第8回大学生対抗IRプレゼンコンテスト
竹生尋飛氏:小樽商科大学です。株式会社クボタのプレゼンテーションを始めます。よろしくお願いします。
突然ですが、クボタという名前を聞いて何を想像しますか? CMなどで企業名を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、クボタは農作業用トラクターを作っている会社です。また、ご存じない方もいるかもしれませんが、水処理施設や水道管も作っています。さらに、建設機械なども手がけています。何となくイメージがつかめたでしょうか?
アジェンダ
本日のアジェンダです。スライドに記載の流れで進めていきます。
企業情報
クボタは農業機械などの主力製品を武器に、世界へ事業展開しています。
企業理念
企業理念に「クボタグローバルアイデンティティ」を掲げています。重要なポイントは、クボタが食料・水・環境の3分野を通して世界中の課題に向き合っていることです。人口増加・気候変動・水資源・食料供給等、多くの課題がある中、クボタは、製品技術を通じて社会に価値を提供し続けています。
クボタのESGについて
農業や水インフラ、生活環境などに関わる社会貢献的な価値には、その根底にESGの意識があります。クボタはESG・外部評価として、MSCI ESG格付けで最上位の「AAA」を獲得するなど、取り組みが高く評価されています。
自然環境への影響については、CO2排出量削減のためのエンジン開発や燃焼効率向上などに積極的に取り組んでいます。
私たちは本社を訪問し、木村執行役員にお話をうかがいました。クボタでは、人的資本に関連して従業員のエンゲージメントを高めるため、タウンホールミーティングという経営陣と社員の対談の場を設けているそうです。
しかし、クボタのエンゲージメントスコアは業界平均を下回り、課題が残っています。そこで、僭越ながら私たちは具体的な解決策を考えましたので、後ほど提示したいと思います。
事業展開
そして、もう一点忘れたくないキーワードは、「グローバルなクボタ」「世界を網羅するビジネスプロモーション」です。世界120ヶ国以上にビジネスを展開し、海外売上高比率が約80パーセントと驚異の売上比率を誇っています。これは人口と市場の拡大が事業の追い風となっているためです。
ここまでのまとめです。クボタはESGとグローバルを意識した取り組みを行っています。このイメージのまま、事業内容をご説明します。
食料領域(農業市場)
長沢元太氏:食料領域についてご紹介します。クボタは世界中に農業ソリューションを提供しており、各地域のニーズに応える幅広いスペックのトラクターを販売しています。
トラクター等を組み合わせて使用する作業機器のインプルメントは、IT技術を駆使し、繊細な作業を可能にしています。
また、増加する世界の穀物需要に応え、コンバインは特に新興国で高く支持されています。
食料領域(農業市場)
農業市場における製品・サービスの特徴をご紹介します。各地域のニーズに沿ったクボタ製品は世界に浸透しています。スマート化技術に力を入れており、KSASと呼ばれる独自の営農支援システムを提供しています。圃場や作付管理をデジタルで行うことで作業効率が上がり、農業の生産性向上に貢献します。
食料領域(農業市場)
クボタは現場に寄り添い、製品やサービスを提供することで大きなシェアを築いています。新興国では、ベーシックで低価格な製品やアフターサービスを充実させ、現地に深く浸透しています。
一方、日本や欧米などの先進国では、自動運転農機等、ハイスペック・ハイエンド製品とKSASによって人手不足や温暖化対策による需要に応えています。
食料領域(農業市場)
クボタは2022年に、インドの農機シェア4位のエスコーツ社を連結子会社化しました。世界有数のトラクター市場であるインド市場でのシェア拡大を狙います。
両社の強みを掛け合わせたシナジー効果により、幅広い顧客層に製品を浸透させるだけでなく、世界中への輸出の拠点になることが期待できます。
農機市場動向
農機のシェアは国内でトップ、世界では3位を誇ります。概況として、国内の農機市場は成熟しており、農業従事者が減少しています。そのため、今後の方向性としては、成長市場である他のアジア地域でのシェア拡大を狙うとともに、国内ではスマート農業を推進していきます。
農機 5フォース分析
最後に、農機市場を5フォース分析します。
クボタの主な競合はJOHN DEERE、CNHインダストリアル、ヤンマーホールディングスです。農機市場は既存企業による寡占状態で主要分野への脅威は低く、競争優位を確保できており、強力な販売網を持っています。
以上が食料農業領域の事業紹介です。
環境領域
加藤駿之助氏:環境領域は、生活インフラを支える建設機械を主なフィールドとしています。スライドの写真は、ショベルカーの一種であるミニバックホーであり、販売台数は21年連続世界1位と驚異の実績を誇っています。
また、欧州規制もクリアした産業用エンジンもクボタの主力製品で、世界に提供しています。このように、グローバルな視点を持って生活インフラに貢献しています。
環境領域
