不測の事態に備えて - 社会のインフラとしての機能を発揮 -
宮田浩美氏:スズケンの宮田です。日頃のご指導ご鞭撻に心より感謝します。初めに新型コロナウイルス感染症により、お亡くなりになられた方々そしてそのご家族、関係者のみなさまには謹んでお悔やみしますとともに、罹患されたみなさまの早期回復と感染の早期収束を心よりお祈りします。
ついては、新型コロナウイルスのさらなる感染拡大防止に向けて、2020年3月期の決算説明会は中止し、Web配信にてご説明することとしました。みなさまのご理解のほど、何卒よろしくお願いします。
新型コロナウイルス感染症への対策として、配送等のバックアップ体制を確立するために輪番制を導入し、また東邦ホールディングスや八神製作所と不測の事態に備えて、医療機関への安定供給に向けて協業していくことについても合意しました。
またのちほど詳しくお話ししますが、現在提携している協業企業と連携し、各社が提供している対策ツールの普及により、感染拡大防止に寄与すべく当社グループも一丸となって支援を行なっています。私たちは生命関連商品である、医薬品などを扱う者として非常時においても医療機関へ安定供給が継続できるよう社会的使命を果たしていきます。
コンプライアンス最上位
なお、みなさまにご心配をおかけしていますが、昨年11月に当社は独立行政法人地域医療機能推進機構JCHOの入札に関して、独占禁止法違反の疑いがあるとして公正取引委員会の立ち入り検査を受けました。現在も調査中ですが、多くの関係者のみなさまにご心配をおかけしましたこと、この場をお借りし深くお詫びします。
調査には今も全面的に協力しているところですので、詳細については現時点では差し控えます。いずれにしても、強制捜査を受け疑いが生じる事態となったことについては、真摯に受け止め、あらためてコンプライアンス体制を見直し、継続して強化しているところです。
今年4月には、公正かつ独立の立場で牽制をきかせる組織体制とするために、組織再編を実施しました。どこに至らぬ点があるのか、しっかりと点検してガバナンス体制の強化を図り、社員一人ひとりがコンプライアンス最上位の意識を再認識して活動を行ない、みなさまの信頼回復に努めていきます。
さて、あらためて前中期成長戦略「One Suzuken 2019」の最終年度を振り返りますと、2019年度は消費税増税に伴う薬価改定、公正取引委員会による立ち入り検査、そして多くの自然災害に見舞われ、さらには新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響など、私たちを取り巻く業界環境が大きく変化したことにより、変革を行なう時間軸も大きく変わり、スピードを上げて対応を行なうべきと考えています。本日は、この環境下におけるその最終年度の成果とこれからの3年間、新中期成長戦略に関してご説明します。
1.連結
初めに2020年3月期、決算についてご説明します。すでに4月28日に業績予想の修正を発表していますが、2020年3月期の連結状況はご覧のとおり増収増益となっています。セグメントごとにその要因についてご説明しますが、その前に中期成長戦略「One Suzuken 2019」の振り返りをしたいと思います。
中期成長戦略 「One Suzuken 2019」
「One Suzuken」の文字どおり、グループ一体となることを目指すとともに、低コスト経営の実現に向け仕事の仕方、事業構造などの見直しを図っていきました。そして協業による新たなビジネスモデルの構築に向けて、その準備期間としても果敢に取り組んできました。
中期成長戦略 「One Suzuken 2019」 振返り
とくに取引から取組による収益モデルの変革に向け、この3年間でさまざまな企業と協業するなど、種まきを行ないました。スペシャリティ医薬品トレーサビリティシステムである「キュービックスシステム」を始め、すでに芽も出始めてきた取り組みもあります。
従来のビジネスモデルに固執することなく、環境の変化をチャンスと捉え果敢にチャレンジしていったことが業績に結び付き、中期成長戦略「One Suzuken 2019」はおおむね達成できたものと考えています。
2.医薬品卸売事業
それでは、セグメントごとにご説明します。初めに医薬品卸売事業です。2020年3月期の医療用医薬品市場は、消費税増税に伴う薬価改定や新型コロナウイルス感染拡大に伴う受診抑制の影響はあったものの、抗悪性腫瘍剤の市場拡大やスペシャリティ医薬品等の新薬の寄与などにより伸長したものと推測しています。
売上高は市場伸長に加えて、主にスペシャリティ医薬品を始めとする新薬の販売増加や、個々のお得意様のニーズにお応えする活動に継続して取り組んだことなどにより増収となりました。市場の伸びと当社の売上高の伸びについては、販売価ベースのクレコンデータでは市場の伸びが2.5パーセント。
