会社概要

若濵久氏(以下、若濵):SERIOホールディングス代表の若濵と申します。よろしくお願いいたします。

本日は当社のIRセミナーにご参加くださり、ありがとうございます。会社の概要、事業環境、業績の見通し、中期経営計画の流れでご説明します。

まず、会社の紹介です。SERIOホールディングスという会社を、ぜひ多くの方に知っていただければと思います。ホールディングス自体は2016年に設立していますが、事業としては2005年からスタートしています。大阪に本社を置き、現在は正社員・パートを含めて3,000名近くの職員が働いています。

「SERIO」という社名は、ポルトガル語やイタリア語、スペイン語で「まじめ」という意味です。事業自体も社会に対してまじめな姿勢で取り組んでいきますが、従業員も仕事にまじめに取り組むという思いや願いを込めています。

ビジョンとミッション

若濵:私どもの会社が掲げているビジョンとミッションです。「家族の笑顔があふれる幸せ創造カンパニー」を会社の目指すべき姿として掲げています。

「家族」というのは、社会の中において一番小さく、そして、とても大切なコミュニティの単位ではないかと思っています。家族の笑顔がどんどんあふれることにより、社会全体が幸せな環境になっていけるのではないかと考えています。

それを創り出すことができるような企業になりたいという願いを込め、このようなビジョンを考えました。そのビジョンに基づき、私どもの使命として「仕事と家庭の両立応援」「未来を担う子どもたちの成長応援」という2つの事業ミッションを掲げています。

ミッションに基づいた事業展開

若濵:事業ミッションに基づき、現在、主に行っている事業が3つあります。1つは、働く「機会」の創出ということで、就労支援事業を行っています。平たく言いますと、人材派遣やコールセンターの受託運営などです。

世の中には派遣事業がたくさんあると思いますが、私どもの特徴としては、働くお母さま、家庭をお持ちの女性、主婦層の方に対して、家庭と両立しやすいパートタイム型の仕事などを紹介しています。

「フルタイムでは働きにくいな」という声を活かし、家庭と両立できるような仕事を生み出していくことを特徴としています。現在、3万名以上の方にご登録いただき、多くの方にそのような仕事環境を得る機会を創出しています。

また、働く「環境」の創出も行っていきたいと考えています。小さな子どもがいる中で仕事をするのは難しいことです。そこで「子育てを支援していきたい」ということで、保育園の運営や、放課後事業として小学校の学童クラブの運営などを行っています。

売上高・経常利益の推移

若濵:設立時からの売上高と経常利益の推移です。先ほどお伝えした就労支援事業でスタートし、設立から5年後に放課後事業、7年後に保育事業をスタートしています。

9年目には、いわゆる認可保育園の運営や、放課後の公立の小学校や公営施設の受託運営事業をスタートしました。そこから会社が急速に成長していることが、スライドのグラフからおわかりいただけると思います。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):グラフを見る限りでは、保育事業と放課後事業の伸びがかなり加速して御社の成長に寄与していると思うのですが、この背景があれば教えてください。

若濵:就労支援事業も堅調に伸びています。

坂本:保育事業と放課後事業の伸び率が大きいため、気になるところです。

若濵:まず、国の取り組みとして「女性の就労率を上げていきたい」ということで、「就労率を82パーセントに上げていこう」という方針があります。そこで、少子化対策も含めてそのような環境を作っていくために、国が予算を取って保育園や学童保育の整備を非常に積極的に行っています。

そのため、我々が行っていた学童保育の事業が、国や社会から非常に求められたことが追い風となり、それに乗って成長していったかたちだと思います。

そして、2018年にマザーズ市場に上場させていただきました。

事業環境 最近の政策

若濵:我々が取り組んでいる国の政策です。女性の就業や育児との両立支援制度など、先ほどお伝えした3事業のすべてが政策とリンクしている点が、私どもの事業環境の強みではないかと考えています。

坂本:「政府の政策と合致している」ということですが、新型コロナウイルスが出てくる前と後では、御社の業種別の事業の割合はあまり変わりませんでしたか?

