目次
別宮圭一氏(以下、別宮):株式会社インターネットインフィニティー代表取締役社長の別宮です。本日は、主に我々の事業環境や事業内容、成長戦略についてご説明します。個人投資家のみなさまに個別銘柄として選んでいただけるよう丁寧にご説明しますので、どうぞよろしくお願いします。
本日の目次はスライドのとおりです。
健康な未来
別宮:はじめに、経営理念と会社概要についてご説明します。
当社グループのコーポレートスローガン・経営理念は「健康な未来」です。超高齢化社会における課題を創意革新と挑戦によって解決し、すべての世代が安心していきいきと活躍し続けられる健康な未来を目指しています。
会社概要
別宮:会社概要です。当社は2001年5月、私が29歳の時に創業し、現在24年目となります。後ほどご案内しますが、当社はいくつかの事業を行っているヘルスケア関連のベンチャー企業です。
超高齢社会における課題
別宮:事業環境についてご説明します。超高齢社会における課題として、スライドのグラフは高齢化の推移と将来推計を示しています。下の折れ線グラフが65歳以上の人口割合、上の折れ線グラフが労働力人口の割合を示しており、非常に高齢化率が高まっていることがわかります。
高齢者数の増加により、日本は社会保障費の増大、医療・介護人材の不足、労働力不足の3つの重大な課題を抱えています。特に我々の業界では、2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者になることにより、医療・介護などの社会保障費が急増すると言われています。これが「2025年問題」です。
さらにその先には、高齢者人口がピークに達し、医療や介護の需要が増加する一方で、介護人材不足が深刻化すると言われています。これが「2040年問題」です。このような社会課題を抱えているのが、我々の事業環境です。
事業領域
別宮:事業領域についてご説明します。超高齢化社会における課題を解決するべく、BtoCとBtoBの両面で、幅広い対象をターゲットに健康な未来を作るための事業を展開しています。
スライド左側はBtoC事業を示しています。中央のレコードブック事業は、主に「2025年問題」の解決に向けた取り組みとして、リハビリ型デイサービスなどの介護予防により健康寿命の延伸を目指す事業です。
スライド右側のBtoB事業は、Webやインターネットを使った事業となります。労働力不足の課題や「2040年問題」の解決に向けた取り組みとして、仕事と介護の両立支援やシルバーマーケティング支援などを行っています。
さらに新規事業としては、「2040年問題」の解決に向けてDXソリューション事業を行っています。
事業内容
別宮:事業内容についてご説明します。まずはレコードブック事業です。
「レコードブック」は、運動指導に特化した3時間のリハビリ型デイサービスです。デイサービスですので、介護保険を使ったサービスになります。主な対象は、要支援から要介護2までの要介護認定者です。
要介護度は5段階で示し、最も重度の方が要介護5、軽い方が要介護1、その手前に要支援1と要支援2があり、全部で7段階となります。「レコードブック」では、最も軽い要支援1から要介護2程度までの、4段階ほどの要介護認定者を対象としています。
要介護3ぐらいになると一人で歩行するのは難しく、介助が必要、場合によっては寝たきりに近いような方々が多いです。要介護1から要介護2ぐらいの方は、ご自身で生活ができる、ただし注意がかなり必要であるという方々になります。
「レコードブック」は、介護予防として3つの特徴があります。1つ目は「介護を感じさせない空間」、2つ目は「専門的な運動指導」、3つ目は「ホスピタリティ」です。
要介護認定を取られたばかりの方々の多くは、いわゆる介護施設や旧来のデイサービスを嫌がります。特に男性に嫌がる方が多く、「お年寄りばかりのところに行きたくない」といった方が非常に多いです。そのようなお客さまにフィットするように、介護を感じさせないフィットネスクラブのような外装・内装にしています。
また、ホスピタリティとして体験価値を高める工夫をしています。「おじいちゃん・おばあちゃん扱いをしない」というかたちで、丁寧に対応し、おもてなしと活気あふれた空間を作る工夫をしています。
運動プログラムについては、筑波大学の田中喜代次教授と共同開発した専門的な運動プログラムを提供しています。
現在は全国に231店舗を展開しており、フランチャイズを中心に店舗が増え続けています。レコードブック事業では、いつまでも自分らしく自由な人生を楽しむことをサポートする、介護予防のデイサービスを提供しています。
後ほど動画をご覧いただきますが、おそらくみなさまが想像する従来の介護施設やデイサービスとはだいぶイメージが違うリハビリ型デイサービスになっていることが特徴です。
