ハイライト
工藤智昭氏(以下、工藤):みなさま、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。株式会社ジーニー代表取締役社長の工藤です。2025年3月期第3四半期の決算についてご説明します。
まずはハイライトです。売上収益は82億8,000万円で、前年同期比40.6パーセント増となり、第3四半期を通じてかなりの高成長を持続できています。営業利益も売上収益とともに計画達成に向けて非常に順調に進んでおり、さらなる上昇トレンドに乗ってきているというのが第3四半期までの結果です。
広告プラットフォーム事業は、国内のSSPを中心に増進しています。売上収益は35億3,000万円で、前年同期比12.6パーセントの成長を実現しています。海外事業では、グループ間でのプロダクトのクロスセルがワンサプライの構想の中で進み、売上収益は11億1,000万円で、前年同期比17パーセントの成長を見せています。
マーケティングSaaS事業は、継続してMRRを増進させ、加えて大型案件の受注も決まったことにより、第3四半期単体で黒字化を達成しました。今後下期を通じて通期の黒字化も見込んでおり、マイルストーンに関して大きく前進している状況です。成長率も前年同期比36.1パーセントと、非常に高い成長率を実現できています。
デジタルPR事業では、買収したデジタルPRのソーシャルワイヤー社の事業において、インフルエンサーPRを中心に業績を伸ばしています。ダウントレンドが続いていたものの、不採算事業を除き、注力事業に関しては前年同期比でプラスの状況を作ることができました。手堅い案件からシナジーも出せており、結果として、ソーシャルワイヤー社は通期で業績を上方修正できています。
JAPAN AI社の事業については、近い未来に、ジーニーグループを超える大きな事業になる可能性を秘めていると考えています。同社はAIエージェント機能「JAPAN AI AGENT」を昨年11月にリリースし、現在急成長中で、生成AI市場の中でもトップランナーの1社になってきています。
その生成AI市場自体が、ジーニーがターゲットにしているマーケティング環境の市場に負けず劣らず急成長しており、かつ超広大な市場規模になる見通しです。後ほど市場規模の詳細についてご説明します。今後、JAPAN AI社がメインプレーヤーの1社に、さらには日本企業としてのナンバーワンになるべく、事業推進を行っています。
決算サマリ
第3四半期までの累計の決算サマリです。前年同期比の成長率は、それぞれの段階で40パーセント以上を達成できています。営業利益は、一過性損益を除く正常利益でも50パーセントの成長率を出せました。
トップラインの成長とあわせて生産性の改善や向上なども並行して行っており、営業利益も四半期ベースでかなり順調に出てきています。
今期の計画は、売上収益が120億円、売上総利益が91億円、営業利益は25億円となっています。営業利益は第3四半期までで21億3,000万円を超えており、さらに当社が下期偏重型であり、この10月から3月までに利益が出やすい体質であることを踏まえても、計画達成に向けて順調に積み上がってきていると認識しています。
セグメント別 業績割合
セグメント別の業績割合です。我々の祖業の広告プラットフォーム事業は、安定的に成長しています。海外事業でも、実質広告事業の海外展開版というかたちでPMIが進捗しており、市場シェアを順調に獲得しています。
マーケティングSaaS事業は我々の中の成長事業として位置づけ、しばらく投資を続けてきました。現在、規模的にもかなり大きくなってきており、第3四半期単体では黒字化しています。高成長の継続だけでなく、下期を通じて黒字化するというマイルストーンも無事に達成できる見込みが高まってきています。
セグメント別 業績割合推移
セグメント別の業績割合推移はスライドのとおりです。
TOPICS 株式会社ピアラとの資本業務提携について
第3四半期のトピックスです。まず1つ目が、ピアラ社との資本業務提携です。こちらはJAPAN AI社も含めて、ジーニーグループとして連携を進めている施策です。同社はネット広告代理店であり、特にEC向けのプレーヤーの1社で、強力な市場シェアを持っている企業です。
