会社概要
柴田巌氏(以下、柴田):株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長の柴田巌でございます。本日はご多用の中、私どもの決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。それでは、2023年3月期の決算についてご報告します。
会社概要はスライドのとおりです。当社は、元マッキンゼーアジアパシフィック地区代表の大前研一が1998年に創業した教育事業会社です。グローバルに活躍し、日本と世界の未来を背負って立つリーダーシップを発揮できる人材を輩出したいというミッションのもと、事業に取り組んでいます。
また昨今では、人生100年時代において、リカレント教育やリスキリング教育などを通して一生涯学び続け、マルチステージで自分をフェーズアップ・ステップアップすることについて盛んに言われるようになってきました。
当社はその四半世紀前から、生涯学習のプラットフォームになるべく「ライフタイム・エンパワーメント(Lifetime Empowerment:生涯活力の源泉)」というビジョンを設定し取り組んでいます。
新社名とロゴについて
先日プレスリリースを行いましたが、創業25周年を迎えるにあたって社名とロゴを変更します。新しい社名は、株式会社Aoba-BBT(アオバ・ビービーティー)です。ロゴは、スライドに記載している「知のネットワークは、人間の能力を∞に伸ばす」という思いが示すとおり、地球の周りを無限大の記号が回っています。
社名およびロゴの変更は2023年下半期を予定しています。どうぞお見知りおきのほどよろしくお願いします。
ミッション「世界で活躍するリーダーの育成」を実現する体系
当社のミッションは「世界で活躍するリーダーの育成」です。このミッションを根底に、学習者の年齢は1歳から経営者までの全エイジグループをカバーし、文字どおり一生涯学ぶことを支援します。
共通項としては、21世紀の日本、ビジネス界、地球社会で求められる人材になるべく、そのためのトレーニングや実践的な学習・教育を習得するための学校やプログラムを運営しています。
「AIで代替されない、本質的なグローバルリーダーシップスキル開発」に必要なスキルについて、スライドに概念図を掲載しています。英語力や語学力といったコミュニケーション能力の他に、社会でさまざまな価値を提供し問題を解決するためには3種類の問題解決力が必要です。
1つ目はITやファイナンス、ビジネスの経営におけるマーケティングや統計など、ビジネスやNPOで何らかのソリューションを提供していくハードスキルです。2つ目はリーダーシップやフォロワーシップ、コミュニケーション能力などのソフトスキルです。3つ目は構想力や0から1を生み出すためのアントレプレナーシップです。
このようなスキルの習得に向けた教育を、独自のカリキュラム設計や教材開発などを通して提供しています。
ビジョン「Lifetime Empowerment」を実現する、5大事業領域
事業ポートフォリオは5つの事業領域で構成されており、いずれも、ビジョンである「Lifetime Empowerment」を実現する役割を担っています。スライドのマップの縦軸はオンラインとオフライン(リアル)、横軸は学習者の年齢として小さいお子さまから企業の経営層のエグゼクティブまでを示しています。
1つ目のUniversity事業は、学位を取得する目的が含まれる教育内容です。文部科学省認可のビジネス・ブレークスルー大学では、100パーセントオンラインで学ぶことができ、働きながら経営学学士が取得できます。ビジネス・ブレークスルー大学大学院では、こちらも同じく100パーセントオンラインで経営学修士を取得できます。
また、オーストラリアのゴールドコーストにキャンパスを持つボンド大学とは、20数年前から共同で「BOND-BBTグローバルリーダーシップMBAプログラム」を運営しています。こちらも100パーセントオンラインで、経営学修士であるオーストラリアの政府認定MBAを取得できます。
2つ目の法人人材育成事業は、法人向けに人材育成のトレーニングやプログラムを提供する、いわゆるBtoBのビジネスです。日本で株式を公開している旧東証1部および現在の東証プライム市場に上場しているクライアント企業を中心に、年間500社近くのお客さまに階層別研修あるいは選抜育成型の研修を提供しています。
