業績のポイント

原田哲郎氏(以下、原田):みなさま、本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございます。代表取締役CEOの原田でございます。本日は前期決算の要旨をご説明したあと、中期経営計画をご説明します。

まず、業績のポイントです。全体の業況として、調整後経常利益は16.5億円となりました。調整後とありますが、連結しているアイペットの保険会計が保険業法の制度による非常に保守的なものになっていますので、投資家のみなさまに経営実態をよりご理解いただけるよう調整しています。

ベンチャー投資の予想に幅があるため、期初に出した通期の目標は5億円から10億円と、少し幅を持たせていますが、今期はかなり上回ることができました。

純利益は6.5億円です。今お伝えした保険会計の調整前経常利益は0.4億円、純利益は0.07億円となりました。

事業別の内訳です。当社の事業はビジネスプロデュース・ベンチャー投資・事業投資と大きく3つのかたまりで運営していますが、ビジネスプロデュースは期初の想定以上の結果となりました。ベンチャー投資は期初の想定よりもやや下回り、事業投資はトータルでほぼ期初の想定どおりという状況です。

ビジネスプロデュースは受注が好調でした。前期にアクセルを踏み人員を拡大したため、その部分のコストで増収減益になる見込みでしたが、受注の好調により結果的には増収増益となっています。

ベンチャー投資については、第4四半期に大きなゲインをもたらすIPO案件を想定していました。実際に上場申請して承認も得たのですが、ちょうど年末から年明け以降に世界情勢が大きく動き、金融市場も変動する中、残念ながら上場申請を取り下げることになり、結果として若干の赤字となっています。

事業投資について、ペットライフスタイルのアイペットは損害率が想定よりも低く推移したこともあり、増益となりました。HRイノベーションはワークスタイルラボという会社ですが、引き続き成長投資を行っており、想定どおり赤字となっています。

ファンマーケティングのピークスは再生を加速し、企業価値の向上につながりましたが、P/Lの期間損益の費用として赤字幅が増えています。これらをトータルすると、だいたい想定どおりの状況となっています。

1年前に構造改革を打ち出して進めていますが、ビジネスプロデュースへの資源投入の加速、さらにベンチャー投資・事業投資を含めたインキュベーションの見直しを行っています。

当初の想定よりも構造改革をさらに加速させるため、ピークスとワークスタイルラボは売却する方向に舵を切りました。2社とも2023年3月期第1四半期の売却を予定しています。

2022年3月期 連結P/L(保険項目調整後)

保険項目調整後の連結P/Lです。売上高は前期比77.9億円増加の355.6億円です。営業利益は前期比16.6億円増加の14.4億円、経常利益は前期比18.8億円増加の16.5億円です。純利益は昨年大きな特損を出したこともあり、前期比24.6億円増加の6.5億円となっています。

2022年3月期 連結P/L(保険項目調整前)

保険項目調整前の数字については、売上総利益以下で行っています。営業利益はマイナス1.6億円、経常利益は0.4億円、純利益は0.07億円となりました。上場ベンチャーの株式売却の一部が経常利益に入っているため、営業利益と経常利益に差額が出ています。

保険会計の調整項目及び調整額

保険項目の調整内容です。保険会社は保険契約の積み増しにより、責任準備金を積み立てておく必要がありますが、そのうち普通責任準備金と異常危険準備金について、保険会計から経営実態に合わせて調整しています。上場しているアイペットはこの調整を行って開示しており、ドリームインキュベータもそれを同じかたちで取り込んでいます。

2022年3月期 セグメント別P/L

セグメント別のP/Lです。ビジネスプロデュースですが、売上高は22.3パーセント増加の28.3億円、経常利益は28.4パーセント増加の3.7億円となっています。先ほどお伝えしたとおり、ベンチャー投資は第4四半期に予定していたIPOに関して上場申請の取り下げがあり、残念ながら若干のマイナスで終わりました。

事業投資について、ペットライフスタイルは売上高が25.3パーセントの増加、経常利益は調整後で75.4パーセントの増加となっています。HRイノベーションのワークスタイルラボは、成長投資の加速継続のため、赤字が計上されています。先ほどご説明しましたが、6月にランサーズさんへ譲渡することで合意しています。

