会社概要

五十嵐幹氏(以下、五十嵐):株式会社クロス・マーケティンググループ代表取締役社長の五十嵐幹でございます。本日は多数の方にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。さっそくですが、本日の流れについてご説明したいと思います。 

最初に、会社理解ということでグループ概要・事業内容について、その後、前期実績、今期第1四半期の状況、中期経営計画についてご説明します。

グループ概要・事業内容です。会社の基本概要ですが、創業は2003年4月1日で、本年度で創業18年を迎えました。事業内容については、後ほど詳細にお伝えしますが、デジタルマーケティング事業、データマーケティング事業、インサイト事業の3つの事業を展開しています。

グループ会社は、連結子会社31社、持分法適用関連会社2社の33社で事業を推進しています。従業員数は全体で1,354名、日本国内は約850名、海外は約500名の従業員を抱えているグローバル企業でもあります。

代表取締役紹介

五十嵐:私自身の紹介をさせていただきます。東京都の出身で、1973年生まれの今年48歳になります。もともと大学時代から起業家志望だったため、就職氷河期ではありましが、大学を卒業した1996年に日本アジア投資というベンチャーキャピタルに入社しました。いわゆるベンチャー企業に投資する会社からこの業界に入ったということです。

2000年になると、当時はネットバブルの時代で、インターネット企業が数多く生まれましたが、その時の仲間と一緒にネット企業を創業し取締役に就任しました。

2003年にクロス・マーケティングを創業し、2008年には創業から5年で東証マザーズに上場しました。その後10年間を経て、2018年には東証一部へ市場変更しました。私自身、26歳から取締役を3年弱、社長を19年ということで、これまで延べ22年間、経営に関わってきたことになります。

外部の仕事として、東証一部上場企業でオンライン英会話を提供しているレアジョブの社外役員も務めています。こちらは、上場前から社外役員に就任しています。また、業界団体として、日本マーケティングリサーチ協会の副会長を務めています。

事業セグメントと主なグループ企業

五十嵐:私どもの事業についてご説明します。今年、決算期変更とともに、事業区分の見直しを行い、デジタルマーケティング事業、データマーケティング事業、インサイト事業の3つに変更しました。

変更の背景として、私どもはネットリサーチのビジネスで創業しましたが、すでにデジタルマーケティング事業が最大の売上を占めています。DX化の流れが加速する中で、グループ全体としてどこに向かっていくか、組織の体制も含めて、投資家のみなさまによりわかりやすい区分にする必要があると思い変更しました。

それぞれの事業の規模ですが、昨年の売上高はデジタルマーケティング事業で約68億円、データマーケティング事業で65億円、インサイト事業で59億円となっています。今期は、グループ全体で売上高230億円を目指している中で、データマーケティング事業については、売上高100億円に到達する見通しで、一番成長率が高い事業になっています。そのような事実も踏まえて、主力事業として位置づけています。

企業理念

五十嵐:当社の企業理念は「未来をつくろう。」です。私どもの業態は、マーケティング支援ビジネスです。つまり、消費材を提供しているメーカーや、サービスを作っている会社が、よりよい商品を世の中に出していくことができるように支援することです。

「よい商品を社会に届けることでよりよい未来を作っていく」という気持ちを込めて「未来をつくろう。」を企業理念として掲げています。

主要な事業展開 及び 実績推移

五十嵐:上場以降の沿革についてです。上場時には売上高27億円ほどの会社でしたが、今期は230億円を目指して進んでおり、上場後は売上高が8.5倍も成長していることになります。

成長の背景として、もともとベンチャー企業として常に成長を意識しながら事業展開してきましたし、会社のカルチャーとして新しいことにどんどん取り組んでいく歴史がありました。そのため、新しい事業領域への進出ということでは、自社の立ち上げも含めて、M&Aもこれまで11社成功させています。

スライド下段に、どのようなかたちで事業を伸ばしてきたのかを矢印で記載していますが、創業時はネットリサーチというインターネット上で消費者の意見を集めるビジネスでスタートしました。その後、一番下の矢印部分に当たる、総合マーケティングリサーチ業態を確立するため、新規領域拡大に向けてM&Aも積極的に進めてきました。

2012年頃からは、世の中全体がスマホにシフトし、インターネットがモバイルインターネット、アプリに移行し始めます。そのような領域に対して、自社内で完全に開発できるような体制を構築すべくITソリューション事業を始めたということです。

