会社概要
後藤伸応氏(以下、後藤):あらためまして、株式会社ニーズウェルの技術部門を担当している後藤です。よろしくお願いします。本日は音声だけですが、財務経理部担当兼CC室長の新井も参加しています。
新井千波氏(以下、新井):財務経理部門とIRを担当している新井です。よろしくお願いいたします。
後藤:最初に、会社の概要についてご説明します。株式会社ニーズウェルは現在、ホテルニューオータニがある紀尾井町のガーデンコート13階に拠点を構えています。新宿と長崎にも事務所があります。代表取締役社長は船津浩三、設立は1986年です。東証プライム上場企業で、決算期が9月であるため現在は第36期の下期に当たります。
当社は、システム開発を行っているシステムインテグレータで、業務系のシステム開発だけではなく、最近はソリューションにも非常に力を入れています。
新井から2022年9月期の第2四半期決算概況と今期の業績予想をご説明したあと、私から事業内容をご説明します。
1.1) 決算ハイライト
新井:決算ハイライトについてです。当社は第2四半期に売上高の2桁成長を達成しています。前年同期比15.4パーセント増の32億5,300万円になりました。経常利益、当期純利益はそれぞれ前年同期比で約24パーセント、約25パーセントの成長を達成しています。
経常利益率11.5パーセントについても、当社の業績の目標値は経常利益率10パーセント以上と置いていますので、よい数字を出せたと考えています。
1.2) 業績進捗率
新井:業績進捗率についてですが、当社は今期に入り、業績予想の修正を2回行っています。1回目は12月、2回目は5月9日に修正しました。
1回目については、やや慎重に修正していましたが、第2四半期を締めるところでかなり見通しが立ってきたところで、「今期はこのくらい行けるだろう」ということで、67億円の売上高に上方修正しました。
進捗率は、売上高が48パーセント、経常利益が53パーセントになっています。売上高は50パーセントを少し下回っていますが、業務系システム開発やソリューションの部門で受注の引き合いなどがかなり好調ですので、67億円は達成できると考えています。
当社は、業務系システム開発、基盤構築、コネクティッド開発、ソリューション・商品等売上の4つのサービスラインを展開しています。業務系システム開発が当社の主力で、売上の70パーセントから80パーセントを稼いでいます。
特に金融に強みを持っているため、業務系システム開発の半分は金融向けで、設立当初から保険業界とのお取引があります。保険関係は現在非常に投資需要の高い業界ですので、そういった追い風も受けており、大型の案件なども獲得しています。また、新たに省庁向けの案件を獲得しているため、期待できると考えています。
ソリューションについて、当社は一般企業のDXをアシストするようなソリューション製品を多く展開しており、経費管理クラウドの製品などを扱っています。また、単に導入するだけではなく、AIやRPAの機能を付加して展開しているため、そのあたりが他社との差別化や強みになっているのではないかと考えています。
1.3) 経常利益(累計)増減要因分析
新井:経常利益の増減要因分析についてご説明します。2021年9月期の第2四半期では、経常利益が約3億円でしたが、今期の第2四半期では前年同期比24.3パーセント増の3億7,400万円となりました。
一番大きな要因は、受注の増加です。売上総利益が5,400万円と大幅に増加しています。受注が増え、高付加価値の案件を獲得できたのですが、売上総利益率は、昨年の第2四半期よりも少し下がっています。
私どもはソフトウェアの開発を行っているため、開発のための技術者が確保できなければ、なかなか受注も受けられないといった状況になります。増えた分の受注を受けるために多くのパートナーにお手伝いいただきましたので、売上総利益率に関しては下がってしまいましたが、額としては大きく増えました。
1.4) 損益計算書(累計)
新井:損益計算書です。こちらは経常利益率が11.5パーセントであることにご注目ください。昨年は10.7パーセントで、今年は0.8ポイント増加し11.5パーセントになりました。今後もこのように10パーセント以上を目指していきたいと考えています。
売上高の内訳については、業務系システム開発で75.8パーセント、ソリューションが11パーセントです。私どもは2017年からソリューションを手がけはじめ、売上比を増やしてきました。収益率の面でも高めの分野になってくるため、15パーセント程度までは引き上げていきたいと思っています。
1.5) 貸借対照表
新井:貸借対照表です。こちらで注目いただきたい点として、自己資本比率が78.3パーセントと、非常に高い水準で安定していると言えます。
5月19日で完了しましたが、今年の2月から5月まで自己株式を取得していた関係で、昨年の9月末と比べると3月末の段階では自己資本比率が若干下がっているものの、引き続き高水準で安定しています。
