2024年12月期決算説明
今澤修氏:私は、1月1日に代表取締役社長に就任した今澤です。この度は、弊社の決算説明会をご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。当社は、昨年2024年に設立50周年を迎えることができました。このような大きな節目に、代表取締役社長を拝命しこの重責に身の引き締まる思いです。
今後は、当社の経営理念である「からだにやさしい未来の医療を築く」の実現と、ステークホルダーである株主さま、取引先さま、従業員の期待にこたえることで、持続的な成長と、さらなる企業価値向上に努めていきます。今後とも当社の事業にご理解、ご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。
それでは、2024年12月期の決算概要と次期の業績予想、10年の将来構想を基にした次期3ヶ年の中期経営計画、最後に、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について、ご説明します。
業界環境
はじめに、当社を取り巻く事業環境について、ご説明します。まず、国内の医療機器業界は、新型コロナウイルス感染症の影響はやわらぎ、医療機器の需要は正常化しています。
一方、海外では、中国における不動産市場の低迷により、中国経済に影響を与えているほか、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中での、地政学的リスクの高まりが、サプライチェーンに影響を与えました。
このような状況の下、当社グループは、新製品上市による営業活動の強化と、各生産拠点の生産性向上を図るとともに、新たな仕入先の探索により原価低減に努めました。あわせて、為替リスクのヘッジ対策も実施しました。
また、海外では、中国事業の販売強化に加え、今後のインドや東南アジアへの販路拡大のためのプロモーション活動を実施しました。
連結業績サマリー
これらの活動により、本年度の営業成績は、売上高130億3,000万円(前期比3.5パーセント増)、営業利益6億9,200万円(同じく13.8パーセント減)、経常利益7億5,000万円(同じく14.1パーセント減)、当期純利益8億4,000万円(同じく446.0パーセント増)となりました。
前期との比較では、売上高は、OEM販売が一部製品の終了により減少しましたが、自社販売と海外販売の好調により、全体では増加となりました。利益面は、円安による輸入仕入コストの増加や、原材料費の上昇などにより、売上原価率が上昇したことに加え、本社移転に伴い、一時的に経費が増加したため、営業利益と経常利益が減少しました。
一方、本年度は本社売却による特別利益を計上したほか、前期発生した繰延税金資産の取崩しが、当期はありませんので、当期純利益が大幅な増加となっています。
売上推移(販売形態別)
それでは、当期の売上高130億3,000万円を、自社販売、海外販売、OEM販売の3つの販売形態別に分けてご説明します。
まず、自社販売は、前期比3.8パーセント増と堅調でした。その中身は、泌尿器系の導尿関連製品が37億3,400万円、前期比9.9パーセントの増加となりました。フォーリートレイキットや「尿管狭窄」の治療に用いる尿管留置用ステントが順調に売上を伸ばしたこと、さらに、2023年4月に実施した販売価格改定の効果が、2024年は1年間フルに寄与したことで、前期を上回りました。
消化器系は、22億5,300万円、前期比2.9パーセントの減少となりました。減収の主な要因は、胃に栄養剤を直接投与する胃瘻関連製品が、競合先の新製品上市による影響を受け、前期を下回ったことによるものです。
以上により、自社販売全体の売上高は、泌尿器系製品の増加により、71億8,200万円、前期比は3.8パーセントの増加となりました。
次に、海外販売については、中国の販売と、欧州を中心としたその他の輸出販売に分けて、ご説明します。
まず、中国販売は、33億3,300万円、前期比7.9パーセントの増加となりました。主に増加した品目は、消化器系の腸閉塞治療用のイレウスチューブです。好調の要因は、中国各省における学術会議の活用や、重点病院における医師との連携により、内科的な治療法の一層の普及に向けた活動が功を奏したものです。また、人民元の為替変動により、1億9,100万円が増加しました。
つぎに、輸出販売は、11億1,700万円、前期比3.2パーセントの増加となりました。その中身は、泌尿器系製品が前年の高い販売実績の影響を受けて、欧州市場で減少しましたが、消化器系製品の中で、胃瘻関連製品が売上をけん引したものです。
これらにより、中国販売、輸出販売を合計した海外販売は46億800万円、前期比8.3パーセントの増加となりました。
最後に、OEM販売ですが、消化器系は新製品の販売好調により増加しましたが、一方で、血管系の一部製品の販売終了によりOEM販売の全体は大幅に減少しました。これらにより、OEM販売は12億3,900万円、前期比12.0パーセントの減少となりました。
