会社概要(2021年3月末現在)

上村正人氏(以下、上村):最初に、エブレン株式会社の概要からご説明したいと思います。当社は1973年の創業で、東京都八王子市に本社およびメインの工場があります。その他に、東京都荒川区、埼玉県入間市、大阪市東淀川区、また、中国の蘇州市に蘇州エブレンという100パーセント子会社があり、国内4拠点、海外1拠点の合計5拠点でビジネスを行っている会社です。

資本金は1億4,300万円ほど、昨年度の売上は32億円ほどです。後ほどお話ししますが、今年度の予想は37億円くらいといった規模の会社です。経常利益は3億円、今年度はだいたい4億6,000万円くらいになるといったレベルです。従業員数は112名で、準社員や契約社員を含めると130名程度になります。

事業内容は、産業用電子機器・工業用コンピュータの設計製造および販売です。

事業内容:産業用コンピュータの設計・製造

上村:次に、私どもの事業内容をもう少し詳しくお話ししたいと思います。産業用コンピュータは、通信・電力・鉄道・医療などの「社会インフラ系設備」および、半導体製造装置や生産自動化機械といった「産業インフラ系設備」に、コントローラーとして使用されます。

このようなものは、でき合いのものを使うよりは、専用のコントローラーを開発し、組み込んで使うことが一般的であり、私どもは、このような製品の受託設計と受託生産を中心とし、売上の80パーセント強を占めているという特徴があります。

鉄道・電力・通信などの公共性の高い事業会社向け設備の開発や調達は、みなさまどなたもご存知の大手の装置メーカーが主契約者になっています。私どものビジネスのポジションはその下になり、一緒に開発または生産を行います。

主契約者の装置メーカーは、最初に設備やシステムの開発構想に基づき、当社へ委託するコンピュータ製品の要求仕様書を作成して提示します。私どもはその「要求仕様」に基づいて製品を設計し、試作品を作って装置メーカーに送り、評価と設計検証をしていただきます。要するに、要求どおりの仕様になっているか、性能はきちんと出るか、クオリティーレベルは大丈夫かといったことについて総合的に検証を受けます。

設計が完了し量産に入るまでには、最低で半年、長いもので1年、2年、3年くらいかかることもあります。それくらいの期間をかけて量産にこぎつけますが、量産開始以降は、中長期的に安定した製品供給を要求されるビジネススタイルです。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):この後にも、御社が作られている製品の詳細な説明をいただくのですが、その前に質問です。設備やシステムの開発構想に基づいて、委託するコンピュータ製品の要求仕様書を作成し、それに基づいて製品を設計していくというところで、これは先ほどご説明いただいた鉄道や通信など、いろいろな業界の方と一緒に設計していくと思います。

最低でも半年、長ければ3年という期間でやり取りされると思うのですが、お互いに「このようなのを作ってほしい」というけっこうなイメージが湧くと思います。何回もそれを行っていると、「この会社はこんなのを作りたいんだ」というのがだいたいわかってきて、「また次もお願いします」となるため、他の会社にとっては、ここがすごく参入障壁になってくると思います。

ここでのコミュニケーションで気をつけていることや、「このようなことが可能だ」といったことなどを含めて、御社の強みなどがありましたら教えていただけたらと思います。

上村:産業用コンピュータが応用される分野は非常に多岐にわたっています。それが使われる環境もさまざまで、例えば、鉄道車両に搭載されるものは、極端に寒い所や極端に暑い所に搭載されることがあります。我々の作っているコンピュータは、お客さまを乗せる空調の効いたところには置いてもらえず過酷なところに置かれるため、当然、振動や衝撃もあります。そのような鉄道車両用のものについては、かなりそのあたりを厳しく、それに耐えられるものになるように設計を進めます。

要するに、産業用コンピュータはいろいろな使われ方をしますので、お客さまからはいろいろな要求があります。そのときに、やはり今までの経験や、「そのような場合にはこのようにしたほうがよいと思います」ということを的確にアドバイスできる、提案できることがとても大事で、ただ単に言われたとおりにモノを作るだけでは駄目なのです。

私どもはこの道40年、ひたすらこのような仕事だけを行ってきていますので、鉄道車両だけではなく、医療関係、通信、半導体製造装置などいろいろありますが、産業用システムのコントローラーとして使われるコンピュータについては、各分野でかなりノウハウが蓄積されています。