若濵:ほとんど変わっていません。新型コロナウイルスによって「どうなるかな」という気持ちはありましたが、売上構成比率は3分の1ずつほどで推移しています。

就労支援事業や人材派遣事業などは、「マイナスの影響が大きく出るのではないか」と危惧していましたが、逆に伸びてきており、そのあたりもあまり大きな影響を受けていません。

就労支援事業の事業環境

若濵:就労支援事業の事業環境について、スライドに厚生労働省が発表しているデータを記載しています。新型コロナウイルスの影響で社会が変わっているところは否めません。

就労支援事業 売上計画と業種内訳

若濵:就労支援事業の売上高の推移です。今期は新型コロナウイルスが流行しましたが、2020年5月期と比較すると非常に伸びていると言えます。

坂本:売上が伸びていることはわかりました。業種別売上高の比率も新型コロナウイルスが出てきた前と後では変わらないのでしょうか?

若濵:構成は変わっていません。コールセンターがパートタイム型の就労形態と大変マッチしているということで非常に需要があり、クライアントからの仕事も増えています。我々は家電メーカーからの委託で受けている仕事が多いのですが、コロナ禍で家電はかなり売れていますよね?

坂本:そうですよね。

飯村美樹氏(以下、飯村):そうでした。ドンピシャですね。

若濵:わりと爆発的に売れているということで、必然的に修理の依頼などが増えてきたことが予期せぬところではありますが、業績に反映されています。

放課後事業の事業環境

若濵:放課後事業の事業環境です。保育園のお話は新聞などで取り上げられることが多いですが、放課後事業はあまり取り上げられないため、このあたりがよく理解していただきたいと思っているところです。

保育園に通う子どもの両親は共働きが多いため、小学校へ上がると学童クラブに行きます。幼稚園に通う子どもたちは共働きではないことが多いため、小学校へ行っても学童クラブは利用しません。

そのため、保育園の利用人数が増えているということは、比例して学童クラブを利用する子どもも増えているということになります。

坂本:都市部では学童クラブがかなり不足しています。僕には子どもがいますが、僕が住んでいるところはほとんど1年生までしか入れません。2年生になると所得順で切られたりします。3年生や4年生くらいからは1人で留守番できますが、2年生は難しいですよね。

保育園は国の「増やしましょう」という方針がありますが、学童クラブも増やしているのでしょうか?

若濵:我々は公立の小学校の学童の運営のため、自治体から受託で受けているケースが多いです。学校数や生徒数も少子化でそれほど増えていませんが、その中でも学童利用数が急激に増えています。

国からは「6年生まで預かりなさい」という指示が出ているのですが、場所がないということで現実的になかなか難しい状況です。

坂本:そのとおりですね。

若濵:「1年生が優先だよ」というお話がありましたが、子どもたちの安全を考えるともっと整備していかなければいけないということは、大きな社会問題になっているのではないかと思います。

坂本:きめ細かいところもありますので、私設の学童は趣旨がなかなか合わないのかもしれませんね。

若濵:ある程度の費用は出ますので、それに合わせていろいろな付加価値を付けていますが、保護者の方には負担が大きくなります。

坂本:そこで国や自治体の補助が出るとかなり変わると思っていますが、なかなか難しいですね。

若濵:「学校の中がもういっぱい」「もう場所がないよ」ということで、学校の中にあるべき学童を外部に作り、それに対して補助を出す自治体も増えてきています。

もともとある民間の学童に補助を出すのではなく、学校に中にあるものを外に作るというスタイルです。我々もいろいろな自治体に提案して、「それで進めましょう」と計画しています。

坂本:このような環境はなかなか知られていない部分ですので、非常に勉強になりました。

放課後事業の市場環境

若濵:公立学童施設が非常に増えていることを表した表です。

保育事業の事業環境

若濵:保育事業の事業環境ですが、児童数は増えています。保育園が増えてきているため、待機児童は着実に減ってきています。しかし、都市部においてはまだまだ待機児童が出ているところもあります。

保育事業の市場環境

若濵:スライドの円グラフは設置主体別保育所数のデータです。平成28年のデータのため実際はもっと増えていますが、全体の中で民間企業、いわゆる株式会社を運営している比率は少ない状況です。

坂本:今までは確か宗教法人や社会福祉法人が運営していたというかたちでしょうか?