ファンマーケティングのピークスは、再生の加速で赤字が増えましたが、2022年4月にADDIXさんへの譲渡が決まっており、トータルでは黒字の売却です。

2022年3月期 四半期業績(調整後経常損益)推移

調整後経常損益の目標値について、期初の段階でスライド右側の5億円から10億円という幅で出していました。

グラフは四半期ごとの累計の利益推移です。特に下期にビジネスプロデュースの売上が加速し、アイペットの損害率の低下、トップラインの継続的な成長もあり、最終的には期初の目標に対して6.5億円から11.5億円のプラスで終わりました。

2022年3月期 連結B/S

バランスシートです。総資産は昨年の295億円から335億円に増加しています。

スライドの中央には、純資産の増減を記載しています。左右の図を見比べると、大きな変動として非支配株主持分が12.7億円減少しています。昨年9月に国内ベンチャーファンドの運営会社であるDIMENSIONを売却し、その非連結化に伴い持分が減少しています。

現預金が非常に増えているのは、特に子会社のアイペットの成長に伴う現預金の積み増しと、リスク資産を縮小するという資産運用方針により、昨年から運用資産をかなり減らし現預金に変えているためです。

要 旨

今後の計画についてご説明します。一昨年に経営体制を刷新し、「社会を変える 事業を創る。」というミッションを再定義しました。そのミッションの実現と同時に、持続的な利益・株価の成長のために、昨年、構造改革に着手することをお伝えしました。

その改革の具体化を進め、さらに企業価値向上につなげていくための中期の経営目標として、大きく3つの重点目標を定めています。

1つ目が、ビジネスプロデュースを引き続き拡張し、利益・株価の継続的な成長の基盤にしていくことです。

2つ目は、ベンチャー投資・事業投資を含むインキュベーションを適切に収穫していくことです。

3つ目は、これらで収穫したアセットを、さらなる企業価値向上への成長投資に振り向ける部分と、株主のみなさまへ還元する部分でバランスをしっかり取っていくことです。

この3つを骨格として、中期経営計画を推進していきたいと考えています。

構造改革から中期経営計画へ

1年前の構造改革で着手するとご説明したことについての状況です。ビジネスプロデュースですが、経営資源の投入が不足していることが原因で停滞している部分があるという課題認識をお伝えしました。

その後、資源の集中を始めた結果、ビジネスプロデュースの拡大が始まりました。今のところ、受注も人員の倍増計画もオントラックで進んでいます。

もう1つの課題として、ビジネスプロデュースをレバレッジしスケール化していく仕組みを築いていく必要があるとお伝えしました。金融機能を応用として、昨年7月にSIB(ソーシャルインパクトボンド)を立ち上げるなど、金融機関・政府系機関との協業が始まりました。

インキュベーションはボラティリティが非常に高く、結果が出るまでに非常に時間がかかるという課題認識のもと、自己資金の投入を抑制し、ファンド規模を拡大していくという方針でした。

ただし、昨年の中間決算発表でもお伝えしたとおり、その後、取締役会で構造改革の具体化をさらに議論する中で、ファンドについても拡大方針を見直すことになり、国内のVCファンド運営会社の売却などを行いました。

ガバナンスは、1年前に社外取締役を過半数にし、その後、構造改革の議論を加速しています。取締役会の運営としては、モニタリング型に移行していく方向です。

これらの構造改革をさらに具体化し推進していくために中期経営計画にまとめました。こちらが、先ほどお伝えした3つの柱となります。

①ビジネスプロデュースの拡張による継続成長基盤化

1つ目の重点取り組みテーマである、ビジネスプロデュースの拡張により、ビジネスプロデュースを企業価値の継続的な成長の基盤にしていく点についてです。

日本産業は「失われた30年」と言われていますが、我々のクライアントの大企業の経営者にとって、事業創造は最大の経営アジェンダになってきており、さらに新型コロナウイルスが追い打ちをかけている状況です。

