目次
袴田武史氏(以下、袴田):株式会社ispace代表取締役CEOの袴田です。本日はお忙しい中、2025年3月期第3四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日は、まず私より今期第3四半期期間における事業進捗についてご説明の後、取締役CFO・事業統括エグゼクティブの野﨑より財務に関する部分をご報告します。最後にQ&Aのお時間とします。
エグゼクティブサマリ
本日のサマリーとなります。事業環境面では、史上初となった当社と米国Firefly Aerospaceさまの民間月面ランダー(月着陸船)2機の同時打ち上げを始め、日本・米国・欧州での宇宙・月面開発の動きが一層活発になっています。
各ミッションの進捗です。Mission 2は、ついに2025年1月15日に打ち上げ、現在(2025年2月12日時点)10個あるマイルストーンのうちSuccess 4「初回軌道制御マヌーバの完了」まで成功するなど、大変順調に航行中です。
Mission 3においては営業面で進捗があり、総契約金額は6,500万米ドルとなりました。
政府のSBIR制度(Small Business Innovation Research 制度:中小企業技術革新制度)を活用した日本拠点によるミッションについても、「Series 3ランダー(仮称)」のすべてのサブシステムの基本設計が完了間近で、開発は順調に進んでいます。
このミッションは、これまでMission 6と呼んでいましたが、今四半期からナンバリングを変更し、当社の4番目のミッションとなる予定です。
営業面では、政府機関、民間企業と新たに4件のMOU(Memorandum of understanding:基本合意書)を締結しました。財務面では、今期通期業績予想について、主にMission 2での会計基準変更に伴い、増収増益に修正することとなりました。この後、それぞれ詳細をご説明します。
事業環境
事業ハイライトについてです。すでにご案内のとおり、2025年1月15日に、当社のMission 2で用いた「RESILIENCEランダー」がSpaceXさまの「Falcon 9ロケット」により打ち上げられました。当日は多くの株主のみなさまにライブ配信などをご視聴いただき、誠にありがとうございました。
今回の打ち上げでは、1つのロケットに当社とFirefly Aerospaceさまという月面探査を目指す日米の民間企業2社が同時に搭載される、史上初のイベントとなりました。民間主導の月面開発・探査の高まりを象徴する、歴史的な瞬間であったと捉えています。
また、2024年11月には、日本のJAXAと欧州宇宙機関のESAが、月探査分野での協力を含む将来大型協力に関する共同声明を発表しました。
同声明では、日本と欧州の企業が提供する小型ローバー(月面探査車)の活用可能性についても言及されており、日本と欧州においても、今後さらに民間企業の活用が加速することが期待されています。
当社は、両機関が推進する月探査分野での取り組みに関して、2027年に打ち上げ予定の「Series 3ランダー(仮称)」を活用し、両機関が推進する月探査分野への貢献を目指していきます。このように、世界の宇宙開発は一層活発になってきています。
ミッション2の進捗
各ミッションの進捗についてです。まず、現在運用中のMission 2についてご説明します。こちらは、当社の「RESILIENCEランダー」が捉えた1枚です。
SNSでの投稿を見ると「これはCGではないのか?」などの声も寄せられていましたが、実際に「RESILIENCEランダー」から撮影した写真となります。自社開発のカメラで撮影しており、Mission 1の時よりもさらに高い解像度での撮影が可能となっています。
ミッション2の進捗
打ち上げ当日は「Mission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON"打ち上げ応援会」を開催し、従業員とその家族、HAKUTO-R関係者、投資家・株主など多くの方々にご参加いただきました。
当応援会は、HAKUTO-Rオフィシャルパートナーである三井住友銀行さまの本館3階で実施しました。打ち上げと分離が成功した際には、写真のように会場は歓喜の声で包まれました。
ミッション2の進捗
Mission 2の打ち上げに際して、内閣府宇宙開発戦略推進事務局長の風木淳さま、JAXA理事長の山川宏さま、そしてLSA(ルクセンブルク宇宙機関)CEOのMark Serres(マーク・ゼレス)さまからも応援のビデオメッセージをいただいています。
宇宙飛行士の山崎直子さまには、打ち上げ応援会のゲストとしてご登壇いただき、打ち上げとロケットからの分離の瞬間を会場で応援していただきました。
ミッション2の進捗
