目次
渡邊充範氏(以下、渡邊):四国化成ホールディングス株式会社代表取締役社長の渡邊です。本日はお忙しい中、当社グループの決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日の内容は、決算発表の時に補足説明資料として開示した内容に沿って、2024年12月期の業績や通期業績見通し、資本コストや株価を意識した経営方針等についてご説明します。
その後に、現在取り組みの最中にある長期ビジョン「Challenge 1000」の進捗についてご報告します。
業績ハイライト
2024年12月期の連結業績についてご説明します。2024年12月期の連結業績ですが、売上高は前年比10.1パーセント増収の694億9,300万円、営業利益は21.5パーセント増益の97億4,100万円、経常利益は16.2パーセント増益の107億7,900万円、親会社株主に帰属する当期純利益は12.2パーセント増益の88億1,300万円となりました。
化学品事業の海外市場での販売が好調に推移して、売上高および営業利益・経常利益・当期純利益のいずれもが、過去最高を記録しました。
売上高と営業利益については、後ほどセグメント別に詳細にご説明します。為替レートの円安が進行して前期比で約11円の円安となったことで、損益へのインパクトは売上高で20億円、営業利益では12億円ほどのプラスとなっています。
売上高と営業利益の推移(通期累計)
セグメント別に見ていきます。化学品事業は、無機化成品・有機化成品・ファインケミカルの3つのサブセグメントがあります。売上高はこのすべてで前期を上回り、前期比66億円増収の499億3,000万円となりました。
建材事業は、当社が強みとする非住宅向け景観エクステリアの拡販に取り組みましたが、住宅向けの需要が落ち込み、2億3,000万円の減収で184億8,000万円となりました。
営業利益については、化学品事業は22億3,000万円増益の86億1,000万円、建材事業は5億5,000万円減益の9億5,000万円となりました。全体での営業利益率は14パーセントと、前期比1.3ポイントほど上昇しました。
営業利益の変動要因分析(通期累計)
営業利益の対前年の変動要因を示しています。化学品事業では、すべてのサブセグメントにおいて販売が好調に推移したほか、利益率の高いファインケミカル製品の販売が増加したことによって、粗利率が上昇しました。
これらの影響により、41億円の増益となりました。ここには為替の円安による20億円のプラス要因が含まれています。
一方、輸出に伴う海上運賃コストが前期比で上昇しており、為替の円安による円建てコストの増加もありました。それらを加味しても、営業利益に対しては13億円以上のプラス要因となりました。
建材事業では、アルミ地金をはじめとする原材料価格の高騰により収益性が悪化し、利益面でも伸び悩みました。
また販管費では、賃上げに伴う労務費の増加や一時的費用の増加もありましたが、トータルでは前期比17億円ほどの増益となっています。
売上高と営業利益の推移(四半期対比)
四半期ベースの推移です。売上高については、YoYで1億7,000万円の増収となり、QoQでは12億8,000万円の減収となりました。
化学品事業は、ファインケミカルの販売伸長によりYoY2億1,000万円の増収となりました。一方、建材事業は、景観エクステリアの販売は好調に推移しましたが、戸建て住宅着工戸数の不振を受けて、YoYでは3,000万円の減収となりました。
営業利益については、全社ではYoYで3億円、15.7パーセント増の増益となりました。QoQでは5億3,000万円、19.6パーセント減の減益となりました。
化学品事業は、YoYでは販売増を受けて増益となりましたが、QoQでは有機化成品の季節要因があり、第3四半期から第4四半期にかけて減益となりました。
建材事業は、YoYではアルミ地金等の原材料価格の高騰により減益となりましたが、QoQでは利益率の高い景観エクステリアの販売増加によって増益となりました。
セグメント別の概況 化学品事業 (四半期対比)
サブセグメント別の詳細についてお伝えします。まず化学品事業からご説明します。無機化成品は、YoYで2億1,000万円の増収、QoQで2億8,000万円増となりました。無機化成品の主力製品である不溶性硫黄は、北米等への拡販によって増収となりました。
プールの殺菌剤などの有機化成品は、YoYで3億7,000万円の減収、QoQで19億6,000万円減と低調に推移しました。顧客の設備の定期修繕や在庫調整によって減収となりました。
ファインケミカルは、YoYで3億7,000万円の増収、QoQで1億3,000万円減となりました。YoYでは、エレクトロニクス市況の回復に伴い増収となりましたが、QoQでは、第3四半期への納入前倒しが起こり反動減となっています。
ファインケミカルの新規分野「GliCAP」では、サーバー基板用途を中心に採用が進み、販売が好調に推移しています。また半導体プロセス材料は、一部で本採用が決定して需要が拡大しています。
