第140回 個人投資家向けIRセミナー 第4部
アシックス、売上高1兆円突破を見込む それでも「まだ通過点」と位置付ける理由
講師自己紹介

辻上和也氏(以下、辻上):みなさま、こんにちは。株式会社アシックス財務部長の辻上和也です。本日は短い時間ですが、どうぞよろしくお願いします。
まず、簡単に自己紹介させてください。私は大学卒業後、金融機関に勤め、さまざまな業務に従事しました。その後、IT系企業に転職し、大型の資金調達やキャッシュマネジメントシステムの構築などに携わってきました。
主にファイナンス分野でキャリアを積み、2023年1月にアシックスに入社しました。入社以降、現在のポジションにて資本政策や財務戦略の企画・立案、案件の執行に加え、資本市場とのコミュニケーションを行うIR業務も担当しています。
趣味はランニングで、月に約100キロを目標に走っています。どうぞよろしくお願いします。
INDEX

辻上:本日のアジェンダは大きく3つあります。スライドのとおり、1つ目は会社概要、2つ目は当社の業績および株価、最後に個人投資家のみなさまへのお話です。
創業哲学、沿革

辻上:会社概要です。まず、当社の創業哲学についてご説明します。
スライド中央には、ラテン語の「Anima Sana In Corpore Sano」という言葉があります。日本語に訳すと「健全な身体に健全な精神があれかし(あってほしい)」という意味です。アシックスという社名は、この言葉の頭文字に由来します。我々社員は、この創業哲学を日々の行動指針としてしっかり認識し、活動しています。
また、英語では「Sound Mind, Sound Body」という表現で知られており、これをブランドスローガンとして日々の活動に取り入れています。
増井麻里子氏(以下、増井):それでは、ご質問を挟みながら進めます。創業哲学について触れられていますが、創業時のプロダクトがバスケットシューズだったことは、なにか関連があるのでしょうか?
辻上:当社の源流の1つである鬼塚商会は、1949年に創業されました。創業者は鬼塚喜八郎氏ですが、戦後に神戸へ降り立った際、空襲で荒廃した街で非行に走る青少年が多く見受けられたそうです。その経験から、日本の復興には青少年の健全な成長が不可欠であり、その成長をスポーツを通じて支えたいと考え、スポーツシューズの製造を始めました。
何を作るべきかについては、最も難しいシューズを最初に作れば、その後のハードルも乗り越えられるという考えから、当時最も難しいとされていたバスケットボール用シューズからスタートしたのです。
初期に作った吸着盤型のバスケットボールシューズは大ヒットしました。これは、ある日の夕食にタコの酢の物が出てきて、その吸盤を見て「これだ」とひらめいたことが、最初の商品開発につながったと聞いています。
増井:一番難しいものにチャレンジするという、その気概がすばらしいですね。
辻上:そうですね。後ほどまた話に出てくるかもしれませんが、今も当社のさまざまな活動に根づいているアプローチです。
約20年で7倍超の成長

辻上:スライドの図は、2004年以降の売上高の推移を示しています。20年強で売上高は7倍以上に成長しました。また、海外売上高比率も年々上昇し、現在は80パーセントを超えています。
詳細に見ると、2015年から2020年にかけては売上高がやや伸び悩んでいました。しかし2019年以降、さまざまな経営改革を抜本的に実行し、経営の仕組み化を進めました。その結果、2021年以降は右肩上がりの成長路線に転じ、現在に至っています。
増井:質問です。近年、業績が大きく伸びている一方で、2023年頃にスニーカーブームが終わったという話もありました。ただ、その時は「高価格帯の取引が少し落ち着いた」という意味合いだったのではないかと思います。
現在、街中ではあらゆる年齢層の方が男女問わずスニーカーを履いている印象があります。こうした状況は、御社の事業戦略にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
辻上:当社もカジュアルスニーカーを取り扱う製品群を有しています。詳しくは後ほど写真を表示しながらご説明しますが、ファッションのカジュアル化は世界的な大きな流れになっていると考えています。また、カジュアルスニーカー市場は世界的に拡大し続けていると言えます。そのため、当社もその恩恵を受けながら事業を成長させてきたと考えています。
一方で、当社のビジネスサイズは市場全体に比べてまだ小さいため、非常に大きな成長余地があるのではないかと期待されています。
増井:「スニーカーブームは、今後も永続的に続く」というイメージでしょうか?
辻上:どのようなブームやトレンドも永続的に続くものではないと考えています。ただ、先ほど述べた経営の仕組み化を通じて、トレンドが変化した際にも適切に対応できるよう、またそれが大きなリスクとならないよう、しっかりとコントロールできる体制を整えています。
カテゴリー別売上高

