1分間でわかるグッドスピード
関本圭吾氏(以下、関本):本編の前に、グッドスピードについて1分間でご紹介します。グッドスピードは愛知県を中心に中古車販売を行っている会社です。近年は大型店「MEGA専門店」の出店を軸に成長を遂げています。
11月14日に、2022年9月期通期決算を発表しました。事前に開示していた計画に対し、売上高は下振れするも、当社の重視する営業利益は計画どおり10億円を達成しました。
今回は通期決算ということで、2023年9月期の計画が開示されています。目標として、売上高は33パーセント増の約750億円、営業利益は70パーセント増の17億円を目指しています。また、従来は毎期成長率20パーセント以上、営業利益率毎期改善のかたちで開示されていた中期計画が、今回は具体的な数字の開示となっています。
本日は、「売上未達を含め、第4四半期は何がよくて何が計画と違ったのか?」「今回発表した計画の前提はどうなっているのか?」「出店など何かリスクはないか?」「新車の生産や販売動向にはどのような認識を持っているのか?」「この1年間よかった中古車市場を、今期はどのように見ているのか?」について、うかがっていきたいと思います。
2022年9月期 連結業績ハイライト
関本:みなさま、こんにちは。IR Agentsの関本です。本日もグッドスピードの松井さまにお越しいただき、発表された2022年9月期決算についてお話をうかがっていきます。松井さま、よろしくお願いします。
松井靖幸氏(以下、松井):はい、今回もよろしくお願いします。
関本:まずは、第4四半期決算の全体感についてうかがいます。着地から考えると、売上高および四輪小売販売台数は未達ですが、大事にしていた利益についてはガイダンスどおりの着地だと理解しています。また、第4四半期は繁忙期だったと思いますが、売上高および四輪小売販売台数はどのように捉えればよいでしょうか?
松井:おっしゃるとおり、当期のガイダンスは、何よりも営業利益10億円にコミットして経営を進めてきました。営業利益10億円をなんとか達成できたことで、市場のみなさまとのお約束は果たせたと考えています。
売上高は561億4,400万円と未達だったのですが、車を仕入れて販売するビジネスモデルのため、在庫を入れ替えたりオークションに流したり、あるいは利益を削るなどして販売すれば売上は作れると思います。しかしながら、無理に売上を作るのが本意ではありませんので、あえてそのようなことは行わなかったため、このような着地となりました。四輪小売の販売台数1万4,793台については、欲を言えばもう少し伸ばしたかったと思います。
粗利を確保する方法として、期末セールを大々的に行い、価格を下げて販売台数を伸ばすなどといった商法があります。しかし、利益の達成が見えていたため、第4四半期は極めて自然体での販売を行ってきた結果、このような着地になっているというのが正直なところです。また、静岡県静岡市の一部の店舗で台風の水害による被害が出たこともマイナス要因の1つになっています。
台風15号に伴う災害の発生について
関本:台風15号については、実は私もこの台風の前日に東京駅で6時間ぐらい拘束され、結局帰ったということがありました。今回のリリースにもあったと思うのですが、こちらの影響についてあらためて確認してもよいでしょうか?
松井:動画をご覧のみなさまの中にも、災害に見舞われた方がいらっしゃるかもしれません。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。当社では、幸い怪我人などは出ませんでしたが、建物や車が被害を受けたことにより業績に影響が出ているため、そのあたりに関してご説明します。
一番被害が大きかった静岡県静岡市清水区に店舗があります。スライドの左下に写真がありますが、1階部分が完全に冠水し、車やバイク248台が不動車になりました。248台の中には、すでに受注をいただいて納車を待つだけの車が87台あり、その相当数が9月納車予定だったものですので、機会損失および災害損失を計上しています。
関本:今期の災害損失としては1億4,500万円ですが、損害保険の適用を2億400万円見込んでいます。それを控除したあとですので、実際の損失は約3.5億円で、それでもカバーできなかった金額が1.5億円ということでしょうか?
