開している4つの事業についてご説明します。産学連携で実用化に成功したX線ナノ集光ミラーを中心としたオプティカル事業、実用化に力を入れている次世代加工・研磨装置を中心とした機器開発事業、設備投資により開発、販売を進めている各種自動細胞培養装置を中心としたライフサイエンス事業、そして2021年に子会社化した電子科学事業です。
2025/6期2Q 決算:損益状況
2025年6月期の第2四半期の業績についてご説明します。2025年6月期第2四半期の損益状況です。売上高は前年同期比で微増でした。売上総利益は改善しましたが、生産性の向上や研究開発の促進を目的とした人員増に伴う人件費のアップにより、営業利益、当期純利益等の各種利益は前年同期比で低下しました。
2025/6期2Q 決算:四半期ごとの業績推移
四半期ごとの業績の推移です。スライドに記載のとおり、当社は毎年特に第4四半期に売上が偏重しているのが特徴です。第2四半期のみ(10~12月)の売上は、前年同期比で増収となりました。しかし、収益の大きかったオプティカル事業では、第2四半期は製造難易度の高い高精度のX線ミラーの出荷が多く、工数増により売上総利益率は前年同期比で低下しました。
2025/6期2Q 決算:事業セグメント別
事業セグメント別の業績です。オプティカル事業では、第1四半期、第2四半期とも順調に前年同期比で売上が増加しています。一方、ライフサイエンス事業・機器開発事業においては、大型案件が下期に集中することを見込んでおり、第1四半期、第2四半期とも、売上は低調でした。また、電子科学事業は主力装置の売上や受託分析の売上が順調に推移しています。
2025/6期2Q 決算:地域別
地域(出荷先)別の売上です。特にオプティカル事業の中国向けが前年同期比で倍増しており、日本を含むアジア市場の拡大が売上を牽引しました。2025年1月に中国安徽省合肥市の放射光施設からの大量受注の情報開示をしたように、今後もアジア市場での売上の拡大が予想されます。
2025/6期2Q 決算:顧客属性別
顧客属性別の売上です。第2四半期はオプティカル事業の売上比率が高く、大学や公的研究機関の取引(BtoG)が主体でした。グループの事業全体で見ると、例年のように最終的には企業との取引(BtoB)の増加傾向が続く見通しです。
2025/6期2Q 決算:投資・キャッシュフロー
投資およびキャッシュフローです。第2四半期までの累計の研究開発費は前年同期並みです。ただし、生産性向上のための設備投資は下期に増加する見込みです。キャッシュフローに関しては、売上債権の回収による収入増によって、フリーキャッシュフローは前期比で大幅にプラスとなりました。
2025/6期2Q 決算:財務の状況
財務状況に関しては特筆すべき点はありませんが、売上債権の回収が進んだため、現預金が増加しました。
2025/6期 業績見通し
2025年6月期の業績見通しについてご説明します。例年と同様、オプティカル事業だけでなく、ライフサイエンス事業、機器開発事業ともに売上は第4四半期に集中し、昨年と比べて3割増の26億4,000万円を見込んでいます。ただし、原価の上昇や開発投資の影響で各種利益率は昨年より若干下回ると予想しています。
2025/6期2Q 受注残高
2025年6月期第2四半期時点の受注残高です。ライフサイエンス・機器開発事業を除いて、前期とほぼ同程度の22億7,700万円となりました。昨年同様に、特にアジア市場の旺盛な受注を背景にしてオプティカル事業の受注残が積み上がり、来期以降も収益に大きく貢献すると考えています。
2025/6期 業績見通し:セグメント別見通しのサマリー、計画のポイント
2025年6月期の業績の見通しです。第2四半期時点での進捗率はまだ21.4パーセントにとどまっていますが、例年と同様、今年度も主に第4四半期に売上が集中するためです。