あらためて、Mission 2の概要となります。Mission 2は、Mission 1でそのハードウェアが実証された「RESILIENCEランダー」と同じモデルを使用しています。
Mission 2では月面着陸後、当社欧州法人が開発した「TENACIOUSマイクロローバー(小型月面探査車)」で月の砂であるレゴリスを採取し、その所有権をNASAに譲渡するという画期的な月資源商取引の実施を予定しています。
また、Mission 2においても、三井住友海上火災保険株式会社さまと月保険を締結しています。詳細については、2024年12月18日付の適時開示、もしくは本日開示の第3四半期決算説明資料のAppendixをご参照ください。
Mission 2では、スライド左下に記載の5つの顧客ペイロード(荷物)を輸送中で、総契約金額の約1,600万米ドルのうち、大半は打ち上げ前にすでに受領しています。
ミッション2の進捗
ここからは、Mission 2の進捗についてご説明します。Mission 2では、Mission 1と同様、10個のサクセスマイルストーンを設定しています。まず、日本時間の1月12日には「Falcon 9ロケット」に搭載され、Success 1の「打ち上げ準備」が完了しました。
ミッション2の進捗
そして、日本時間の1月15日午後3時11分、米国フロリダ州の打ち上げ場の天候にも恵まれ、「RESILIENCEランダー」を載せた「Falcon 9ロケット」は予定どおり打ち上がりました。
ミッション2の進捗
そこから約1時間半後の午後4時44分、「RESILIENCEランダー」が「Falcon 9ロケット」から分離されたことを確認し、Success 2の「打ち上げ及び分離」が完了しました。
ミッション2の進捗
その数時間後に、「RESILIENCEランダー」と東京日本橋にある管制室の通信が確立されました。ランダー姿勢の安定とともに、軌道上での安定した電源供給の確立を確認し、Success 3の「安定した航行状態の確立」にも成功しました。
ミッション2の進捗
さらに、打ち上げから約2日後の1月17日には、地球から約25万kmの地点でおよそ16秒間メインエンジンの噴射を行い、主推進系及び誘導制御系の動作を確認し、Success 4の「初回軌道制御マヌーバ」にも成功しました。
顧客ペイロードである台湾中央大学さまの「深宇宙放射線プローブ」の稼働も確認しています。
ミッション2 マイルストーン
現時点では今ご説明したSuccess 4まで成功しており、この後はいよいよ2月15日にSuccess 5の「月フライバイ」の実行を予定しています。(追記:2月15日に予定どおり成功)月フライバイとは、ランダーが月の近くを通過しながら、月の重力を利用して加速する航法のことです。
Mission 2では、Mission 1と同様、ランダーにより多くのお客さまの荷物を搭載できるよう推進剤を節約し、効率よく月を目指せる低エネルギー遷移軌道を利用しています。
しかし、今回通る軌道はMission 1と異なり、打ち上げ後に当社側での軌道変更が必要となるため、この月フライバイを行います。月フライバイは、精密な軌道計算と軌道制御が求められるものです。Mission 1で培った経験をもとに、しっかりと完遂させたいと考えています。
フライバイを完了しSuccess 5を達成した後は、低エネルギー遷移軌道に入り、さらに3ヶ月ほど後には月周回軌道に入り、月面着陸は5月下旬から6月上旬を予定しています。
ミッション2の進捗
ここまでのMission 2の進捗とMission 1を比較してみると、ランダーの開発面、打ち上げ後の運用面の双方で飛躍的な改善があったと捉えています。
まずランダー開発期間は、Mission 1対比で約40パーセント短縮しています。これは、Mission 1を通じて実証したハードウェアと同じ設計を再度活用することで、Non-Recurring Engineering Task(一度限りの設計・開発工程)が発生しないことが背景にあります。
加えて、Mission 1での経験を糧に製造・組立・試験の手順が改善され、開発中の不具合が減少し、部材調達の納期管理も改善しています。
ランダー開発コストは、約50パーセント削減しています。これもやはり、Non-Recurring Engineering Cost(一度限りの設計・開発コスト)が発生しないことが要因です。また、当社固有の改善点として、Mission 1よりも効率的なプロジェクトマネジメントを実施し、エンジニアの稼働時間が削減されたことで、人件費が減少した点が挙げられます。
さらに、打ち上げ後の初期オペレーションは非常にスムーズに進んでいます。Mission 1から学んだランダーの運用方法、パラメーターの設定、判断の仕方などをMission 2へフィードバックした結果、打ち上げ後から初期運用フェーズ完了までの期間を、Mission 1時の約4日から、今回は約1.5日と、約60パーセントも短縮することができています。
