本日の内容

国丸洋氏(以下、国丸):共英製鋼の国丸でございます。本日は私どものIRセミナーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。

私は、現在、経営企画、経理、海外事業を所管しています。これから、当社グループの事業概要と成長戦略について、その特色や強み、そして今まさに取り組もうとしていることなどについて、動画を織り交ぜながらお話ししたいと考えています。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いします。

本日の内容ですが、当社グループの事業概要、成長戦略をご説明した後、サステナビリティ課題への取り組みについてお話しします。

クイズ 1

国丸:はじめに、当社グループの会社概要です。

突然ですが、ここでみなさまにクイズです。スライドにお示ししている、一見ごみのように見える山は一体何の原料になるでしょうか? これでもかなり品質のよいものなのですが、何だと思いますか?

坂本慎太郎氏(以下、坂本):見る限りは鉄っぽいですよね。建築廃材から持ってきたものなどあったりするのかとも思って見ています。

当社グループの製品群

国丸:こちらは先ほどのクイズの答えです。先ほどの写真は、鉄スクラップ、一度使用された鉄屑で、スライドに記載している当社製品の主要な原料となります。

ご覧のように、当社グループは鉄筋コンクリート用棒鋼、いわゆる鉄筋を中心に、産業や生活の隅々にわたって幅広く使われている鉄鋼製品を製造販売しています。特に、スライド左上の鉄筋が当社の主力製品で国内出荷の8割程度を占めています。

坂本:こちらの鉄筋が御社の国内出荷量の8割を占めているということですが、後ほどお話しいただくと思いますが、海外でも展開されていると思います。そちらの製品はどのようなものでしょうか?

国丸:スライドの写真を見ていただきたいのですが、まず、海外はベトナムと北米で展開しています。ベトナムは日本と同じように、条鋼と言われるのですが、鉄筋がほぼ100パーセントです。北米については、鉄筋も作っているのですが、スライド下段右側の砲丸のような、鉄鉱石や銅鉱石を砕くときに使う鉱山向け製品を、カナダでは6割、アメリカでも2割くらい扱っています。

参考:当社グループの海外拠点(北米)

坂本:初めて見ました。こちらは消耗品なのでしょうか?

国丸:消耗品です。大きな釜の中に、鉄鉱石や銅鉱石と一緒にこのようなボールやバーのようなものを入れてガラガラと回し、石と鉄や銅のもとになるものとを分ける作業を鉱山屋が行っているため、そちらへ販売しています。

坂本:使っている内に小さくなるのですか?

国丸:ボール状のものはどんどん小さくなりますし、バー状のものは細くなります。

坂本:そうなると、また買ってもらえるということですね。

国丸:表面と中身ではだいぶ異なるため、どうしても新しいものが必要になると思います。

坂本:なるほど、勉強になりました。

国丸:こうした少し特色のある製品も作っています。

坂本:面白いです。

納入実績紹介

国丸:5ページは、当社製品の鉄筋が使用されている具体例です。鉄筋は、ビルやマンション、戸建て住宅の柱や梁などに使われています。その他、国内外の高速道路、鉄道、発電所など、建築物や社会インフラの基礎的鋼材として幅広く使用されています。

会社概要

国丸:当社の概要です。電気炉による鉄鋼製品の製造販売を中核事業とする企業グループで、いわゆる電炉メーカーです。国内外に18の事業会社を抱えています。

沿革 : 75年の歴史 大阪の町工場から世界へ

国丸:次に当社の沿革です。来年には創立75周年を迎える歴史ある企業グループです。また、12月19日は上場15周年記念日にあたります。

戦後、大阪の町工場からスタートして、60年前から電炉事業に進出し、近年ではベトナム・アメリカ・カナダと世界にフィールドを拡げています。

坂本:1982年に住友金属工業、今の日本製鉄と資本提携されていますが、その背景といったものがあれば教えてください。

国丸:1982年当時というのは、日本がオイルショック直後の構造不況の時で、電炉業界も大変厳しい事業環境にありました。ですので、高炉メーカーと手を結び、当社は信用力を強化するためお願いして、住友金属工業に出資を仰ぎました。