ピアラ社には、ジーニーグループのプラットフォームをひととおり導入いただいています。同社と協業することでJAPAN AI社による生成AIのソリューションと組み合わせることができ、ネット広告代理店としての新たなノウハウを開発し、競争力を創出しています。
ピアラ社の業績は、第4四半期から黒字化となっており、資本業務提携を行い事業のシナジーも確実に作りながら、投資した部分についてはプラスになるように協業を進めています。
デジタルマーケティングの全体像
ジーニーの事業概要です。スライドは、デジタルマーケティングの全体像を示したものです。こちらで示すとおり、企業を知ってもらう認知の段階から、ホームページに訪問してもらい、購入、リピートしてもらうところまで、企業はさまざまなプロダクトや施策を通してマーケティング活動を行っています。
マーケティングにおける課題
マーケティングにおける課題として、ほとんどの企業においてツールを使い切れていない点が挙げられます。現場では、複数のツールを使うことでマージンが余計に発生したり、マーケティング外で無駄な開発コストが掛かったりしています。
その結果、そのようなツールを使いこなすこと自体にも多大なパワーとトレーニングが必要になっており、マーケティングに専念できずにいることが、昨今のデジタルマーケティングの現状です。
ジーニーが目指す姿
ジーニーは、「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」をパーパスとして目指しています。このパーパスに基づき、1社でデジタルマーケターの方々が使うプロダクトのすべてを提供します。コストパフォーマンスが非常に高くなるように、業務を自動化・効率化させるプラットフォーム群やプロダクト群をまとめて提供していくことで、マーケターの方々がマーケティングの業務に専念できるようにしています。
事業領域
事業領域です。スライドのとおり、マーケティングの認知から優良顧客化までの各フェーズごとに、いろいろなプロダクトを取り揃えています。ジーニーグループはM&Aも続けており、いろいろなプロダクトがグループの中にジョインして成長していっています。
企業が使っているツールはまだ数多くあります。それらもM&Aを行い、グループに入っていただきながら企業拡大しています。
優位性サマリ
我々の優位性は、市場の中でも圧倒的に費用対効果が高いという点です。マーケターの方々は、企業の経営者から予算を預かって、予算効率のよい施策を調査し、経営管理のために活用します。例えば「100万円を投下し、どれだけの反響があって物が売れたか?」というデータを数字で管理し、意思決定に役立てているのがマーケターです。
そのためマーケティングツールも、費用対効果が高いところに予算も寄せられていくことが、マーケティング業界の意思決定の流れになっています。
そのような業界において、ジーニーのプロダクトは、「圧倒的に費用対効果が高い」とお客さまに評価をいただいています。我々はその強みをもって事業を推進しています。
競争優位性 費用対効果を高める3つの要素
ジーニーは費用対効果を高めるため、「経営管理」「テクノロジー」「ビジネス」それぞれの方面で、あらゆる企業努力を行っています。市場の中でも、他社と比較して1倍以上という、費用対効果が圧倒的に高いプロダクト群を提供しています。
経営管理の優位性 M&A‧PMI
そのような強みもあり、M&A後の成長率は非常に高いものとなっています。我々の主力プロダクトに関しては、市場の平均よりもかなり高い成長率で、買収後も成長できています。
買収した後は、ジーニーグループの技術基盤と顧客基盤を活用して圧倒的に費用対効果の高いプロダクトを作り上げており、市場の中でもナンバーワンの成長率を目指し続けています。
テクノロジーの優位性 技術力
そのようなプロダクトを支えているのが、テクノロジーの優位性です。当社は非常に優秀なエンジニア人材を抱えており、彼らが日々、優位性のあるテクノロジーを技術開発して、プロダクト開発を推進しています。
テクノロジーの優位性 AI開発
昨今では、生成AIのイノベーションが世界的にも話題になっています。ジーニーグループは、AI開発に非常に力を入れています。JAPAN AI社の事業も大きく成長しており、それらで得た知見を活用して、ジーニーグループのほとんどすべてのプロダクトでAI活用を進めています。
