2022年12月期決算説明

佐々木靖浩氏(以下、佐々木):みなさま、こんにちは。本日は2022年12月期通期決算説明会のライブ配信をご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。今回の決算説明会もオンラインでの開催とさせていただきました。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、最初に松尾より決算の概要についてご説明いたします。

「収益認識に関する会計基準」等の適用

松尾信幸氏(以下、松尾):松尾でございます。はじめに、私より2022年度決算の概要についてご説明します。

「収益認識に関する会計基準」等の適用について、第1四半期連結決算会計期間の期首から適用しています。

2021年度までの旧基準では工事や案件が完成した時点で収益を認識していましたが、2022年度からは原価発生の進捗度に応じて売上を計上する進行基準を適用しています。なお、過年度の遡及修正は行っていないため、本説明資料の前年同期比は参考値として掲載しています。

業績ハイライト

業績ハイライトです。新型コロナウイルス感染症拡大前には至らないものの、受注獲得に向けた積極的な営業活動が奏功し、売上高は前期比10.1パーセント増加の467億700万円となりました。

しかし、営業利益は20億9,600万円、経常利益は21億2,600万円、親会社株主に帰属する当期純利益は13億9,400万円となり、利益面では前年をわずかに下回る結果となりました。

売上高・営業利益率推移

売上高・営業利益率の推移です。新型コロナウイルス感染症に対する規制が徐々に緩和されていくとともに、商業施設の人流の回復に連動し、当社においても前年を上回る売上高となりました。一方で、利益面では建設資材価格の高騰や価格競争の激化によりコロナ禍前の完全な回復には至らず、回復ペースも鈍化が見られます。

営業利益増減分析

営業利益増減分析です。売上高の増加により、売上総利益が4億8,400万円増加しました。しかし、売上総利益率の低下により売上総利益が4億5,100万円減少し、加えて労務費が9,500万円、経費が6,900万円増加した結果、営業利益は前年比1億3,100万円減少の20億9,600万円となりました。

外注費推移

外注費の推移です。2017年からの原点回帰期以降、外注費率の抑制に努めてきました。2022年度は厳しい入札案件や新規顧客への取り組み、同業他社との価格競争が厳しく、加えて建設資材価格の高騰などにより、外注費率が増加しています。今後も付加価値提案や原価計画を徹底し、外注費率の改善に努めます。

販売費及び一般管理費推移

販売費及び一般管理費の推移です。販管費はやや増加しているものの、売上高も増加しているため、販管費率は0.2ポイント減少しました。新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめた2020年以降、全面的なコストの削減に努めてきました。

2022年度においては、売上高増加に伴い、旅費・交通費などの活動費が増加し、採用活動の積極的な投資により雇用費なども増加しています。今後もITツールを活用した業務の効率化について、引き続き取り組んでいきます。

小売業界の動向

庄村⾹史氏(以下、庄村):ここからは、私より2022年度の事業の概況についてご説明します。まず小売業界の動向です。当社を取り巻く事業環境と密接に関係するのが小売業界の動向になります。

新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめた2020年と比べると、2022年は百貨店やコンビニエンスストアなどの回復が目立ちました。小売業全体でも右肩上がりで推移しています。小売各社には店舗光熱費等の上昇や物価高などのリスクもあるため、顧客動向には引き続き注視していきます。

ディスプレイ業界の動向

ディスプレイ業界の動向です。スライドのグラフは同業他社の売上高推移になります。新型コロナウイルス感染症拡大により、業界的には2020年度の売上が大きく落ち込みました。2022年度についても各社は横ばいもしくは微増と予測しており、完全回復までには時間を要する見通しです。一方、当社は2020年度以降も右肩上がりで推移しています。

SC出店状況

SC(ショッピングセンター)の出店状況です。こちらのグラフは、一般社団法人日本ショッピングセンター協会の「オープンSC情報」です。2023年度の新規出店数は32件と、2022年度と比較するとやや減少予定です。

2023年度は、公園や体験型施設の併設で集うことを意識した複合的な商業開発が増加し、アフターコロナを見据えた新たな段階への移行が進んでいます。

売上高推移(SC関連・その他)

