2021年3月期決算説明会

永嶋元博氏:あらためまして、おはようございます。本日はお忙しい中、東リ株式会社決算説明会にご出席賜りまして、誠にありがとうございます。社長の永嶋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、2021年3月期の決算概要と本年4月よりスタートした新中期経営計画、並びに2022年3月期の業績見通しについて、ご説明します。

連結損益計算書

まず、5月10日発表の2021年3月期決算概要についてご説明します。2021年3月期の業績はご覧のとおりです。 当決算期は、新型コロナウイルス感染拡大により、全世界で経済活動が低迷するなど、厳しい状況となりました。 当社グループの事業環境においても、国内外ともに需要が低迷し、大幅な減収減益となりました。

決算ハイライト(1)

まず、連結売上高の概況についてご説明します。当社グループの業績に関わりの深い建設市場の動向は、新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワークの推進やインバウンド需要の消滅等により、2020年度の国内建築着工量が住宅・非住宅ともに大幅な減少となりました。

当社においては、オフィスや店舗、宿泊施設向けの商品全般で需要が減少し、塩ビ床材、カーペット、壁装材、カーテンのいずれの製品分野についても前年を下回る結果となりました。

そんな中、家の中の暮らしのあり方を見直す巣ごもり需要により、ネット販売やホームセンターチャネルを中心とする住宅向け商品が好調に推移しました。

決算ハイライト(2)

次に、連結営業利益の主な増減要因はご覧のようなかたちとなります。販売数量の減少により売上総利益は大きく減少しました。一方で、これまで取り組んできた研究開発投資などにより、製造原価の低減では一定の成果を得ることができました。

そして、コロナ禍で営業活動が制限される中、新製品の展示会関連費用を中心とする販売促進費や営業活動費は減少しました。結果として、連結営業利益ベースで7億8,700万円の減益となっています。

連結貸借対照表

連結貸借対照表についてご説明します。新規設備投資や中国合弁会社への出資等により固定資産は増加しましたが、売上高の減少に伴い、流動資産、流動負債ともに大幅な減少となりました。

連結キャッシュフロー計算書

連結キャッシュ・フロー計算書になります。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に当期純利益の減少により収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、中国合弁会社への出資金の払込、並びに有形固定資産の売却による収入が前期に比べて減少したこと等により、支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の減少等により、支出が減少しました。

連結主要項目の推移

連結の主要項目の推移について、ご覧いただきたいと思います。研究開発費は、将来にわたる競争力の源泉として積極的な研究開発投資を推進しています。

設備投資額についても、独自品開発や環境負荷低減に向けた大型設備投資を実行しており、減価償却費は増加基調となっています。前期に比べて減価償却費に大きな変動はなかったものの、営業利益が減少したことにより、当期のEBITDAは35億円となりました。

連結セグメント別実績

連結セグメント実績については、ご覧のとおりです。プロダクト事業、インテリア卸及び工事事業ともに、減収減益となりました。詳細については、決算短信、並びに事業報告書にてご参照願います。

2021年3月期 トピックス(1)

2021年3月期の事業活動におけるトピックを、何点かご紹介します。はじめに、タイルカーペットリサイクル技術の進化を目的に、滋賀東リ株式会社に新リサイクルプラントを導入しました。

従来の技術ではリサイクルに回すことのできなかった、タイルカーペットの繊維の部分を含むリサイクルが可能になり、再生比率が大幅に向上します。そして、この新リサイクルプラントの本格稼働により、第1段階として年間最大約2,300トンの廃棄物削減を目指していきます。その削減量は、滋賀東リ株式会社におけるタイルカーペットから排出される廃材の約85パーセントに相当するものです。

引き続き、タイルカーペットの国内トップメーカーとして、将来的なゼロエミッション実現に向けた取り組みを推進していきます。

2021年3月期 トピックス(2)

