ARM買収で圧倒的世界No.1のポジションへ

孫正義氏:さらにARMですね。買ってよかった。今、心の底から喜びを噛みしめております。ARM(買収)以前のソフトバンクとARM(買収)後のソフトバンク、それはソフトバンク1.0とソフトバンク2.0という大きな違いがあります。

ARM以前のソフトバンクは、なんであったか。ユーザー数日本で3位の通信会社だった。利益率が世界一といっても、ユーザー数で日本で3位、アメリカで4位だと。

「何か世界一ってあったっけなあ……?」と。Yahoo! JAPANは日本で1位かもしれないけど、あまり世界で圧倒的1位と誇れるものはそんなになかったんです。

いよいよこのARMで、ソフトバンク創業以来初めて、世界で圧倒的1位と。しかも今後の10年、20年、100年という単位で考えると、最も重要な事業セグメントで世界で圧倒的1位というポジションを取れたと。

今、世界中の人々がスマホを使っています。そのスマホのおそらく99パーセント以上はARMです。ARMでないスマホを見つけるほうが難しいという状況になっております。

このARMのポジションを取って、我々ソフトバンクが2.0ということで、これからやりたいことの非常に重要な戦略、オセロで言えば、オセロの四つ角の1つを抑えたという状況になれたということですね。

ARM 売上高

売上は順調に伸びています。でもこれはまだ、これから伸びるARMのほんの序章に過ぎないと思っております。

ARMベース チップ出荷数

チップはこの9ヶ月間で125億個出荷しました。年間に直すと、160億個とか170億個という次元の数です。

世界の人口が70億人ですから、すべての世界の人々の、1人あたり1年間で2.5個以上のARMを買ったというかたちになります。すごいですよね。

世界の人口というと、食料に困っているような国もありますよね。おじいさん、おばあさん、赤ちゃん、電化製品1個も買わない、そういう人々の人口まで含めて、世界中の人々が2.5個と。

みなさん、この1年間でARMを2.5個買ったかなという認識はありますか? あんまりそういう認識ないでしょう? この1年間でそれ以上買っているんです。

日本は世界の平均以上の国ですね。ですから、それ以上買っている。そのくらいARMが、世界の人々のライフスタイルに完全に浸透してきているということであります。

ARM 研究開発費

研究開発費を加速して増やしています。

何に使おうとしているかは、聞かないでほしいと。今、着々とARM2.0の準備をはじめたということであります。

この次のARM2.0のために、私自身、直接深く関わって、その戦略とビジネスモデルを作っている最中であります。

また、このARMはスマホとか、家庭電化製品とか、車といったものだけではなくて、日本の次世代のスーパーコンピューター、ポスト京、これもARMになりました。

欧州も次のスーパーコンピューターはARMになりました。世界中のスーパーコンピューターの勝てる機種はほとんどARMになってきたという状況です。

ですから、ARMは単に小さなチップだけではなくて、その馬力を問うような、スーパーコンピューターの世界もARMになってきたということであります。

ということでARM……本当に買ってよかったなと。今つくづく喜びを噛み締めているという状況です。

アリババグループへの投資実績

次にアリババです。これは16年前に投資したわけですけども、16年前に投資するときに、当時日本の経済界でも重鎮と言われるような経営者から、僕が中国のアリババに投資したというときに、「なんだ、その盗賊みたいな名前の会社は」と(笑)。

「中国はそもそも信用できない」とか、「中国に投資しても必ず失敗するぞ」と大変いろんな忠告をいただきましたけれども、私はそのときに「そうは思いません」と。「あなたのことは大変尊敬しているけども、この点についてはあなたの意見と私の意見はまったく違う、正反対だ」と。

「私は信じている」「私はブライトサイドからものを見る。批判的なサイドからものを見たくない」「中国でも必ずインターネットが伸びて、中国そのものも伸びる」と。ですから「私は積極的にいくんだ」ということを申し上げて、結果、やっぱり投資してよかったと心から思っております。

アリババ 売上高

これほどの規模になったアリババが、さらに売上前年対比54パーセント伸びています。

アリババ 純利益(税引後)

純利益で36パーセント伸びています。

フリーキャッシュフロー

先ほどから言っている一番重要な数字であります、フリーキャッシュフローで44パーセント増。

3ヶ月のフリーキャッシュフローで5,000億を超えている。3ヶ月で5,000億ですよ? じゃあ4倍したらどうなるかと。そのぐらいのペースになってきた。

しかも、44パーセントも伸びている。僕は心の底からアリババに投資してよかったと思いますが、まだまだ伸びると。実際に伸びてます。だから、アリババは今後もソフトバンクグループの中核的企業の1つとして大事にしていきたいと思っています。

