IRセミナー徹底攻略!セミナーを読み解くhow to 伝授#8 ログミープロ視聴者!?PERAGARU塩谷さんが使うIRセミナーの活用テクニック
PERAGARU塩谷航平氏が徹底解説! IRセミナーで注目すべきポイントと有効的な質問術
セミナーを読み解くhow to 伝授#8

荒井沙織氏(以下、荒井):みなさま、こんにちは。フリーアナウンサーの荒井沙織です。みなさまはふだん、決算資料や株価チャートだけで投資判断をしていませんか?
数字だけではわからない企業のリアルを知ることで、投資判断に深みが出るはずです。私もこの動画で、みなさまと一緒にあらためてIRセミナーを学んでいきたいと思います。
では、今回のゲストをご紹介します。塩谷航平さんです。

塩谷航平氏(以下、塩谷):株式会社hands代表取締役の塩谷です。よろしくお願いします。
荒井:よろしくお願いします。「IR Meet」へご参加いただき、ありがとうございました。楽しかったですね。
塩谷:ありがとうございます。大盛況でしたし、とても勉強になりました。
荒井:毎回すごい人数が集まります。
塩谷:すばらしいですね。
荒井:では、あらためて塩谷さんの自己紹介をお願いします。
塩谷:あらためて、塩谷と申します。ふだんは「PERAGARU(ペラガル)」という、機関投資家と個人投資家向けに日本株のリサーチサービスを提供している会社を運営しています。本日はよろしくお願いします。
荒井:本日は塩谷さんに、リサーチのプロとして、データの活用方法などについてもお話をうかがえればと思います。塩谷さんは「PERAGARU」の経営者でもいらっしゃいますよね。
塩谷:そうですね。「なんちゃって」ではありますが(笑)。
荒井:経営者としての視点や心理などもお持ちなのではないかと思います。
塩谷:経営者視点から見ることもあるため、そのあたりについてもお話しできればと思います。
荒井:塩谷さんは、ふだんからIRセミナーをご覧になりますか?
塩谷:けっこう見ています。特に決算説明会には、機関投資家のみを対象にしたものもあります。最近では企業が自社やログミーのIRセミナーでそのような説明会を開催するケースも増えているため、そのあたりを頻繁にチェックしています。
荒井:いろいろとご覧になっているということですね。過去に「このIRセミナーは良かった」というものはありましたか?
塩谷:あり過ぎて、どれから話せばよいか迷いますね。
荒井:今日の動画は2本の予定ですが、10本くらいいってしまいましょうか?(笑)
塩谷:収録時間が5時間程度になりますが、大丈夫ですか?(笑)
荒井:大丈夫なようです(笑)。
塩谷:それでは、いけるところまでいきましょう。
荒井:ぎゅっと凝縮してお送りしたいと思います。

荒井:それではさっそく、塩谷さんがIRセミナーをご覧になっている際のポイントを教えていただけますか?
塩谷:私が注目しているポイントは、5つあります。

荒井:わかりにくい表現ですね(笑)。全部で5つですね。
塩谷:「1+4」と表現しています。これらについて、今からご説明していきたいと思います。
IRセミナーのポイント1 決算説明資料の行間を読む

塩谷:1つ目のポイントは、決算説明資料には多くの説明が書かれていますが、その行間をIRセミナーの動画や書き起こし資料で確認できる点です。
荒井:「行間を読む」というと、先ほども触れましたが、塩谷さんは経営者でいらっしゃるため、「経営者だからわかる」といった視点なのでしょうか?
塩谷:いえ、きちんと見れば、訓練を受けた個人投資家の方は誰でも読めるようになると思います。
荒井:私にも理解できそうでしょうか?
塩谷:荒井さんには、もう少し訓練が必要かもしれませんね。
荒井:そうですよね。それでは、今日はポイントだけでも教えていただき、学んでいきたいと思います(笑)。まず「行間」とは、具体的にどのような部分を指すのでしょうか?
塩谷:ある企業の戦略に変化が起こった際、それは当然決算説明資料に記載されています。例えば戦略の変化とは、価格改定や工場の新規増設といったものです。それらは通常、テキスト上に書かれています。
具体例として、価格改定について説明すると、どの商品カテゴリーで価格改定を行うのか、あるいはどの地域に限定するのかといった情報は、企業側が戦略として持っているものです。
しかし、決算説明資料はA4サイズの紙にまとめる必要があるため、詳細まで記載すると文字が非常に小さく、読みづらくなります。そのため、資料には簡素化された内容が記載されていると認識したほうが良いです。
したがって、説明資料だけでは説明しきれない「行間」部分は、動画や経営者からの直接のメッセージとなる発言からしか読み取れないことも多いです。そこで、IRセミナーを視聴し、このような情報を収集することを重視しています。
荒井:行間を読む以外にも、なにかポイントはありますか?
IRセミナーのポイント2 資料での見落としを発見する