さらに、将来の事業本部長や執行役、取締役、または社長を選抜していくためのサクセッションプランと連動した研修などもあり、幅広く提供しています。
3つ目はITマネジメント事業です。昨今では、デジタルトランスフォーメーションやデジタルディスラプションが叫ばれているように、経営とテクノロジーもしくは経営とデジタルは切り離せない時代になりました。
産業別にも、自動車がガソリンから電気へと移行するように、多くの製造業が物を作って売るビジネスモデルからサブスクリプションへ変化しています。さまざまな領域で、物を使って顧客が価値を享受するビジネスモデルへ移行し、テクノロジーによってビジネスのあり方が変わってきています。
このような変化の中で、経営陣たちは経営とITの両方を駆使できる能力が必要になります。ITマネジメント事業では、経営者がITマネジメントの素養を身につけたり、ITマネジメントの素養がある者が経営的な力を身につけたりするためのサービスを提供しています。
4つ目は英語教育事業です。グローバルに活躍する上で、日本語だけではコミュニケーションが限定的になるため、英語でのビジネスやファシリテーション、リーダーシップを発揮できるプログラムを実践的に提供しています。
ビジネス経験のある英語のインストラクターをフィリピンに100名近く用意し、インターネットを通じた1対1のコミュニケーションを通して、生きた英語のスキルを身につけていただきます。
5つ目はインターナショナルスクール事業です。幼稚園、小学校、中学校、高等学校の18歳以下を対象に、都内12ヶ所で運営しています。国際バカロレアというグローバルスタンダードの1つと言われるカリキュラムを中心とした学校の他にも、それと並び称される世界標準のカリキュラムの1つである、ケンブリッジ国際というケンブリッジ大学が開発したカリキュラムをベースにした認定学校を、三鷹市で運営しています。
以上のような5つの布陣で、グローバルに活躍するリーダーを輩出していくというミッションと、一生涯学び続ける学び舎になるというビジョンを追求しています。
ターゲット市場:成長性
ターゲット市場についてご説明します。スライド左側は、インターナショナルスクール市場の状況を示しており、グローバルに見ると中東やアジア、インターナショナルスクールの発祥地であるヨーロッパ、英語圏ではオーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダなどにおいて、教育セクターは極めて注目されています。
ナショナルカリキュラムではグローバルな人材はなかなか育成できません。英語圏以外の国では、将来的に我が子を欧米のオックスフォード大学やケンブリッジ大学、ハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学、シカゴ大学、アイビーリーグ校に進学させるためには自国の学校よりも良いということで、インターナショナルスクールの需要が年々増えています。
スライドのとおり、スクール数は60パーセント、生徒数は53パーセント、市場の規模は92パーセントと、どの統計指標をとっても大きく右肩上がりで拡大しています。日本はそこまでではありませんが、ビジネスという観点で見た時に、この市場は今後の国内の教育産業においても非常に魅力のあるマーケットセグメントになっていきます。
また、スライド右側の棒グラフが示すとおり、国内の法人向け教育市場、人材育成・研修市場は横ばいにもかかわらす、eラーニングの占める割合は堅調に拡大しています。2020年以降のコロナ禍において、オンラインやリモート環境でビジネスや学習を行うことは、もはや日常となりました。そのような観点からも伸びているセクターと言えます。
グローバルリーダーを輩出する為に「日本初」を連続してきた教育事業会社
スライドの棒グラフは、私どものグループの教育プログラムを学習した方の推移について、創業から現在まで1年ごとに示したものです。
リーマンショック以降や東日本大震災の後など、若干横ばいや微減になった時期もありますが、ご覧のとおり生徒数は堅調に増えています。特にコロナ禍の過去3年間の伸びは、それまでのトレンドを大きく打ち破るノンリニアな成長を示しています。
