2017年度第3四半期業績(コアベース)

武田睦史氏:みなさん、こんにちは。アステラス製薬の武田です。本日はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。

2017年度第3四半期決算業績の概況、それからパイプラインの進展をはじめ、持続的な成長に向けた取り組みについて、ご説明いたします。

まずは、第3四半期業績の概要についてご説明申し上げます。4ページを開いてください。

コアベースの業績です。主力品の売上は順調に推移しましたが、日本での長期収載品の売上が大きく減少しました。また、グローバル皮膚科事業、長期収載品16製品など、譲渡した事業に関連して計上する収益も、前年に比べ減少しています。

結果、(3Q)売上高は0.6パーセント減少の9,994億円、コア営業利益は8.8パーセント減少の2,205億円となりました。

次のスライドから詳細についてご説明いたしますが、昨年10月に公表した通期予想に沿った推移となっています。

売上高の前同比較

5ページ目です。売上高の前年同期比較を、ウォーターフォールチャートにて、ご紹介いたします。

「XTANDI(イクスタンジ)」と「OAB」を合わせた主力成長品群の売上は伸長しました。XTANDIはすべての地域で増加、「ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ」も大きく成長しています。後ほど製品については詳しく説明いたします。

一方、冒頭で申し上げましたが、2017年6月に後発品が発売されました「ミカルディス」をはじめ、日本での長期収載品(売上)は大きく減少しています。

昨年度完了のグローバル皮膚科事業の譲渡、今年度完了の長期収載品群の譲渡にともない、関連する売上が前年同期比で大きく減少しています。

為替はご存知のとおり、対ドル、対ユーロともに円安となり、増収に作用しています。

ちなみに、事業譲渡と為替は特殊要因と捉えまして、Apple to Apple(同一条件)の比較をするとすれば、この2項目を抜いた分析が適切だろうということで、赤い点線で示していますが、これらを除いた売上高は1.3パーセントの減収という分析になります。

コア営業利益の前同比較

6ページです。コア営業利益の前年同期比較です。

販管費はやや減少しました。こちらは、XTANDIのプロモーション費用の増加および引き続き必要な投資を行った一方で、経費の効率的使用と最適なリソース配分の推進をした結果です。

研究開発費は前年同期比で増加をしています。「ギルテリチニブ」をはじめとした後期開発プロジェクト費用に加え、買収を通して新たに獲得したプロジェクト、例えば、「IMAB362」や「fezolinetant(フェゾリネタント)」に関わる費用、また、再生医療・細胞医療などの新たな領域における技術への投資が増えています。

一方で、閉鎖をアナウンスいたしました(米国の)Agensys(アジェンシス)社での運営費が減少しています。

研究開発費においてもリソースの再配分を行いながら、次の成長に向けての投資を行っているところです。

為替は利益段階でもプラスに作用しています。

こちらも事業譲渡、為替を除いた分析をしています。(それらの影響を)除いた場合、コア営業利益は前年同期比2.6パーセントの減少になります。

2017年度第3四半期業績(フルベース)

7ページです。フルベースの業績をご説明いたします。

フルベースにおいても、コアベース同様に通期予想に沿って順調に推移していると考えています。第2四半期までにIMAB362の開発計画の見直しや、Agensysの研究開発終了決定にともなうその他の収益、減損損失などその他の費用を計上しましたが、当第3四半期に限って言いますと、ご紹介すべきような大きな収益、費用の計上はありません。

なお、税金ですが、米国の税制改正は若干の税率上昇要因となっていますが、全体としての法人税率は引き続き、前年を下回りました。

結果、営業利益は22.3パーセント減の1,798億円、純利益は20.2パーセント減の1,426億円となりました。

キャッシュ・フロー分析

8ページです。キャッシュ・フローの分析をご紹介します。第3四半期、この9ヶ月間の減益は、現金支出をともなわない減損損失なども要因となっており、キャッシュベースで見ますと、営業キャッシュ・フローは前年同期に比べ、16パーセント増加しています。

こうして生み出したキャッシュを、例えば(ベルギーの)Ogeda社の買収などの事業投資や、自己株取得などの株主還元に活用しています。

主要3領域の売上高

9ページです。主要3領域の売上高です。ご覧いただけますとおり、為替の影響の有無に関わらず、すべての領域で前年同期比で増加しています。

がん領域フランチャイズの大半を占めるXTANDIは、円安効果を含み16.2パーセント、現地通貨ベースでも9.9パーセントの増加となりました。

泌尿器OABフランチャイズにおいては、ベタニス/ミラベトリック/ベットミガが全地域で、円安効果も含め、大幅な30パーセントの増加、現地通貨ベースでは24.7パーセント成長いたしました。