ミッション3の進捗
当社米国法人で開発を進めているMission 3についてです。Mission 3では、チームDraperとしてNASAの「CLPS(Commercial Lunar Payload Services:商業月面輸送サービス)」プログラムCP-12に採択され、2026年に打ち上げを予定しています。
Mission 3では着陸地点が月の裏側となるため、月と地球の通信を確立するために、2基のリレー通信衛星も輸送する予定です。
すでにNASAさま、米国民間企業のRhea Space Activityさま、ルーマニア民間企業CDSさまのペイロードを輸送することが確定していますが、今般、既存契約の契約金増額と、新規ペイロード契約の締結がありました。次のスライドで詳細をご説明します。
ミッション3の進捗
すでに輸送することが確定しているNASAのペイロードについては、重要なプログラム要件を満たすため、追加の対応が生じたことに伴い、係る既存契約の契約金額が5,400万米ドルから6,200万米ドルへと増額されました。
そして、新たにイタリア政府宇宙機関さまと35万ユーロのペイロード契約を締結しました。スライド右上の写真のとおり、手のひらサイズのレーザー反射鏡を月面輸送するものです。本ペイロードの契約は、イタリア政府宇宙機関さまとの初の商業契約となり、将来的にイタリア政府宇宙機関さまによる本格的な月面開発が期待されます。
当営業面での進捗により、Mission 3の総契約金額は6,500万米ドルとなりました。引き続きペイロード容量にスペースがありますので、営業活動を推進していきます。
ミッション計画 – ミッションのナンバリング変更
全社的な将来ミッションの打ち上げタイミングをアップデートしましたので、ご説明します。
足元で開発が進んでいる2026年打ち上げ予定の米国のMission 3と、前回までMission 6と呼んでいた2027年打ち上げ予定のSBIR補助金を活用した日本のミッションは、いずれも打ち上げ時期に変更はなく、順調に進捗しています。
今回アップデートしたのは、まだ製造に着手していない今後のミッションとなります。もともと、Mission 3として米国で開発中の「APEX1.0ランダー」は、その後は量産の上、続くMission 4、Mission 5に充てる計画でした。
しかし、NASAさまによる「CLPS」プログラムのタイミングなどを踏まえ、当社4番目のミッションには、これまでMission 6と呼んでいた2027年に打ち上げ予定である、SBIR補助金を活用した日本のミッションを先行させることにしました。
「APEX1.0ランダー」を使用した米国の量産ミッションについては、Mission 5以降に実施していきます。
このように、当社は日本と米国でそれぞれ商業ミッション向けの大型ランダーを開発しています。今後もお客さまの需要や市場環境に応じ、柔軟に日米でミッションの順番を調整し、月面輸送サービスを提供していきます。ミッションからのLessons Learned(学んだ教訓)を日米の垣根なくシームレスに、後続するミッションへ反映していく計画です。
これを実現するために、日本と米国のランダー開発チーム・運用チームは、日米間の輸出入規制を日々遵守しつつも、必要なTechnical Assistance Agreement(技術援助協定)を取得するなどし、必要な情報交換や人材交流を頻繁に実施しています。
このようにフィードバックサイクルを高めることで、より高品質な輸送サービスを提供することを目指していきます。
ミッション4(旧ミッション6)の進捗
最後に、2027年に打ち上げを予定し、日本で開発を進めているミッションについてです。これまではMission 6と位置づけていましたが、今四半期より当社4番目のミッションにナンバリングを変更し、Mission 4とします。
当社は日本政府のSBIR制度の公募テーマである「月面ランダーの開発・運用実証」に採択され、当制度の最大額である120億円の補助金が交付されることが決まっています。
当補助金はすでに、Mission 4で使用する「Series 3ランダー(仮称)」の開発費用の一部に充当されています。今期中に受領した補助金は、期末までに中間審査を行った上でP&Lの営業外収益に計上し、当社収益の一部として認識される予定です。
ミッション4(旧ミッション6)の進捗
Mission 4で使用する「Series 3ランダー(仮称)」は、GNC(Guidance, Navigation, and Control:誘導航法制御系)と呼ばれる誘導・航法・制御を行うサブシステムの基本設計が進行中です。
本件が完了すると、すべてのサブシステムの基本設計が完了となり、PDR(Preliminary Design Review:基本設計審査会)と呼ばれる開発の需要マイルストーンを完了する予定です。