OneWeb 次世代 低軌道 衛星通信

新しい投資では、OneWeb。「OneWebってなんだ?」と。少し今日はこのOneWebについても説明を申し上げたいと思います。

これは次世代の低軌道の衛星通信の会社であります。我々はここに1千数百億円の投資をするという決定をいたしました。

OneWeb 技術概要

とりあえずは今、ソフトバンクから入れていますけれども、ファンドの設立が正式に終わったらファンドのほうにこれを移すという前提での投資であります。

すでに我々の投資パートナーである会社からも、「OneWebは今度のソフトバンク・ビジョン・ファンドの最初の投資案件としてぜひ入れてほしい」と。

時間的に間に合わないからいったんソフトバンクで入れるけども、「ファンドの案件としてぜひ入れてほしい」ということで依頼を受けていますので、我々はそのようにする予定であります。

OneWeb 特長

今までの衛星というと、地球から3万6,000キロ離れているわけです。ですから「もしもし」と言って「はいはい」と言うまでに、700ミリセカンドから900ミリセカンド遅れが生じる。

音声だけではなくて、データの通信もそれだけディレイが起きるということは、「ツー」と言って「カー」と反応が来るのではなくて、「なにかまどろっこしい」という部分があったわけですね。

それが地球に30倍近づくわけです。地球からの距離が30分の1に減ると。それだけ近くなると、ディレイが700ミリセカンドから900ミリセカンドではなくて、20ミリセカンドから30ミリセカンドぐらいになります。20~30ミリセカンドというと、光ファイバー並みのディレイになるということです。

宇宙からなのに、光ファイバー並み。宇宙からなのに、LTE並みの通信の速度でつながると。ちょっとこのビデオを見ていただきたいと思います。

(動画が流れる)

惑星があって、地球があります。地球から3万6,000キロ離れたところに今、静止衛星があると。今まではこの静止衛星から通信をしているから、遠い遠い世界にあったわけです。「遅い」ということで、あまり使い物にならなかった。

でも、これがギュッと30分の1の距離になるわけです。30分の1のところの距離になるということは、少ない数の衛星ではカバーできないので、衛星の数を増やすと。

衛星の数が700~800個ぐらいの衛星を、1メートルぐらいの大きさの安くて小さくて軽い衛星を地球のすぐそばまで引き寄せてそこに浮かべる。

そこから真空状態になるとノイズが減って、通信がスポーンとつながるようになるわけですね。ということで、大容量の、しかもディレイの少ない通信ができます。

OneWeb 通信速度

どのぐらいのスピードかというと、下り200Mbps(メガビット)、上り50Mbpsぐらい、つまり光ファイバー並みの通信速度でつながる。

これまでのADSLだとか、モバイルのLTEだとか、ケーブルというものよりもはるかに速い速度で、しかもはるかに少ない遅れでつながるということで、宇宙からブロードバンドになると。宇宙からですから、飛行機だ、船だと、離れたところが全部つながるようになる。

例えば、非常に田舎のほうの今まで光ファイバーのバックホールがつなげられないというようなところ。災害のところ。そのような山の中とか外れたところでも、宇宙からだからつながるというかたちになるわけですね。

日本は恵まれていて、光ファイバーがいろんな家庭に行き渡って来ていて、先ほどご報告したように、Softbank光ということで、家庭までバンバンつないでいますけれども、世界で見るとこんなに光ファイバーがふんだんにある、家までつながるという国はまずほとんどないわけです。

アメリカで見ても、ちょっと郊外に行くと、光ファイバーどころか普通のケーブルですらつながらないと。ところが空から、宇宙から光ファイバー並みの接続で、家庭にズドンとつながると。あるいは基地局にズドンとつながると。

あるいはコネクティド・カーで、これはバンのような絵が描いてありますけれども、普通の一般的な乗用車の屋根の上にこのアンテナがつながると。普通の一般的な乗用車の屋根の上にコネクティド・カーとしてどこに走っていってもつながると。

これがLTEの基地局なら、車の屋根がLTEの基地局になると。したがって、従来の衛星電話みたいな、どでかいアンテナでしゃべるのではなくて、車の中で普通にみなさんが使っているiPhoneだとか、Androidのスマホがそのまま普通にしゃべれると。

どこに運転していっても、そのまま途切れずに普通にしゃべれると。山の中に行っても、郊外に行っても、どこに行ってもつながると。車自体もコネクティド・カーとして、どこに運転して行ってもつながると、いつもつながるという状況がつくれるということです。