松井:おっしゃるとおりです。納車できなかった車の逸失利益は含まれないため、保険金を控除した上で1億4,500万円の損害があったということです。
関本:スライド右側に記載されているとおり、今回の実損額すべてをカバーできなかったことから、保険料の上限額が引き上げられたという理解でよいでしょうか?
松井:はい。すでに上限額引き上げの手続きは完了しています。店舗も大きくなっていますので、今後このような災害があった時に、当社の200台から300台ある車の在庫や建物もきちんとカバーできるように見直しを行っています。
関本:最近は気候変動の影響も大きくなっていますが、今後、同規模の災害があればカバーできるという理解でよいですね。
松井:はい、おっしゃるとおりです。
関本:第4四半期は台風の影響がありましたが、災害ですし、第1四半期まで尾を引くものや、売上高、四輪小売関連での悪い影響はなかったという整理でよいでしょうか?
松井:はい。冒頭で関本さんから、販売台数が少し弱かったのではないかというお話がありましたが、当期以降まで足を引っ張るようなネガティブ要因はないため、第1四半期はしっかり数字を作ってくれると考えています。
2022年9月期 連結貸借対照表
関本:先ほど、今回は利益を確保できるため、無理に売上を作ったり販売を伸ばしたりしなかったとお聞きしました。実際に商品在庫を見ると、昨年よりも積み上げられたと感じます。このようなところに、無理に売らなかった部分が表れているという理解でよいでしょうか?
松井:はい。四半期毎に本シリーズの動画を撮っているため、前第1四半期の動画を記憶している方がいるかもしれませんが、スライド右上に記載のとおり、2021年9月期末は在庫が80億8,800万円でした。当期末は113億1,800万円で、1年かけて32億3,000万円分の在庫を増やしました。
MEGA専門店1店舗あたりの在庫は200台で約4億円分ですので、3店舗で約12億円分にしかなりません。それが32億3,000万円分も増えているのはなぜかというと、既存店も車の台数がかなり増えたためです。
前期のスタート時点では在庫が少ない中で営業活動をしなければならず、販売台数が思うように伸ばせませんでしたが、期が走り始めてから段階的に増やしていきました。それに対し、当期末では在庫をしっかり持った状態で2023年9月末をスタートすることができています。そのような意味で、第1四半期以降は昨年よりポジティブに販売できる環境が整った状態でスタートしています。
関本:そのため、次期第1四半期に向けての在庫は、昨年よりもあるということですね。
松井:そのとおりです。
四輪小売販売 推移
関本:新車・中古車販売のサブセグメントについてです。1台あたりの粗利益を継続して伸ばしており、特に第4四半期はかなり大きく伸びていると思います。こちらは何か一過性の要因があったのでしょうか? また、この伸びは一定継続すると見てよいのでしょうか? このあたりについて整理をお願いします。
四輪小売販売台数の推移(2)
松井:売上総利益が上がっているのは、支払総額表示対応による我々特有の影響だと思っています。スライドの折れ線グラフのグレーのラインは、1台あたりの売上総利益の前年同期比を示しています。第3四半期、第4四半期で111パーセントということで、前年対比で10パーセント以上強く出ている状況です。
(参考)四輪中古車販売における支払総額表示の先行対応について
松井:支払総額表示は2023年10月より義務化が予定されていますが、当社は2022年2月より先行導入を行っています。第2四半期は変更時にやや適切でない方法をとってしまったという失敗があり、販売台数が落ちてしまいました。第3四半期以降でチューニングを行ったことにより、販売台数も売上総利益も上昇させることができ、それが第4四半期まで継続しています。
右下に記載していますが、現時点では2022年9月期第4四半期の水準を維持する状態で、2023年9月期も推移していけると思っています。こちらは、オークション相場の上昇とは直接的に影響がないところで起こっている事象だと捉えています。
関本:第4四半期の水準という点では、来期以降も継続すると見てよいということですね。
松井:そのとおりです。
買取台数の推移
関本:新車・中古車販売以外についてです。まず、今回は買取台数が継続してよく伸びているといった印象です。これは単純に買取営業の人員数を増やしたからという理解でよいでしょうか?
