当社概要

中川真章氏:みなさま、こんばんは。当社の「ユニークで社会から信頼されるグローバル企業へ」というテーマで会社のご説明をします。

本日の説明の流れですが、まずはじめに私どもの会社の概要についてご説明します。その後、みなさまがご関心のある成長戦略について、最後に株主還元などの株主のみなさまに直接関係のある項目をご説明します。

3ページをご覧ください。まず当社の概要です。私どもはDIC(ディー・アイ・シー)株式会社と申します。旧社名の付記がありますが、12年前に大日本インキ化学工業株式会社という昔の社名から、DIC株式会社という社名に変更しました。ところが、なかなか新社名が浸透していません。3文字のローマ字でわかりにくいのもあるのですが、今日のご説明でDICという新しい社名を覚えて帰ってもらうことが1つの大きな目的です。ぜひ、このあたりにご関心を持って聞いてください。

また、私どもは東証一部上場で、日経平均採用銘柄です。株価に関しては変動しているため、ご説明は省きます。

創業は1908年で、すでに創業112年目となっています。印刷インキでは世界シェアNo.1ですが、そのほかにも有機顔料や合成樹脂など、さまざまな製品を取り扱っています。

DIC 112年の歩み

4ページをご覧ください。DICの112年の歩みです。大きく分けて4つの時期に分かれています。まず、1つ目の時期として、112年前の明治時代である1908年にインキメーカーとして創業しています。このときには、海外からインキの原料を取り寄せ、練ってインキにして販売するところから事業をスタートしています。スライドの左側にいる和服を着た方が私どもの創業者なのですが、このような昔ながらの商売をしていました。

しかし、この創業者が「ただインキを練っているだけでは成長しない」ということで、原料を自分で作ろうと考えたのが2つ目の時期です。まず、1925年という創業してかなり早い時期に、スライドにある赤い色の粉のような、印刷インキの原料である有機顔料の自社生産を始めています。

また、戦後の1952年になってからは、もう1つの主要原料である、ワニスとも言われる合成樹脂も自社生産を始めました。インキを練るときに糊になるベタベタした素材ですが、これと色の粉を混ぜることによってインキができ、印刷物に刷ることができます。このようなところから私どもの化学メーカーとしての歩みが始まっています。

その後、3つ目の時期は1986年です。今から30数年前になりますが、アメリカのSun Chemicalという印刷インキのメーカーを買収し、M&Aによるグローバル展開が始まっています。

最後に、4つ目の時期として12年前に社名を変更し、今のDIC株式会社があります。

創業112年のグローバルな化学メーカー

5ページをご覧ください。現在のDICは世界64ヶ国174社と、極めてグローバルに展開している会社です。従業員は2万人ほどで、そのうちの70パーセント以上が海外で働いており、海外売上高比率も約60パーセントを占めています。このように、化学メーカーとしても極めてグローバル化が進んだ企業というのが1つの特徴です。

DICの世界トップシェア製品

6ページをご覧ください。先ほどもご説明しましたが、DICが世界トップシェアを持っている製品があります。代表的なものはスライドにある3つです。特に、創業事業でもある印刷インキは世界トップシェアであり、2番手とはずいぶん差をつけ、4分の1に近いシェアを持っています。

有機顔料のシェアはそれほど高くないのですが、世界で事業を行っている会社は少なく、これもトップシェアです。また、PPSコンパウンドは少し毛色が違います。後ほどご説明しますが、電気自動車やハイブリッドカーに使われている材料です。これも世界のトップシェアを占めています。このような、ユニークな製品をグローバルに展開しているのがDICの特徴です。

出版用途だけではない印刷インキ

次に7ページです。DICと言うと、やはり旧社名の大日本インキ化学工業の名前が有名で、未だに「インキメーカーですよね」「インキの市場は徐々に小さくなっていくのではないか」という印象を持たれていることが多いです。

