損益計算書ハイライト
湯口達夫氏:それでは構造計画研究所2018年6月期決算説明会を始めさせていただきます。よろしくお願いします。本日説明させていただく内容としましては、(スライドの目次を指して)このようになっております。
2018年6月期の決算の概要、セグメント別状況、2019年6月期の見通しを、湯口よりご説明申し上げます。新たな成長に向けたメッセージにつきましては、当社代表取締役社長の服部よりご説明申し上げます。
決算の概要からご説明いたします。2018年6月期の業績は、実績として売上高は対前期比3億5,200万円減の115億円。売上総利益は対前期比1億6,400万円増の56億6,700万円。営業利益は対前期比1億1,000万円増の11億円。経常利益は対前期比1億7,100万円増の10億7,700万円。当期純利益は対前期比2億4,400万円増の8億6,000万円となりました。
減収につきましては通信・意思決定支援の事業におきまして、目標値を達成するための必要な受注を当期第2四半期までに確保できなかったことが大きな要因となります。
増益に関しましてはそれぞれの事業において、より高付加価値のソリューションの提供を行うことをそれぞれの事業で取り組みましたが、期待したほどの伸びはありませんでした。対前期比で増益となったもっとも大きな要因は、前期、システム開発業務における大型不採算プロジェクトが3つ発生し、売上高総利益率を大きく低下させたことに対し、今期はそういった大きなマイナス要因がなかったことが大きな要因になります。
対前期と比較した業績概要は今述べた通りですが、計画値に対しての結果の概要について併せて報告します。売上高は対計画費5億円減で、先ほども説明させていただいた通り、第2四半期までの受注不足を受けて、営業利益は対計画比1億円減となりました。
(参考)税金減少効果を除いた場合の当期純利益
しかし当期純利益は、対計画比9,900万円増の8億6,000万円となりましたが、これは当社が導入しました2回目の従業員持株支援信託ESOPが、今年の4月に終了し、導入した2年間で株価は順調に成長し、信託終了時に信託に株式が残りました。それを処分していた分配金をESOPの加入者に還元したところ、その分配金が会計上損金算入でき、法人税等が1億3,600万円ほど減少したことによるものです。
これは過去10年間分の業績推移を示したグラフです。2012年6月期を境に2015年6月期までは落ち込んだ業績をリカバリーすることができました。しかしみなさまからもご指摘をいただいておりますが、ここ3年は成長性が乏しく伸び悩んでいる状態にあるという認識を、私どもも同様に持っております。私のパートの後に、服部から私どもがこの停滞からいかに脱出していこうとしているのかを説明させていただき、みなさまからさらなるご支援を賜りたいと思う所存でございます。
貸借対照表ハイライト
2017年6月期の貸借対照表におきましては、総資産が104億8,200万円でしたが、2018年6月期におきましては総資産は122億5,700万円と17億7,500万円増加しております。これは資産の変化として流動資産が15億3,400万円増加し、固定資産が2億4,000万円増加しました。
流動資産の増加につきましては、主には現金預金が6億4,800万円、受取手形売掛金が2億6,600万円増加したことによります。固定資産の増加につきましては、アメリカのベンチャー企業であるLockState社との事業提携をさらに進めるべくLockState社の株式を1億4,700万円取得しました。
また当社の各事業で、自社でソフトウェアを開発しそのまま外販したり、それを使ってソリューション化しておりますが、そのソフトウェア資産が5,000万円増加したことなどによりるものです。
そもそも、従来からこの貸借対照表は、従業員持株支援信託ESOPの貸借対照表との合算でございます。既にご報告済みですが、12億円程度のESOP信託を6月から導入しており、株式はすべて当社自己株式の第三者割当により取得しております。この株式取得の長期借入金と割り当てたときの株価で、自己株式の洗い替えを貸借対照表で表現しております。
またESOP信託に自己株式を割り当てたときに得た金銭により、短期借入金はすべて期末に返済させていただきました。そういった背景を踏まえて、負債に関しましては、流動負債が1億9,100万円減少し、固定負債が9億3,900万円増加しました。
流動負債の変化の主な内訳としましては、1年以内の返済予定の長期借入金が3億9,200万円。短期借入金が3億2,000万円減少した一方、未払金費用が2億3,500万円増加したことなどによります。