グラフの間に散りばめられているのは、先ほどご説明したボンド大学と共同で行っている「BOND-BBTグローバルリーダーシップMBAプログラム」、文部科学省認可でMBAが取得できる専門職大学院、経営系専門職大学院、そして文部科学省認可の経営学士が取れるビジネス・ブレークスルー大学のロゴです。
また、2013年以降、Aobaグループ提供のアオバジャパン・インターナショナルスクールや、ITマネジメントと経営の両方を学べる事業体のITプレナーズジャパン、日本クイントのようなITマネジメント系のビジネスの株式取得などが作用して、このような推移となっています。
4つの強み
4つの強みについてご説明します。私どもは教育を提供する事業会社です。したがって、教育という領域において、自らのサービス、顧客満足度、教育成果を磨いていく必要があります。
その中で1点目の強みは、実践に裏付けられた国際教育ノウハウです。国際教育という表現が完全にフィットするわけではありませんが、21世紀の社会や世界で求められる人材を輩出していくことが私どもの教育の目的です。
裏を返せば、日本や世界のビジネスにおいて、将来必要とされるのはどのような人材なのかを先見した上で、そこから今どのような学びを提供すべきかを考える必要があります。しかしこの問題は、今日考え始めて明日答えが出るものではありません。
未来のビジネス界において、どのような人材が必要になってくるかは、未来のビジネス界でどのような変化が起き、外部環境がどう変わり、コンペティターがどう動くのか、そして当社がどのような強みを獲得していくべきなのかを、絶えず考えるためののノウハウが必要です。
「歴史に学ぶ」というと大げさかもしれませんが、日本という国がアジアでどのような役割を果たし、その中で自動車産業やインフラ産業、IT産業、半導体産業、流通・小売産業がどのような強みを発揮していくべきなのかを考える必要があります。そして、経営者がどのように学び、今は「人的資本経営」と言われますが、どのような組織を作り人材を育成していくべきかを考察する必要があります。
これらを踏まえ、どのようなカリキュラムや教材、ケーススタディが必要かを考えますが、実践的でファクトに基づいた裏付けが必要になります。当社のカリキュラムと教材は、創業者の大前研一以下、マッキンゼーや経営コンサルティングファームでパートナーを務めた方や、日本を代表する企業の経営者やそちらで実績を持っている方などが教員となり「今後の社会ではこのような人材が必要になる」と喧々諤々の議論を重ねながら作り込んできました。
2点目の強みは、品質保証です。各種認定機関から認定を受けています。それがすべての品質保証につながるわけではありませんが、教育という無形のサービスを提供するにあたっては客観的な指標が必要です。
国際バカロレア協会やケンブリッジ国際認定校、文部科学省、オーストラリアの文部科学省から認可を受けたり、継続的に認可を維持したりすることで、品質保証の1つの強い指標となっています。
3点目の強みは、独自の教材、教育メソッドです。他社には真似できないユニークな教育を提供する素材があります。
4点目の強みは、Edtechへの取り組みです。当社は25年前から、100パーセントオンラインで受けられる学習を追求してきました。日本でインターネットが普及するはるか前から、社会人が働きながら、世界のどこにいてもオンラインで学習できるノウハウを蓄積してきました。
そのノウハウがITやeラーニングプラットフォームに反映され、それらを使った講座の運営にも反映されています。さらに、学びを提供する運営チームのオペレーションノウハウとしても蓄積されています。
2023年度に入り「ChatGPT」などのAIが脚光を浴びていますが、当社は国内で最も早くAIなどをサービスに取り込んで、学びの効率化や、逆に効率性だけでは計り知れないエシックス・インテグリティといった領域についても、先んじて取り組んでいます。
4つの強み(1):国際教育ノウハウ
先ほどご説明した4つの強みについて、あらためて簡単にご説明します。まずは国際教育のノウハウです。スライドのとおり、インターナショナルスクール事業は、2013年のサービスイン以降、10年で生徒数が6倍に成長しました。
この間の売上や利益もそちらに呼応して、またはそれ以上に拡大していますので、事業としてはこれ以上の成長の軌跡をたどってきました。インターナショナルスクール事業は、2023年秋にアオバジャパン・インターナショナルスクールの株式を取得し、経営に参画して以降、生徒数が230名から1,500名強まで拡大しています。