もちろん、現在は印刷インキの事業は縮小しているのですが、一方で同じインキでもパッケージ用インキは成長しています。人口が増えて生活水準が向上し、食品包装や日用品などの包装用の材料の需要が増えています。そのため、今はそこに注力しています。

最近ではやはり環境対応が重要です。環境によい製品、あるいはリサイクルに適した製品などで市場の変化に対応していくのが、私どもの新しいビジネスになってきています。

インキの会社からカラーと快適の会社への転換

次に8ページです。実際、数字としてはどうなのかをご説明します。DICは、インキの会社からインキ以外も取り扱う会社に生まれ変わりつつあります。

まず、パッケージ用途にどんどんシフトしていくことで、売上や利益率が高まっています。インキは市場が飽和しているため、あまり高く売れず、利益も稼げない事業だったのですが、パッケージはいろいろな材料に印刷するということで、技術力が要求され、製品もある意味高く売れるため、利益率が向上しています。DICの平均利益率は、この10年くらいで1パーセントくらい高くなってきています。

また、売上高については、10年前は出版用インキを含めた印刷インキの売上が半分、印刷インキ以外の化学製品の売上が半分という会社でした。ところが、現在の比率は約4対6になっています。インキの比率が下がり、インキ以外の化学メーカーとしての製品群が増えてきています。

生活にDIC

9ページをご覧ください。「実際にどのような製品作っているのですか?」ということで、スライドに例を示しています。食パンの透明な包装フィルム、容器やその蓋、シャンプーやレトルト食品の容器、あるいは少し変ったものでは健康食品、食べ物に色をつける着色料、化粧品用の色をつける材料などを取り扱っています。後ほど、それぞれ詳しくご説明します。

DICの健康食品:スピルリナ

10ページをご覧ください。化学メーカーとしては毛色が変わっているということで、お気付きの方もいるかと思いますが、実は健康食品を作っています。スライドに示したのは「スピルリナ」という製品なのですが、健康食品業界ではなかなかマイナーなものです。アミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をたくさん含んでおり、今注目されているスーパーフードの中の1つです。我々はカリフォルニアで大きなプールを造り、このようなものを培養しています。このように、我々はヘルスケアのエリアも注力している分野として捉えています。

デジタルにDIC

次に11ページをご覧ください。やや本業のほうに戻り、デジタル分野についてご説明します。昨今、新型コロナウイルスの流行もあり、自宅で仕事をする方も多くなってきていますが、今、みなさまが見ている画面の液晶モニターに使われている材料として、このスライドにあるようないろいろな材料を我々は手がけています。

中でも、カラーフィルタ用顔料という、液晶テレビなどの画面で色を出す部分です。この中では、緑色と青色の顔料で世界No.1シェアを誇っています。緑色はほとんどで我々の製品が使われており、みなさまがご覧になっている画面もどこかにおそらくDICの製品が使われているのではないかと思います。その他にも、スマートフォンなどでも私どもの製品はいろいろ利用されています。

自動車にDIC

12ページをご覧ください。自動車です。先ほど少し自動車のお話をしましたが、PPSコンパウンドというのは、自動車のエンジン、モーター部分、特に、ハイブリッド、EVのモーター部分に使われている材料です。ここはまた後で少しお話をします。

その他にも、色をつける部分の顔料や塗料用の合成樹脂、シートの合成皮革など、自動車分野でもいろいろな材料を供給しています。残念ながらDICのラベルが付いている製品はないため、みなさまが「これがDICの製品だ」と気が付くことはないのですが、たくさんの製品を取り扱っています。

各セグメントと2019年度実績

13ページをご覧ください。ここでは事業セグメントについてご説明します。私どもは現在3つの事業セグメントで事業を行っています。3年前までは、製品軸ということで「印刷インキセグメント」というような呼び方をしていたのですが、「社会への提供価値を軸としたセグメント」に変えました。