例えばSFA/CRMのプロダクトでは、スライドに示すように、オンラインの商談を自動で要約したり、受注を予測したり、あるいは営業の方のネクストアクションのレコメンドなどを、AIで行っています。このようなツールによって、他社と大きく異なるプロダクト提供を実現できています。
テクノロジーの優位性 AI開発
JAPAN AI社は、2024年11月にAIエージェント機能「JAPAN AI AGENT」をリリースしました。AIエージェント機能とはAI社員のようなもので、さまざまなタスクを人間の代わりに処理してもらうこともできますし、AIと人が一緒に働くことで圧倒的に高い生産性を実現できるツールとなっています。
TOPICS 「JAPAN AI AGENT」について
この「JAPAN AI AGENT」が出る前の生成AIは、Q&A形式でラリーしながら質問に答えてくれる非常に賢いものでした。
一方で生成AIは、スライド右側の図のように、企業の資料の作り方や営業の方法などをAIに覚えさせておくことで、AIエージェントがタスクを最後まで実行してくれます。
今年は「AIエージェント元年」と言われており、日本でも、世界的にも非常に需要が盛り上がっている市場です。その中で本命となるプロダクトを提供して、どんどん導入を進めています。
また、ジーニーグループ自体でも「JAPAN AI AGENT」の活用を積極的に進めています。これによりジーニーグループの生産性も、1倍以上から、最終的には2倍程度にできるのではないかと思っています。
TOPICS AIエージェント「スライド作成アシスタント」について
AIエージェントの機能をリリースして以来、利用回数が倍増しています。新しいラインナップとしてリリースしたのが、「スライド作成アシスタント」です。
例えば、これまで資料を作る時には、さまざまな工程や時間をかけながらオフィスワーカーの方々が資料を作成していました。「スライド作成アシスタント」ならば、いくつか指示を出すだけで、資料作成のおよそ半分の工程を作成してくれます。
市場規模
市場規模についてです。スライド左側には、ジーニーグループのこれまでのビジネスの市場規模を示しています。アドプラットフォーム事業、海外事業、マーケティングSaaS事業、昨年買収したデジタルPR事業のいずれも市場規模的には大きいものになっており、今後も引き続き市場シェアの獲得と高成長を持続できると思っています。
さらにスライド右側に記載のとおり、JAPAN AI社が生成AIの市場を獲得していきます。生成AI市場は、1つのカテゴリだけで1.7兆円と、年率50パーセントの市場規模成長が見込めます。日本の中でも他に類を見ないほど非常に成長している市場になっています。その中でもトップランナーの1社になれる可能性があると考えており、積極的に事業運営に取り組んでいます。
広告プラットフォーム事業 売上総利益推移
事業別の決算概況についてご説明します。まずは広告プラットフォーム事業です。第3四半期の売上総利益は、前年同期比7.3パーセントの成長となりました。SSPを中心に既存顧客への利益改善等も進んでおり、販売も好調となっています。
広告プラットフォーム事業 KPI
広告プラットフォーム事業のKPIです。しばらく社数が伸び悩んでいた時期もありましたが、営業に注力した結果、社数、社単ともに前四半期比で大きく伸びています。
TOPICS GENIEE DOOH「気象連動型広告配信」について
トピックスを1つご紹介します。デジタル屋外広告向け広告配信サービス「GENIEE DOOH」において、気象連動型広告という、天気の状況に応じた広告を屋外ビジョンなどに出せる新機能をリリースしました。
海外事業
海外事業については、これまでジーニーが東南アジアを中心に海外展開してきました。2023年2月に北米とインドを中心に事業展開するZelto社を完全子会社化し、ここ2年間でPMIにかなり注力して取り組んできました。2024年9月から、Zelto社を中心とする海外事業と国内・海外におけるSSP事業を組織的に統合した結果、かなり業務効率化が進んでいます。海外事業の市場シェア拡大のペースが早まってきていると感じています。
海外事業 売上総利益推移
海外事業の第3四半期の売上総利益は、前年同期比45.2パーセントの成長となりました。ジーニーグループ間でのプロダクトのクロスセルが進んだことや、サーバーの入れ替え等の原価削減等もようやく効いてきた結果、売上総利益が大きく成長できています。