また、当時は通産行政で、電炉会社を高炉の資本傘下にして経営安定化していくという政策もあったということです。当時の住友金属工業の社長は熊谷さまと仰って、元通産事務次官の方です。

たまたま住友金属工業が電炉会社をグループ内に持っていなかったということも、後押しになったと考えています。

鉄をつくる2つの製造方法

国丸:ところで、そもそも、電炉とは、電炉業とは一体何なのかという疑問にお答えします。

製鉄法には大きく分けて、高炉法と電炉法の2つがあります。高炉法は、鉄鉱石をコークスで還元し、鉄を製造する方法です。一方、電炉法は鉄スクラップを電気の熱で溶かし、鉄を製造する方法です。

高炉は設備が大規模であり、連続的に操業を行うので、需要に合わせた生産調整が難しいと言えます。一方、電炉は設備が比較的小規模であり、操業のオンオフが容易であるため、需要環境に柔軟に対応することができます。

また、高炉は自動車や精密機器向けのハイグレードな製品を作り、私どものような普通鋼・電炉は建築土木向けの比較的ローグレードの製品を製造しています。日本では高炉は日本製鉄など3社、普通鋼・電炉は当社をはじめとして30社程度が事業を営んでいます。

電炉で鉄鋼製品ができるまでの映像をご覧ください

国丸:ここで、電炉で鉄筋ができるまでの映像をご覧いただきたいと思います。スクラップを溶かす製鋼工程の動画です。

こちらの動画の1:49:23〜1:52:00を流しながら説明しています)

国丸:トレーラーで運び込まれたスクラップを、マグネットクレーンで引き上げ、バスケットに投入しています。スクラップにいろいろな品質がありますので、レシピに合わせてスクラップを配合するという作業を行っています。

次にこちらは電気炉ですが、今、電気炉のフタがずれて開いています。先ほどのバスケットが上から降りてきて、下のフタが開いてスクラップを装入しているところです。ここから、また電気炉のフタが横にずれてフタが閉まります。2本に見えますが、実際は3本の電極が電気炉の中に降りていって、スパークします。

坂本:電気が流れるのですね。

国丸:現場に入ると相当迫力のある光です。

坂本:黒鉛電極というものですね。

国丸:おっしゃるとおりです。そして、溶かした鉄を出鋼しているところです。いったん取鍋という入れ物に取って、場所を移動します。

坂本:自動なのですね。

国丸:自動です。鉄は1,500度から1,600度で溶けますので、非常に熱いです。この取鍋からタンデッシュという受け皿に入れて、そこから鋳型に入れて鋳込んでいるところです。

鋳造しているところですね。この鋳造されたビレットという半製品を、一定の長さに切断します。

ここからが圧延ラインといって、ビレットを延ばして鉄筋にする工程なのですが、圧延機が20機くらい並んでいます。垂直、水平、垂直、水平と、秒速数十メートルの速さで流れます。

飯村美樹氏:これは気持ちがよいですね。

国丸:こちらの冷却床で冷やした後、決められた長さにきちんとカットして束ね、お客さまのところに出荷するという流れです。

電炉の強み 1

国丸:電炉による製造方法について、映像で少しご理解いただけたかと思います。次に我々の電炉の強みについてお話ししたいと思います。私は次の2点が電炉の強みだと思っています。

まず1つ目は、サステナブルな事業であるということです。現在、地球上には300億トンを超える鉄の蓄積量があるといわれていますが、毎年、建物の解体工事現場や工場から、あるいは廃車として、世の中に鉄スクラップが出てきます。