したがって、セグメントとしては、食品包装材料などを中心とした「パッケージング&グラフィック」、色の材料を中心とした「カラー&ディスプレイ」、最後に「ファンクショナルプロダクツ」という3つで構成されています。

「パッケージング&グラフィック」は、食品包装など、包装材料を通じて「安全・安心」を提供します。また、「カラー&ディスプレイ」は、表示材料を通じて「彩り」を提供します。「ファンクショナルプロダクツ」は、自動車業界や建設業界などにおいて、機能材料を通じて「快適」を提供します。このように、社会的価値をキーにしてセグメントを3つに分けています。

売上高としては、ご覧のようにまだまだ「パッケージング&グラフィック」の比率が高いのですが、「カラー&ディスプレイ」は非常に利益率が高いという違いもあります。

各セグメントの構成比

14ページをご覧ください。今お伝えした各セグメントですが、構成比として売上高の約半分は「パッケージング&グラフィック」であり、約3分の1が「ファンクショナルプロダクツ」、残りが「カラー&ディスプレイ」となっています。

しかしながら、利益に関しては、「カラー&ディスプレイ」だけで20パーセント以上を稼いでおり、非常に利益率が高くなっています。「ファンクショナルプロダクツ」もそこそこ利益が出ますので、比率としては「ファンクショナルプロダクツ」のほうがやや多くなりますが、利益に関しては、特にインキに偏らないバランスのとれた構成になっています。

地域別売上高構成比

続いて15ページです。先ほど、非常にグローバルな会社であるということで、海外売上高比率が約60パーセントを占めているとお話ししました。「この60パーセントの中身はどうか?」ということですが、ヨーロッパやアメリカ、アジアで約3分の1ずつと、売上としては非常に地域バランスがよい構成になっています。

ただ、営業利益面で見ると、特にアジア・オセアニア地域での利益が高くなっています。これは、パッケージ用の製品など利益率の高い新しい製品を投入しているためです。また、インキに関しても利益率の高いものを投入しているため、利益率が高くなっています。

特定の地域に売上が偏っていませんので、新型コロナウイルスの流行の中でも影響を受けにくいという強みを持っています。

DICの目指す企業像

次に成長戦略についてご説明します。17ページをご覧ください。DICの2019年から2021年までの3ヶ年計画で目指している姿を示しています。先ほど言いましたセグメントごとに、「安全・安心」「彩り」「快適」という社会への価値提供に取り組んでいます。それを通じて、「ユニークで社会から信頼されるグローバル企業へ」という最初のテーマに戻ります。

企業ですから、当然「経済的価値」を追求しなければいけません。売上は上げなければならず、高い利益を得たいということなのですが、一方で、昨今はサステナビリティや事業の継続性、あるいは市場へどのような価値を提供できるかという、「社会的価値」が求められています。このため、DICでは「経済的価値」と「社会的価値」の両立を目指すということを事業ポートフォリオに定め、事業の転換を目指しています。

実現のための基本戦略 中期経営計画(2019−2021)

18ページをご覧ください。どのようにポートフォリオを転換するのかをご説明しています。2つの大きな作戦がありますが、1つが「事業の質的転換」です。市場が小さくなっている出版、新聞インキから、市場が大きくなっているパッケージインキへと、マクロ環境の変化に対応した競争力のある事業へ転換していきます。また、先ほどの健康食品もそうですが、「社会的価値」を意識した事業へ転換します。

もう1つは、「新事業の創出」です。今までいろいろな事業を手がけてきましたが、これからさらに社会課題、あるいは社会が大きく変わっていく中で、そこに対応した新しい事業を創らなければなりません。そのためには、中にある技術だけではなく、外のリソースなどのいろいろなものも活用していきます。

パッケージ分野での取り組み①

19ページです。ここからは、各セグメントでどのようなことを行っているかをご説明します。まずパッケージ分野では、「社会的価値」としてやはり環境負荷が少ないもの、例えば消費期限を延ばすことによってフードロスを減らしたり、密閉性を高めることによって食品の安全を高めたりなど、いろいろなことを考えています。