ということで、これはほんの一例ですけれども、私はこれで通信革命が起きると思っています。

携帯事業者をやっていて、98パーセント、99パーセントつながるわけですけれども、最後の1パーセント、最後の2パーセントをつなぐのに、それまでの98パーセントつなぐのに行った設備投資と同じくらいかかるんです。

最後の2パーセントというのは、本当に設備投資、お金がかかるんです。投資効率が悪いんです。だから世界中の携帯事業者のほとんどは最後の2〜3パーセントは諦めるんです。だからつながらないんです。

日本は諦めずにどんどん設備投資、競争してつながるようになっていますけれども、世界中の携帯会社の平均で言うと、最後の5〜10パーセントは諦めているんです。

それが衛星からつながるということは、最後の0パーセントまでつながるとことを意味しています。

中国の携帯事業社が1社で、1年間で2兆数千億円の設備投資をしているわけです。アメリカの携帯事業社が1社で、1年間で1兆数千億円使っているのです。

このOneWebは、世界中をつなぐのにどれほどの設備投資、固定費のCAPEX両方足して1年間のかかる投資がいくらだと思います?

携帯事業社が1社で、1つの国で1兆円、2兆円使っていると。それに対して、全世界をカバーするこのOneWebにかかる設備投資と固定資産の合計が1年間で1,000億円ちょっとです。

ものすごく設備投資の効率がいいでしょ。そんなに安くつながるなら、なんでケーブルにつなぎたいんだっけと。なんで光ファイバーにつなぎたいんだっけと。なんでモバイルの通信のタワーのバックホールをほかの方法でつなぐんだっけと。なんでコネクティド・カーをつなぐのに従来の高い方法でつなぐんだっけということですね。

我々はこのOneWebで通信革命をもう一度起こすと、世界の人々につなぐということを行いたいと思います。我々はこの会社の筆頭株主にすでになったということで、事業を行っています。

投資の実績

そのほかにも、今まで我々の投資の実績というのは、この18年間毎年44パーセント価値を増やしてきた。利益を増やしてきたと。投資の結果の利益が44パーセント。世界中でこんな会社はないです。

この規模で、このパーセンテージは我々1社だけです。そこまできました。必ず言われるのは、「アリババでラッキーだったね」と言われます。

そこでアリババを外すと、44パーセントが43パーセントになると。アリババをのぞいても43パーセントと。

そうすると先ほどから言っているような、苦しんだスプリントとか、ソフトバンクモバイルとか、そういう通信事業を入れると成長が少ないわけですから。それを入れるとどうなるかというと、これが43パーセントになります。アリババをのぞいても43パーセント、スプリントを入れても43パーセント、右から見ても左から見ても43パーセント。言い訳なし、ということであります。

ということで、事業の会社としても世界一の利益率を出しましたけれども、この規模で言うと投資のほうも圧倒的世界一の実績を出したということです。

これは過去の話ですけれども、ソフトバンク2.0で何をしたいのかというのが一番大事ですね。冒頭で申し上げましたように、ソフトバンクは今までパソコンのインターネット革命の最先端のところに投資をし、事業を日本で行い、世界にも挑戦してまいりました。

このチップがパソコンに入って、そのパソコン同士がつながるからインターネットだと。PCのインターネットで、我々は最先端のところで投資を行い、事業を行ってきたと。

それの中心が、同じチップが入るにしても、パソコンからスマホに入って、スマホ同士がつながるということで、モバイルインターネット革命だと。そのためにボーダフォンジャパンを買収したということなんですけれども、この革命の中心がパソコンからモバイルになって、モバイルからIoTになると。

IoTで同じチップがあらゆるものに入って、インターネット革命が起きるということであります。

このあらゆるものにチップが入って、それがインターネットにつながり、クラウドにデータがたまって、それをディープラーニングしていくと。

クラウドにたまったデータをAIで解析して推論するという時代がやってくるということです。

これがシンギュラリティになっていくわけですけれども、このシンギュラリティになっていく中で、一番重要な根源的役割にチップがあると。

IoTですべてのモノがインターネットにつながっていく、このIoTでつながるチップの90パーセントはARMになると。この最も重要なチップの革命、インターネットの革命、情報革命の根源的コアにあるチップのところで世界の90パーセントがARMになっているということです。

すでにスマホの99パーセントはARMです。これがIoTで90パーセント以上はARMになると。これがシンギュラリティで、今から30年以内に……これまでの30年間でチップの能力が100万倍になりました。僕は次の30年間で、もう一度100万倍の能力のアップになると思っております。

ここからさらに100万倍の能力アップになると、さまざまなテーマの分野で人間の知能をチップの知能が超えていくと。そうすると、ありとあらゆる産業が再定義されると思います。医療の世界、自動車の世界、街のインフラの世界、ありとあらゆるものが再定義されると。そこに常にチップが存在していると。