ドリームインキュベータは従来、大企業においてさまざまな事業創造のテーマがある中でも、とりわけ全社の規模で取り組むような大きな事業創造の支援に取り組んでいます。

新規事業のマーケットでは競合も出てきていますが、大型の事業創造という意味では、ドリームインキュベータとしてブランドをしっかり築けていると思っており、この差別性を活かしていきたいと考えています。

ビジネスプロデュースに集中し、収益基盤化していく取り組みの1つ目がサービスライン拡張で、付加価値のバリューチェーンを深掘りしていきます。

2つ目が陣容拡張で、具体的にはビジネスプロデューサーの採用・育成を強化していきます。

3つ目が協業拡張で、サービスプロバイダや金融機関などのさまざまな業態において、他業態との連携を活かし、収益機会の強化につなげていくものです。

4つ目が機能拡張です。これまでインキュベーションで築いてきたケイパビリティに加えて、今後、適切に収穫するアセットを応用し、スケール化につなげていきたいと考えています。

次の3ヶ年の目標として、3年後に売上高で2倍の60億円、当期利益で3倍の10億円を目指すというのが、今後のマイルストーンです。さらに、その先の継続成長につながるような経営基盤を作っていくことを、中期経営計画の1つの柱として考えています。

「事業創造」の経営トップアジェンダ化が加速

先ほどお伝えした「大企業の経営者にとってトップアジェンダが事業創造になる」ことについての参考資料です。

スライド左側は、日本の経営者の関心事項が、この10年でどのように変わってきたかを表しています。「売上拡大」「コスト効率・収益性向上」といった既存事業についての課題意識は減少し、一番下段の「新規事業の具体化」への関心が、圧倒的に高まってきています。

そのような背景もあって、右側のグラフで示すように、大企業において新規事業専門の組織を立ち上げる取り組みが増えてきています。これは大企業すべての集計ではなく、売上高上位100社の取り組みを調べたものですが、年々、新規事業部門の設立が増えています。

10年前は100社中3社でしたが、直近は100社中81社が、なんらかの新規事業立ち上げの専門組織を作っているというデータです。

ドリームインキュベータは、このような大企業の課題意識に対してサービスを提供していく企業ですので、市場が拡大していることは、我々のビジネスもますます拡大していくチャンスと捉えています。

DIの付加価値:“ビジネスプロデュース”(事業創造支援)

このようなマーケットに対し、ドリームインキュベータが提供している付加価値についてご説明します。我々が「ビジネスプロデュース」と呼んでいる、事業創造支援について、スライド左側に、支援メニューを4つ示しています。

1つ目は「産業プロデュース」です。社会課題を起点に、場合によっては政府とも連携し、新しい事業・産業の構想を生み出していくというものです。右側にプロジェクトの例を挙げており、カーボンニュートラル、少子高齢化、インフラメンテ/防災といった大きな社会課題に対して、事業構想の支援を行います。

2つ目は「ビジネスプロデュース」で、産業レベルから、企業の具体的な事業構想、戦略の策定に踏み込んでいくというものです。例えば、ヘルスケア事業、あるいはエネルギーマネジメント事業、モビリティサービス事業、といった事業について、大きな事業を創出していく戦略を策定する支援を行います。

3つ目は「グローバルSX(サステイナビリティ・トランスフォーメーション)」で、上に掲げたようなビジネスプロデュースの海外展開です。例えば、ビジネスプロデュースのアジアへの展開、あるいは他途上国への展開といったものがあります。

4つ目は「ビジネスプロデュース・インストレーション」で、立てた戦略を実際に実現するための支援と、その実現に付随するさまざまな顧客課題への支援という、さらにお客さまの中に入り込んだ実行支援です。例えば、新規事業の実現推進に向けて、伴走するようなご支援、あるいは、新規事業を継続的に創造可能にするために「組織をどう変えていくか」といった組織マネジメントへの支援などを提供しています。