「経済的価値」としては、先ほどもお伝えしたように、世界的にパッケージ市場は大きくなっています。したがって、パッケージ用のインキだけではなく、接着剤やフィルムなど、包装材料に関するいろいろなソリューションを提供するという我々の強みを生かした新しい事業に取り組んでいます。

パッケージ分野の取り組み②

20ページをご覧ください。パッケージ分野での1つの取り組みとして、高精細印刷対応の軟包装用水性フレキソインキがあります。少し長い名前でわかりにくいですが、水性というところをキーポイントに見てください。

今までインキと言うと、例えばベンゼンやトルエン、キシレンなどを使っていましたが、これらの溶剤はとにかくにおいが強いです。大気中にいろいろなものが出ますので、あまり環境によくありません。そこで、水でインキを溶かす材料に変えていっています。それが水性インキです。

軟包装というペットボトルのラベルや食品包装のフィルムなど、いろいろなものに刷るのですが、そのようなものに水性インキを採用することで、においのする揮発性有機化合物を減らし、環境負荷も減らしていこうという取り組みを行っています。

パッケージ分野での取り組み③

続いて21ページです。ここでは、包装用多層フィルムのイージーピールフィルムをご紹介します。30秒ほど、当社のテレビCMをご覧ください。

吉岡里帆さんにご紹介していただきましたイージーピールフィルムは、本当に1ミリもないような極めて薄いフィルムなのですが、空気を通さないなど、いろいろな機能が含まれています。一方で、剥がれにくくて開けやすいという特長があり、例えばお豆腐やサラダやプリンのパックなど、いろいろなものに使われています。このフィルムを使うことによって消費期限が延びてフードロスが減り、安全性も高まります。

コンビニなどでもたくさん販売されていますので、見つけたら「これはもしかしたらDICの製品かもしれない」と、ぜひ想像してもらえると大変ありがたいです。

エレクトロニクス分野での取り組み①

続いて22ページをご覧ください。エレクトロニクスでも化学が応えられる分野は意外とあります。「社会的価値」としては、情報社会を支える機能性と、やはりここでも環境負荷の低減を両立します。「経済的価値」としては、我々は機械や通信機器を作っているわけではありませんので、材料面のほとんどがニッチなものです。「これ用のこれ」というような専用のものが多く、非常にニッチですが、そこに求められている高い機能を提供することで、極めて高い収益性が実現できます。

エレクトロニクス分野での取り組み②

例として、23ページをご覧ください。ここでご紹介しているのはエポキシ樹脂です。エポキシ樹脂という名前にはあまりなじみがないと思いますが、半導体のICチップがある黒いところに使われている半導体封止材です。例えば、スライドに示した緑色のプリント配線基板にもエポキシ樹脂が使われています。エレクトロニクス製品がだんだん高度化していく中で、耐熱性や高周波の通信に対応できる機能など、素材にも高い性能が求められています。

また、特に今注目されているのが5Gです。スマートフォンの5G世代の普及がいよいよ始まりましたが、ここでは極めて高い周波数で通信が行われますので、それに対応できる耐久性を持った樹脂が必要です。私どものエポキシ樹脂は、ここで今非常に売上高を伸ばしていますが、今後は5Gの次に6Gが出てきますので、それに向けた開発もどんどん進めています。

エレクトロニクス分野での取り組み③

24ページをご覧ください。先ほどもご紹介したカラーフィルタ用顔料です。テレビやパソコンの液晶画面に色を出すには、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3原色の顔料が必要です。その中で、我々は青と緑、特に緑で80パーセント以上の世界シェアがあり、デファクトスタンダードになっています。

これは、光を通しながら鮮やかに色を付けるという、印刷インキから始まっている顔料の合成技術の中でも極めて特別な、特許のある技術です。市場としてはものすごくニッチですが、独占して提供できる高い技術、機能という特徴的な事業を行っています。

