長期投資はコツコツと積み上げていく

白水美樹氏(以下、白水):それではお時間となりましたので、「長期投資新春セミナー〜極める投資道〜」を始めさせていただきます。

みなさま、こんにちは。そして、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

私共、独立系投信会社8社が数年に1度とはなりますが、合同でセミナーを行っています。本年は3箇所に分かれてこのようにセミナーを行わせていただきます。この南大塚の会場は、ありがとう投信さん、ユニオン投信さん、そして、レオス・キャピタルワークス、この3社にて行わせていただきます。

「究める投資道」という何とも骨太なタイトルが付いております。「投資道」と聞くと、どうしても、歯を食いしばって我慢をしながら行っていく投資なのかなというイメージが起こりますが、今日は、楽しく、ためになる時間にしてまいりたいなと考えております。

長期投資は、お盆もお正月もなくコツコツと続けていく長い道のりとなります。時に不安になったり、このまま続けていってもいいのかなと意義を見いだせなかったり、いろんな思いがこみ上げてくるかと思います。

年の初めに長期投資の講師の話を聞き、長期投資の仲間同士でお話をすることによって、是非みなさまの安心に繋げていけたらと思っております。本日は、2時間というお時間になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

申し遅れましたが、高い所から失礼いたします。私は、ひふみ投信のレオス・キャピタルワークスでマーケティングを務めております、白水と申します。本日の司会を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

それでは早速、講師をご紹介していきたいと思います。

(『夜桜お七』が流れる)

ありがとう投信からは、今日はファンドマネージャーの川元由喜子さんにお越しいただきました。今日は和装でとても艶やかな姿です。どうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

(『ドラえもんのうた』が流れる)

それぞれ投信のメンバーにはテーマソングがついております。続いて、レオス・キャピタルワークス、ひふみ投信の代表取締役社長、CIOの藤野英人さんにご登場いただきます。

(会場拍手)

(『六甲おろし』が流れる)

続いて、ユニオン投信株式会社から代表取締役の仲木威雄さんにお越しいただきました。

(会場拍手)

ジャイアンツのマークが付いているのですが、『六甲おろし』なんですね。

仲木威雄氏(以下、仲木):本来は大阪人なんですけど、巨人ファンです。

白水:今日はこの3名の講師をお招きいたしまして、会を進めてまいりたいと思います。それでは会の冒頭に、お三方から長期投資のお仲間とみなさまにご挨拶をいただきたいと思います。まずは、川元さんからお願いいたします。

川元由喜子氏(以下、川元):今日はレディーファーストなのか、歳の順序なのか、判然といたしませんが、最初にお話させていただきます、川元と申します。

ありがとう投信というのはご存じない方のために申し上げておきますと、個別の株に投資するファンドではなくて内外のいろいろなファンドに投資して国際分散投資するという投資信託でございます。

私どものオフィスは上野御徒町にございまして、上野の山の桜にあやかって、桜色を会社のシンボルカラーとしております。桜は上野の専売特許でもなんでもないのですが、上野松坂屋さんも「さくらパンダ」というゆるキャラをやっていらっしゃいますし、私どもも桜にあやかって、桜色を使わせていただいております。

今日はスタッフの方から「登場曲は何か桜の曲にしてくださいよ」と言われましたが、残念ながら森山直太朗もコブクロも歌えませんので、真っ昼間から「夜桜お七」を使わせていただきました。

この後別に歌いませんけど、本日はどうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

白水:ありがとうございます。続きまして、レオス・キャピタルワークスの藤野さんからご挨拶をお願いいたします。

藤野英人氏(以下、藤野):みなさん、明けましておめでとうございます。レオス・キャピタルワークスの藤野英人でございます。本日は新年早々こんなに沢山の人に集まっていただきまして本当にありがとうございます。

新年早々、5日連続安というのは戦後初めてだということですね。いきなりの下落に日本のマーケットは下がったねってなっているんですけど、恐らく今後どうなるんだろうかっていうことに対しても、かなり心配されている方もいらっしゃるのではないと思います。

そういう難しいところは川元さんに任せて。今日は目先のことだけではなくて、長期投資の考え方について、実際にこういう厳しい相場はこれから何度もあると思うんですけど、そういう時にどのような心構えでそれを受け止めていくのかというのも含めてお話していきたいと思います。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

仲木:みなさんこんにちは。ユニオン投信の仲木といいます。初めての方も多いと思いますが、さわかみ投信出身で、1年半前にユニオン投信に移り、代表を務めさせていただいています。今日は3連休の初日でお忙しい中かつ天気が良い中お集まりいただいて、本当にありがとうございます。