スライドの棒グラフは、青がアオバジャパン・インターナショナルスクール、その上の濃い水色がサマーヒルインターナショナルスクール、その上の薄い水色がケンブリッジ国際のカリキュラムを扱うムサシインターナショナルスクール東京、ピンクがアオバジャパンバイリンガルプリスクールを示しています。総じてまんべんなく生徒数を拡大しています。
4つの強み(1):国際教育ノウハウ
アオバジャパン・インターナショナルスクールは、一条校を含め、国内で15校あるうち、国際バカロレアの小中高の全プログラムの認定を受けている教育機関の1つです。
またアオバは、高等学校部門を持つインターナショナルスクールです。そのため、大学進学についても一定程度は実績としてトラッキングしていますが、スライドの表のとおり、シカゴ大学、ロンドン大学といった世界の大学ランキングでもトップ20に入るような学校や、国内では東京大学、東北大学、慶應大学などへの入学者がいます。
4つの強み(1):国際教育ノウハウ
BBTグループとして、リアルの通学型の学校だけではなく、オンライン教育の取り組みも進めています。今年度に入り、私どものグループ校が、国際バカロレア機構の高等学校課程をオンラインで提供してもかまわないという認定を受けました。
世界でもまだ4つかのスクールしか認可を受けておらず、アジアおよび日本では初めてパイロットプログラムの提供可能校として選出されました。今後は物理的なキャンパスの拡大に加え、横軸としてデジタルの領域での教育も展開します。また、オンライン学習という特徴を活かし、国内だけでなくアジアのマーケットにもリーチできる存在になっていく所存です。
4つの強み(2):国際的な品質保証
国際的な品質保証について、あらためてご説明します。1つ目は、文部科学省の認可です。2つ目は、アメリカに拠点を持つ世界のビジネススクールの教育品質を保証する機関であるAACSBと、EUに拠点を持つ世界のビジネススクールの教育内容の品質を保証する機関であるEQUISの認定です。
ボンド大学と共同運営している「BOND-BBTグローバルリーダーシップMBAプログラム」は、これら両方の認可を受けています。オンラインのMBAで認定を受けている学校は、おそらく私どもが日本で唯一だと思いますし、アジアでもそれほど多くはないと思っています。
ちなみに、2つの認定を持っているビジネススクール自体が世界でも3パーセント未満と言われており、認定を維持することは容易ではありません。
3つ目は、国際バカロレアの認定校であるということです。こちらも簡単に認定校になることはできませんので、その認定を国内すべての拠点で維持していることが1つの品質保証となっています。
4つ目は、ケンブリッジ大学国際教育機構の認可です。こちらは先ほどご紹介したムサシインターナショナルスクールのことです。
4つの強み(3):一流講師陣による、15,000時間超の学び
独自開発の教育教材やカリキュラムについてです。毎年、1,000時間以上の教育コンテンツや講座を作ってきていますので、創業から25周年を迎えることを考えると、保守的に見ても1万5,000時間以上のデジタルコンテンツライブラリを持っていることになります。
講義映像や講座の中には、今では日本や世界を代表する経営者・起業家が、若かりし頃にビジョンやミッションを語っている講座や、定点観測的に何回か登壇いただいた映像など、貴重なものもあります。
経営自体または企業自体が生もので、工業製品のように「こうすれば必ずうまく行く」という再現性がきちんと保証されているものではありません。さまざまな状況に応じて作り込んでいくものですので、このような方々の過去から学ぶことは、歴史を学ぶのと同じように非常に重要な学びのポイントになります。
私どもはそのようなコンテンツや教材、講座を、毎年地道に1,000時間以上作り込んできており、それがもう1つの強みの軸となっています。
4つの強み(4):EdTechへの取り組み
EdTechへの取り組みについてです。創業当時は通信教育、マルチメディア教育、遠隔教育という表現が多く使われていましたが、その頃からeラーニングの提供などのITを使ったオンライン教育の提供を進めてきました。
昨今はコロナ禍が到来する前からAIの活用にも取り組んでおり、語学の学習、eラーニングの学習者のサポート、多言語でのディスカッションなどにおいて、教育効率化の活用の可能性を積極的に探っています。
