第22回定時株主総会

古川保典氏(以下、古川):みなさま、こんにちは。代表取締役社長の古川でございます。本日はご多用のところご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。

開会に先立ちまして、一言お礼のご挨拶を申し上げます。当社は2021年4月5日に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、1年が経過しました。これもひとえに、日頃からの株主のみなさまのご支援の賜物です。役職員一同、厚くお礼申し上げます。

当株主総会では、当社定款第13条の定めにより私が議長を務めます。どうぞよろしくお願いします。

それでは、ただいまより株式会社オキサイド第22回定時株主総会を開会します。本日の議事の進め方ですが、株主さまからのご発言・ご質問などについては、報告事項の報告、決議事項の各内容説明が終わった後に、一括してお受けしたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。その上で、各議案について採決させていただきたいと思います。

なお、招集通知39ページに記載の「取引条件及び取引条件の決定方針等」の注記事項において、臨時株主総会及び定時株主総会の開催日に誤りがありました。

正しくは、本日受付にて配布している「第22回定時株主総会招集ご通知の一部訂正について」に記載のとおりです。誠に申し訳ございません。また、修正事項については、2022年5月20日に当社のWebサイトに掲載しています。

最初に、ご出席株主数及びその議決権の数をご報告します。本総会において、議決権を有する株主数は4,780名、その議決権の数は4万8,967個です。

本日ご出席の株主数は、書面またはインターネットにより議決権を行使された株主さまを含め1,302名、その議決権の数は3万4,215個です。したがって、本日のすべての議題について、審議に必要な定足数を満たしていることをご報告します。

続いて、報告及び議案の審議に先立ち、監査役による監査報告をします。中嶋常勤監査役、お願いします。

中嶋豪氏:常勤監査役の中嶋でございます。各監査役の合意によりまして、私からご報告申し上げます。当監査役会は、第22期事業年度における取締役の職務の執行全般について、監査を行ってきました。

監査結果については、招集通知43ページ及び44ページの監査役会の監査報告書謄本のとおりです。事業報告およびその付属明細書は、法令および定款に適合しており、会社の状況を正しく示しているものと認められます。

取締役の職務の執行に関する不正の行為、または法令もしくは定款に反する重要な事実は認められませんでした。内部統制システムに関する取締役会の決議内容は相当であると認めます。また、内部統制システムに関する事業報告の内容及び取締役の職務執行についても、指摘すべき事項は認められませんでした。

次に、計算書類などについては、招集通知41ページ及び42ページの会計監査人の監査報告書謄本のとおり、報告及び説明を受け、監査しました。

その結果、会計監査人である太陽有限責任監査法人の監査の方法及び結果は相当であり、指摘すべき事項はございません。また、会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制についても、指摘すべき事項は認められません。

最後に、本総会に提出されている議案及び書類に関しても法令及び定款に適合しており、指摘すべき事項は認められませんでした。以上、ご報告します。

古川:ありがとうございます。監査報告は以上となります。続いて、報告事項についてご報告します。事業報告については、ナレーション付きスライドを準備しましたので、まずはそちらをご覧ください。

(動画が流れる)

注力分野

古川:今後の展望については、私からご説明します。2023年2月期の注力分野として、半導体事業・ヘルスケア事業といった既存事業でのさらなるシェアアップ、微細加工・通信分野での新製品の発売、パワー半導体分野での研究加速、ディープテック分野のスタートアップ投資・支援の4つを掲げています。

注力分野① 既存事業(半導体)でのさらなるシェアアップ

1つ目の、既存事業のシェアアップについてご説明します。スマートフォンやデータセンターなどの社会のデジタル化を背景として、半導体需要はさらに高まると予測されています。

当社は半導体事業において、単結晶素子単体と単結晶素子を搭載した紫外レーザの販売を行っています。これらは、インテル、サムソン、TSMCといった半導体製造工場で、24時間7daysでフル稼働で使用される半導体欠陥検査装置に搭載されています。

単結晶素子のグローバルシェアは90パーセントを超えていますが、紫外レーザのシェアについてはまだまだ拡大余地があると考えています。そこで、既存顧客への販売に加え、新規ユーザーの開拓にも積極的に取り組んでいきます。