電炉ではその鉄スクラップを回収し、リサイクルして鉄鋼製品を製造し、再び社会インフラに循環させるという事業です。つまり、本業そのものが持続的社会の実現に貢献する資源循環型事業であると考えています。

電炉の強み 2

国丸:2つ目の強みは、環境負荷が小さいということです。スライド左側の棒グラフは、鉄鋼各社の1トン当たりのCO2の排出量です。鉄を1トン作る時にどのくらいCO2を排出するかというグラフなのですが、A社とB社は高炉です。C社と一番右の共英製鋼は電炉なのですが、高炉比で電炉、あるいは私どものCO2排出量が大変少ないことがおわかりになると思います。

今、世界中で気候温暖化の影響などが顕在化している中、地球環境に本当にやさしい事業であると言えると思います。

坂本:単に電気を使うからということが一番大きいのですか?

国丸:電気を使うからです。一方で、高炉は石炭から作られるコークスを使用します。酸化鉄(Fe2O3)とコークスを合わせて鉄(Fe)を作らないといけないため、そこでどうしてもCO2が出てきます。これが大きな違いですね。当然、電気の中でもCO2が発生する電気もあれば、そうでない電気もありますので、そのあたりの使い方で電炉のCO2排出量も変わります。

当社グループの紹介映像をご覧ください

国丸:当社グループの事業概要についてです。当社グループを紹介したアニメ映像がありますので、ご覧いただきたいと思います。

(動画はこちらからご覧いただけます)

当社グループの事業内容

国丸:いかがでしたでしょうか。私が言うのもなんですが、大変よくできたアニメだと思っています。アニメにもありましたが、当社グループはスライドに記載のとおり「国内鉄鋼事業」「海外鉄鋼事業」「環境リサイクル事業」という3つの大きな事業と、「その他の事業」の4つを展開しています。

国内鉄鋼事業

国丸:当社グループの中核事業である国内鉄鋼事業についてです。鉄筋は建築・土木用の基礎的鋼材として底堅い需要があります。また、比較的安価な重量物であるため、デリバリー面などで海外からの参入障壁があります。

スライド左端から順に記載のとおり、当社グループの鉄筋のマーケットシェアは約18パーセントと国内No.1です。メーカー数の多い当業界においては、大きな存在感があると考えています。

また、関東、中部、関西、中四国・九州という4大需要地に、それぞれ生産拠点を保有しています。需要地は鉄スクラップの発生地でもあるため、この拠点展開は当社の大きな強みです。さらに、付加価値製品としてネジ節鉄筋、高強度鉄筋なども製造・販売しています。

海外鉄鋼事業

国丸:海外鉄鋼事業についてです。当社グループは業界の動きに先駆けて、1960年代に海外進出を果たしています。現在ではベトナムに3社、アメリカに1社、カナダに1社の連結子会社を持ち、グローカルニッチ戦略のもと、日本を含め世界3極体制を構築しています。

これらの国は経済成長や人口増、インフラ投資により、鉄筋需要が伸びているエリアです。また、スライド右側の棒グラフのとおり、すでに製品出荷量は海外が国内を上回るほど業容を拡大しています。

坂本:こちらの海外事業について教えてください。製造している品目については以前に教えていただきましたが、ベトナムの2社を買収しています。この2社は両方とも電炉の会社なのでしょうか?

国丸:今ご説明したように、ベトナムには3社あるのですが、3社中2社が先ほどお話しした製鋼工程、鉄を溶かす工程と圧延する工程がワンセットの会社です。もう1社が鉄筋を圧延する下工程だけの会社です。単圧という言い方をしますが、それが1社という組み合わせです。

坂本:ベトナムの会社は御社のように全部包括して行うというよりは、単発といいますか、特化した会社が多いということでしょうか?