移植フランチャイズも堅調に推移しています。

ここまでが主要な数字に関する報告です。次からは持続的な成長に向けた取り組みについて、ご紹介いたします。

持続的な成長を目指して(経営計画2015-2017 スライド再掲)

11ページはおなじみのスライドです。何度もご説明していますけれども、本年度が最終年度になる3ヶ年の経営計画を定めました、当社のフォーカスすべき3戦略について記載しています。

「製品価値の最大化」「イノベーションの創出」「Operational Excellenceの追求」の3つの戦略のもとに、さまざまな活動をしています。

XTANDI/イクスタンジ

13ページです。製品価値の最大化の代表格であるXTANDIについて、少し細かい分析をご紹介します。

ご覧のとおり、順調に拡大しています。すべての地域でこの第3四半期・3ヶ月間において、四半期ベースで過去最高の売上となっています。すべての地域でレコードハイということです。

最も売上高の大きい米国について、現地通貨ベースでさらに追加説明をいたします。第3四半期終了までの9ヶ月間の売上高の前年同期比は3パーセント増加です。本第3四半期の3ヶ月間に限定しますと、year-on-year、つまり2016年度の第3四半期との比較においては21パーセント。quarter-on-quarter、今年の第2四半期との比較においては12パーセントの増加となっています。

総物量はyear-on-yearで25パーセント、quarter-on-quarterで5パーセント増加いたしました。ファイザーの泌尿器チームとの共同も含め、泌尿器専門医へのアクセス拡大強化やステップセラピー(より安価な医薬品を優先して服用する治療方針)の解消努力が奏功した結果と分析しています。なお、患者支援プログラムの割合は安定推移をしています。期初にご紹介しましたとおり、昨年度の第4Qの数字をもとに期初予想をしていますが、その水準で安定しているということです。

泌尿器OABフランチャイズ

14ページは泌尿器OABフランチャイズです。OAB全体として売上増となりました。「ベシケア」はグローバルでやや弱含みですけれども、「ベタミス/ミラベトリック/ベットミガ」は好調です。引き続き、順調に推移し、グローバルで2桁成長を継続しています。

成長の基盤となる開発パイプライン

続いて、イノベーションの創出です。ここからは新薬の開発パイプラインの進展をご紹介いたします。

16ページをご覧ください。ステージ別のパイプラインリストです。当社は外部のイノベーションを取り組みながら自社の能力と合わせ、成長の基盤となるパイプラインの充実を図っています。丸印で示している新規分子/細胞成分はパイプライン全体で約30あります。

開発の着実な進展 2017年10月から2018年1月までの変化のまとめ

17ページに進みます。こちらのスライドでは前回の決算発表以降、ステージが進捗したプロジェクトについてご紹介いたします。

この3ヶ月間で4つの申請を行いました。まずは「エンザルタミド」、非転移性去勢抵抗性前立腺がんを追加適応症として、今月(2018年1月)米国および欧州で申請を行いました。本邦でのアムジェンとの共同開発品「ブリナツモマブ」は成人・小児も含めた急性リンパ性白血病を適応症として、こちらも今月、日本で申請を行いました。

もう1つ今月の申請が「イプラグリフロジン」です。1型糖尿病を追加適応症として、日本で申請をします。少々前になりますが、2017年11月には「デガレリクス」、これは本邦で当社が販売していますが、前立腺がんを適応症として、3ヶ月製剤の申請を行いました。またIMAB362につきまして、第Ⅲ相試験段階に進んだほか、新たに2つの開発品が第Ⅱ相試験段階に進みました。

先般、(米国の)MITOBRIDGE社を買収するというリリースを出しましたが、MITOBRIDGE由来のプログラム2つのうち「MA-0217」が急性腎障害を対象疾患として第Ⅰ相試験に入っています。一方で、残念ながら4つのプロジェクト(スライド下部)が、第Ⅰ相試験・第Ⅱ相試験にありましたが、開発中止となっています。併せてお知らせします。

