FY2024|総括
石村富隆氏:GMOフィナンシャルホールディングス代表執行役社長の石村です。本日はお忙しい中、決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。2024年12月期の決算概要についてご説明します。
2024年の総括です。証券・FX事業に関して、強みであるFX・CFDの強化は、ユニーク取引人数の拡大に向けた利便性向上や取引活性化施策が奏功し、好調に推移しています。
タイ証券事業は、信用取引サービスを終了し、廃業を決定しました。暗号資産事業は、市場の活況を捉えて収益が拡大し、全体収益の成長を牽引しています。
各サービスの振り返りについて、詳細をご説明します。FXの収益は263億円で、前期比11.7パーセントの減収です。過去最高の収益を記録した前期と比べると減収にはなりますが、高水準を維持しているため、評価は三角としています。ユニーク取引人数も着実に増加しており、結果としてのシェアも上昇傾向にあります。
CFDの収益は89.1億円で、前期比10パーセントの増収です。売買代金・収益ともに前期比で増加し、好調です。評価は丸としています。
タイ証券事業は、多額の貸倒引当金繰入額を計上しており、金額としては約95億円です。2024年12月に、信用取引サービスを終了し、2025年12月の廃業を決定しました。評価はバツとしています。
暗号資産事業の収益は75億円で、前期比124.6パーセントの増収です。暗号資産市場の活況を受けて、売買代金・収益ともに前期比で倍増しています。GMOコインでは第2弾となるIEO実施など、新たな取り組みも推進しています。評価は二重丸としています。
新規事業に関しては、バーチャルオフィス事業が2万ユーザーを突破し、顧客基盤が順調に拡大していますが、収益拡大が課題だと認識しています。2024年9月から医療プラットフォーム事業を開始していますが、こちらはまだ開発途中であり、全体的な評価は三角としています。
FY2024|決算サマリー(前期比)
2024年の決算サマリーです。営業収益は過去最高となったものの、タイ証券事業での貸倒引当金繰入額計上の影響で減益です。
スライドをご覧のとおり、営業収益・純営業収益はプラスですが、営業利益以下は倒引当金繰入額計上の影響で前期比マイナスとなっています。
タイ証券事業|Q3’24時点の方針と対応(再掲)
タイ証券事業の2024年第3四半期時点の方針と対応(再掲)です。方針として、2024年度での損失処理完了を目指して対応してきました。
対応内容について、不良債権に関しては、担保の売却や債権自体の売却を考えていました。信用取引貸付金に関しては、2024年12月20日の信用サービス終了時までに返済が実現しない顧客に対しては、貸付金回収に向けて速やかに強制決済による回収を実行予定だとお話ししていました。強制決済での回収を見込めない顧客は、個別に株式以外の担保での約定弁済契約に切り替え、債権保全を強化するとともに、リスクの移転を図る方針で対応してきました。
今後について、タイ証券事業からの撤退を含めてどうするか検討していましたが、先ほどご説明したとおり、撤退・廃業し、会社を清算する方向で動いています。
タイ証券事業|債権残高の状況
タイ証券事業の債権残高の状況です。2024年度第4四半期の貸倒引当金繰入額は約28億円でした。通期で約95億円を計上しています。
2024年9月末時点で約174億円あった信用取引貸付金について、回収及び約定弁済契約への切り替えを進めた結果、今後回収を図る約定弁済契約に基づく債権残高は約110億円になっています。
スライド下部に記載の詳しい数字についてご説明します。不良債権残高に関しては、BSで見ると、2024年12月末で171.7億円計上されており、担保による保全額が8億円、差額の163.7億円が貸倒引当金として計上されています。
この担保に関しては、12月末までに処分を試みたのですが、債務者から強制処分の停止を裁判所に持ち込まれて一時担保の売却を停止したため、強制決済できない部分がありました。そのため、8億円残っている状況です。
信用取引貸付金残高は、12月20日にサービスが終了し、12月末にすべて終わる予定でしたが、一部、期を持ち越したものがあり、12月末の時点で78.7億円が残っています。ただし1月15日にすべて解消し、今の信用貸付残高は0円となり、完全にサービスを終了できています。
約定弁済に基づく債権残高に関しては、もともと残っていた信用取引貸付金残高の一部を約定弁済契約に締結し直してきました。12月末までに約定弁済契約となっているのは43億円です。
2025年1月15日には、信用取引貸付金残高が約定弁済契約に切り替わり、債権残高は109.2億円となっています。そして、182.4億円が不良債権として残っています。
約定弁済契約に基づく債権に関しては、今後何年かかけて回収していく計画です。不良債権残高は、顧客からの回収、顧客資産の売却・差し押さえなどを進めながら、徐々に回収していくことを考えています。
タイ証券事業|約定弁済契約に基づく債権残高の状況