なぜ、クボタの製品は世界から支持されるのでしょうか? それは常に現場のニーズに応えてきたことにあります。建設機械であるCTLは、北米から圧倒的な支持を受け、ミニバックホーは狭い道が多いヨーロッパで小柄なボディを活かした対応力が評価されています。
エンジン・廃棄物処理技術ともに世界各国で評価されています。このように、現場のニーズに応えて社会的使命を果たす、それがクボタの環境事業です。
環境(建機)市場動向
建機の市場動向についてです。結論としては成長市場であり、欧米でのインフラ投資拡大に伴う建機需要増で、2022年の建機国内出荷額は前年比で19パーセント上昇しました。ただし、外需依存性の高い市場となっているため、地政学的リスクが大きいです。
そのような中、クボタは海外生産比率50パーセントを目標に現地生産に切り替えることで、輸送コストを削減し、現地での迅速な対応を可能にしています。
環境(建機) 5フォース分析
クボタはグローバルにM&Aを行い、部品などの優先的供給と価格優位性、世界各国への強力な販売網を実現させました。その競争優位性から、特にミニバックホーなど、ニッチな製品では強く力を発揮しています。
「Bobcat」はSSL、「KOBELCO」はクレーン、「TAKEUCHI」は油圧ショベルと、それぞれ主力製品があります。クボタ固有の技術と販売網を使ってシェアを獲得することが今後の建機事業の焦点となります。
水領域
水領域についてご紹介します。クボタの鉄管の国内シェアは過半数を占め、日本の水インフラを担っており、スライド右側の写真のように、東日本大震災でも壊れなかった実績があります。
またニッチな分野ですが、MBRという排水処理の手法では、国内で首位、海外では2番手のシェアを誇ります。アラブ首長国連邦(UAE)のような砂漠地帯では、生命線である水を各地に届け、鉄管の納入実績が高く評価されています。クボタの水道技術は、国内外のニーズに応えています。
水市場動向
水市場は地域別戦略が有効なフィールドです。スライドの表は水ビジネスの市場細分化を表しています。先進国での水道の更新需要と、新興市場における地方の水道インフラ整備が事業成長につながると考えられます。
特に注目しているのが潜在的市場です。東南アジア各国やアフリカの一部地域では水道インフラの根本的な整備が整っていませんので、長期的な関与が必要です。今後の経済発展を考慮すると、事業の大きな成長ドライバーとなる市場です。
クボタはこれらすべての市場で事業展開を行っており、人類にとってかけがえのない水を世界に提供しています。
財務・業績分析
武田裕成氏:財務・業績分析に移ります。スライドのグラフは売上高とEPSの推移です。過去10年平均売上高成長率は9.23パーセント、過去10年EPS成長率は8.69パーセントです。売上高は2兆円ほどの規模ながら、継続的に成長していることがわかります。
2月14日に2023年12月期の決算発表がありましたが、グラフの予想値を上回る決算で、売上高・純利益ともに過去最高を更新しました。
財務・業績分析
営業利益率およびROEの5年間の推移です。比較的高い水準で推移していますが、直近1年は下落しています。主な原因は原材料費や物流費、研究開発費の上昇によるものです。
クボタは営業利益率の目標値を12パーセントと掲げていますが、現在は届いていない状況です。
リスク・提案
事業リスクと提案についてです。リスクはスライド左側に記載のとおりです。このうち、営業利益率低下の大きな要因と考えられるのは、原材料費の高騰、為替金利変動リスク、業界平均を下回るエンゲージメントです。
その中で、自社で解決に取り組めるのがエンゲージメントの向上と考え、今回CHROの設置を提案します。
CHROは人事本部長と異なり、最高人事責任者であることから、経営戦略策定に影響力を持ちます。現在行われていない部門ごとや営業所単位でのエンゲージメントスコア測定を行い、具体的なニーズを探ります。そして、CHROによるニーズを反映させた経営戦略を通じて、エンゲージメントスコアの向上を図ります。
さらにエンゲージメントスコアの向上は、労働生産性および営業利益率の改善につながることがわかっています。つまり、営業利益率12パーセントの目標達成に向けた提案でもあります。
戦略的なエンゲージメント向上策により、営業利益率、労働生産性の向上につながり、株価が上がり、PBRの改善につながります。以上が、私たち学生からの提案です。
強み・展望
強み・今後の展望についてご紹介します。
各事業分野の強み・展望はスライドに記載のとおりです。特に食料分野では、エスコーツ社買収を皮切りに世界一のトラクターメーカーを目指します。環境分野では、北米インフラ投資の拡大とともに、2028年度に連結売上高1兆円を目指します。世界の人口増加に伴う課題を解決し、成長を続けていきます。
まとめ
まとめです。グローバルな事業展開と長期的なシェア拡大、ESGの視点を軸に据えた社会への価値提供、これがクボタです。
クボタはグローバルでESGということ、何度も触れてきました。結論、クボタは食料・水・環境で世界の課題に挑戦しています。