戦略的M&Aによる成長の加速①

この顔料について、戦略的M&Aを計画しているものがありますのでご紹介します。2019年の8月に発表したのですが、顔料メーカーとして有機、無機を取り扱っているドイツの大手メーカーであるBASFの顔料事業を買収することで合意しました。買収金額は1,162億円ということで、DICのM&Aとしては過去最大の金額です。実はまだクロージングは終わっておらず、今年の年末までに終わらせる予定です。

戦略的M&Aによる成長の加速②

では、なぜBASFの顔料事業を買収するかということを26ページでご説明します。BASFの顔料事業は、先ほど言いましたように無機も取り扱っています。我々は有機化学が強いのですが、有機顔料と言うと、赤や緑などの色が付いているものが多いです。一方で、無機顔料は白や黒、銀色などのベーシックな無彩色が作られています。

今の先端分野は化粧品です。外に出かけることが減ったため、市場としては非常にインバウンドがなくて苦しいのですが、技術的には高い安全性、高い機能性、高い意匠性が求められる最先端分野です。その中で、我々はアルミを持っており、BASFはパールを持っているというように、お互い違う材料を持って展開していますので、DICとBASFが1つになることで非常にメリットがあります。

また、BASFはドイツのメーカーですから、ヨーロッパに強いです。我々は日本のメーカーですし、我々が買収したSun Chemicalはアメリカのメーカーです。そのため、DICとBASFが1つになると、世界トップクラスの顔料メーカーになることができるのではないかということで、製品、地域、あるいは自動車や化粧品ディスプレイのようないろいろな用途でも世界をリードする製品が生み出せると期待しています。

新事業創出

そのような中で、中期経営計画がどうなっているかご説明します。27ページをご覧ください。中期経営計画の中で、先ほどの「Value Transformation」に加えて「New Pillar Creation」(新事業創出)ということでご説明している部分です。分野としては、「エレクトロニクス」「オートモーティブ」「次世代パッケージ」「ヘルスケア」の4分野がありますが、スライドでご覧いただいているのは「ヘルスケア」と「次世代パッケージ」です。

光造形用の3Dプリンタ材料とは、単純に言えば入れ歯の材料です。歯科材料を3Dプリンタで出力できるようにします。また、スライドの右側のパッケージに関しては、無溶剤の接着剤を開発しています。接着剤も溶剤が必要であり、においがするため、溶剤をなくしてしまおうと考え、開発しています。

中期経営計画の位置づけ

中期経営計画の位置づけです。2019年に米中貿易摩擦、2020年に新型コロナウイルスの影響がありましたので、残念ながら、我々が当初計画していた営業利益600億円から700億円のレベルは達成できていません。今年の予想はその半分の350億円の見込みです。前年から比べると少し落ちていますが、先ほど説明してきた「Value Transformation」と「New Pillar Creation」という2つの戦略は決して間違っていないと思います。社会活動が回復し、市場が復活してくれば、我々が2025年の中期的な目標に位置づけている営業利益1,000億円は必ず達成できるという気持ちで取り組んでいます。

通期の見通し

ここからはみなさまに直接関係のある株主還元について、簡単にご説明したいと思います。30ページをご覧ください。通期の見通しですが、先ほどお伝えしたように新型コロナウイルスの影響などもあり、今年度は減収減益となる見通しです。このあたりは大変申しわけないのですが、社会活動の回復に伴う経済活動の回復でなんとか再び上向けていきたいと思っています。

配当方針

31ページです。配当方針ですが、我々は中期経営計画では配当性向30パーセントを目指していました。2018年までは30パーセント前後でしたが、2019年に業績が悪化し、残念ながら減配しています。一方で、配当性向に関しては40パーセントまで届いています。今年度の配当見通しは、今のところ前年と同じ100円で、減配はできるだけしたくないと考えています。結果として、スライドの右側に出している数字はよくなっています。