サービスライン拡張:付加価値のバリューチェーンを深耕

ビジネスプロデュースの成長戦略として、サービスライン拡張により付加価値を拡大し、バリューチェーンの深掘りにつなげていきます。

産業プロデュースからビジネスプロデュース、あるいはグローバルSXと、産業レベルからプロデュースレベルに踏み込み、さらにその実行支援として、BPインストレーションに入っていくという流れになります。

会社全体のエコシステムとしては、産業プロデュースやビジネスプロデュースによりブランドの確立や顧客の獲得につなげ、BPインストレーションでお客さまの中にさらに入り込んだ支援を行うことで、事業がいっそう拡張していく仕組みになっています。

陣容拡張:ビジネスプロデューサーの採用・育成の強化

陣容の拡張についてご説明します。スライド左側のグラフに示すように、昨年の実績では、ビジネスプロデューサーを48名から58名に増員しています。このペースを維持し、3年後には115名体制を目指しており、よりいっそう継続成長させる計画を立てています。

優秀な人材の採用においては、「他の大企業あるいはプロフェッショナルサービスの会社と、優秀な人材の取り合いになるのではないか?」というご意見もあると思いますが、ドリームインキュベータとして「どのようなところで人材を引き付けるか」をスライド右側に示しました。

ビジネスプロデュースという仕事の魅力は、「社会を変える 事業を創る。」というミッションのもと、業界の垣根を超えたり、場合によっては政府も巻き込んだりして、大きな事業・産業創造を推進していくことにあります。

もう1つの魅力として、ドリームインキュベータでの仕事は、優秀なビジネスパーソンのキャリアになると考えています。スライド右下に、実際にドリームインキュベータを選んで入っていただいた社員の声の一例を挙げています。

例えば、「失われた30年が40年にならないように、日本からもっと産業を創出していく必要がある。そのようなことができる人材になりたい。そのようなキャリアを積んでいきたい」といった志をお持ちの優秀なビジネスパーソンにとって、大きく成長するためのキャリアを積むことができる場所だと考えています。

協業拡張:連携による収益機会の強化

他業態との協業拡張についてご説明します。例えば総合ソリューションとして、1年前に業務資本提携を行った電通さんとの協業があります。下段にプロジェクトの例を挙げていますが、構想戦略の策定のみならず、その後のマーケティングなどの実行支援までパッケージにしたようなサービスの具体的な成功例が出始めています。

スライド中央に記載しているのは金融機関との協業の例ですが、日本生命さんや日本政策投資銀行さんと、主にSIBで協業しています。

スライド右端に政府系機関との協業の例として挙げているのは国際協力機構さんです。このような機関と連携して、グローバル展開の支援プロジェクトにつなげていく取り組みを行っています。

今後も他業態との協業を通じて、我々の付加価値の提供をいっそう拡大するとともに、収益機会の拡大にもつなげていきたいと思います。

②インキュベーションの適切な収穫

中期経営計画の重点取り組みテーマの2つ目であるインキュベーション事業では、適切な収穫を行っていきます。

インキュベーション事業の非常に悩ましい点として、なかなか株式市場から評価されにくいという問題がありました。理由はいくつかありますが、1つには投資から回収まで非常に長い年月を要する上、当初の数年は損失が先行するという点があります。

また、いよいよ回収に入るという時期になっても、IPO時期、上場後の株価、実際に我々が売却できる株価、タイミングなどの要因をコントロールするのは非常に難しく、P/L業績を計画的にマネージする、あるいは予想をご説明することが実際には著しく困難であるため、「安定的な計画は出せません」とご説明していました。

そのため、保有しているベンチャーの直近の価値を算定し、含み益としてNAV(Net Asset Value)を開示していましたが、これもP/Lに反映されないため、株式市場からはなかなか評価されないという悩ましさがありました。

一方、我々が取り組んできた投資育成のケイパビリティは、先ほどの1つ目の柱であるビジネスプロデュースの拡大に、機能面あるいは収益強化面で貢献できるポテンシャルを秘めていると感じています。

例えば、投資ストラクチャリングや、PMI(Post Merger Integration)で培った事業経営スキルなどは、大企業の大きな事業創造の支援にも活かしていけると考えています。