次に営業利益です。化学品全体はYoYで3億3,000万円増益、QoQでは6億9,000万円減となりました。収益性の高いファインケミカルの販売が増加したことにより、YoYでは増益となりましたが、有機化成品の季節要因による販売減によって第3四半期から第4四半期にかけてのQoQでは減益となりました。
セグメント別の概況 建材事業 (四半期対比)
建材事業の概況です。売上高はYoYで3,000万円減、QoQでは5億1,000万円の増収となりました。戸建て住宅着工の不振により壁材や住宅エクステリアの販売が低調で、YoYでは微減となりました。
営業利益では、YoYで1億2,000万円減となりました。収益性の高い景観エクステリアの販売比率は増加しているものの、アルミ地金価格の高止まりによって収益性が悪化して減益となりました。
連結業績予想
2025年12月期の連結業績予想についてご説明します。連結売上高は、0.7パーセント増収の700億円です。化学品事業は、ファインケミカルの拡販を見込んで増収としています。建材事業も、この4月からの価格改定と景観エクステリアの拡販を見込んで増収としています。
一方営業利益は、3.5パーセント減益の94億円としています。化学品事業では、販売単価の低下や不溶性硫黄プラントの償却の開始に伴う固定費増を見込んでいます。建材事業は、価格改定による収益性の改善を見込んで増益としています。
経常利益は、9.1パーセント減益の98億円です。前期に計上された為替差益の増益効果が剥落して、減益幅が拡大しています。また当期純利益は、26.2パーセント減益の65億円で、経常利益と同様に前期計上されていた投資有価証券売却益による増益効果の剥落によるものです。
なお、為替レートの想定は、1USドルが150円、1ユーロが160円、1人民元が21円です。
設備投資及び減価償却費について
設備投資計画と減価償却費の見込みについてです。2025年12月期の設備投資額は、合わせて92億5,000万円を予定しています。これには、前期の2024年12月期当初に予定していた18億5,100万円ほどが出遅れて含まれています。
設備投資の主な内容は、スライド右側に記載しています。R&Dセンターの新棟関連費用が17億6,000万円、工場でのコージェネレーションシステムが13億円、すでに1月に竣工している不溶性硫黄の新プラントの建設は、当期の支払いベースで7億8,000万円が残っているため、これを計画しています。
なお、この不溶性硫黄新プラントの減価償却の開始は、2025年7月を予定しています。これによって、2025年度通期で約5億円、減価償却費が増加します。
その他、各種生産設備や研究開発設備に対する投資を計画しており、減価償却費は全体で10億2,800万円の増加を見込んでいます。
配当及び株主還元について
配当および株主還元についてです。長期ビジョン「Challenge 1000」の期間中において、連結業績を基準として配当性向30パーセント、総還元性向50パーセントを目指す株主還元方針を掲げています。また、配当額の決定指標として、DOE3パーセントを新たに設定し、配当性向とDOEの双方の指標を勘案しながら累進的配当を実現する方針としています。
スライドのグラフの右から2番目は、2024年12月期の実績です。1株当たりの配当は年間50円で、配当性向は26.1パーセントとなりました。また102億円を超える自社株買いを行って、総還元性向は141.4パーセントとなりました。
2024年2月に自社株買いを行った結果、通算での取得株式数は約1,400万株となり、発行済み株式は24パーセント減少しています。過去の自己株取得の買付単価は、いずれも現在の株価水準を大きく下回っており、当社の1株当たりの企業価値にとってプラスになったと評価しています。
また、2024年12月期より配当額の決定手法として導入した株主資本配当率(DOE)は、2.8パーセントとなりました。
今後、大規模投資等に伴って一時的に利益が減少した場合でも、累進配当を実施して株主さまへのコミットメントを継続していきます。なお、2025年の配当予想は、前期と同額の1株当たり年間50円としています。
一方で、当社はコーポレートガバナンス改革の最重要課題として、株式持合関係の解消を位置づけています。この解消に伴う自己株取得を継続していきます。
現状認識と当面の対応方針
資本コストや株価を意識した経営の対応方針についてご説明します。当社の株価は、PBR1倍を若干上回る水準で推移していますが、当社の潜在的な可能性から見ると、資本市場からの評価は依然として低い水準にとどまっていると認識しています。
スライド左側は2024年12月末のバランスシートです。事業投下資本は417億円で、各事業の税引き後営業利益(NOPAT)から計算した事業別ROICは、化学品事業が19.6パーセント、建材事業が7.7パーセントとなりました。この内訳については、後ほどROICツリーで確認します。
一方、金融資産と、それを支える余剰資本は729億円に達していることから、全社のROICは6.6パーセントに低下していて、WACC対比で満足できる水準ではありません。