注力分野① 既存事業(ヘルスケア)でのさらなるシェアアップ

ヘルスケア事業においては、既存の顧客内での当社製品のシェアアップに取り組んでいます。PET検査装置のマーケットの成長率は約5パーセントですが、当社は過去数年間で14パーセントから29パーセントの成長を達成してきました。

これは、当社製品には先行する競合他社に対して性能優位性があるためです。新規顧客開拓も含め、引き続きシェアアップに取り組んでいきます。

注力分野② 微細加工分野での新製品販売

2つ目の微細加工と通信分野での新製品発売についてご説明します。まず微細加工ですが、当社はデンマークのNKT Photonics社と共同で、フェムト秒レーザの製品開発を行っています。

フェムト秒レーザはパルス幅が非常に短いことから、熱を発さずに微細加工ができる点が特徴です。次世代のディスプレイであるマイクロLEDの加工やリペアでの応用が期待されます。

先にご紹介した半導体事業と同様に、当社が得意とする波長変換結晶の優位性を活かし、波長が257ナノメーターと非常に短い深紫外レーザの新製品を発表しました。微細加工分野におけるレーザ事業の今後の拡大が期待されています。

注力分野② 通信分野での新製品販売

通信分野についてご説明します。インターネットの利用拡大に応じて、5Gと呼ばれる「第5世代移動通信システム」の実用化が進んでいます。

日本では2020年春から商用サービスがスタートし、次世代の通信インフラとして社会に大きな革新をもたらすと言われています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、この数年間は実用化が遅れていましたが、今後回復してくるものと思われます。

5Gの光通信分野では、アイソレータ単結晶という一方向にのみ光を通す単結晶が必要とされるため、大きなビジネスチャンスがあります。当社は、今年3月に山梨本社近くのスーパー跡地を取得しました。ここを山梨第6工場として、アイソレータ単結晶の量産体制を構築する計画です。

注力分野③ パワー半導体分野での研究加速

3つ目のパワー半導体分野での研究加速についてご説明します。先般プレスリリースしたとおり、SiC単結晶の量産技術開発が経済産業省のグリーンイノベーション基金に採択されました。

SiC単結晶のパワー半導体は私たちの生活に欠かせないものであり、送電関連や電気自動車などさまざまな分野での拡大が見込まれています。

注力分野③ パワー半導体分野での研究加速

日本には、三菱電機、富士電機、東芝などパワー半導体デバイスのマーケットにおいてシェアの高い企業が多くあります。しかし、SiC単結晶ウエハ市場を見ると、シェアの上位はアメリカ、ドイツがほぼ独占しています。

このため、経済的安全性の確保の観点から、川上の結晶ウエハを国内自給できることを目的として、国がSiC単結晶に約186億円規模のグリーンイノベーション基金を起こしました。当社は今年3月に採択されたため、今後9年間でSiC単結晶ウエハの量産化に取り組んでいきます。

注力分野③ パワー半導体分野での研究加速

SiC単結晶ウエハはすでに約630億円の市場規模となっており、先行メーカーがあります。先行メーカーの結晶製造方法が昇華法であるのに対し、後発である当社は溶液法という手法で差別化と高品質化を目指します。

溶液法は、名古屋大学の宇治原先生が長年研究されてきた技術です。AIを使ったプロセス・インフォマティクス技術を活用しながら、高品質SiC単結晶の社会実装を目指す計画です。

注力分野④ ディープテック分野のスタートアップ投資・支援

ディープテック分野におけるスタートアップ投資・支援についてご説明します。当社は国立研究所発のベンチャーということもあり、「研究成果を世の中に還元すること」が創業時からの変わらない理念です。

注力分野④ ディープテック分野のスタートアップ投資・支援

上場後、多くの大学や研究機関とお話しする機会がありました。その中で、先ほどお伝えしたとおり、SiC単結晶技術を持つ名古屋大学発ベンチャーのUJ−Crystal社へ、昨年10月に出資しました。

そして2件目として、先週開示した横浜国立大学発ベンチャーのLQUOM社への出資を決定しました。LQUOM社は、最近話題となっている量子暗号通信の中継機器を開発するベンチャーです。将来大きな市場に拡大する量子暗号通信の基幹部品の材料をオキサイドから供給し、協力して製品開発に取り組みます。