各事業別の見通しおよび今後の計画についてご説明します。オプティカル事業では、アジア市場で中国を中心に台湾、韓国の受注が旺盛で、日本、欧米にある複数の先端放射光施設のアップグレードを控えています。半導体、宇宙分野向け高精度光学部品の共同研究が盛んで、受注も増えてきています。
機器開発事業では、半導体事業のさまざまな加工ニーズに応えるため、4つの独自の超精密表面加工技術をもとに実用化を進めています。
事業化が最も進んでいるプラズマCVM加工技術においては、第1弾として、水晶デバイス用ウェハを対象に、厚みを均一にする加工装置の実用化に成功し、量産の自動化システムへと展開しました。今後は、潜在市場の掘り起こしを進め、シリコン系の半導体材料加工への展開を図っています。
事業化が次に進んでいるPAP(プラズマ援用研磨法)を用いた加工装置については、特にダイヤモンド基板の高速・高精度加工システムへの展開を図っています。ECMP(イオン電導性物質)を用いた電気化学機械研磨技術については、従来のCMP加工装置では加工困難だったSiCウェハの研磨を対象にプロセス確立を図り、装置参入を進めています。
CARE(触媒作用を利用した表面加工技術)では、SAWデバイス用ウェハの原子レベル表面創成技術の実用化開発を進めています。
ライフサイエンス事業では、再生医療・創薬分野における働き方改革に寄与する「自動細胞培養装置」のラインナップ拡大と、カスタムメイドである「大型細胞培養自動化システム」の積極的な市場展開を図り、海外への参入を図っています。
研究機関や企業との共同開発により開発に成功した幹細胞治療向けの幹細胞分離装置を用いて、認知症治療への展開を進めています。産業技術総合研究所と長年研究開発を進めてきた独自の細胞培養技術「CELLFLOAT」を用いた軟骨再生医療は、東京大学などと研究開発を進め、来年度には医師主導の治験を開始する予定です。
子会社の電子科学事業についてです。国内の半導体業界から、主力の昇温脱離分析装置「TDS1200II」の受注が第2四半期の売上に貢献しました。第1四半期に初めて中国市場での装置販売実績を上げ、今後の市場拡大に期待しています。
半導体業界等のニーズに対応するため、シリコン試料高性能温度測定機能などを備えた「TDS1200II」のバージョンアップや、水素検出専用の分析装置を開発中です。受託分析業務にも使用している「Cryo TDS-100H2」やシリコン試料高性能温度測定機能により受託分析業務の拡大を図っていきます。
Innovation2030の実現に向けて
2022年春に策定した「Innovation2030」の現状についてご報告します。当社は、これまでのニッチトップ戦略で培った独自技術を半導体分野のように大きな市場、またこれから成長が見込まれる再生医療分野に適用・展開するために、2022年春に長期成長戦略「Innovation2030」を発表しました。
Innovation2030の売上目標
4つのセグメントをもとに各々の成長を図り、売上150億円、経常利益率25パーセント以上を目指します。計画発表から2年半経過した現状の進捗状況についてご説明します。
M&Aに関しては、2021年に子会社化した電子科学事業は、当社とのシナジー効果により収益も着実に拡大傾向にあります。さらに複数社のM&Aを計画しています。
オプティカル事業の既存市場では、次世代ミラーとして期待される形状可変ミラーや、2022年にエスサーフェステクノロジーズと技術提携をして開発したチャネルカット結晶など、新製品も順調に受注しています。
新規市場として、半導体分野では各種露光、検査用や窓材など光学部品も積極的に受注活動を推進しています。
ライフサイエンス事業においては、独自のバイオ技術が評価され、本技術を使って研究開発を進められている先生も増え、当社の認知度も高まってきています。また、自動細胞培養装置においては、当社の現状の市場シェアを維持すれば、市場拡大に伴い、バイオ産業の成長とともに、売上は拡大すると考えています。再生医療事業や医療機器の開発も順調です。