固定負債の変化の主な内訳としましては、長期借入金が7億9,800万円。退職給付引当金が1億700万円増加したことなどによります。
純資産につきましては、資本剰余金が6億1,700万円。また利益剰余金が5億7,100万円増加したことなどにより、純資産は対前期比10億2,800万円増の46億9,000万円となりました。これらにより自己資本比率は、対前期比3.4ポイント増の38.3パーセントとなりました。
ネット有利子負債と支払利息の推移
これは1999年6月期から2018年6月期までの期末におけるネット有利子負債と、支払利息の推移を示したグラフです。1999年6月期末にはネット有利子負債が89億2,200万円もありましたが、財務体質の健全化を図るためにも期末においてネット有利子負債の縮小を経営指標の1つとして捉え、着実な返済を実施してまいりました。
これも先ほど説明させていただきましたESOP信託の長期借入金を含んだものとなります。実質的には期末にネット有利子負債をほぼゼロにすることができました。もちろん当社は、売上が第3四半期以降に偏り、第2四半期までは運転資金がショートする傾向は次期も同様と考えております。またこの3年間の停滞から脱出し、更なる成長を目指す上でも事業投資は不可欠と考えております。
キャッシュ・フロー計算書ハイライト
こちらはキャッシュフロー計算書となり、前期と比較した表になります。2018年6月期のキャッシュフローに関しましては、税引前当期純利益が10億5,400万円。売上債権が1億6,200万円減少したことなどにより、営業活動キャッシュフローは5億9,800万円となりました。
投資活動キャッシュフローにつきましては、投資有価証券・無形固定資産の取得など、前期と同様に積極的な事業投資を行ったため、マイナス5億3,000万円となりました。財務キャッシュフローにつきましては、短期借入金の純減や長期借入金の純増、及び配当金の支払いなどにより5億8,000万円となりました。トータルでは、期首現預金残高が4億1,100万円でしたが、期末現預金残高は10億5,900万円となりました。
エンジニアリングコンサルティング①
続きまして、セグメント別状況をご説明いたします。当社のセグメント事業はエンジニアリングコンサルティング事業と、プロダクツサービス事業に分かれますが、まずはエンジニアリングコンサルティングの事業概要と業績報告をさせていただきます。
エンジニアリングコンサルティングの事業概要ですが、創業以来続けております建築物の構造設計・構造解析コンサルティング、そしてそれを土木構造物に適用した環境評価・防災コンサルティングがあります。
また当社は初めて構造物の設計にコンピューターを導入しましたが、それを起源とする住宅 ・建設分野のシステム開発、そしてその対象を構築物から人や社会に発展させた意思決定支援コンサルティングを展開しております。
エンジニアリングコンサルティング②
これらのエンジニアリングコンサルティング事業の状況ですが、受注高が90億4,500万円、売上高が89億1,600万円、セグメント利益が48億4,600万円、受注残高が43億5,700万円となりました。前期と比べ、減収増益となった要因は、全体の業績報告で述べさせていただいたとおりです。
プロダクツサービス①
プロダクツサービス事業の事業概要ですが、ビジネスモデルとして大きく3つにわけられます。まず1つはコンサルティング業務を行う上で、生産性や品質向上のためのシステムを自社で開発し、そのまま外販するもの。ここで言う構造・耐震解析ソフトや最適化・意思決定支援ソフトがそれにあたります。
もう1つは、日本ではまだ使用されていなくても海外では一般的に使われており、それをいち早く日本市場に普及させているもの。ここでいう製造業向けCAEソフト、電波・電磁界解析ソフトがそれにあたります。
そして近年取り組んでおりますのが、これも海外から持ってきたものですが、ソフトを売るのではなく利用する、いわゆるクラウドサービスで、サブスクリプションモデルのメール配信サービスや、リモートロックなどです。
プロダクツサービス②
これらのプロダクツサービス事業においては、受注高が26億5,300万円、売上高が25億8,300万円、セグメント利益が8億2,000万円、受注残高が10億6,300万円となっております。
設計者向けCAEソフト、クラウドベース分、メール配信サービスが堅調に推移しました。セグメント利益が減少した理由についてです。今後は既存のエンジニアリング事業の成長率に比べ、国内外のパートナーとの連携によって進めているプロダクツサービス事業の方が、より高い成長率が期待できるものと考え、マーケティング活動を促進させた結果によるものです。