ディープテック分野のスタートアップ投資・支援

この2社に加えて、研究成果の実用化を目指すベンチャーに今後も技術支援や出資をしていきたいと考えています。最近では、多くの大学発ベンチャーが創業し、ベンチャーキャピタルからの出資も盛んです。しかし、インターネットやサービス、バイオ分野などソフト系のビジネスと、オキサイドのようなディープテックのビジネスでは事業内容や経営手法が大きく異なります。

そこで、私どもはこれまでに培った目利き力やディープテック特有の経営手法を用いて、研究成果の社会還元をサポートし、よりよい未来へ貢献したいと考えています。以上、第22期事業報告および計算書類、ならびに今後の展望についてご説明しました。

続いて、決議事項の各議案についてご説明します。まず、第1号議案である定款一部変更の件についてです。お手元の招集通知45ページをご覧ください。

定款の変更理由は、会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)の附則第1条です。2022年9月1日に但し書きにある改正規定が施行されますので、株主総会資料の電子提供制度導入に備えるため、次のとおり当社定款を変更します。

(1)変更案第14条第1項は、株主総会参考書類などの内容である情報について、電子提供措置をとる旨を定めるものです。(2)変更案第14条第2項は、書面交付請求をした株主に交付する書面に記載する事項の範囲を限定するための規定を設けるものです。

(3)株主総会参考書類などのインターネット開示とみなし提供について定めた現行定款第14条は不要となるため削除します。(4)上記の新設・削除に伴い、効力発生日などに関する附則を設けます。変更内容の詳細については、招集通知をご覧ください。

続きまして、第2号議案である取締役7名選任の件についてです。お手元の招集通知47ページをご覧ください。

本総会終結の時をもって取締役全員が任期満了となり、このうち2名は取締役を退任します。そのため、取締役7名の選任を一括してお願いしたいと思います。取締役候補者については、招集通知47ページから49ページをご覧ください。以上が決議事項のご説明となります。

この後ですが、まずはすでに提出している報告事項および決議事項について、株主のみなさまからご意見や審議に関するご質問をお受けします。その後、決議事項については採決を行いたいと思います。この進行方法に賛同いただける株主さまは拍手をお願いします。

(会場拍手)

ありがとうございます。過半数の賛同を得ましたので、この方法で進めていきます。なお、ご質問は1回につき1問としますので、ご理解くださいますようお願いします。それでは、ご発言のある株主さまは挙手をお願いします。

質疑応答:スタートアップ企業を支援するための知財戦略やノウハウの提供方法について

質問者:ディープテック分野に関するスタートアップ企業との提携についてです。冒頭のご説明にもあったとおり、御社は特許をたくさん取っていますが、スタートアップと提携するにあたってどのような知財戦略を考えていますか? また、ディープテック分野で提携するスタートアップにそのようなノウハウをどのように提供していくのでしょうか?

古川:ただいまのご質問は、私どもがこれからディープテック分野のスタートアップを支援するにあたって、どのような知財戦略を考えて支援していくかというご質問かと思います。知財戦略はベンチャーにとって非常に重要です。先ほど新しい研究開発分野をいくつか挙げましたが、私どもとしても基本的な材料特許あるいは応用特許も含めてパテントマップを作って、どのようなところをプロテクトしなくてはいけないかを考えています。

あるいは、このような技術には必ず競合メーカーや先行他社がありますので、そこに対する優位性などを注意深く見て、社内でもかなり議論し、どのような特許を取るべきか知財戦略を検討しています。また、必要に応じて、私ども独自ではなく、例えばユーザーあるいは大学の先生と共同で研究して、共同のアプリケーション特許を押さえるようなこともしています。

昨今の大学発ベンチャーは以前に比べると知財に対する理解も進んでいますし、各方面からの支援もあり、ほとんどのベンチャーが知財に関して高い意識を持っています。ただし、全体を見ると、技術に対しての特許は持っていても、競合技術が出てきたり、同じようなことを他社が打ち出してきたりした時のプロテクトの意識が弱いです。そのような状況を踏まえて、技術の観点だけではなく、ビジネスの観点からどのような知財特許を持つべきかをサポートしていきたいと考えています。

質疑応答:開発中の半導体検査装置について

質問者:今年2月の第6回国立研究開発法人イノベーション戦略会議で社長がお話しされているのをインターネットで拝聴したのですが、その中で「CD-SEM」という半導体検査装置の具体的な名前が出てきました。それに代わる装置を開発しているというコメントがあったと思うのですが、それに関して、今お話しできることがあれば教えてください。