スライドに示しているとおり、私どものキャンパスのトレードネームは「AirCampus」です。空気の中にキャンパスがあるということで、あなたのパソコンやタブレット、スマートフォンの中にバーチャルなキャンパスがあり、インターネットさえあれば、世界中どこにいてもキャリアやライフステージを中断することなく両立しながら学び、自分をバージョンアップできるプラットフォームを、25年間運営してきました。
2023年3月期 業績ハイライト
業績のハイライトです。表の中央が2023年3月期の通期実績、左端が2022年3月期の通期実績、右端が対比となっています。
2023年3月期の売上高は、昨年対比プラス7.4パーセントの72億5,700万円となりました。おかげさまで14期連続の増収となり、連結会計年度としては、今年度も過去最高の売上高を更新できています。
一方で、売上総利益は残念ながら、昨年対比マイナス2パーセントの29億9,200万円、営業利益もマイナス30.1パーセントの3億2,900万円、経常利益もマイナス30.9パーセントとなっています。
3年間の中期経営計画において、3年目に売上高100億円超、営業利益10.5億円以上という方針を示しています。当該年度も、その目標に向けてトップラインを伸ばし収益性を高めていくための先行投資と、それに匹敵する経費の投入を行いました。そのような事情により、売上高は伸びたものの、売上総利益、営業利益、経常利益は伸びませんでした。
したがって、経営をお預かりしている私の立場からは当然必要な先行投資をしており、売上高は伸びるものの収益性はそこまで伸びないと考えていたため、ある意味既定路線だと思っています。2023年度ならびに2024年度は、この投資にレバレッジを効かせ、収益性をさらに高めていきたいと思っています。
親会社株主に帰属する当期純利益は、昨年対比プラス226.6パーセントの7億2,300万円で、大きく伸びました。こちらは所有していた研修施設の不動産売却が2022年の6月末日に完了し、特別利益が計上されたことが主因ですので、ワンタイムのキャピタルゲインになります。
2023年3月期 セグメント別業績(売上高/利益)
セグメント別の業績です。リカレント教育セグメントとプラットフォームサービスセグメントにおける売上高とセグメント利益の推移はスライドのとおりです。売上高は左の棒グラフが示しているとおり、両セグメントともに2022年3月期からバランスよく増収となっています。
コロナ禍によって生じたオンライン教育への追い風や、先ほどご説明した5大事業領域のUniversity事業における、社会人が働きながらオンラインで学ぶ需要の高まりに加え、法人人材育成事業では、コロナ禍以前のリアルのビジネスの進め方から、GoogleやMicrosoft、zoomなどを使ったリモート環境やブレンド型での学び方や働き方など、大きくモードが変わり研修需要が変化したことなどが要因です。
さらに、自宅にいながら自分でスキルアップをしたいという流れや、政府のリカレント教育およびリスキリング教育に予算を投じて人材をパワーアップしたいという流れなどが作用した結果と捉えています。
インターナショナルスクールにおいては、この3年間は国境が閉ざされたことで外国人日本駐在ファミリーの入国が蒸発するようになくなりましたが、幸い私どものスクールでは退学や転校もほとんどなく、逆に転入する方やバイリンガル幼稚園に子どもを預ける方が増え、比較的落ち込むことなく増収となりました。
セグメント利益は、両セグメントで若干振る舞いが変わりました。リカレント教育セグメントの利益はマイナス800万円となり、均衡の取れたところで落ち着きました。昨年度は1億1,300万円だったため、減益となっています。こちらは先ほどご紹介したとおり、講座の新規開発やプラットフォームへの先行投資が大きな要因です。
プラットフォームサービスセグメントでは、この間もいくつかの拠点を開設しましたが、それを上回る粗利増になったために増益を確保しています。
2024年3月期 業績見通し
2024年3月期の業績見通しは表のとおり、売上高は80億8,100万円、営業利益は6億5,000万円、経常利益は6億6,300万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は4億5,200万円で、増収増益を見込んでいます。1株当たり当期純利益も表のとおりです。