国丸:ベトナムでは比較的、上工程と下工程を分けて運営しているところが多いと思います。また、ベトナムはそもそも鉄スクラップを輸入している国なのですが、鉄筋は必要なので圧延だけの工場もあるのです。私どもも1社は圧延だけですが、グループ会社から先ほどのビレットを送り込んで圧延する、地場でビレットを購入して圧延するなど、いろいろな組み合わせが行えます。

クイズ 2

国丸:ここで2つ目のクイズです。今、スライドにドラム缶やペール缶などの画像が出ていますが、「メスキュード」というラベルが貼ってあります。坂本さん、この缶の中には何が入っていると思いますか?

坂本:これは難しいですね。ヒントをいただけませんか?

ヒント

国丸:ヒントといいますか、今のドラム缶の処理の一部をお見せしている写真ですが、いかがでしょうか?

坂本:処理でなんとなくイメージが湧きます。これは廃棄物系のものではないですか?

国丸:なんとなくおわかりだと思いますが、ただ中身についてはなかなか難しいと思います。

環境リサイクル事業

国丸:クイズの答えなのですが、先ほどの写真のドラム缶の中には、注射針などの医療廃棄物が厳重に保管されています。先ほどのヒントでお見せした写真のように、ドラム缶を鉄スクラップと一緒に電気炉に投入して、医療廃棄物を無害化処理しているという事業になります。

このクイズに関連する、当社の3つ目の大きな事業である環境リサイクル事業についてお話をしたいと思います。

この事業は、鉄を作る過程で電気炉が発する超高温の熱を利用して、医療廃棄物をはじめとするさまざまな産業廃棄物を無害化する、溶融処理を行っています。これは当社グループが独自に開発した特色のある事業で、いわゆるパイオニアといえるかと思います。先ほどのアニメにもありましたが、30年前に「注射針の不法投棄問題を何とかできないか」という思いから始まった医療廃棄物処理「メスキュードシステム」が、この事業のスタートです。

スライド左から記載しているように、電炉による産業廃棄物処理量は当社グループが53パーセントと国内シェアNo.1です。近年では、増加する新たな処理困難物の溶融処理に力を入れていますが、国内で7ヶ所指定されている車載リチウムイオン電池の認定処理施設のうち、2ヶ所が当社グループです。また、炭素繊維やアスベストの無害化処理も手掛けています。

坂本:注射針の不法投棄から始まった事業ですが、医療廃棄物というのはどのようなものですか? 御社には先ほどのドラム缶のようなものに入って届くのでしょうか?

国丸:中身のことでしょうか?

坂本:中身です。何が入っているのか、何でも入れてよいのか、高い温度で溶解すると思うので、どのようなものでも大丈夫なのか? という質問になります。

国丸:19ページでお示ししたように、ドラム缶はなかなか目にしないのですが、一番右側の一斗缶は病院で見かけることがあると思います。医師や看護師が、感染性のものなども含めて、注射針やガーゼなどを廃棄物としてこの中に入れて、パチンと閉めて外に出ないようにしています。それを私どもの代理店が病院から集めて、当社の工場に入れて電気炉の中に投入して溶かすという流れです。

坂本:ということは、新型コロナウイルス関連のものなども入っているのでしょうか?

国丸:そうですね。ワクチン絡みの注射針なども医療機関から出てきますし、保健所からの要請でも出てきます。今回はホテルが療養施設になったと思うのですが、新型コロナウイルスの感染者が利用したホテルから出てくるようなものも処理しています。

坂本:最近、かなりのボリュームが出たのではないかと思いながら聞いていました。

その他の事業(鉄鋼周辺事業)

国丸:3つの事業の他に、4つ目のその他の事業についてです。その他の事業というのは、収益機会の拡大や事業の多角化を目指す鉄鋼周辺事業です。まず、ベトナムにおいて港湾事業を行っています。総面積40万平米の国際一般港で、グループ鉄鋼子会社のスクラップを輸入する事業をメインに、幅広い貨物を取り扱っています。