事業環境
別宮:レコードブック事業の事業環境についてです。スライド左側に、介護度別人口の予測推移データを記載しています。2025年には、要介護認定者数が合計約780万人になると言われています。約780万人のうち、要支援1から要介護2までの方が約500万人と、やはり軽度要介護高齢者が非常に多くなっています。
「レコードブック」は軽度要介護高齢者を対象としています。しかし、「レコードブック」のような運動指導やリハビリに特化した短時間型のデイサービスは、市場規模は非常に大きいにもかかわらず、店舗数が大変少ない状況です。そのため、拡大余地や新規利用者の見込み数が非常に大きいという特徴があります。
先ほど事業環境でもご案内したとおり、我々が10年前から取り組んでいる「2025年問題」は、いよいよ来年から問題自体が顕在化します。つまり、これから要支援・要介護の高齢者が大きく増加するということです。
そして要介護者の中でも、特に要支援1から要介護2までの軽度要介護者の増加が著しくなり、レコードブック事業の対象となる高齢者が非常に増えてくると見ています。
ここで、「レコードブック」の動画をご覧ください。
直営店及びフランチャイズ(FC)での展開
別宮:レコードブック事業は直営店とフランチャイズで展開していますが、ここ数年はフランチャイズ展開に力を入れ、全国に店舗を広げています。
なぜフランチャイズに力を入れているかというと、おかげさまで需要の多いサービスであり、当社としても店舗拡大スピードを優先したいと考えているからです。そのため、拡大スピードの速いフランチャイズ方式にかなり注力しています。
直営店展開とフランチャイズ展開を比較すると、直営店のほうが売上自体は大きいものの、利益率はフランチャイズのほうが高くなります。そして当然ながら、店舗拡大スピードはフランチャイズのほうが速いです。
また、介護業界は特に人材確保が非常に厳しいと言われており、我々も多少苦戦しながら一生懸命に人材採用へ力を入れています。
こちらについても、フランチャイズでは加盟店が採用します。フランチャイズ加盟店は地域に密着した企業のため、個別に地域密着の採用活動を行っていただいています。我々が全国で採用するよりも、しっかりと地域に根づいているフランチャイズ加盟店が直接採用したほうがよいだろうと考えています。
これらにより、フランチャイズ店舗数は186店舗と直営店舗に比べ、圧倒的に多い状況です。
収支モデル
別宮:「レコードブック」の収支モデルについてご説明します。「レコードブック」は、1店舗当たりの月間売上高が約335万円ですので、年間売上高が約4,000万円となります。原価のほとんどは、スライドに記載のとおり人件費です。
「レコードブック」は非常にシンプルな収支モデルです。お客さまは介護保険を使う方が対象のため、一見の方はご利用になれません。ケアマネジャーからご紹介いただいた、要介護認定を取られた方のみが対象となります。
オープンしてから徐々にお客さまが増えていき、稼働率70パーセントを超えたあたりで単月黒字化となり、早ければ6ヶ月から1年ほどで単月黒字化を迎えます。その後、稼働率を上げていき、1年から1年半ほどでおおむねフル稼働というかたちになります。
ケアプランに沿って毎月同じお客さまにご利用いただきますので、非常に安定性の高いストック型ビジネスとなっています。
1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):フランチャイズによる売上には加盟料金やロイヤルティ収入などさまざまなものがあると思いますが、あらためて売上の立て方について教えてください。
別宮:「レコードブック」のフランチャイズに加盟される際は、まず初期費用として約430万円をいただきます。そこには加盟金や初期研修費、開発支援費、広告販促関連費などが含まれており、これが我々にとって初期の売上となります。
次に、フランチャイズ加盟店の売上高に応じたフィー、いわゆるロイヤルティがランニング売上となります。こちらでは、加盟時にAプランとBプランの2種類を選んでいただきます。
Aプランでは、我々がエリアマーケティングをして物件を見つけてきます。しかし、内装工事や什器備品などの資産は加盟店に投資してもらい、運営していただきます。こちらは、売上高の6パーセントをロイヤルティとしていただきます。
Bプランでは、初期費用を我々本部が負担して、分割でお支払いいただきます。こちらは初期費用を下げる目的があります。Bプランの場合は、売上高の8パーセントをロイヤルティとしていただきます。
Ken:1店舗当たりの損益分岐点として70パーセント以上を超えるために、具体的な会員人数ではどれぐらい必要になってくるのでしょうか?