そのような点では、的確な情報の提供、アドバイスまたは提案がとても大事なことです。おっしゃるとおり、言ったとおりに作ればよいという世界ではなく、お客さまと一緒に開発するつもりで、いかによい製品を作り上げるかに取り組むのがとても大事なことだと思います。

製品区分(1) ボードコンピュータ

上村:当社の製品がどのような形をしたものか、製品のイメージをつかんでいただくために、スライドにボードコンピュータを掲載しました。

簡単に言うと、電子機器は電子部品をたくさんつなぎ合わせて、一定の働きをする回路を、一般にはプリント基板の上に作ります。半導体ではシリコンの上に作るのですが、私どもの場合は、半導体部品だけではなく、いろいろな部品がありますので、その電子部品をプリント基板の上に搭載し、それをつなぎ合わせ、一定の働きをする回路を作ります。

スライドの左側に記載しているのが、いわゆるバックプレーンにつないで使うもので、比較的規模の大きい装置を作るときによく使われています。産業用のコンピュータは大半がこの形式を取ります。特徴としては、写真の基板の端に白く見える、コネクタと言われる接続部分があるのが特徴です。後でつなぎ合わせるという意味を有しています。

一方で、右側はワンボードコンピュータというものです。何枚も大規模につなぐ必要のないものであり、例えば、最近のエッジコンピューティングやIoTなどの端末側は、小規模の仕事を専門に行わせるものですので、そこまで大規模な回路でなくても一定のコンピュータの機能を達成できます。基本的には1枚のボードのみでコンピュータを実現したものです。

基板は一定の大きさにしたほうが扱いやすく、いろいろな点で都合がよいものですので、一般的なサイズとしては、小さいものは官製はがきくらいのものから、B5版やA4版くらいのものまでが多いです。

製品区分(2) バックプレーン

上村:つなぎ合わせると言いましたが、その役割をはたすのがバックプレーンです。前の写真で見ていただきましたボードコンピュータを、スロットと言う白いところに差し込み、つなぎ合わせることができます。

右側に、バックプレーンやボードコンピュータと記載しています。ボードコンピュータは電子回路そのもので、これをバックプレーンに差し込んで使います。これを人間の生体で言うと、ちょうど脊髄に相当するのがバックプレーンです。つまり、ボードコンピュータのすべての神経がここに集中しており、中枢神経になっているのが、バスというところです。このように実装され、最終的には右下にありますように、金属で作られた筐体の中に入れて使うのが一般的です。

坂本:このバックプレーンにはいろいろな半導体なども入っていると思うのですが、御社が使われているメモリなどの半導体は、汎用的なものが多いのか、それとも「オリジナルでこのようなのを作ってください」と注文を入れて作るものが多いのかを教えてください。

上村:産業用コンピュータといっても、使われているICや電子部品は、一般のパーソナルコンピュータや他の製品に使われているものと基本的には同じと考えてよいです。それを産業用に使えるかたちに強化し、長期的に供給できるかたちにし、産業用にしていきます。

坂本:10年、20年の長期的に使う機械があると思うのですが、そのパーツも御社で保管していますか?

上村:これはまた大切なところです。我々が使っているパソコンは、2年、3年経つとがらり変わってしまいますよね。ですから、当然、中のCPUなどもどんどん変わり、どんどんよいものができていくわけです。よいものがどんどんできることは悪いことではないのですが、産業用だと10年というのは最低で、20年、30年使うわけです。そうすると、「そんな部品はありませんよ」というのは通らないです。

そのような産業用に使うICの場合は、ICメーカーに長期的に供給してもらえることを保証していただくのが一般的です。「今手に入るからこれを使えばよい」とはならないのがつらいところです。

製品区分(4) 制御用コンピュータ

上村:次に、バックプレーンやボードコンピュータが、実際にどのような使われ方をしているかという図です。手前に各種ボードコンピュータと記載しているように、画像を処理するボードコンピュータ、通信するボードコンピュータ、モーターをコントロールするボードコンピュータ、CPUボードやメモリボードなどのいろいろなボードコンピュータがあります。

矢印の先に、筐体の奥の白い縦縞がありますが、これがコネクタというもので、必要なボードをそこにスロットインし、実装します。右側に記載のように、半導体製造装置を例にとった場合の話ですが、最終的にはこの箱状のラックが機械の中に実装され、全体の機械を制御していくというかたちが取られます。

飯村美樹氏(以下、飯村):これはカセットのようにカチャカチャとはめていく感じになるのですよね?