今日は2時間休憩ないですが、是非みなさんにとって有意義な時間にしていただきたいと思います。投資について、私自身の行動から培われた考え、そして疑似体験、いろんなお客様との会話、経験から得た物を今日みなさまにお話させていただければと思っておりますので、よろしくお願いします。

白水:それでは、早速、3名の講師の方からそれぞれお話をいただきたいと思います。それぞれお話をいただいた後に、事前にみなさまからいただきましたご質問に基づいて、パネルディスカッションを進めさせていただきます。

みなさまもうマーケットのことをとっても気になさっていらっしゃるのではないかと思います。そのお話もたっぷりさせていただきたいと思っておりますので、どうぞ4時までの2時間楽しんで、この話を聞いていただければなと思います。

それでは早速、ありがとう投信の川元さんよりお話を頂戴いたします。川元さん、どうぞよろしくお願いします。

人のいないところにご利益がある

川元:今年の1月1日は明治神宮に初詣に参りました。初詣で明治神宮に行ったのは初めてだったんですけど、いつも参拝客数ランキングで1位になるようなところですから、どんなに混んでいるかなと思って行ったわけです。来ている人の数もとっても多いんですが、明治神宮ってものすごい幅が広いんですよね。どんどん参拝客をさばいているという感じでした。

だんだん本殿が近づいてきますと、お巡りさんがスピーカーで誘導してらっしゃるわけです。「順番が来たら門をくぐって、参殿を参拝なさってください」と。「左右の入口が空いております。どこから入っても御利益は同じです。出来るだけ空いている入口からお入りください」ということで、私も素直ですからその通り1番右側の入口を通りました。

そうしたら、参拝客がある程度本殿のところでそれなりの列を作っているわけです。今度も一番右の端っこを目指して行きましたら、あっという間に最前列に辿り着いて、わりとさっさと参拝をすることができました。

私も株式市場と長年付き合っておりますので、できるだけ人のいないところ、できるだけ人気のないところにこそ、大きな御利益があることはよくわかっているのですね。初っぱなからそんな場面に行き合った2016年の始まりでございました。

今日は、長期投資というお題をいただいております。私は「さあ、長期投資するぞ」と思ってやっているわけではないのですね。みなさまもそうだと思いますが、投資って大体長期って決まっているじゃないですか。

例えば、住宅買いますよっていうのを投資って言いますけど、別に来年再来年に売ろうと思っているわけじゃないし。自分への投資なんていう言い方もしますよね。英会話習ってますとか。でも、来年からお給料が上がると思っているわけじゃない。

例えば、お子様を大枚はたいてゴルフレッスンに通わせてらっしゃると聞くと、将来への投資かなと思うわけです。そういう時、みなさんは、大体5年とか10年とか、もっと長い時の長さをイメージしてらっしゃるはずなんですよね。

それなのに、どうして株式投資や証券投資になると、長期投資は難しいと思ってしまうのでしょうか? この答えはそんなに難しくなくて、それは毎日株価がわかるから、株価が動いているからですね。毎日自分の持っている株のお値段が動いているのが見えてしまう。それが間違えのもとですということなんですね。

不動産は絶対に儲かる?

川元:今日ご参加のみなさんの中には、多分、よく「資産運用しませんか?」と不動産屋さんからお電話がかかってくる方がいらっしゃいますよね? 私もちょっとお付き合いのある不動産屋さんがいらっしゃって、その方は立派なちゃんとした不動産屋さんなんですけど、セールストークにこういうのがあるんですね。

「川元さん、資産を築くんだったら、不動産ですよ。自分の知ってる限り、株は上手くいきません。不動産だったら確実です」とおっしゃるんですね。

私の職業をご存じでおっしゃっているのかどうかちょっとわかりませんけども。私は、そこで、「社長さん、そうはおっしゃいますけど、不動産だって、新聞の株価欄のように、不動産欄に毎日値段が出て、自分が持っている不動産の値段が動いているのが毎日見えたら、同じことが起こりますよ。そんなに大きな違いはないんです」と申し上げるんですね。

毎日株価が動いているのが見えるからよくない。それで、不動産が上手くいくというのなら、株も動いているのを見なければいいんですね。

不動産でも短期投資の時代がありました。みなさん、覚えてらっしゃいますよね? 80年代の不動産バブルの頃は、不動産といえども非常に流動性があって、人気の物件なんかは後から後から売り手と買い手がやってきましてね。どんどん不動産の価格が上がっていったのが見えた時代がありました。その時は、不動産だって短期投資をやっていたわけですよね。