その後は、基本設計に基づき製作した「熱構造モデル(STM:Structural Thermal Model)」を用いて宇宙環境を模擬した振動試験、熱真空試験などを行い、機械的・熱的観点での設計の妥当性を確認していく予定です。
グローバル顧客の開拓状況
グローバル顧客の開拓状況についてです。第2四半期の決算発表以降、新たに4つのMOUを締結しています。台湾国家宇宙センターさまとは、将来的なペイロード輸送も含めた多角的な協力関係の構築に向けた覚書を締結しました。
グローバル顧客の開拓状況
月面でのヘリウム3採掘を目指す米国のMagna Petraさまとは、当社の将来ミッションでのペイロード輸送に加え、将来的なヘリウム3を含む月の資源探査での協業も目指した覚書を締結しました。
アジア地域では、モンゴルのONDO Spaceさまとのペイロード輸送に係る覚書を結び、また韓国のHANCOM InSpaceさまとはペイロード契約だけでなく、データ・サービスの提供にもつながる覚書を締結しました。
ここからはCFOの野﨑より、財務面での進捗についてご説明します。
業績予想の上方修正
野﨑順平氏(以下、野﨑):CFO兼事業統括エグゼクティブの野﨑です。
まず初めに、本日適時開示したとおり、今期の業績予想の上方修正についてご説明します。売上高は2024年5月10日に発表した前回予想対比で4億3,400万円の増収、売上総利益は18億300万円の増益です。営業損失は32億9,300万円の縮小、当期純損失は17億200万円の縮小を見込んでいます。
このたび監査法人との協議を踏まえ、Mission 2における売上計上基準を変更する予定となったことが、修正の主な背景です。次のページ以降で詳細をご説明します。
業績予想の上方修正_売上
売上高の修正に関する変動要因です。まず、足元で進行中のMission 2のペイロード売上は、売上計上基準の変更に伴い、前回予想対比で17億5,400万円の増収となります。このたび監査法人との協議を踏まえ、今期第4四半期より売上計上基準を「原価回収基準」から「履行義務の進捗度に基づき収益を認識する方法」に変更予定です。
これにより、当初は来期のミッション完了時に計上が予定されていた売上の一部、約17億円が今期第4四半期に前倒しで計上されることになりました。この計上基準については、次のページで詳細をご説明します。
一方でMission 3のペイロード売上については、以前からご説明していましたが、原価計上の遅れが生じており、前回予想対比で14億3,800万円の減収を見込んでいます。
原価計上の遅れのうち、約半分は費用計上タイミングの変更によるものです。具体的には、支出時点で都度費用認識すると想定していた部材が、実際には最終支払いの際に一括で費用計上される見込みとなり、今期の原価計上が減少したものです。
残りの約半分は、メインボディやタンクなどの一部部材において、一定期間の納品遅延により、来期以降に計上されることによるものです。ただし、この納期遅延がMission 3の開発スケジュールへ与える影響はありません。
今期のMission 3のペイロード売上は減少しますが、計上が来期以降に繰り延べられただけであり、本質的に失われる売上ではないということを補足します。
Mission 2の売上が17億5,400万円の増収となり、Mission 3の売上が14億3,800万円の減収となることで、今期の売上高は前回予想対比で差し引き4億3,400万円の増収を見込むことになりました。
業績予想の上方修正_売上計上基準
Mission 2の売上計上基準の変更についてです。これまで当社のミッションについては、すべて「原価回収基準」を用いて売上計上されていました。これは監査法人との協議により、ミッションの実績がまだ少ないことから、原価発生の進捗度合いを合理的に見積もることが困難とされていたためです。
スライド左側で示しているチャートのとおり、「原価回収基準」では、ミッション完了までは発生原価と同額の売上が毎月計上され、ミッション単体で見た粗利が原則ゼロになります。
そしてミッション完了時に、総契約金額からそれまでに計上した累計売上高を除いた金額を、完了時点の売上として一括計上し、初めてミッション単体での粗利を認識するというものでした。
一方、スライド右側をご覧ください。今回Mission 2の打ち上げが完了し、ミッションが進行中であることから、原価発生の進捗度合いを合理的に見積もることが可能になったと判断されました。そこで監査法人との協議を踏まえ、今期第4四半期から「履行義務の進捗度に基づき収益を認識する方法」へと変更し、売上高を計上することになりました。
少し長い名前であるため、便宜的にここでは「進捗基準」と呼ぶことにします。これは、いわゆる「工事進行基準」に類似するものです。