辻上:こちらは2025年のカテゴリー別売上高です。主な製品群を「カテゴリー」と呼び、売上高の内訳を円グラフで示しています。
スライド右上のパフォーマンスランニングは、高付加価値のランニングシューズを展開するカテゴリーで、売上の半分近くを占めています。特に海外の方々からは、「アシックス」はランニングシューズのブランドとして認識されることが多いと考えています。
右下のコアパフォーマンススポーツは、ランニング以外の競技用スポーツシューズを取り扱うカテゴリーです。代表的な競技として、テニス、バレーボール、サッカー、バスケットボールなどがあります。その左横のアパレルでは、スポーツウェアを展開しています。
また、先ほど話題に出たライフスタイル系のシューズ、つまりカジュアルシューズやそれに関連するアパレルを展開するカテゴリーがスポーツスタイルです。
さらに、「ラグジュアリーライフスタイルブランド」と称しているのがオニツカタイガーです。最後に、ビジネスから運動まで幅広いラインナップを揃えているのがウォーキングシューズです。
これら6つのカテゴリーでビジネスを展開しており、特にこの3年間はスポーツスタイルとオニツカタイガーが非常に高い成長率を示しています。前年比の数字からもわかるように、いずれも前年比40パーセント以上の成長を遂げており、当社の成長を牽引する製品群です。
パフォーマンスランニング(P.RUN) プロダクトポートフォリオ

辻上:商品をご紹介します。パフォーマンスランニングでは、日々のジョギングやランニング、フルマラソンに加え、オリンピックや世界陸上といったトップアスリートが使用する場面まで、走力や走法、レベルに応じた幅広いランニングシューズを展開しています。
当社は研究開発拠点において非常に多くの足型データを保有しており、それに基づく高い機能性を強みとしています。そのため、トップランナーやトップアスリートから市民ランナーまで、幅広いユーザーにご愛顧いただいていると考えています。
最近は特に高付加価値商品へのシフトを進め、プレミアムブランドとしてのポジショニング強化を図っています。
マラソン大会におけるシェア

辻上:世界の主要なマラソン大会における「アシックス」のシューズシェアをご紹介します。国内では、今年3月に開催された東京マラソンで34パーセント、昨年11月に開催された神戸マラソンでは42パーセントと、いずれもNo.1のシェアを獲得しています。
また海外でも、昨年8月のシドニーマラソンで26パーセント、約7万人が参加するインドのムンバイマラソンで35パーセントと、高いシェアを獲得しています。これらのデータからも、世界中のランナーに支持されていることがわかると思います。
増井:主要なマラソン大会でシェアを獲得することがなぜ重要なのか、その理由を教えてください。

辻上:前のスライドを示しながらご説明します。マラソン大会には、2時間30分以内で走る「エリートランナー」と呼ばれる方々から、4時間、5時間、6時間で走る方々まで、幅広い参加者がいます。例えば、2時間30分で走る方と5時間で走る方では、走り方やシューズに求める機能などがまったく異なります。
そのため当社では、機能軸ごとにブランディングや商品展開を行い、世界統一の売り方を採用しています。幅広いランナーが参加するマラソン大会でシェアを獲得できていることは、さまざまなレベルのニーズに応え、幅広い層に受け入れられる商品を展開できている証拠です。これをより直接的に示す指標がマラソン大会でのシェアだと考えており、当社ではこれを重視しています。
増井:現在ではソールの厚みが40ミリといった規定があると思いますが、その規定ができる前は、もっとバリエーションが広かったのではないでしょうか?
辻上:約10年前に、ソールが分厚い「厚底シューズ」と呼ばれるものが市場に登場しました。それ以前は、むしろソールが薄いシューズが一般的でした。
増井:超エリートランナーの方のシューズは、非常に薄くて細い印象がありました。
辻上:おっしゃるとおりです。ただ、いわゆる素材革命が起き、厚みがあっても軽い素材が開発されました。例えば、右から2番目の「SPEED」というラインは、トップアスリート向けのシューズを取り扱う機能軸のラインです。「METASPEED」と呼ばれるモデルは、世界中のアスリートから非常に高い支持を得ています。
これらのシューズにはカーボンプレートが組み込まれており、その力で前進の推進力を強化する機能が盛り込まれています。
増井:時代によって、まったく異なるものが求められるということですね。
辻上:そうですね。最近のマラソン大会では次々に記録が更新されていますが、シューズの機能向上がその一因ではないかと思います。
増井:確かにそうだと思います。「厚底が良い」という考えがエリート層にも広がってきたのは興味深いですね。
辻上:実は私のような一般市民ランナーでも、「METASPEED」ではありませんが「SPEED」シリーズを履いています。これを履くと、走り心地やスピードがまったく違います。
増井:それはぜひ履いてみたいですね。
辻上:厚底によって足が少し長く見えるため、私も非常に愛用しています。
コアパフォーマンススポーツ(CPS)

