IRセミナー徹底攻略!セミナーを読み解くhow to 伝授#9 説明前にもポイントが詰まっている!?ヘビーユーザー塩谷氏の独自の注目ポイントとは
スライドだけでは見えない「投資のヒント」 PERAGARU塩谷氏が解き明かすIRセミナー動画の深掘り活用術
IRセミナー徹底攻略!セミナーを読み解くhow to 伝授#9

荒井沙織氏(以下、荒井):さて塩谷さん、前回は塩谷さんにより良い情報を引き出す質問の仕方を教えていただき、とても勉強になりました。
塩谷航平氏(以下、塩谷):私自身も非常に勉強になりました。体系化して話すことができたため、社内の勉強用教材としても活用しようと思っています。
荒井:再生回数を増やしてください。
塩谷:うちの社員たち、見ていますか?
荒井:ご覧になっていますか?
「見てよかったIRセミナー」をご紹介

荒井:今回は前回お話しいただいたポイントについて、塩谷さんご自身が実際に見てよかったと思うIRセミナーを一緒に見ながら解説していただければと思います。
塩谷:いいですね。
荒井:実践ですね。
塩谷:実践編です。これは良い企画ですね。
荒井:そうですね。進めていきましょう。さっそくですが、今回一緒に見るIRセミナーは、どのセミナーでしょうか?
塩谷:ミスターマックス・ホールディングスという、九州地区でスーパーを展開している会社のIRセミナーです。
荒井:なぜこの会社なのでしょうか?
塩谷:会社の名前は聞いたことがありますか?
荒井:あるような、ないようなという感じです。
塩谷:九州では有名なスーパー兼家電量販店のようなイメージの会社ですが、関東ではあまり知名度がなく、最近進出してきたところです。
ミスターマックス・ホールディングスは、小売業の中では意欲的な中期経営計画を発表しており、その達成の可能性について知りたいと思っていました。そこで、さまざまなヒントが得られるセミナー動画があったため、今回はこちらを選びました。
荒井:では、実際に見ていきましょう。
登壇者の多様性からIR姿勢の変化に気づく
(動画始まる)
株式会社ミスターマックス・ホールディングス 上席執行役員 経営企画・財務部門管掌 石井宏和氏(以下、石井):上席執行役員の石井です。決算説明会へご参加いただき、ありがとうございます。
本題に入る前に1点お話があります。これまで当社の決算説明会は、ミスターマックス・ホールディングスの社長を務める平野と私、石井が主にスピーカーを務めてきました。しかし、当社をより深く、多角的にご理解いただくため、今回は総合ディスカウントストアの株式会社ミスターマックスの社長である佐藤がお話しします。
次回以降も、例えば開発担当役員が店舗開発の戦略をお話しするなど、スピーカーの幅を広げていく考えです。みなさまにわかりやすく、興味深い説明会を目指して努力します。
(動画終わる)
塩谷:まず、この部分です。決算説明はまだ始まっていません。
荒井:そうですよね。まだ自己紹介の部分ですが、ここに1つ目のポイントがあるということですね。
塩谷:そのとおりです。この説明会の動画では、ここに重要な内容が9割5分詰まっています。
荒井:それはどのようなことでしょうか?
塩谷:冒頭の説明によると、ミスターマックスはホールディングス化しており、これまではホールディングスの役員がスライドの内容を説明する形式でした。しかし今回、注目されているディスカウントストア業界に関しては、その会社の社長が直接説明を行うようになりました。
また、今後は新たな戦略がある際に、その担当役員が同席して説明するといった話もありました。この点から、IRの姿勢が大きく変わったという印象を受けました。ここが「あ、深掘りしよう」となるポイントです。
荒井:前回の動画でも、そのようなポイントを教わりましたが、まさにそのケースですね。
塩谷:そうですね。これはまさに動画でしか追えない定性情報であり、この部分がそれを理解する上で重要なパートとなっています。
荒井:最近、このような企業は増えているのでしょうか?
