「ココペリ」=「ネイティブアメリカンに伝わる繁栄の神様」
藤沢 久美氏(以下、藤沢):『藤沢久美の社長Talk』。今週のゲストをご紹介します。株式会社ココペリ 代表取締役CEO 近藤繁さんです。近藤さん、よろしくお願いします。
近藤 繁氏(以下、近藤):よろしくお願いいたします。
藤沢:「ココペリ」って、すごくかわいい名前なんですけれども。
近藤:ありがとうございます。耳に残る名前ですよね(笑)。
藤沢:お仕事の(お話の)前に、社名の意味(由来)を聞いてもいいですか?(笑)。
近藤:これはアメリカの内陸部に、今でもネイティブアメリカンの先住民の方がいらっしゃるんですけど、その方々に伝わる精霊の名前が「ココペリ」で。ロゴマークもあるんですけど……。
藤沢:ウサギかと思ったら、耳が4つある。
近藤:どうやら、原型はキリギリスらしいんですよね。
藤沢:あ、ごめんなさい(笑)。
近藤:諸説あるんですけど(笑)。特徴的なのは、その「ココペリちゃん」は笛を持っていて。その子が笛を吹くと、町が繁栄したり、草が生えたり、花が咲いたりとか。そういった「繁栄の神様」と呼ばれているんです。
それを僕が学生時代、アメリカに留学していた頃に知りまして。それもあって、会社を作る時に、この「ココペリ」という名前をつけたかたちですね。
藤沢:へぇー。みんなが繁栄する。
近藤:そうです。
藤沢:「ココペリ」になる。だから、笛を吹くのが「ココペリ」の……近藤さんたち。
近藤:そうです。我々が笛を吹いていくと。
藤沢:すごーい。精霊の会社ですね。
テクノロジーを活用して、中小企業が成長していける世界を作っていく
藤沢:そんな“精霊の長”である、近藤さんが今日はゲストでございます(笑)。ということで、みんなが幸せになる仕事とはいったいどんな仕事なんでしょう?
近藤:僕らは「企業価値の中に、未来をみつける」というミッションと「中小企業にテクノロジーを届けよう」というビジョンを掲げているので、「テクノロジーを活用して、日本全国の中小企業が成長していけるような世界を作っていく」というところを、使命を持ってやっている会社です。
藤沢:なるほど。中小企業って、ものすごい数があって。私も中小企業が大好きなので、よく中小企業回りをしているけれど、ひと言でいえないくらい種類が多いじゃないですか?
近藤:そうですね。
藤沢:(社員数が)1人のところから100人とかまで。どのへんがお客さまというか、どの辺りにテクノロジーを届けるんですか?
近藤:まず数字的なところでいくと、今、日本に企業って約350万社あるといわれていて、そのうちの99.7パーセントが中小企業です。なので、(数でいうと)330万社とか340万社とかになります。
さらにもうちょっと詳細でいくと「小規模事業者」といわれる括りがあって。いろいろな業種によって、また定義があるんですけど。ざっくりいうと「社員数が20名以下の会社」が小規模事業者といわれているんですけど、そこが全体の85パーセントくらいを占めるので、300万社くらいが小規模事業者。僕らはそこにテクノロジーを届けたいと思っていますね。
藤沢:すごいマーケットですね。
近藤:マーケットは大きいですね。
藤沢:マーケットは大きいけど、20人以下だと売上も小っちゃいですよね。
近藤:そうですね。
藤沢:じゃあ、ものすごい数を押さえていかなきゃいけない。
近藤:そうですね。マクロで見ると大きいマーケットなんですけど、今、おっしゃっていただいたとおり、ミクロというか実態で見ると、いろんな業種でいろんな魅力的な個性ある社長のいる会社がたくさん全国に散らばっているので……。
藤沢:ですよね。だって、八百屋さんとかもそうなるでしょ?
近藤:そうです。
藤沢:飲食もそうですよね。
近藤:そうです。
藤沢:1人……夫婦でやっている定食屋さんも、そういうことですよね。
近藤:そうです。
藤沢:2人、3人でやっているプログラムの会社もそうですし……って感じですよね。
近藤:そうなんですよね。なので、マクロ的にはすごく大きな市場なんですけど、そうやって一つひとつ見ていくと、非常に散らばっているようなマーケットだという感じですね。
中小企業向けの経営支援プラットフォーム「Big Advance」
藤沢:そこに、共通した何かを納めていくということですか?
近藤:そうですね。僕らは「Big Advance」という、中小企業向けの経営支援プラットフォームを開発・運営しているので、それを全国の小規模事業者にくまなく届けていくのが使命ですね。
藤沢:「経営支援」と聞くと儲かりそうな気がするんだけど、具体的にいうと、どういうことが経営支援になるんですか?