塩谷:2つ目のポイントは、IRセミナーの動画を視聴することで、重要な情報を見逃さず、初めて発見できることがある点です。決算説明資料のスライドには、一見スルーされがちな情報が記載されていることがあります。
荒井:例えば資料の中で、見落とされる可能性がある情報とはどのような部分でしょうか?
塩谷:例えば、ある工場に関する話をします。基本的に、最初のスライドには経営に関わる非常に重要な情報が多く記載されています。一方、最後のほうは補足情報やAPPENDIXなど、さらに多くのスライドが展開されていますが、読む機会は少ないですよね。
荒井:小さい文字でぎっしりと書かれた数字や情報が詰まっていますよね。企業によっては、APPENDIXが説明資料と同じくらいのページ数になることもあるため、「ここも大事なのだろう」と思いつつ「これは難しそうだ」と、つい閉じてしまうこともあります。
塩谷:APPENDIXは、基本的に企業側も毎四半期同じ内容を掲載することが多いため、我々も「変わっていないから読まなくていいか」という反応になることがしばしばあります。しかし、時折APPENDIXや補足情報の中に、企業がこっそりスライドを追加することがあります。
その中には「今まで2勤制だったが、稼働が上がってきたため3勤制とし、深夜も工場を稼働させるようにした」といった最近の工場に関する話など、補足情報ではなく非常に重要な情報がさりげなく盛り込まれていることがあるのです。
荒井:それは重要な情報ですね。工場を新設する話であれば、通常は資料の前半部分に記載されると思いますが、「稼働を増やす」という話も業績に大きく影響してきますよね。
塩谷:そのとおりです。このような利益率が大きく跳ね上がるような情報が、たまに入っていることがあります。
このような情報は見逃してしまうことも多いのですが、経営者側も重要性を理解しているため、動画では「補足事項何ページにあるこの情報だ」と解説されることも多いです。動画での解説があると、資料の重要な情報の見落としを防げる点が大きな利点だと思います。
荒井:続いて、どのような点に着目しているのでしょうか?
IRセミナーのポイント3 KPIの具体的な説明を聞く

塩谷:3つ目のポイントは、KPIの具体的な説明があるかどうかを重視できる点です。
これは経営側のマネジメントクオリティ、つまり経営者の経営に対する質がどの程度高いかを確認する際に活用しています。説明資料で、KPIについてはよく目にされますか?
荒井:説明資料で確認することもありますが、説明の中に登場したら確認するケースが多いです。
塩谷:基本的に、しっかりしている企業はKPIを開示しています。例えばSansan社などでは、SaaSのKPIとして「LTV」や「MRR」などを挙げていることがありますが、ご存知ですか?
荒井:聞いたことがあります。
塩谷:どの会社も、そのような数字を説明資料に記載はしていますが、例えば「KPI、MRRが来期1.5倍になります」と記しただけで、説明が止まっているケースもあります。「ではどうやって1.5倍になるの?」という詳細が気になることもありますよね。
このような点に関して、IRセミナーや動画では、しっかりと詳細を説明してくれる企業もあれば、そうでない企業もあります。要するに、スライドをそのまま読むだけの企業と、スライドの内容を深掘りして説明してくれる企業があるということです。
荒井:その違いには、何が影響しているのでしょうか?
塩谷:理由は2つあると考えています。
1つは、IR活動に対する姿勢の違いです。「スライドだけ読んでおけばいいでしょう」という場合では、そもそもIR活動が十分に行われていない企業もあります。
荒井:まだIR活動に慣れていない場合もあるかもしれませんね。
塩谷:そのとおりです。特に、IR活動を始めたばかりの企業に多い印象ですね。
もう1つの理由として、KPIの分解を現場レベルまで落とし込めておらず、経営側が一方的にKPIを決めているようなケースも、一部の企業には見受けられます。
荒井:目標が現場に伝わっておらず、「みんなでがんばるぞ」という状況になれていないということですか?
塩谷:そうですね。または、「みんなでがんばるぞ」という状況ではあるものの、具体的に「MRR1.5倍にするためには、リード獲得数をこのくらい増やさなければいけない」「リードを取るためには、CPAをこれくらいに抑えないといけない」といった詳細が詰められていないケースがあるのかもしれません。
荒井:そのような企業には注意が必要ですか? 説明が不十分なことが、業績や株価に影響を与えることもあるのでしょうか?
塩谷:必ずしもそうとは限りませんが、詳細な説明がある企業のほうが株式投資の面では安心感があり、PERなどの指標が引き上がりやすい傾向があると思っています。
IRセミナーのポイント4 機関投資家が見るポイント確認