上村:おっしゃるとおりです。

坂本:僕らの世代だと、ファミコンのイメージですよね。

飯村:着脱可能なことには、どのようなメリットがあるのですか?

上村:これはとても大切なところです。産業用コンピュータというのは、だいたいこのようにバックプレーンにボードコンピュータをつないで使うのですが、実は一番大きなところはメンテナンスです。これが畳1枚くらいの大きい電子回路が全部1つに作られていたら、例えば、通信のみが悪くて通信以外はまったくなんともないのに、それだけを取ることができませんよね。

飯村:畳1枚、張り替えなくてはいけなくなってしまうということですね。

上村:畳1枚のボードコンピュータというのは普通は作らないですが、そのようなことなのです。メンテナンスの問題です。

バックプレーン方式が産業用に多用される理由

上村:まず1つ目は保守性、メンテナビリティです。身近なところでお話ししますと、最近の車にはECU、つまりElectronic Control Unitが最低10個載っています。だいたいこのような構造の基板で、やはり小さいのですが、コネクタが載っており、ワンタッチで取れるようになっています。

ワンタッチで取れるところがやはりよいところで、悪いと思われるところを差し替えて直すことができます。そこに時間をかけて、その場で修理なんかしていられないです。例えば、10個ECUがあるから1枚のボードコンピュータにしたほうが安くなるのではないかと1枚にしてしまったら、そのようなことはできないのです。

もう1つは、電子回路のどこが悪いかがわからないと修理できないから、当然、コンピュータのことがわかる技術屋を車の修理工場に貼り付けなくてはならないですが、それは現実的に不可能ですので、やはりメンテはとても大事です。現在、車に実装されているECUは、すべて容易にワンタッチで取れるようになっています。そのため、その症状を見てどのような不具合があるのかの判断だけで、それを差し替えて終わりです。

飯村:部分分けしておき、自由に着脱ができるのには、それだけのメリットがあるのですね。

上村:おっしゃるとおりです。車には最低10個載っており、大きいものでは50個、高級車だと思いますが、最近の電気自動車では100個載っているものもあります。そのすべてがそのようなモジュールになっており、ワンタッチで取れるようになっています。産業用電子機器の場合は少し規模は大きいですが、それに似ています。我々が作るものは、万が一何かあったときにどうするのかを常に考えて設計することがとても大事です。

坂本:機械もずっと動かし続けないといけないし、止まってしまうと損失になってしまうこともありますよね。

上村:2つ目は拡張性です。車の話をしましたが、エンジンをコントロールするもの、エアバックをコントロールするもの、ブレーキをコントロールするものなど、いろいろなものがモジュール体になっています。そのように分けることにより、レガシーというか、その設計資産、技術資産を使って別の装置や製品を作るときに応用できます。

1個作るのに、開発に1年、2年かかるため、初めからすべて行うと本当に大変なことになります。分割していることで、過去のもので使えるものは、他の製品にも使うことが可能であり、市販品でよいものがあればそれを採用することも可能です。そのような点で拡張性があります。

また、後で追加や増強できることも拡張性です。例えば、ノートパソコンではそのようなことはできませんが、一般のパソコンでもメモリ容量を後で追加することはありますよね。

坂本:デスクトップで基板に入れるものですね。

上村:また、あとで通信回線をもっと増やすということもあります。分割していれば、その機能の基板を後で追加していけば増強できます。なにかと便利なのです。

3つ目は汎用性です。基板を分割すると言いましたが、USBメモリがどのパソコンにも合うように、分割したものを繋ぐには国際規格があります。その規格に則って作られていれば汎用性があり、自分たちが開発しなくても、よいボードコンピュータが他にあればそれを自分の製品に組み入れて採用することができるというメリットがあります。世界的な規模でこのような業界は成り立っていますので、とてもよい画像処理のボードコンピュータや通信のボードコンピュータなどがあります。

エブレン製品の用途(応用分野)

上村:そのような製品がどの分野でどう使われているのかを、1枚で表現しました。右側に円グラフがあり、中央に19億3,000万円と記載していますが、これは最近の上半期の結果です。

まず、緑色の部分が計測・制御というセグメントで、私どもの売上比率の65パーセントを占めています。左下の緑の線で囲っているところで、なんといっても大きいのは半導体製造装置です。先ほど言いましたように、今これが本当に極端な状態で増えています。