また、海外展開も積極的に進めており、現時点で11ヶ国に展開しています。展開エリアとしては、中国・東南アジアを中心に、イギリス、アメリカになります。消費市場が大きく伸びていくアジア大陸に基盤を作ることで、日本企業を含めたグローバル企業の海外進出のお手伝いをできれば、との狙いがありました。

まず、2012年に中国に展開し、その後、シンガポールに進出しました。Kadence Internationalという8ヶ国(株式取得当時)に展開している会社のM&Aを行い、グローバルの基盤を作りました。

2015年からはさらにデジタルマーケティングの領域を広げるために、新規事業として、いわゆるネット広告代理店のD&Mを設立しました。また、昨年は「モラタメ」というメディアを展開しているドゥ・ハウスをグループ会社化し、マーケティングソリューションの拡充を図ってきました。

このようなかたちで、積極的に事業領域を広げるべく、明確な意志を持って行動している会社であるとご理解いただけたらと思います。

事業の変遷

五十嵐:事業の変遷についてご説明します。スライド左上に「ネットリサーチ」とありますが、先ほどお伝えしたように、当社は消費者からアンケートを集める事業で創業し、そこから総合化して、マーケティングリサーチの業態を確立しました。その後、ITソリューション部隊を付け加え、マーケティングソリューションへと展開してきました。

今期からは「マーケティングDXソリューション」と銘打ち、DX領域においてグループ全体で保有しているアセットを、より総合した1つのソリューションとして提供していきたいと思っています。デジタルシフト、DX支援の強化を会社全体で明確に進めていくという意志のもと、現在取り組んでいます。

グループ全体の強み

五十嵐:クロス・マーケティンググループの強みは大きく4つあります。1つは「800万人超のパネルネットワーク」を保有している点です。これは、インターネット上の自社メディア、もしくは提携しているメディアを合算すると、800万人超の方に自由にアンケート依頼でき、プロモーションができるアドネットワーク的なものになります。

また、リサーチ会社ならではですが、2,000項目にわたる詳細なデータを保有しているため、ターゲットを詳細に絞った広告運用が可能なメディアになっています。

人材面についても、近年は、データサイエンティストを含めたデータアナリティクスという技術が求められる時代になっていますが、弊社ではグループ全体で1,300人の人員を有する中で、300名超のリサーチャーと言われるアナリスト組織を保有しています。このように専門知識がある人材を活用することで、お客さまのマーケティング課題を一緒に解き明かしていくことができます。

また、5,000社、72,000窓口の顧客基盤をグループ全体で保有しています。私どものお客さまは、特に消費材メーカー、もしくはデジタル部門の会社が非常に多いのですが、約5,000社、マーケティング部門で72,000の大きな窓口を抱えているため、グループ全体の商品にクロスセルを掛けていくことにより、会社の成長に寄与していきたいと思っています。

DX時代を迎える中で、社内のエンジニア組織も非常に重要になってきています。私どもは100名超のエンジニア組織を内部に抱えていますので、基本的にはグループ内で保有しているソリューションに関しては、自社開発で行っています。

グループ全体の強み【パネルネットワーク数】

五十嵐:グループ全体の強みであるパネルネットワーク数です。スライドに記載している500万人という数字は、アンケートに回答してもらえる会員数になります。最近は、毎年50万人弱ずつ増えており、引き続き膨大なデータベースを確保しながら、世の中のマーケティングニーズに応えていきたいと思います。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):このパネルは御社が保有しているのか、それとも御社自身はパネルを保有せずに、提携会社が持っているものを活用するのでしょうか?

五十嵐:もともと当社の成り立ちとしても、パネルに関しては外部との提携により始めた会社になります。そのような意味合いでは、やはり自社のアセットに固執するよりは、お客さまのマーケティング課題に基づいてどれほどの人が必要なのかという点をターゲットに置きながら、提携の会社数を増やしています。

一方で、自社基盤としても自社パネルを抱えておく必要があるため、自社パネルとして現在約300万人抱えています。外部提携は500万人です。今後は、自社パネルと外部の提携パネルを含めて、約1,000万人規模に育てていくことを1つの指針としています。

坂本:12ページのグラフを見ると、近年パネルネットワーク数はかなり増えていますが、これは提携会社の数が純粋に増えているのか、それとも提携会社のパネルが増えているのでしょうか?