荒井:次の質問にも関わってくるのですが、機関投資家の方々は、KPIについてどのように説明されているかという点を、しっかりと確認しているのでしょうか?
塩谷:そのとおりです。4つ目のポイントは、機関投資家が注目しているポイントがわかる点です。機関投資家の方々は、個人投資家以上に個別企業を詳細に分析していることが多いため、その点を非常に重視しています。反対に、企業側の説明でそのような情報が欠けていた場合、最後の質問タイムで機関投資家が質問することがよくあります。
次のテーマにも関連しますが、例えばIRセミナーの中でも、特にログミーの記事には質問パートまで書き起こしてくれる場合がありますよね。あの部分には機関投資家の質問が多く含まれているため、個人投資家の方々からすると、プロの投資家がどこまでKPIを掘り下げようとしているのか、また、どのポイントに注目しているのかがわかります。そのような点も、セミナーの大きな利点と言えるでしょう。
荒井:ログミーの書き起こしは、質問までしっかり確認することが重要ですね。
塩谷:おっしゃるとおり、記事の途中で心が折れる人もいるかもしれませんが、最後に記載されている質問まで確認することがポイントです。
荒井:記事が長い場合もありますからね。
塩谷:つまり、質問が非常に重要です。ログミーの場合、QAの有無を記事タグに記載してくれているため、非常に見やすく、ありがたいです。
荒井:無駄がないですよね。
塩谷:本当に無駄がなく、すばらしいです。機関投資家の動きがわかるような媒体やサービスはあまり見られないため、非常に貴重だと思っています。
IRセミナーのポイント5 資料に無い定性情報を得る

塩谷:5つ目のポイントは、決算説明資料ではわからない定性情報をキャッチアップできる、理解できる点です。
荒井:具体的に、どのような内容ですか?
塩谷:私は、自称「『ログミー』のIRセミナー動画のプロ視聴者」です。基本的に、企業の変化は差分で起こります。当然ながら、定量的なKPIの場合は、MRRや生産量など差分をチェックしやすいものです。
一方、定性的な部分にも差分があります。具体的には、例えばログミーの動画で「いつも財務のCFOしか話していなかったのに、今四半期からは社長が出演している」「以前までは社長しか話していなかったのに、店舗戦略の説明では店舗戦略部長や管掌役員が出演した」といった取り組みがあれば、それはIRを変えようと工夫していることを意味しています。
その結果、「この会社は株価意識が少し変わったかもしれない」というような点をキャッチアップできるのです。
荒井:取り組みの差が見えるということですね。
塩谷:そのとおりです。この情報は、非常に重要です。特に私たちは、スタンダード市場の企業における定性の差分を非常に注視しています。スタンダード市場の企業では、どうしてもIR姿勢に大きな差が見られるのです。
例えば、「今はまだIRはがんばらない時期」という企業と、「これからがんばっていこう」という企業に比べると、後者に該当する企業のほうが、株価上昇を目指した施策やマルチプルの向上を積極的に行っています。
そのような中で、ログミーのプラットフォームにはスタンダード市場の企業が多く掲載されているため、特にこの差分を意識しながら情報を確認しています。
荒井:今教えていただいた観点で見ると、非常におもしろいかもしれませんね。
塩谷:本当におもしろいです。ログミーの動画が公開されるたび楽しみにしています。「誰が出演するか」という観点から、「社長が来た!」となる感覚もありますね。
荒井:やはり、社長が登壇すると「来たぞ」という感覚になりますか?
塩谷:そうですね。例えば、これまで担当役員しか登壇していなかったのに社長が登壇すると、「社長の意識が変わったな」という印象を受けます。
荒井:「社長がずっと出ていたのに、違う方が出てきた」という場合も、必ずしもマイナスではないのではないかと思いますが、いかがですか? 財務に詳しい方が来るのも、それはそれで良いのではないでしょうか?
塩谷:おっしゃるとおりです。それはそれで良いと思います。人が変わることで、QAセッションの回答内容も大きく変わることがあります。そのような変化をチェックすることが、比較的ポイントになるかもしれません。
荒井:確かに、人によって引き出されるポイントが変わりますよね。
塩谷:鋭いですね。まさにそのとおりです。
荒井:質問のチャンスが来るということですね。
塩谷:質問のチャンスが来ますし、これまでの回答とはまったく異なる情報を得ることができます。例えば、動画のサムネで「あれ、いつもと顔が違うな」と思ったら即クリックしています。
荒井:おもしろいですね。プロの方がそのような目線からもしっかり見られているとは、思いませんでした。
塩谷:誰よりも動画を見ている自信があります。
荒井:まさに「プロ視聴者」ですね。
質疑応答のポイント