トピックの2つ目ですが、事業領域拡大に向けた業際事業の開拓、スポーツ市場向け商品開発への取り組みの1例です。

スライド左の写真は、松山大学御幸キャンパスの屋内運動施設にご採用いただいたビニル床シート「アリーナフィット」です。多彩なデザイン性に加え、シート単体での衝撃吸収性や抗菌性、防汚性など、ビニル床シートならではの特徴を活かし、新たな市場を開拓しました。

スライド右側の写真は、一般社団法人日本バレーボールリーグ機構とのコラボレーションによって共同開発した、バレーボール競技専用のフロアマット「Vリーグコネクトマット」です。本年2月に開催された大会で、試験的に採用されました。今後の本格的な運用開始に向け、さらに品質設計を高め、Vリーグ機構が目指すサステナブルな大会運営に貢献していきたいと思います。

2021年3月期 トピックス(3)

トピック3つ目は、コロナ禍での新たな販促手法の取り組み事例です。営業活動が多くの制約を強いられる中、Webツールを活用したお客さまとのコミュニケーション手段を拡大し、Web新製品発表会やショールームでのオンライン相談などを推進してきました。今後も、さまざまな工夫を凝らしながら、新常態に対応したお客さまとのコミュニケーション手段、販促手法を構築していきます。

前中期経営計画 「SHINKA-100」 振り返り

続きまして、当社グループの中期経営計画についてご説明します。はじめに、前中期経営計画「SHINKA-100」を振り返っておきます。前中計「SHINKA-100」は、2016年3月期から2018年3月期までをフェーズⅠ、2019年3月期から2021年3月期までをフェーズⅡとする6ヶ年の計画で実行しました。

フェーズⅠ、2年目の2017年3月期において、当期純利益ベースで過去最高益となったものの、その後は足踏み、後退が続きました。2020年3月期では増収増益と持ち直しましたが、最終年度である2021年3月期に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、目標数値に対して大きく乖離した結果となりました。

「SHINKA-100」 フェーズⅡ 振り返り

次に、「SHINKA-100」フェーズⅡの3ヶ年における主な成果をご報告します。「SHINKA-100」では、3つのSHINKA、進めるの「進化」、深めるの「深化」、真の価値の「真価」を重点戦略キーワードとして推進しました。

基幹商品における新たな付加価値の創造や次世代商品の開発、グローバル視点では、中国江蘇省におけるビニル床タイル合弁事業の推進など、数多くのSHINKAへの取り組みを実践しました。その取り組み事例となるトピックを、本日は2点ほどご紹介します。

「SHINKA-100」 トピックス(1)

当社グループでは、「10億円プロジェクト」と題し、将来の事業を支える基幹商品の育成を進めました。これらの商品は、商品開発から販売に至るまで製販連携を強化し、市場に向けた提供価値の最大化を図っているものです。

資料で表示している対象商品を中心に、売上は順調に伸長しており、次世代を担う成長期待商品としてその存在感が増しつつあります。

「SHINKA-100」 トピックス(2)

トピックスの2つ目は、グローバル事業の拡大に関するものです。グローバル事業の質的量的拡大は、当社グループの最重要課題の1つとして取り組みを進めています。

中でも昨年春より進めている、中国における江蘇長隆装飾材料科技有限公司でのビニル床タイル合弁事業では、当社と台湾企業グループとの技術の融合を図っていきます。

当社からの技術供与により合弁会社の事業競争力を高め、中国国内での「JAPAN TOLI」ブランド品の販売拡大はもとより、日本国内、ASEAN、北米等へ向けた新たな商品開発にも注力していきます。

「SHINKA-100」から新中期経営計画へ

そして、前中計「SHINKA-100」から新中期経営計画へとつなぐ継続的な重要課題もあります。スライドにあるような継続的な課題があるわけですが、次にご説明する新中期経営計画では、これらの課題も踏まえた上で、各重点戦略を策定しました。