でも、今不動産でそういう投資は流行らない。それ程流動性もありませんし、どんどんどんどん地価が上がっていくという見通しもありません。

では、不動産で資産形成ができるとはどういうことですか? というと、賃貸料で築いていくわけですね。賃貸料をベースに投資の算段をして、地価が動くのをそんなに見ているわけではないということだと思います。

だったら、株も同じようにすればいいんじゃないのということですね。株にも配当がございます。最近は選んでいけば、悪くない配当のものがけっこうございます。ですから、配当をベースに投資の算段をして、毎日株価を見ない。これが大事なことですね。

不動産がそうやって上手くいくというのあれば、株式投資でも同じように資産が築けるはずだと私は思います。

株式投資で不安になる原因は「信頼の問題」

川元:株に投資してらっしゃると、みなさん不安になる。不安になるというのが、判断を間違う大きな原因ではないかと思います。なんで不安になるのか? 私は個人としては資産運用しているわけでして、自分でも当然のようにそれなりに株を持っていますが、不安になったりはいたしません。

改めて、「なんでだろうな?」と考えたわけですけども。「長年やっていますから、単なる慣れでしょ」とそういう説もございます。

それでもさらに「なんでかな?」と考えてみますと、それは信頼の問題かなと思うんですね。では、何を信じているの、ということです。

自分の投資している証券。株なら株が、価値を持っているということを信頼しているんですね。その価値は、株式を発行している会社の収益力からくるということですね。この収益力を持った会社だから、良い会社である。だから、その株には価値があると信じているわけです。

もう1つ信じているのは、その価値をちゃんと実現してくれる株式市場があるということですね。マーケットに対する信頼です。

ですから、株式を発行している会社の収益力に対する信頼感と、それをちゃんと評価してそれなりのお値段をつけてくれるマーケットを信頼しているということですね。

ですから、年始早々、株式市場、株価が荒れております。今は株価が下がっているかもしれないけど。有価証券て、文字通り、価値のある証券ですね。価値のあるものを持っているんだし、マーケットはその価値にあったそれなりの値段をそのうちつけてくれるでしょう。こういう感じでいるわけですね。

不安にならない原則は信頼の問題であろうと。株式の価値とマーケットの機能に対する信頼ということですね。

ここでついでに申し上げたいのが、この会社を株式の価値をちゃんと評価するということはとても大事だということです。これは株式市場の基本です。

何を言いたいかと言いますと、今日ここに3人集まっていますが、この3つのファンド、ほかの会場も大体そうなんですが、いわゆるアクティブ運用でやっているファンドですよね。

これはどういうことかというと、それぞれの会社をちゃんと調べて、株式の価値をきちんと評価してっていう、そういう営みの上に成り立っているファンドだよということですね。

とても大事なことだと思うんですよね。評価って大切じゃないですか。会社の人事でもそうですよね。一生懸命働いているのにちゃんと評価されなければ働く気になりませんよね。ですから、評価も含めた人事が上手くいっている会社っていうのは活力のある会社だと思うんですよね。

会社に対する評価も同じだと思うんです。ちゃんといい経営して収益をしっかり上げている会社はそれなりの評価をされなくちゃいけない。ですから、アクティブ運用のファンドに投資してくださっている個人投資家のみなさんは、この経済の大事な活動を支えていらっしゃる投資家であると思うんですね。

そうやってきちっと評価されるところにマーケットの活力があるんだろうし、そういうマーケットがあるところに経済の活力も生まれるだろうと思います。

だから、アクティブ投資って本当に大事だなと思うんですよ。今残念ながらインデックス投資が主流という雰囲気がなきにしもあらずなんですね。インデックスに投資するのは、それはそれで意義があることです。インデックス投資に人気が集まる理由は、残念ながら私はとてもよく理解しております。

しかし、基本はやっぱり企業をしっかり評価すること。ここが大事だと思うんですね。

インデックス投資が正しいというふうに思っている方が世の中にけっこういらっしゃることを私は心配しているんですが。正しい正しくないの問題じゃないですね。インデックス投資もいいんだけれども、やっぱり「アクティブ投資はとっても重要」ということをここで一言言いたいわけです。

頑張れ、アクティブファンド、という感じです。

世界全体で経済は成長していく

川元:本題に戻りまして。のんびりゆったり投資するもう1つの重要な条件は、しっかり分散投資することですね。それは、多分あまり詳しくお話しなくてもみなさんよくご存じだと思います。ご存じだから、投資信託を利用しようと考えられたんですよね。価値があると思っていても間違う時は間違うわけですからね。

間違った時に痛手を大きくしないようにしっかりいろんな物を持って分散しましょうということですね。十分に分散された株式のポートフォリオ、いろんな種類の株式の入った資産というのは、基本的には経済の成長に伴ってその価値が成長していくと考えていいと思うんですね。