古川:ただいまのご質問は、内閣府が企画した技術系の戦略会議の中にベンチャー企業の代表者として参加して、今後の取り組みについてお話しした時のことだと思います。収録を見返しておらず、どのようなお話をしたか正確には覚えていませんので、正確に回答できるかわかりませんがご了承ください。

これまでもお伝えしているとおり、シリコンという結晶のウエハにいろいろなプロセスを加えることで、半導体素子を作ります。この半導体素子は、みなさまのスマートフォンやパソコンなどに使われています。今では、300mmの直径の大きいシリコンウエハから作っており、半導体の性能そのものがすごくよくなっています。

性能がよくなるということは、作る時に求められる技術も上がるということです。いろいろなパターンを作るのですが、そのパターンもどんどん小さくなってきています。

小さいパターンを作る時にシリコンウエハに欠陥があったり、ゴミがあったりすると微細化することができません。そのため、シリコンウエハメーカーやインテル、サムソン、TSMCなどの半導体メーカーでは必ずシリコンウエハの欠陥検査をします。私たちのレーザーは、そのような最先端の欠陥検査で使われており、これが私たちの半導体事業のビジネスです。

他にも、半導体のいろいろなプロセスの中で測長SEMを強化する動きもあります。そのようなプロセスを、例えば、新しいレーザーの方式に置き換えようとする研究も、東京大学をはじめ各国で進んでいます。

私どもとしてもいろいろな引き合いをいただいて、共同開発に取り組んでいます。ただし、実際にそれがどのくらいのステージにあるのか、具体的なマーケットがどれくらいあるのかについては、詳細な回答は控えたいと思います。

質疑応答:売上が見込める注力分野について

質問者:各注力分野について、例えば3年後にはマーケット自体も大きくなっていくと思うのですが、御社として売上を取っていけそうな分野はどこでしょうか?

古川:ただいまのご質問は、例えば3年後には、注力分野のうちどのテーマの売上が大きくなり、企業の成長価値につながるのかというご質問だと思います。私どもは研究開発活動にかなり積極的に取り組んでおり、今パイプラインが約15テーマあります。

私どもとしてはいずれも非常に将来性があると思っていますし、企業価値を上げるための重要なテーマだと考えています。そのため、それぞれのテーマにかなりの研究者あるいは開発者を投入して取り組んでいます。

その中で最もマーケットが大きいのは、先日発表したSiCの単結晶だと思います。今、パワー半導体は非常に注目されています。

例えば、発電所で作った電気は送電線によって各家庭や工場に送られ、電気自動車や日々の電力に使われます。実は、最後にユーザーが電気を使う時には、発電時の電力の半分くらいが失われています。このロスを少なくすることが非常に大切で、そこで使われるのがパワー半導体です。

また、ロシアとウクライナの危機によって原油などの問題が非常に大きくなっていますし、環境に優しいカーボンニュートラルを目指す時にも、大切な電力をいかに有効活用するかが非常に重要です。そこで必要となるのがパワー半導体です。

このパワー半導体には、今はSiCではなくシリコンの単結晶が主に使われています。電気自動車や鉄道、あるいはいろいろなものが小型化したり、電力のロスを少なくするために、SiCの需要は今後増えていくと考えています。

先ほどお伝えしたとおり、日本のデバイスメーカーはSiCのシェアをけっこう持っているのですが、結晶メーカーは残念ながら0パーセントに近い状態です。以前は、日本でも大手企業等でSiCの単結晶に取り組んでいましたが続きませんでした。

そのため、極端な話ですが、アメリカのメーカーが自分たちで作ったものを自分たちで使い、日本のデバイスメーカーは品質のよくないものをなんとか工夫して使っている状況です。これは日本にとって非常に大きな問題ですので、私ども自身でSiCの単結晶を国内生産しようと決めました。

市場規模としては、2022年で約630億円です。2年後には約1,035億円、4年後には1,380億円となる見込みです。この2年間で急速な伸びを示し、さらに大きくなっていくと言われています。

私たちは最後発のメーカーではあるのですが、この中で自分たちの技術の優位性を活かしていきます。1,000億円の10パーセントだとしても100億円規模になりますので、今の私どもの事業規模から比べるとかなり大きなインパクトになると思っています。そのため、このテーマの開発に積極的に取り組んでビジネスにつなげることが、企業価値を上げるために非常に重要だと考えています。

質問者:市場規模100億円というのは世界での規模と理解してよいですか?