さらに、当社の貸借対照表で特徴的なところとしては、借入金がありません。また、現金および預金が23億円と、非常にキャッシュリッチな会社と言えます。
現金をそのまま置いておくと「投資などは考えないのか?」「さらによい会社になっていくために、もっとそのお金を活用しないのか?」とお?りを受けてしまうかと思いますが、当社はここ数年、M&Aや資本業務提携といった他社とのアライアンスに力を入れています。
残念ながら、まだM&Aの成約には至っていませんが、昨今のM&Aは非常にスピーディで、決まるときにはすぐに決まるため、そのようなところにも機動的に対応できるようにしたいと思います。また、M&A以外にも、人材が非常に重要な業態ですので、優秀な人材の獲得や教育、自社で開発する研究開発費等に資金を使いたいと考えています。
2.1) 2022年9月期 業績予想
新井:業績予想についてご説明します。2022年の9月期業績予想は2期連続増収、11期連続増収の予想を立てています。
資本業務提携など数年前から続けてきたものの成果が出てきており、資本業務提携や業務提携をしている会社さまに関連した売上高、受注が非常に増えてきています。そのようなこともあって、業績の上方修正を実施しています。
修正した予想については、昨年の売上が57億5,200万円で、今期は前期比16.5パーセント増として67億円の予想を立てています。何が増えるのかと言いますと、(増加率が)一番大きいのがソリューションで、123.8パーセント増を見込んでいます。また、主力の業務系システム開発も116.5パーセント増を考えています。
利益についても、経常利益は前期比20パーセント増を目指しており、目標としている10パーセントは確保したいと考えています。
2.2) 配当と株主還元
新井:配当と株主還元です。今期の2022年9月期は、1株あたりの配当金を20円と予定しています。昨年の普通配当は18円であったため、普通配当のベースとしては2円の増配で、4期連続普通配当の増配となります。
ただ、昨年は当社が設立35周年という記念の期でしたので、記念配当で5円プラスし、合計で1株当たり23円の還元を行っていました。トータルではその分がなくなり、今期は20円の還元です。引き続き、安定したかたちで配当を還元していきたいと考えています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):株主還元について質問です。安定した配当を継続するということですが、配当性向のイメージは掲げられていますか? また、自社株買いをされる際に、バランスを取る会社もありますが、御社は自社株買いをするときは配当性向と別のものと考えていますか?
新井:当社は2017年に上場以来、配当性向30パーセント以上を目安としてきました。当初は32パーセントくらいで推移していましたが、ここ数年は40パーセント前後で、少し高めに推移していると思っています。今期の普通配当は20円ですが、今後もこれを下回ることがないように継続していきたいと考えています。
また、自社株買いについては、2月に自社株買いを決議しており、5月19日に完了したばかりです。自社株買いが終わったばかりではありますが、今後も配当とは別に、先ほどお話ししたM&Aや資本業務提携で実需的なものも考えながら、必要に応じて検討していきたいと考えています。
3.1)経営理念・経営スローガン
後藤:私から、事業の成長戦略についてご説明します。まず当社の経営理念・経営スローガンをご紹介します。
経営理念は「広く経済社会に貢献し続ける」で、創業者の佐藤が定めた経営理念を継承し、事業を進めています。そして、経営スローガンとして「Try & Innovation」を掲げています。ICTの世界は技術進化が早いため、「どんどんトライして、挑戦を恐れず、イノベーションを起こしていこう」と、全社で取り組んでいます。
3.2) 成長の軌跡
後藤:当社の成長の軌跡についてご説明します。1986年10月に経営コンサルティングの会社として創業しました。1992年頃に業務系システム開発を始め、現在に至るまでシステム開発事業を継続しています。
スライドのグラフの青いチャートが従業員数で、棒グラフが売上高です。順調に伸びていき、1度リーマンショックで停滞しましたが、今はさらに人数、売上が増えています。スライドには社員が552名とありますが、現在は約580名まで増えています。
3.3) 中期基本方針
後藤:中期基本方針についてです。「派遣型ビジネスからの脱却、そして真のシステムインテグレータへ」としており、これは外部向けもそうですが、社員に徹底しているメッセージです。
この業界をご存じの方でしたらよくおわかりのとおり「人出し」であり「派遣、多重請負」と、よく問題にされる部分です。当社も、先ほどのグラフで社員数を増やしていった時には、まさにそのようなビジネスモデルで事業基盤を築いてきました。