続いて、約定弁済契約に基づく債権残高の状況です。2024年第3四半期まではあまり開示していませんでしたが、今回、内容をより詳しくご説明したいと思い、スライドのようなかたちとしています。
債権売却によりリスク移転を図る方針でしたが、交渉相手からの提示額や債権の保全率等を総合的に勘案し、約定弁済契約に基づく債権残高約110億円の回収を進めていく方針です。
売却も検討したのですが、なかなか思ったような価格で売却できないため、スライド左側の担保の状況に記載のとおり、株式だけでなく、不動産・社債の担保差入れで保全を高めながら、お客さまの返済計画をヒアリングしつつ、「ここは約定弁済契約のほうがいいのではないか」というところだけを、約定弁済契約に切り替えています。全体として、残高が109億円、担保が203億円、保全率が186パーセントとなっています。
スライド右側に約定弁済契約債権の保全率ごとの残高を記載しています。100パーセント保全されていないものは5億3,600万円です。100パーセント以上保全されているのがそれ以外の残高で、200パーセント以上が約58億円です。半分以上が、200パーセント以上の保全率となっています。
約定弁済契約債権の回収計画について、スライド右下に記載していますが、契約を締結している相手方は15名です。約定弁済契約に従って回収を行い、今後2年間で債権元本全体の9割以上を回収する計画です。契約上、そのようなかたちになっています。
なお、2025年1月末の時点で、約定弁済により8億3,900万円を回収済みです。
FY2024|セグメント別の状況(前期比)
2024年のセグメント別の状況です。証券・FX事業に関しては、営業収益が前期比8.4パーセント減です。2023年が最高益だったことが要因ですが、高い水準をキープできていると考えています。営業利益は、前期比63.5パーセント減です。タイ証券事業での貸倒引当金繰入額95億円が含まれているため、このようなかたちで着地しています。
暗号資産事業に関しては、営業収益が前期比124.6パーセント増と、前年の2倍以上となっています。営業利益もそれに伴い、前期比で大きく伸びている状況です。
FY2024|営業利益増減(前期比)
2024年の営業利益の増減です。スライドをご覧のとおり、貸倒引当金繰入額とFXでやや減益となり、それを暗号資産で多少補っている状況です。
株主還元|配当
株主還元に関しては、連結配当性向50パーセント以上、年4回の配当を目標にこれまで実施してきていますが、今期第4四半期では1株当たり5.24円の配当としました。
株主還元|目標配当性向の変更
続いて、目標配当性向の変更についてです。これまでは目標配当性向を50パーセント以上としていましたが、2025年度から株主還元を強化し、配当性向65パーセント以上を目標にしたいと思っています。
Q4’24(10-12月)|マーケット環境
第4四半期のマーケット環境です。個人株式の売買代金は右肩上がりになっています。店頭FXの取引高は少し減っています。暗号資産の売買代金は10月・11月の2ヶ月分の計上となっているものの、第3四半期と同じくらいですので、もう少しあるかと思います。
Q4’24(10-12月)|決算サマリー(前四半期比)
決算サマリーです。こちらもFX収益の減少に加えて、第4四半期のタイ証券事業に係る貸倒引当金繰入額の計上額が前四半期比で増加したことにより、減益となっています。
Q4’24(10-12月)|セグメント別の状況(前四半期比)
第4四半期のセグメント別の状況です。営業利益に関しては、タイの影響で証券・FX事業がマイナスとなっており、そこを暗号資産事業の営業利益で賄っています。
Q4’24(10-12月)|営業利益増減(前四半期比)
営業利益の増減です。前四半期にFXの収益が大きく減少したことや取引関係費・貸倒引当金繰入額が増加したことにより、大幅な減益となっています。
スライドのグラフでは、FX・外為OPが大きくへこんでいます。これまではスプレッド競争がありましたが、現在はスワップの部分でも競争が激しくなってきているため、お客さまの取り込みを狙い、スプレッドの還元強化などを行っていることが要因です。
取引関係費についても、このような競争環境を踏まえ、我々のサービスが他社より優れていることを大きくお伝えするためにマーケティングコストをかけつつ、お客さまの囲い込みを進めている状況です。
四半期業績推移|営業収益(セグメント別/商品別)
セグメント別の営業収益はスライドのとおりになっています。
四半期業績推移|営業利益
四半期の営業利益の推移はスライドのとおりです。
四半期業績推移|販売費及び一般管理費
販管費の増加は主に貸倒引当金繰入額によるものです。ただし、2025年第1四半期の見通しとしては約80億円のコストになると考えていますので、第4四半期の115億円からはかなり抑えられると見込んでいます。
店頭FX|国内取引高シェアの推移
個別の事業の状況です。店頭FXについて、国内取引高シェアの推移はスライドのとおりです。主に「GMOクリック証券」のお客さまが右肩上がりに増えています。シェアも3社合わせて25.6パーセントと、全体の中でのシェアもしっかり伸ばせてきているかと考えています。