辻上:ランニング以外のスポーツ競技用シューズを取り扱うコアパフォーマンススポーツでは、テニスが主軸です。次のページでシェアについてお伝えしますが、グローバル規模で非常に強いブランドを築いており、このカテゴリーを牽引しています。
直近では、テニスを基盤とした、比較的気軽に楽しめるラケットスポーツとして、ピックルボールやパデルテニスなどがあります。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、いずれも世界的に競技人口が増えています。テニスで培ったブランド力をこうした分野にも活用しながら、成長していけるものと非常に期待しています。
また、テニス以外でも、バレーボールなどのインドアスポーツ用シューズについても、非常に機能性の高い製品を展開できており、高いシェアを獲得できると考えています。
増井:私事ですが、私もバレーボール関連の仕事に少し携わっており、知り合いに元カメルーン代表選手の方がいます。その方とは日本人だと思われたことをきっかけに交流が生まれ、「『アシックス』のあのシューズとあのシューズを送ってくれ」と頼まれ、製品を国際便で何度も送った経験があります。
それほど海外でもブランド力が高いと感じていますが、グローバルでのブランド力の理由は何でしょうか?
辻上:トップアスリートの方々は、勝利につながるシューズや、自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるシューズを求めています。勝たなければならない状況において、当社のものづくりの強さや機能性の高さが評価されているのではないかと思います。
私はバレーボールはしませんが、「アシックス」のシューズであれば、少しでも高く跳べるといった機能がきちんと備わっています。
増井:やはり、機能が良いという点が一番の理由ですか?
辻上:それは間違いなくあると思います。
増井:反対に、デザインについてはどうですか? 最近ではテニスでも「On」などの競合ブランドが日本でも人気だと思いますが、いかがでしょうか?
辻上:トップアスリートにとっては、デザインよりも絶対に機能だと思います。勝てるシューズが重要です。ただ、そのように作り上げたブランドを、次にボリュームゾーンの顧客層にしっかり認知して受け入れてもらうには、デザインやかっこよさも絶対に必要であるため、その点も非常に重視しています。
増井:かなり細かいマーケティングが必要ですね。
辻上:おっしゃるとおりです。我々はグローバルブランドとして、世界中で基本的に同じ商品を展開しています。例えば、商品の企画やデザイン、機能に関しては、アメリカのボストンに人材を集約し、そこで日々しっかりとモニタリングを行いながら、良いデザインの商品を作るために努力しています。
増井:統一感もあるということですね。
テニスの主要大会におけるシェア

辻上:こちらはテニスの主要大会における、本戦出場男子選手が着用したシューズのシェアを示しています。アメリカ、イギリス、フランスと記載していますが、おそらくみなさまがよくご存じの大会を指しています。
例えば、スライドの1番左側にある昨年夏に開催されたアメリカの大会では、全体の22パーセントのシェアを獲得し、1位となっています。出場選手は128名で、そのうち28名が「アシックス」のテニスシューズを着用しています。このうち17名は当社と契約のない選手です。つまり、自らの意思で「勝てるシューズ」として選んでいただいたことを示しており、この数字からも「アシックス」の強いブランド力が伝わるのではないでしょうか。
スポーツスタイル(SPS) プロダクトポートフォリオ

辻上:先ほど「カジュアルスニーカー」とお話ししましたが、当社ではスポーツスタイルというカテゴリーになります。このカテゴリーでは、当社がもともと持つスポーツテクノロジーをライフスタイル商品に応用し、ユーザーの日常をより活発で快適にするシューズやアパレルを取り扱っています。
この分野は欧米で人気が高まっており、世界中の消費者にも受け入れられ始めていると考えています。ご覧のとおり、当社は幅広い製品群を持つことで、トレンドサイクルの早いスニーカー市場における機会の創出やリスクへの対応を進めています。
スポーツスタイル(SPS) コンセプト

辻上:過去に競技用シューズとして展開していたアーカイブを、当社は多数保有しています。これを現在のライフスタイル向けに再解釈し、商品化したものになります。代表的な商品として「GEL-KAYANO 14」が挙げられます。この商品は、2008年のランニングシューズをベースに、2020年にスポーツスタイルの商品として発売されました。
単なる焼き直しでランニングシューズをスニーカーにしただけではなく、当社のスポーツ工学研究所という研究開発機関と連携し、機能性が高く、より快適なシューズを開発することができたと思います。特にファッション感度の高い方々から大変支持されていると考えています。
オニツカタイガー(OT)