売上高の推移です。当社の売上高は、SC関連が5割以上を占めています。近年は「その他」に含まれるオフィス・サービス空間の受注強化により、SC関連以外の割合が増加しています。

市場分野別売上高推移

市場分野別売上高推移です。複合商業施設・総合スーパー分野では、大型複合商業施設の受注が低調となった一方で、生活必需品を取り扱う総合スーパーで大型リニューアルがあったことから、売上高は増加しています。

食品スーパー・コンビニエンスストア分野では、食品スーパーで巣ごもり需要の反動減による投資計画の見直しなどがあったものの、前年より取り組みを強化したコンビニエンスストアの改装案件の受注が堅調に推移しています。

各種専門店分野は、新型コロナウイルス感染症拡大前の水準には至らないものの、外出機会の増加に伴いアパレル店舗や服飾雑貨店舗の需要が高まるとともに、受注が回復傾向にあり売上高が増加しています。

飲食店分野では、まん延防止等重点措置が解除され、来店客数の緩やかな回復が見受けられるとともに、各種チェーンストアが伸長したほか、業態転換などによる改装案件が堅調に推移しました。

サービス等分野では、中期経営目標の1つであるオフィス・サービス空間の売上比率拡大に向けた積極的な取り組みにより、エンターテイメント施設で大型案件を受注しました。また、テレワークなどの普及に伴う働き方の変化に対応したセンターオフィスの受注も増加しています。

受注高・受注残高推移

受注高・受注残高の推移です。収益認識会計基準等の適用により、進行基準の金額が増加したことから、受注残高は前期比で減少しています。しかし、収益認識会計基準等の適用による影響を除くと受注高・受注残高ともに増加しており、コロナ禍からの緩やかな回復が期待されています。

市場分野別受注残高

市場分野別の受注残高です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きかったアパレル店舗を含む各種専門店や、飲食店の受注残高が増加しています。また、収益認識会計基準等の影響を除くと、商業施設やサービス関連の受注残高も堅調に推移しています。

2023年度業績予想

佐々木:2023年度の業績予想についてご説明します。通期で、売上高は480億円、営業利益は22億2,000万円、経常利益は22億3,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は14億7,000万円と予想しています。

新型コロナウイルス感染症だけでなく、ロシア・ウクライナ情勢など世界情勢悪化の長期化による原材料価格の高騰など、外部環境リスクにも注意してコスト意識をもって利益確保に努めていきます。

配当実績

配当実績です。2022年度の上期配当は予定どおり18円としました。期末も18円を予定しており、通期で36円の配当となる予定です。

2023年度は上期18円、期末18円で、2022年度と同様に通期で36円の配当を予定しています。株主還元は、配当政策については今までどおり安定配当を継続し、プラスアルファで自己株式の取得を行いました。

自己株式の取得

自己株式の取得についてです。株式市場は現在も厳しい環境が続いているものの、中期経営計画の機能別戦略である財務戦略に基づき、2回に分けて自己株式の取得を実施しました。

自己株式の取得は、状況に応じて柔軟な対応ができていることが、メリットであると考えています。今後も株主のみなさまに利益還元を図っていくとともに、経営環境に応じた資本政策もしっかり行う考えです。

中期経営計画のテーマ

中期経営計画についてです。原点回帰、基盤構築、進化発展、拡大成長の4ステップの計画で、3カ年で段階的に企業価値向上を目指します。

2022年度は基盤構築期の最終年度とし、事業基盤の構築と当社の働き方改革である「WORK“S” INNOVATION」に基づいた経営基盤の強化を行ってきました。2023年度は、新たに策定した進化発展期の初年度です。

前中期経営計画「基盤構築」‐目標に対する実績

前中期経営計画の基盤構築期の目標に対する実績です。2022年度に最終年度を迎えています。営業利益率は目標の7パーセントに対して実績は4.5パーセント、ROEは目標の10パーセント以上に対して実績は4.7パーセントとなりました。