そうして築いた事業基盤は大切にしつつも、「真のシステムインテグレータとは何か」ということで、ただお客さま先で言われたとおりに作るだけでなく、きちんとお客さまに価値を提供する部分に取り組んでいます。先ほどからご説明しているソリューション・ビジネスもそのための位置づけで、付加価値を上げていこうとしています。お客さま先で業務を行っている社員も、何か課題が発生した時には「派遣型ビジネスからの脱却とは」という意識でお客さまへのご提案を考える行動が、だんだん根付いてきていると感じています。
3.4) 事業領域
後藤:事業領域です。先ほどからお話ししているとおり、当社は金融機関向けの業務系システム開発が一番歴史が長く、強みです。業務系システム開発の中でも、金融系が売上の50パーセントを占めています。
またこれまでに、いろいろな業種業態に事業領域を広げていきました。技術的にもさまざまな切り口で事業を拡大しており、スライドのように、幅広い領域でサービスを展開しています。
3.5) 3つの強み
後藤:強みは3つあります。1つ目は、金融系システムの開発力です。特に生命保険会社や損害保険会社の業務知識を保有していることで、上流工程から対応できることが、強みとなっています。
2つ目は、エンドユーザーの取引力です。長年のお付き合いで、生命保険会社、ホテルニューオータニのような大手ホテル、通信キャリアなど、エンドユーザーとの直接取引が非常に増えており、最近では常に50パーセント以上の売上構成比になっています。
3つ目は、ソリューション提供力です。5G関連、AI、業務効率化の関連でRPAなどの引き合いが多いですが、この分野のソリューションも当社は強みとしており、お客さまの目的に合わせて提供しています。
坂本:直接取引に近い理由について、少しおうかがいします。もちろん御社としては派遣型から脱却するためにずっと取り組みを進めてきたと思うのですが、言葉にするだけではなかなか難しいと思います。
後藤:はい、おっしゃるとおりです。
坂本:例えば、規模を考えてアプローチするなど、いろいろな進め方があると思いますが、どのようなことをされているのか、そのあたりを教えていただけたらと思います。
後藤:まず長年開発の案件に携わることでお客さまからの信頼を積み上げていくかたちで、数は少ないものの、エンドユーザーさまと太いパイプで取引してきたというのがあります。
ただし大規模開発案件では、どうしても大手のメーカーやシステムインテグレータが案件を取ります。そこで当社では、ソリューション・ビジネスを拡大してきたことによって、エンドユーザーさまと直接取引できる機会を少しずつ増やしてきており、だいぶ軌道に乗ってきています。
当社は先ほどのご説明のとおり、幅広くサービス提供をしていますので、一度取引が始まると「ニーズウェルさんはこれもあれもできるのですね、相談してもいいですか」といった話になり、お取引を広げることができるようになってきました。これが、エンドユーザー比率を上げられている理由です。
坂本:金融系も50パーセントというお話でした。僕も生命保険会社でシステムをいろいろ担当していたのですが、金利はけっこう面倒くさいところがあります。そのあたりを理解してくれている人が来ないと、「いや、言っていることが違います」となりますが、そのあたりのスペシャリストもいらっしゃるのですか?
後藤:おっしゃるとおりです。お客さまも業務を一から教えるわけにはいきませんので、そこもわかっていて依頼できるという点が、やはり当社の強みになっています。
坂本:ありがとうございます。もちろん、直接取引のほうが利益率が高めでしょうか?
後藤:そのとおりです。
3.6) 中期経営計画 ①業績目標
後藤:中期経営計画です。業績目標として、来年の2023年9月期には売上高100億円、経常利益10億円を掲げています。売上高100億円の下部に記載している棒グラフですが、水色が既存のビジネス拡大で、濃い青色のところがM&Aなどです。どのような施策なのかを、この次にご説明します。
3.6) 中期経営計画 ②売上拡大
後藤:売上拡大の戦略として、スライドの一番下に「M&A、資本業務提携」と記載しています。これで23億円を考えています。これは中期経営計画を立てた2020年度からの積み上げです。
先ほど新井からもお話ししたように、M&Aについては資金も準備し、現在も案件を探しています。しかし、成果を焦って当社とのシナジーが見込めないところで無理をするわけにもいきませんので、M&Aがうまくいかなかった場合に備えて、資本業務提携にも力を入れています。
また、物流ビジネス、コネクティッド・ビジネス、ソリューション・ビジネスなど、それぞれ今後力を入れる領域での売上を拡大し、100億円を目指しています。
坂本:この中計では、M&Aと資本業務提携の2つが1つに括られていますが、M&Aは確かに水物の部分がおそらくあったり、案件が高すぎてやめてしまったりなど、いろいろとあると思います。この100億円はもう必達でしょうか? それとも、もし案件がなければ仕方ないとお考えでしょうか?