受注高と受注残高
続きまして2019年6月期の見通しについてご説明いたします。通期見通しを予想する上で2つの観点を説明します。まず過去5年間の受注実績ですが、当期の実績は116億9,900万円となり、前期に比べ1億9,300万円減少しました。
目標値の120億円からは3億円程度未達となりましたが、第2四半期までの受注不足を第3四半期である程度リカバリーできました。2019年度の6月期も、同程度の受注は期待できるものと考えております。期末繰越受注残高におきましては、対前期比1億9,900万円増の54億2,000万円となっております。
61期期首の利益状況
次に、この期末繰越受注残高の中身ですが、これは当社の管理会計の数値です。既に着手している分の繰越利益率も、60期と同様に61期も不採算プロジェクトなく、61.6パーセントとなっております。
また未着手分の受注残高も60期から1億8,200万円増加しており、現業も高い稼働率でスタートダッシュを切れている状態となっています。
2019年6月期(第61期)計画
これらを踏まえ、2019年6月期の計画としましては売上高が120億円、営業利益が12億円、経常利益が11億7,500万円、当期純利益が8億円としております。当社に出資いただいている株主様に関しては、適切な内部留保と事業投資を勘案しながら、中長期保有株主への利益還元を重視しており、前期から四半期配当を実施しております。
配当金の計画
2019年6月期の年間配当計画は1株当たり80円としております。過去10年間の一株当たりの年間配当額は、このグラフのとおりです。
自己株式消却の概要
私のパートの最後になりますが、昨日行われました自己株式の消却について概要をご報告させていただきます。自己株式を消却した理由は、株主還元の拡充及び将来の希薄化懸念を払拭する目的で、当社普通株式60万6,000株を消却しました。これは、消却前の発行済株式総数の9.9パーセントにあたります。
消却後の現在の株式発行総数は550万株となっております。以上が2018年6月期の決算の概要、セグメント別状況、019年6月期の予想のご説明でございました。引き続き、新たな成長に向けてのメッセージを当社代表取締役社長の服部より行います。
当社が社会と共に目指す未来像(Thought)
服部正太氏:それでは成長に関しまして、私どもが考えていることをもう1回、お話をさせていただきたいと思います。我々は「Thought」というものを提唱しており、当社が社会とともに目指す未来像ということで「Innovating for a Wise Future」ということを申し上げております。
我々、エンジニアリングコンサルティング会社として、工学知をベースにした技術を社会に普及させることで、よりよい社会、より賢慮にみちた未来社会をお客様や学識経験者、あるいは海外のパートナーと一緒になって作っていきたいと思っており、イノベーションではなく、イノベーティングというふうに言っております。
我々自身のお客様の中に、あるいは社会の中に、技術というものを普及させていただく役割を担っていくということで価値を創出したいと考え、こうした「Thought」を提唱しております。
中長期的な経営戦略
中長期的な経営戦略は、3つの観点からお話しさせていただければと思っております。1つ目は、既存事業の着実な発展ということ。2つ目は、新たな事業の開発ということ。3つ目には、もちろんみなさま方はプロとして数字上の財務諸表をいろいろ見られたと思いますが、我々は財務諸表以外にも着実な努力をしたいと思っております。そういった部分での価値向上というものも、ご説明できればと思っております。
各セグメントの特長
それでは、既存事業の着実な発展に関してお話をさせていただきます。我々、事業セグメントとしてエンジニアリングコンサルティングとプロダクツサービスという分野を持っております。先ほど湯口の方からご説明させていただいたように、創業当時は構造設計の、いわゆる設計事務所としてはじまり、そうした形でのアウトプットとして構造設計図を描いていました。そこから始まって、コンピューターを利用することによって、そのエンジニアリングコンサルティングのビジネスとプロダクツサービスのビジネスをうまく掛け合わせながら、発展してきた企業かなと思っております。