売上構成(販売形態別)
以上、本年度の売上高は、OEM販売の減収を自社販売、海外販売がカバーし、全体で130億3,000万円、前期比3.5パーセント増加となりました。
販売費及び一般管理費
続いて、販売費及び一般管理費を人件費と経費に分けてご説明します。まず、販売費及び一般管理費は50億1,100万円、前期比3億3,600万円の増加となりました。人件費は、グループ各社の物価高を踏まえ、ベースアップを実施したことにより、28億8,200万円、前期比9,300万円の増加となりました。
次に経費は、今期の本社移転に伴い、旧本社の減価償却費が前倒しで発生したことや、移転先の新横浜オフィスと殿町イノベーションオフィスの環境整備費用の発生により2,600万円の増加となりました。
また、情報関連投資による消耗品費の増加に加え、自己株式取得に伴う支払手数料の発生などにより、全体では21億2,800万円、前期比2億4,300万円が増加しました。
営業利益分析
つぎに、営業利益の変動要因を、前期との比較でご説明します。まず、利益のプラス要因ですが、売上高における自社販売の値上効果により、2億3,000万円の増加となりました。また、仕入先の変更などコストダウンにより、2,300万円が増加しました。さらに、グループ全体の売上増加による要因で、2,100万円の増加となりました。
一方、利益のマイナス要因については、為替変動による影響で、6,900万円の減少となりました。また、収益認識基準の調整などが発生したことにより、2,200万円が減少しています。さらに、中国市場における入札制度の影響による売価下落のため、2,500万円の減少となっています。
最後に、販売費及び一般管理費の増加により、2億6,800万円が減少となりました。これは、先ほどご説明をしました販売費及び一般管理費の増加による3億3,600万円から、生産技術部門の費用の6,500万円が売上原価から販管費に移行したことにより、この分を除き2億6,800万円としています。また、為替影響による6,300万円の減少を含んでいます。
以上により、営業利益は6億9,200万円、前期比1億1,000万円の減少となりました。
経常利益、当期純利益
続きまして、営業外収支となります。営業外収益は、受取利息3,300万円と受取配当金800万円などにより、7,300万円となりました。また、営業外費用は、支払利息1,000万円、固定資産除却損300万円により、1,500万円となっています。以上により、経常利益は7億5,000万円、前期比1億2,200万円の減少となりました。
次に、特別利益は、本社移転にともなう土地の売却益3億円と、クリエート国際貿易と大連クリエートにおける大連市等からの補助金により、全体で3億9,000万円となっています。また、特別損失について、出資先の投資評価を見直したために発生した、投資有価証券の評価損2,900万円と、製品の廃棄損2,300万円により、全体で5,300万円となっています。
以上の税金等調整前純利益を基に、法人税等の2億5,900万円と、法人税等調整額のマイナス1,300万円により、当期純利益は8億4,000万円になりました。なお、前期発生した繰延税金資産の取崩しが、当期はなかったこともあり、前期比6億8,600万円の大幅な増加となりました。
設備投資、研究開発費
次に、設備投資、研究開発費となります。まず、設備投資は、国内では受注データシステムの構築や情報インフラ設備への投資、生産設備の取得などにより、2億3,800万円の投資を行いました。
また海外では、大連クリエートにおいて、生産設備取得などに1億5,300万円の投資と、ベトナムクリエートにおいて生産能力増強などのために、6,100万円の投資を行いました。以上により、設備投資の総額は4億5,600万円となり、大連クリエートの施設改修を行った前期に比べ、2億1,600万円の減少となりました。
また、研究開発費は、総額8億3,500万円となりました。国内では人件費が増加したものの、減価償却費の減少がこれを上回り、前年比1,100万円の減少となりました。海外でも、生物学的安全性試験に関わる費用の減少により前期比300万円の減少となっています。
以上により、研究開発費は前期比1,400万円の減少となりました。
財政状態について
次に、財政状態について、ご説明します。まず、流動資産です。本社移転による土地の売却や、外貨預金の為替差益などにより現金及び預金が大幅に増加し、一方で、売掛金と電子記録債権、棚卸資産が大幅に減少し、流動資産合計は12億1,700万円の増加となりました。
一方、固定資産は、有形固定資産のうち、土地は本社売却により大幅に減少しました。投資その他の資産では、日本学生支援機構のソーシャルボンドへの出資や、投資有価証券の評価益により増加しましたが、固定資産の全体では、4億2,800万円の減少となりました。以上により、資産の部の合計は、7億8,800万円の増加となりました。