顧客提供価値の向上に対するKPIでは、オフィス・サービス空間の売上比率は目標の25パーセントに対して実績は20.8パーセント、地域活性に関わる案件数は目標の20件に対して実績は12件でした。

社員全員が働きがいのある会社の実現に対するKPIは、新卒社員3年後の定着率の目標が80パーセントに対して実績は77.6パーセントとなりました。1人当たりの年間残業時間3割削減は、全社員の37.8パーセントにとどまっています。

2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大に加え、2022年のロシア・ウクライナの問題や社会情勢の不安定さなどにより、物価や原材料が高騰し、円安も要因となって目標達成に歯止めがかかってしまったのが現実です。

オフィス・サービス空間への取り組み事例

中期経営計画の目標に関する主な取り組み事例について、3件ご説明します。1件目は、オフィス・サービス空間への取り組みの事例です。こちらはi-PRO株式会社の新社屋建設案件です。

「i-PRO PARK」というコンセプトのもと、公園のように地域に開かれたオフィスを実現しています。執務空間だけではなく、製品開発に欠かせないラボエリアや、リフレッシュエリア、交流スペースを設置しており、地域とともに発展し続ける企業を支えるオフィス空間を目指しています。

クライアントからは、「多岐にわたる関係者とのスケジュール調整や、プロジェクトの推進、ソフト・ハードの提案と実施、コストコントロールなど、プロジェクトにおけるさまざまな課題をスペース社の一貫した業務スタイルでしっかりと解決できた」と、当社の強みについてお褒めの言葉をいただいています。

地域活性への取り組み事例

2つ目は、地域活性への取り組み事例です。こちらは、和歌山県日高町にある廃校を活用し、カフェに再生させたプロジェクトです。学習机をテーブルに再利用するなど、学校の一部を引き継ぎ、懐かしく感じられる空間に仕立て上げました。

物販コーナーを併設し、近くにコンビニエンスストアのないこのエリアにおいて、住民の方々が日常的に買い物できる便利な施設となっています。さらに、観光客に向けて、日高町の特産物をPRする場にもなっています。「地域の方々と関係を深めて一緒に実現できた」といったお言葉をいただけた施設です。

内覧会やオープン時のイベントから地元の方々で大変賑わったと聞いています。住民の方々からは、「机に誰かの落書きの跡を発見して非常に懐かしい気持ちになった」という、うれしいお言葉もいただいています。

サステナブルな取り組み事例

3つ目は、サステナブルな取り組み事例です。こちらは、株式会社オークワの高級業態スーパーマーケット「メッサオークワ」における環境に配慮した新店舗の設計・施工案件です。

多くの利用者に長く親しまれてきた「メッサオークワ」のデザインを踏襲しながら、オークワ社の環境保全への取り組みをしっかりと社外にアピールできるような店舗空間を提案しました。環境に配慮したアップサイクル材を建材マテリアルとして使用しており、持続可能性に貢献した物件です。

和歌山県岩出市にゆかりのある、市の花、市の鳥、川などをデザインに落とし込むことで、地元の利用者に親近感を与え、長く愛される店舗を実現しました。

アップサイクル材の原料についての説明文をディスプレイに展示しています。買い物に来る利用者の方々に、オークワ社が環境保全に対して熱心に取り組んでいる姿勢をしっかりと伝え、環境に興味を持っていただけるようにした空間です。

クライアントからは、「以前のオークワとは異なる環境ができた。次回もこのように環境に配慮したお店を作りたい」というお言葉をいただいています。利用者からは、「岩出市に住む人々に寄り添った店内環境になっており、岩出市民としてはすごくうれしい」というお言葉をいただいています。

前中期経営計画「基盤構築」‐主な取り組みと成果

前中期経営計画の基盤構築期における、主な取り組みと成果についてご説明します。まず、事業基盤と経営基盤の取り組みについてです。

事業基盤の取り組みと成果においては、コロナ禍の影響を大きく受けました。しかし、チェーンストアなど当社の強みとする顧客基盤をしっかりと活かし、多様化したニーズやコロナ禍で明らかになった課題に柔軟に対応することで、影響を最小限にとどめることができています。