エンジニアリングコンサルティングのビジネスでは、請負型のコンサルティングを行い、お客さまの数は同じ技術テーマでは100もないということで、安定性と成長性に関しては着実ではありますが、そんなに急に伸びるような仕事ではありません。ただ、技術はどんどん陳腐化していくこともありますので、常に新しい技術テーマを追いかけながら、それを大学の先生方と考え、またお客さまと共に解いていく、そういうビジネス形態です。
キャッシュフローの部分ですが、我々は第3・第4四半期にしか売上があがらないため、第1・第2四半期は利益性が悪いというところはあります。しかし、それはこちらのエンジニアコンサルティングビジネスの売上が上がる時期が遅れるからです。
これに対して、プロダクツサービスのビジネスは先ほど湯口の方からもありましたとおり、元々はコンピューターのソフトウェアの外販といったことから始まっております。国内外の色々なパートナーと一緒に作ってきたもの、社内で作り上げたものを提供しているということで、パッケージ販売と、現在はクラウドサービスを提供しております。
お客さまの数も100から1万……これ以上いけばもっと大きな仕事になると思うのですが、それぞれのお客さまから得る対価は毎年1万円、10万円など、そういうかたちかもしれませんが、数で稼いでいくものです。
こういうビジネスは、どういったものが売れるかというマーケティングも必要です。導入時にその(売れるかわからない)リスクはありますが、いったん売り始めれば先ほど湯口が言っていましたが、サブスプリクションということで、どんどん増えていくということにもなります。
両セグメントの関係
機動性があって常時接続の仕事でもありますので、24時間きちんと対応しなければいけないという厳しいビジネスではありますが、いわゆる人工(にんく)によらない、工数によらないビジネスという点ではこうしたビジネスも非常に伸びる可能性はあります。
この2つのビジネスが工学知というものをもって、お客さまとの間でやりとりをしながら、エンジニアリングコンサルティングの部分とプロダクツサービスの部分がお互い相乗効果で高め合って、それぞれ価値を高めていく。この図でそうしたことを示しております。
その発端は、元々お客さまのプロジェクトであったエンジニアリングコンサルティングの場合もありますし、たまたま海外の一流のプロダクツサービスがあって、それを日本に導入してきて、それを日本で展開しながらお客さまのニーズに合わせてカスタマイズをしていくということで、エンジニアリングコンサルティングに移る場合もあると思います。それがうまくまわっている時は、価値創造ができるということです。
エンジニアリングコンサルティング事業の成長
私は、もともとは経営コンサルティングのボストンコンサルティングから来た人間で、ブルース・ヘンダーソンのエクスペリエンス・カーブというもの習ってきただけなのですが……いわゆる経験曲線というものを考えるにあたって、お客さまに対しての価値の提供ということを社内でも非常に口を酸っぱくして言っております。
1つ目のお客さまでは持ち出しになっても、2つ目、3つ目のお客さまからはきちんとした対価をいただくようにということで、谷工数がいくらかかるから利益をいくら積んで、お客さまに提供するというのではなく、我々の価値がお客さまに受け入れられるということで、こうした経験曲線をきかせた価値をとっていくというのが、エンジニアリングコンサルティング事業の価値創造になるか考えております。
構造設計や解析、住宅型のIT、意思決定・情報通信コンサルティングなど、すべてにわたってこうした価値をお客さまにどう判断していただけるかということが、こちらのビジネスの肝かなと思っております。
エネルギー産業分野での取り組み
特にエネルギー分野等で、例えばお客さまに対して展開している技術コンサルティングの例では、テーマとしてエネルギーの安定供給の問題、あるいは環境への配慮の問題、さらには安全性の確保の問題というような3つの観点から提案をしております。それぞれの技術の中では、最適化やリスク評価のビジネス、あるいは構造設計をして……風車の問題などの設計、あるいは安全性の確保ということで、耐震性や避難作成計画の問題等に関わっております。それらを総合的に(とらえて)、エネルギー産業全体に関わる制度設計をやっていけるというところに価値があると思っております。
新たなプロダクツサービスによる成長
もう1つの例として、先ほどから出ているプロダクツサービスに関しましては、以前のアナリスト説明会でもご説明しましたが、当社のパートナーとして日本での販売代理店を任されておりますSendGrid社のクラウドサービス。これは、アメリカのコロラド州デンバーに本拠を置いている企業ですが、このビジネスが着実に増えており、SendGrid社自身もアメリカで昨年11月にニューヨーク市場に上場。時価総額がいまや12.3億ドルぐらいということで、アメリカでも今、非常に注目されております。