「Challenge 1000」ではROE10パーセントを目標にしていますが、引き続きROE10パーセント超を安定的に達成することを目標に、事業戦略と財務戦略の両輪の強化に取り組みます。
ROICツリー分析
化学品事業、建材事業のROICツリーです。化学品事業では、ファインケミカル分野の収益性の高さが際立っていて、この分野の販売比率が高まるほど利益率が高まります。
この収益性は、研究開発力に依拠しています。スライド右側に研究開発費率を記載していますが、現在の研究開発費の水準は、統計データなどを見ても必ずしも高い水準ではないと認識しています。今後さらに積極的に研究開発投資を行って、経営資源を集中していきます。
建材事業の営業利益率も、同業種の業界では比較的高い水準にあります。これは当社が強みを持つ景観エクステリアの収益性の高さに起因するものです。
また、投下資本回転率についても両事業とも高い水準になっていますが、特に建材事業は固定資産投資の小ささが特色です。
当社は、アルミ形材を他社から購入していますが、大規模なアルミ押出設備を自社では持たずに、小回りの利く生産設備となっています。
これが資本回転率を向上させ、かつ生産現場の機動性の高さが、景観エクステリアの強みであると考えています。標準品やカタログ品ではなかなか対応できない、特注対応力の高さを支えています。
今後も、各指標をKPIとして継続的に計測し、株主のみなさまと共有していきます。
Challenge 1000 財務目標と進捗状況
長期ビジョン「Challenge 1000」に対する前期の主な活動内容についてご説明します。長期ビジョン「Challenge 1000」は、グループ全体および各事業において「2030年にありたい姿」を描き、そこに至る施策を時系列でスケジュールしていくバックキャスティング型の長期経営計画です。10年間の経営計画を、STAGE1からSTAGE3の3つの期間に分けています。
当社の「2030年にありたい姿」は、「独創力で、“一歩先行く提案"型企業」です。この“一歩先行く提案"というところが重要であり、「提案型企業」ではなく、さらにその“一歩先を行く提案"をしていこうと考えています。つまり、顧客の要望がある前に提案をしていくことを心がけています。
STAGE3である最終年度の2029年12月期における財務目標は、売上高1,000億円、営業利益150億円、ROE10パーセントとしています。
この「Challenge 1000」は10年計画ですが、「Challenge 1000」スタート時は、およそ500億円であった売上高が、現在は700億円程度まで伸び、利益面でも安定した利益率を維持しています。この成長は、全社員が「独創力で、“一歩先行く提案"型企業へ」という「2030年にありたい姿」を認識して行動に移していることの成果だと思います。
今期2025年12月期はSTAGE2の最終年度に当たります。これは先ほどご説明した2025年12月期の業績予想と同じ期間ですが、スライド左下の表に記載のとおり、当初の目標から売上高、営業利益とも20パーセントほどのギャップがあります。
あくまでSTAGE2は通過点であるため、最終の2029年12月期の最終目標やその先に向かって突き進んでいきますが、ここで一度、現状を詳細に認識する必要があると考え、「Challenge 1000」の総点検を、前年1年かけて実施しました。その各事業の現状および今後の方針を、これからご説明します。
各事業の進捗状況
各事業の進捗状況についてご説明します。まず無機化成品についてです。不溶性硫黄の新プラントの建設は順調に進捗して、1月に竣工しました。定率法の償却によって、今後数年間は減価償却費の負担が重くのしかかりますが、顧客の製品承認が完了する2026年からは、このプラントでなければ作れない高品質の製品による収益への貢献が見込まれます。
また環境への対応や硫黄(サルファー)を起点とした新規事業に向けて、各種のプロジェクトが進行しています。私どもは祖業が二硫化炭素という硫黄起点の化学品です。無機化成品のSTAGE2への目標値には、もう少しで到達するところまできています。
次に有機化成品についてです。STAGE2の目標値は達成見込みです。主な要因は、殺菌剤「ネオクロール」の主戦場である北米のプール市場での顧客基盤が強固であり、特に2022年度以降は好調な販売を維持していることが挙げられます。
また国内では、プール・風呂・排水処理・サニタリーといった水を使う幅広い分野に塩素化品の供給を行い、固形塩素剤供給メーカーとして高いシェアを有しています。
さらに、この塩素化品を応用した新しいBtoCの製品の開発・販売も進行中で、「WASHMANIA」シリーズのラインナップを拡充していきます。
続いてファインケミカルについてです。機能材料では、半導体プロセス材料の領域で計画以上の拡販が続いており、技術面でも研究開発の体制強化が進んでいます。
また樹脂改質剤の領域では、100度未満の低温条件下でも硬化・成形ができる点が評価され、2024年に四国地方発明表彰の文部科学大臣賞を受賞しています。