そのチップの90パーセント以上が我々のARMでつながっていくと。そうすると、ものすごいビッグバンが起きると思っているわけです。今まで、パソコンでビッグバンが起きたと。

それをはるかに超えるような、IoTで、シンギュラリティで、ビッグバンになると。全部とは言わないけれども、ありとあらゆる分野で人間の知能を、コンピューターのチップの知能が上回っていく。

チップがあらゆるものに入って、そしてそれが無線の通信でクラウドの超知性につながっていく。言うと申し訳ないけど、過激なことをひと言申し上げますね。

言うと申し訳ないけど、これから30年以内に靴にもチップが入っているわけです。この靴に入っているチップが我々の知能を超えているわけです。

我々は靴の知能にも劣ると。悲しいでしょう? 俺は靴に負けるのかと。メガネにも入っていくと。ありとあらゆるものに入っていくと。

靴に入っているチップだけでは、より単純なチップかもしれませんが、そのチップが無線でクラウドに繋がっているわけです。

クラウドでディープラーニングしているわけです。そうすると、トータルのシステムではありとあらゆるものが、我々の知能の部分をどんどん上回っていくと。

あらゆる産業が再定義されていくということになります。そうすると今、Uberが乗り物の世界を再定義している、Airbnbがホテルの世界を再定義していると。

Googleが今までの百科事典という世界を再定義したわけです。スティーブ・ジョブズがスマホで携帯電話を再定義したわけです。

そういう再定義が、ありとあらゆる分野、ありとあらゆる産業、ライフスタイルで再定義されている。

今までのビッグバンがすべて予行演習だったと思える程度のビッグバンがやってくると。このチャンスを逃すのはあまりにももったいないと。

「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の今後

このチャンスを真正面から受け止めるために構えを作ろうと。その構えのために作るのが、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」であるということなんですね。

私がソフトバンクグループに出した結論です。このビジョン・ファンドは単なるファンドの投資をして、短期間で売って、3パーセント、5パーセントの株を持って……というのと違います。

ほとんどの場合は20パーセントから40パーセントくらいの株を持って、筆頭株主として役員に入って、その起業家・創業者とともに、経営戦略を議論し、有機的結合を作っていくと。

同志的結合、これに勝るものはないと私は信じております。同じ志を持った結合ですね。今まで日本では財閥の系列とか、同じマークをつけている会社だから血を分けた仲間だと。

ブランドを共有して財閥の系列だというような、日本的系列としてありましたけども、必ずしもその系列の会社が世界一のグループじゃないわけですね。

モーターで世界一、ケミカルで世界一、タイヤで世界一と。車で世界一と。全部の分野で世界一という会社はなかなかないわけです。

結果どうなるかというと、世界で5位と3位と2位と、一部1位というものの連合体になるわけですね。そうするとどこかに妥協が生じるわけです。

「グループだから、1位じゃないけど、3位だけど、10位だけど、しかたないから使う」という妥協が生じるわけです。

我々はそうじゃないわけです。ブランドにこだわらない。生まれにこだわらない。国籍にこだわらない。何にもこだわらない。とにかくそれぞれの分野で世界一になりそうな会社が連合体としてシナジーを出しているわけです。だから強い。

そして、成熟したらイグジットする。伸び盛りの強い結合体ができると。単純に投資をしてお金だけの結合体でもない。戦略を共有している志を共有している結合体だと。

世界に今までなかった新しい仕組みです。新しい組織体系の仕組みを我々ソフトバンクという会社が、今初めて作ろうとしているわけです。

世界で初めての形態なので、なかなか人に伝わりにくいと思いますけども、今までに例を見ないソフトバンクという新しいかたちができると。

ベンチャーキャピタルでもない。そもそもソフトバンクが今回作るビジョン・ファンドは、全世界のベンチャーキャピタルの総合計の資金量が65ビリオンぐらいだと言われております。

全世界のすべてのベンチャーキャピタルの金額を足して65ビリオン。ソフトバンク1社で100ビリオン。

全世界のベンチャーキャピタルを足した規模よりも大きいと。それが今回のソフトバンク・ビジョン・ファンドであり、我々が作ろうとしている新しい形態だと。

何のためかと言うと、「情報革命で人々を幸せにするために」という理念のもとに集まった集合体だと。それがソフトバンクだということです。

ちょっと話が抽象的になったかもしれません。一般的な決算説明会とは少し違うかもしれませんけれども、「何をしたいのか」と。その根源的な「何をしたいのか」ということを今日は中心に話をさせていただきました。

ありがとうございました。