近藤:本当にいろんな企業・業種もあり、1つの企業にとっても、たぶんいろんなステージがあって。
例えば「売上を伸ばしたい時期」とか「資金繰りが厳しい時期」とか「仕入先を探したい時期」とか「伸ばしたい時期」とか。たぶん、いろんな経営課題が常にあって。そういった時に僕らのサービスを使ってもらって、その時に必要な機能が詰まっているような、そんなWebプラットフォームを目指して作っています。
現状ですと、機能的には「Big Advance」の中に8つの機能があるんですけど、「ずっと使う機能」とか「必要な時に使う機能」とかさまざまな機能があって。それを我々としてはこれからも増やして、いろんな業種のいろんな企業が経営課題にぶつかった時に「『Big Advance』に入れば何か解決の糸口が見つかる」みたいなサービスを目指している感じですね。
藤沢:ということは「Big Advance」というクラウドサービス?
近藤:そうですね。
藤沢:これを「会社のパソコンで使いましょう」みたいな話ですね。
近藤:そうです。
藤沢:パソコンを持っていない会社も多いでしょう?
近藤:そうですね……。
藤沢:もう、(企業のパソコン普及率は)だいぶ増えたのかなぁ。
近藤:そこはさすがに増えましたし、スマホは必ずみなさん持っているので。スマホアプリも展開しているので、そういう方はアプリでやっていると。
藤沢:なるほど。スマホアプリの「Big Advance」もあると。
近藤:あります。
利用ユーザーの属性において、最も多い業種は「建設業」
藤沢:具体的にどんなサービスがあるかというと「ビジネスマッチング」「福利厚生」「ホームページ自動作成」「補助金・助成金」「ビジネスチャット」。「士業相談」、これは弁護士さんとか会計士さんとか……。
近藤:そうですね。
藤沢:そして「安否確認」。まず最初に「ビジネスマッチング」って書いてあるということは、これが一番よく使われるということですか?
近藤:そうですね。今はこれが一番使われていて。売上を伸ばしたりとか、仕入先を探したりとか......そういう機能で。今、僕らもアンケートをとっているんですけど、「Big Advance」に入る理由としては「ビジネスマッチング機能を使いたい」という方が、やっぱり一番多くて。
藤沢:具体的に、どんな感じでどんな人が使うんですか?
近藤:まず「Big Advance」の利用ユーザーの属性でいくと……先ほど言った20名以下の規模の会社が、利用ユーザーの80パーセントくらいを占めているんです。さらに業種でいくと、一番多いのが実は建設業なんですよ。
藤沢:へぇー!
近藤:Webサービスなのに、意外ですよね。
藤沢:うん。意外。
近藤:業種ですと、建設、製造、卸小売っていう順番。
藤沢:なるほど。
近藤:例えば建設業の場合だと、けっこう人材不足とかがあるので。そういうパートナー、一緒に現場をやってくれる人を探していたりとか。
資材の仕入とかもそうですし。販売先というか、不動産会社に依頼して「何かそういう案件ないですか?」って話をしたり、といったマッチングもあったり。
あとは卸小売(業)とかですと、新しい販売先を見つけるようなところもありますし。逆にECサイトを運営している会社からすると、地域の特産品とかを探している会社があるので、そういうところに「何かいいのない?」みたいなアプローチをしたりとか。
僕らは「商談依頼件数」と呼んでいるんですけど、そういうビジネスマッチングのオファーですね。「会いたいです」というオファーが今、月4,000件くらいあるんですよ。
藤沢:けっこうありますね。
近藤:はい。やっぱり1つは、コロナ禍が大きなきっかけになっていて。コロナ禍で物理的に動けなくなったりとか、制限がかかってできなかった。
とはいえ、新しい販売先を見つけないといけないとか、既存の売上だけでは厳しくなったから新しい事業を開始したいとか。そういうニーズをきっかけに、オンラインでの商談がすごく(増えて)……。
そもそもオンラインでの商談って、今までの日本はどちらかというと「会いに来いよ」みたいな、そういう商慣習じゃないですか?
藤沢:うん、そう。
近藤:ですけど、みんなも「しょうがないよね」ってことで。そもそも「オンラインの商談」自体に慣れてきたのもあるでしょうし。
42都道府県の金融機関で導入されている「Big Advance」
近藤:あとは、今「Big Advance」って、企業数で7万社を超える企業に登録いただいているので、そのネットワーク効果というんですかね? 出会いが非常に多いということで、かなり今は使われている感じですね。
藤沢:そうですよね。マッチングということは、相手がいないといけないわけで。その相手をどうやって集めているか? というと、お客さんが、この「Big Advance」を使っている人たちがマッチング先になっているということ。
近藤:そうです。なので「Big Advance」の中の経済圏というか、その中でいろんなお客さん同士が出会っているみたいな。
藤沢:じゃあ最初にこのサービスを始めた時は、マッチング相手がいない状態だったってことですか?