経済成長の原動力は企業活動です。ですから、経済が成長するに伴って、企業全体の価値が膨らんでいく。そういうふうに考えていいと思うんです。株式投資をするに当たって、ここが一番ひっかかるのかなと思わないでもないんですね。何しろ日本は過去20年の実績が実績ですから。本当に経済の低成長がずっと続いてきましたよね。

今後はもっとこれ以上高齢化少子化が議論になるし、先行き暗いよなという気持ちになるのはわからないでもないですが。じゃあ、なんで過去20年経済が低成長だったかなって考えてみますと、それはいろんな理由があると思います。一言で言うと、多分多くの企業が成長を目指さなかったからだと思うんですね。

はるか昔の高度成長の頃は、みんな大きくなるぞと成長を目指して企業は活動していました。しかし、その時代の最後にいわゆるバブル経済があって、その後企業は太りすぎた贅肉をそぎ落としてずっとダイエットしていたわけですね。

ダイエットとは縮むことですよね。リストラとか選択と集中とか、それを象徴するような言い方がいろいろありますけど。要は企業が縮もうとしていて、経済が非常に厳しい時代だった。それが過去の20年だったり25年だと思うんですね。

そういう意味では日本の企業もそろそろ成長を目指す時代に入っているのかもしれません。また、日本の国境の向こうを見れば、世界全体では経済は成長していくだろうなという気が私はしています。

これは根拠を示せと言われてもなかなか難しいと思うのですが、いろんな理由がありますね。そんなに時間もありませんので、1つだけ申し上げると。世界経済も長いことずっと成長してきているわけです。ここへきてもう成長しないと断じるほうがはるかに難しいとだけ申し上げたいと思います。

世界経済は基本的には成長する。私はそこにも信頼感を持っているんですね。経済が成長するという前提にたった場合、債券投資よりも株式投資のほうが収益が上がる、儲かるというのは、みなさんピンとくるでしょうか? これは、リスクとリターンということだと思うんですね。

リスクとリターンとはどういうことか

川元:ちょっと証券理論のようなものをお勉強なさっている方は、リスクというのは、ベータとかトラッキングエラーとか難しい言葉があって、要は株価がぶれることをリスクと言います。予測しがたいことをリスクが高いと習います。間違っているとか間違っていないとかではなくて、証券理論ではそれが定義なので、絶対に正しいんです。

ぶれるということがリスクである。私も証券理論とは長いこと付き合っていますので、それは頭ではちゃんと理解しているんですが、どうも身につかないというか。

長期投資の精神というのは、株価がどんなにぶれても最終的には価値に見合った株価をマーケットがつけてくれるというのをさっきも申し上げました。そういうことを信頼して投資していますので、途中でぶれるということに関しては、仕事だからやっていますけど、個人投資家としてははっきり言って全然重視していないんですね。全然興味がないというか。

じゃあリスクとリターンというのは、どういうことかと言いますと。これは直接企業活動に目を向けてくださいと思うわけです。

例えば、事業を始めようとしますよね。あなたと私の2人がお金を出します。1人は「今お金を出すけれども、事業が上手くいかなくても利息と元本耳を揃えて返してね」と言ったとします。

もう一方の人は、「しょうがないな。事業が失敗したら、自分が損を被るよ」と言ったとします。2人は事業を始めました。非常にラッキーなことに事業が大成功して、お金がとっても儲かりました。こうなった時に、2人で等分にこの利益を折半するでしょうか? しませんよね。当然損を被るよと言った人がほとんどの利益をもらうということになります。

これがリスクとリターンということですね。

最初、世界経済全体が成長していくことが前提と申し上げました。そうすると企業の収益全体が儲かっていくというわけですね。1つ1つの事業で失敗するものも多々あるわけで、1つ1つの案件に関してみれば、リスクを取らなければリターンは得られないけれども、リスクを取ったからといって絶対にリターンができるというものではありません。

でも、世界全体として十分に分散された株式のポートフォリオという意味では、世界経済全体が成長していけば、債権投資でやっていくよりは株式投資をしているほうが、収益があがるであろうということは、ほぼ確実に言えるのではないかと私は思っております。

そろそろ時間になりそうなので、まとめます。不安なくゆったりと投資していくコツとしましては、最初に申し上げたのは、毎日毎日株価を見ないということですね。

そして、自分の投資している株式に対する価値の信頼。それからマーケットに対する信頼。そういう信頼を持って、そして世界全体の経済が成長していくことを信じて、ゆったりとリスクをとりましょう。こういうことでございます。

私の話をここで締めさせていただきたいと思います。どうもご静聴ありがとうございました。

(会場拍手)

白水:川元さん、ありがとうございました。