半導体製造装置にはいろいろな種類があります。メインのところだけで100工程くらいあるといわれており、細かくいうとものすごい数になります。私どもの製品は、コータデベロッパー、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置、そして、ウェーハプローバ、マスクの検査では、マスクブランクス、パターンマスク検査装置、メモリテスタ、電子顕微鏡と多岐にわたります。半導体製造装置は非常に種類が多いですが、このようなものにお使いいただいています。

青色のところは交通関連で、15.6パーセントです。これが、左上の青色の線で囲ったところです。まず鉄道ですが、日本の鉄道車両は安全では世界一と言われており、非常に厳密にコントロールされ、万が一にも事故が起きない仕組みになっています。一般的な電車に標準的に搭載されるATSやATCをはじめ、新幹線などの高速鉄道車両では線路の軌道を常時監視しながら走っており、万が一何か異常があったらわかるようになっています。

最近は列車内でのトラブルが多いため、セキュリティカメラがだいぶ増えてきましたが、ただ単に写真を写しているだけではなく、すべてのデータを取っており、いろいろな解析が可能です。

スライド左上の写真は、ご存知のETCなどの高速道路関係です。ITS関係は、例えば、自動運転などをサポートするAHSのような仕組みがいろいろとあり、高速道路もこのジャンルに入ります。

黄色のところは電子応用分野で、大きいところでは医療関係です。医療も多岐にわたっていますが、私どもの産業用コンピュータが使われる分野は、MRIやCTスキャナー、PET、超音波診断装置といった医療用映像装置が圧倒的に多いです。また、医療関係では血液分析装置や内視鏡のようなものに応用されているケースが多いです。

そして、スーパーコンピュータです。ご存知のように、最近また話題になっていますが、日本では「富岳」というスーパーコンピュータが、11月に「TOP500」で4連覇を果たし、世界一になっています。また、大変注目を浴びているAIのディープラーニング専門のメーカーであるPreferred Networksが、消費電力あたりの性能を競う「Green500」で3連覇を果たしました。

2つとも日本が取っており、日本はスーパーコンピュータ関係で大変高い技術を持っています。もちろん世界的に競争が激しいため、それがいつまで、どのようになるかについてはわかりません。しかし、私どもは「富岳」には関わっていないのですが、非常に有望な分野だろうと考えています。この関係が電子応用で10パーセントほどのシェアです。

その次が通信・放送で5.8パーセントです。スライド右上にアンテナの写真を記載しています。その下に電力・プラントと書いてありますが、通信関係は、有線・無線からモバイル・ブロードバンド・衛星通信・海底ケーブルと、非常に多岐にわたっています。

放送は放送映像装置ですが、局用のビデオサーバーなどのいろいろな装置があります。最近は放送と通信が融合している時代であり、ジャンルとして一緒にまとめています。

3.6パーセントの水色の部分は、防衛・その他です。スライドに絵はないのですが、防衛関係も、通信装置や船に載るもの・飛行機に載せるものなど、いろいろな種類の装備があります。その他も含めて3.6パーセントです。

応用分野別にはこのような比率になっており、一言で言うと、当社は計測・制御の割合がかなり大きく、65パーセントを占めています。この中の4分の3が半導体製造装置です。65パーセントの4分の3は48.8パーセントくらいになるかと思いますので、当社の売上の約半分は半導体製造装置で占められていることになります。

坂本:これは昔からだいたいそのようなかたちですか? それとも、最近特に増えたのでしょうか?

上村:昔は通信が1位ということもありました。例えばブロードバンドですが、日本でADSLなどが急速に設置された時期がありました。私どもは、たまたまそのような少しラッキーな位置にいて、通信がダントツ第1位という時代がありました。また、医療関係が大変好調な時もありました。

このように半導体の調子がよいからといって、半導体だけに特化するのではなく、産業用と呼ばれるいろいろなところに均等に注力するのが、実は当社の作戦なのです。

坂本:なるほど。

上村:万が一何かが悪くても、全部が悪いことは世の中にないのです。そのため、営業対象を分散していると危険分散になります。今は調子が悪いからといってあまり疎かにせず、地道に進めていく戦略です。

主要納入先 (直接納入,間接納入を含む)

上村:そのような製品がどこで使われているのかを、スライドに記載しています。これ以外にも当社製品を採用していただいているメーカーは、現在150社くらいあるため、掲載しきれないのですが、代表的なところだけ挙げると、このようになります。