辻上:「オニツカタイガー」は、日本発のラグジュアリーライフスタイルブランドとして、従来のスポーツ系カテゴリーとは明確に異なるポジションを確立していると考えています。
社名を「アシックス」に変更したのは1977年ですが、それ以前は競技用として「オニツカタイガー」というスポーツシューズブランドを展開していました。このブランドは約四半世紀にわたって休眠していましたが、2002年にファッションブランドとして復刻し、これが現在の「オニツカタイガー」の始まりです。
近年は、ブランドの発信拠点やデモンストレーション拠点として、国内外の大都市での店舗展開を加速しています。昨年以降では、スペインのバルセロナ、イギリスのロンドン、フランスのパリ、中国の上海、そして日本ではこの夏に新宿や名古屋で大規模な直営店をオープンしました。
スライド右側に写真がありますが、特に新宿に7月末にオープンした直営店は、世界最大のグローバル旗艦店として位置づけ、全ラインナップを展開しています。
また、来年2027年にはアメリカへの出店も予定しており、さらなるブランド強化を図っていきます。
増井:これは現在、非常に成長が見られる分野だと思いますが、地域によってラインナップがかなり異なるのではないかと思います。その点はいかがでしょうか?
辻上:基本的には、グローバルで統一したラインナップで展開しています。パリ、上海、東京といったどの都市でも同じブランド体験ができる仕組みを構築しており、販売商品も同じものを提供しています。
増井:そうなのですね。やはり、売れ筋には違いが出てきますか?
辻上:スライド左下にある「MEXICO 66」は、いわゆるフラッグシップ商品で、世界中で非常に人気があると思います。この商品を中核として、お客さまに来店いただいた際に他の商品も手に取っていただけるという、良い循環が生まれているのではないかと考えています。
増井:ぜんぜんスニーカーではないような商品もありますね。これも「欲しい」と思わせるということでしょうか。
辻上:そうですね。例えば東京や大阪の店舗では、非常に多くのお客さまにご来店いただいています。混雑していますが、我々にとっては非常にうれしいことです。
増井:銀座でもいつも行列ができていますね。
辻上:そうですね。非常に好評を得ています。
増井:デザイナーの方は、やはりトップデザイナーを採用されているのですか?
辻上:社内のデザイナーに加え、外部のデザイナーとも協力しながら、柔軟に対応しています。
「歩く」ことに着目したウォーキングシューズ

辻上:こちらはカテゴリーの最後にご紹介する「ASICS Walking」です。
これは、スポーツブランドとして培ってきたシューズ技術を基盤に、日常の「歩く」という動作に着目して開発したシューズです。ビジネス用、運動用、日常履きまで、幅広いシーンに対応したラインナップを展開しています。
「歩く」ことに着目したウォーキングシューズ

辻上:ウォーキング事業はこれまで日本国内の直営店を中心に展開してきましたが、世界中に大きなポテンシャルがあると見ています。そのため、今年の下半期から中華圏を皮切りに海外展開へ舵を切りたいと考えています。また、「ASICS Walking」というプレミアムブランドとして成長させていきたいと考えています。
2026年第2四半期決算概要

辻上:2つ目は、業績と株価についてご説明します。こちらは8月14日に開示した第2四半期中間決算の決算サマリーです。売上高は5,344億円で、前年同期比30パーセントを超える成長を記録しました。
営業利益は1,204億円で、前年同期比約50パーセントの増益となり、営業利益率も22.5パーセントと前年同期比で2.4ポイント改善しました。いずれも第2四半期として過去最高の売上高、利益、利益率を達成しています。
冒頭でお伝えしたとおり、特にスポーツスタイルとオニツカタイガーが大幅に増収し、成長を牽引しています。地域別では、先ほど話題に上がったインバウンド需要が非常に大きく、好調なアシックスジャパンに加え、北米、ヨーロッパ、さらに東南アジアや南アジアを中心に成長しています。
2026年通期業績の上方修正