鋳物事業にも取り組んでいます。国内では主に産業用の特殊部品などを製造しており、当社の主力製品の1つであるネジ節鉄筋の部材も製造しています。

また、鋳物事業はベトナムにも拠点があり、日系メーカー向けの工作機械部品なども製造しています。この他に、スライド右端に記載の強度せん断補強筋などを製造・販売する加工品事業も行い、鉄鋼の川下事業も手掛けているところです。

業績の推移

国丸:業績の推移はご覧のとおりです。ここ数年は海外鉄鋼事業の拡大を背景に、売上高は増加傾向にあります。鉄鋼事業は市況に左右されやすいため、利益面でブレもありますが、相応の経常利益、最終利益は確保できているのではないかと考えています。なお、今年度は売上高2,900億円、当期純利益60億円を計画しているところです。

財務の状況

国丸:財務の状況はご覧のとおりです。近年の海外鉄鋼事業のM&Aなどにより、総資産が増加して、自己資本比率が少々低下傾向にありますが、それでも50パーセント以上を保っています。また、ネットの借入も100億円から200億円程度で、健全な財務体質を維持できていると考えています。

事業環境の変化

国丸:当社グループの成長戦略についてです。戦略を語る前に、現在の当社グループを取り巻く事業環境についてお話しします。昨年来のコロナ禍により、我々電炉業を取り巻く事業環境も大きく変化してきています。

まず、当社グループとしては、withコロナ時代の国内外の鉄鋼需要の変化をしっかり見極めつつ、スライドに記載のとおり「カーボンニュートラル社会の到来」や「サーキュラーエコノミー社会への流れ」など、ニューノーマル時代の環境の変化を的確にとらえ、今後の事業展開を考えていく必要があると思います。

当社グループのありたい姿

国丸:そのような事業環境の変化を踏まえて、私どもは今年4月に、2023年度を最終年度とする中期経営計画「NeXuS 2023」を策定および公表しました。このスライドでは、その前提となる10年後の当社グループのありたい姿と、それに向けた中計の位置づけをお示ししています。

中計のタイトルである「NeXuS」は「つなぐ」を意味します。このつなぐ力を強化して鉄のリサイクル事業を極めていきたいと考えており、10年後の2030年には、資源循環型社会の中で必要とされるエッセンシャル・カンパニーになることを目指しています。

中期経営計画「NeXuS 2023」コンセプト 1

国丸:中計のコンセプトです。この中計では、これまで以上にグループ内外の経験や知見を活かしていきたいと考えています。「グループ内をつなぐ力」「外部とつなぐ力」に加えて、私が最も重視している、時をつなぐ、人をつなぐことを意味する「次代につなぐ力」、これらを意識した経営に取り組むことで、100年企業を目指していきたいと考えています。

中期経営計画「NeXuS 2023」コンセプト 2

国丸:中計の事業コンセプトです。これらは事業セグメントごとの成長戦略や、「サステナ課題」への取り組みのベースとなる考え方です。

1つ目は、当社の強みである鉄筋を中心とした鉄づくりにこだわること、つまり本業を強くすることです。2つ目は、資源循環型事業を日本だけでなく世界各地へ展開することにより、地産地消ビジネスでリスク分散を図ることです。

3つ目は、環境リサイクル事業や鋳物事業、加工品事業など、事業領域のウィングを拡げることです。4つ目は、本業を通してサステナブルな社会の実現に貢献する「真の資源循環型企業」に進化すること、すなわち地球環境と調和することです。

中計概要:セグメント別 売上高・営業利益目標

国丸:スライドのグラフは、セグメント別の売上高と営業利益について、2020年度の実績と中計の最終年度の目標を示したものです。今後も、先ほどお伝えした世界3極体制の盤石化とともに多角化戦略も進め、収益の安定的な拡大と持続的な黒字経営に努めていきたいと考えています。