荒井:先ほどもキーワードが出てきましたが、やはりIRセミナーといえば質疑応答も重要なポイントだと思います。塩谷さんが気にされている自己流のポイントがあれば、教えてください。
Yes/Noで終わる質問をしない

塩谷:当社は直接取材も行うため、質問には慣れているのですが、まず一番意識しているのは、「Yes」か「No」で終わる質問をしないということです。
荒井:それは、リアルセミナーでも見られることなのですが、個人投資家の方の思いがあふれてしまい、ご自身の考えを述べてから質問をされた結果、回答が「Yes」か「No」になってしまうといったことでしょうか?
塩谷:そのとおりです。思いがあふれている方は確かにいらっしゃいますよね。それも良いのですが、その場合、1つの事実しか確かめられません。特に、「Yes」か「No」ということは、自分の中で仮説があり、それが合っているかどうかに対する「Yes」か「No」が回答になります。
それでも良いのですが、せっかくのQ&Aの場なので、なるべく企業側から多くの情報を聞き出し、自分自身も企業への理解を深めたいですよね。そう考えると、企業側が回答の選択肢を持てるような質問をすることが重要だと思います。
荒井:具体的にはどのような質問でしょうか?
塩谷:具体例を挙げるとわかりやすいですよね。ただ、これは私のノウハウにもなるため、詳細は言いません。
荒井:教えてもらえないのですね。
塩谷:それでは、教えます(笑)。
荒井:お願いします(笑)。これはスペシャルなお話ですね。
塩谷:具体例として、先ほど新工場の稼動や増設の話がありましたよね。そちらに関するスライドを見た際、「その工場が稼働することによって生産性が上がりますか?」という質問をすると、当然ながら「上がります」「Yes」で終わってしまいます。
このような質問には、生産量や生産能力が前年からどの程度増加し、来期の売上にどの程度寄与するのか、さらに利益がどの程度増えるのかを知りたい意図があります。
つまり、質問の仕方としては、「前回あった新工場の設備投資では、生産能力が前年比20パーセント程度増加しました。今回の設備投資では、今後どの程度上がるのでしょうか?」というように、過去の実績を混ぜることで、きちんと調べて理解しているとわかるかたちで尋ねるのです。
そうすることによって、企業側も開示可能な範囲で、自分たちが持っている具体的な数字を回答として提示してくれることがあります。このように、過去の実績を調べたうえで「Yes」「No」で終わらないような質問を工夫することが重要です。
例えば、「どのくらい稼働が上がりそうですか?」「生産能力が増強されそうですか?」といったポイントを盛り込んだ質問にすることで、「生産増強はどれくらいありますか?」という単純なオープンクエスチョンよりも具体的な答えを引き出すことができ、企業側も対応しやすくなります。
荒井:「前年の数字を見ていますよ」という誠意ある姿勢を見せつつ、企業の方も人間なので、質問に答えやすい間を作るといった工夫を凝らすことで、企業側も質問に答えやすくなりますね。
塩谷:まさにそのとおりです。なかなか加減が難しいのですが、ただ単にオープンクエスチョンをすれば良いという問題でもないということを意識しています。
荒井:何度も質問をさせてもらったり、経験を積むことも大切ですね。

