経営統合及び持株会社体制への移行に関するSKIYAKI小久保代表とスペースシャワーネットワーク林代表による説明動画
寺脇知佳氏(以下、寺脇):本日は、株式会社SKIYAKIの小久保代表と、株式会社スペースシャワーネットワークの林代表にお越しいただきました。早速ですが、11月10日に開示された両社の経営統合及び株式交換契約締結についてお聞きしたいと思います。
両社を初めて知る方もいらっしゃると思いますので、まずは事業内容について簡単にご説明をお願いします。
株式会社SKIYAKI 会社概要
小久保知洋氏(以下、小久保):SKIYAKIは、アーティストをはじめ、すべてのクリエイターとファンとをつなぐプラットフォームを展開し、ファンクラブ、EC、チケットに関するさまざまな機能をオールインワンで提供しています。
2017年10月に当時のマザーズ、現在のグロース市場に上場しました。現時点での従業員は104名で、その約3分の1がプロダクト開発に携わっているエンジニアとデザイナーです。
株式会社SKIYAKI 事業概要
事業概要です。主に2つのプラットフォームを提供しています。デザインのカスタマイズ性に優れた「Bitfan Pro」と、それをオープン型で誰でも使えるようにした、オールインワン型ファンプラットフォーム「Bitfan」です。
株式会社SKIYAKI 事業概要
2つのプラットフォームの有料会員数は、111万人を超えている状況です。当社はさまざまなファンクラブを運営しており、全体で915サービスを提供しています。
アーティストは非常に多いですが、それ以外にも、スポーツチームやいろいろなコンテンツのIPなど、かなり幅広いジャンルでファンクラブを展開しています。
寺脇:ファンクラブやチケット販売に関するシステムの開発をはじめ、テクノロジーに強みがあるということですね。
株式会社スペースシャワーネットワーク 会社概要
林吉人氏(以下、林):スペースシャワーネットワークは、1989年に音楽の専門チャンネルとしてスタートしました。ここでは全部をお話しできませんが、放送を中心に、音楽関連のいろいろな事業を展開しています。その中のいくつかの事業をご紹介したいと思います。
株式会社スペースシャワーネットワーク 事業概要
当社は、野外ロックフェス「SWEET LOVE SHOWER」や、ヒップホップフェス「POP YOURS」といった大型の音楽イベントから、ライブハウスで行われている小規模なイベントまで、興行系のビジネスを通して、お客さまにイベントの楽しさをお伝えしています。
株式会社スペースシャワーネットワーク 事業概要
現在、音楽の世界の中心はストリーミングですので、国内だけでなく世界各国のDSPに楽曲をお届けするディストリビューション事業を展開しています。
2年前にオランダに拠点を置くグローバルディストリビューターのFUGA社と日本でジョイントベンチャーを立ち上げ、これから非常に重要となる海外市場に向けたマーケティングの強化を図っています。
株式会社スペースシャワーネットワーク 事業概要
それ以外では、店舗型のビジネスも展開しています。渋谷にライブハウス「WWW」を2店舗、秋葉原と大阪の日本橋にメイドカフェ「あっとほぉーむカフェ」を計10店舗経営しています。
株式会社スペースシャワーネットワーク 事業概要
冒頭に少しお話ししましたが、有料放送チャンネルも運営しています。また、レーベルや、アーティストのマネジメントなどのエージェント業務のほか、子会社に日本最大のミュージックビデオの制作会社があるため、音楽全般のビジネスを展開しています。
当社は放送局としてスタートしていますので、いろいろなところとニュートラルな関係を持っていることが非常に大事です。幅広いアーティストや事務所の方と良い関係を築いて、ここまで事業を拡大してきました。
寺脇:メジャーもインディーズも、本当に幅広いコンテンツを強みにされているということですね。
経営統合のスキーム
今回、そのような両社が経営統合されるということで大変注目を集めていますが、はじめに、経営統合までのスキームについて、小久保代表にお聞きします。