中計概要:エリア別 製品出荷量目標

国丸:中計最終年度の製品出荷量の目標をエリア別に示したものです。日本で170万トン、ベトナムで175万トン、北米で55万トンの合計400万トンを目標として、国内出荷量は維持しつつ、ベトナム、北米で設備増強などを図りながら、海外出荷量を増加させていきたいと考えています。

中計概要:投資計画

国丸:中計3年間の投資計画です。中計の事業コンセプトに基づく戦略を具体的に進めるために、期間中に約600億円の投資を予定しています。

中計の進捗状況①

国丸:事業コンセプトに沿った取り組みをいくつかご紹介します。初めに「本業を強くする」です。海外事業を強化したり、事業を多角化したりするにしても、まずは国内鉄鋼事業における競争力に磨きをかけることが重要だと考えています。

そのポイントは3つあります。1つ目はコストの削減で、成分分析自動化設備の導入や、自動システム搭載の倉庫の建設などを行っています。2つ目は販売・購買力の向上です。来年10月にはウェブ受注システムをカットオーバーする予定です。3つ目は品質と付加価値の向上です。高強度鉄筋や環境に優しいカラーアングルの開発・販売を進めています。

引き続き、このような地道な努力を重ねて、同業他社比で比較優位に立ち続けることが非常に重要だと考えています。

中計の進捗状況②

国丸:「地産地消ビジネスでリスク分散する」についてです。スクラップ価格は国際市況で動き、製品価格、鉄筋価格は国内需要で上下します。このトレードオフのリスクをなるべく極小化し、収益の補完体制を形成する拠点展開、事業展開が非常に重要だと考えています。

スライドのグラフのとおり、ベトナムにおいて、今年は上期需要が好調で、出荷が伸び、過去最高の利益を上げることができました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、下期は一時的に厳しい収益となりそうです。一方で北米は堅調に推移しており、下期は過去最高益を上げる勢いです。国内鉄鋼事業が厳しい中で、長年にわたり積極的に行ってきた海外への投資が、ようやく花開いてきたという思いです。

引き続き、日本、ベトナム、北米の世界3極体制の盤石化を進めていきますが、今年度の海外事業の好調な業績を踏まえて、カナダとベトナムでの増産、増販を目的とした設備の増強投資も具体化すべく、今まさに検討しているところです。先ほど投資計画について600億円とお伝えしましたが、その中に含まれている投資です。これをさらなる海外鉄鋼事業の成長につなげていきたいと考えています。

当社の歴史と事業にかける想い

国丸:当社グループのサステナビリティ課題への取り組みについてです。こちらのスライドは、当社の創業来の歴史と事業にかける想いを表したものです。当社グループの実質的な創業者である高島浩一は、戦後に「鉄づくりを通じて日本の復興に貢献したい」との想いから当社を創業しました。

公害問題が大きくなっていた1960年代に、鉄づくりの技術を地球環境との調和に活かすべきとして、当時の社是に「未来への挑戦」を掲げ、企業活動と地球環境との共生に取り組んできました。現在のサステナビリティやESG、SDGsに通ずる取り組みだと思います。

共英製鋼グループのマテリアリティ(重要課題)

国丸:私たちはその想いを受け継ぎ、今般、中計策定に合わせて企業として何ができるのかを今一度考え直しました。スライドに記載のとおり、事業を通じて貢献したいこと、10年後のありたい姿として、この6つのマテリアリティを特定しました。

このマテリアリティに沿ったかたちで、私どものサステナビリティに関する具体的な取り組みを次ページよりいくつかご紹介します。

取り組み事例 1

国丸:まず「美しい地球環境に向けて」についてです。2050年のカーボンニュートラルを目指し、2030年度のCO2排出量を2013年度比で50パーセント削減することを目標に掲げました。

具体的には、本業において省エネや燃料転換を推進しています。他にも太陽光発電の自家消費のプロジェクトを進めています。さらに、山口事業所の近隣の所有地でオリーブの植樹による緑化事業を行っており、将来的にはオリーブ園の開園も目指しています。