海外事業市場は、潜在的には日本市場よりもはるかに大きな市場があり、今、攻めの時期に反転してきています。これからZelto社とともに、日本だけでなく、東南アジア、インド、アメリカで、きちんと伸ばせるような会社にしていきたいと思っています。
Zelto社 PMI進捗
海外事業の売上総利益を前年同期比45.2パーセント成長させた施策についてご説明します。ジーニーグループはこれまで、日本部門と東南アジア部門、そして買収したZelto社で、営業組織やマーケティング組織、カスタマーサクセスの組織などそれぞれ分断して経営しており、人を介してノウハウを伝播していました。
そこで、2024年9月に「グローバル SSP統一体制」に一本化しました。組織横断でマーケティング、営業、カスタマーサクセス、PdMと、チームを横串で作っており、すべての拠点のベストプラクティスで標準化していきます。
例えばマーケティングについてはインドが一番進んでいたため、インドの方法を日本や東南アジア、アメリカでも使えるようにしました。また営業については日本が一番進んでいたため、その方法を採用しました。このように各国の進んでいる部分を標準化し、世界で使えるようにすることで、進んでいる国の人が他の拠点にも横串で教えていける体制に変更しています。
またプロダクトの開発も全世界で統一し、一部重複していたプロダクトも統合しました。今は日本でセントラルオペレーションでプロダクトを開発しています。私と日本のプロダクトマネージャー直下で、プロダクトパーツなどを企画しています。
新機能を作る時は、日本だけ、あるいは東南アジアやインドなどの特定の国だけではなく、基本的にすべての国で使えるプロダクト開発を推進しています。
デジタルPR事業の領域
デジタルPR事業です。2024年7月に、ソーシャルワイヤー社を買収しました。ソーシャルワイヤー社は主に、認知やサイト訪問のフェーズで使われるプロダクトを持っています。
デジタルPR事業 売上収益推移
ソーシャルワイヤー社のPMIは問題なく進捗しています。特に新規獲得社数が急増しており、業績も上方修正しています。
マーケティングSaaS事業 売上収益推移
マーケティングSaaS事業です。第3四半期の売上収益は前年同期比38.2パーセント増と、力強い成長が継続できています。第3四半期単体では黒字化も達成し、下期の黒字化に向けて着実に前進しています。
すべてのプロダクトのMRRが順調に推移しています。さらに、SFA/CRMの事業で超大型の案件を受注しており、その初期費用と月額費用が今後、乗ってくる状況です。
マーケティングSaaS事業 KPI
マーケティングSaaS事業のKPIです。有料アカウント数は順調に増加しており、前年同期比50.4パーセント増となっています。
マーケティングSaaS事業 その他指標
スライドに記載のとおり、その他指標も順調に成長しています。
中期経営計画 数値目標
中期経営計画の数値目標については、前回と変更はありません。2025年度の計画を発表できると思っていましたが、今回も出すことができませんでした。申し訳ありません。グループの多角化が進んでいることから、レビューがまだ十分にできていない状況です。2025年度の計画は通常のサイクルの中で発表したいと思っています。
四半期毎業績予想
四半期毎の業績予想は、スライドのとおりです。
継続的成⻑投資
増資の懸念のようなお話もありましたが、特に今、原則そのようなことは想定していません。昨年ソフトバンク社から取得した自己株式がかなりあります。そちらを市場変更の際に、一部処分もしくは売却することで資金確保しようと思っています。増資については、今のところ想定せずに事業運営できるかと思っています。
簡単ではありますが、以上で第3四半期決算のご説明を終了します。
質疑応答:広告プラットフォーム事業の今後の見通しについて
司会者:「広告プラットフォーム事業のセグメント利益は、前年同期比で第1四半期には増益となりましたが、第2四半期、第3四半期と減益幅が拡大しています。この要因は何でしょうか? 先行きはどのように見ればよいでしょうか?」というご質問です。
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