年金を「いくら納めて、いくらもらえるか」把握しよう

篠田尚子氏(以下、篠田):あともう1つ、私がすごく気になったのは(グラフ)緑色の年金のところです。やはりこれは把握されていらっしゃる方が多いんじゃないかなと思うんですけれども。

瀧俊雄氏(以下、瀧):公的年金というのは、普通はみなさん資産だと思っていないんですよね。

そうなんですけど、この資産は今後の制度設計だと67歳とか70歳になってきたときに、最後に効いてくる資産なんですよね。

我々はあまり公的年金を楽観的に見積もらないようにしているんですけれども、普通に働いていると、おそらく給料の17パーセントぐらいはそういうところに行くわけなんです。

なので、ちゃんと心のどこかでこの数字の認識はしておくと。ただし、60代になるまでは基本使えないお金なんだと見ておくことが大事なのかなと思います。

篠田:そうですね。引き出せないということはけっこう重要です。実は「公的年金の金額を把握して下さい」というのは、私もふだんiDeCoのセミナーでお話しさせていただくときによくしています。

というのは、iDeCoとかNISAもそうなんですけど、欲張った投資をしてはいけないタイプのものなんですね。

iDeCoも当然毎月の掛け金が決まっていますし、もしかしたら「物足りないな」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、iDeCoの最大の目的は、こうした公的年金を補完するという意味もありますし、なにより60歳まで引き出せないことで、腹をくくって長期投資をするというものなんです。

そうなると、やはりiDeCoの役割というのは、自分が公的年金でいくら納めているのか、貰えるのかを把握した上で、何に投資するかとか、どのぐらい増やしたいかというイメージを持っていただきたいんですね。

そういう意味でも、実はみなさんのお手元に「ねんきん定期便」が来ると思うんですけど、これを把握しないで、「国の年金が損した、儲かった」みたいな話に一喜一憂するのは時間の無駄だと思います。

そこに充てる時間を、ほかの金融商品にチャレンジしてみるとか、そういうところに使っていただきたいと思います。

努力して貯金するのは難しい

:あと、この緑色(のグラフ)はよく超安全資産だと思われているんですけど、単なる安全資産というよりは、何割かはちゃんと株が入っているものなんですよね。

世の中の多くの人は、自分のことを「預金しか持っていない」と思っているんですが、それは間違いでして、それまで納めてきた公的年金というのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という、非常に安く資産を運用してくれるところが、何割かを日本株に入れて、何割かを外国株に入れてということをやっているんです。なので、我々は実はそういうものを持っているということがありますよね。

篠田:(グラフを見て)まさにこの値動きのところですよね。ペコンとへこんでいるところがあったりとか。

:ペコンとへこんでいるところは、私が401k(確定拠出年金)に制度移管した一瞬だけ、データが取れなくなっちゃってへこんだという。

篠田:なるほど。そういう経緯も反映しているということですよね。

:ボコッと増えているところは、トランプさんのおかげです。

篠田:運用益ということですね。きちんと増えるし減るしということで、実は年金もそうですよということが、(グラフを)見て取れますよと。過去を振り返って、ほかに何か「こんなことがあったな」ということはありますか?

:マネーフォワード作ったときに、私はそれまで野村證券でかなりいいお給料をもらっていたんですけど、その後給料が4分の1になりまして、いろいろ大変だったんですよね。

本当にありとあらゆるものを切り崩しながらやって、最近やっと人並みに給料が払える会社になってきたので、実はこの1年くらいまで資産運用を考える余裕がなかったんですよ。ただその間も、裏側で勝手に続いていた投信の積み立てとか、そういうものは別に自分でいじくりに行かないんですよね。

私がよく申し上げるのは、変な話なんですけど、努力して貯金なんかできないんですよ。努力するよりも、努力しないで済むような、無意識で行われる貯金や習慣のほうに目をつけると。それが起業をすると(無意識の貯金習慣が)4〜5年は失われて辛かったなとちょっと思いました。