五十嵐:こちらに関しては、両方の側面があります。当然、提携している会社でも毎年会員数の増加策を講じていますし、私たちとしても年間2、3メディアを新規に追加している状況です。

当社グループのビジネスモデル①

五十嵐:当社グループのビジネスモデルの構造についてご説明します。スライド左側に顧客のマーケティングプロセスとありますが、新商品の開発から世の中に広めていく流れを表しています。

初めに、データマーケティング事業で消費者の声を集めるわけですが、例えば新商品を開発する際に、どのような商品を求めているのか消費者に聞きします。もしくは既存商品について、よいところと悪いところの聞き取りを行い、次の新商品開発の方向性を示すデータを集める作業を行います。

こちらの事業領域では、自社のネットワークにあるアンケート対象者524万人を活用し、年間約1万件のリサーチ案件が動いています。

次のインサイト事業は、上がってきたデータをマーケティング課題に沿って分析し、マーケティング施策の提言を行うコンサル業務になります。生活者インサイトの分析、理解のために、具体的なマーケティング施策のレポートを作り、お客さまにコンサルしていきます。

最後のデジタルマーケティング事業は、施策の実行支援です。当社では、特にデジタルマーケティング事業におけるビジネス展開の際には、ウェブシステムやアプリの開発から保守、運用、さらにプロモーションネットワークを使った販促活動まで、全体的に一貫して支援できる体制ができあがっています。

当社の強みは、代理店というポジションではなく、それぞれの事業が自社サービスとして展開していることです。お客さまのマーケティングプロセスに沿って、どの段階でも発注いただけますし、ブランド全体に対してサポートして欲しいということであれば、グループ全体のアセットを使ってご提案できます。

当社グループのビジネスモデル②

五十嵐:ビジネスモデルのリサーチ機能について、当社では消費者理解のためのマーケティングリサーチ機能をフルラインで持ち合わせています。デジタル上におけるマーケティング実行支援まで、トータルでサポートできる体制を構築している会社は大変少ないと思います。

それぞれの領域においては競合他社が数多く存在していますが、一貫体制ができあがっており、独自のポジショニングを作りつつあるのは当社だけだと考えています。

デジタルマーケティング事業(事業内容)①

五十嵐:それぞれの事業について具体的にご説明します。まずは、デジタルマーケティング事業におけるSI事業、いわゆるシステム開発事業についてです。

当社は金融機関向けのアプリを数多く作っています。スライドに記載のとおり、SBI証券さまや大和証券グループさまの「CONNECT」など、さまざまな会社のスマホ証券アプリを作っています。

ネット証券の口座数の60パーセントの方が私どものアプリを利用している点からも、金融機関のアプリを開発できるほどのシステムの堅牢性、安全性を有していることを強みとしています。そのようなノウハウが蓄積されているため、近年ではカード会社、航空会社、銀行向けのアプリなど、システムが落ちることにリスクがあるアプリ等を作っています。

デジタルマーケティング事業(事業内容)②

五十嵐:メディア事業に関しては、昨年ドゥ・ハウスを買収しました。こちらは「モラタメ.net」と「テンタメ!」というメディアを運営している会社で、日本最大のサンプリングメディアでもあります。

サンプリングメディアとは、会員になることで、世の中に出たばかりの新商品を配送料のみでもらえるというサービスです。みなさまもよく店頭などで、新しいお菓子や飲料をもらったことがあると思いますが、それをデジタル上で展開している会社になります。

こちらのサイトを当社のお客さまである消費材メーカーが使うメリットは、口コミを初期の段階で大量に集めることができ、またネット上での販促に使えるという点にあります。インターネット上における口コミの重要性が高まっていることもあり、新商品ができた段階で使っていただけるサイトに育っています。

年間サンプリング数は約120万件で、年間社数は150社、600商品以上をご紹介しています。この数字はいわゆるトライアルメディアとして、日本最大級の規模となっています。今年6月にテレビCMも放映し、メーカーを含めて、新しい商品が出たらこのメディアを使っていこう、とニーズが増えてきていることを実感しています。

デジタルマーケティング事業(事業内容)③

五十嵐:デジタルマーケティング事業における広告事業についてご説明します。当社は最大800万人にプロモーション可能なメディアネットワークを組んでいます。スライドに記載しているのはその一部であり、niftyやセゾンカードなど、計30社ほどのメディアと提携関係にあります。