生産拠点の分散

上村:生産拠点ですが、先ほど冒頭にお話ししたように、東京の八王子を本社工場として、入間・上野・大阪の事業所、加えて蘇州の工場というかたちで展開しています。BCPの観点から、メインの設備をすべての工場に配置しています。

これはなぜかと言うと、インフラに関わる製品を手掛けており、何か会社の都合で安定供給ができなくなるというのは許されないためです。BCPの観点から、もし万が一どこかの拠点に支障があった場合は、別の工場に移して生産できるように、メインの設備は整えておく作戦です。中国も含めて、このような体制を作っています。

2022年3月期第2四半期 (第49期) 決算実績

上村:業績の報告に入ります。まず2022年3月期第2四半期、つまり上半期についてです。スライド一番左側は第48期の上期です。上半期を比べてご説明したほうがわかりやすいと思い、このような書き方をしています。2番目の列の第49期の上期、つまり2021年4月から2021年9月と記載してあるところが報告のメインです。

売上高は19億3,000万円ほどです。前年同期比、すなわち1年前の上半期はどうだったかの比較では、19.7パーセントほどの増になっています。営業利益は2億7,000万円ほどで、これは前期比73.6パーセントほどの増になっています。営業利益率は13.9パーセントです。

経常利益は2億6,800万円で、前年同期比67.5パーセントほどの増となっています。経常利益率は13.8パーセントです。当期純利益は1億7,600万円で、前年同期比で62.3パーセント増になっています。当期純利益率は9.1パーセントです。

その右の列については、後ほど通期の予想などについて詳細に触れるため省略しますが、この上半期の状況を踏まえて通期の計画を見直しています。今年は37億6,500万円くらいの計画に修正しました。

一番右に書いてある水色の数字は、上半期で通期計画の進捗率が何パーセントになるかを表したものです。売上高の進捗率は51.2パーセント、営業利益の計画は4億6,900万円で、進捗率は57.5パーセントです。

経常利益は計画を4億6,500万円に修正しており、上半期の進捗率は57.6パーセントです。経常利益率は12.3パーセントに修正しています。

当期純利益は3億1,100万円に計画を修正しました。上半期での進捗率は56.5パーセントです。当期純利益率は8.2パーセントくらいになると見ています。これが上半期の概要です。

2022年3月期第2四半期 (第49期)応用分野別概況-1

上村:分野別にはどのような状況だったのかというお話をしたいと思います。まず計測・制御関係です。半導体製造装置・検査装置を中心としたセグメントですが、半導体の需要が引き続き堅調であることが特徴です。

日本製半導体製造装置の2021年度市場規模予測が、業界で大幅に修正になっています。その影響も受けて、当期の売上は前年同期比41パーセント増になりました。これは上半期の話ですが、8億9,000万円から12億5,400万円と、このくらいの違いがあったということです。

2つ目のジャンルは交通関係ですが、緊急事態宣言による移動制限の影響で、鉄道会社の設備投資が延期になるということがありました。海外向け鉄道関連の入札延期、設置工事遅延と記載していますが、国内よりも海外向けの入札延期や設置工事遅延が目立っている気がします。一部の信号関連メーカーで継続して売上増もありましたが、上半期の売上としては前年同期比で5.3パーセント減となっています。

2022年3月期第2四半期 (第49期)応用分野別概況-2

上村:通信・放送関係です。電力・放送関連はほぼ例年どおりでした。通信関連はコロナ禍の影響で設置工事や入札延期がありました。1G(ギガ)ブロードバンド用光終端装置の生産が終了したということで、これは具体的にはGE-PON(光ファイバー伝送技術)のことです。

今、日本の光ファイバー網の世帯普及率は99パーセントになっているそうです。これは10月26日の読売新聞による報道ですが、日本のほとんどの世帯には光ファイバーが設置されてしまっているということです。当然のことですが、このような製品の生産は終息していくわけで、そのような状況にあります。また、売上は前年同期比39.3パーセント減となっており、通信・放送については、かなり下げていく状態です。

電子応用関係については、先送りされていた医療装置への設備投資が再開されています。前回お話ししたように、「コロナ禍で医療関係がよいのでは」と思う方が多いようですが、実はコロナ禍においては、我々が作っている医療用映像装置よりは、むしろICUやベッド数を増やすことのほうが緊急です。そのような緊急性の高い設備投資が先のため、その他の医療用映像装置等は後回しになります。