最も力を入れている機器開発事業においては、プラズマCVM、PAP、CARE加工技術だけでなく、ECMP加工技術も加わり、さまざまな次世代ウェハに適用範囲を広げています。多くの半導体デバイスメーカーからの各種ウェハのテスト加工を積極的に実施しています。
一昨年、アメリカのローレンス・リバモア国立研究所が、レーザー核融合の点火に世界で初めて成功しました。それ以来、同じレーザー核融合方式であるEX-Fusionが注目されています。当社は以前から、その中心のユニットとなるホルダーやマニピュレーターの開発を進めており、技術提携しています。
オプティカル事業 独自の新規光学部品により放射光施設市場からより大きな半導体装置市場へ
「Innovation2030」を実現するために、期間をPhase 01からPhase 03に分けて、計画を立てています。Phase 01は、成長のための土台作りの期間で、2030年度の売上達成に向けて研究開発に注力しています。今年度は、Phase 01の最終年度に当たります。
Phase 02は、各事業における研究成果をもとにニーズを顕在化し、実際の売上として実証する段階です。Phase 03は、各事業の収益を確実なものにし、さらに飛躍する期間と考えています。
例えば、オプティカル事業におけるX線ミラーは、国内外の放射光施設やX線自由電子レーザー施設において、世界トップの表面形状精度と評価されています。現在も、海外の競合企業に対して、加工精度で優位性を保持しています。
回転体ミラーや形状可変ミラー、X線結晶部品(チャネルカット結晶)など、新製品の開発・販売に成功し、本事業でのトップ企業としての技術的優位性の維持を図り、実績を上げてきました。
今後は、さらに、オプティカル事業における継続的で着実な収益拡大を目指します。そのために、X線ミラーを実現しているナノ計測、ナノ加工計測技術をもとに、現在の大学研究機関向けのBtoGから、市場規模が格段に大きな半導体関連産業などのBtoBへの展開を図っていきます。
例えば、露光装置や検査装置、レーザーの窓材に用いる光学部品については、複数のメーカーと共同開発を進めています。それらの分野でもトップ企業を目指すために、サポイン事業などの補助研究事業により研究成果を出しています。
現在は半導体関連の国家プロジェクトに複数参画し、その技術成果をもとに、2027年度頃には半導体分野でも大きく売上に寄与することを目指しています。
機器開発事業 独自の加工・研磨技術を半導体加工用装置市場へ
機器開発事業においては、現在4つの独自の超精密表面加工技術を用いて、主に半導体デバイスメーカーを対象に実用化を進めています。プラズマCVM加工技術を用いた水晶ウェハ加工装置の事業化が先行して進んでいます。
第1弾として、水晶デバイス用ウェハを対象に、厚みを均一にする加工装置の実用化に成功しました。単体の加工機から量産の自動化システムへと展開しています。主に水晶振動子のメーカーに販売を促進し、国内外のメーカーに対して、すでに複数台の量産システムを納入しています。
今後は、潜在市場の掘り起こしを進めます。例えば、加工対象を高速LSI、低消費のLSI、パワーデバイス、MEMSなど、幅広い分野に用いられるSOIウェハなど、主部向けのウェハへ適用範囲を広げ、用途開発を進めています。
事業化が進んでいるPAPを用いた表面加工装置についてご説明します。ダイヤモンドのコーティング素材の超精密加工やヒートシンクなどの用途で実績を上げています。単体のテスト加工機をすでに複数台納入しており、一部、量産向けとして使用されるようになりました。現在は、ダイヤモンド基板の高速・高精度の加工システムへの適用を進めています。
半導体用のシリコンウェハの研磨には、従来、CMP加工装置が用いられていますが、当社のECMPは、イオン電導性物質による電気化学機械研磨技術を用いた加工装置です。主にパワー半導体に用いられるSiC基板において、通常のCMPと比べ、加工速度が優れています。現在、多くの半導体デバイスメーカーからの引き合いがあり、まずは評価用加工装置の納入を目指しています。