当社グループの医療用医薬品の売上高増加率が4.2パーセントであり、市場を1.7ポイント上回っており、市場を上回る売上高の伸びを確保できたものと推察しています。営業利益は増収効果に加え、個々の医療用医薬品の価値に見合った価格交渉を徹底したこと、さらに販管費の抑制に努めたことなどにより増益となりました。
3.医薬品製造事業
次に医薬品製造事業です。売上高は「メトアナ配合錠」の早期売上最大化に向け、取り組むとともに「スイニー錠」や「ウリアデック錠」を中心に販売促進に努めたものの、前年同期に研究開発売上があったことおよび「セイブル」の特許切れに伴う、後発医薬品の影響などにより減収となっています。
営業利益は、販管費の抑制に努め増益となりました。なお、パイプラインの状況としまして二次性副甲状腺機能亢進症治療薬「SK-1403」については、第3層試験を実施しており今年度中の申請を目指しています。開発が順調に進んでいますので、早い段階で申請できるよう努めていきます。
4.保険薬局事業
次に保険薬局事業です。売上高は薬局のかかりつけ機能強化の取り組みによる技術料収入の増加により増収となりました。営業利益は薬剤師の確保に伴う人件費の増加などにより減益となりました。店舗数は2020年3月末時点で613店舗となっており、新規出店が5店舗、M&Aが6店舗、閉局が13店舗とスクラップ&ビルドを推進したことにより、2019年3月末と比べて2店舗の減少です。
5.医療関連サービス等事業
次に医療関連サービス等事業です。売上高は主に、メーカー支援サービス事業の流通受託が増加したことや、介護事業において施設利用者さまが増加したことなどにより増収となりました。
営業利益は、メーカー支援事業において流通を担う医薬品卸事業の設備投資や、業務負荷などを考慮した料金体系の見直しにより減益となりました。なお、メーカー支援サービス事業はメーカー物流が前期と比較して3社増加し、2020年3月末時点で38社、希少疾病薬の一社流通は3社3品目増加し20社、33品目を受託しています。
6.株主還元
続きまして、株主還元についてご説明します。期末配当については、すでにリリースしていますように普通配当で4円、キュービックス3周年を記念した記念配当で4円、合計8円増配の40円、年間配当を72円としています。なお、期初においては211万株の自己株の取得を実施しています。この結果連結配当性向は23.2パーセント、2年間の平均総還元性向は74パーセントとなりました。以上が2020年3月期の決算概況となります。
1.2021年3月期 業績予想 および 配当予想
続きまして、2021年3月期業績予想についてご説明します。2021年3月期の業績予想については、新型コロナウイルス感染拡大に伴い業績予想を適正かつ合理的に予測することは困難と判断し、現時点では未定とさせていただいています。適正かつ合理的な予測が可能となりましたら、速やかに公表します。
業績予想がお示しできない状況下ではありますが、配当については安定的な配当の継続を考えており、2021年3月期の配当予想は昨年度の基本配当をベースとして考えており、中間期で36円、期末で36円、年間合計72円を予定しています。
1.スズケングループの社会的存在意義
さて、ここからは2020年4月から3年間の新中期成長戦略についてご説明します。まず、新中期成長戦略をご説明させていただく前に、スズケングループが大切にしていきたい考え方について、お話しします。それはスズケングループが事業を通じて、さまざまな社会的な課題を解決する、まさに社会にとってなくてはならない存在になっていきたいということです。
スズケンは創業以来「世のため人のため」、「お得意様に学ぶ」という創業の精神のもとさまざまな事業を展開していきました。社会的インフラとしての医薬品流通、地域社会に貢献するさまざまな事業、機能はスズケングループが社会に提供している大変重要な価値だと考えています。
昨今言われているESGやSDGsの観点はまさに創業の心や、経営理念を具現化したものであると考えています。健康創造領域で社会に貢献する企業としてより一層、今ある事業を進化させていくと同時に、日本が目指す新たなデジタル社会であるSociety5.0において、社会の課題を解決できる新たな事業展開を目指していきたいと考えています。
2.新中期成長戦略 基本理念
これらを踏まえ、新中期成長戦略の基本理念は「May I”health”you? 5.0」としています。この来たるべきSociety5.0の時代において、日本に加えアジアの幅広い「you」の方々に対して健康創造領域「health」において「help」お役に立てる企業でありたい、なくてはならない存在になりたいという思いが込められています。
3.新中期成長戦略の位置づけ
これまで私たちは「One Suzuken」を基本理念にグループ一体経営の実現に向けて取り組んできました。一方で、私たちを取り巻く経営環境は想定を超えるスピードで大きく変化しており、今まさに大きな転換期にあります。創業者、鈴木謙三の創業を第一の創業と位置付けますと、第二の創業は1997年の東証一部上場を果たした時、そしてこれからの時代を第三の創業期として位置付けています。