次に、流動負債について、買掛金及び未払消費税等の増加などにより、1億3,700万円が増加しました。た、固定負債について、退職給付に係る負債の減少もあり、1億5,500万円の減少となりました。以上により、負債の部の合計は、1,700万円の減少となりました。
続きまして、純資産については、本年実施の自己株式取得によりマイナスとなりましたが、当期純利益による利益剰余金の増加と、為替レートの変動による為替換算調整勘定が大幅に増加したことにより、純資産の合計は、8億600万円の増加となりました。
連結キャッシュ・フロー
次に、キャッシュフローの変動要因となります。まず、営業キャッシュフローは、22億4,900万円です。主な要因としては、税金等調整前当期純利益の10億8,600万円と、棚卸資産の減少による5億8,200万円の増加に対し、有形固定資産売却益3億100万円が減少しました。
次に、投資キャッシュフローは、2億7,000万円です。主な内訳は、有形固定資産の売却による収入の7億7,200万円です。
最後に、財務キャッシュフローは、マイナス8億7,700万円です。主な内訳は、自己株式取得、配当金による支出の4億9,900万円となっています。その結果、現金及び現金同等物の期末残高は、56億6,200万円となり、前期比で18億9,100万円が増加しました。
前中期の振り返り ~重点施策の進捗~
それでは、2023年から3ヶ年の中期経営計画2025について、現在は2024年まで2年が経過していますが、2025年の見込みを含めて、進捗として振り返ります。
まず1点目の「国内販売の拡大」は、自社販売における販売価格改定により、売上高が拡大しました。一方、OEM販売については、予定していた大型案件が中止となり、進捗の遅れが生じました。
次に2点目の「海外の新市場開拓」は、欧州市場は引き続き売上が伸びており、さらに中国市場においては、主要都市から地方都市へ営業対象を拡大させ、売上の増加が続いています。また、インドなど新興国に対して地域特性に応じた営業活動を展開し、今後の売上拡大に向けた基盤作りを進めています。
次に3点目の「新製品の自社開発」についてです。泌尿器系製品のラインナップを拡充し、加えて、消化器用ガイドワイヤーの新製品を発売しました。これにより、売上の拡大にもつながっています。
次に4点目の「新規事業の探索」については、今後の医療政策の変化や医療技術の進化を見据え、将来的な成長戦略の柱となる新規事業を探索しました。今後は新規事業開発部を新設し、M&A・アライアンスも視野に入れた事業化の取り組みも進めていきます。
5点目の10年後の事業発展に資する将来構想については、当社設立50周年に合わせ、10年後のありたい姿を定めました。これを基にバックキャスト戦略を立案し、10年の将来構想も策定し、中期経営計画の見直しにもつなげています。
このほか、人材の育成と多様性の確保、DX戦略の推進、サステナビリティの取組みについても、成果を上げています。
前中期の振り返り ~経営目標の総括~
以上の重要施策を推進することで、2025年度の中期経営目標として、売上高140億円、経常利益14億円を掲げていました。
それに対し、2025年度の業績予想は売上高135億8,000万円、経常利益10億4,000万円を見込んでいます。売上高はOEM販売の新規案件が中止されたため、目標に届かない予想です。また、経常利益については、原材料や物流費の高騰、円安の影響により、大幅な未達を見込んでいます。
以上により、中期経営計画2025は、現時点で2年の経過ですが、新たな将来構想を基に、現行計画を取り下げて、新たな中期経営計画としてこの経営目標と重点施策に取り組んでいきます。
将来構想 ~10年後のありたい姿~
当社は設立50周年を機に、10年後を見据えた将来構想を策定し、「目指すべき姿」に向けた、バックキャスト戦略を立案しました。2025年度は当社の中期経営計画2025の3年目にあたりますが、新たに「中期経営計画2027」を策定し、これを基に、次期3カ年の事業戦略を進めていきます。
まず、10年の将来構想として、2034年の経営目標として、売上高200億円超、営業利益30億円超を目指していきます。この内訳として、売上高は海外売上高比率を引き上げ50パーセント以上とし、国内100億円、海外100億円を想定します。また、収益構造を改革し、営業利益率を改善させて15パーセントを目標とし、ROE8パーセントも目標とします。
また、10年後のありたい姿については、1番目に、「医療を通じて大きく社会に貢献できる企業でありたい」、2番目に、「ブランド力と知名度の高い企業でありたい」、3番目に、「従業員がやりがいをもって活き活きと働ける企業でありたい」を掲げ、今後10年間で取り組むことを決定しました。
将来構想 ~バックキャスト戦略~
この将来構想を実現するため、2025年から2034年までの10年間を3つのフェーズに分けて推進していきます。まず、フェーズ1の中期経営計画2027では、「基盤の構築、成長領域への投資」を目的とし、既存事業の利益率の改善を進めるかたわら、新規事業や新市場探索と成長領域への投資を行っていきます。
次に、2030年までのフェーズ2では、「新たな事業の追及と深化」を目指し、新規事業や新市場における事業化の推進を行っていきます。