塩谷:かなり増えていますね。特に前回も少し触れましたが、補足事項に関する内容をセミナー内でしっかり話してくれる企業が増えていて、担当役員や担当部長単位で説明することが多くなっています。
荒井:2人で登壇する場合もありますよね。
塩谷:ありますね。あのフォーマットは見応えがありますよね。
行間を読み取る!荒利益率改善に隠されたストーリー
荒井:次のポイントに進みましょう。
(動画始まる)
石井:荒利益率の改善状況についてです。スライドの青色の線は、四半期ごとの荒利益率の改善幅の推移を示しています。一方、オレンジ色の線は、米を除いた荒利益率の改善幅の推移を示しています。
青色の線のとおり、米の荒利益率が全社平均を下回っている影響で、荒利益率全体の改善幅は小幅にとどまっています。しかし、米を除いたオレンジ色の線は緩やかに改善していることが見て取れるかと思います。
この2年間は、仕入価格の上昇が続く中で販売価格の適正化に取り組んできました。これまで全国一律価格を採用していましたが、2025年2月期第3四半期からエリアごとに適正な売価へ見直しを開始しています。さまざまな対策の成果が現れ、荒利益率は改善傾向にあります。
ただし、2026年2月期第2四半期の荒利益率は22.2パーセントとなり、期初計画を達成できませんでした。今後も人件費の高騰などにより経費の増加が見込まれることから、荒利益率の改善を重要な課題として引き続き取り組んでいきます。
(動画終わる)
塩谷:この部分もかなり重要なパートだったと思います。
荒井:荒利益率の変化についてですね。
塩谷:まさに改善の部分で、荒利益率に注目している中、先ほどのスライドでは「米の影響を除くと緩やかに回復している」という説明でした。現在、特にディスカウントストアのような安売りを売りにしている小売店は、原料価格の改定が厳しいため、荒利益率が下がる傾向があります。
荒利益率が下がる傾向にある中で、この会社は改善傾向が見られるという点について、スライドには、エリア別価格戦略のようなことが記載されています。ただし、そのテキストだけでは何を意味しているのかわかりにくい印象でした。
荒井:実際のチャートでは全体の内容が記載されているものの、エリア別で差があるはずですよね?

塩谷:おっしゃるとおりです。その部分を詳しく説明されているのがエリア売価導入です。例えば、関東に進出していますが、関東では九州で販売するより少し高い価格に設定するといった戦略だとわかります。それであれば、利益率の改善が期待できるイメージですし、継続性もありそうですよね。
この説明から、ミスターマックスの荒利益率改善の可能性がかなり高まったという印象を受けます。まさにこの部分が、以前お伝えした「行間を理解する」というポイントにつながっており、重要な部分であることがこの動画から読み取ることができました。
KPI達成に向けた経営陣の本気度を読み取る
次に進みます。
(動画始まる)
石井:「MrMax」は過去10年間で8店舗しか出店できませんでした。この新規出店の少なさは数年前から経営課題として認識しており、担当役員を外部から招いたり、人事異動や他社からの採用によって開発部員を増やすなどの対策を講じてきました。こうした取り組みが成果を上げ、今期から出店ペースが向上しており、来期以降は出店攻勢に転じる予定です。
M&Aについては、新たな柱となる事業の探索を進めていきます。
中期経営計画を達成して当社を成長軌道に乗せるべく、日々業務に励んでいきます。
(動画終わる)
塩谷:この部分ですが、冒頭でお話ししたように、強気な中期経営計画の達成可能性を計る上で非常に重要なポイントです。
荒井:この説明から、出店戦略が非常に強気だという印象を受けました。
塩谷:確かにその印象を受けました。第2四半期の決算時点では新規出店は2店舗でしたので、このセミナーを聞くまでは、私たちは「これは少ない」という感想でした。
中期経営計画で最終年度に25店舗出店すると発表している中、第2四半期での新規出店は2店舗でした。「このペースで大丈夫なのか?」という印象を持っていましたが、今回のセミナーでスライドを見てその印象が大きく変わりました。
これまで会社の新規出店に関する情報は、中期経営計画最終年度に25店舗出すという概要的なアナウンスしかありませんでした。しかし今回は、25店舗のKPI目標達成に向けて、まず採用活動を進めているとの説明がありました。