若濵:そのとおりです。社会福祉法人が圧倒的に多い印象です。また、いわゆる市立や区立の公立の保育園があります。保育園が急激に増えるということではないですが、「公立の保育園を民営化しましょう」というお話が非常に増えていますので、今後、公立の保育園の民営化が増えてくるのではないかと思います。

保育施設の園児数充足モデルと当社園児数推移

若濵:保育園の新設の計画に取り組んでいますが、それが業績にどのように反映しているかを表しているのが、スライド左側の保育園児数の充足モデルの棒グラフです。

例えば、100人の保育園を作っても4歳児や5歳児は入園しないため、最初の定員は50パーセントくらいで、事業収入、いわゆる売上高は半分くらいです。それが、4年目でいっぱいになるということです。

坂本:0歳、1歳、2歳くらいの子どもが持ち上がることも含めた考え方ですよね。

若濵:そのとおりです。

坂本:コロナ禍で在宅ワーカーも増えたと思いますが、0歳、1歳、2歳くらいからの入園のパターンはあまり変わらなかったのでしょうか?

若濵:今年の4月がリアルなお話になりますのでご説明します。

坂本:入園の時期ですので、そこは大事ですよね。

若濵:新型コロナウイルスの影響はあったと思います。特に0歳児の入所は、新型コロナウイルスが出てくる前と比べると、やや少なかったのではないかと思います。

これは焦って復職しなくてもよいと思いますし、新型コロナウイルスの関係をなしにしても、働き方改革が反映されているのかなとも思います。ただし、期の途中ではそれなりに増えてきています。

坂本:途中から入る方もいるのですね。

若濵:おっしゃるとおりです。4月の一斉入園が大きなところではありますが、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言もあり、そのあたりが分散されたと思っています。今は多少緩和されて、新型コロナウイルスの影響はそれほど大きく出てはいないと思います。

放課後・保育 施設数推移

若濵:2010年からの施設数の推移です。2014年、2015年くらいから急速に運営施設数が増え、現在は183施設の運営を行っています。前年比でプラス16施設です。毎年の拡大により、会社の業績にもつなげていきたいと考えています。

新型コロナウイルス感染症の影響

若濵:先ほどからお話ししていますが、新型コロナウイルスの影響について1点だけご説明します。前期はいろいろなところで新型コロナウイルスの影響を受けましたが、特に放課後事業で影響がありました。

昨年の4月、5月に全国の学校が休みになった影響で、夏休みがかなり縮小されました。夏休みが半分くらいに減ったところが多く、学童の取り組みも変わりました。

夏休み中は朝から子どもたちが来るため、朝から指導員を配属しますが、夏休みが半分になったことで労務費が軽減されました。社員の休みに対しては補償していますが、例えば、毎年恒常的に発生している残業代などがなくなり、そのような意味で労務費が減っています。

今年は通常運転に戻ったため、やや労務費が増えているように見えますが、昨年は新型コロナウイルスの影響によって労務費が減ったということです。

2022年5月期 通期見込

若濵:それを踏まえて、今期の事業計画です。発表しているものとしては、売上高は90億円、営業利益は2億7,500万円ということで、昨年と比較すると売上高は増収となっていますが、利益が減益となっています。

スライド右側の黄色の部分は一昨年の実績です。このあたりで利益率が約2パーセントでしたが、前期も当初は2億円の計画だったものが上方修正したため4パーセントまで上がっています。そのような意味では、新型コロナウイルスは関係なく、事業が計画的に伸びていると捉えています。

2022年5月期 セグメント別 売上高

若濵:3事業のすべてで、継続して売上高は最高となっています。

中期経営計画(2022年~2024年)

若濵:中期経営計画です。今期の売上高は90億円ですが、3年後には110億円まで、営業利益率も約5パーセントまで伸ばして、営業利益は5億円を超えるところまで持っていこうと計画しています。こちらに関しては、売上高を伸ばして、販売管理費を効率化していくことにより、十分達成できる計画ではないかと思っています。

坂本:保育施設の増加数は新型コロナウイルスの影響で足元はブレたかもしれませんが、3年後のお話ですので、年5園程度という部分は、保育園が足りていないため加速する可能性があるのでしょうか?