「進捗基準」は「原価回収基準」と異なり、発生原価以上の売上が毎月計上され、Mission 2単体での粗利も毎月計上されます。
今期第4四半期より「進捗基準」へ移行することで、仮にミッション開始時点から「進捗基準」を採用していたらそれまでに計上されていたであろう売上と、従来の「原価回収基準」に基づき計上済みの売上高との差額を、移行時点でキャッチアップする一時的な売上として計上することになります。
したがって、今期第4四半期にてMission 2に関する大きな売上高を計上する見込みです。
業績予想の上方修正_当期純損益
今ご説明したとおり「進捗基準」に移行することで、ミッション完了前であってもMission 2単体で粗利が発生することになるため、移行時点でキャッチアップする一時的な粗利も計上されます。これが、当期純損失の変動要因のうち、18億300万円を見込む損失縮小要因です。
また、主にMission 3費用における原価計上の遅れにより、付随する研究開発費の計上にも遅れが発生し、販管費等が14億9,100万円減少する見込みであることも、損失縮小のもう1つの要因です。
一方で、損失拡大の要因についてです。主にMission 4(旧Mission 6)のSBIR補助金の入金に関する初回の検査期間が想定より長期化し、結果的に今年度受領予定の一部が翌期に繰り越される見込みとなった影響で、損失が12億400万円拡大する見込みです。
全体としては、前回予想対比で差し引き17億200万円の損失縮小となる見込みです。以上が、業績予想の上方修正に関するご説明となります。
Q3損益計算書
ここからは、第3四半期の実績についてご説明します。第3四半期累計期間の売上高は19億8,900万円と、前年同期比で増加となりました。
これは、前期第1四半期で一時的に発生していたMission 1完了に伴う売上の一括計上5億7,500万円が今期はない一方で、今期は主にMission 3からの売上が前年同期比でプラス87.1パーセントと大幅に増加したためです。
営業損失は64億3,400万円と、前年同期比で損失が拡大しています。これも同様に、前期第1四半期で一時的に発生していたMission 1完了に伴う売上総利益の計上が今期はないこと、及び主に研究開発費が前年同期比で増加したことによるものです。
なお、Mission 2の打ち上げ費用の一括計上は第3四半期では計上しておらず、今期第4四半期で計上予定です。
当期純損失は73億6,500万円と、前年同期比で損失が大幅に拡大しています。ここまでご説明した要因に加え、前期第2四半期会計期間で特別利益として計上していた月保険37億9,300万円が、今期は発生していないことが主な要因となっています。
Q3損益計算書 - 販売管理費の内訳
販売管理費の内訳を示したものになります。研究開発費は37億900万円と、前年同期比で増加となりました。
これは主に、研究開発ミッションとして位置づけている日本のMission 2にかかる開発費が前年同期比で増加したことが要因です。それに加えて、商業ミッションの位置づけである米国のMission 3及び日本のMission 4(旧Mission 6)において、開発関連費用の一部が原価ではなく研究開発費として計上され、その分が前年同期比で増加したためです。
給与及び手当については11億8,500万円と、前年同期比で増加となりました。これは主に、グループ全体で従業員が前年同期比で51名増加したことによるものです。
その他の部分では、「譲渡制限付株式ユニット」という新たな株式報酬制度の導入に伴い、一時的な費用を計上したことなどにより、前年同期比で増加となりました。
サービス別売上高推移
第3四半期の売上を踏まえた、四半期ごとの売上高の推移です。これまでご説明したとおり、Mission 3の原価発生が遅れていることから売上計上が遅延しています。しかし、第4四半期においては、Mission 2での売上計上基準の変更に伴う大幅な増収を見込んでいることから、今期通期で44億6,700万円の売上を計上予定です。
これは昨年度の通期売上実績の23億5,700万円と比較して、約90パーセントの売上成長となる見込みです。
Q3貸借対照表
バランスシートです。資産サイドについては、現預金は132億3,300万円と、前期末対比で若干減少となりました。昨年10月発表のエクィティ・プログラムによる第1回と第2回分の増資、及び日本政策金融公庫からの新規借入がある一方で、既存の借入金の一部返済やミッション費用の支払いが発生しているためです。
有形固定資産は39億2,900万円と、前期末対比で増加となりました。これは主に、Mission 3で使用するリレー衛星の支払いを建設仮勘定として、前期末対比12億5,500万円を計上したことによるものです。