古川:おっしゃるとおりです。私どもの売上の約75パーセントは海外での売上です。海外の販売は普通に行っているので、世界市場への販売も十分に対応できるのではないかと考えています。

質疑応答:貿易摩擦の影響について

質問者:技術的に大変素晴らしい内容で感動しました。私自身、はるか昔にベローズ弁やダイヤフラム弁などを扱うバルブ関係の会社にいた時があり、その頃を思い出しながらうかがっていましたが、当時は「半導体戦争」があったと思います。

「どうして日本の半導体の会社がこんなに叩かれるんだろう?」と思うくらいアメリカから叩かれたり、優秀な技術者たちがお隣の国に高い値段で行ってしまったりということがありました。そのため、また同じようなことが起きるのではと非常に心配です。技術一辺倒ではないところを教えていただけますか?

古川:半導体に関しては以前、日米貿易摩擦で日本が叩かれたことがあって、似たようなことが起きるのではないかというご心配かと思います。

回答が難しいのですが、今の日本やアメリカ、中国の状況を見ると、似たようなことはおそらく起きないと思います。残念ながら日本は、アメリカが目の敵にするほどの技術を持たなくなってしまったのです。

現在よく知られている半導体のメーカーとして、インテルやサムスン電子、台湾積体電路製造(TSMC)などがありますが、以前は東芝や日立製作所、日本電気(NEC)が持っていたところがほとんど海外に行ってしまっています。日本国内にもルネサスエレクトロニクスなど、メーカーはいくつかありますが、アメリカに必ずしも叩かれるような状況ではありません。

むしろ、アメリカが心配しているのは中国です。テレビでもいろいろな報道がありますが、中国とアメリカの貿易摩擦はけっこう厳しくなっています。以前日本に対して起きたのと同じように、例えば中国からの製品は買わない、アメリカの技術を出さないなどということはよくあります。

昨今、中国の半導体市場は非常に伸びています。そこに向けて、最近は東京エレクトロンやディスコなど、日本のいろいろな半導体製造装置メーカーが装置を売っておりますが、今のところはそのような装置をすべての中国企業に販売しているわけではありません。

先日、アメリカのバイデン大統領が来日した時に、それに関する話が成されるのではという報道がありました。その結果についてはまだニュースでは流れていませんが、アメリカだけではなく、オランダや日本などの国々も協力して、中国に先端的な装置や重要な技術を出さないように要求するだろうという話もあります。

しかし、それも急激に「明日から止めます」ということではなく、徐々にそのようになるかたちです。いろいろな技術の流出は非常に大きな問題ですから、会社レベルではなく、国家レベルでいろいろ検討していますので、以前のように日本から技術が流出することはおそらくないと思っています。

当社の結晶の分野に関しては、特に酸化物の単結晶のところで、現在いろいろな優秀な方を集約しています。優秀な技術者の方々が海外に流出するのを防ぐために、そのような優秀な人たちを採用する取り組みは、当社でも、先端技術を扱う他の日本企業でも行っているため、あまりそのような心配はないと思います。

地政学上の問題は非常に難しく、さまざまな要因がありますので、私どもとしては注意を払って経営を進めていきたいと考えています。

質疑応答:パワー半導体について

質問者:SiCに関しておうかがいします。パワー半導体の競合の材料として、ガリウムオキサイドやガリウムナイトライドなどがあると思うのですが、そちらとの棲み分け、または優位性について教えてください。

古川:パワー半導体として、シリコンやSiC以外にガリウムナイトライド、ガリウムオキサイドというものがあり、そちらとの使い分けや優位性についてのご質問とお受けしました。

すべてシリコンがよい、すべてSiCがよいというわけではなく、いろいろな用途に応じて使い分けているのが現状です。CTOの石橋から詳しくご回答します。

石橋浩之氏:取締役の石橋です。パワー半導体の用途としてはいろいろとあり、特にSiCは、高い電圧、例えば送電線は6,600ボルト、電車の場合は数千から数万ボルトでの使用になりますが、SiCはこのあたりを非常に得意としています。現在はシリコンも使われていますが、徐々にSiCになっていくと考えられています。