松井:はい、そうですね。当期も順調に前年対比150パーセント以上を維持するかたちで、右肩上がりにできています。
成長戦略 2)買取事業の強化
松井:ご覧のとおり、買取台数の増加には買取営業の人員数を増やしていくことが一番重要だと考えています。買取営業担当の人員数は、2021年9月期の27名から46名になりました。まだ少ないものの、伸び率としては大きかったため、買取台数を増やせています。引き続き人員数を増やし、買取台数も継続して伸ばしていきたいと考えています。
事業構成
関本:売上総利益率は10パーセントと高いですが、過去の取材で何度も触れているとおり、水準が高いのは価格が上がっているためで、実際は5パーセント程度に落としてでも買取台数が増やせたらよいと思っているということでしょうか?
松井:おっしゃるとおり、売上総利益率10パーセントにはこだわっていません。まずは人員数を増やし、買取台数を増やすことに注力していきたいと思っています。売上総利益率は5パーセント程度まで下がっても、許容しようと考えています。
二輪小売販売台数の推移
関本:ふだんのトピックでは触れませんが、バイクの伸びが好調だと思います。特に今年の下期がよく伸びている理由について、あらためて教えてください。
松井:バイクは本当によく伸びており、順調に拡大できています。四輪の小売販売店の環境と業界関係は、非常によく似ていると捉えていただいて大丈夫です。
バイクはプレイヤーが非常に多く、小さい販売店も多いです。バイク販売店の歴史は長いですが、ある程度の資本力があり投資できる会社が、新店舗を出して在庫をしっかりそろえていけば一定のシェアは取れるという、多数乱戦の業界構造が前提にあります。
特に、この1年は出店数を非常に伸ばしてきましたが、いずれも四輪のMEGA専門店との併設型店舗での出店を重ねています。前期に新しく出店したMEGA専門店は全店、バイクの販売店との併設型にしており、今後も基本的にはこのかたちを踏襲していく予定です。四輪の新店舖は自動的に併設型となり、大きな追加コストをかけずに二輪のお店をオープンできるため、2023年9月期以降もしっかりと伸ばしていけると思っています。
成長戦略 3)バイク事業の強化
松井:2023年9月期についても、スライドに記載のとおり店舗数を増やす予定ですので、引き続き拡大していけるものと思っています。
関本:店舗数がこれまでの1.5倍に増えるため、引き続き成長を見込んでよいと思います。
附帯サービス関連売上 推移
関本:附帯サービスについてです。2022年は正直、けっこう苦戦したと言いますか、数字としてはあまり見栄えがしませんでした。2022年の第4四半期は改善して、2021年第4四半期に対して2億円ほど成長しました。詳しく見てみると、沖縄で展開しているレンタカー事業の上昇などが見られます。あらためて第4四半期の内訳を教えてください。
松井:ほとんどが今おっしゃっていただいたとおりで、当期は附帯サービス関連の収益が思うように伸びなかったのが反省点として残っています。
第3四半期で整備の組織強化に遅れがあり、少し数字を落としたことで鈍化したとご報告しました。この状態が第3四半期、第4四半期も続くとお話ししていましたが、結果的に売上が伸びたため、不思議に感じられたと思います。
実際のところ、第3四半期と比較すると、沖縄のレンタカー事業のみで売上が9,500万円増加しており、そこに引っ張られて全体が伸びているように見えています。レンタカー事業の調子がよいのはポジティブなニュースですが、整備の遅れはやはり予想どおりですので、今期以降で十分に伸ばしていきたいと考えています。
関本:レンタカー事業の好調は、単純に沖縄の観光客が増加したことが要因でしょうか?
松井:そうですね。
関本:わかりました。整備保障については第3四半期に整理しましたが、やはり人数の獲得や育成に課題があります。第4四半期も継続していますが、来期からきちんと育成・採用も含めて取り組み、伸ばしていくといったお話だったと思いますが、この認識でよろしいでしょうか?