先ほどのとおり、2023年3月期の当期純利益は、研修施設の不動産売却によるワンタイムのキャピタルゲインが7億2,300万円と大きく寄与していますが、本業から得られる当期純利益は2024年3月期も堅調に積み上がっていくものと考えています。
成長戦略
成長戦略についてです。スライドのとおり、5つの領域をまんべんなく強化していきたいと思っておりますが、主に3つの成長戦略を考えています。
1つ目は、成長領域への重点投資です。法人営業に非常に大きなチャンスがあると思っており、特に40代以上の社会人からの、DXやデジタル領域の学びを極めたいというニーズが非常に高まっています。
私どもの「デジタルファーストキャンプ」という講座は、3ヶ月の短期集中でデジタルの技術やナレッジを習得するプログラムですが、毎回非常に多くの申し込みをいただき、すぐに定員が埋まっています。
このようなミドルエイジのデジタル化や、それらを含むリカレント教育およびリスキリング教育、その学位が取得できるバージョンとなる大学院、そしてリーダーの育成に向けて学びを集中する「LAP(リーダーシップ・アクションプログラム)」の需要が高まっていますので、これらの領域へ重点的にリソースを投下していきます。
2つ目は、「ChatGPT」などに代表されるEdTechの強化への継続投資です。教育シンクタンクとして「BBTラボ」を発足し、EdTechのノウハウを集中してより付加価値の高いオンラインまたはブレンド型の教育を行います。
そして、それを支えるプラットフォームやAIエンジンの開発を行い、第三者へ提供するビジネスモデルについても、より深めていきたいと思っています。
また、今年度は10月1日に社名を変更するため、当社グループのミッション、ビジョン、コアバリュー、行動規範などを言語化するかたちで、ジョンソン・エンド・ジョンソンが世界的に有名にした「クレド」を策定し、顧客価値および私どものコミットメントとして発信していく予定です。
収益性の強化に関しては、先ほどの成長戦略と呼応するかたちで、足元ではBtoBのビジネスへの需要が非常に強く手ごたえを感じているため、当面はこちらへの人員配置を強化していきます。大学・大学院に対しても同じく、企業から学びたい人の獲得を強化します。
インターナショナルスクールについては、ゼロ金利・マイナス金利時代が長く続いたことから、これまでは借入をした上で設備投資を行い、積極的に拠点を開拓してきました。今後は金利市場も少し上がっていくと考えており、先ほどお話しした不動産の売却やキャピタルゲインなどによって借入もほぼ返済したため、バランスシートは非常にライトな計画となっています。
残ったキャッシュはデジタル領域に拡大に使い、今後2年から3年の間はフィジカルな拡大からデジタルな拡大へピボットしていきたいと考えています。
法人向け人材育成事業系の伸長
法人向けの人材育成事業系の伸長です。スライド左のグラフは法人営業売上高の推移、右のグラフは法人案件の獲得数です。過去6年間で、受注する金額および受注件数ともに増えてきています。
足元のお客さまとの会話で、今後もこの流れが継続あるいはより一層加速すると確認しているため、この機会をぜひ獲得していきたい考えです。
中期経営計画と進捗推移
中期経営計画に対する進捗の推移です。2024年3月期の売上高は100億円、営業利益は10億5,000万円を目指しています。これですべてやり切ったわけではなく、あくまでも通過地点ですが、まずは売上高100億円規模と1割強の収益性を維持できる教育事業体になっていくことが、2021年末にお示しした3年の中期計画のゴールでありコミットメントです。
人的資本施策
人的資本施策についてです。日本では比較的ジェンダーによる見方が多く取り上げられているため、ダイバーシティ&インクルージョンに関するデータをスライドに示しています。
グループ全体における女性管理職の比率は41.7パーセントです。すでに20ヶ国以上の国籍の社員に働いていただいており、その中には女性や、いわゆる「マイノリティ」と呼ばれる方々も多く、平等に活躍していただいています。また、採用についても日本国内だけではなくグローバルに進めており、今後もより一層ダイバーシティを意識した経営を進化させていきたいと思っています。