新しいビジネスモデルの構築や、新たな事業構築に向けてこれからの3年間は第三の創業期をキーワードに「One Suzuken」を確実に実践していくフェーズと位置付け、2025年ビジョンの実現を目指していきたいと考えています。
4.新中期成長戦略の骨子
次に、新中期成長戦略の戦略骨子についてご説明します。Aの「Only one」第三の創業に向け新事業の立ち上げではスピード感を重視し、さまざまな企業との協業関係の構築も含め、当社にしかできない「Only one」ビジネスモデルの構築を目指していきます。
Bの「As One」。各事業の成長と事業間シナジーの発揮では、既存事業それぞれが成長することはもとより、さらにその事業間がより連携することでシナジー効果が生まれて、「As One」としてグループ一体で新しい価値を提供していきます。
Cの「One point improvement」さらなる筋肉質化では、前中期成長戦略から実行しているグループ構造改革を加速化させ、生産性向上の取組みを徹底的に進めていきます。新中期成長戦略におきましては、この「Only one」「As One」「One point improvement」の取組み、各事業が連動しながらグループ一体となって「May I”health”you? 5.0」を実現していきます。
A.第3の創業に向けた新事業の立ち上げ [Only One]
ここからは、3つの戦略骨子について簡単にご説明します。まずは「Only one」の第三の創業に向けた新事業の立ち上げにおける、デジタル化時代の新たなビジネスモデルの構築についてです。このデジタル化への対応にはさまざまな協業パートナーの力も必要と考えており、これまでDr.JOY、welby、Embraceと資本業務提携を実施してきました。
そして今回新たにUbie、SUSMEDとの資本業務提携を発表させていただいています。両社に関してはのちほどご説明しますが、デジタル領域のネットの情報のみならず、当社グループが有するリアルな経営資源が繋ぐ役割を果たすことで、地域の情報を集め最適な状態で提供することができれば、お得意さまが抱える問題や社会問題の解決にも寄与するものと考えています。
B.各事業の成長と事業間シナジーの発揮 [As One]
次に、2つ目の戦略骨子「As one」の既存事業の成長と事業間シナジーの発揮についてご説明します。医薬品卸売事業においては、カテゴリーチェンジへの対応としてスペシャリティ医薬品流通ではダントツナンバーワンを目指して、またジェネリック医薬品流通では東邦ホールディングスとの合弁会社であるTSファーマを中心とした、新たなビジネスモデルの構築を目指していきます。
そして前中計期間から取り組んでいる「キュービックスシステム」もさまざまなシーンでご活用いただけるラインナップを増やしていきましたが、さらなる普及拡大に努め製薬メーカー、医療機関、患者さまのお役に立つと同時に医薬品の廃棄ロス削減といった、社会課題の解決にも対応していきます。
グローバル事業については、ヘルスケア事業本部と統合しこの3年間は中国、韓国に集中し協業関係にある中国の上海鈴謙滬中やEPS、益新、韓国のポクサンナイスとともに事業拡大を図っていきたいと考えています。その他の事業に関しても、スライドに記載している内容を中心に取り組み、各事業それぞれの成長を目指していきます。
なお、さらなる成長を目指すには各事業間での連携や、外部企業との協業により機能連携を行なった上でシナジーを生み出していくことが重要と考えています。例えば、医薬品卸事業、保険薬局、介護施設が地域の中で一体となって地域包括ケアへ取組み、その輪をリアルとデジタルで繋いでいくためには、デジタル系の力が必要になっていきます。
各事業が思い切った発想で新しい価値、サービスの創造にチャレンジし、これまで培ってきた機能や多様な人財力を結集して単独では実現できなかった価値を発揮していきたいと考えています。ポイントは各テーマそれぞれで完結するのではなく、連動していくことです。「As One」を中心に既存事業成長を発展させながら、それぞれの事業や機能の強みを活かし「Only one」の新たな事業の創出へと繋げていきたいと考えています。
C.更なる筋肉質化 [One Point Improvement]
3つ目の戦略骨子「One point improvement」更なる筋肉質化についてご説明しますが、今回あえて「更なる」という言葉を付しています。これは前中計から取り組んでいる「One point improvement」を目指して、コスト構造改革を進めるということです。
3年間にわたり無駄の排除というキーワードを掲げて取組んでいきましたが、さらにこの取組みを加速化させて医薬品卸売事業の構造改革、グループ関節機能の共同化、グループ本社機能の適正化を図るなど、更なる集約効率化を一層推進することで、グループの生産性向上を実現していきます。