松井:はい、4月には新卒社員と外国人技能実習生の採用も再開しており、これらのスタッフを第3四半期、第4四半期で教育してきました。彼らが順次現場に出て活躍し始める時期に差しかかっていますので、2023年9月期は早い段階で数字を戻し、みなさまにご安心いただけるようにしたいと思っています。
関本:以前からお話ししているのですが、レンタカー以外の通常の整備も30パーセント、40パーセントと徐々に伸びていくとストックとなりますので、引き続きがんばっていただければと思います。
◇新規整備ピット情報
松井:店舗数を拡大していくためには整備ピットのインフラが拡大しないと当然伸びないわけですが、四輪の販売店は出店を続けており、ピットは確実に増え続けています。人員の確保が追いついていないものの、人員が補充できれば十分に数字を作れるはずですので、早く戻したいと思って取り組んでいます。
成長戦略 4) 人材の確保
関本:人員が増やせればというのは、まさにそのとおりだと思いますが、採用の進捗はいかがでしょうか? 第3四半期までの目標と比べると、まだ少しビハインドしている印象です。
松井:将来に向けてしっかりと人を採っていきたいと思っていますし、チャレンジングな採用計画も出しています。着地の連結従業員合計数704名は、当初発表していたより、決して多くありません。実際は、もっと大勢の採用を予定していました。
冒頭で「売上未達で営業利益は達成しました」と説明しましたが、売上が未達の分は販管費を抑えて利益を出しています。しかし、成長のための投資は一切止めていませんので、採用費や人件費を無理やり削ってこの着地になったわけではありません。
十分に採用費をかけ、人材を増やす取り組みをしていく中で、このかたちになってしまったというのが正直なところです。今期以降も2021年に比べ、採用費・採用計画をかなり積み増していますので、十分に投資し、人材を増やし集められるよう、引き続き取り組んでいきたいと思っています。
2022年9月期 成長戦略 実行結果の振り返り:人材の確保
関本:私が手元で計算したところ、前期から辞められる方の比率は減ってきています。退職抑制・採用強化を続けることによって従業員数を増やせると思っていますが、その前提でも、今期は200名より少し多い人数を中途で採用しなくてはいけないと思います。
過去から見るとかなり多い水準ですが、御社はどこにボトルネックがあると感じているのでしょうか? 例えば、応募数なのか、内定を出す数やクオリティの問題なのか、あるいはどこが課題で、どこにお金を使っていけばよいのかといった点を、どのように整理されているのでしょうか?
松井:おっしゃるとおり、退職率は少しずつ改善していますが、より減らしたいというのが大前提です。また、お会いする求職者とのマッチングの精度や、内定を出す数や受けていただく受諾率等々の比率も決して問題はないと考えています。それぞれのスコアはよい状態にあります。
思ったよりも人数を集められない最大の要因は、何よりも母集団の形成です。採用したい人数から逆算した時に、求職者の応募数が完全に足りていない状態です。
やはり競合がいる中でも、どれだけ露出していくかに尽きると思っています。我々が想定し、用意していた以上に母集団を形成するためのコストをかけなければいけなかったと反省しています。当期は採用費もかなり積み増しし、しっかりとお金を使います。
人材の獲得は必要不可欠ですので、人事のスタッフも十分に補強し、将来の成長のために力を入れていきます。採用した後の戦力化や定着化については少しずつ回り始めていますので、引き続き着実に進めていきたいと思っています。
関本:採用数が中長期にわたるリスクになる可能性はありますか? 目標から80名ぐらいビハインドしたことが再来年の出店に響いてくるなど、特に影響はないのでしょうか?