辻上:決算発表では、非常に好調な業績を受けて通期の業績予想を上方修正しました。売上高は1兆500億円、当期純利益は1,200億円と、いずれも過去最高を見込んでいます。
上期に続き、スポーツスタイルとオニツカタイガーを中心に好調が続く見込みです。業績予想に合わせて年間配当金も、2月に発表した予想の38円から6円増配し、44円に変更しました。
非常に好調な業績を見込んでおり、売上高は初めて1兆円の大台に乗る見込みです。ただし、当社ではこれを成長途上の通過点と位置づけています。今後の業績にも、ぜひご注目ください。
増井:海外売上高についてうかがいます。現在、売上高の海外比率が8割程度とのことですが、今後も成長余地があると考えている地域はありますか?
辻上:例えばランニングシューズでは、今後3年ほどを見据えると、アメリカや中国といった国で、ボリュームゾーンへの浸透にまだ成長余地があると考えています。
また、オニツカタイガーについては昨年からヨーロッパで大規模店舗を出し始めました。
売上規模はまだ小さいものの、非常に伸びています。また、利益率も非常に高く、ヨーロッパの消費者に受け入れられているといえます。さらに来年はアメリカへの再進出も予定しており、大きな市場として位置づけています。
オニツカタイガーはヨーロッパとアメリカの2地域が、今後大きな成長が見込まれるところだと思います。
増井:競合もかなり強力だと思うのですが、差別化できる点はありますか?
辻上:一にも二にも、製品の良さ、特に機能性だと思います。
増井:耐久性もあるのでしょうか?
辻上:耐久性もあると考えています。定量化は難しいものの、機関投資家を含む投資家の方々とお話しする中で、「やはり『アシックス』のシューズはコストパフォーマンスがいい」という声をよくいただきます。
コストパフォーマンスには機能性だけでなく、長持ちすることも含まれているのではないかと思います。
増井:そのような強みが浸透しつつあるということで、これからが楽しみですね。
辻上:はい、がんばります。
アシックスの株価(2018年1月1日~2026年8月14日)

辻上:株価についてです。2018年初の株価を基準値の100として、TOPIXとの比較を折れ線グラフで示しています。
スライド右側をご覧ください。直近ではTOPIX指数が100から225と約2倍になっています。それに対し、当社は1,160、つまり11倍以上となっており、非常にアウトパフォームしていると言えます。
また、時価総額は2023年8月に1兆円、2024年7月に2兆円、2025年8月には3兆円を突破し、現在は4兆円に迫る勢いです。引き続き企業価値の向上に向けて努力していきます。
資本効率性等の指標

辻上:資本効率の指標についてご紹介します。当社では利益成長だけでなく、資本効率も改善しています。
現在の中期経営計画では、2026年までを対象としてROAをKPIとしています。スライド中央に記載の数字は本業の収益性向上、販管費の厳格なコントロール、運転資本の最適化、特に在庫管理など、通常の業務サイクルの改善に直結する重要な指標と位置づけています。
また、資本効率の改善に伴い市場の評価も向上しており、スライド左側のグラフにあるとおり、PBRは約10倍と大きく伸びています。
アシックスをカバーするセルサイドアナリスト 目標株価一覧

辻上:こちらは、当社を担当しているセルサイドアナリスト、つまり証券会社のアナリストによる直近の目標株価一覧です。
当社をカバーしているアナリストは現在19社で、日本国内でもトップクラスの多さだと思います。この一覧では、そのうち10社を抜粋しています。
セルサイドアナリストとは、顧客である投資家に対するサービスとして株式の投資価値を分析・評価し、レポートを作成して発信する役割を担う方々です。
また、アナリストの方々からは、「グローバルでのブランド復権が進み、構造的な成長フェーズに入った」「ディスカウントに依存せず、ブランド価値と利益率を守る経営を評価している」といった、非常にポジティブなコメントをいただいています。
株主還元について

辻上:個人投資家のみなさまにお伝えしたいことを少しお話しします。まず、株主還元についてです。先ほどお伝えした内容と重複しますが、2026年には過去最高の業績を更新する見込みです。そのため、配当は大幅に増配し、今期は過去最高となる44円を予想しています。
また、株価上昇と配当を含めた株主総利回りについては、スライドの右側に記載しています。2018年初からのリターンは約13倍となっています。
株主優待

辻上:株主優待についてです。株式の保有期間や保有株式数に応じた割引率で商品を購入できる制度です。ぜひご活用ください。
個人投資家様向けIR活動

辻上:最後に、個人投資家向けのIR活動をご紹介します。昨年以降、活動の量と質を抜本的に拡充してきました。例えば、全国8都市を巡る体験型IR説明会、個人投資家向け会社説明資料「IR BOOK」の発行、個人投資家向けのメール配信などを実施しています。
また、今年の3月末には、当社の事業、強み、成長戦略を1冊にまとめた「IR BOOK 2026」を発行しましたので、ぜひご覧いただきたいと思います。
(ご参考)メール配信 -IRチームからのお便り-