株主優待は年2回

32ページは株主優待です。私どもも株主優待として面白い商品を出せるわけではないのですが、6月末締め切りで年末に毎年カレンダーをお配りしています。次にご説明しますが、「DIC川村記念美術館」という美術館を運営しており、そこの収蔵作品を取り入れたカレンダーとなっています。また、12月末の基準で4月の上旬に、健康食品のシリーズ製品の1つと美術館の入場券付き絵はがきをお配りしています。

DIC川村記念美術館を運営

今ご説明した「DIC川村記念美術館」についてです。私どもは、ブランディングや社会貢献活動の一貫として、千葉県佐倉市に「DIC川村記念美術館」という美術館を運営しています。こちらには大きな庭園とアメリカの戦後美術を中心とした、どちらかと言うと現代美術寄りの絵画や彫刻などを集めた特徴的な美術館になっています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で完全予約制になっていますので、ぜひホームページをご覧いただいてご予約の上、ご来場いただければと思います。

DICをもっと知りたくなったら

今日は30分ほどのご説明でしたので、説明しきれなかった部分もたくさんあります。吉岡里帆さんのCMも、たくさんある中の1本だけをご紹介しましたが、「もっとDICのことを知ってみたい」「ちょっと気になった」ということであれば、ぜひWebサイトなどをご覧になっていただき、当社にご関心を向けていただければと考えています。私の説明は以上です。ご清聴いただき、ありがとうございました。

質疑応答:成長が期待される事業分野について

「電子化で紙媒体は減っています。それに代わり成長が期待される事業分野について教えてください」というご質問がきています。

電子化によって、いわゆる新聞、雑誌などの出版物やカタログなどはどうしても減っています。特に紙の印刷物に関しては、やはり今回の新型コロナウイルスもあいまって、市場の縮小が極めて進んでいる段階です。その一方、それに代わって成長が期待される分野は、インキの中では先ほどご紹介したパッケージです。これは安定して成長しています。

また、インキの仲間ということで言うとジェットインキも成長が期待されています。今まで印刷物を何千部、何万部刷っていたのが、100部、1,000部でよいとなってくるとオンデマンドプリンタが必要になり、インクジェットの出番となります。我々は、どちらかというと家庭用のインクジェットではなく、オフィス機器やオンデマンドプリンタ用のインクジェットなどの業務用を中心に扱っているため、今後そのようなところが伸びていくと思います。

また、セキュリティインキというものがあります。パスポートなどをお持ちであればご覧ください。空港などでのイミグレーションで、パスポートの写真のところにUVランプを当てると字が出てくるのですが、そのような特殊なインキを作ったりしています。このようなものは、例えば、お札やブランド製品、クレジットカードなどで本物であることを証明するために使われています。

インキ以外では、先ほど挙げたエポキシ樹脂などのエレクトロニクスやディスプレイ分野、あるいは半導体関連で言うと、今日はご紹介できなかったのですが、工業用テープや脱酸素膜という半導体で使われる材料、半導体の製造に使われる材料など、いろいろ取り扱っています。このようなものが増えていくと期待しています。

質疑応答:原料価格上昇による利益低下について

続いて、「中期経営計画の課題に原料価格上昇による利益低下がありました。この課題への取り組み状況を教えてください」というご質問です。

我々は化学メーカーですが、石油出発の原料が非常に多く、原材料の70パーセントほどで石油を出発とした原料を使っています。したがって、石油価格が上下すると原料価格がけっこう大きく変わります。去年まで石油価格は上昇していましたので、原料価格が上昇して利益率が下がっていました。

一方、ご存知のとおり今年のはじめに石油価格が急激に低下し、現在でも低迷しています。したがって、今年は単純に石油価格が下がったことによるメリットが少し出てくると考えています。ただ、それに安泰していても、石油に引きずられて利益が上がったり下がったりすることに変わりはありませんので、考え方としては、石油製品から石油でない製品への、いわゆる「Value Transformation」を行います。