子育て支援については、育児休業後の職場復帰率が100パーセントで、産後パパ育休取得者は対象者6名中2名です。私どもは、産休・育休が全国的に注目される前から、社内施策としてこれらに取り組んできており、今後もより一層の普及と浸透に努めます。
社員の研修については、毎週最低でも2時間以上、年間で123.1時間の研修を確保することとしています。国際バカロレア認定校およびケンブリッジ国際認定校では、年間の最低トレーニング日数がレギュレーションで決まっています。当社でもこのような取り組みを行い、そのレギュレーション以上に社員に学びの機会を提供していく方針です。
また、社内コンテンツとしてMBA留学制度などもあります。MBA取得には最低でも2年間の学習が必要ですが、もっと短期的に学びたいという社員には、語学やリーダーシップ、問題解決力や論理的思考の習得などの機会を提供しており、今後も積極的に進めていきたいと思っています。
グループにおけるSDGs関連の具体的な取組
SDGsについてです。私どものeラーニングは、通学や移動を伴わずオンラインで学びが完結するという意味ではペーパーレスです。また、インターネットと端末さえあれば、自宅あるいは世界のどこからでもリモートで学べる環境ですので、CO2の排出はそれほど多くありません。ジェンダーギャップなどについても比較的認識が進んでいると思いますが、この状況に満足するのではなく、これらの取り組みを継続していきます。
インターナショナルスクールは通学型のキャンパスを運営する予定ですので、今後はオンラインだけでなく、文字通りボーダーレスにグローバルスタンダードな教育や学習機会を提供していきたいと思っています。
オフィス環境についても、コロナ禍以降の3年間で平均約82パーセントの社員がリモートワークとなっており、1日あたりだいたい18パーセントの社員が出社している状況です。このように、ブレンド型のリモートワークはある一定の水準になっているかと思います。
今後は、ワークライフバランスや働き方をより一層良いものにできるような職場環境を維持しながら、SDGsにも貢献していきたいと思っています。
簡単ではありますが、以上で2023年3月期の決算説明を終わります。ご清聴いただきありがとうございました。
質疑応答:今後の法人営業の戦略について
司会者:「今後は法人営業に重点投資していくというお話でしたが、それはM&Aなどを積極的にしていくという意味でしょうか?」というご質問です。
柴田:M&Aの機会も含めて、成長機会については積極的に検討していく所存です。中期経営計画においてKPIとして開示している売上や、PLの数値計画をどう達成するかについては、M&Aであろうと、アセットマネジメントやアクイジションあるいはオーガニックグロースであろうと、方法論としては平等に考えています。
先ほどお伝えしたとおり、バランスシート上の固定資産を売却したことで、一定のキャピタルゲインを得ました。今後短期的に金利が上昇する想定で行っていた銀行からの借入は、そのキャッシュを使い前倒しでほぼ返済したため、現在はアセットライトな状態になっています。
加えて、ある程度のキャッシュが手元に残っているため、もしも中期経営計画の成長戦略に資する事業機会があれば、M&Aなどについても積極的に都度検討して判断していきたいと考えています。
スライドにある教育事業会社のうち、BBT大学やBBT大学院、「AirCampus」などはオーガニック成長を実現しています。一方で、ボンド大学は、M&Aというよりもクロスボーダーのパートナーシップによってローンチしたものです。
アオバジャパン・インターナショナルスクールや、ムサシインターインターナショナルスクールトウキョウ、サマーヒルインターナショナルスクールは、株式を取得するかたちでシードを得て大きく成長させてきました。
アオバジャパン・バイリンガルプリスクールは現在8校のキャンパスを運営しており、そのうちの3つはM&Aによるものです。残りは不動産で賃貸契約を結び、ゼロからキャンパスを作ってきました。
このように、マーケットのオポチュニティに対してベストな方法を見出しながら実践してきた実績があります。そのため、今後もM&Aを絶対にする、あるいは排除するという考え方ではなく、良いチャンスがあれば都度考えていきたいと思っています。
また、今まではその都度借入や増資を行い資金繰りをしてきましたが、今は手元にキャッシュがありますので、短期的には手元の資金で投資を判断できる状況です。したがって、これまで以上にスピーディにいろいろなことができる経営環境が、以前よりも整ったと思っています。