近藤:そうですね。そこから、今では7万社を超えるようになったので、ある意味それもまた差別化になっている感じですね。
藤沢:じゃあ、立ち上げた頃はビジネスマッチングよりも、補助金・助成金とか、そういったニーズが強かったという感じなんですかね?
近藤:もう1つの「Big Advance」の特徴として、直接、中小企業に「Big Advance」を届けているのではなくて、金融機関とパートナーシップを組んで、金融機関の先の取引先に「Big Advance」を使ってもらっている、みたいな感じになっているんですよ。
藤沢:あぁ、なるほど。
近藤:なので「Big Advance」が1つ導入されると、そこの金融機関の取引先の方々が登録いただけるので。1社、2社というよりも、もうちょっと大きい単位でどんどん会員が集まってきていますので……。
藤沢:なるほどー。
近藤:とはいえ、やっぱり地域が限られるので、最初は「この地域しかないじゃないか」というところから始まって。今「Big Advance」を導入していただいている金融機関って、本店所在地でいくと42都道府県。
藤沢:あ、すごい。もう、ほとんどじゃないですか。
近藤:ほとんどです。あと「5」なんですけど(笑)。
藤沢:本当。あと5はどこだろう?(笑)。「遅いところはどこ?」みたいな(笑)。
近藤:支店でいくと全国にあるので、それで本当に今、全国の地域を超えたマッチングって、すごく盛んで。
藤沢:確かに。
近藤:今、マッチングのうち、金融機関の枠を超えたマッチングが75パーセントくらいを占めるので。
藤沢:たぶん、そうでしょうね。分析した時に……実は、自分たちのいる地域でマッチング先を探すと、見つかる確率は2割以下というのを聞いたことがあって。
近藤:そうなんですね。
地方のぬいぐるみ製造会社に、有名アニメ会社からオファーが
藤沢:結局、今すごく変化しているから、地域にいる人たちって、既存の取引の中の人しかいなくて。例えば、エンジンから電気になる時にマッチング先を探そうと思うと、その地域にはいないという話だから「この『Big Advance』って、すごく役に立つんだろうな」って、今すごく思います。
近藤:ありがとうございます。まさにそうで。あとは地域を超えることによって、自分たちでは気づかなかった「価値」に気づくきっかけになることが、けっこうビジネスマッチング(の効果)だなと思っていて。
例えばもう1つの事例でいくと……山形にぬいぐるみを作っている会社があって。そこは国内で、縫い上げるところまで一から全部作っていて。そこは数人の会社で、当たり前のように自分たちでぬいぐるみを作っていたんですけど、「Big Advance」でホームページを作ったんですね。今までは作っていなかったんですけど、ホームページを作ったら、本当に有名な東京の会社からホームページ上でオファーがあって。
国内でぬいぐるみを作る会社って、今では少ないんですって。みんな中国とか海外に出しちゃっているので。「日本国内で生産を完結できる」というところで、すごく有名なアニメの会社からオファーが来たんですよね。
藤沢:へぇー。
近藤:そのことで、その会社も「国内で作っている」ということを(それまでは)当たり前にやっていたのが、「そこに価値があるんだ」みたいなことに気づいた。
藤沢:確かに。
近藤:そういうケースもけっこうあったりするので。すごく良いきっかけというか、良い出会いがたくさん生まれているんじゃないかなという気がしますね。
藤沢:ホントですね。そしてそういうニーズって、金融機関にご紹介して入ってもらっていれば、金融機関がそこにまた伴走できるということですよね。
近藤:まさにおっしゃるとおりで。そこが「信頼」という意味で、すごく安心感を持ってマッチングしていただける1つの要素かなと思いますね。
士業の先生にスポットで、Web上で見積り依頼・相談が可能な「SHARES」
藤沢:こんなすばらしいサービスがあるって、知らなかったです。
近藤:ありがとうございます。
藤沢:私も零細企業をやっていたので「入ればよかった」ってすごい思う(笑)。しかも士業相談の「SHARES」ってサービスがあって。
近藤:そうですね。実は「Big Advance」を立ち上げる前に、「SHARES」っていうサービスを立ち上げていて。これもWebプラットフォームなんですけど。
これは何かというと、士業。いわゆる弁護士とか社労士とか税理士とか、そういう先生にスポットで、Web上で見積り依頼・相談ができますよというサービス。
それが今は3,000名以上の士業の先生方に登録していただいているんですね。そこには弁護士の先生とかいっぱいいらっしゃって。それと「Big Advance」が連携しているので。企業って、だいたい税理士はいるじゃないですか。