辻上:メール配信の詳細についてです。当社では、登録者の方へ月1回以上のペースで配信を行っています。内容は、決算発表や事業戦略説明会の概要に加え、個人投資家向け体験型IR説明会の告知や開催報告など、幅広いテーマです。
これらはすべてIRチームが一つひとつ手作りで制作しています。ぜひ、こちらに表示されているQRコードからメールアドレスをご登録いただけますと幸いです。
今年は新たな取り組みとして、ブランドスローガン「Sound Mind, Sound Body」をテーマにした特別号の配信を開始しました。
例えば、本年5月にはランニングタレントの中嶋友里さまにご協力いただき、動画を制作しました。その動画の配信も行っています。それでは、どのような映像なのかをご覧ください。
(動画始まる)
中嶋友里氏:みなさま、こんにちは。ランナーの中嶋友里です。現在、私はイギリスのロンドンに住んでいます。
私は趣味探しをきっかけに、約11年前にランニングやトレイルランニングを始めました。「Instagram」をはじめとするSNSで「ランニングを日常に」をテーマに発信しています。
私がお届けするコラムでは、お気に入りのランニングコースやヨーロッパのレースの様子など、さまざまな景色をお届けしたいと思っています。
私自身、「Sound Mind, Sound Body」という言葉のとおり、体を動かすことで心も前向きになっていくことを実感してきました。配信を通じて、その感覚を個人投資家のみなさまにも少しでも身近に感じていただけたらうれしいです。
(動画終わる)
辻上:私からの説明は以上です。ご清聴いただき、ありがとうございました。
質疑応答:ランニングシューズ市場の成長見込みとリスク分散について
分林里佳氏(以下、分林):「主力のパフォーマンスランニング事業において、今後成長が鈍化した場合の打ち手や戦略があれば教えてください」というご質問です。
辻上:市場全体の成長が鈍化するとは想定していません。むしろ健康意識は世界中でますます高まっており、各国でランニングをする人口は増加していると考えています。
市場が拡大する中で、コストパフォーマンスの高い機能性を持つランニングシューズを、確立したブランディングに基づいて展開することで、市場競争において優位に立てると考えています。
また、当社の強みとして、ランニングシューズ事業がヨーロッパ、アメリカ、日本、中国、東南アジア、オセアニアなど、世界中で展開されており、地域分散が非常に効いている点が挙げられます。
さらに、ランニングシューズが売上のおよそ半分を占める一方で、スポーツシューズやカジュアルスニーカー、ウォーキングシューズ、オニツカタイガーといった多様な商品群もあり、商品分散が優れている点も強みです。このようなリスク分散が、打ち手として十分に機能すると考えています。
質疑応答:東南アジア・インド市場におけるランニング市場の成長可能性について
分林:「海外では北米やヨーロッパ、そして中国のボリュームゾーンに力を入れていきたいというお話でしたが、もう少し中長期で、北米・欧州に次ぐ成長ドライバーとして、具体的にどの地域に注力する方針でしょうか? 新規開拓という意味での考えも含めて教えてください」というご質問です。
辻上:長期的には、東南アジアやインドのマーケットが注目されると思います。我々も事業戦略説明会などでご説明していますが、1人あたりのGDP(GDP per capita)が5,000ドルを超えると、ランニング用シューズを購入し始める市場になるのではないか、という仮説を持っています。
例えばインドネシアを見ると、人口は約3億人に達しており、その領域に入ってきています。
今年3月には当社社長がホストを務め、セルサイドアナリストや投資家の方々とともにインドネシアのマーケットを視察するイベントを開催し、ジャカルタのランニングスポットを訪れました。毎週日曜日の朝は「カーフリーデー」として車が通行禁止となり、約6キロのコースに毎週約3万人が参加して走っている様子を目にしました。
これを見て非常に熱気を感じました。また、その前の年には、インドのムンバイマラソンにも投資家の方々と一緒に少し参加しましたが、7万人が参加していました。
分林:すごいですね。インドでは駅伝などもありますね。
辻上:今年から始まりましたが、このようにアジアの国々でランニングを始める方が非常に増えています。長期的には、これが大きな成長の原動力になるのではないかと思っています。
質疑応答:スポンサードの検討基準と戦略への整合性について
分林:「さまざまなイベントでスポンサードされていると思いますが、打診された際の検討基準はありますか? どのような案件をスポンサーしていきたいのか、なにか基準があれば教えてください」というご質問です。
辻上:具体的な基準は設けていませんが、案件ごとに慎重に検討しています。最も重要なのは、当社の戦略との整合性があるかどうかだと思います。
ブランド価値の向上につながるか、競技をする方々やアスリート、またコンシューマーであるお客さまとの接点創出につながるかなど、複眼的な観点で十分に分析し、その都度判断していく方針です。
質疑応答:個人投資家向けIRセミナーの積極的な実施理由について
増井:最近、個人投資家向けのIRセミナーや情報発信を積極的に行われていますが、その理由を教えてください。
辻上:当社はコンシューマーグッズを取り扱うBtoCの会社です。したがって、お客さまや株主のみなさまに、当社の商品やブランドをしっかりと理解してもらうことが第一歩だと考えています。
そのため、個人投資家の方々にも「アシックス」や「オニツカタイガー」などのブランドを知り、ファンになっていただきたいと考えています。この目的のために、さまざまな施策や情報発信を通じて、ブランドの認知向上に取り組んでいます。
具体的には、先ほどご紹介した体験型のIR説明会のように、経営陣が単にプレゼンテーションを行うだけでなく、過去に当社がサポートしていたトップアスリートを招いて対談を行ったり、シューズの試し履きや足形をAIで計測するコーナー、さらにはランニングのワンポイントレッスンのコーナーなども設けています。
こうしたスポーツやファッション、「アシックス」や「オニツカタイガー」といったブランドに関連するさまざまな体験を通じて、実際に商品に触れたり履いたりして体感する機会を設け、ブランド理解を深めてもらうことを非常に重視しています。
ご質問にお答えすると、アシックスという会社およびブランドのファンになった方が、さらに株主にもなればうれしいと考えているからです。
増井:取り組み方を大きく変えたということですね。
辻上:おっしゃるとおりです。昨年から、ほぼ垂直立ち上げで一気に拡充してきました。IRチームのメンバーは本当に大変だったと思いますが、非常によくがんばってくれています。
質疑応答:訪日客によるアシックス商品の購入動向について
増井:「インバウンドで日本が好調というのは、海外からの旅行客が日本で購入するということでしょうか?」というご質問です。
辻上:ご理解のとおりです。訪日客の方々が日本で「アシックス」や「オニツカタイガー」の店舗を訪れ、当社の商品を購入する流れが非常に好調です。
質疑応答:ランニングエコシステムの強化とレース登録会社の買収について