実は保守的な見通しなのか、加速する場合は人員の確保などは考えているのかを教えてください。

若濵:加速する計画は今は立てていません。これは新型コロナウイルスや保育園の新設の社会環境の問題とは別で、保育の質を高めていきたいというのが一番の思いとしてあるためです。

数を追うのではなく、一つひとつの保育を大事にしていきたいと思っています。選ばれる保育園でなければ生き残れない時代にすでに片足が入っています。そのような中において、「選ばれる保育園作り」を軸足に置き、量よりも質を重視していきたいと考えているため、数の加速はあまり考えていないということです。

坂本:2024年5月に営業利益がかなり伸びる予想になっていますが、こちらの背景も教えてください。

若濵:保育事業・放課後事業は、トップラインが上がっても大きく変動しない事業です。いかに販売管理費率を下げ、業務効率を上げていくかが大事になります。売上が上がっていくことで、そこにかかる固定費も比例して上げてしまったら、当然それはかなわないことです。

特にRPAなどの導入を推進することで、販売管理費率が大きく下がっていくだろうという計画で取り組んでいます。そのあたりが寄与して、営業利益率が上がっていくと見ています。

坂本:つまり、御社の固定費はこの状況である程度はまかなえており、園が増えることで、加速と言ってよいかわかりませんが、この先は営業利益率が増えていく構図で、会社の体系としてはそのようなイメージになるというところでしょうか?

若濵:あわせて、就労支援事業などは人材紹介事業などへのシフトも行っており、そちらも利益率が高いというところがあります。セグメント的には、後ほどご説明する新規事業の「セリオガーデン」という芝生の事業も利益に入ってきます。

2024年 ありたい姿を実現する事業規模、重要指標

若濵:セリオファミリーでは「関わる家族15万人の笑顔をつくる」を目指すべき姿として掲げています。社内で「セリオファミリー」と勝手に定義していますが、従業員と家族、来てくれる子どもたちと家族は、現在約10万人います。それを15万人に増やし、「みんなを笑顔にしちゃおう」と考えています。

すべてが我々の事業に直結していますので、施設数を増やすこと、就労支援事業の派遣スタッフを増やすことなどは、すべてKPIに落とし込んでいます。これらを達成し、15万人の笑顔を作っていきたいということで取り組んでいます。

飯村:就労支援稼働スタッフのうち、主婦率を7割から8割にしたいということですが、主婦が多い利点はあるのでしょうか?

坂本:もともと主婦率が高い理由と、それを引き上げる理由を教えてください。

若濵:主婦の方しか採用しないということではありませんが、冒頭でお伝えしたとおり、1日8時間のフルタイムではなく、1日6時間や週3日から4日などの仕事を増やしています。そうすることで、必然的にフルタイムで働いている独身の女性よりも、家庭をお持ちの主婦の方でプラスアルファの所得として働きたいという方が集まります。収入が目的ではなく、少し働きたい方は、多くいらっしゃると思うのです。

飯村:外の空気って、吸いたくなりますからね。

若濵:自分が築いてきた経験を活かしたい方はたくさんいらっしゃると思いますので、そのような方に合う仕事で、なおかつ企業側にもメリットがある仕事をどんどん増やすところで、他社の派遣会社と違う位置づけにしたいと考えています。

主婦率7割という派遣会社は、世の中にはおそらくないと思うのですが、それをさらに8割にしようという目標を持ち、他社との違いを明確にし、差別化していこうという姿勢です。

飯村:一貫して、ファミリー応援というイメージが湧きます。

若濵:そうですね。

新規事業セリオガーデン施工実績・芝生化による効果

若濵:芝生のお話です。約1年前から、天然芝の販売、施工、管理業務をスタートしました。

ターゲットとして、保育園や幼稚園の園庭、小学校のグラウンドに絞り込んでいるのですが、この事業のベースには、このような場所で芝生化を行っていこうという私どもの思いが込められています。芝生を設置し、管理する事業を進めていきたいと考えています。

保育園の庭を、土の園庭ではなくて芝生の園庭をイメージしていただいて、そこで子どもたちが裸足で走り回り、でんぐり返しして遊んでいる姿を思い浮かべると、非常にワクワクしていただけるのではないかと思います。

子どもたちの成長を考えて、そのような環境を作っていきたいという思いを、事業として行い、ご家族や子どもたちの笑顔をベースに進めていきたいです。今期はまだ小さな計画ですが、もうすでに計画を達成しています。そのような意味では、この事業は非常に注目していただけているのではないかと思います。