一方、今後市場が非常に伸びると見られている電気自動車については、現在は400ボルトくらいで駆動しており、このあたりはむしろガリウムナイトライドの得意分野です。しかし、最近は電気自動車が800ボルトで駆動するような技術もあり、その場合はSiCが得意なところもあります。

さらに身近なところでは、パソコン等にも100ボルトの交流を直流に変えて電気を供給する大きなアダプターが必ず使われていますが、現在はほとんどシリコンの半導体が使用されています。それくらいの電圧になってくると、シリコンをガリウムナイトライドに変えると非常に効率がよくなって、例えばアダプターが熱くなることがあると思いますが、そのあたりのロスがなく供給できます。

ご認識のとおり、半導体にはいくつか種類がありますが、それぞれ得意なすみ分けをして使われるのではないかと考えています。

古川:回答にあったように、いろいろな電気のパワーで熱くなることがありますが、あれは電気のロスがあって熱くなっているわけです。このようなところで、シリコンからガリウムナイトライドに変えたり、SiCを使ったりすると改善できますので、使うときの電圧やサイズによって使い分けることで、すべてのパワー半導体材料にチャンスがあると考えています。

あとは、どれくらいの価格でできるのか、安定性はどうかというところで決まるものと思っています。現在はSiCがメインですが、昨年6月に発表したように、ガリウムナイトライドの基板の結晶についても開発を進めています。

質疑応答:量子関係の技術について

質問者:量子コンピューティングのお話をうかがいたいのですが、現在すでに、PPLN(Periodically poled lithium niobate)の受容体などがかなり出ていて、台湾など海外でも扱われています。そこで、御社のデバイスにおける特徴や、何を目指しているのかを教えていただけますか?

古川:先週私どもが発表したのは、量子コンピューティングではなく、量子暗号通信の関連ですが、そちらに使える材料としてはどのような製品があるのかというご質問かと思います。

量子コンピューティングも今はいろいろなところで非常に盛んで、そこでも、質問者の方がお話しされたPPLNや、私どもが作っているLNという結晶を使ったものが開発されています。それ自体は30年くらい研究開発されているもので、アメリカのスタンフォード大学などを中心に研究されてきましたが、実用化は日本が世界でも一番進んでおり、最先端を行っていると思います。

量子暗号通信において当社がどのようなものを扱うか、あるいは量子暗号通信がどのようなものかについては、レーザ関係技術のCTOの藤浦から詳しくご説明します。

藤浦和夫氏:取締役の藤浦です。量子関係の技術は、ご指摘のとおり非常に伸びている分野で、当社としても単結晶や波長変換の技術を用いてその分野に入っていきたいと思っています。

特に、量子コンピューティングでご説明すると、PPLNという波長変換の素子を使ったネットワークを使う量子計算がありますが、当社の技術は、まず、効率のよいPPLNという波長変換素子に関する技術を持っています。

さらに、最近では導波路化というものの研究開発を一生懸命行っているのですが、世に出ているような通常のリッジ型という山型の導波路に加えて、基板の中に真円のように導波路を書き込む技術を開発しています。通常のものは必ずファイバーとつなげて使うのですが、その導波路によって周辺の結合が非常によくなり、効率が上がってロスが下がります。そのような開発を、量子コンピューティングの分野で行っています。

また、量子暗号通信のお話がありましたが、すでにご案内したLQUOMとの業務資本提携の中で、彼らの持つ技術をいかに実用に持っていくかについて議論しています。1つ目に、量子暗号通信に使うフォトン、光をコントロールしながら出す、つまり光源の中に波長変換を使う必要があり、効率のよい波長変換の素子を当社から提供することになっています。

2つ目に、量子通信では、光をあまり長距離伝送することができないのが、今の技術における非常に大きな問題と言われています。要するに、伝送を中継する技術が必要になり、具体的には、中継器の中に一度量子情報を記憶する量子メモリという技術が必要になります。