エンザルタミド:前立腺がんにおける価値最大化

18ページです。これもおなじみのスライドかと思います。(エンザルタミドの)早期前立腺がんの適応追加に向けた臨床試験が順調に進んでいます。今申し上げたとおり、非転移性去勢抵抗性前立腺がんを追加適応として米国および欧州で申請を、PROSPERの試験結果をもとに、行っています。これも先般リリースでご案内申し上げましたが、来月(2018年2月)「ASCO-GU 2018(泌尿器癌シンポジウム)」で、PROSPERで得られた結果をみなさんにご共有する予定です。

また転移性ホルモン感受性前立腺がん・非転移性生化学的再発前立腺がん患者を対象とした2つの第Ⅲ相試験も進行中です。

ギルテリチニブ:急性骨髄性白血病(AML)の治療の流れ

19ページです。ギルテリチニブの進捗についてご紹介します。急性骨髄性白血病の治療の流れ全体において本剤の可能性を幅広く評価しています。このスライドはそちらを示したものです。最もアンメット・メディカル・ニーズ(現時点で有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)の高い患者を対象としたADMIRAL試験をはじめ、各試験が順調に進んでいます。スライドの後段に内容について細かく記載をしています。

ちなみに今月(2018年1月)欧州委員会からオーファンドラッグ指定(希少疾病用医薬品としての指定)を取得しました。すでにご案内しているとおり、米国でのファストトラック指定(高い治療効果が期待される新薬として、審査を優先する指定)の取得、日本での先駆け審査指定の取得と、各国でのこのような薬事上の制度を活用しながら、1日でも早く患者さん市場に届けられるよう、リソースを優先的に配分していく予定です。

ギルテリチニブ:未治療のAML患者を対象とした第Ⅰ相試験

20ページに、ギルテリチニブについて、もう1つスライドを設けました。昨年12月のASH(第59回米国血液学会)において、未治療の急性骨髄性白血病患者を対象とした、実施中の第Ⅰ相試験において得られた最初の臨床試験成績を発表しました。こちらで再度掲載させていただきます。ここで得られた結果から、ギルテリチニブは標準化学療法と安全に併用できることが示唆されています。

また、ギルテリチニブと標準化学療法との併用により、評価可能であったすべてのFLT3遺伝子変異陽性患者において、複合完全寛解が認められました。この良好な結果を受けて、急性骨髄性白血病の初期治療におけるギルテリチニブの今後の開発への期待が高まっています。

IMAB362:第Ⅲ相試験プログラム

21ページです。IMAB362の第Ⅲ相試験プログラムをご紹介します。対象疾患である胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんでの一次治療となることを目指し、2つの第Ⅲ相試験の実施を予定しています。1つは左側ですが、主に欧米で使用されている「mFOLFOX6(療法)」を併用する試験です。

もう1つは右側、胃がんの発現率が高い中国を含むアジアで主に使用されている「CAPOX(療法)」を併用する試験です。こちらも今後進捗があれば、適宜みなさまに共有いたします。

ロキサデュスタット:欧州と日本での申請・保険償還に向けた第Ⅲ相試験プログラム

22ページです。慢性腎臓病にともなう貧血を対象疾患として開発を進めている、ロキサデュスタットについてのご紹介です。現在実施中の複数の第Ⅲ相試験は、順調に進んでいます。保存期の患者を対象として欧州で実施しているALPS試験、および日本で実施している透析期の患者を対象とした2試験の結果を、本年度中に入手する予定です。

2017年度に期待しているパイプラインの主なイベント

スライド23には、パイプライン関連で本年度に期待している主なイベントをまとめています。前回からの進捗としては、「ASP0113」の造血幹細胞移植時のサイトメガロウイルス感染抑制を対象とした第Ⅲ相試験の結果を入手しました。残念ながら、主要評価項目、副次評価項目を達成しませんでした。

また、第Ⅱ相段階にある関節リウマチ患者を対象とした「ASP1707」、変形性関節症患者を対象とした「ASP7962」の第Ⅱ相試験の結果を入手しました。いずれの試験も、主要評価項目を達成しませんでした。

期待している製品・開発品

24ページをご覧ください。こちらも、説明会で繰り返し使用しているスライドです。POC(Proof of Concept)取得済みのプロジェクトを記載しています。

こちらにありますように、いくつかご紹介してきたギルテリチニブ、エンザルタミド、それから今日の説明には出ませんでしたが、尿路上皮癌患者を対象とした第Ⅰ相試験で、期待できるデータを取得した「enfortumab vedotin」、IMAB362等のプログラムが、今後の中長期成長の支えになることを期待しています。