塩谷:そうですね。ログミーの動画には、質問セッションもあります。あれをだいたい1,000時間ほど視聴すれば、コツがつかめるかもしれません。
荒井:1回のIRセミナーにつき、視聴者のQ&Aコーナーが約10分です。1,000時間というと、何本見ればいいのでしょうか?(笑) 計算してみてください。さすが、塩谷さんはパワーユーザーなので、そのくらい見ているということですね。
塩谷:そうですね。ログミーの動画は、視聴回数の半分を私が占めているのではないかと思っています。
荒井:そんなに見ていらっしゃるのですね。ではこの動画も、もしかするとご本人が回している可能性もありますね(笑)。
塩谷:視聴回数の半分は私が占めているかもしれませんね(笑)。
荒井:おもしろいポイントですね。他にもポイントがあるのでしょうか?
経営管理能力に関わる質問

塩谷:次のポイントは、まさに先ほどのパートでも触れた「KPIの具体的な説明があるかどうか」という点にも関わってきます。投資家側としては、経営側がKPIを含めてどのくらい細かく管理しているのかを知りたいと思っています。
荒井:それは規模感につながるということですか?
塩谷:企業の長期的な成長を期待しているため、長期的な成長には経営管理能力を非常に重要視しています。機関投資家も含めて、その部分に関する質問を集中的に行うことを意識しています。ただ、先ほども話したとおり、KPIの開示については、具体的に説明しすぎるとスライドの数が足りなくなってしまうため、簡素化されることが多いです。
セミナーの動画内でその文脈を補う話があったとしても、自分が知りたいことを100パーセントカバーできるケースは少ないため、その不足部分を補うための質問をしています。こちらも、具体的な内容を挙げたほうがいいですか?
荒井:教えていただけるのであれば、ぜひお願いします。
塩谷:例えば、先ほどSaaSの話をしましたが、一例として「MRRを1.5倍にします。そこではリード獲得が大事です」など、企業が細かな行間を埋める回答を提供してくれることがあります。
ただ、最近私たちが特に知りたいことは、リード獲得においてのSNS広告やオフラインの展示会やイベントなど、いくつかの手法がある中で、SNS広告を使いすぎている企業は少しネガティブに捉えがちです。一方、展示会に力を入れている企業のほうをより評価しています。
そのような広告戦略について質問し、経営陣がどの程度その部分を管理しているかを探ることがあります。
荒井:広告戦略だけでも、そのような視点で見ることができるのですね。
塩谷:そうですね。無限に検討できてしまうため、深掘りのしすぎはよくありません。ただ、せっかく視聴するのであれば、なにか1つは質問したいですよね。そのような場面で、広告戦略まで深掘りしてもよいと思っています。
荒井:どの企業にも広告戦略を質問すれば良いというものではないですよね?
塩谷:そのとおりです。今の例はSaaS企業における場合なので、個々に調べて、一生懸命質問を練ってみてください。
荒井:見極めも大事ですか?
塩谷:大事です。
荒井:では、もう1つのポイントを教えてください。
比較質問の落とし穴