別宮:「レコードブック」は介護保険サービスにおけるデイサービスになりますので、定員が決まっており、稼働率がほぼ満員になることを目指していきます。
稼働率100パーセントでの会員数は110名ほどになります。したがって、採算分岐ラインの稼働率70パーセント前後においては、会員数が約80名になると単月黒字を迎えるというかたちになります。
Ken:先ほどのお話では、地域の法人にフランチャイズへ加盟していただくとのことでした。展開の仕方として、1つの地域では1つの法人がどんどん店舗を増やしていくイメージで合っていますか?
別宮:おっしゃるとおりです。地域で開業いただいたオーナーにまず1店舗運営いただき、稼働率が満員に近い状態になったら近隣にドミナントで出店・増店をしていただきます。1エリアを1つのオーナーに任せるかたちです。
そのため、我々本部は他オーナーを近くに誘致するようなことはせず、1つのオーナーにドミナント出店していただくことで経営・運営効率を高めていきます。
Ken:1エリアの大きさはだいたいどのくらいですか?
別宮:「レコードブック」ではお客さまを車で送迎するため、決められた時間内に送迎車で行き帰りができる距離を対象エリアとしています。店舗を中心とした目安は、都市部では半径2.5キロ、都市部ではないエリアは半径3キロほどですので、半径2.5キロから3キロぐらいが1店舗あたりの商圏エリアとなります。
Ken:車で片道10分から15分ぐらいのエリアということですね。
別宮:おっしゃるとおりです。
Ken:閉店や退店の主な理由についても教えていただきたいです。
別宮:残念ながら閉店する店舗もあります。本部としては開業前に入念にエリアマーケティングを行い、需要の見込める地域に出店していますが、やはり思うように集客が進まないケースもあります。
具体的には、地域特性に合わせた運営ができないケースや、オーナーが積極的に関与しないケースなどにより、稼働率が上がらないことがあります。そのような場合は、残念ながら閉店をするというかたちになります。
ケアマネジャーの業務支援ポータルサイト ケアマネジメントオンライン
別宮:Webソリューション事業についてご説明します。こちらでは、介護保険制度や仕組みの中でキーマンとなる「ケアマネジャー」という資格者に専門特化したポータルサイト「ケアマネジメントオンライン」を運営しています。
現在、全国には約20万人の現役ケアマネジャーがいると言われています。その約半数にあたる約10万人のケアマネジャーが会員登録をしているポータルサイトです。
専門職向けのポータルサイトになるため、コンセプトはケアマネジャーの業務支援です。業務支援ツールや介護関連ニュースの配信、ケアマネジャー同士でコミュニケーションが取れるコミュニティ・掲示板機能、事業所・介護施設の検索機能があります。
最近では、生成AI「ChatGPT」も活用しています。ケアマネジャーは書類作成業務が非常に多いため、「ケアマネジメントオンライン」を通じて、AIを使った書類作成支援ツールも提供しています。
ケアマネジャーの役割
別宮:ケアマネジャーの役割についてご説明します。介護保険制度は少し複雑で、65歳を過ぎて役所に申請すると、認定審査が行われます。審査に通り、介護が必要だと行政が判断すると、介護保険を使えるようになります。
介護保険を使う際は、介護施設や介護サービスを提供する事業者や企業に直接依頼をするわけではなく、間にケアマネジャーが入ります。そのため、まずはケアマネジャーを選んで契約をします。ケアマネジャーが要介護高齢者もしくはご家族とコミュニケーションをとり、アセスメントをして、具体的にどのような介護が必要なのかを考えます。