おそらく今期も後半から増加するかと考えていたのですが、上半期早々から設備投資の復活が見られます。それにより売上としては、前回は悪かったこともありますが、41.3パーセント増になる状況です。

防衛・その他については、特記する点はなく、売上は前年同期比16.2パーセント減です。防衛関係のため、なぜと言われてもわかりません。防衛関係は私どもにはなかなかわからない所が多いですが、結果として16.2パーセント減となっています。

2022年3月期第2四半期 (第49期) 応用分野別売上

上村:次のページは、ジャンル別にグラフにするとどのようになるかというものです。スライド下に記載のとおり、一番左側が2019年3月期、2つ目が2020年3月期、その次が2021年3月期、一番右側が当期で、今報告している上半期だけの半分の数字です。

半年と1年を比べているため、見にくくて大変申し訳ないのですが、ジャンル別にパーセントをご覧いただくと、一番下の緑の部分が防衛・その他で一番小さく、あまり変わりません。交通関係は、前期は17.6パーセントだったものが15.6パーセントとなっているため、やや下回っています。

グレーの部分は、56.7パーセントだったものが65パーセントになっており、かなり大きく膨らんでいるということで、半導体製造装置の好調を裏付けています。茶色の部分が電子応用関係で、9.1パーセントから10パーセントと少し伸びています。

通信・放送が一番上のブルーの部分で、12.3パーセントが5.8パーセントになっています。一番左のグラフからご覧いただくと、比率としては18.8パーセントからどんどん落ちているように見えます。私どもとしては、通信・放送関係はかなり長期にわたって低迷状態にあると言えます。

2022年3月期第2四半期 (第49期) 業績 – 財政状態

上村:第2四半期の業績です。スライドはB/S で、流動資産が36億6,100万円、固定資産が12億7,400万円、資産合計で49億3,500万円です。流動負債が9億6,100万円、固定負債が3億6,200万円、負債合計で13億2,300万円です。純資産が36億1,200万円、負債純資産合計が49億3,500万円で、自己資本比率が73.2パーセントとなっています。

2022年3月期 (第49期) 通期予想

上村:次のページは通期の損益予想です。半年が終わったのですが、来年3月までの通期をどのように予想しているかというお話です。スライドの一番左側には第48期、すなわち前期の2021年3月期の実績が書いてあります。その次の列は2022年3月期の予想です。

これを読むと、今期の売上は37億6,500万円くらいかと考えています。一番最初にこの数字をお伝えしましたが、期初においては34億4,900万円ほどの計画でした。この計画を修正し、前期比で5億6,300万円ほどのプラスになっています。増減率としては17.5パーセントほどの上乗せの見込みとなっています。

同じように、営業利益が4億6,900万円、営業利益率が12.4パーセントです。その下に記載の経常利益は、3億6,000万円くらいかと考えていたのですが、4億6,500万円に修正しました。

経常利益率は12.3パーセントくらいになり、当期純利益は3億1,100万円くらいになるだろうということで、計画を修正しました。だいたい50パーセントくらいずつ上がっているかたちになります。

2022年3月期 (第49期) 見通し①

坂本:その背景と見通しをよろしくお願いします。

上村:数字的にはこのようなことですが、まず、ご承知のとおり、ご要求に応じられないくらいに半導体製造装置関係が過熱しています。この影響をもろに受けており、半導体製造装置・半導体検査装置が引き続き好調を継続するという見通しは、当面続くだろうと考えています。

スマホや自動車に使用する基板向の自動化設備(チップマウンタ等)や、部品の外観を高速で検査する外観検査装置も好調です。各種IoT関連の設備投資も継続してあります。懸念としては今、非常に頭の痛いところですが、部品入手難の顕在化のリスクという要素もあります。

交通関連については、鉄道関連の業績悪化による設備投資計画の変更の懸念があります。リニア新幹線の開業延期による影響の可能性もあるかもしれないと考えています。トンネルを掘ることについて、反対意見があるとの報道もあるため、もしかしたらその影響もあるかもしれません。欧州向けの鉄道の入札延期/停滞の可能性もあります。交通関係については以上です。

2022年3月期 (第49期) 見通し②

上村:通信・放送関係ですが、ブロードバンド通信機器の性能向上による設備設置台数減少というよりは、もうほとんど日本列島に行きわたってしまっているところもあり、ここ3年から4年はずっと当社にとっては減っているように見られます。