松井:それはありません。四輪販売、二輪販売、整備等の事業の種類を増やしていくよりも、今は既存のビジネスモデルを店舗展開で拡大して増やす方法をとっています。買い取り・整備を含め、新戦力のスタッフが現場に出て活躍するまでの戦力化は、販売で約3ヶ月、整備で約6ヶ月の日数を見ています。
そのような意味では、何年も先の成長可能性に影響を与えるとは考えていません。足元の採用がうまくいけば、すぐ数字を返していける状況になると思っているため、心配はしていません。
関本:2022年9月期はガイダンスどおりに営業利益も出て、昨対比で60パーセント以上の成長となり、及第点に達してよかったと思っています。
松井:ありがとうございます。
◇新規出店情報
関本:今期が終わったところで、2023年9月期の話が出てくると思うのですが、あらためて整理させてください。昨年に「グッドスピードMEGA SUV 豊川御油店」と「グッドスピードMEGA 輸入車名古屋昭和橋店」の2つのMEGA専門店を出店されました。
2022年10月には「グッドスピードMEGA SUV イオンモール土岐店」が出店し、2023年1月には愛知県岡崎市に出店されます。また、大阪府豊中市と福岡県福岡市にも2店舗出店しますが、実際に大きく貢献するのは2023年9月期ではないかと思っています。
豊川御油、名古屋昭和橋、土岐、岡崎の4店舗が新店としての貢献となり、1店舗あたりの売上が30億円くらいだと考えると、出店のタイミングを含めて約100億円が新店舗の効果だと思っています。さらに、買い取りやバイクでプラス80億円くらいとなり、昨対比の売上で約180億円伸びると計算していますが、違和感はないでしょうか?
松井:計算はおおむね間違いありません。2023年の業績予想ですが、前期比186億円の増収を見込んでいます。
松井:新店については、ご説明のとおりMEGA専門店の追加がありますが、前期に出店した2店舗と、当期がスライドに記載の4店舗です。
従来、MEGA専門店は在庫200台以上をベースにしてきましたが、当期の岡崎以降は、300台以上のかなり大型の店舗出店が続きます。来期にはそこまで影響がありませんが、それ以降はかなり大きく効いてくると思います。また、買い取りとバイクの存在感が出てきており、このあたりの増加も見込んでいる状況です。
2023年9月期 業績予想の前提条件
関本:今期は見通しを作るうえで大事な点がたくさんありました。まず、新車販売の売上が戻りつつありますが、中古車の相場見通しは御社に影響があるのでしょうか? このあたりから、どのように整理しているのか教えてください。
松井:おっしゃるとおり、新車販売がようやく戻ってくるような状況になっていますが、まず新車販売が落ち込んでいたここ1年、2年の日本の小売環境については、決して中古の小売販売に需要が流れてくるといったことは起こっていません。ずっと底堅く推移してきたため、ここは変わらないと思っています。
仮に、新車販売の売上が戻ってきても、我々の本業である中古車小売販売は大きな影響を受けないという前提で考えています。
一方で、中古車の在庫不足の解消が進むといった期待感があります。新車販売が戻り、みなさまが乗っていた車を下取りに出し、それがオークションに流れることにより、相場の上昇は落ち着く可能性があります。
ただし、販売高の単価が下がる可能性はありますので、多少の微減は想定しています。1台あたりの粗利の単価は、支払総額表示対応により、2021年後半から上がってきている事情がありますので、直近の水準は維持できると考えています。総じて、業界環境の変化がネガティブに作用する可能性は低いと思っています。
また、バイクは新車も取り扱っています。ハーレーダビッドソンとBMW Motorradの2つのメーカーの新車ディーラーを行っているのですが、バイクはやはり新型コロナウイルス感染症による生産減の影響を受けており、販売機会にややネガティブな状況が続いていたため、デリバリーが戻ってくれば当期の販売にプラスで効いてくると思っています。
関本:確認ですが、実際に相場で単価は変動するものの、会社が追っているのは基本的に1台あたりの粗利です。台数が伸びると粗利も伸びると考えると、単価が落ちて売上高が落ちても、お客さまがお求めやすい価格になるため、台数を伸ばすにはポジティブな方向に動いてくれることを期待していると理解しています。
松井:そのとおりです。これまでは相場がどんどん上がりましたが、我々のような販売店が価格に転嫁する状態でも、ユーザーに底堅く中古車をお求めいただきました。そのような意味では、値段が下がっていけばお買い求めやすくなりますので、ユーザーにとってはポジティブとなり、プラスの需要が見込める可能性もあります。
関本:ちなみに、1ヶ月前か2ヶ月前に米国で中古車を販売しているCarMaxが、想定よりも粗利率の悪化も含めて業績が悪かったということで、「中古車市場はおしまいか?」といった雰囲気がありました。他社のことで恐縮ですが、松井さまはどのようにご覧になっていますか?