一例としては生物由来材料が挙げられます。例えば、大豆油や米ぬか油など、生物が作った材料を使ってインキの材料にします。また、もっと進んでいくと藻があります。先ほどの健康食品は「スピルリナ」という藻で作っているのですが、同じような藻から油を取ったり、顔料を作ったり合成樹脂を作ったりできないか研究しています。

そのような植物や天然物から材料をもってくると、全体としてはカーボンオフセット、カーボンニュートラルということで、環境への影響も少なく、石油の影響も受けず、よい材料ができるのではないかと考えています。

質疑応答:ルネサンスについて

次に、ルネサンスについてご質問がありました。つい先日まで、私どもの持分法適用会社にスポーツクラブのルネサンスが入っていました。実は持分が下がり、8月に持分法対象から外れてしまったのですが、ルネサンスの成り立ちと、私どもの中での位置づけをご説明します。

ルネサンスという会社は、もともと私どもが作っていた合成樹脂、ウレタン樹脂の販売から発想しています。ウレタン樹脂は、テニスコートや運動場の床のアンツーカーに使われているウレタンゴムです。それを販売していた人が、「これからスポーツが流行るのではないか。スポーツクラブを営業したら素晴らしい事業になるのではないか」と考え、社内ベンチャーでスポーツクラブを始めたことがスタートです。

もう40年くらい前の話なのですが、その方が思ったとおり、そこからスポーツクラブはどんどん成長し、日本でも屈指の大きなスポーツクラブに成長しています。その結果、私どもの中での位置づけはだんだん本業から離れていき、最終的には持分法適用会社から外れていくということです。

これからも健康食品を売っていただいたりなど、事業としてはつながりが切れないところもあるため、仲良くしていこうと思いますが、ルネサンスは上場もしており、独立して事業を進めていきます。そのような位置づけです。

質疑応答:トップラインが伸びていない理由について

次に、「事業内容のシフトはわかりましたが、トップラインが伸びていない理由はどう考えていますか?」というご質問がきています。

おっしゃるとおり、売上高に関して2019年、2020年と前年対比で見るとなかなか伸びていません。先ほどご説明したように、理由の1つは社会的状況です。米中貿易摩擦で中国の売上が伸びなかったことや、新型コロナウイルスの影響で今年前半はいろいろなものの売上が伸びていません。結果として、トップラインがなかなか伸びないということがあります。

一方で、我々はもっとトップラインを伸ばさなければなりません。そのために事業のポートフォリオ転換を進めているわけです。これも昨今の新型コロナウイルスにより新製品の評価が遅れ、思ったとおりに進んではいないのですが、目指している方向は間違いないと思っています。

食品包装は間違いなく、これからもどんどん環境に対応したものを出していきます。伸びていく市場だと思っていますし、エレクトロニクスやディスプレイ、自動車、あるいはライフサイエンスなどで新しい製品を投入していくことでトップラインを伸ばさなければいけません。そのようなところを加速しなければいけないのですが、この2年は少し苦戦しています。

質疑応答:SDGs達成に向けた目標について

「SDGsの達成に向けてどのような達成目標を定めていますか? 石油化学製品を使わないフィルムなどの開発を行ってほしいです」というご質問がありました。

SDGsの達成に向けていろいろな目標を定めていますが、1つはカーボンの使用量の削減です。私どもは化学メーカーですので、やはりいろいろなものを排出しています。製造すれば化学物質の排出もありますし、石油原料を使うことによってVOCの排出もあります。このようなものを長期にわたって削減していこうと考えています。