さらに、新たに外部から出店のプロフェッショナルである役員を招聘したことや、社内で人事異動を行いリソースを集中させている点など、具体的な取り組みも示されました。
また、この会社の歴史を振り返ると、これまでの複数年で8店舗しか新規出店していなかったのに対し、今回は第2四半期時点、まだ半期が終わっただけで2店舗を出店しています。この進捗は、過去と比較して劇的な改善に見えます。
このような取り組みから、KPIである25店舗の達成に向けたアプローチについて、役員陣含め対外的な重要メッセージとして捉えていると感じられます。
私たちは、この動画を見て安心しました。今後、第3四半期・第4四半期においても、店舗出店状況について詳細な説明がされると思います。仮に出店数が減少したとしても、その理由について説明がなされるため、投資家が安心して判断を下せる内容となっており、重要なパートだと感じました。

荒井:スライドとお話の印象がかなり違いますね。このスライドでは、新規出店2店舗の進捗評価が「△」となっていますが、お話を聞くと評価はむしろ「○」ではないかという印象を受けます。
塩谷:まさにそのとおりです。スライドだけを見ると、誤解を招く可能性がある部分かもしれません。
荒井:動画で、この数字がどのようにして現在の状況になったのか、またその理由を聞くことは重要だと感じます。
塩谷:非常に重要です。IRセミナーでは、往々にしてこのような点を詳しく語ってくれるため、とても貴重なコンテンツだと思います。
「ただのチラシ」ではない24時間営業に隠された勝算
次に進みます。
(動画始まる)
株式会社ミスターマックス・ホールディングス 上席執行役員 リテール部門管掌 佐藤昭彦氏:今年5月に改装した「MrMax Select美野島店」の取り組みについてです。
7月から「MrMax」初の24時間営業を開始しました。「MrMax Select美野島店」は、博多駅から1キロメートルの距離に位置し、夜間も人通りが多いエリアにあります。もともと9時から24時と当社で最も長い営業時間の店舗でしたが、多くのお客さまから営業時間延長のご要望をいただいていました。今回、24時間営業に合わせて生鮮食品の品揃えや納品頻度を見直し、夜間でも必要な商品が購入できる体制を整えました。その結果、多くのお客さまから「深夜に買い物ができるので、とても便利になった」と喜びの声をいただいています。
また、インバウンド需要の増加を受け、コロナ禍で休止していた免税対応を再開しました。海外のお客さまに人気のある福岡の名産品やキャラクター雑貨などの売場を新設しています。ただ需要に応えるだけではなく、楽しんでお買い物いただける環境作りにも努めていきます。
今後もエリア特性に応じた適切な営業時間の設定と取り組みを進めていきます。
(動画終わる)

塩谷:この部分についてですが、このスライドを見た際には「チラシっぽいスライドがあるな」と飛ばしてしまっていました。
荒井:「24時間営業開始します!」というスライドですね。
塩谷:しかし、動画で見るとまた印象が変わったところもありました。基本的に「MrMax」の実態は、一般的なスーパーマーケットと「ドン・キホーテ」の中間くらいです。しかし現在、市場の見方としてはスーパーマーケット寄りに見られがちです。スーパーマーケットの一般的な常識として、24時間営業のスーパーはあまり見かけないと思います。
荒井:見ないですね。
塩谷:基本的に生鮮食品しか扱っていないためです。
荒井:それほど必要とされていない気がします。
塩谷:ですよね。ただ、「MrMax」の場合は祖業が家電メーカーであるため、店舗にも家電製品などを多く取り揃えています。そのため、半分「ドン・キホーテ」のような量販店のイメージがあり、だからこそ24時間営業が実現可能というストーリーがあります。そして、その取り組みによって増収を実現しています。
さらに、これもスライドには記載されていませんが、「他のエリアでも検討していきます」という話もあり、それを踏まえると、営業時間が長いことによって増収がしっかりと実現され、稼働率が上がるというイメージが得られます。この点が「さらに利益率改善のストーリーがありそうだな」と考えられる重要な内容でしたが、私自身も「広告っぽいな」とスライドを流し読みしてしまいました。前のコンテンツで言ったように、見逃したスライドなどをキャッチアップできることが重要なポイントだと思います。
荒井:重要情報にあらためて気づけるということですね?