専門職であるケアマネジャーが検討し、「ケアプラン」と呼ばれる介護サービス計画書を作ります。そしてケアマネジャーは、ケアプランに沿って介護サービス事業者に依頼をします。依頼を受けた介護サービス事業者は、要介護高齢者に直接サービス提供を行うという、三角形の関係になっています。
介護サービスを提供する事業者は、すべてケアマネジャーを通じてケアプランを受け取る必要があります。そのため、ケアマネジャーは介護保険制度におけるキーマンであると言えます。
介護保険給付費は、多くの高齢者が1割負担になるため、9割が国から給付されます。2023年度に介護にかかった費用は、11兆5,000億円と言われています。このすべてを約20万人のケアマネジャーがコントロールしているため、キーマンだと言えると思います。
スライドに記載のとおり、ケアマネジャーはサービスの提供開始時だけでなく、その後も継続的に要介護高齢者のご自宅に訪問します。こちらは「モニタリング」と言い、月に1回必ず対面してモニタリングを行い、ケアプランを変更する必要があれば変更をします。こちらは法律で定められています。
ケアマネジャーは1人で35名から40名ほどの高齢者を担当するため、毎月1ヶ月かけて30名から40名のご自宅に訪問し、モニタリングを行うという業務をしています。
事業内容
別宮:Webソリューション事業には、大きく2つの事業があります。1つ目は、シルバーマーケティング支援です。ケアマネジャーの会員基盤を活用し、主にメーカー向けにサービスを提供しています。消費財や食品、製薬、医療機器、ヘルスケア商品などにおける大手メーカーの啓発活動・マーケティング活動、調査・製品開発のコンサルティングを、行っています。
2つ目は、仕事と介護の両立支援です。昨今大変増えていると言われる「ビジネスケアラー」を支援するサービス「わかるかいごBiz」を提供しています。現在の導入企業数は大手企業を中心に220社を超えており、約230万人の従業員のみなさまにお使いいただいています。
事業内容
別宮:シルバーマーケティング支援についてご説明します。当社が約10万人のケアマネジャーを通じてリーチしているのが、約360万の高齢者世帯です。大手メーカーが高齢者世帯に直接リーチしてサービスを提供するのは、非常に難しいことです。
また、CMやWebなどを通じたマーケティング施策は効率が悪く、効果が得られにくいです。ケアマネジャーに直接アプローチするのも少し難しいため、当社が企業に代わって、ケアマネジャーを通じて高齢者世帯へダイレクトにアプローチしています。
先ほどお伝えしたとおり、ケアマネジャーは月に1回必ず高齢者のお宅を訪問し、モニタリングを行います。その面談時に、企業の製品やサービスをご案内するかたちでマーケティング活動をできることが大きな特徴です。
事業環境
別宮:仕事と介護の両立支援についてご説明します。最近は、ビジネスケアラーが大変増えてきていると言われています。経済産業省の試算によると、2030年には318万人となり、企業における経済損失額は9兆円になると言われています。
2025年4月に育児・介護休業法が改正され、労働者への仕事と介護の両立支援制度の周知がすべての企業に義務化されます。
現在の「わかるかいごBiz」は、主に大手企業向けに提供していますが、来年の法改正に向けて中小企業をはじめとした全企業が対象となります。仕事と介護の両立支援制度の周知が義務化されるため、当社では中小企業に専門特化した新しいプロダクトを開発し、11月初めにローンチしたところです。
事業内容
別宮:仕事と介護の両立支援サービスはパッケージ化しています。インターネットを使った従業員の実態把握調査や介護情報の提供サイト、eラーニング、従業員向けのセミナーなどがあります。
また、さまざまな困り事に対応する「介護コンシェルジュ」では、電話やメールで相談できます。例えば「ケアマネジャーを探してほしい」「介護施設を探してほしい」などの相談が可能なほか、介護保険の申請代行も行っており、当社の専門相談員が対応します。