資産を可視化することのメリット

篠田:起業というキーワードが出てきましたけれども、これだけ働き方が多様化していて、終身雇用という時代でもなくなってきているなかで、やはりいい意味で何が起こるかわからないと。

私も今まで2回転職しているんですけど、いろいろチャレンジしたいことが出てくるということも考えると、そこも含めての資産形成ですよね。

:やはり心のバッファというか、よく投資を始めるにあたって「いつがいいんですか?」と聞かれて、最初の初任給で貯金0のときに、「証券行きましょう」という話ではないなと思っています。

やっぱりいろんなケースがあって、例えば失業してしまった後に、次の就職をするまでの期間を食べつなぐ必要があるんですよね。失業の仕方によっては、すぐにお金が出なかったりもしますから。

そういうときに、(残りの生活資金が)3ヵ月分なのか、5ヵ月分なのかという、生活資金が見える状態になって、初めて正しい投資に向けたマインドが出てくるのかなと思っていまして、そういう塩梅をちゃんと把握することが先かなと思います。

篠田:そうですね。働き方のところで、例えばご自身が何らかの理由で失業されたり、あるいは転職されたり、起業されたりというときに、パートナーが働いていたり、子どもの状況によっても変わってくる。となると、やはり(資産が)見えるようにしておくことが重要だという部分もありますよね。

:今日お見せしているのは資産に関する画面なんですけれども、マネーフォワードは収支のバランスとか、今月何に使ったのかが全部見えるようになっています。

私も今、夫婦生活が11年目に突入したんですけれども、基本的にお金の話題ってしたらケンカになるんですよ。どちらかがすごいマウンティングをするとか、どちらかがものすごく言いづらいことを言わないでいるとか、そういう状況が発生するので。

そういうときに、ぜひ「全部マネーフォワードのせいにしてほしい」と言っていて、「この画面ではこう言ってるけどね」と言って、敵の敵は味方理論を使ってほしいなと。

夫婦で話しているお金の話はけっこうギスギスした会話になるんですけど、「(マネーフォワードを見て)いや、こうなるじゃん」みたいな。我々を敵にしていただくことが大事かなと思っています。

夫婦でモメる「お金の話」の対処法

篠田:いろいろ話が前後してしまうんですけど、先ほど「失敗談というのは蓋をしたくなる」と申し上げたんですけど、これは夫婦間でも一緒ですよね。

都合の悪いことは忘れるので、そういう意味でもきちんと記録を付けておくのは、やはり重要だと思っています。

後はちょっと個人的なことを申し上げると、私は家計簿みたいな紙のノートを管理するのが昔からなんです。

今、このような金融の仕事をしていて言うのもあれなんですけど、お小遣い帳を買ってもらってもつけられた試しがないというか、ノートごと失くすパターンなんですけど。

でもこれ(家計簿アプリ)だと放っておいてもできるというか、自然と記録としてつけてくれるんです。

:私たちのサービスは、まさに「最もズボラな人に向いたサービス」だと思っていまして、世の中にはちゃんとした人向けの家計簿もいっぱいるんですけど、私たちも創業したときに誰一人家計簿なんかつけていなかったんですよね。

そういう、ある種「非常にダメな人」みたいなところから始めたサービスなので、最初の1ヵ月は、たぶん累計で30、40分いじっていただく必要があるんですけど、次の月から3〜5分くらいアプリをいじっていただくだけで、お金の管理が全部できるようになるので、すごくすっきりします。

篠田:なるほど。ズボラな人間はいいとして、例えばこれまでも家計簿をきちんとつけてきた中級者・上級者の方にとって使える方法はありますか?

:お金のデータなので、いろんな応用ができます。こだわり始めると、例えば先々月の食費と今月の食費を比較するとか、1年前と比較するとか。

あとはポートフォリオとして、自分で(資産は)何を持ってるんだっけとか、どういうときに間違った判断してしまったんだっけとか、見直していただくために使っていただけるかなと思っています。

それ以上にいい投資分析ツールとなると、やはり「iSPEED」とかそういったものがいいんじゃないかなと思っています。