店頭FX|預り証拠金残高の推移
店頭FXの預り証拠金の推移です。こちらは横ばいに見えますが、マーケットの急変でロスカットが発生して一時的に多少へこんだものの、直近で回復していると見ています。
CFD|売買代金・収益の推移
CFDに関して、売買代金・収益の推移です。売買代金はしっかりと増えていますが、収益は多少減っています。これは、スプレッドの部分で競合他社とのミートなどがあったためです。現在、その状況にはないものの、期内にそのような状況があり、多少減っているということです。
CFD|預り証拠金残高の推移
CFDの預り証拠金残高の推移はスライドのとおりです。こちらは前年比1.6パーセント減ですので、そこまで減っているとは思っていません。どちらかというと、横ばいであることに課題感があります。「商品の認知が足りないのではないか?」と社内では分析しており、今期以降、これまでと違った手法で商品認知に取り組んでいかなければならないと考えているところです。
国内株式|株式委託手数料・委託手数料率の推移
国内株式について、株式委託手数料と委託手数料率の推移です。委託手数料は、前年比10.3パーセント減となりました。継続的に右肩下がりになっていますので、ここにも課題感はあります。今期以降、何かしらテコ入れしなければならないと考えていますが、現状では特に打ち手がなく、粛々と今までどおりのことを続けています。
国内株式|金融収支の推移
国内株式の金融収支の推移です。信用取引の大口優遇「VIPプラン」などが一部のお客さまにアピールできていることもあり、少しずつ増えてきていると思っていますが、もう少し伸ばさないといけないとも考えています。こちらは現物の株式も同様で、株式部門に関しては、テコ入れしていかなければならないという認識を持っています。
暗号資産|売買代金の推移
暗号資産について、売買代金の推移はスライドのとおりです。「ビットコイン」を中心とする暗号資産価格の上昇により、売買代金は前年同期比で増加しています。
暗号資産|口座数と預り残高の推移
口座数と預り残高も順調に推移しており、年間で約9万5,000口座増、預り残高は前年比144.2パーセント増となりました。預り残高に関しては、「ビットコイン」及び他の暗号資産の価格が上がっていることもあり、増えたというよりは、「評価額が上がった」と言ったほうが正しいと見ています。
暗号資産|セグメント収益・利益の推移
利益の推移です。これまでと同様、「ビットコイン」の価格にほぼ連動しているかたちです。むしろ、しっかり連動できるような体制になっていることを見ていただけるのではないかと考えています。
暗号資産|ステーキング収益
暗号資産は、フロー型ビジネスでマーケットの変動の影響が大きいため、やはりストック型ビジネスも手がけていかなければならないという課題感があり、4年ぐらい前からステーキングを始めました。こちらが収益にも多少寄与するようになってきています。
最初は500万円ほどの収益だったところから、現在は1億円を超えるまでになってきています。さらなる取引収益の補完のため、今後もこちらを伸ばしていく必要があると考えています。
暗号資産|IEO
IEOについてです。2024年度は「NOT A HOTEL COIN」というIEOを実施し、調達金額20億円と、業界的にはかなり大きな金額を調達できました。
IEOの実施による手数料収入もありますし、お客さまも増えていくことが見込めますので、2025年以降も、そこまでたくさんの案件があるわけではないと思っていますが、年間1つ、2つはチャレンジしたいと考えています。
2025年12月期の方針・取り組み
2025年12月期の方針・取り組みです。方針はいつもと変わらず、「強いものをより強くする」ことを目指していきます。
FXに関しては、競争優位性を高めるためのサービスの利便性を向上させます。また、マーケティング強化による顧客層の拡大、特にお客さまの数とお客さまからの預り残高を増やしていきたいと考えています。結果として、取引高シェアの拡大も見据えていますが、根本的には、お客さまの数と預り残高を指標に考えています。
CFDに関しては、証券取引・FX取引からのクロスセル率のさらなる向上と、商品の認知度向上に向けたマーケティング戦略の見直しを図ります。先ほどもお伝えしましたが、今の手法だと限界があり、マーケットを広げていくのはなかなか難しいのではないかと思っていますので、マーケティング戦略を変えていきたいと考えています。
暗号資産に関しては、ステーキングや貸暗号資産といったストック型商品の強化による収益の安定化を図ります。また、法人向け・VIP向けのサービスも多少ニーズがありますので、こちらも強化していきたいと考えています。
新規事業に関しては、バーチャルオフィス事業の顧客基盤拡大に向けて、引き続き拠点の拡大を図ります。新サービスも予定していますので、こちらの提供等により黒字化に向けて取り組んでいきたいと考えています。
また、医療プラットフォーム事業の立ち上げを加速させます。こちらは現在対応中ですので、予定どおりローンチさせ、しっかりと収益化していくことが取り組みの方針です。
私からのご説明は以上です。ありがとうございました。