特徴の1つとして、シングルソースですべてつながっているため、非常に膨大なデータベースになっているということです。また、リサーチ会社ならではの強みとして、この800万人のユーザーの、約2,000項目にわたる詳細なデータを保有しています。

例えば、どのような自動車を持っているのか、タバコを吸うのか吸わないのか、また病気の症例などのさまざまなデータです。そのため、かなり詳細なターゲティングができますし、反響のよいプロモーションネットワークとして非常に活用されてきています。

デジタルマーケティング事業(事業内容)④

五十嵐:データマーケティング事業とは、先ほどご説明したようにネット上でアンケートを集めるというものです。自社パネルとして、リサーチパネルという会社を持っており、約300万人のモニターを管理しています。

消費者の方にどのようなメリットがあるのかと言いますと、こちらに登録し、アンケートに回答することで、お金に代わるポイントを謝礼というかたちでもらうことができます。

インサイト事業(事業内容)①

五十嵐:インサイト事業の海外拠点についてご説明します。現在、世界11ヶ国20拠点以上で総合的なマーケティングサービスを提供しています。東南アジア圏内についてはほぼ展開が終わり、アメリカとEUでは、アメリカはサンフランシスコとボストン、EU圏内はロンドンに拠点を構えています。

狙いとしては、いわゆるグローバル企業の本社があるエリアに営業拠点を出しながら、今後伸びてくるアジア大陸で、マーケティングリサーチができる環境を提供させていただくということです。

坂本:リサーチ手法というのは、日本と海外では異なるのでしょうか? また、海外は現地企業と日本企業のどちらの利用が多いですか?

五十嵐:まず調査手法については、日本はオンラインアンケートが完全に主流になっており、調査のうちの50パーセント以上がオンラインアンケートに移行しています。日本人ならではの特徴として、まじめにアンケートに回答していただけるという点があると思います。

飯村美樹氏(以下、飯村):確かに嘘をつかないで書きますよね。

五十嵐:そうですね。

坂本:遊びで「これだろう」と付けないですね。

飯村:そういうことはしないですね。

五十嵐:非常に生真面目な国民性ということです。

坂本:一方、海外はどうでしょうか?

五十嵐:海外はやはり対面調査が主体になっており、誤回答、または事実と異なる回答をされる方も存在していますし、本人確認がかなり難しいです。そのような意味で、実際に会場に集まっていただき調査を行うこともあります。

坂本:そこが違うのですね。

インサイト事業(事業内容)②

五十嵐:誤回答などがあるため、スライドの写真のように海外でも対面調査のためのインタビュールームや、電話調査をする拠点を有しているところもあります。さらに、こちらは人形町ですが、調理可能な調査会場があったりします。

飯村:調理可能なお部屋ですか?

五十嵐:食品メーカーなどが実際に味覚テストを行う際に使用します。

坂本:試食してから答えるということもあるのですか?

五十嵐:おっしゃるとおりです。新商品を出す段階で、食品メーカーであれば味付けをもう少し濃くする、薄くするといった内容から、飲料メーカーであれば炭酸の量の微調整などを行います。やはり、日本と海外の方では味覚が全然違うため、このようなテストチェックをした上で最適なものを市場に出していきます。

飯村:その場でアンケートを集めて、その内容をすぐに試作品に反映できるということですか?

五十嵐:そのとおりです。新商品が出るためには、実はこのようなネット上のアンケートだけではなくて、さまざまな調査のステップがあります。スクリーニングを受けたものだけが新商品として出されていく流れとなっています。

坂本:実際にこのような部屋があって、その奥に調査対象の方がいらっしゃるのですね。

五十嵐:おっしゃるとおりです。

飯村:これはおもしろいですね。

Executive Summary

五十嵐:ここからは2021年6月期の通期連結決算概要についてご説明します。まずこちらは半期決算になっており、例年は、2020年までは、1月から12月までが決算期となっていました。2021年からは、半年間で決算期変更を行い、新年度は2021年7月から1年間というかたちになっています。したがって、今からお話しする内容は半年間の実績とご理解ください。