長期ビジョン <TOLI VISION 2030>

まず、新中計策定のベースとなる東リグループの長期ビジョンについてご説明します。当社は、新中計策定にあたり、節目の「創業100年」を経て、次のターゲットを「創業110年目」としました。次のターゲットに向け、次世代を担う若手、中堅社員の思いも織り込んだ長期的なビジョンとしました。

今般、当社が掲げる「TOLI VISION 2030」のキャッチフレーズは、「ライフスタイルをデザインする企業へ」です。100年の歴史で積み上げたモノづくりのレガシーを礎に新たな価値を創造し、あらゆるシーンにおいて人々のライフスタイルをデザインする企業グループへの進化を目指します。

「モノ」から「コト」へ、商品の製造販売のみならず、これに付随するサービスや生活体験まで、お客さまのライフスタイルそのものを創造していくことを目指していきます。そして、新中期経営計画を推進していく上での基本方針として、ご覧のとおり新たな3つのSHINKAを掲げています。

長期ビジョン達成に向けた成長イメージ

スライドに映しているのは、長期ビジョン達成に向けた成長イメージです。「TOLI VISION 2030」の実現に向けては、売上、利益といった経済的価値の拡大に加え、持続可能な社会の実現に向け、東リグループの社会的価値の拡大を図り、あらゆるステークホルダー視点での企業価値向上を目指します。

創業110年目となる2029年度に向け、第Ⅰフェーズ、第Ⅱフェーズ、第Ⅲフェーズと、3ヶ年単位で中期経営戦略を推進していきます。そして、本年4月からスタートする第Ⅰフェーズの中期経営計画を「SHINKA Plus ONE」と命名し、各戦略の策定に至りました。

新中期経営計画 「SHINKA Plus ONE」

それでは、当期よりスタートした新中計「SHINKA Plus ONE」の概要についてご説明します。「SHINKA Plus ONE」のネーミングの由来ですが、前中計「SHINKA-100」で重点戦略キーワードとした3つのSHINKAの概念を引継ぎ、将来に向けて新たな価値「Plus ONE」を数多く創出していくことを意味するものです。

戦略体系図

こちらは、「SHINKA Plus ONE」の戦略体系図となります。「SHINKA Plus ONE」は、AからEの5つの重点戦略と11の取り組みテーマで分類し、構成しています。

重点戦略A「コア事業の強靭化」B「伸びしろ事業の成長拡大」C「第5事業の創造」を進め、D「グループ横断機能の強化」で横ぐしを刺してその推進スピードを高め、E「成長を支える経営基盤の構築」で、グループ事業全体の基盤整備を拡充していきます。

5つの重点戦略①

5つの重点戦略についてご説明します。まず、重点戦略A「コア事業の強靭化」です。塩ビ床材、カーペット、壁装材、カーテンの4つの事業をコア事業と位置付け、「モノづくり力」「企画・提案力」「販売力」が三位一体となって事業を推進し、コア事業の強靭化を図ります。

「『モノづくり力』の強化」では、要素技術研究の拡張や環境負荷低減技術の確立など、モノづくりの根本である技術力の進化を目指します。

「『企画・提案力』の強化」では、市場ニーズに応じた商品企画力の強化や「10億円プロジェクト」のさらなる推進を図ります。

「『販売力』の強化」では、エリア販売戦略の強化やグループ販社との連携強化など、コア事業における、「つくる、魅せる、売る」の連動性を徹底的に追求し、東リグループのシェア拡大を目指していきます。

5つの重点戦略②

次に、B「伸びしろ事業の成長拡大」です。グローバル事業は、当社グループの成長において欠かすことができない重要なキーポイントとなります。

「4)グローバル事業の質的量的拡大」では、東璃(上海)貿易有限公司やシンガポールBranch Officeでの事業拡大、また、先ほど申し上げた中国合弁事業である江蘇長隆社のプロジェクトの推進などにより、さらにスピード感を高めて取り組んでいきます。