これらを踏まえて、今後のインキュベーションについては、回収期を迎えた投資資金について適切に収穫し、資金だけではなくケイパビリティも含めたアセットを、ビジネスプロデュースの成長戦略に融合していきたいと考えています。

資金面については、もちろん言うまでもありませんが、投資に対するリターンであるROIC(Return On Invested Capital)が一定のハードルレートを超えるという前提で、成長戦略に投入していきたいと考えています。

投資アセットも組み込みビジネスプロデュースをさらに強化

これまでの話をまとめた図をスライドに示します。上段にビジネスプロデュースの拡大を簡単にまとめていますが、横軸がサービスライン拡張で、縦軸が陣容拡張・協業拡張です。

それに加えて、下段のインキュベーション事業で適切に収穫し、ここから得られるアセットをビジネスプロデュースの拡張に組み込んでいきます。これらがビジネスプロデュース基盤のさらなる強化につながり、また、場合によっては、関連・周辺事業への投資による収益の強化にもつながっていくと考えています。

2022年3月期末の投資状況

直近におけるインキュベーションの投資アセットの含み益に関する状況です。ベンチャーの含み益は、直近の第三者との取引価格を用いて、保守的に算定しています。スライド左側の事業投資と右側のベンチャー投資を合わせて、含み益は税前利益で156億円です。税金の46億円を引くと、税後利益で110億円の含み益があります。これらを適切に収穫していくことが大事だと考えています。

インキュベーション事業パフォーマンス

今ほどご説明した含み益は直近の残高ですが、これまでの取り組みにおける累計のパフォーマンスの状況を、ご参考までに示しました。事業投資とベンチャー投資を分けていますが、合計をスライド左側のグラフに示しています。

このグラフの見方ですが、ピンクが投資額、青色が回収したキャッシュフロー、水色が今後回収が見込まれるキャッシュフローです。これは簿価と含み益を足し合わせたものになります。灰色は、本社人件費・経費等のすべての事業運営費です。これらをネットすると累計のキャッシュフローになります。

合計ですが、累計すると265億円投資し、これまでに228億円回収しています。さらに潜在的な回収額として簿価と含み益を合わせると、236億円の回収を見込んでいます。

キャッシュアウトした事業運営費53億円を引くと、145億円のプラスになるという状況です。事業投資及びベンチャー投資の内訳はスライド中央及び右側のようになっています。

インキュベーション事業パフォーマンス(続き)

インキュベーション事業のパフォーマンスの続きです。過去の事業投資の案件がそれぞれどのような状況だったかを振り返った内容になっており、売却済みが4件、売却中が1件、投資中が2件と、このようなパフォーマンスになっています。

インキュベーション事業パフォーマンス(続き)

ドリームインキュベータがGPとして行ったファンド運営事業のパフォーマンスを表しています。上段のインドデジタルファンドは運用中で、トータル10年間のうち、現在は最初の4年が経過した段階ですが、すでにJカーブのマイナス期を経て、水面に浮上してプラスになっています。

2つ目のアジア産業ファンドについては、清算済みですが、残念ながらマイナスで終わっています。

③企業価値向上への成長投資と株主還元をバランス

3つ目の柱は、企業価値の向上に向けた成長投資と株主への還元をバランスさせていくことです。これまで含み益を前提とした経営ということでNAVを示し、株主の持ち分というかたちで示していましたが、なかなか評価いただくのが難しい状態でした。

そのため、事業構造を変更し、今後はビジネスプロデュースによるP/L利益成長を前提とした経営にシフトしていくための構造改革を進めているところです。これに伴って、株主還元の考え方も見直していきます。

利益成長につながる成長投資のため、ビジネスプロデュース基盤のさらなる強化として人材投資、インフラ投資に大きく分けており、これらの基盤を強化します。

さらにビジネスプロデュース関連、あるいは周辺への事業投資による収益力の強化も考えています。

スライド下段は事業投資ですので、投資の結果得られると想定されるリターン、つまりROIC12パーセント以上を社内のハードルレートとし、見極めていきます。

それに対して、株主還元の考え方については、NAVからP/L利益の成長に変えていくことでEPSや、PERの向上につながっていくような株主還元の仕方を意識していきたいと考えています。