後藤:もちろん我々の気持ちとしては、中計は必達です。ただ、やはり先ほどお話ししたとおり、十分なシナジーが得られない会社と無理に取り組んでも逆に企業価値を棄損してしまう面もありますので、M&Aに関してはきちんと慎重に取り組んでいく方針です。
その結果、目標の23億円が達成できない場合に関しては、資本業務提携によって既存のビジネスの領域の売上をさらに拡大します。また、ソリューション・ビジネスもさらに拡大するといった、第2、第3のプランも組み合わせて目標を達成していこうと考えて取り組んでいます。
3.7) 重点施策
後藤:中期経営計画を進めていくための重点施策として、当社では7項目に力を入れています。ポイントをお話しします。
3.7) 重点施策 ①企業価値向上の推進 i
後藤:1つ目は、企業価値向上の推進です。スライドの「業績」の項目に記載のとおり、目標数値を掲げて取り組んでいます。先ほどお話ししたとおり、売上高100億円、経常利益率10パーセントの目標を掲げて取り組んでいます。「流通株式時価総額100億円」も掲げており、後ほど説明します。
また、投資家の方に広く我々を認知していただきたいと考え、「IR・PR」には非常に力を入れて取り組んでいます。本日、参加している新井もCC(コーポレート・コミュニケーション)室、IR担当として、力を入れて進めています。
スライド右上の「資本政策」も進めており、「サステナビリティ」では、ESG、SDGs、コーポレートガバナンスの点でも、企業価値を向上し永続的企業にするために取り組んでいます。
3.7) 重点施策 ①企業価値向上の推進 ii
後藤:当社はプライム市場を選択していますが、スライドに記載のとおり、基準を満たしていないのが「流通株式時価総額」です。
本日ご説明している施策も適合計画書の内容に沿って、企業価値を向上し、基準を満たしていこうとして進めている状況です。
3.7) 重点施策 ①企業価値向上の推進 iii
後藤:自己株式の取得も、先ほどお話しした資本政策の1つです。新井からもお話ししたように、2億円を上限として5月19日に完了し、5月20日にプレスリリースを出したところです。株価対策ももちろんありますが、今後の資本業務提携などの機動的な対策などに活用していきます。
3.7) 重点施策 ①企業価値向上の推進 iv
後藤:企業価値向上の1つとして、協業関係の構築があります。資本業務提携やパートナーの締結や協業など、力を入れて取り組んでいます。
現在までに、スライドに記載のような協業先、資本業務提携先の企業とのシナジーにより、既存ビジネスの売上規模の拡大や、これまで参入していなかった領域の受注につながるなど、着実に効果が出ています。
3.7) 重点施策 ②物流ビジネスの拡大
後藤:重点施策の2つ目は、物流ビジネスの拡大です。倉庫管理システムを自社開発しました。WMSは倉庫管理システムの略称で、「Smart WMS」と名付けました。
新型コロナウイルスの拡大以降、物流の課題はさらにクローズアップされていますので、お客さまへの提案を進めています。物流のコンサルを行う物流革命、ファクトリーオートメーションなどのロボットを作るオフィスエフエイ・コム、「Smart WMS」を提供する当社の3社協業で、お客さまに提案しています。引き合いも増えてきており、案件も出てきている状況です。
3.7) 重点施策 ③AIビジネスの拡大
後藤:重点施策の3つ目は、AIビジネスです。AI活用は活況ですが、当社は「Work AI」というサービスを掲げています。業務を解決するためのAIアプリケーション開発が、我々の得意分野です。「Speak Analyzer」や「Es Prophetter」は、実際にお客さまの業務課題を個別にかたちにしたソリューションであり、引き合いも非常に増えてきています。
3.7) 重点施策 ④ニアショア開発の拡大
後藤:重点施策の4つ目は、ニアショア開発の拡大です。当社は長崎開発センターを開設しており、東京で受注した開発案件を長崎で開発する取り組みを進めています。長崎県の方を新卒採用して、着実に社員も増えています。地元で働きたい社員のニーズにも応え、開発体制を拡大しています。
コロナ禍以前から、特に首都圏はエンジニアの奪い合いで、不足している状況が続いています。テレワーク活用が広がって若干融通が利くようにはなってきましたが、やはりまだ地域性による偏りがあります。