両社は最終的に持株会社、スペースシャワーSKIYAKIホールディングスの完全子会社になるということですが、株式交換から両社が完全子会社になる流れについて教えてください。
小久保:現在、証券コード4838のスペースシャワーネットワークと、証券コード3995のSKIYAKIは上場しており、それぞれに株主がいます。これを株式交換により、証券コード4838の株主になっていただきます。その4838のかたちをホールディングスに変え、その下にスペースシャワーネットワークとSKIYAKIの事業会社を配置します。
寺脇:それでは、現在のSKIYAKIの株主は、来年4月1日以降から、スペースシャワーSKIYAKIホールディングスの株主になるということですね。
小久保:おっしゃるとおりです。
経営統合後の主要株主
どのような株主構成になるかは、少しわかりにくいと思いますので、主要な株主のみ、スライドの図にまとめています。
スペースシャワーネットワークの大株主は、伊藤忠商事、フジ・メディア・ホールディングス、KDDIです。SKIYAKIはカルチュア・コンビニエンス・クラブが筆頭で、宮瀬氏は我々の創業者で元代表、Ararikはその宮瀬氏が代表を務めている会社です。
スライド中央のホールディングスの株主構成をご覧ください。青がスペースシャワーネットワーク、緑がSKIYAKIを示しています。統合すると、それぞれ約半分の持株比率となり、株主も半々で構成されます。
寺脇:わかりやすいです。かなりフェアな比率になっているということですね。
株式交換による対等な経営統合の実現
寺脇:それでは、今回の株式交換比率はどのようになっているのでしょうか? 株主の方も気になっているところだと思います。
小久保:株式交換比率はプレスリリースに記載していますが、見かけ上の交換比率となっており、若干わかりにくいため、こちらのスライドにも図示しています。
株式交換比率は1対0.76と表現されていますが、発行済みの株式総数がそれぞれ異なるため、それを加味すると、持株比率は最終的に1対0.98となります。つまり、双方の時価総額は、だいたい1対1で経営統合しているということです。
寺脇:持株比率もかなりフェアということですね。
本経営統合の経緯と背景
ここからは、経営統合の経緯と背景についてうかがいます。まずは、小久保代表にご回答いただきたいのですが、なぜこのタイミングでの経営統合なのでしょうか? 御社の直近の業績は、売上、会員数ともに好調だと思います。
小久保:足元は売上、会員数ともに好調だとは思いますが、我々を取り巻く競合の環境などを踏まえると、「もう少し大きな一手を打つ必要がある」とかなり前から考えていました。
みなさまご存知のとおり、昨今は芸能界や音楽業界で非常にいろいろなことが起きています。すでに業界再編は始まっていて、これから5年、10年と長期にわたり続いていくと思います。このような業界再編のタイミングを非常に大きなチャンスだと捉えています。
「足元の業績はまあまあ良い」程度の規模感を続けるのではなく、より大きな企業体になってチャンスをつかみにいくほうが良いと考えて、今回の決断に至りました。
スライドの下部に両社の強みと弱みを記載しています。我々はシステムの開発を自社で行い、プラットフォームに100万人の有料会員がいる会社です。そのような部分は強いのですが、音楽業界のブランド力やアーティストへの営業力、営業接点などに課題があります。
スペースシャワーネットワークはそこに対して非常に大きな強みを持っています。幅広いステージのアーティストとお付き合いがあり、接点が非常に大きいというところから、相互補完関係になり得るのではないかと考えています。
統合会社の事業概要
事業サイドで見ても、両社の得意とする事業がかなり異なりますので、これを足し合わせることによって新しい「360°のエンタテインメントビジネス」が行えるのではないかと考えています。
寺脇:時代の流れを考慮して、このタイミングで大きな決断をされたのですね。林代表はいかがでしょうか?