塩谷:以前は私もよく用いていたのですが、質問をする際、その内容に他社比較を入れるという点です。
荒井:よく聞きますよね。
塩谷:「他社はこうだ」というかたちで質問をすることは、最近はあまり良くないと思っています。具体的に、他社と比較して質問先の会社のほうが粗利率が低かった場合、その粗利率がどれくらいまで伸びるのかを聞きたいという背景があったとします。ただ、ここで他社比較を入れた質問をすると、比較的事実とブレた回答が返ってくることが多いと感じています。
荒井:実際には、どのような回答になってしまうのでしょうか?
塩谷:例えば、他社の粗利率が5パーセントで、質問先の会社が2.5パーセントだとします。「他社の5パーセントの粗利率に対してキャッチアップできますか?」「倍程度になりますか?」という質問に対して、会社からは「倍程度にはなりません」といった回答があった場合、結果として「この会社はやはり競争優位性がないんだな」と捉えてしまいます。
しかし、これは実は間違いです。粗利率の計算方法は、会社ごとに異なります。例えば、本社の人件費を原価に含める割合が他社と異なるなど、そもそもの前提が違うのです。
そのため、他社との比較を質問に入れてしまうと、先ほどの回答では「この会社はもう粗利率をあまり改善しないんだな」と認識されてしまいます。しかし実際には、他社と正確に比較できていないだけなのです。
質問の仕方を変え、その会社の背景を考慮すると、例えば前年に価格改定を行ったことを踏まえ、「価格改定によって、粗利率はどのくらい上がりそうですか?」というように、他社比較を排除しつつ質問すれば、粗利率の改善ストーリーを引き出せる回答が得られます。
他社比較を行うと、コミュニケーションが短期間で終わってしまい、結果的にあまり良い質疑応答にはならないと感じました。
荒井:しかし、やってしまいがちですよね。
塩谷:この点については、多くのログミーの記事の質疑応答内でも頻繁に書かれていますよね。ただ、最近ではあまり良い方法ではないのではないかと感じています。
荒井:具体的な数字について質問する際は他社比較を避けた方が良いというお話でしたが、業界全体についてうかがう場面など、もう少し広い視点の場合はいかがでしょうか? 他社名を出さずとも、業界の将来性などを聞きたい時は問題ないのでしょうか?
塩谷:それは問題ないと思います。SaaS企業を例に挙げますが、例えば「生成AIの出現によって、SaaS企業の先行きの見通しはいかがですか?」という質問する際、「以前、他のSaaS企業に聞いた時は『むしろ生産性が上がって良いです』という回答でしたが、御社はどう考えていますか?」といった議論を行うことは、良いと思います。
ここでもバランスが重要で、その見極めには熟練度が求められるかもしれません。
荒井:まずは多くのIRセミナーを視聴することが大切ですね。
塩谷:動画1,000時間ノックを、みなさまにもぜひお願いしたいです。
荒井:そしてもう1つ、重要なポイントがあるということですね。
過去の発言との接続を意識

塩谷:特にIRセミナーの書き起こしにおいて、私たちは去年の発言との接続を意識しています。
先ほど申し上げた「他社比較を質問に含めない」という点とも若干関連するのですが、やはり他社比較では「Apple to Apple」の比較にはならず、対等な条件での比較ができていません。そのため、誤解を招くような回答が来る場合があります。
一方、その会社の歴史に基づき「過去はこのような状態で、現在はこのようになっていますが、この部分はどう考えればいいですか?」というように、会社内部での差分を質問に取り入れると、内部の具体的な事情に合った回答を得られやすくなります。この点は最近特に意識して取り組んでいる質問方法であり、よく用いています。
荒井:おそらく違うのですが、同じ方の過去の発言と比較するというと、「過去はこのように発言されていましたが、達成できていないじゃないですか」というような、責めたニュアンスの文脈を見かけることがあるように思います。今おっしゃっていることとは、異なりますよね?
塩谷:まったく異なります。質疑応答はあくまで生産的な情報交換の場であるため、過去との差分達成ができなかったことを責めるような質問は、あまり意味がないと考えています。
むしろ、「中国向けの輸出に関して、去年までは悲観的な見通しを出されていましたが、今回の質疑応答セッションでは楽観度が突然強くなっているように見えます。なにか状況が変わりましたか?」というように、過去との差分に基づいた質問が適切だと思います。
荒井:さまざまなポイントをうかがって、イメージが湧いてきました。みなさまも「実際にやってみたいな」と思っているかと思います。
塩谷:やはり、具体例がなければなかなかわかりづらいところがありますよね。
荒井:さて、今回の動画はいかがでしたでしょうか? 塩谷さんの資料の行間の埋め方や具体例が多数あり、とてもわかりやすかったです。ありがとうございました。
塩谷:本当ですか? 私も話している中で、自分でも「わかりやすく話せているな」と思ってしまいました。

荒井:自己評価のとおりだと思います(笑)。
塩谷:ありがとうございます。
荒井:ということで、みなさま、この動画をぜひ何度もご覧ください。1人1,000回程度でしょうか?
塩谷:そうですね。1人1,000回の視聴をお願いします。