塩谷:そのとおりです。
荒井:お客さまの声があったという点は意外でした。やはりスーパーとは異なる業態だと感じました。
塩谷:そうですね。あらためて業態を分けて考える必要があり、スーパーのバリエーションで捉えてはいけない会社だと感じました。
荒井:今のお話をうかがうと、「次の24時間営業の店舗も駅近やインバウンドが多いエリアで展開されるのかな」というイメージが湧いてきますね。
塩谷:そのとおりです。今、「インバウンド」というキーワードがありましたが、一般的にスーパーマーケットはインバウンド関連銘柄として捉えられていません。しかし、例えばミスターマックスは老舗であり、九州エリアでは韓国などからの観光客が多い、人通りの多い地域に古くから土地を確保しているため、インバウンド需要の恩恵を受ける余地があると考えています。
荒井:今の1枚のスライドに、多くの可能性を感じるものが含まれていますね。
塩谷:印象が変わりますよね。
映画ならエンドロール 「特典映像」はQ&Aにあり
(動画始まる)
石井:1つ目のご質問は業績予想についてです。「業績予想の営業利益について、上期4億円の上振れに対して、通期で3億円の上方修正に留まっている理由を教えてください」というご質問です。
下期の業績に関しては、売上総利益の改善幅を保守的に見直しました。期初には荒利益率で前期比0.4ポイントほど改善する計画を立てていましたが、上期の実績が前年同期比0.2ポイントの改善に留まったため、下期についても前年同期比0.4ポイントの改善は難しいと考えました。
また、販管費が予想以上に増加している点も業績予想に織り込みました。キャッシュレス手数料や人件費については期初よりも増加することを想定していましたが、それをやや上回るペースで経費が増加しています。
(動画終わる)
塩谷:こちらは最後のQ&Aセッションです。私はIRセミナー動画のQ&Aセッションを、映画で言うとエンドロールのようなイメージで捉えています。映画館でエンドロールが始まると、帰る人がよくいますよね。
荒井:います。
塩谷:自分はがんばって最後まで見て、最後に特典映像が出てきたら本当にうれしいですよね。
荒井:ありますね。うれしいです。
塩谷:Q&Aセッションはその特典映像のようなものだと思っています。ここはすべてスキップせずに見ていただきたいですね。
荒井:見逃すべきではない部分ですね。
塩谷:そのとおりですし、むしろファンならば一番見たい特典映像です。そして、最初の質問ですが、ミスターマックスの傾向として、機関投資家から過去にあった質問なども少し紹介してくれています。
荒井:優しいですね。
塩谷:ここは優しいです。フェア・ディスクロージャーがしっかりとされていて、まさに1問目がそうだったと思います。
この会社は上期が良かったため、上振れ着地しました。そのタイミングで通期の上方修正を出しましたが、上期の上振れ分しか通期の決算に反映しておらず、「下期は計画どおりの推移なんだ」という印象になりました。ここは、ネガティブな懸念事項として私たちは整理しました。
下期に関しては、荒利益率が少し落ち込む傾向があり、その改善が微増に留まるという点については、あまり認識していなかった部分です。先ほど述べたエリア別の価格戦略や24時間営業の取り組みを行っていれば、改善方向に進むと考えていました。しかし、この部分については機関投資家の鋭い質問により「もしかして認識が違うかもな」と気づきました。
ミスターマックスを良いと評価しているがゆえに、なかなかネガティブな部分には気づきにくいのですが、他者からの質問を通じて認識することができました。冒頭の質問であり、おそらく機関投資家の質問を紹介したもので、「確かに、このあたりはリスクとして見ておいたほうがいいかな」と懸念事項が新たに発見できた重要な部分です。
荒井:この企業に限ったことだと思いますが、ミスターマックスの最初の質問を拝見すると、とても学びがありますね。やはり機関投資家の方々はそこまで詳細に見ているのですね。
塩谷:そうですね。1人で分析していると気づけなかったり、見落としてしまったりする部分かもしれませんね。
荒井:おもしろいですね。実際、ミスターマックスのこの動画にはさまざまなポイントが詰め込まれていますね。
塩谷:あくまで一例ではありますが、ほかの動画もそれぞれの企業ごとにいろいろな楽しみ方があると思います。みなさまも「IR動画ソムリエ」を目指して、コメント欄などでいろいろなご意見を共有していただきたいですね。
荒井:まずは1,000時間の視聴からでしょうか?
塩谷:そのとおりです。「1,000時間視聴」と自分で言っておきながら、さすがにまずいですね。
荒井:すごいと思います。常人にはなかなかできないことですね。
塩谷:正直、自分もおそらくできていないですね。
荒井:1,000時間はさすがに大変ですが、それに近いくらいご覧いただいている方もいらっしゃいますよね。前回・今回の動画で教えていただいたポイントを踏まえると、その1,000時間、500時間で実になる情報を得られるのではないかと思います。
まとめ

荒井:実際の動画も踏まえてお話しいただきましたが、今回はいかがでしたか?
塩谷:自分で話しながら体系化できる、とても参考になるコンテンツだなと思いました。
荒井:今回の動画と前回の動画はリンクしています。
塩谷:セットで見るのがおすすめですね。
荒井:セットで2周すると、かなり身につくコンテンツになっています。
塩谷:確かに2周と言わず、5周ぐらい視聴していただきたいですね。
荒井:ぜひぜひ。まだお聞きしたいことはたくさんありますが、今回の動画、そして前回の動画をぜひ何周もご視聴いただければと思います。
今回のゲストは塩谷さんでした。ありがとうございました。
塩谷:ありがとうございました。