電子化学材料では、銅でできた回路と樹脂材料の密着性を向上させる新プロセスの「GliCAP」でAIサーバーなどの新領域での採用の獲得や、半導体パッケージ基板の量産ラインの実績化を実現しました。これらによって、ファインケミカルの2025年度の販売見込みは、STAGE2の目標値はもとより、STAGE3の目標値をすでに上回っています。
最後に建材事業についてです。近年、売上高はやや低調に推移していて、STAGE2の目標値とはギャップがあります。しかし当社が得意とする非住宅分野である景観エクステリアにリソースを集中して、収益性の向上を図っています。
また自社だけではなく、他社と得意分野を持ち寄る協業によって、当社の強みであるユニークな商品群や高い提案力、対応力を活かした新たな価値の提案に挑戦していきます。
今、日本市場は縮小を続けています。建材事業は現在ほぼ国内市場だけで事業を行っていますが、国内偏重から脱却をはかって、今後も成長が期待できる海外市場への展開を進めていきます。すでに海外営業部も設置して活動を開始しています。
総点検結果
最後に、前年に5年目を迎えた「Challenge 1000」の総点検の結果をご報告します。事業ごとに「ありたい姿」や、2029年度の財務目標とのギャップについて検証を行い、施策の達成の確度を見える化しています。計画に対する進捗状況は事業によってさまざまですが、これらを明らかにして、2029年度の売上高・利益見込みを把握しました。
また投資についても、設備投資・研究開発投資・人材投資を中心に検討しており、今後も検討を継続していきます。
今回の検証の結果、売上高はそれぞれの施策の実施により成長していくものの、現在行っている施策だけでは「Challenge 1000」の最終目標達成には不足していることを認識しました。
また利益面では、今後数年間で見込まれる大型投資は、2030年度以降に本格的に収益貢献するものが多く、この長期ビジョン「Challenge 1000」終盤の2028年度から2029年度をピークに、償却費負担が重くのしかかる見込みです。このため、利益においても目標値とはギャップが生じることを認識しました。
なお、総点検作業では、全社でのヒアリングを通じて、四国化成グループの成長を支える独自技術と、誠実な企業姿勢、あるいは、営業を中心とした細かな顧客対応が当社の強みであることを再認識したため、ここを今後もさらに強化して成長の起点としていきます。
この総点検の結果を受けて、今後の方針として、STAGE3は飛躍に向けた「体制づくり」の時期にし、2029年度の財務目標の達成を目指すだけではなく、2030年度以降の躍進に向けた施策を強化する方針とします。
売上高の目標についてのギャップは、各事業の持続的な成長をより強化するとともに、新規事業・M&Aの結実を目指します。なお、この新規事業・M&Aは、当社の強みを活かした分野・領域を検討し、2030年度以降の飛躍的成長につなげていく方針です。
これらの既存事業と新規事業の成長によって、売上高1,000億円達成を確実なものにしていきます。また利益面は、2029年度の財務目標の達成よりも、2030年度以降の成長投資を優先します。先ほども申し上げましたとおり、飛躍に向けた「体制づくり」を行っていきます。
特にファインケミカルは、現在すでにSTAGE3の目標値を超える勢いとお伝えしました。今はまさに飛躍の時であり、時を逸してはならないと強く認識しています。そのためファインケミカルについては、積極的な投資を行っていきます。
また、人材こそ競争力の源泉と考えて、「人的資本」への積極投資や、特に働く環境の整備に向けた投資なども強化し、付加価値の創出につなげていきます。
本年は「Challenge 1000」におけるSTAGE2の最終年度にあたり、STAGE3の策定の年としています。この策定が完了した時には、より精緻な2029年度における最終の姿をお示しできると考えていますので、この業績ガイダンスだけではなく、投資計画の内容や適正な財務体質のためのキャッシュアロケーションについても、次回ご説明できればと思います。
以上で、私からのご説明を終了します。引き続き当社へのご理解、ご協力を賜りますよう、よろしくお願いします。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:ファインケミカルにおける材料ごとの業況について
質問者:2024年12月期実績と2025年12月期業績予想における、ファインケミカルについてご質問です。エポキシ樹脂硬化剤や「タフエース」あたりの業況はどのようになっているでしょうか? 「GliCAP」の採用動向等も、差し支えない範囲でお聞かせください。
「GliCAP」については、前回の説明会で、2024年12月期上期までの売上が2023年12月期通期の2倍ほど伸びたというお話もありました。2024年12月期下期までの実績も、どのくらい伸びたのかの数字があればお聞かせください。
既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。