放送関係では4K/8K放送対応のための更新需要継続があります。

電力関係では既存設備保守や設備投資が再開されているように見えます。

電子応用関係については、国内/中国/欧州の医療機器への設備投資が再開されています。AI用のHPC関連は、今年度は前期並みに推移するだろうと考えています。

防衛・その他については、前期は生産前倒しによる売上減がありましたが、今期は前期並みに戻るだろうと考えています。

2022年3月期 (第49期) 応用分野別売上予想

上村:応用分野別には、通期にするとこのようなかたちです。合計すると、昨年度は32億円ほどだったのですが、今年は37億円くらいになる予想です。

各分野別には、目立っているところとしてはグレーの部分の計測・制御で、特にこの中の4分の3を占めている半導体製造装置が大きいと見ています。これが当期、すなわち来年3月の決算での事業年度の予想です。

成長戦略

上村:成長への取り組みですが、「コア事業を強化します」「ユニット供給の拡大を進めます」「デジタル化、5G、IoTなどのトレンドへの対応を急ぎます」「中国子会社の戦略的活用を引き続き進めていきます」ということで、これを具体的にご説明します。

(1)コア事業の強化

上村:「コア事業の強化」については、社会インフラ・産業インフラを対象として、顧客メーカーの要求仕様に基づいて受託設計・受託生産を中心に進め、開発した暁には、長期的安定供給をしていくビジネスモデルを拡大していきたいと考えています。

当然のことですが、先ほどご質問にありましたように、専業メーカーとしての長い経験の積み重ね・データの集積・設計資産の積み重ねがあるため、このメリットをお客さまに供給していけるようにしたいと考えています。

(2)ユニット供給の拡大

上村:最近、お客さまから我々生産メーカーに対し、「バラバラで部品を持ってくるよりは、できればユニットとしてそのまま使えるように調達したい」という要求が強くなってきています。そのようなトレンド・ご要求に応えられるようにしていきたいというのが2つ目です。

(3)デジタル化 (DX) への対応

上村:DXです。「日本はDXが遅れている」と最近叩かれていますが、不幸にして、行政のDXが大変遅れていると言われています。日本はマイナンバーを検討した時に「国民総背番号制」のような言葉が使われ、大変悪い印象です。それで加入率が非常に低いのです。マイナンバーの登録者は未だ38パーセントと報道されていますが、これをなんとかしないと行政のデジタル化が進みません。

これが課題だと思いますが、一方で、インフラに関連することを手掛けている立場の我々としては、インフラ整備の面での日本のDXは世界トップレベルだと思うのです。行政のデジタル化が駄目だからといって、日本が全部駄目なのではなく、そのあたりを集中的に進めなければなりません。

DXへの企業の取り組みについては、日本はまだ低いと言われており、13パーセントくらいの企業しか取組んでいないと報道されています。アメリカでは60パーセントくらいです。このあたりに、我々はもっと関心を持って、そのようなテーマに対応した製品作りをしていかなければいけないと考えています。

(4)中国子会社の活用強化

上村:中国の子会社の戦略的活用については、あらためて申し上げることはなく記載のとおりやっていきたいと思います。

坂本:ありがとうございました。もう3回目ですが、ずっと見ている方も知識を深められたと思いますし、今回見た方も「こんなことをしているんだ」とけっこうわかったと思います。好調な半導体中心の産業機器の動向を見ていきたいと思っています。

飯村:ずっと見ていらっしゃる方からも、「前回ご登壇時に、コロナ禍で医療関係の設備投資がへこんでいるとご説明されていましたが」というご質問をいただいていたのですが、「今回はその中で回復してきた」というお話もいただきました。

坂本:きちんとお答えいただきました。

上村:そのとおりです。

飯村:きっとご覧になりながら、「あっ、よくなっているんだ」と思っていただけたのではないかと思います。

上村:坂本さんからも前回、「半導体関連だと思ったのに、なんでそれほど変わらないの?」とご質問がありました。

坂本:「それには理由があるのです」と、そのあたりから言われてわかりました。

上村:今回は「なるほど、半導体関連だな」と思っていただける内容になったと思います。

坂本:半年ごとに変わるというのはおもしろいですよね。

飯村:そうですね。

上村:当社は半導体製造装置関連だけでなくいろいろと手掛けているためです。

坂本:ぜひ、またお話しいただけたらと思います。