2021年6月期通期連結決算のポイントをご説明します。まず、1月から6月の半期実績として過去最高売上・過去最高利益を計上しています。売上高は前年同期比で140パーセント、経常利益は前年同期比で約600パーセントです。

昨年同時期と言いますと、コロナ禍が始まりかなり業績的に影響を受けましたが、クロス・マーケティンググループ全体としては今年の初めからほぼ回復し、さらに前年を上回るかたちで過去最高売上まで到達しています。

また、海外においては、大型案件の計上、各拠点の固定費削減等の推進により、かなり筋肉質な状態を作り上げています。日本以上に海外のほうがダメージは大きく、みなさまもご存じのとおり完全なロックダウンなどもあり、かなりビジネスが進めづらい環境がありました。しかしながら、その海外拠点においても、1月から6月の累計で黒字化を達成しました。

これらの結果を受け、2021年6月期の期末配当予想を0.3円増配し、4.0円というかたちで配当している状況です。

連結決算概要(2021年1月~6月)

五十嵐:2021年6月期通期連結決算の実績についてご説明します。半期実績の比較ですが、売上高は前年の77億円から107億円、経常利益は大幅に拡大しており前年の1.9億円から10.5億円と、過去最高売上・過去最高利益を計上しています。

2022年6月期1Q連結決算概要①

五十嵐:すでに新しい年度に入り、第1四半期の決算概要も出ているため、そちらの進捗状況をお伝えします。

第1四半期も引き続き好調な状況で、前年同期間の2020年7月から9月と比較して、売上高は1.5倍、営業利益は3.4倍に拡大しています。引き続き、過去最高売上・過去最高利益を達成している状況です。四半期単体として、売上高は53.5億円、経常利益は4.5億円というかたちになっています。

2022年6月期1Q連結決算概要②

五十嵐:同時期における過去との比較です。スライドは、2017年以降における7月から9月の業績を示しています。従来、7月から9月と言いますと、夏休みを挟みマーケティングビジネス全体としては閑散期です。しかしながら、冒頭にお伝えしたとおり、主力事業をデジタルマーケティングにシフトしたことも含め、比較的、季節の繁閑の差がなくなってきました。

また、コロナ禍の中、かなり会社全体として筋肉質な組織を作り上げているということもあり、閑散期でも利益を創出できるような組織力が付いてきました。したがって、閑散期でも、第1四半期の売上高は4.9億円という結果となっています。

2022年6月期1Q連結決算概要③

五十嵐:2022年6月期通期連結業績予想に対する進捗状況ですが、今期から翌四半期の見込みを開示しています。過去は季節繁閑が大きかったのですが、デジタルマーケティング事業が主力となったこともあり、第2四半期の見込みも出しています。

今、足元の状況においても非常に堅調に進捗しており、10月から12月で売上高は66.5億円前後、営業利益は7.6億円前後です。半期実績で、売上高は120億円前後、進捗率は52パーセント前後の着地となる見込みです。

営業利益、経常利益については、それ以上に順調に進捗しています。営業利益は半期で12.5億円前後、経常利益は12.0億円前後となっています。

スライド右側に今期の業績予想を記載しています。売上高230億円に対して進捗率は52パーセントです。営業利益については、予想の19億円に対してすでに12.5億円まで半期で見込めているということで、比較的好調に推移していくのではないかと考えています。

データマーケティング事業①

五十嵐:事業関連トピックスとして、データマーケティング事業についてご説明します。私どもは、今年の初めから、DX領域においてさらに積極的に投資を行うということで動いています。6月にはLINEリサーチとの提携も行いました。世の中全般として、若い方々が一番リーチしているのが「LINE」ということもあり、調査基盤として若い人たちもキャッチできるような体制を作るということで、LINEリサーチの販売にも入っているということです。

坂本:若い方への幅広い調査はマーケティングをする上でもかなり大事なところだと思います。若い方対象のアンケート収集ということでは、メールは使わなくなり接点が「LINE」に変わったことから選択したのではないかと思いますが、しっかり回答してくれますか?  また、若者特有のものはありますか?