私どもが望むべき姿は、ゴルフ場や国立競技場など、そのような場所の芝生を広めることではなく、子どもたちが安全で楽しく過ごせる芝生を敷いて、自然環境を提供していくことです。

飯村:芝生なら、転んでも痛くないですしね。

若濵:スライドでは少し細かくお示ししていますが、熱中症対策などに非常に効果が出ています。データとして体感温度は13度違います。

多くの場所でセリオガーデンの芝生を作っていきたいということで、3年の計画で100施設を作っていこうと考えています。100施設くらいでは偉そうなことは言えませんが、それが1,000施設や1万施設となっていくと、CO2排出における環境問題や緑化推進においても、胸を張れる事業になると思います。このような方面からも、社会に貢献していきたいと考えているところです。

坂本:芝生は確かにすごくよいと私も思いますし、保育園を選択する方の中には、芝生の保育園にしたい方もかなりいると思います。ただし、芝生は管理が難しいと思います。

特に子どもが踏み荒らしたりする時も、根が張っていればよいのですが、それがちょうど生え変わりの時期だったりすると、剥げたりします。このあたりについては、御社の芝生は何か工夫などされているのでしょうか?

若濵:芝生の品質について、一番耐久性の高い洋芝のティフトンを使っているのですが、特徴としては、維持管理が難しいところがあります。そこに庭師のごとく人が張り付いたら、当然コストがかかるわけです。

それを今、私どもはロボットを活用して芝生を管理してく体制をとっています。スウェーデンのメーカーと販売契約を結び、お掃除の「ルンバ」のようなものを、芝生に置くわけです。そうすると毎晩、ロボットが芝刈りを行ってくれます。

坂本:メンテナンスしてくれるのですね。

若濵:手がかからないということです。

飯村:種をまいてくれたりしてくれるのですか?

若濵:芝刈りをしてくれるのです。実は、毎日芝刈りをすることによって、芝を刈る量が少なく済むことになり、芝の耐久性がかなり上がるのです。

飯村:伸びっぱなしの芝生を踏み荒らすのと、整えられているところを踏むことは違うということですね。

若濵:まったく違って、人の手を介さずロボット管理していくことにより、コストも抑えながら事業を行っていけるのです。芝生が強くなるというような技術的なところも含めて、この方法に特化して進めていこうと考えています。

ご指摘いただいたように、「子どもは遊んでは駄目」という芝生では意味がありません。「どんどん遊べ」と言える、耐えられる芝生を広めていくことが、大きなノウハウとなります。

自社の保育園はさておき、他の保育園にも徐々に増やしていきたいと思っています。保護者がそのような芝のある保育園に預けたいと思えるような、そして、保育園の差別化として子どもたちの生活環境の向上も考えて、各保育園で連携して進めている状況です。

飯村:芝生1つで印象がまったく違いますよね。

坂本:差別化について、どろんこ会グループの「どろんこ保育園」などはかなり特徴的ですが、他の保育園はそれほど違いがなく、一緒に思えます。特に都心であれば、「少し庭があるだけで芝があるのとは違う」という現状もありますよね。

若濵:差別化について、事業構造的には施工の費用もあるのですが、維持管理を庭師ではなくてロボットが行うことにより、事業収益になっていくかたちをとっています。

坂本:新しいビジネスモデルですね。

若濵:これを第4の柱となるように育てていきたいということで、ぜひご期待ください。

中期経営計画 事業戦略

若濵:中期経営計画についてです。全体像のイメージとして、芝を扱う造園業はたくさんあるのですが、教育施設や福祉施設に特化することで、ガーデンの事業は新たな分野のマーケットリーダーになっていきたいと描いています。

保育事業については、保育園にも、いろいろな新しいサービスを付けています。民間企業としての私どもの強みには、さまざまな企業とコラボを進めている点があります。

例えば花王グループと、おむつを定額で提供するサービスを進めるなど、このようなことも実施しながら、地域ナンバーワンを目指していく方針です。

ESGへの取組み

若濵:ESGへの取組みについてです。そもそも私どもの事業は、さまざまな社会貢献をテーマとして取り組んでいます。そのような意味も含めて、ESGに関しても積極的に行っています。