BIOLOGY:MITOBRIDGE社の買収

次に26ページです。イノベーション創出のための新たな取り組みをご紹介します。

先日、クロージングをアナウンスしましたMITOBRIDGE社の買収について、スライドを用意しました。当社は、継続的にイノベーションを創出していくために、疾患の切り口だけではなく、バイオロジーやモダリティといった視点で新たな機会探索をしています。

本買収は、ミトコンドリア創薬というバイオロジー強化を目指し、実施をしました。ミトコンドリア創薬において、私たちは遺伝子制御、NAD+上昇、ダイナミクスといった3つのアプローチを考えています。MITOBRIDGEは、いずれのアプローチにおいても有望な標的分子とリード化合物を見出しています。

その他、先ほどご紹介したものもありますが、今、第Ⅰ相試験段階にMITOBRIDGE由来のプログラムが2つあります。その他、いくつかのプログラムにおいて、今後数年以内にいくつか、さらなる臨床(試験)入りを目指しています。

社会的価値の創造:ACCESS TO HEALTHへの取り組み

27ページ。社会的価値の創造、ACCESS TO HEALTHへの取り組みについて、ご紹介します。これまで、いくつかの取り組みを行っていますが、直近の取り組みについてのみ簡単に言及いたします。

後段に書いてあります、コメ型経口ワクチン「MucoRice」の実用化を目指した、4者の共同研究契約を締結しました。4者というのは、東京大学医科学研究所、千葉大学、朝日工業社、それから当社です。とくに生産および製剤化に関わる技術の確立にフォーカスをした契約を結びました。

今まで東京大学と、「途上国で多く見られるコレラや毒素原生大腸菌、ノロウイルスなどを含む、ウイルス性腸管下痢症を対象にした共同研究を、このMucoRiceを活用して対処できないか」という研究をしていましたが、今回はさらにその先、生産・製剤化をで共同で推進していくことを決めました。

なお、今回開始するプログラムは医療研究開発革新基盤創生事業(CiCLE)に採択されており、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より支援を受けて実施しています。

継続的な経営基盤強化への取り組み

次に、OPERATIONAL EXCELLENCEの追求についてご紹介をします。29ページをご覧ください。中長期にわたって持続的な成長シナリオを盤石なものとするために、ゼロベースで経営資源配分の見直しを行い、オペレーションの質を上げ、効率化を推進していくことにしています。

このスライドの左半分にありますとおり、投資の優先順位について常に検討したり、「どういうケイパビリティを備えるべきか」ということを確認したり、「そのための組織・体制はどうあるべきか」ということを検討したり、違う視点ですけれども、「コスト構造はどうあるべきか」ということをテーマにしたり、このようなことを今、OPERATIONAL EXCELLENCEという大きなテーマの下で進めています。

右半分に、2017年度の主な取り組みを記載しています。こちらについては、今後も引き続き、手を緩めることなく継続していきます。

利益配分等に関する方針

それから、31ページ、利益配分等に関する方針です。これも、何度もみなさんのお目に触れているグラフかと思います。あらためてお話ししますと、2017年度の年間配当は、2016年度から2円増配の、1株あたり36円を予想しています。

自己株取得につきましては、昨年の7月から10月にかけて約700億円の取得を実施しましたが、本日(2018年1月31日)発表しましたとおり、2月1日から3月23日までの間で600万株、4,600億円、4,200万株を上限とする自己株取得を新たに行うことを決定いたしました。

持続的な成長の実現

スライド32です。当社は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値に変えることで、持続的な成長の実現を目指します。引き続き、経営資源配分の最適化を目指しつつ、競争優位を確立できる成長領域への投資を行っていきます。

今後の予定

最後です。今後の予定ということで、1枚スライドを挿入しました。今後の説明会スケジュールです。1つ目、本年度(2017年度)の決算発表・説明会は、ゴールデンウィーク前、2018年4月26日に行うことといたします。

それから、これまで何度もご質問されていました次期経営計画。まだ呼び名を決めてないのですが、中期的な計画についてご説明する機会を、5月22日、決算説明会の約1ヶ月後に執り行うことといたしました。また別途、詳細についてはご案内を申し上げます。以上で、私からのご説明は終わります。