スライド右下の図について、安定的、継続的に成長していく事業として、ビジネスプロデュースの利益から一定の割合をまず配当原資にします。

上部に「インキュベーション事業(収穫)」とありますが、継続的というより、時々で、対象案件ごとに適切な収穫時期が異なると思います。

収穫した時点でさらなる成長投資に向けた必要なキャッシュフローとそれ以外に分けて、成長投資資金以外については、株主に還元していく資金に充てます。この2つを組み合わせるかたちで株主還元を行っていきます。

中期利益計画(2023年3月期~2025年3月期)

これまでお話ししたことを踏まえての中期利益計画です。当期純利益の計画は、昨年12月に開示した利益計画から変更ありませんが、ビジネスプロデュースの当期利益として、3億円、6億円、10億円という計画を立てています。

もちろんその後も、ビジネスプロデュースの利益は継続的に成長していく基盤を作っていく計画です。

スライド上段には含み益を掲載していますが、適切なタイミングで刈り取った時に、下段にあるビジネスプロデュースの利益に上乗せされることになるという計画です。

ガバナンスの考え方

ガバナンスの考え方です。昨年6月に社外取締役を過半数の体制にして、取締役会運営の強化をさらに議論していきました。

取締役会の構成としてはさらに多様性を向上していきます。加えて、取締役会の運営方針として、業務執行については社内取締役に委任できるところは委任し、取締役会は経営戦略等の議論や、指名報酬の議論ができるような、モニタリングモデルへシフトしていきます。

さらに指名報酬委員会の実効性を強化し、指名報酬委員会の議長は社外取締役として、議論も社外取締役中心で行うというかたちにシフトしていくよう取り組みを進めていきます。

また、スライド右側にありますが、役員報酬の運用も強化します。株主のみなさまと同じベクトルになることで、企業価値向上につながるような報酬の考え方にシフトをしていきます。

報酬の内訳として、基本報酬(固定報酬)と業績変動の割合については、より業績変動を多くし、その業績変動の中で、株式報酬の割合を大きくするという見直しをしています。

以上をもちまして、決算ならびに今後の3ヶ年の中期経営計画について、私からご説明させていただきました。ありがとうございました。

質疑応答:ビジネスプロデュース事業の見通しについて

司会者:「ビジネスプロデュース事業の進行期の見通しを教えてください」というご質問です。

原田:売上高の目標は33億円で立てていますが、今のところこの売上目標に対する受注の状況は非常に好調で、目標は十分に達成できる手ごたえを感じています。

中長期的な成長に向けて、採用も強化していますので、先ほどお伝えした利益を達成することも十分に可能だと考えています。

質疑応答:ドリームインキュベータグループ全体の業績の見通しについて

司会者:「ドリームインキュベータのグループ全体の進行期の業績見通しについて教えてください」というご質問です。

原田:ビジネスプロデュース以外を含めたグループ全体の業績というご質問ですが、こちらはまだ構造改革の途中ですので、投資のボラティリティの影響が引き続きあります。そのため、正確にお示しすることが難しいというのは先ほどお伝えしたとおりです。

ただし、第1四半期にビジネスプロデュースが好調であることに加えて、第1四半期にピークスの売却のゲインをすでに計上しています。そのような意味では、順調に進んでいるとご理解いただいてよいと思います。

質疑応答:業績連動報酬のKPIについて

司会者:「業績連動報酬の具体的なKPIを教えてください」というご質問です。

原田:業績変動報酬は、現金賞与と株式賞与があり、現金賞与については単年度の利益がKPIとなっております。株式賞与は中長期の株価向上に向けた取り組みを指名報酬委員会、取締役会に評価いただきます。現在の中長期における課題は、先ほどお話ししたビジネスプロデュースの継続成長基盤化やインキュベーションの収穫と、それらを通じた株価成長ですので、そうした重点テーマを適切に行えているかを評価項目にしています。