私どもの統合報告書では目標の説明をしています。DICグループが大きく目標として掲げているのは、やはり二酸化炭素排出量の削減です。2013年を起点に2030年を目標として、2013年比で30パーセントのCO2排出量削減を1つの大きな目標にしています。その中で、例えば先ほどお伝えしたような天然由来の材料を使うなど、2018年から2021年の間に低炭素事業の売上高を25パーセント増やす目標を立て、達成を狙っています。基本的には、環境にやさしい材料に変えて環境負荷を下げていく考えです。

石油化学製品を使わないフィルムはなかなか難しいと考えています。フィルムは、例えばポリスチレンやポリプロピレンなどの石油化学製品でできています。生分解性などもありますが、やはりゴミになることは変わらないため、どのようにリサイクル可能なものにしていくか、あるいはフィルムではなくコーティングができないかなど、いろいろなことを考えています。いずれにしろ、いかに環境負荷の低い材料を使って環境負荷の低い製品を作っていくか考えているところです。

質疑応答:ラベルレスボトルについて

「ラベルレスボトルについてどのような対応をしていきますか?」というご質問です。「フレキソインキはそのまま直接刷れますか」といったお話かと思います。

ラベルレスボトルについて、ラベルがまったくないと何もわからないですよね。ただの透明なボトルが売られていては、何のボトルかわかりません。例えば、先ほどのインクジェットを使って刷る方法もあるかもしれません。これから我々が考えていかなければいけないところです。今の我々はラベル用のフレキソインキやグラビアインキを中心に生産していますが、ラベルレスに対応したものは、これから我々が新しい技術として作っていかなければいけない時代が来たと思っています。

質疑応答:商品開発における強みについて

続いて、「なぜ御社は高機能製品の開発ができるのでしょうか? 商品開発における強みを教えてください」というご質問です。

我々はいろいろなものを開発しています。高機能製品はその結果として出てくるわけですが、基盤技術としては、まず印刷インキを均等に練ってバランスよく分散し、安定した性能を出す技術が必要です。そのためには、顔料を設計する、合成する、結晶を作るなど、材料を開発するいろいろな技術があります。合成樹脂はポリマーという高分子の複雑な構造をしていますが、それも同じです。

このようなものを作り出す技術があること、またいろいろなニーズに応じていろいろな性能をもった化学製品を生み出す技術があることが強みです。いろいろな事業を行っていますが、お客さまのニーズは世代によって変わってきます。今であれば「環境対応してください」という話になるわけですが、その時その時に応じて自社でもっているあらゆる技術の中から適切な技術を選び出し、製品を開発していきます。このようなところが私どもの強みであると言えます。

質疑応答:社名について

プリミティブなものに戻りますが、「社名のDICは何の略ですか?」というご質問がありました。

意味は2つあります。1つは、DICの前の会社名の大日本インキ化学工業株式会社の略称ということです。大日本インキ化学工業を英語で言うと、大日本の「D」、インクの「I」、ケミカルの「C」となります。そのため、その3つでDICとなり、単純に会社の略称がDICであることから出発しているという点があります。

一方で、シンボルマークの「i」が逆さまになっているのですが、DICとカスタマーの間のコラボレーションで新しいものを生み出すということで、そのイノベーションをこのエクスクラメーションマークで表現しています。少しわかりにくいと言われているのですが、そのような意味も持たせてDICという言葉を選びました。

ぜひこのシンボルマークも含めてDICという言葉を覚えていただいて、「このような化学会社がいろいろなことを行っている」「何か新しいものを出しそうだ」というイメージをもっていただけると大変ありがたいと思います。以上でご質問を終了します。みなさま、たくさんのご質問をありがとうございました。

最後に私から一言申し上げます。本日はみなさま、お忙しいところ夜遅い時間にも関わらずご視聴いただきましてありがとうございました。私どもはまだまだ知名度も認知度も足りないと思っています。業容もなかなか理解しにくいとよく言われており、本日のご説明で多少なりとも私どもの会社を知っていただけましたら幸いです。ぜひ私どもに関心をもっていただいて、今後も気にしていただければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。