CAREは、パワー半導体向けに用いられるGaN、SiC基板だけでなく、スマートフォンなどに数多く用いられるSAWフィルター向けのLN/LT基板を対象に、幅広いテスト加工を実施しています。Phase 02の段階では、これらすべての加工装置に関して、本格的に量産システムへと展開していく予定です。
レーザー核融合に関しては、もう少し長いスパンで考えています。2030年までに、大きく飛躍することは想定していません。化石燃料に依存しない、次世代の究極のエネルギーを実現するためのレーザー核融合発電の実現に向けて、レーザー核融合では国内で有数のベンチャー企業であるEX-Fusionとの関係強化を図り、当社の加工計測技術も活かせるように、共同開発を進めていきます。
ライフサイエンス事業 独自の細胞培養及び分離技術により高齢化社会・人口減少積極的に対応
ライフサイエンス事業においては、各種自動培養装置に関して、創薬分野での細胞を用いた研究開発が重要視されています。研究者の働き方改革による自動化の推進など、企業からのニーズは高いものの、培養装置全体の市場規模がまだ黎明期を脱していないのが現状です。
当社は長年、自動培養装置を手がけており、認知度は高いです。バイオ産業の成長とともに、自動培養装置の市場が拡大していき、その中で現状の市場シェアを維持すれば、当社の売上も拡大すると考えています。
AMED(日本医療研究開発機構)に採択され、以前から進めている医療機器事業についてです。昨年、神戸医療産業都市機構および日本光電と進めていた脳梗塞治療のための単核球分離装置の開発に成功しました。今年度は早期に事業を推進するため、この幹細胞治療向けの分離装置を用いて、自由診療として認知症治療に適用を進めていく予定です。
長年、AMEDから支援を受け、東京大学や横浜市立大学と進めてきた軟骨の再生医療には、最近、再生医療会社であるジャパン・ティッシュエンジニアリングも加わりました。来年度から医師主導の治験を実施していきます。
Phase 03の段階では、再生医療の次の展開として、再生医療に関するコンサルティング業務だけでなく、美容整形分野への参入を検討していきます。
M&A シナジー効果のある企業との相乗的な成長を目指す
M&Aの事業についてです。2021年度に買収した電子科学とは、開発製造面だけでなく、営業面でもシナジー効果が発揮されつつあります。確実に売上を伸ばし、2030年度には売上10億円を目指しています。2027年および2029年頃を目処に、当社とシナジー効果が期待できる光学部品のメーカーや自動化装置メーカーの企業買収を目指しています。
マイルストーン Innovation2030までのマイルストーン
当社の長期計画「Innovation2030」は、4つの事業を収益の柱にして、2031年6月期に売上150億円、売上経常利益率25パーセント以上を目標にしています。参考までに、現在の当社の資本株式規模に基づくと、自己資本利益率(ROE)は20パーセント、1株当たりの利益(EPS)は400円となります。
機器開発事業 次世代加工・研磨装置の事業化状況
スライドには、現在、最も力を入れている機器開発事業の次世代加工・研磨装置の事業化状況を記載しています。事業が最も先行しているのは、プラズマCVMを用いた加工装置です。パイロットユーザーでの量産システムの成功をもとに、国内外の複数企業への納入実績があります。現在は、適用範囲をシリコンのウェハに広げて、用途開発を進めています。
次に事業化が進んでいるPAPでは、ダイヤモンド素材の精密加工やヒートシンクなどの用途で実績を上げています。現在は、単結晶や多結晶のダイヤモンドウェハにも適用を進めています。
ECMPは、複数の半導体デバイスメーカーからのテスト加工を実施しています。まずは、評価用の加工装置の納入を目指しています。CAREは、SAWデバイス用ウェハの原子レベル表面加工技術の実用化開発を進めている段階です。
以上、2025年6月期第2四半期決算についてご報告しました。