林:小久保さんが全体のお話をされましたので、当社目線でお話しします。去年の5月に中期経営計画を発表して、その中で厳しい事業環境にある放送事業を何とか堅持しながら、ライブ系のコンテンツ事業とソリューション事業の成長を加速させて、事業構造を転換していくことをお伝えし、今はその途上にあります。
その中でも、ソリューション系の事業については、今の時代、テクノロジーとは切っても切り離せないと思っており、そこを自社だけで成長を加速させるのは難しいという認識はずっと持っていました。
そのような状況もあったので、このタイミングでテクノロジーに強みを持っているSKIYAKIと経営統合することは、当社にとっても非常に重要で意味があると考え、決断しました。
経営統合によるシナジー
寺脇:両社が経営統合することで生まれるシナジーについてうかがいます。両社がどのような点を補完するのかを教えてください。小久保代表からお願いします。
小久保:統合によるシナジーはスライドに記載しています。いくつか補足すると、1つは、両社の得意な分野が違うため、足し合わせることによって統合的なソリューションを提供できるということです。
つまり、双方のお客さまに対して、今まで以上に幅広いサービスを提供できるという非常にわかりやすいシナジーだと思います。
また、スライドの②の上部に記載しているとおり、スペースシャワーネットワークでは、これまでイベント・映像制作を行ってきました。ロックフェスはもちろん有名ですが、最近は「POP YOURS」のような新しいジャンルも展開されています。このような「新たなコンテンツIP」を横に展開することで、事業規模を大きくすることができると思います。
我々の会社には、音楽ジャンル以外のお客さまもかなりいるため、そのような方に向けて新規のイベントを横展開することが、大きなビジネスになるのではないかと考えています。
加えて、ディストリビューションは、音楽事業としては非常に大きいところです。実は、当社も数年前にディストリビューションを提供できないか検討したことがありましたが、参入がなかなか難しく、断念した経緯があります。このように、ファンクラブとディストリビューションを掛け合わせて新しいソリューションを作るのは、元々挑戦したいことだったため、シナジーとして注目しているところです。
寺脇:林代表はいかがでしょうか?
林:今、音楽は圧倒的にストリーミング上で利用されています。「ストリーミング上で」というのは、アルゴリズムでレコメンドされたものを、みんなが受動的に聞いている状態を指します。アーティストにとっては、そこに能動的なファンダムを作ったり、ファンのエンゲージメントを上げたりすることが非常に難しい状況にあり、ストリーミングの先のソリューションが、非常に求められている時代だと思います。
SKIYAKIが持っているアーティストとファンをつなげるプラットフォームを、今後一緒に展開していくことで、その領域の課題を解決できると非常に良いだろうなと思っています。
我々はライブ・イベント系に強いのですが、それ自体は極めてフィジカルなものです。しかし、イベントに付随するものは、テックを使ってUXを変えたり、お客さまの体験価値を向上させたりすることがまだまだできると思っています。その点もSKIYAKIと経営統合することに、期待するところが大きいです。
寺脇:2024年4月1日から始まるスペースシャワーSKIYAKIホールディングスは、今後のエンタメ業界をかなり盛り上げてくれる存在になるのではないかと、今から非常に楽しみです。最後に、今後目指していく姿と、経営統合によってお二人が期待することを聞かせてください。
小久保:現在起きている業界再編は、今後もさらに加速すると思っています。そのような時に求められるサービスは、元々求められていたサービスと内容的には似ていても、変化していくと考えています。
したがって、新たな時代に合わせて、アーティスト個人やクリエイターが望むサービスを提供していくことがかなり重要です。そこをスペースシャワーネットワークと一緒に目指していきたいと思っています。
これが実現できれば、両社の企業価値は「1+1=2」ではなく、その何倍も成長するはずです。それを目指すために、このような大きな決断をしているということを、最後にお伝えしておきたいと思います。
林:我々の会社はコンテンツを扱っており、その中でもとりわけ得意としている生のライブは、どこまでも人間的な営みであり続け、あまり変わらないと思います。その部分は当社にとって極めて重要な領域ですので、これまで以上に注力していきたいと思っています。
それ以外のところは、今、小久保さんがお話しされたように、テクノロジーが進むとビジネスやサービスのかたちなどを含め、いろいろなものがどんどん変わっていくと思います。
一方で、日本や日本の業界において、デジタル化が進んでいるかと言うと、まだあまり進んでいません。しかし、今回SKIYAKIと経営統合することで、コンテンツとテックを併せ持つ珍しい会社になると考えています。
したがって、業界のDXを牽引する存在になるくらいの気概で進んでいき、新しいビジネスのパラダイムが開けるような取り組みを進めていきたいと思っています。