負債サイドです。前受金は、主にNASAの「CLPS」に伴うチームDraperさまからの入金により、33億500万円で着地し、前期末対比で増加となりました。
有利子負債は172億3,100万円と、前期末対比で増加となりました。これは主に、既存借入金の返済がありつつも、新規借入を行ったことによるものです。
純資産については、10月発表のエクイティ・プログラムの第1回と第2回の増資分の計上により、資本金及び資本準備金が増加した一方、利益剰余金の減少により前期末対比で減少しています。
当社KPI
当社のKPIについてです。月面開発事業は長期の時間を要します。したがって、当社としては四半期ごとの決算数値だけにとらわれず、中期の目標に対しての進捗のご説明をより丁寧に行うことも重視し、営業面と開発面でのKPIの進捗をお伝えしています。
Mission 2は、2025年1月15日に打ち上げ、現時点でSuccess 4まで順調に進んでいます。
米国でのMission 3は、営業面では既存契約の契約金増額、及び新規ペイロード契約締結により、最終合意済みの総契約金額は6,500万米ドルとなりました。また、潜在顧客との協議も進んでおり、最終契約化に向けて邁進しています。
日本でのMission 4(旧Mission 6)は、「Series 3ランダー(仮称)」の全サブシステムの基本設計が完了間近であり、Mission 2の運用と並行して順調に開発が進行しています。
また、引き続き3億9,500万ドル、日本円にして約600億円超の売上パイプラインを保有しています。
第3四半期において、新たに3社の民間企業と1社の政府宇宙機関との間で締結したMOUのように、契約金額の記載がないため先述のパイプライン累計額には含まれない一方で、包括的な戦略的協力を企図した定性的なKPIに寄与するパイプラインも存在します。
また、MOUやInterim PSA(Interim Payload Service Agreement:ペイロードサービス中間契約)というパイプラインに加え、NASAさまによる「CLPS」プログラムをはじめ、政府案件の公募にも継続的に応募していきます。
ビジネスモデルイメージ
当社のビジネスモデルのイメージです。スライドに記載の将来のミッションスケジュールや重量などは、あくまで現時点のシミュレーション・イメージだとご理解ください。将来ミッションのスケジュールの見直しを行ったため、ビジネスモデルも今回アップデートしていますが、当社の成長ストーリーはこれまでと変わりません。
日米での継続ミッションを通じて、ランダーのデザイン上のペイロード重量を拡大させ、1ミッションで少なくとも100キログラムを超えるペイロードを販売することをイメージしています。これらにより、売上の拡大を見込みます。
一方で開発コストは、ミッションを重ね、量産化が進むにつれて低減させていくことができると考えています。足元では「APEX1.0ランダー」と「Series 3ランダー(仮称)」の初期モデルの開発を進めていることから、Non-Recurring Engineering cost(一度限りの設計・開発コスト)と呼ばれる初期的な開発コストの負担が大きくなっています。
しかし、冒頭で「Mission 1と比べてMission 2の開発コストが半減した」とお伝えしたように、今後ランダーの量産化が進むにつれ、足元は赤字となっているミッション当たりの収益を、徐々に黒字化させていくイメージを持っています。
収益化は、ミッション頻度を増やすことでさらに加速させることが可能です。将来的には、年間2回から3回のミッションを実施する計画であり、累積的な利益水準の改善・引き上げを目指します。これが、ispaceが目指す今後の利益成長ストーリーです。
IR活動の状況
最後にIR活動についてです。当社では、2024年9月末の株主さまを対象に「ミッション2記念」の株主優待制度を発表していました。
当優待において当選された株主さまを「オフィス訪問会」、及び冒頭でお伝えした「打ち上げ応援会」にご招待しました。参加いただいたみなさまからは応援のメッセージと、イベントに対して満足のお声をいただきました。
現在、5月末から6月頭に予定されている着陸イベントへの招待案内も企画しています。詳細が決まり次第、アナウンスしますので、楽しみにお待ちいただけると幸いです。
ご報告は以上となります。
質疑応答:「アルテミス計画」における日米協力による影響について
「『アルテミス計画』に関してです。先週末に開催された日米首脳会談で、『アルテミス計画』に向けたパートナーシップの継続が確認されました。トランプ政権による宇宙政策の継続性が注目される中で、月探査における日米協力が再確認されたことの受け止め方、そして御社の今後のミッションへの影響を教えてください」というご質問です。
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