取り組み事例 2

国丸:「より安全で働きやすい職場に向けて」についてです。無人化、ロボット化などによる労働災害の撲滅、女性をはじめとした多様な人材の採用・登用などダイバーシティの推進、健康経営など職場環境の改善を進めています。また、子会社の関東スチールにおいては2018年に、同業他社に先駆け、当業界では常識だった夜間や土日操業から、平日の昼間操業に移行しています。

取り組み事例 3

国丸:「地域社会の一員として貢献するために」についてです。引き続き、医療支援金や災害義援金、新型コロナウイルス関連などの寄付活動、地元行事への協賛などの地域貢献活動、地元自治体と協働した防災活動を続けています。さらに、昨年12月には障がい者雇用の場として、小型家電のリサイクル作業場「リサイクル工房にじいろ」を開設しました。

この中計期間中は、単体純利益の0.5パーセント程度を毎年継続的に寄付することとしています。引き続き、当社グループが地域になくてはならない存在になることを目指していきたいと考えています。

取り組み事例 4

国丸:「より公正で誠実な企業活動に向けて」についてです。社外役員を増員し、その中で女性社外役員の招聘など、取締役会の機能強化を進めてきました。指名・報酬等検討委員会の構成員の過半数を社外役員にしたほか、リスクマネジメント体制の強化、TCFDの開示など、東京証券取引所のプライム市場上場に向けた準備を進めているところです。

さらに、昨年3月に取得した格付「A−」を今年5月に更新しました。6月には当社初の社債も発行しました。今後とも、社会の要請や期待に応えられる会社づくりに全力で取り組んでいきたいと考えています。

株主還元

国丸:株主還元についてです。配当性向は25パーセントから30パーセント程度を目処としています。また、業績の変動にかかわらず、少なくとも年間30円の配当を実施していきたいと考えています。加えて、株主優待については、スライドの右側に記載の条件でQUOカードを進呈しています。

単元株100株で考えると、現在の株価であれば13万円程度で株主になっていただけます。来年3月末の株主名簿に記載があれば、来年6月にはQUOカードを1,000円分、また、現時点での見込みではありますが、期末配当2,500円を加えて、合計3,500円を受け取っていただくことになると思います。

株価の推移

国丸:近年の株価と株主数の推移です。おかげさまで、株主数は昨年度末、3月末時点で1万3,257名と、上場来最多となりました。本当にありがとうございます。

株価はコロナ禍以降、低水準での推移となっていますが、今後は株式市場でさらに認知されるよう、このようなIR活動を強化するとともに、企業価値の向上に努めていきたいと考えています。

次代の成功を目指して

国丸:まとめです。先ほどご説明した中計のタイトルの「NeXuS」には、「つながる」という意味とは別に「Next Success」、つまり「次代の成功を目指して」という意味も込めています。

これからの「サーキュラー・エコノミー社会」の中で、社会の発展と地球環境との調和に貢献するエッセンシャル・カンパニー、社会になくてはならない会社を目指して取り組んでいきたいと思います。ぜひご期待いただくとともに、引き続き、みなさま方のご支援をよろしくお願いします。

ご清聴ありがとうございました

国丸:先日、日本経済新聞とテレビ大阪の連動企画番組「現場探究」の取材を受けて、12月13日に放映がありました。これを視聴できるURLをスライドに記載しています。ご興味のある方は、ぜひこちらもご覧いただければと思います。

私からの説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:ベトナムの事業環境について

坂本:海外事業についてのご質問です。ベトナムで買収した会社について教えていただきましたが、なぜベトナムを選ばれたのでしょうか? また、電炉系なので電力の供給はけっこう重要かと思いますが、ベトナムでは実際に安定しているのかどうかについてもお聞かせください。