「5)BtoB事業の開拓」では、一般流通チャネル以外への販売を担う特販事業を中心とし、業際探索活動をさらに強化していきます。

「6)BtoC事業の開拓」では、コロナ禍で生活様式が変化していく中、新たな視点での取り組みが大きな機会へとつながる可能性を秘めた分野として、さらに注力していきます。

5つの重点戦略③

次に、C「第5事業の創造」です。持続的な成長に向け、既存事業のさらなる強化とともに、次代を支える新たな事業領域への挑戦は欠かすことができません。

「7)シーズ・協業からの創造」では、要素技術に関する研究活動の強化や産学官連携による研究開発を推進することで、新たな成長のタネを数多く創出していくことを目指します。

5つの重点戦略④

次に、D「グループ横断機能の強化」です。組織間に横ぐしを通し、当社グループが一丸となって新たな価値創出のための取り組みを進めていくことが重要です。

「8)社会的課題の解決と事業活動の一体化」では、従来取り組んでいたCSR活動を今一度強化し、社会的課題の解決にかなう事業活動を確実に実践していくことで、経済的価値と社会的価値向上の両立を目指していきます。

「9)デジタルコミュニケーションの推進強化」では、デジタルを活用したマーケティング強化や情報データ活用の高度化、社内業務プロセスの改善による効率化を図っていきます。

5つの重点戦略⑤

最後は、E「成長を支える経営基盤の構築」です。当社グループの成長を支える重要なステークホルダーとの関係構築を強化し、事業基盤の拡充を図っていきます。

「10)人と組織の活性化」では、当社らしい働き方を追求する「TOLIワークスタイル」の推進や新たな教育制度の構築など、人と組織の活性化を目指します。

「11)「企業価値を高める」では、広報戦略による東リブランドの浸透、安定供給と効率化を目指すサプライチェーンマネジメントの強化、株主さまへの価値を最大化すべく、IR活動の強化を図るなど、より強固な事業基盤の構築を目指していきます。

経営指標

定量的な経営指標についてご説明します。「SHINKA Plus ONE」での連結経営指標は、売上高、利益ともに、新型コロナウイルス感染拡大前以上の水準を目指していきます。また、社会的課題の解決に向けた経営指標を設定し、経済的価値と社会的価値の向上の両立を目指していきます。

長期経営指標に記載している「CO2排出量削減目標」については、2021年度中に目標を設定し、情報開示する予定です。

新中期経営計画「SHINKA Plus ONE」の概要については以上です。

2022年3月期 連結業績見通し

2022年3月期の業績見通しについてご説明します。新型コロナウイルス感染症の収束がいまだ不透明な中、市場環境の回復にもややブレーキがかかるものと予測されます。抗ウイルス製品の開発や新常態に応じた販売促進に注力するとともに、非対面形式にも対応した営業体制を推進し、連結売上高880億円を目指します。

収益面では、春先より主要原材料価格の高騰が続き、減益の見通しとなっていますが、販売価格の改定やさらなる原価低減に取り組み、費用対効果を見据えた経費縮減を図ることで、営業利益の改善に努めていきます。

投資計画

当期の投資計画についてご説明します。「SHINKA Plus ONE」でもご説明したとおり、当社グループは独自性の高い新製品開発、並びにコストダウンを目的とする大型設備投資を進めています。

特に2022年3月期においては、滋賀事業所での大型投資が含まれています。基幹商品のコストダウンや新製品開発により、モノづくり企業としての競争優位性やブランド力を高めていきます。

配当の状況(連結ベース)

最後に、配当の状況です。2021年3月期の配当については、当決算期の財政状態とともに、中長期視点での事業環境や投資政策を総合的に勘案し、期末配当金として1株あたり8円を予定しています。また、2022年3月期については、すでに公表しているとおり、現下の状況を鑑み、前期同様、期末配当による年8円配当を予定しています。

以上をもちまして、本日の説明を終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。