質疑応答:インターナショナルスクール事業の集客について
司会者:「インターナショナルスクール事業でデジタルに拡大するというお話でしたが、どのように集客するのでしょうか? バイリンガルですので生徒数は増加していくと思いますが、市場のポテンシャルから考えて何人くらいの規模を想定していますか? 集客コストと収入をどのように見合わせていくのか教えてください」というご質問です。
柴田:中期経営計画は、あくまでも今見通せている事業体での数字のみを組み込んでいるため、オンラインによる事業機会に関する数値は組み込まれていません。したがって、1人以上の受講生が入学すればそれは100パーセントプラスアルファの数字になります。
チャネルについては今後模索していく部分もありますが、すでに提携関係によってオンラインでの事業機会を実現しています。
熊本県菊陽町および合志市に、台湾のTSMCという世界一の半導体製造会社が工場を設置する予定です。これには日本政府も1兆円の投資のうち約半分をサポートするということで、九州では近年にない最大級の投資案件になっています。
これに伴い台湾本社から多くの技術者とそのご家族が引っ越してくるため、学校が必要です。この学校は当然日本語で学ぶだけではなく、世界の潮流なども踏まえたインターナショナル・エデュケーションが必要になってきます。工場は2023年末に稼働する想定ですが、それまでに自治体が1から学校を作れるかといいますと、なかなかそのようにはいきません。
そのため、私どものような企業が、地元の学校に対してオンラインでさまざまな事業やコンテンツを提供するかたちで支援することになり、昨年の秋にプレスリリースを行いました。
また、コロナ禍中に入学したお子さまの中には、地元の学校で学ぶだけではなくアオバジャパン・インターナショナルスクールのオンライン課程に入りたいという方も出てきています。このような一つひとつの取り組みに注力し、事業機会としてある程度のクリティカルマスに達するまでは、実績を積み上げていきたいと思っています。
一方で、国際バカロレアやケンブリッジの認定は簡単には取れないため、認定を取っていること自体がある意味でお墨付きです。世界の共通認識として、どの国の認定校であろうと国際バカロレアあるいはケンブリッジが認定している学校の教育クオリティは一定の水準以上で、それがリアルの教育であろうとオンラインの教育であろうと品質に関しては疑う余地はありません。
私どもは投資を含めてそれらを獲得してきており、今後はそのような実績を使って国内やアジアの市場に切り込んでいきたいと考えています。特に、地政学的なさまざまな事情によって海外留学や海外進学をしづらい方や、日本に移住しづらい方に対する教育事業などを獲得していきたいと思っています。
数字としては、スライド左側の国際バカロレアを含む国際インターナショナルスクール市場の世界平均成長が示すとおり、市場自体が概ね年率数10パーセントで伸びています。したがって、その波に乗ってクリティカルマスまで行けば、私どもも成長していくことができるのではないかと捉えています。
質疑応答:国際バカロレアのディプロマについて
司会者:「国際バカロレアはバイリンガルディプロマを前提にしており、要求される語学力が非常に高いです。日本語ディプロマのほうがより大きな市場が取り込めるのではないでしょうか?」というご質問です。
柴田:アオバジャパン・インターナショナルスクールが提供している国際バカロレアのディプロマは、文部科学省が推進しているデュアルランゲージ・ディプロマ・プログラムとは少し違い、あくまでもインターナショナルスクールとして100パーセント英語で学ぶことができるディプロマです。
ただし、アオバジャパン・インターナショナルスクールはIB認定校になるまでの経緯により、日本語教育に非常に力を入れているため、生徒たちがバイリンガルディプロマ取得を目指すこともできます。
したがって、アオバジャパン・インターナショナルスクールの高等学校課程を終了すれば、IBDP認定の高等学校の終了証書を得ることができます。日本の一条校で学んだ方に引けを取らない語学力や日本語的な素養も習得することができるため、日本の一条校の中学課程を修了した方が、私どものオンラインディプロマに進学する可能性も大いにあるのではないかと思っています。