国丸:ベトナムには1994年に進出しているのですが、実は1974年くらいには技術支援の目的で、すでにベトナムには入っていました。ベトナム戦争が終わる直前です。崩壊したベトナムの国土の復興の一助になりたいというのが当時の創業者の想いであり、それを現実化したということです。1991年に大阪商工会議所のミッションで、現会長がベトナムに行って投資することを宣言したという経緯があります。

ベトナムの電力ですが、確かに、以前から電力の需給関係が厳しかったですし、現在はとにかくベトナムの経済が発展しているため、電力需要は年率10パーセントくらいの割合で増えています。電力開発も行っていますが、それが少し弱めの北部では真夏には電気が足りないということで、計画停電も実際に起こっています。ただ、私どもの操業に大きな影響があるほどではありません。

質疑応答:夜間操業の再開について

坂本:御社では夜間操業を廃止されたというお話ですが、おそらく業界的にというよりも、電力料金の関係で夜間操業が当然だったものと思われます。原発が動いていた時期は夜間の電力も安かったのでそのようにされていたと思いますが、仮に、原発が再稼働するようなことがあれば夜間操業は復活するのでしょうか?

国丸:私どもは国内に4つ、大きな工場を保有しています。以前から山口の工場は24時間フル稼働です。他の3つは、先ほどお伝えしたように、夜間と土日しか稼働していませんでした。そのうち関東にある1工場だけは、実際に昼間操業を行っています。これは東京電力からの要請および提案があり、私どもの電気代の負担がそこまで掛からないかたちで、昼間操業にシフトしたものです。

勤務体制もシフトしましたし、物流の関係で設備投資も行いました。そのため、今後電気代が理由で後戻りすることはなかなかないのではと考えています。

坂本:高炉はずっと生産し続けないといけませんし、停めるとメンテナンスが非常に大変です。そこをコントロールできるのは電炉のよいところですね。

質疑応答:海外事業について

坂本:中計についておうかがいします。2023年度はかなり海外事業が伸びるかたちになっていますが、こちらの利益は、海外ではベトナムと北米、どちらのほうを大きく見込んでいるのでしょうか? また、市況により変動する部分があるため、これを抑えるような施策があれば教えてください。

国丸:このスライドには、海外事業の営業利益は最終年度で40億円と記載していますが、中計を策定した時点では、ベトナムと北米とでだいたい20億円ずつ、ほぼイコールとしています。しかし、出荷量についてはベトナムは175万トン、北米は55万トンということで、量としてはベトナムがかなり多いものの利益は変わりません。つまり、マージンは北米のほうが相当大きいという見立てです。

しかし、中計の策定時とは状況がだいぶ変わっており、北米のほうがより一層よいというのが足元の状況です。

坂本:資源価格も高く、4ページでご説明のあったボールのようなものも出るからという理由でしょうか?

国丸:スクラップ価格が上がる分、製品価格もストレートに上げられるということがあります。現在、ベトナムはコロナ禍で非常に厳しい状況になっています。ロックダウンもありましたし、その後もあまりよくなっていません。

市況に利益が左右されやすいことについては、先ほどお伝えしたように、国内に4つの拠点があり、それぞれに営業や購買の責任者を置き、本社を起点にして各拠点と情報交換を行っています。競合他社の動向や市況を確認しつつ、スピード感を持って対応を進めているところです。

私どもの強みとしては、海外の生の情報が入ってくることに加えて、事業ポートフォリオとして鉄鋼事業を異なる国で展開していることや、安定的収益を稼いでいる環境リサイクル事業があるということが挙げられます。

質疑応答:M&Aの予定について

坂本:中計期間中に、M&Aの予定は入っているのでしょうか?

国丸:投資計画に関するご説明で、中計期間中に600億円という表をお見せしましたが、この中にはM&Aは一切織り込んでいません。P/Lや出荷量にも入れていません。案件があれば、別途検討したいと考えています。