当社はコロナ禍の前から長崎開発センターを準備していましたので、新型コロナウイルスの影響も少なく、社員採用も順調に伸びており、引き続き強化していこうと考えています。
3.7) 重点施策 ⑤事業基盤の確立
後藤:重点施策の5つ目は、事業基盤の確立です。業務系システム開発をより強固にしていくことに加え、サーバーやネットワークやクラウドといったIT基盤構築、コネクティッド開発にも力を入れています。また、次にお話しするソリューションは、非常に付加価値の高い分野と考えています。
3.7) 重点施策 ⑥ソリューションビジネスの拡大
後藤:重点施策の6つ目は、ソリューション・ビジネスの拡大です。先ほどお話ししたとおり、高付加価値により利益率も相対的によくなってきています。
経費精算のソリューションや、RPAといった単体の製品に加えて、当社は「トータルでお客さまの課題を解決できるよう、自社ソリューション「ITリエンジニアリングサービス」を展開しています。
実際に当社の社内業務について、電子化やペーパーレス化などで業務効率化を行ったノウハウをソリューションとし、実績の裏打ちを元にお客さまに提案を進めています。
3.7) 重点施策 ⑦エンドユーザー取引の拡大
後藤:重点施策の7つ目は、エンドユーザー取引の拡大です。既存ユーザーの維持拡大、新規ユーザー開拓を進めています。ソリューション・ビジネスも活用し、エンドユーザー比率を拡大していきます。
坂本:「既存ユーザーの維持拡大」の項目に「担当分野以外の開拓」との記載がありますが、成約に結びついた事例などがあれば教えてください。
後藤:最近では大手の生命保険会社さまの案件で、これまでは保険会社の営業職員向けのシステム開発に長年携わっていますが、開発実績が蓄積されてきたこと、資本業務提携などで当社が扱うソリューションの範囲が広がってきたことをお客さまに日々お伝えしていました。
そのような中でお客さまも新たにDXに取り組むことになり、新たにチームを作る際に「協力してください」とお声がかかり、これまでの担当分野以外の新規部署との取引が始まりました。
このような事例が、当社の中で多くなってきており、例えば他メーカーさまとの取引でも「金融だけでなくITインフラもできるのですか? では、お願いしたい」と取引が始まるなどの案件が増えています。ソリューションと既存のシステム開発の相乗効果もあると考えています。
坂本:そのため、少しずつ取引が増えているということですね。
後藤:はい、そうです。
3.8) ESG・SDGs ①事業と直結する取組み
後藤:最後に、SDGsの取り組みについてご紹介します。事業に直結する取組みがまず重要だと考えています。サステナブル経営として、先ほどご説明した長崎開発センターを拡大することで、ニアショアを活用した地方での雇用創出や、東京以外にも産業基盤を作っていくことなどに貢献していきます。
また、日本は特にデジタル化が遅れているとよく言われていますので、DXをアシストするソリューションに力を入れ、社会全体のデジタル化に貢献していきます。
パートナーシップの推進については、先ほどお伝えした資本業務提携や各社との提携・協業を推進し、ともに協力しながら進めていくことに力を入れています。それが永続的な社会の発展につながると考えています。
3.8) ESG・SDGs ②制度や支援活動から支える取組み
後藤:また制度や支援活動について、社内の人材育成に力を入れており、女性社員の比率向上も進めています。この業界は、もともと男女差は少ないですが、当社も女性の管理職が増えつつあります。また、今後社会に出る学生向けのAIプログラミング教育なども始めています。
地方への貢献ということで、長崎に開発センターを作りましたので、長崎県へふるさと納税を行っています。また、V・ファーレン長崎のスポンサーになっており、地域の活性化に貢献しようと取り組んでいます。
ご説明は以上となります。
質疑応答:零壱製作社の株式取得で重視したポイントについて
坂本:事前にいただいた質問として、「零壱製作社の株式取得の際に重視したポイントは何でしょうか? 重視した順位なども含めて教えてください」とのことです。
後藤:スライド右上に記載していますが、零壱製作社は、MVNO、格安SIMの事業を行っている会社です。
坂本:システム開発ではなく、システムを売っている会社なのですか?