松井:外側からの印象になるため、あくまで私の推測というレベルで捉えていただければと思いますが、日本よりもアメリカのほうが中古車の販売が新車の販売を上回っています。新車よりも道具としてお求めやすいということで、中古車にかなり需要が流れています。
日本でも年々中古車の販売が増えて、新車から中古車へのシフトが起こっていますが、アメリカに比べると日本はまだ遅れている状態です。
今回の新型コロナウイルスの影響で新車のデリバリーがないという時に、日本はそれほど新車から中古車のシフトは起こらなかったのですが、アメリカでは「新車が出てこないので、中古車を買おう」という方がかなりたくさんいらっしゃいました。アメリカはコロナ減産による中古車特需のようなものが、かなり強く起きていたのだと思います。
実際に彼らの業績を見ると、コロナ禍で売上や利益が非常に伸びるといったことが起きています。新車のデリバリーが戻ってくるのに合わせて、この特需が落ち着いてきて株価に影響しているということがあるのかもしれません。
関本:中古を扱うといった文化の面でも、米国のほうが中古住宅も強いし、中古車もあるからというイメージかと思います。
成長に影響を与える可能性のある主なリスク
関本:リスク的に考えていくと、米国は非常に金利が上がっていますが、日本はそれほど上がっていません。金利が上がってくると、負債が大きい会社、特に御社も含めて小売店でかなりレバレッジをかけて出店していく会社は厳しいかと思います。調達金利環境の認識について、リスクになり得るものはありますか?
松井:すべてではありませんが、借り入れしている中には変動のものもあるため、金利が上がればその分収益にマイナス影響を与えるというのはおっしゃるとおりです。
リスクについてはスライドにも記載のとおり、中古車販売には割賦販売があり、みなさまがお買い求めする時にローンを組んでいただいた場合、そこにかかる収益が発生しています。こちらは売上を粗利に計上しているのですが、実は支払利息よりもこのローンにかかる収益のほうが規模はかなり大きいです。
もちろん支払利息は金利が上がれば増える可能性がありますが、それよりも獲得する収益の比率のほうが大きいため、全体の収益という意味ではそれほど大きなリスクにはならないと考えています。とはいえ、できるだけ低い金利で効率よく資金調達することが望ましいことは間違いないため、その部分は引き続き1件1件丁寧に議論しながら調達していきたいと思っています。
関本:御社が支払う金利が上がる分よりも受取利息のほうが大きく、変動金利分が上がるということは受取利息も増えるということですので、その分で相殺される、もしくはプラスが出るという理解でよいでしょうか?
松井:そのとおりです。
関本:スライドには影響度が「中」と記載されていますが、それほど影響はないということですね。
FAQ よくある質問
関本:私もお手伝いさせていただきましたが、ワラントを発行してから1年経過し、バランスシート関連の進み具合はある程度順調かと思っています。このあたりでリスク視していることや、今後に影響が出てくるものはありますか?