1つご紹介すると、障害者の方の雇用促進を行っています。その中で私どもは今、「tiku☆tiku」という、保育園向けの手作りおもちゃ工房を、障害者のみなさまと作っています。

手作りおもちゃの製作工房を作り、子どもたちが喜ぶ手作りおもちゃを各保育園に展開しています。

SDGsへの取組み

若濵:SDGsもESGと同様に、会社の事業として力を入れていきたいところです。ただし、企業を運営していく上で、1つの事業を会社の成長にFIXさせていかないと、進めている事業のモチベーションも上がらなくなります。その点も加味して、先ほどのセリオガーデンなどは、SDGsの一環として取り組んでいます。

中期経営計画2022~2024 株主還元方針

若濵:還元方針について、2021年5月期の配当性向は約20パーセントで、今期に関しては、7円の配当を維持したため、約25パーセントとなります。還元の基本方針としては20パーセントをベースに考えています。

ご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:放課後授業について

坂本:「放課後事業についてです。各自治体から受託運営で行われているということですが、受託運営する際の御社の強みはあるのでしょうか? 自治体が民間に委託した結果、提供されるサービスは劣化し、利用者が減ってしまったというお話も知人から聞いています」という質問をいただいています。放課後事業について教えていただけますか?

若濵:サービスが劣化してしまったというお話は、非常に残念に思います。当社が運営している施設ではないことを祈っています。

坂本:そうではないと思います。

若濵:お答えしたい内容はたくさんあるのですが、まず前提として、サービスが劣化する状況はあまりないと思っています。逆に、専門事業者に任せたいという実態もあります。私どもは、コンペで案件を獲得しています。そのため、よいサービスでないと生き残れない状況ですが、私どもには、放課後事業だけでも143施設の多くの実績があり、これは1つの強みとなっています。

保育園を運営していますので、看護師も、栄養士もいます。専門的な職員が多くいますので、彼らとの連携によって、子どもたちの安全面や健康面などの管理もできます。

また、就労支援事業や派遣事業も行っていますので、BtoBの取引や大手企業とのネットワークがあります。例えばALSOKに安全教室を行ってもらっていますが、そのような放課後のプログラムを実施できるのも、パートナー企業との連携によるものです。安全教室のようなものは子どもたちが喜びます。

また、子どもたちがみんなでSDGs活動を行っています。子どもたちは「何なの、SDGsって?」と思っているかもしれませんが、「SDGsもやろう」と参加してくれています。そのような運営を通して、差別化を図れているのではないかと思います。

坂本:安全教室にALSOKが来ている姿は、おもしろいですね。「教室にキッザニアが来た」と子どもたちが喜んでいるようなイメージが湧きます。

飯村:制服を着た大人が来るだけでも、子どもたちにとってはすごくよい刺激になりますね。

若濵:私どもが取引している企業は、CSRの活動でそのような活動も非常に積極的にされています。企業のご協力をいただき、「一緒に組んでやりましょう」ということで、子どもたちが喜んでくれたらよいと思います。

坂本:おもしろいと思います。放課後事業(学童クラブ運営)について、理解していない方はかなりいると思います。保育事業は「保育園だね」と言うとわかりやすいのですが、学童については、私たちの小さい頃には専業主婦のお母さまが多かったということもあり、学童はそれほど使わなかった記憶があります。

飯村:私は鍵っ子でしたが、学童には行ける子と行けない子がいました。

坂本:学童に行かれていたのですか? 私は、行っている子たちはかなり楽しそうだと思っていました。

飯村:そのとおりです。うらやましかったのを覚えています。

質疑応答:学童の人員について

坂本:学童についてですが、人員はどのくらい割いているのでしょうか? 保育園では法的に、「0才児だったら何人につき何人」というかたちで割合があるのですが、一般的な学童の教室の場合は、どのくらいの人員が配置されるのでしょうか?

若濵:学童も基準値があります。1教室がだいたい40人で、小学校の教室ほどのサイズで最低2名という配置基準になるのですが、それ以外にも支援を要する子どもたちがいます。さまざまな状況の子どもたちがいますので、雇用の頭数で言いますと、1教室では10人以上の雇用を実施しています。

常時出勤するのが5人から6人、7人など、それくらいの人数で勤務しているケースが多く、かなり手厚く運営しています。

飯村:先生の人数のお話を聞いて、多いなと思いました。

坂本:昔は少なかったでしょう?