また、オフィス・サービス分野の取り組みをしっかり強化し、商業施設以外の実績を増やしてきました。地域活性案件についても戦略的に取り組んでいます。全国に事業所を置く当社の優位性・強みを発揮できる新たな分野を確立できたと自負しています。

経営基盤の主な取り組みと成果においては、当社流の働き方改革である「WORK“S” INNOVATION」を推進してきました。テレワーク制度やフレックスタイム制度など、いろいろな制度を作り、社内の整備を行ってきました。

サステナブル経営も推進しており、サステナビリティ基本方針と重要課題を策定して進めています。指名・報酬委員会の設置や取締役会の実効性評価の実施を行うなど、コーポレート・ガバナンスの取り組みを強化し、プライム市場への移行も果たしています。

新中期経営計画「進化発展」

新中期経営計画の進化発展期の目標、方針、戦略についてお話しします。まず、進化発展期の目標は、「営業利益率5パーセント」「売上高成長率5パーセント」「全社員活躍の実現」「顧客提供価値の向上」の4つを掲げています。

中期経営目標を達成するための社員の行動意識については、「自ら考え、行動し、成果にこだわる」「オールスペースが持つ可能性を追求する」「一人ひとりが経営者意識を持って行動する」の3つの方針を定めました。

中期経営戦略については、「事業発展の戦略」「経営進化の戦略」の2つを掲げています。

新中期経営計画‐目標

新中期経営計画の4つの目標について詳しくご説明します。基盤構築期の目標を踏襲しつつ、社会情勢を鑑みた目標を設定しています。

1つ目の「営業利益率5パーセント」は、基盤構築期に掲げた7パーセントの目標よりも低い数字に設定しています。新型コロナウイルス感染症、ロシア・ウクライナ情勢、原材料の高騰、円安などの外的要因の中で、社会情勢を考慮した目標設定を行っています。この目標を達成するために、顧客から指名される会社を目指していきます。

2つ目の「売上高成長率5パーセント」は、工事完成基準によるものです。当社は2023年で75周年を迎えます。25年後の100周年を目指し、1,000億円企業を見据えた目標設定としています。歩みを止めずに、新たなことにもしっかりチャレンジしながら成長し続けていきます。

3つ目は、「全社員活躍の実現」です。社員各自が働きがいを持てることに加え、それぞれの役割の中でしっかりと活躍してもらいたいという思いがあります。当社の文化を社員によく理解してもらい、社員が活躍できる環境作りを目指していきます。社員の活躍がよい空間作りにつながると自負しています。

4つ目は、「顧客提供価値の向上」です。顧客に寄り添ったお役立ちとして、顧客第一主義が当社の強みです。その価値をさらに上げていき、顧客に提供できる価値を高めていきます。顧客のニーズに応えることはもちろん、顧客自身も把握していない潜在的な課題についても可視化し解決していくことで、選ばれる会社を目指していきます。

新中期経営計画‐戦略

新中期経営計画の戦略についてです。中期経営目標を達成するための戦略である中期経営戦略を、「事業発展の戦略」と「経営進化の戦略」に分けて進めていきます。各戦略に施策とKPIを設定していますので、KPI実現、戦略実現のために取り組んでいきます。

新中期経営計画‐株主還元方針

株主還元方針についてです。財務の健全性、成長と還元のバランスを総合的に勘案しつつ、積極的な利益還元を引き続き行っていきます。本中期経営計画においては、連結配当性向50パーセント以上を目標水準としていきます。

新中期経営計画‐サステナブル経営

サステナブル経営についてご説明します。我々の企業理念は、「商空間の創造を通じて、豊かな社会の実現に貢献します。」です。この企業理念に基づき、当社と社会双方の持続可能な発展を目指していきます。2021年に策定した当社のサステナビリティ基本方針の7つの重要課題に対し、本中期経営計画における各KPIを分類して実行していきます。

当社だけではなく、顧客やパートナー企業とも連携し、着実にサステナブル経営を進めていきます。以上が私からのご説明となります。ご清聴ありがとうございました。