いかにこのメール配信をお客さまに確実に届けるかということで、このメール配信ビジネスとしては単に競争相手を見ないビジネスであり、独占的価値を持っております。我々は、このビジネスを日本で立ち上げてまだ4年しか経っておりませんが、社内でも注目をしているビジネスでございます。
既存ビジネスに関しての2つのセグメントのお話はそこまでとして、新たな事業の開発の観点から、次にお話をさせていただきます。
研究開発投資実績
我々は、売上がたかだか100億円程度の組織体ではございますけれども、研究開発投資は過去3年で(およそ)7億円・5億円・6億円ということで、売上の6パーセントぐらいを人材の活用あるいは新しい事業開発に投資してきており、これらの分野で3年をかけて(培って)きたものが、今後3年でかなり貢献してくるのではないかなと考えております。
これまでの研究開発投資への取り組み
これまでの研究開発から事業開発への取り組みということでは、住まいの利便性の分野でIoT化を進めた話、あるいは情報通信系でトライをした話、空間情報の分野、防災対策の分野と、すべてがうまくいきました、ということではありません。しかし、こうしたものにいくつかチャレンジしながら、その中で得た知見を次の展開にということで、こうしたチャレンジを今後も続けていければいいかなと思っております。
新規事業への取り組み
大学との関係性、あるいは大学研究機関との関係性の中では、現在東京大学の社会連携講座の合原先生のところ……合原先生は数理・工学・人工知能分野では非常に有名な先生ですが、私どもの得意分野である環境解析技術に合わせた新しい価値の創造を行っていこうとしております。
みなさまも、今年の夏にいろいろな所で聞かれたと思いますが、河川の氾濫とその予告リアルタイムシミュレーションといった分野は、今後日本でも世界でも異常気象が多発する段階では、非常に重要な要素になるのではないかなと考えております。
また情報通信テーマでは、NICTのセキュリティソフトウェアと当社の持つネットワーク監視技術とを組み合わせた裁判セキュリティの分野を手がけておりまして、このソフトウェアの外販も進めていこうと思っております。
社外パートナーへの投資
先ほどから何度か説明させていただいておりますが、我々はエンジニアリングコンサルティングとプロダクツサービスという、事業体としては2つ取り組んでおります。それに加えて、外部へきちんとした投資も行って、その中で技術の展開を見ていきたいということもあり、国内では東大発ベンチャーの粒子法のプロメテック社に2億円出資しております。また昨年度もLockState社の増資をしましたし、ドイツのVitracom社にも投資しております。
またベンチャーファンドへの投資では、ATRベンチャーファンドとMICさんのイノベーション4号投資ファンドにも投資をしながら、リターンを得るだけでなく、その投資先の選定に関わることで、我々の既存の技術と新しいスタートアップ企業さんとの関係性がどうにか築けないかということも考えております。
海外パートナーとの連携
それから、産学連携への投資に関しましては、気象防災で先ほど述べました通り、合原先生とのビジネスも展開できる段階に来ております。繰り返しにはなりますが、LockState社とNavVis社の機能やビジネスに関しては、後でそれぞれお話ししますが、ビジネスの関係でいきますと、LockState社はリモートロックを米国で販売しており、今年の5月にアメリカのベンチャーファンドが入り、シリーズへの投資をしておりま。5億8,000万円ほどの資金を調達したところで、当社はこの会社の約2割の資本金を出資をしました。
またNavVis社に関しましては、すでに4年で社員数が150名まで増えており、ドイツを代表するIoT、いわゆるベンチャー企業となっております。この技術の内容について、メルセデスベンツやBMWといったドイツの大企業の、いわゆる工場や生産ラインに非常に役立っているソフトで、これから建設業を含めて注目される分野と思っております。
21世紀における持続的成長に向けて
最後に、財務諸表に表れない価値の向上を少しお話しして、私のセッションを終わらせていただきます。私どもが勉強するにあたって、いつも出している例ですが、我々のようないわゆる知識集約型企業におきましては、売上がいくら上がるかが価値ではなく、その中でいかにお客さまに評価されて、対価を得られるかということが重要かなと思っております。