飯村:それほどいなかったです。

坂本:「勝手に遊んでください」といった状況でしたね。

若濵:安全面で、非常に今は厳しい環境ですので、配慮しています。子どもたちは外遊びもしますし、グラウンドでも遊びます。教室の中にいる子もいます。

指導員も教室、グラウンドにいますので、自治体にとっても民間に委託して手薄になることはあり得ないため、手厚くしていきます。また、勉強を教える専門の指導員がいるなど、このようなサービスも行っています。

坂本:それはよいですね。公立の学童は、「勝手に勉強してください」で終わりです。

若濵:私どもは本部に外国人スタッフもいますので、順番に配置して、英語のレッスンという感じではないのですが、子どもたちが英語を学べるサービスも行っています。

坂本:ALT(外国語指導助手)のようですね。

飯村:日常会話の中で英語が学べるのは、絶対に楽しいと思います。

坂本:おもしろいですよね。

若濵:子どもは抵抗なく、外国人の方とコミュニケーションを取ることができます。

質疑応答:学童と保育事業の利益率について

坂本:保育事業は、補助金がありますが、学童(放課後事業)と保育事業の利益率は、どちらが高いのでしょうか? 

若濵:自治体によってずいぶん違いますが、足元は、保育のほうが高いです。学童の放課後事業は、おかげさまでかなり利益率が上がってきていますので、これからは期待できると思っています。

質疑応答:起業の背景について

飯村:大変素朴な疑問ですが、おおよそ20年前に、このような女性支援事業の会社を立ち上げた背景やきっかけは何だったのでしょうか?

若濵:いろいろな思いが複雑にあります。1つは、私はSERIOを創業する以前に、一般的な人材派遣会社に勤めていたのですが、その時には結婚や出産などで仕事から離れていく女性が多くいました。もったいないと思い、そのような方たちが活躍できる環境が必要だと思っていました。

さらに2つ目の思いとして、今後は労働力が明らかに不足していくと言われていたこともあり、女性のセカンドステージでどれだけ活躍できる環境が作れるかが、国の労働力を確保していく上でとても注目されていくだろうという目線もありました。

そして、派遣会社はたくさんあったため、「だったら、その目線に完全に特化して起業してしまおう」という思いがありました。

質疑応答:補助金の会計処理について

坂本:前回、ご出演いただいた時もお伺いしたのですが、補助金の経理の決算の取り扱いについて、他社などは、特別利益などを最終的に乗せてくる処理をしているのですが、御社はそうした処理はしていません。そのあたりの会計方針を取られた理由を教えていただけますか?

若濵:一般の投資家の方ほどわかりづらい面もあるのかもしれないため、補助金についてご説明します。運営に関わる補助金と、保育園の建物の建築にも補助金が出ます。建物を作った時にだけ、1年限定の補助金がドンと出る仕組みです。

それを業績に反映をさせるのはどうなのかという判断があり、私どもは補助金を業績に反映させずに、実際にかかったコストと圧縮して計上しています。

可能な限り営業利益が経常利益となるように、本業で稼ぐ力を高めていくところがとても大切だと考えています。どちらが正しい、正しくないということはないのですが、一時的な補助金で収益を出す構造より、よいかなと思います。

坂本:本当にそう思います。

若濵:シンプルに、汗をかいた分をより反映するかたちです。

坂本:そちらのほうが、投資家は見やすいです。逆に、最終利益、PERだけを見ると「異様に低い」と思うのですが、営業利益を見ると「何だこれ?」と思うようなことがありますので、この方針は非常によいと思います。

質疑応答:「こども家庭庁」について

飯村:会場から「『こども家庭庁』が創設された場合、御社にとっては追い風となると思いますが、こちらに関してはいかがでしょうか?」という質問が来ています。

若濵:名前がようやく決まったという感じがありましたね。

坂本:もう少し先になるかと思いました。

若濵:私の感覚では、「こども庁」のみでもよかったのではないかとも思いますが、幼稚園が外れるということで、とても驚きました。

ただし、今、私どもは業界団体も作っています。1社だけでは「何かプラスになるか? マイナスになるのか?」という目線になりがちですが、それだけではなく、保育園の業界全体がよりよくなっていくことを、国としっかりと目線を合わせていく必要があると考えています。