後藤:システム開発も行っています。ゼネコン向け、建設建機向けの受託システム開発も行っており、その中でMVNOのSIMを活用しGPS連携のシステムを作るなどがあります。零壱製作社のMVNO事業と、当社のDXや業務効率化のソリューション連携により、さらなる高付加価値化・業務効率化を実現したサービス展開が見込めるというのが最も重視したポイントです。
次に、当社はこれまで建設・建機業界とお付き合いがありませんでしたので、受託システム開発でのシナジーが見込めると考えました。零壱製作社の技術力と、当社の営業力や受注力を役割分担することで、両社とも成長できると判断しました。
質疑応答:エンドユーザーとの直接取引の再現性について
坂本:「エンドユーザーとの直接取引比率の高さについて、実現できた理由はお話いただきましたが、今後の再現性について教えてください」というご質問です。リレーションの部分などではないかと思いますので、お願いします。
後藤:取引が始まったエンドユーザーとの関係を、いかに継続していくかが大事だと思います。ソリューションで取引を始めたエンドユーザーは、単発での取引だと思っている場合もあります。そのソリューションの導入が終わると「はい、さようなら」となることは往々にしてあります。
しかし、当社は開発サービスの分野が幅広いこと、保守サービスやいろいろなソリューションでお客さまの他の課題解決もできることが強みです。ですので、ソリューションの導入を進める過程で、「このようなご提案もできます」「お客さまの課題解決の役に立つサービスがあります」といったご提案を行い、ニーズに応え続けていることが、取引の継続につながっています。
そのため、単発の取引で終わるお客さまは少なく、もともと太い付き合いのところは当然ですが、新たに取引が始まったお客さまからも、横展開でご相談をいただいています。例えば、先日は経費精算のソリューションを導入されたお客さまから「ITサポートや保守の部分も手伝いをお願いします」「情報システム部門を一部まるごとお願いします」といったお話がありました。
こうした取引を拡大していくことが、当社の施策であり、再現性の向上につながっていると考えています。
飯村美樹氏(以下、飯村):それだけ横展開が進むのは、コミュニケーションが非常によく取れているということでしょうか?
後藤:そうですね。お客さまの懐に入ると言いますか、お客さまに当社の社員を気に入っていただけていることがよいところかと思います。「困った際はニーズウェルに相談してみよう」という関係性を作れていることは非常に強みかもしれません。
飯村:いつだって窓口は人ですね。
後藤:そうですね。本当にそのとおりだと思います。
質疑応答:エンジニアの人材獲得の進捗について
飯村:エンジニア人材についてのご質問で、「エンジニアの人材獲得について、工夫や進捗度はいかがでしょうか?」といただいています。
後藤:14ページのグラフで、社員数が大幅に増えている部分は、中途採用が中心になります。会社を拡大する次期でしたので、即戦力としてのエンジニアを採用してきました。リーマンショックのあとも、いち早く採用増に踏み切って社員を増やしたのですが、ここ数年はエンジニア不足で採用が難しくなっています。
飯村:取り合いですよね。
後藤:そのとおりです。そこで当社は、数年前に中途採用から新卒採用に切り替えました。大学との関係も太くして採用を強化し、入社後の教育にも力を入れています。今年の4月も61名が入社し、来年春も目標値で70名の採用を考えており、どんどん増やしていこうと進めています。
飯村:60名のうち、どのくらいがエンジニアですか?
後藤:エンジニア職に就くのはほとんど全員です。61名のうち、59名をエンジニア職に配属します。
飯村:もともとそのような大学出身の方が多いのですか?
後藤:大学でプログラミングを経験している学生もいますが、取り合いになりますので、多くは未経験です。
飯村:先ほどのお話にも「育成に力を入れる」とありました。
後藤:はい。ちょうど今は4月に入社した新入社員が研修中です。
坂本:どのくらいで戦力になってくるのでしょうか?