こちらは、「ケアマネジメント・オンライン」に登録いただいている約10万人の現役ケアマネジャーが、24時間介護相談にお応えするサービスです。サービス自体は、企業との年間契約によって費用をいただいているため、従業員はすべて無料で使えます。当社としては、ストック型のビジネスとなります。
2011年のサービス開始当初は「福利厚生を厚くしたい」というご要望が多かったため、企業の福利厚生サービスという位置づけで提供していました。しかし直近の数年間は、従業員のキャリア継続だけではなく、企業の人的資本経営の実現や人材不足に対するリスクマネジメントなど、企業の導入目的も少しずつ変わってきているのが大きな特徴です。
業績サマリー
別宮:2025年3月期中間期の業績についてご説明します。スライドには、業績サマリーを掲載しています。各事業の利益率改善により、前年同期比で各段階利益は大幅増益と足元は好調です。
中間期累計期間の進捗状況も、各事業でおおむね計画どおり順調に推移しています。スライド右側に記載しているとおり、各段階利益の進捗率も大変順調です。
レコードブック利用者数推移
別宮:「レコードブック」の利用者数の推移です。アクティブ会員数として、2024年5月に月間利用者数が2万人を超え、10月末時点では2万1,000人を超えています。
Ken:2020年3月期に大きく利用者数が減っています。特にフランチャイズの減りが大きいと思いますが、この理由について教えてください。
別宮:こちらは新型コロナウイルス感染症の影響です。「レコードブック」は高齢者が対象となるため、緊急事態宣言による外出自粛で利用控えが進み、大きな谷になっています。全国的に利用控えが進んだため、稼働が大きく落ち込みました。
その後もいくつか落ち込んでいるところがありますが、こちらも緊急事態宣言などが発出されるたびに落ち込み、影響が出たということです。
Ken:店舗の拡大ペースよりも、利用者数の拡大速度のほうが大きく見えます。先ほどご説明いただいたとおり、開店から1年くらい経ってから利用人数が損益分岐点を迎えるということでしたが、こちらも関係しているという認識で合っていますか?
別宮:おっしゃるとおり、理由のひとつとなっています。お客さまがすぐに増える飲食業などとは違い、レコードブックは介護保険を利用するサービスで一見のお客さまは入らないため少しずつ増えていきます。
もうひとつの理由は、コロナ禍にお客さまが減りましたが、フランチャイズ加盟オーナーも減りました。コロナ禍真っ只中に加盟して、新しく「レコードブック」を行う方はなかなかいないため、こちらの期間はフランチャイズの新規加盟申し込み件数自体も落ち込みました。
そのため直近の数年間は、新規出店のスピードを上げるよりも、既存店舗の稼働率を高めていくことに注力しました。既存店舗の稼働率が高まることによって、近隣の増店につながります。新規加盟のスピードを落として、既存加盟店の増店に力を入れたということです。
ちょうどコロナ禍からの数年間は、既存店の稼働率を高めることに集中したという理由があり、店舗数の伸びよりも利用者数の伸びが高くなったと言えると思います。
Ken:現在は、稼働率の高い既存店舗が多いということでしょうか?
別宮:おっしゃるとおりです。既存店舗は、おかげさまでかなり稼働率が高い状態で、すでに増店の申し込みもいただいています。下期から準備していますが、来期以降は新規加盟者の申し込みも含めた店舗の拡大に力を入れ、店舗拡大と利用者数拡大のバランスを図っていくことになります。
Ken:フランチャイズ加盟店が「そろそろ増店しよう」と思うタイミングについて教えてください。例えば、稼働率が80パーセントや90パーセントになってきたら相談が来るなど、肌感でもいいので教えていただけますか?