五十嵐:やはり質問文が堅苦しいときちんと答えてくれないということで、言葉遣いを変えなければいけません。

飯村:確かにそうですね。非常に納得できます。

坂本:ご苦労されているのですね。

五十嵐:時代の流れと言いますか、若い方で特に25歳以下、25歳から40歳手前、40歳以降の方では、それぞれ、インターネットという区分の中でもメディアの接触の仕方が異なっています。

いわゆる40代以上の方はパソコンを中心としたインターネットとの接触で、中堅層においてはスマートフォンです。特に若い方は完全にソーシャルメディアに移行しています。そのため、配信方法を工夫し、適切に対処しながらアンケートを集めています。

データマーケティング事業②

五十嵐:LINEリサーチにおいてもいろいろなサービスを拡充しているというご紹介です。

デジタルマーケティング事業

五十嵐:デジタルマーケティング事業について、ご説明します。グループ全体としても、いわゆるD2C、要するにECの事業化支援ということで、「SPACESHIPS」という枠組みを作っています。リサーチ、システムデザイン、開発、販促という一貫したかたちで、事業会社がEC事業に進出しやすいような状況作りを、グループ全体のアセットを使ってサービス化しているということです。

何が一番違うかと言いますと、やはりマーケティングリサーチの機能を明確に付加できるということで、正しい仮説、検証に基づく正しい開発ができることです。ここの部分が競合他社との大きな違いになっています。

2022年6月期連結業績予想

五十嵐:2022年6月期連結業績予想についてご紹介します。今期は中期経営計画の1年目ということで、グループ全体においてDX、デジタルシフトへ積極的に展開しています。売上高300億円に向けた初年度というかたちで、過去最高売上・過去最高利益を目指しています。今期予想については、通期で売上高230億円、営業利益19億円を目指して事業を進めています。

特徴は、先ほどご紹介しましたが、デジタルマーケティング事業においても売上高は100億円に到達ということで、かなりの売上が稼げるような事業体に育ってきている状況です。

株主還元・配当金額

五十嵐:株主還元と配当金額についてご紹介します。私どもは、投資家のみなさまに安定した配当を継続して出していこうという方針を掲げています。配当性向15パーセント前後を目安にし、継続的に増配を前提とした安定配当しているということです。

今期においては、中間と期末で4.1円ずつ、全体として8.2円というかたちで配当を決めました。また、業績の進捗に基づき、業績がかなりよい場合は、さらに株主還元施策について適切な手を打っていきたいと考えています。

国内DX市場の将来予測

五十嵐:ここからは、第2部ということで、中期経営計画についてお話ししたいと思います。まず、中期経営計画の前提として、外部環境についてです。

冒頭から「DX」という言葉が出ていましたが、なぜ私どもがDXを事業の根幹に置いているのかご説明します。国内のDX市場は、2019年度から2030年度にかけて約3.8倍になると言われており、急成長市場です。

また、市場規模においても、2030年段階で3兆円という大きな市場に育つということで、私どもの成長戦略の根幹は、DX市場に目線を置いて展開していくという指針になっています。

デジタルD2C市場規模推計と予測

五十嵐:EC支援事業において、D2C市場規模推計と予測です。コロナ禍ということもあり、世の中は全体的にネット上で物を買うことに非常に慣れ、普及してきました。したがって、まだまだこの市場においても継続的に伸長しています。2021年段階で約2兆4,000億円の市場が、4年後の2025年には3兆円に到達すると言われています。

したがって、このD2C市場も非常に大きな成長が見込めるということで、マーケティング支援を行っている私どもとしても、これを1つの大きな市場と見据えて、サービス群を開発していくという流れになっています。

国内リサーチ市場の市場規模推移

五十嵐:祖業であるリサーチ市場の市場規模推移です。こちらは安定市場です。昨年は、コロナ禍の影響で業界としても久々にダウンして市場規模は2,200億円と、前年に比べて約90億円下回った年度になっています。しかしながら、こちらの市場は日本のGDPの成長率と比較的近い動きをしているということで、すなわち一定割合がマーケティングリサーチの費用として投下されていく性質のものになります。

ですので、私どもの成長戦略においても、オーガニックに安定して成長していく市場として捉え、その基盤として大事に育て、DX市場に向けて各種新規事業も行っていくという方針としています。

ESOMARによるリサーチ市場の定義変更と世界のインサイト市場規模

五十嵐:一方、安定市場であるリサーチ市場も世界的に見ると大きな変化が起きています。ESOMARという、欧米のマーケティングリサーチの世界最大の業界団体が、市場の定義付けを昨年大きく変えました。