増井:「M&Aについて、積極的に検討されていますか?」というご質問です。
辻上:この内容について、本日ご説明しなかったスライドが1枚あります。当社は「ランニングエコシステム」というものを長年強化してきました。実は、ランニングシューズを販売するだけではなく、ランナーの方々がマラソン大会に出場する際には、さまざまな過程や体験があると考えています。
そこで、最初の起点となるのがマラソン大会への登録、つまりレース登録です。例えば、8ヶ月、9ヶ月前からレース登録を行い、その後練習を積んだり、商品を買い替えたりします。そのため、「このジャーニーに寄り添っていくかたちでブランド体験価値を向上させていこう」といった取り組みを行います。
この入り口となるレース登録会社についてですが、2019年以降、複数の会社を買収しました。スライド左側に時系列で記載のとおり、アメリカ、オセアニア、日本、EU、スペイン、さらにタイや再びアメリカと、幅広い地域において買収を進めてきました。
しかし、まだ白地となるエリア、つまり未開拓の部分が残っています。そのため、そこをしっかりと強化していく必要があると考えています。
増井:その周辺業務ということですね。
辻上:おっしゃるとおりです。
質疑応答:運転資本の効率化とバランスシートマネジメントについて

増井:「素朴な疑問ですが、直近5年ほどで資本効率をここまで高めるために、どのような施策を打ったのか教えてください」というご質問です。
辻上:第一に、業績が良くなり、利益が成長してきたことがあると思います。
また、我々は自社で製造設備を持っていません。これは業界全体に共通していますが、その結果、バランスシートは比較的軽量な構造となり、基本的には運転資本に関する資産が多くを占めています。
全社的なバランスシートマネジメントの柱として、運転資本の効率向上を重視しています。資本効率を高める上で非常に重要な要素となるため、運転資本の改善活動や在庫回転期間の効率化に、全社で取り組んでいます。
増井:そのような取り組みが、資本効率の指標にも表れてきたということですね。
辻上:そのとおりだと思います。我々はDIO、つまり在庫回転期間を会社の目標として設定し、中期経営計画の中でもコミットしています。この目標を現場レベルに分解し、日々の業務改善を通じて、在庫回転期間をさらに向上させようと取り組んでいます。
具体的には、財務部門やサプライチェーン担当本部が旗振り役となり、全社的な会議を運営するなど、全社活動として推進しています。
質疑応答:中期経営計画の目標とGIE化推進について
増井:現在の中期経営計画の目標は、すでに何度か上方修正されており、勢いが非常に強いように感じます。現時点での目標は、定量的な部分を重視されているのでしょうか? それとも、別の定性的な面を重視されているのでしょうか?
辻上:両方あります。「このような姿でありたい」という定性的な目標に加えて、定量目標も含めています。
ご指摘のとおり、現在の中期経営計画では営業利益率はすでに目標を達成しています。定性的な面としては、我々はこれを「GIE(Globally Integrated Enterprise)」と呼んでいますが、グローバルに有機的に統合された企業体を目指しています。
少し曖昧な表現かもしれませんが、いわゆる適材適所、あるいは適所適材といった考え方を、当社グループとしてグローバルで共有しています。
非財務資本や人的資本など、さまざまな要素があります。それらを局所的に最適化するのではなく、グローバルに統一されたプラットフォームに載せて統合し、企業価値をさらに高めていこうとするコンセプトです。
増井:ローカライズをあまり進めないほうが良いのではないか、という考え方ですか?
辻上:バランスが重要だということです。現在、富永社長の強いリーダーシップのもと、GIE化に向けて積極的に取り組んでいます。
例えば当社ではERPシステムを導入しており、これは世界全体の売上の約9割をカバーするような統一システムです。私にも、前日までの売上データが毎日届く仕組みになっています。