後藤:平均で3年くらいかかっていると思います。飲み込みが早かったり、もともと学生時代に経験している社員は1年くらいで立ち上がります。未経験でも、2年目、3年目には成長していきます。
数年前から新卒採用に踏み切りましたので、若手社員の層がだんだん厚くなってきて、今は3年目、4年目くらいの社員が非常に力をつけてきました。「後輩も育てます」といった意識も高く、よい循環ができてきています。
新卒採用に切り替えた当初は大変でしたが、その苦労を乗り越えて、体制を強化しているところです。
坂本:新型コロナウイルスが流行しはじめた頃は、教育がけっこう大変でしたか?
後藤:そうですね。集合研修を行おうと思った時にいきなり新型コロナウイルスが流行し始めて、急きょ全員リモートでの研修になりました。そのため非常に大変でしたが、新入社員が一番苦労したと思います。
坂本:今もリモートは継続していますか?
後藤:はい。1年目の苦労を乗り越えて、その経験を踏まえてリモートでのフォローの仕方を社内で考えて、だいぶノウハウができてきたところです。
飯村:今年が61名、来年春も70名の目標というところで、今後も期待されますね。
質疑応答:金融機関のニーズについて
飯村:「金融機関のニーズはその年によってかなり変動などあるのでしょうか?」というご質問です。
後藤:例えば、銀行、特にメガバンクなどは大型のシステムの入れ替えなどが特需になりました。それが終わると、案件としてはいったん減ります。
ただ、最近ではフィンテックやDX対応など銀行以外の金融分野も活発で、特に我々が今まで一番長い取引がある銀行や保険会社の案件でも、こうした対策を行うために、システムへの投資意欲が非常に高い状況です。したがって、個別のお客さまでは波がありつつも全体では上り調子と言いますか、需要が減る状況ではありません。
質疑応答:公共サービス・産業サービスの展望について
坂本:「4月にリリースした新サービスの公共・産業サービスについて展望をお聞かせください」と質問をいただいています。
後藤:スライド左上に「公共」、中央下部に「産業」の各サービスを記載しています。「公共」サービスは、以前から開発実績のある官公庁向け・航空宇宙向けに加えて、自治体のDX推進に伴うサービス提供や、電力・ガス事業向けのシステム開発実績のさらなる拡大を目指しています。最近ではデジタル庁主導での、自治体DXも進んでいきますので、我々もサービスを強化していきます。
「産業」サービスは、車載機器や医療機器をはじめさまざまな産業分野でIoTデータを活用したい要望が増えていますので、AI・コネクティッド分野の開発を通しての開発サービス拡大を目指しています。金融など特定の業種に閉じないサービス提供にも力を入れています。
質疑応答:協業や資本業務提携のアプローチについて
坂本:資本業務提携やM&Aについての興味が非常に高く、「協業や資本業務提携について、御社からのアプローチと他社からのアプローチのどちらが多いですか?」とご質問をいただいています。
後藤:提携先は、それまでに何らかの取引関係があったところが多いです。両社ともにさらに協力していこうというお話があった前提で、当社から「業務提携によってさらに両社のシナジーが見込める」とご提案し、資本業務提携に至っているケースが多いです。
坂本:社長が外向的に関わったりするのですか?
後藤:おっしゃるとおりです。非常に積極的に行っています。
坂本:社長には内省型の方と外向型の方の、2タイプいらっしゃいますよね。
後藤:そうですね。まさにそこは攻めの経営と言いますか。
坂本:機動力が活かされているわけですね。
後藤:中には先方からアプローチされるケースもありますが、当社からアプローチすることが多いです。
飯村:先ほどの「営業のコミュニケーション能力が高い」というお話からも、社風と言いますか、会社の雰囲気としても成長にとても積極的だということがよくわかります。
質疑応答:選別受注について
坂本:「受注環境について、選別受注はありますか? 実際にそれができる環境にある場合に、どのような基準でその案件を選ぶのかを教えてください」というご質問です。
後藤:選別という言い方をするとお客さまに角が立つ部分もあるのですが、当社のサービスがマッチしているか、お客さまに貢献できるかという判断をしています。
その上で、その受注の継続や拡大が見込めるなど、両社の取引拡大につながるかどうかも重視しています。そのため、スポットの案件だったり当社のサービス内容と合わないものは、優先順位を下げることもあります。
後藤氏からのご挨拶
後藤:株式会社ニーズウェルは、ご説明のとおり、事業成長に向けて取り組んでいますので、ぜひ当社に関心を持っていただき、注目していただければと思います。本日はありがとうございました。