今までは消費者アンケートを主体にマーケティングリサーチの業界全体が成り立っていましたが、近年、デジタル上におけるデータ、例えばアクセス履歴のデータやCRMの販売データをすべて統合した上で分析を行わないと、正しい消費者理解につながっていかないと言われるようになりました。

そこで、産業区分としても、そのようなことをデジタル上で提供している会社も含めて、すべて新しいインサイト市場というものの定義付けを行ったということです。

したがって、いわゆるDX化の流れを受けて、従来の安定市場である5.2兆円から9.8兆円というかたちで、産業区分が広がってきたということです。その根幹は、「マーケティングリサーチ×DX」という流れです。

そうすることにより、より成長市場に変わっていくということで、私どもとしても、方針にあるDX化は同じ方向感で動いているということです。

長期ビジョン

五十嵐:中期経営計画の概要です。まず、長期ビジョンとして、私たちのコアコンピタンスである一番の強みは、スライドに記載のサークルの中央にある「生活者のWhyの解明」が一番の肝になってきます。

これはどのようなことかと言いますと、データがあっても、正しくそれを分析し理解しない限り、正しいマーケティング施策の方向感は出てきません。それに対して、私どもは消費者から大規模に意見を集めるインフラを保有しており、かつそれを分析する人たちがいます。当然デジタルのみではできない分析もあり、コンサル領域も含めて、まず「生活者のWhyの解明」のために、さまざまなサービス群が配置されています。

したがって、私たちの一番の強みというのは、「消費者理解」を基盤に「DX」、一番外側のリングに向けてサービス開発を行っていきながら、デジタルマーケティング事業、データマーケティング事業、インサイト事業をそれぞれ伸ばしていくということが根幹です。

中期経営計画の指針

五十嵐:それらを含め全体指針として3ヶ年、マーケティングDXパートナーということで、先ほどお伝えした「生活者理解」「Whyの解明」を中心に置きながら、お客さまのマーケティング課題をデジタル領域において解決していくパートナーになるということが基本指針になります。

この基本指針に沿ったかたちでグループ全体のサービス、アセットを統合していくということです。

中期経営計画数値目標

五十嵐:それらを受けて、KPIとして「Triple Three」という目標を掲げています。時価総額に関しては、前期の2021年6月末段階の137億円から300億円、グループ連結売上高は190億円から300億円、グループ連結営業利益は18億円から30億円に引き上げていこうというものです。

現時点の時価総額は、すでに200億円を超えている状況です。決算発表からまだ3ヶ月しかたっていませんが、株価の時価総額を含めて拡大してきています。

各セグメント施策及び数値目標

五十嵐:各セグメントにおいて、どの領域を伸ばしていくのかということです。中期経営計画の区分としては、まずデジタルマーケティング事業で、2021年の売上高68億円を3ヶ年後には120億円に引き上げていきます。

一方、スライド右側の新規事業/M&Aは、約30億円の予算が組まれていますが、これは基本的にはデジタルマーケティング事業における新規事業/M&Aを想定しています。ですので、結果として、中期経営計画の売上300億円の半分である150億円がデジタルマーケティング事業となることからも、本当の意味での主力事業に切り替えていくということです。

データマーケティング事業、インサイト事業に関しては、オーガニックな成長ということで、2021年の売上高65億円から80億円に、59億円から70億円にそれぞれ引き上げていくことを想定しています。

グローバル戦略

五十嵐:グローバル戦略についてです。グループ全体として、11カ国に進出しています。その中でどこを一番狙っていくのかということですが、実は、海外売上の40パーセントはアメリカで成り立っており、アメリカのグローバルなIT企業を支援しています。

したがって、近年みなさまもご存じのとおり、アメリカのIT企業はかなり強くなっており、彼ら自身のグローバル戦略をお手伝いしていくことも含めて、アメリカの拠点展開を真っ先に集中投下するということで、現在、人員数の強化、拠点網の強化を図っています。

未展開エリアに関しては、アジアではマレーシアやメコン領域が存在しています。また、欧州に関しては、UKがブレグジットの兼ね合いでEUから離れたことも含めドイツ、フランスに展開しなければいけないと考えています。

ただし、基本的な3ヶ年の考え方としては、アメリカファーストでアメリカ主体に成長戦略を組み、その中で余力があれば未展開エリアについて展開していくということを想定しながら動いています。