そういう企業は、岩井先生がおっしゃっている価値の差異化・再生というものを常に目指していかなければいけないですし、「新しさを創造しなければ価値は取れない」「新しさを見出すのは人間の創造性である」「組織としてこれを支援しなければ持続的に新しさを生み出すことはできない」といったことを言われており、持続的な成長のためには財務諸表ももちろん重要ですが、それに加えて組織のあり方、人との接し方、運営の仕方も工夫していかなければならないと思っております。
財務諸表に表れない価値
その点で、国内外、世界中から優秀な人材を集めてきて、交流を通じた人材の育成を行い、時代の変化にあった魅力的な職場環境を作って、柔軟で闊達な企業風土を維持しなければならないと考えております。
国内外・分野を問わず優秀な人材を採用
人材という観点に関しましては、いろいろな大学から採用しておりますが、国内の大学はもちろん、シンガポールでの採用も5年ほど進めてきており、南洋理工大学やシンガポール国立大学、あるいはバンドンといった大学からも、日本人ではない国籍の方々を迎え入れました。現在、技術者としてはまったく日本人と同等の立場で、日本で勤務していただいております。約6.6パーセントの技術者が外国人ですし、その中の1人は取締役です。そういった点で、何の区別もなく能力の高い人に参画してもらえればと思っております。
世界中から多様な人材の参画
世界中、いろいろな国……アメリカやカナダはいつでも(人材を)採れるかなと思ってあまり考えていないのですが、南アフリカやスペイン、ポーランドなど、少し遠いのですが、そうしたエリアの国籍を持った方々にも参画いただいております。
多様な成長の場の提供
それと共に、我々日本人の社員に関しましても、多様な場の設定ということで、いろいろな場に出てもらうことを奨励しております。官民交流で官庁に行って制度設計を手伝ったり、あるいは海外のパートナー……デンバーに行っている2人はLockState社に勤務しておりますが、そういった場に出て行ったり、スタンフォード大学で研究したり、いろいろな機関へ出ております。
シンガポールでは、日本郵政さんとの共同ビジネスということで、ジョイントベンチャーの会社に2名行っておりますし、シンガポールの我々の事務所にもおります。このように、いろいろな交流を行い、研鑽の場を積んでもらって、中長期的に価値を上げていけるのではないかなと考えております。
魅力ある環境や制度の整備
また、柔軟な働き方を実現する環境の場として、60歳の定年制は廃止しました。また地域限定といった社員制度は、他の企業さんと同じように対応しております。また裁量労働制もありますし、特にこの(会社の所在地である)中野、新中野は、大手町などみなさんのいるところとは違って、荻窪や高円寺からも近く、自転車でも来やすいため、社員みんなに自転車で来てもらった方がいいのではないかということで、駐輪場があります。また駐車場も、特に子育てをしている人たちには必要な時があるため、そういったものも整えております。こうした魅力ある制度を作っていくことが重要かなと思います。
ブランディングイベント KKE Vision2018
以上が私の説明になりますが、毎年イベントとして、我々は秋に「KKEVision」というブランディングイベントを実施しております。我々のソリューションやプロダクトを売る場ではなく、世の中は今後どういうふうになっていくのだろうかということを、お客様や研究者の方々と一緒に考えるということしております。今年も、10月23日に渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで行います。
基調講演は、慶應義塾大学常任理事で総合政策学部の先生、國領先生にお話しいただきます。人と情報技術の共進化はどのように進んできたか、ということを考えるご講演を賜りたいと思っております。ITや、最近の流行り言葉ですとAIやビッグデータなどいろいろありますが、それらを社会と人間がどういうふうに取り入れて共進していくのかが重要かなと考えております。サブテーマとしては、スライドに書いてありますとおり「社会における構造物のあり方」「災害時に真に役立つ技術」「未来創生のモビリティ」というようなサブテーマを持っておりますが、お時間が許す方はまたご案内いたします。
繰り返しになりますが、我々はより良い組織体を目指して「Innovating for a Wise Future」ということでやっておりますし、今後もそうした新しい形態を模索していきたいと願っております。