別宮:「レコードブック」の出店は、フランチャイズ加盟店から申し込みをいただいてから開業するまでのリードタイムが約6ヶ月あります。これは、行政への申請が必要な許認可事業となるためです。
地域自治体によって申請から開業できる期間はまちまちですが、平均で2ヶ月くらいかかります。申請の段階で内装工事が全部終わっていなければならず、店舗を見つける期間はもっと前になるため、開業までに約6ヶ月かかります。
既存店舗の多くのオーナーは、単月黒字化が見え始める稼働率70パーセント前後のタイミングで次の店舗をどちらのエリアに出すかを考え始め、単月黒字化が見えてきたタイミングで申し込みます。
出店は、ロスがないようにドミナント出店を行います。先ほどお伝えしたとおり、お客さまをご自宅まで送迎するため、2店舗目を近くに出して1店舗目が満員に近い状態となったら、2店舗目のほうが近いお客さまはそちらへ移っていただきます。1店舗目の稼働を少し下げて空きを作り、ケアマネジャーから紹介いただいて稼働率を上げていくといった運営になります。
Ken:黒字になると「次を出そう」と考える加盟店が多いという認識で合っていますか?
別宮:ほとんどのオーナーに、増店の申し込みをいただいています。実は、最初の店舗を開業するタイミングから「最低でも3店舗を出したい」「少なくとも5店舗を展開したい」という方が非常に多く、1店舗目の段階で3年から5年の中期経営計画をイメージしていただいています。
どちらのエリアにどのようなタイミングで、2店舗目や3店舗目を出すかを考えていただきながら、当社がスーパーバイザーとして支援するかたちになります。
事業別の成長シナリオ
別宮:成長戦略についてご説明します。8月14日の第1四半期決算開示のタイミングで、当社においては初めての中期経営計画を発表しました。
スライドに掲載しているのが、当社グループの成長シナリオです。創業以来の投資により確立されたノウハウを活用し、社会課題を解決する事業を行うことを基本的な戦略としています。
先ほどご説明した「2025年問題」の解決に向けて、過去10年間は「レコードブック」を中心に健康寿命延伸事業を行ってきました。いよいよ2025年になるため、問題が顕在化することで、ほぼすべての既存事業が2025年以降に安定拡大期に入っていきます。
次の10年は、今まで積み重ねてきた健康寿命延伸事業とあわせて、介護人材の不足が加速する「2040年問題」の課題解決として、介護事業者向けのDXソリューション事業に取り組む考えです。
新規事業(中規模介護事業者向けDXソリューション)
別宮:新規事業についてご説明します。介護現場において介護人材が枯渇すると言われる「2040年問題」に対する我々なりのアプローチとして、介護事業者の生産性を向上することにより、介護人材不足および労働力不足の解決を目指します。
具体的には、当社が蓄積してきた介護事業の運営ノウハウ、各種データ、ネットワークなどを活用し、介護事業者にシステム連携、システム開発、コンサルティングサービスなどを提供するという事業計画です。
Ken:DXソリューションについて、具体的にどのようなことを行うのかなど、もう少し詳しく教えていただけますか?
別宮:人材不足は介護業界だけではありませんが、特にこの業界は深刻です。一生懸命に採用活動をしていますが、なかなか来ていただけません。そうなると、我々は介護現場の生産性を高めていくしかないということになります。
例えば高齢者の介護をロボットに任せることは、将来的には実現する可能性がありますが、現状では難しいと思っています。やはり、専門職である介護職の方が直接サービス提供を行うことが必要です。
しかし、現場ではいわゆる「ノンコア業務」と言われる、書類作成やそれに付随する業務が非常に多いです。我々の調べによると、介護現場のスタッフの業務時間の約3割、多い事業者では約4割がノンコア業務に取られています。
あるいは、すでに便利なシステムやアプリケーションを導入している事業者も、システム同士が連携されていないために何度も同じ情報を入力しているケースがあります。
我々はそのようなノンコア業務にICTを導入し、システムのつなぎ込みをしたり、便利なサービスアプリケーションの開発をします。さらには、書類作成や入力業務のようなノンコア業務を切り出して、BPOとして我々が引き受けるといったサービスをコンサルティングサービスで提供します。
これらのサービスをDXソリューション事業として提供することにより、介護職の方がコア業務に集中していただき、人材不足への対応を目指していきます。
2028年3月期目標
別宮:2028年3月期の数値目標です。当社は2025年度から2027年度にかけて3ヶ年の中期経営計画を開示しており、2028年3月期が最終年度となります。
連結売上高73億9,000万円、連結営業利益9億8,000万円、連結純利益5億7,000万を財務数値目標としており、営業利益率は13.3パーセント、ROEは22パーセントを目指したいと思っています。
セグメント別業績推移及び計画
別宮:セグメント別の業績推移と計画についてです。数字はスライドに記載のとおりで、既存事業の安定拡大により大幅な利益成長を実現します。また、新規事業開発によるさらなる事業規模と売上の拡大を目指します。
Ken:「レコードブック」の出店スピードについて教えてください。どのくらいの出店を計画されているのでしょうか?