株主還元施策

五十嵐:資本政策です。まず、株主還元の基本的な指針に関しては、先ほどお伝えしたとおり、原則、連結配当性向は15パーセント前後を目安に、継続増配を行っていくことを基本指針としています。

連結配当性向の15パーセントについては、その時々の投資状況によるため若干前後してくると考えています。その他、自己株式等の取得も含めて、株価水準、財政状況を踏まえ機動的に実施していく予定になっています。

プライム市場上場維持基準適合へ向けて

五十嵐:プライム市場の上場維持の基準適合に向けてということです。すでに2021年8月開催の取締役会において、プライム市場を選択しています。6月末段階の適合状況の一次判定結果では、時価総額以外についてはすでに適合しています。また、現時点の株価水準もほぼ適合してくることを想定しており、具体的な取り組みの結果、指針については、本年12月に提出・開示しますので、ご確認ください。

質疑応答:デジタルマーケティング事業とDXについて

坂本:中期経営計画についておうかがいしたいと思います。スライド47ページに記載のデジタルマーケティング事業についてですが、2021年から2024年までの3年でほぼ倍増となっています。

項目を見るとDXの部分はかなり文字が並んでいます。やはりここはDXの広がりがカタリストなのでしょうか? また、その他に伸びる部分があれば教えてください。

五十嵐:コロナ禍以前はどちらかと言いますと、デジタルとアナログが二極化していたような印象を受けていたのですが、コロナ禍において完全に統合化された需要が生まれたと捉えています。そのような面では、既存ビジネスのDX化とDX領域におけるサービス開発の両面が考えられます。

DXのどこを狙っていくのかと言いますと、プロモーションネットワークです。来年は大きな変化がありますが、Cookieの利用許諾を取る必要が出てくる中で、個人情報の取得が厳しくなってきています。

当社が保有している800万人というのは自社ネットワーク会員です。今後Cookieが取得しにくくなくなる中でも、すでにリサーチとしてさまざまなデータ取得の許諾をいただいている会員組織のため非常にパワーを持ってくると見込んでいます。

また、メディア領域における強化ということで、ドゥ・ハウスを中心にメディア領域の幅を広げていき、基本的にスケーラビリティが出てくるビジネス領域をきちんと狙っていくということで動いています。

質疑応答:M&Aについて

坂本:M&Aについてお伺いします。御社はM&Aでかなり事業規模を拡大してきましたし、また、契約後の数年で利益があったところは、精算と言いますか、プラスで買い取るような、あまり日本ではないような買収をされた記憶が私の中であります。

そのようなものを含めて、今後、M&Aで伸ばしていきたい部分を、スライドの56ページからイメージを教えていただけたらと思います。

五十嵐:先ほどからお伝えしているとおり、DX領域が一番の主力ポイントとなります。それを伸ばしていくために、ピースになるような会社をターゲットに置きながら買収していきたいと考えています。具体的には、SaaS関連の月額課金できるようなマーケティング支援サービス、消費財のDXを手掛ける企業、いわゆる法人窓口などです。

その他、既存事業においては、当然オーガニックな成長を目指しているため、チャンスがあれば手掛けていくということです。

実際、グループ全体の財務状況も現預金を含めて50億円持っていますので、非常に財務面もよい会社です。そのようなことも含めて、自己資金のみでも積極的なM&Aが可能ということと、余力もかなりあるため、中期経営計画達成に向けてかなり大型なM&Aも選択肢として考慮し、対応していきたいと考えています。

質疑応答:繁忙時期について

飯村:チャットからの質問ですが、「なぜ10月から12月が繁忙期なのでしょうか?」といただいています。

五十嵐:いわゆるこのマーケティング業界は、やはり日本の商慣習に基づいて動いています。6月から7月のボーナス商戦、その後、年末のボーナス、クリスマス商戦、最後は3月の年度末商戦と、3つの山があります。それに向けてマーケティング活動がすべて動いていくということで、山が出来上がってくるということです。

五十嵐氏からのご挨拶

五十嵐:私どもは今年から大きく会社の方針を変え、マーケティングDXカンパニーとして大きく舵を切っています。かつ、第1四半期も堅調に推移しており、PER水準は現時点で20倍弱ということで、今後、非常に伸ばしていく余地があると考えています。

継続的に成長企業として適切な手を打っていきますので、投資家のみなさまにご支援いただければと思います。