私どもも社団法人などを作り、「こども家庭庁」の準備室などにもいろいろな意見、提案をしています。わからないところもたくさんありますが、事業でプラスになるというよりも、国が現場もしっかりと理解できるようになることを期待しているところです。

飯村:たくさん話題に上がりましたが、もっとみなさまが自分の課題として捉えられる世の中の雰囲気になっていくとよいですね。

質疑応答:事業成長性と人材配置について

坂本:「今後の事業成長性と人材配置などの観点について質問です。保育園に勤める方のキャリアでは、園長が最終的な1つのキャリアだと思います。何パーセントが園長までキャリアを続けるものなのでしょうか? 保育園に勤め続ける人はあまり多くない印象ですが、園長の確保は難しいのでしょうか? 保育士を雇用する場合、園長までキャリア育成することは、難しいものなのか教えてください」という質問です。

若濵:この質問は、まず「そもそも保育士の定着率はどうなのでしょうか?」というところから触れていかなければならないと思います。現在の定着率は80パーセントの後半くらいで推移しています。

90パーセントくらいに乗せたいところもありますが、圧倒的に女性が多い職場の中で、産休や育休で辞める職員がほぼいないことが当社の自慢であり、ほとんど復職します。復職しやすい制度をどんどん盛り込んで作っており、辞める人はほとんどいません。

園長は最終キャリアですが、実はそうでもなく、園長志向の人と、現場で保育をしたい人で分かれているのです。ですので、園長は、保育士の中から人材育成して登用していく体制をとっていますが、保育士全員が園長になりたいという状況でもないと思っています。

坂本:かなりキャリアがないと厳しいは思いますが、園長は、すぐになれるものでしょうか?

若濵:キャリアがないと厳しいと思いますし、大規模なところでは30人くらいの職員を束ねていく力も必要です。

子どもたちが多くいると、保護者の対応もあります。園長は大変な仕事だと感謝しています。そのような意味では、コミュニケーション力などのヒューマンパワーなどはかなり必要になります。

飯村:保育士が復職のしやすい環境とは、とてもすばらしいですね。

若濵:育休の期間を延ばしたり、短時間就労期間などの施策を通して、「仕事と家庭の両立応援」を進めているため、社員に対しても、同じようにケアしていきたいところです。

飯村:私の妹は保育士ですが、「順番だから、出産を待ちなさい」と園から言われたと聞いています。

坂本:それはひどいですね。

飯村:現場レベルで、いろいろあるとは思うのですが、なかなか難しい状況もあります。本当に人が少ないところもあるかと思います。お話を聞きながら、「どんどん環境がよくなるといいな」と思いました。

質疑応答:自治体向けの参入障壁について

坂本:自治体向けの参入障壁についてです。御社はいろいろな事業で自治体から仕事を受けていますが、それは今までの実績が背景になっていると思います。実績は自治体の評価基準になるのでしょうか? 

若濵:語弊があるかもしれませんが、実績ありきだと思います。

質問に対しての回答とは異なるのですが、今私どもは保育園とは別に、子育て支援サービスに力も入れ始めています。どのような施設かと言いますと、子どもを預かる保育園ではなく、親子で来てもらうものです。

親と子どもや赤ちゃんに一緒に来てもらい、そして保護者に対して子育てコーディネーターが子育て指導を行っていくなど、保育園に預けていない家族が集う場所を提供しています。

このような場所が実は全国にたくさんあるのですが、このサービスの受託をすでに何ヶ所かで始めています。子育て支援を保育園というカテゴリではなくて、子育て支援サービスというカテゴリで展開します。

待機児童の問題はいずれ解決するだろうと見ていますが、もっと大切なのは、子育ての孤立化への対応だと考えています。孤立化は、一番根にある社会問題だと捉えています。

悪い話では、子どもを虐待したりなどという例があるわけです。そのような家庭を孤立させないように、核家族で子育てしているお母さまを孤立させない支援施設を、各地に作っていきたいと思っています。

坂本:私の住んでいる自治体で、そのような公的な支援施設があって、かなり利用しました。他の地域にはないところもありますので、増えるとよいですね。