量子メモリに当社が作っている光学単結晶を使うということで、そこを提供して開発を加速していこうと考えています。

質問者:効率のよい導波路を作る、基盤に真円を書くという技術について、これは先ほど古川社長からもお話があったようにフェムト秒加工で作るのだと思っていますが、レーザライティングによるウェーブガイドを構築するようなUVレーザを含めて、検討が進んでいる最中だと思います。現時点では世界中でそのようなウェーブガイドの効率改善が成されていると思いますし、光源を開発されている中でデバイスを作るという、ある意味で2つのキー技術になると思います。

現在のリッジ導波路型と言いますか、台座で加工するようなノウハウは効率がよいですが、生産性にいろいろな問題があり、狙ったところに書けないという本質的な問題もあります。レーザライティングではそれが三次元的に書けるということで、非常に柔軟性が高いため、ぜひ新しい技術獲得を進めていただければと願っています。

古川:導波路を作る新しい技術は、フェムト秒という非常にパルス幅の短いレーザを使うと、比較的自由自在に目的とするデバイスができる技術ですが、私どもはかなり先端を走っています。いろいろな大学や研究所、あるいは企業も出していますが、一部実用化も進んでおり、実際に使えるようなレベルにまでなってきています。

将来性を考えても非常におもしろいところですので、ご意見いただきましたように、この技術をしっかりと実用化につなげていきたいと考えています。

質疑応答:工場の立地について

質問者:工場の立地についてお聞きします。私は北杜市の出身で、今も時々行くのですが、工場のある武川町は、昭和34年の時の災害で、非常に大きな被害があったところです。

工場のあるところは大武川と釜無川の接点になる場所ですし、国土交通省なども温暖化の問題で、この川については非常に神経を使っているのですが、それに対してこの工場も、山梨第6工場もあの場所に作られるのでしょうか?

その場合、大洪水などが起こった際は被害が甚大な場所ではないかと思うのですが、それに対して何らかの対策を立てているのか教えてください。

古川:本社のある山梨県北杜市は、以前台風で非常に大きな水害が起きた場所です。これから会社の事業を拡張していく上で、対策しているのかというご質問にお答えします。

今から17年前に移ってきた本社の近くには、ちょうど釜無川があるのですが、以前その川が洪水になりそうだった時に、そこにある堤防をわざと決壊させた経緯があります。その川の下流のほうに韮崎市や甲府市があるのですが、そちらにはたくさん人が住んでいます。

武川町のあたりは、北巨摩郡内武川村という住所で、当時はあまり人が住んでいなかったため、堤防をわざと切って下流の地域の住民を水害から助けたと聞いています。

その後の数十年間にいろいろな治水工事が行われてきました。ここ数年間は、日本全国で50年に1度くらいの規模の水害が起こっています。しかし、治水工事のおかげで、そのような問題はかなり少なくなってきており、会社の近くまで水が来ることは最近はほとんどありません。

第4工場、第5工場を会社の近くの土地に建設する予定ですが、そのあたりの安全性について北杜市や県庁、国土交通省などに問い合わせて、どのくらいのレベルで対策したらよいかを確認しています。第4工場、第5工場は、今の本社がある場所よりも3メートルから5メートルくらい高いところで、具体的には堤防よりも高い場所に盛土をして建設する予定で、専門家の意見をうかがう限りでは「大丈夫です」ということです。

採決

それでは、報告事項、および決議事項に関しまして、十分審議を尽くしましたので、これを持って全ての審議を終了し、議案の採決に移らせていただきたいと存じますが、ご賛同いただけます株主さまは、拍手をお願いいたします。

(会場拍手)

古川:ありがとうございます。過半数のご賛同をいただきましたので、各議案の採決に移らせていただきます。

まず、第1号議案定款一部変更の件について、原案にご賛成いただけます株主さまは拍手をお願いいたします。

(会場拍手)

古川:ありがとうございます。書面、またはインターネットにより議決権を行使された株主さまを含め、3分の2以上のご賛成を得ましたので、本議案は原案通り承認、可決されました。

続きまして、第2号議案、取締役7名選任の件について、原案にご賛成いただけます株主さまは拍手をお願いいたします。

(会場拍手)

古川:ありがとうございます。書面、またはインターネットにより議決権を行使された株主さまを含め、3分の2以上のご賛成を得ましたので、本議案は原案通り承認、可決されました。

以上をもちまして、本日の目的事項はすべて終了しました。これにて、株式会社オキサイドの第22回定時株主総会を閉会とします。本日はご多用中のところご出席いただき、誠にありがとうございました。