増井:9割をカバーしているのは非常に大きいですね。
辻上:そのとおりです。このデータは経理部にも即座に共有され、数字に異常があればすぐに対応できます。人が介在して加工したデータではなく、生データがそのまま同じプラットフォーム上で処理・やり取りされる仕組みになっており、これも会社のITシステム基盤をGIE化した1つの事例だと思います。
増井:社内でDXがかなり進んでいるのではないでしょうか?
辻上:おっしゃるとおりです。富永社長はデジタルやIT分野でのキャリアが長いこともあり、その影響もあるのではないかと思います。
質疑応答:株価上昇および経営陣の認識について
増井:業績の改善が非常に著しく、それに伴い株価も上昇し、先ほど触れられたセルサイドアナリストの目標株価などの期待値も非常に高い状況ですが、経営陣としては現在の状況をどのように認識されていますか?
辻上:株価が上がってきていることは、非常にポジティブに捉えており、ありがたく思っています。ただ、先ほども少し触れましたが、これはまだ通過点に過ぎないという認識を社内で共有しています。さらに成長を続けるために、緊張感を持ちながら取り組みを進めていく必要があります。
「アシックス」および「オニツカタイガー」というブランドを世界中のお客さまに届けることで成長を実現し、その結果として株価がさらに上がれば良いと考えています。
質疑応答:グローバルNo.1のスポーツブランドを目指す目標について
増井:シューズに関して言うと、世界にはかなり大きな企業が存在していると思います。御社は現在、3番手のグループかと思いますが、今後は2番手、1番手を目指していくという方針なのでしょうか?
辻上:グローバルNo.1のスポーツブランドになることが長期的な目標ですので、常にそこを目指して走り続けていきます。
増井:キャッチアップできるのではないか、という勢いがあります。
質疑応答:為替影響とヘッジプログラムについて
分林:売上高に占める海外比率が高い状況ですが、為替の影響についてはどのようにお考えですか?
辻上:為替の影響は受けますが、当社では財務部を中心に綿密なヘッジプログラムを組んでいます。特に時間的な分散も含めた為替のリスクヘッジを行っているため、足元の大きな為替変動が業績に直結することは、あまりありません。
特に利益面では影響がある程度緩和され、時間をおいて表れるかたちになります。売上は円安になればその分膨らんで見えますが、利益についてはしっかりとヘッジが効いていると思います。
質疑応答:注目されるスポーツとその市場成長について
増井:少し細かい話になりますが、コアパフォーマンスの領域についてうかがいます。現在注目されているスポーツとして、「今このスポーツが盛り上がっているため、将来的に伸びるのではないか」というものはありますか?
辻上:1つはテニスだと思います。すでに強いブランドを持っているというお話や、シェアの数字もご紹介しましたが、その周辺の派生系スポーツであるパドルテニスやピックルボールも含め、まだ伸びる余地があると思います。
テニスのフットウェアにおける良いブランディングを活かしながら、マーケットを拡大できるのではないかと考えています。
増井:日本でもテニスの競技人口は相変わらず多いのでしょうか?
辻上:多いと思います。都内でもピックルボールコートが急速に増えており、「このような場所にも」というところにもあります。テニスよりも少し気軽に楽しめるため、競技人口がかなり増えるのではないかと感じています。
増井:そうなると、ファッション性のあるものを履きたいですよね。まずは道具から入る方も多いと思います。
辻上:ぜひシューズをよろしくお願いします。
辻上氏からのご挨拶
辻上:ご視聴いただき、ありがとうございました。当社の業績は好調に推移していますが、まだ通過点であり、さらに成長できると考えています。
また、今日ご紹介したメール配信や体験型のIR説明会にご関心がありましたら、ぜひ一度ご覧いただけますと幸いです。ありがとうございました。
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