デジタル化時代の新たなビジネスモデルの構築に向けて
このページは、3つの戦略骨子が融合した新たなビジネスモデルの一例となります。昨年度から資本業務提携を進めてきた5社のデジタルな機能と、EPSグループの治験や臨床研究領域、メディカルコールセンターといった経営資源、当社グループが展開している各事業のリアルな経営資源を融合し「キュービックスシステム」など新たな機能も加わることで、デジタル時代に対応した新たなソリューションを提供していきたいと考えています。
当社グループがこれら3つの戦略骨子を進めていくことと、協業企業のリソースが融合することでグループ一体「As One」となった事業体が「One point improvement」を強く意識した生産性の高い「Only one」の新しいビジネスモデルを生み出す。そのようなビジネスモデルを構築、推進していくことでスズケングループの第三の創業期を「One Suzuken」を確実に実践していくフェーズとして位置付け、2025年ビジョンの実現を目指していきます。
Ubie株式会社との資本業務提携 (4月28日)
ここからは、4月28日にリリースさせていただいたUbieについてご説明します。同社は共同創業者である医師の阿部代表とエンジニアの久保代表が数年かけてつくったAIの病気予測検索エンジン、これを搭載した医療機関向けのAI問診Ubie、一般個人向けのAI受信相談ユビーを主なサービスとして展開している医療AI企業です。
これらのサービスは紙ベースの問診時と比較すると、問診時間を3分の1ほどに短縮でき、比例する医師の時間損失や働き方改革といった、医療現場における課題解決に加えAIによる機械学習が問診支援にも寄与するものと期待されています。両社が一体となってこれらのサービスの展開を行ない、新たなサービス開発を行なうことで医療機関、患者さまへ付加価値を提供していきたいと考えています。
新型コロナウィルス対策としての協業企業との取組み
なお、新型コロナウイルス感染症対策については、協業企業とさまざまな取組みを実施しています。例えば、Ubieにおきましては来院前問診、院内トリアージ支援機能を有した新型コロナウイルスの対策支援ツールの開発を行なっており、このツールを活用することで疑い症状のある患者の早期発見や濃厚接触の回避、軽減により院内感染を防ぎ外来の確保ができるようになった事例も出てきています。
またwelbyとの取組みには、4月21日にニュースリリースを公表させていただきましたが、新型コロナウイルス感染対策に向けたツールを展開しています。そして、キュービックスでお世話になっているヤマト科学では、抗体検査キットの販売を開始しました。
この新型コロナウイルスが巻き起こしたパンデミックに対応すべく各社がそれぞれ大変に素晴らしい取組みを行なっており、当社としましてもこれらの普及に向けて全力で支援し、新型コロナウイルスの感染拡大防止に貢献していきたいと考えています。
サスメド株式会社との資本業務提携 (5月11日)
続きまして、SUSMEDについてご説明します。昨日同社との資本業務提携を適時開示させていただきましたが、同社はデジタル医療領域においてブロックチェーン技術の医療応用、AIによる自動分析で強みをもっている会社です。医療ブロックチェーンや治療用アプリ開発技術など、デジタル医療基盤として11の特許を有しています。
現在はそれらの技術を用いて、不眠症治療用のアプリの開発や臨床試験、治験支援システムの提供を進めています。当社が展開している治験薬物流や治験版「キュービックスシステム」とSUSMEDのデジタル医療基盤を連携させ、新たな治験領域でのサービス開発を検討していきます。
さまざまなヘルスケアデータをブロックチェーン技術でセキュリティを確保しながら、AIによる分析を行なうことによって新たなビジネスモデルの構築が図れるものと期待しており、今後さらなる検討を進めていく予定です。
5.株主還元方針
最後に、株主還元方針に関してのご説明となります。現時点では情勢が不透明であるため、業績予想を未定とさせていただいていますが、安定的な配当を継続したいと考えています。また、コーポレートガバナンスコードの改定に対応して、政策保有株式の保有も縮減の方向で取り組みを進めていますが、その際に自己株式の取得も併せて検討していきたいと考えています。以上が中期成長戦略のご説明となります。
医療と健康になくてはならない存在へ
当社グループは、医療と健康になくてはならない存在を実現するために、地域におけるプレーヤーとタイアップしながら健康創造の領域において地域の課題を解決する最適な商品、サービスの提供を行なっていきます。今後も当社グループの持続的成長とさらなる企業価値向上を目指していきますので、一層のご支援を賜りますようお願いします。以上で私からの説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。