最後に、2034年までのフェーズ3では、新たな事業の収益力強化と、既存事業の再編により、10年後のありたい姿を実現していきます。
中期経営計画
以上のとおり、中期経営計画2027では、経営目標として、売上高160億円、営業利益13億円、ROE7.0パーセントと設定しました。変化する事業環境に対応するために、既存事業の利益率の改善と、新規事業や新市場探索と成長領域への投資を行い、経営目標の達成を目指していきます。具体的には、次の3点の重点施策を中心に事業戦略を進めていきます
まず「ブランド知名度の向上」については、事業ポートフォリオの再構築を行い、経営資源を集中することで、連結グループ増益を目指します。さらに、海外事業の強化とM&A・アライアンスを戦略的に推進し、新規事業も目指していきます。
次に「社会への貢献」については、患者さまや医療従事者のみなさまのニーズをさらに探索し、QOLを高める製品や医療現場の負担を軽減する製品の開発などを目指します。また、新興国、途上国の市場ニーズの探索を行い、当社の貢献できる分野の見極めを行っていきます。
最後に、「従業員のやりがい」については、企業風土改革の実施や人的資本経営の強化を行うことで、従業員のエンゲージメントを高め、人材ポートフォリオを策定することで、適正な人員配置を目指し、当社の競争力強化につなげていきます。
連結業績予想(2025年通期)
続きまして、中期経営計画2027の1年目にあたります、2025年度の業績予想についてご説明します。2025年は、将来構想および中期経営計画のスタートとなる1年として、まずは、連結グループの増益体制の確保を目指していきます。そのために、販売価格の改定や新製品の確実な上市、コストダウン、販管費の抑制策に積極的に取り組みます。
一方、海外事業の強化として、新市場における成長領域への投資を推進し、新規事業の立ち上げに向けて、M&A・アライアンスの探索も進めていきます。
このような取組みにより、2025年12月期の業績予想については、売上高135億8,300万円(前期比4.2パーセント増)、営業利益10億200万円(同じく44.7パーセント増)、経常利益10億4,300万円(同じく39.0パーセント増)、当期純利益7億9,600万円(同じく5.3パーセント減)となり、前期との比較では、売上高の増加や利益改善の取組みにより、営業利益、経常利益の増益を予想しています。
一方、当期純利益については、2024年度の本社移転に伴う、土地売却益による変動があるため、減益を見込んでいます。売上高は、自社販売は新製品の上市と価格戦略の見直しにより、売上の増加を目指していきます。
海外販売は、今後の成長が期待されるインド・インドネシアの新市場開拓を中心に、地域特性に応じた販売戦略を進めていきます。また、中国市場は、販売活動を主要都市から地方都市、主要病院から一般病院へ拡大して、営業展開を進めていきます。
OEM販売については、一部製品の受託生産終了にともない売上の減少が予想されますが、新規受注を目指し、営業体制を強化していきます。利益について、一段の原価低減活動の推進に加え、販売価格の見直しを行うことで、適正な利益確保に努めます。また、人件費および経費の管理を徹底することで、営業利益の増益を目指していきます。
資本コストや株価を意識した経営
続いて、「資本コストや株価を意識した経営の実現」について、現状の分析と、今後の取り組みをご説明します。
まず、現状の分析ですが、2024年の株主資本コストは4.6パーセントであり、PBRは0.50倍、ROEが5.5パーセントという結果で、PBR1倍およびROE8.0パーセントに届かない状況です。
この原因については、売上高営業利益率の低下に加え、株主資本をM&Aなどの成長投資に活用できていないことが、要因であると考えています。
このような状況を基に、中期経営計画2027では中期経営計画の達成に加え、売上高純利益率と総資産回転率を改善し、企業価値向上の取組みを強化して、営業利益率8パーセント、PBRが0.70倍、ROEが7.0パーセントを目指していきます。
株主還元
次に、株主還元策について、ご説明します。当社は、株主さまへの利益還元を経営の重要施策と位置付けており、今後の収益力向上のために、内部留保による経営基盤の強化を図りつつ、継続的かつ安定的に利益配分を行うことを基本方針としています。
配当金について、当期の中間配当は普通配当17円に、50周年の記念配当の2円を加えて、19円としました。また、期末は20円として、年間配当39円とします。
次期については、中間配当は、普通配当17円を据え置き、期末配当の20円を加え、年間配当37円とする予定でいます。
また、自己株式の取得についても、実施を公表しました。今後約半年間を期限に、上限2億円、普通株式22万株として、自己株式の取得を市場買い付けにより実施していきます。
今後も、株主さまのご期待に沿えますよう、配当金と自社株買いによる、総還元性向の充実を図りまして、企業価値の向上と資本収益性の改善に努めていきます。