松井:進み具合については大和証券でコントロールしているため、我々がコントロールできることではありませんが、出来高が増えればその分行使が進むという相関関係は間違いなくあります。
2022年の前半は出来高がかなり細かったのですが、おかげさまで下半期に入ってやや取引が増えています。しっかりとIRを行い、市場から注目していただけるように地道に積み重ねていくことが一番大事だと思っていますので、継続して取り組んでいきたいと思っています。
連結 中期計画
関本:今期のイメージ感をある程度作れたかと思いますが、今回の中期計画では、今まで比率のみで示していたところを数値で開示されています。前回の第3四半期の時に、「もう少し具体性のある中期計画を出したい」とおっしゃっていたため、その動きの一環としてすばらしいことだと思います。
2022年9月期のMEGA専門店の新規出店は、もともと「3店舗以上」と記載されていました。岐阜県土岐市の計画がずれたため3店舗から2店舗になり、2023年9月期に4店舗を計画しています。
来期以降は5店舗ということでかなり強気な計画という印象を受けています。土地の探し具合やバランスシートを踏まえてのことかと思いますが、このあたりはどのような変化があったのでしょうか? 元々この前提で組んでいたのでしょうか?
松井:3店舗以上と計画していたのですが、今回は計画から売上も利益もしっかり出しましたので、出店計画もしっかり提示しようというのが前提にあります。
昨年までも「20パーセント以上の成長を継続していきたい」と記載していましたが、母数が上がれば上がるほど、2店舗を出すだけでは20パーセント成長を作れなくなることがおわかりいただけるかと思います。手元で計算していた方は、「3店舗以上と言っているが、3店舗より多いだろうな」と予想がついていたと思います。
もちろん市場環境もあり、出店候補を見つけやすくなっていることもありますが、社内の店舗開発チームを強化し、事業も拡大して資金調達も行っていくといったバランスの中で、今期は4店舗、来期以降は5店舗を出店することを考えてこの計画を出しています。今回具体的に発表したからには、実現に向けて取り組んでいきたいと思っています。
関本:私としては、売上高成長率30パーセント以上をしっかり数字で出されたことは大変うれしいことだと思っています。2025年9月期の営業利益42億円という計画もかなり大きな数字だと思いますので、引き続き応援しています。
収益性の改善ということで、営業利益率は2022年9月期の1.8パーセントから、2023年9月期は2.3パーセント、2024年9月期は2.7パーセント、2025年9月期は3.1パーセントと改善させていく見込みですが、冒頭でお伝えしたとおり、単価の動きもあると思っています。そのようなことが起きた時に、収益性と利益額のどちらが重要かを教えてください。
松井:ミックスの変化が営業利益率に与える影響はかなり大きいです。自動車の小売だけではなく、買取、附帯サービス関連、整備、バイクの販売もありますので、ここのミックスによって変わってしまいます。ただし、大前提として一つひとつの事業の収益性は段階的にしっかり上げていきたいと考えています。
小売販売についてはおっしゃるとおりで、1台あたりの粗利額をきっちり出していくことが前提になっていくと思います。中古相場の高騰が若干落ち着けば、粗利額を維持しながら販売単価が下がるため、その分営業利益率が上がりやすくなると思います。
各事業の利益率は高めていきたいと思っています。前期の最終着地の営業利益率1.8パーセントは、競合に比べてまだまだ低いことを我々も認識していますので、段階的に増やしていきたいということで、このような目標を設定しました。
関本:中古車販売の企業はたくさん上場していますが、営業利益率4パーセントから6パーセントあったらよいなと思いますので、引き続き応援しています。
最後に、極めて短期な話で恐縮ですが、冒頭でも少しお話ししていたとおり、去年の第1四半期後の取材時に「在庫が少ない状況で、売上が伸ばせない」ということがあったと思います。今期はそれほど問題ないのでしょうか?
松井:業界環境をお話ししたとおり、それほどネガティブな状況でもないですし、期末にしっかり在庫を抱えた状態で着地して、かつ第1四半期のスタートを切っています。第1四半期からしっかり数字を作り、当期の目標である営業利益17億円を確実に達成することで、みなさまにますますご期待と信頼をいただけるように取り組んでいきたいと思っています。
関本:わかりました。これで今期・来期の状況、今回アップデートされたところをひととおりおうかがいしました。本日もお時間いただきありがとうございました。
松井:ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。