別宮:「レコードブック」はコロナ禍で少し出店スピードが落ちましたが、来年度以降に新規出店を再加速させるべく、下期から準備を行っているところです。具体的には、中期経営計画1年目の2025年度に20店舗、翌2026年度に30店舗、最終年度の2027年度に40店舗と、3ヶ年で約90店舗の出店計画です。
なお、コロナ禍前の2017年度は47店舗、2018年度は55店舗出店しています。近年は年間10店舗から12店舗ほどの出店ですが、我々の店舗開発能力としては、年間40店舗から50店舗は十分開発可能です。これから、しっかりと再加速させていきたいと考えています。
Ken:2028年3月期には営業利益9億8,000万円を目指すということですが、これを達成する上でボトルネックになりそうなところはありますか?
別宮:利益目標の達成に向けて、ボトルネックになるものは特にありません。これは当社の文化でもありますが、中期経営計画の数字はチャレンジというよりも、既存事業の予算計画をしっかり立てて、積み重ねで達成するという考えです。
既存事業の予算計画をベースに新規事業を乗せており、計画に含まれる新規事業の利益は比較的保守的に見ています。そのため、2025年から安定拡大期に入る既存事業を丁寧に運営していくことが、利益目標達成のポイントだと思っています。
Ken:「レコードブック」の出店スピードも2025年度から20店舗、30店舗、40店舗と増やしていくということで、背伸びしておらず巡航速度だと感じました。「レコードブック」は半年後どのくらい出店しているのかなど、なんとなくの数字は常に把握されているのでしょうか?
別宮:そのとおりです。出店計画はかなり早い段階で見えています。
Ken:今期のレコードブック事業が減収増益となった背景は、フランチャイズが増えて直営店があまり増えていないからでしょうか?
別宮:少し仕組みが複雑なのですが、前年同期比で増益となった理由は、既存店の稼働率が上がったことと、直営の不採算店を昨年度に閉店した結果として全体の稼働率が上がったことです。それにより、利益は増えた一方で、売上が微減となりました。
売上が微減となった理由は2つあります。1つは先ほどお伝えした不採算の直営店4店舗の閉店で、利益は増えたものの売上が減少したということです。
もう1つは、先ほど「レコードブック」のフランチャイズ加盟には、AプランとBプランがあるとお伝えしました。Bプランは初期費用を下げて、我々がアセットを持って分割でお支払いいただくプランですが、最初の5年間は分割で、6年目に入る時に自動的にBプランからAプランに切り替わります。
5年経過した店舗数が、前期と今期でかなり増えています。我々はBプランで分割支払いいただく分は売上で計上しますが、その同額を減価償却費として原価計上するため、利益に影響せず売上だけ乗ることになります。
このようにBプランからAプランに切り替わる店舗数が増えると、利益は増えるものの売上は落ちたように見え、減収増益となります。
株主還元策
別宮:株主還元策についてご説明します。当社は2024年3月期から配当を開始し、2025年3月期は増配の予定です。利益配分に関する基本方針として、資本の健全性や成長投資とのバランスを検討した上で、配当を基本として株主還元を実施します。
当社の既存事業はいよいよ安定拡大期に入ってきましたので、しっかりと利益成長、配当の増額を目指していきます。さらに、配当性向に関しては累進的に高める方針です。みなさまどうぞよろしくお願いします。
私からのご説明は以上です。ありがとうございました。
質疑応答:「レコードブック」の新規出店計画とエリアマーケティングについて
飯村美樹氏(以下、飯村):「『レコードブック』について、先ほど『新規出店を再加速させていく』とお話がありましたが、今後の新規出店エリアなどの見通しについて教えてください」というご質問です。
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