藤沢:はい。だって、決算しなきゃいけないから(笑)。
近藤:しないといけない(笑)。数字上でも、確かに9割くらいは顧問税理士がいるんですよ。ですけど、例えば顧問弁護士とか顧問社労士って、ほぼいないんですね。
藤沢:いない。だって、毎月案件が発生するわけじゃないし……。
近藤:そうなんですよ。
藤沢:あとは案件ごとに相談したい内容が違って。弁護士の先生って、得意不得意があるじゃないですか。
近藤:そうなんですよね。例えば「英語の契約書を作りたい」って言われても……。
藤沢:そう。私の場合も、顧問料を払っていた弁護士さんに英語の契約書をお見せしたら、「私、英語できないの」って言われて「えー!」ってなって(笑)。
近藤:そうなんですよ(笑)。そういうのとかもありますし、最近、スタートアップ界隈で多かったのは、複雑な優先株式の登記とか……。あれ、なかなか複雑なんですよね。
藤沢:はい、これはもう本当に得意な人しか無理……。
近藤:得意な人しかできないんですよ。地域を探してもいないとか、そういったことがやっぱりあって。スタートアップも「そのために東京に来て」みたいなのがけっこうあったりするんですけど、「SHARES」だと24時間Webでつながっていて、得意な先生が見積りを出してくれる。「お願いする時にだけ実費がかかる」という仕組みになっています。
藤沢:すごい。あとは会社の移転登記とかも、その時だけ「移転登記サービス」とか探さなきゃいけないけど、これを使えばすぐにやってくれるってことですよね。
近藤:すぐです。
藤沢:めちゃくちゃ便利!
近藤:ありがとうございます。これもけっこう使っていただいていますね。便利なので。
藤沢:だから本当に20人以下で、個人事務所チックにやっているところとか。私も個人事務所を持っているけど、すっごい便利ですね、これ。
近藤:ぜひ、使ってください(笑)。
「Big Advance」を使いこなすことで、結果としてその企業のDXが進んでいく
藤沢:月額はお高いのでしょうか?(笑)。
近藤:「Big Advance」は、さきほどおっしゃっていただいた8つの機能があって。それが「月々3,300円(税込)ですべての機能が使い放題」ということで、値段的にはかなりお得というか、格安なサービスになっていますね。
藤沢:ホント。別に20人以上の会社も、3,300円で使ってもいいんですよね?
近藤:もちろん、3,300円で。
藤沢:これ、製造業とかも販路開拓にすごくみんな苦労しているけど、良いですね。
近藤:はい、まさに。やっぱり製造業とかって、営業の方がいらっしゃらなかったりするので、これを使って販売先を見つけるとか。そこでまた金融機関さんが、伴走とかしてくれるので。
藤沢:そう考えると、7万社ってまだ少なくないですか?
近藤:そうですね。まだ、さっきお話しした対象となる約300万社のうちの7万社なので。「まだまだ届け切れてないな」というのが僕らとしては、課題として持っている感じですね。
藤沢:これは銀行がサボっているんですか?(笑)。それとも、ココペリがもっと営業をするんですか?
近藤:僕らも金融機関さんと一緒に「いかに企業を増やしていくか?」というところの取り組みをやっていて。やっぱりこういうクラウドサービスって「使ってもらってナンボ」ってところがあるので。単純に登録だけではなくて、使い方とかも含めて広げていかないといけない。
そういった意味では、20名以下の会社って、正直、ITリテラシーが高いか低いか? でいうと、まあまあ低いほうじゃないですか。バズワードでいくと、今はよく「DX」っていいます。「DXしなさい!」って言われて、みんなしたいんですけど「何やっていいかわからない」というのが、やっぱり実態なんですよね。
この「Big Advance」も、ある意味でDXの一歩なので、実際にやっていくのってすごく時間がかかりますし。やっぱり一つひとつの作業がすごく大変なので、そういうのを地道にやってきているところでいくと、僕らの力不足もまだあったりしますね。
ただ、そういう方々が「Big Advance」を使いこなすことによって、結果としてその企業のDXが進んでいくので。やっていることの意義はすごくあるかなと思っていますね。
藤沢:そうですね。「まずDXの第一歩として、これを入れましょう」と言って。ビジネスチャットで「もうちょっとやりたいんですけど」といったコミュニケーションをとって「じゃあ今度、会計をIT化しましょう」とかね。
近藤:そうですね。その“入口”にはなるんじゃないかなと思いますね。
藤沢:私は個人的には「すごく使いたい」「これ、すばらしい商品だな」っていう(笑)。
近藤:ありがとうございます。
藤沢:これだけで、私は1時間話を聞きたくなります(笑)。
近藤:(笑)。