アシロ、3Q時の上方修正を上回って着地 FY26はFY27以降の飛躍のための助走期間に
25年10月期4Qマネジメントメッセージ

中山博登氏(以下、中山):株式会社アシロ代表取締役社長の中山博登です。2025年10月期本決算の説明会をご覧いただき、誠にありがとうございます。
2025年10月期第4四半期のマネジメントメッセージはスライドに記載のとおりです。第3四半期の決算時にお伝えした内容よりも、第4四半期は想定以上に良いかたちで着地することができました。2026年10月期の準備期間として、行うべきことを行い、良い準備ができた期間だったのではないかと考えています。
FY2026 通期業績予想

中山:2026年度の通期業績予測です。売上成長率は一部鈍化して見える部分がございますが、こちらについて詳しくご説明します。
大口の広告主により、2025年度は期首から非常に好調に売上成長を牽引しました。こちらが一段落し、予算の調整が入った結果、成長が鈍化して見える状況です。
この大口顧客が非常に好調だったため、それと比較すると物足りなく感じるかもしれません。ただし、大口顧客以外はすべて順調に成長しており、会社全体として成長が止まっているという認識はまったくありません。そのため、ご心配いただく必要はないかと考えています。後ほど詳しくご説明しますが、弊社は過大な予算を掲げて結果的に下方修正に至る、または、1パーセントや2パーセントの未達を容認する企業もあるかもしれませんが、当社の場合は、確実に達成可能な予算を設定することが重要だと考えておりますので、少し保守的な予算を立てる方針であるとご理解いただければと思います。
FY2026 通期業績予想(セグメント別)

中山:セグメント別の通期業績予想はスライドのとおりです。現在、新規事業に取り組んでおり、2026年10月期において最も重要なのは、この新たなセグメントで確実に数字を生み出すことだと思っています。既存事業の成長はもちろんのこと、この新規事業の創発が、我々にとって非常に重要だと考えています。
したがって新しい事業にチャレンジし、1年後にはこの「新規事業」と記載した欄に、具体的な数字をみなさまにお伝えできるよう、取り組んでいきたいと考えています。
ご参考:上場後の売上成長率の推移

中山:成長が鈍化しているように見える部分について、こちらのスライドをご用意しました。弊社は上場以来、CAGR(年平均成長率)25パーセントを常に上回る成長を続けており、非常に高い成長速度を維持してきました。特に2024年度や2025年度については、売上成長率がやや高すぎた部分もあったと考えています。
先ほどお伝えしたように、2025年度は大口顧客が非常に大きく予算を引っ張ってくれた1年でした。現在はその調整が一段落し、全体として低成長に見えることがあるかもしれません。しかしながら長期的に見れば、非常に高い成長率を維持してきています。
この成長率にさらに近づけるため、さまざまな施策の準備が整っていますので、どうぞご安心いただき、ご期待いただければと思います。
また、弊社の予算は、すでに説明のとおり必達可能な内容であり「保守的である」とお話ししましたが、2022年度から2025年度まで毎回上方修正を行っています。2026年度の目標である売上高70億円も必ず達成しなければならない数値であり、経営陣と現場一丸となって、2026年度も大幅な上方修正を目指して取り組んでいます。
現在提示している数字はあくまで最低限として見込んだものであり、我々としてはさらに高い目標を見据えていますので、引き続きご期待ください。
ご参考:株価とバリュエーション他社比較

中山:株主還元についてです。同業他社と比較して弊社のPERが非常に低く、株価が割安であると感じています。そのため株主還元をさらに充実させ、この割安な状態を是正する目的も含めて、今期中に期間を定め、最大5億円までの自社株買いを進める予定です。
株主還元

中山:株主還元については、弊社は配当を継続的に実施しています。今後も可能な限り、積極的に株主還元に取り組んでいきたいと考えています。
ご参考:売上に占める大口顧客の割合

中山:トピックスについてお話しします。大口顧客の存在が不安を与えるかもしれませんが、弊社としては、大口顧客の売上が増えることに問題があるわけではありません。
一方で、大口顧客との取引は予算規模が大きいため、その予算によって売上全体が大きく変動してしまう点で、予算を組みにくかったり、ボラティリティが発生してしまう懸念がありました。
したがって、売上全体の比率として大口顧客の部分が減少していることによりボラティリティが低減し、予算が組みやすくなっている点については、好材料と考えています。
クライアントとの取引によっては、今後も大口顧客の売上が増加する可能性もあります。しかしながら弊社の方針としては、大口顧客を徹底的に狙うというよりも小口のストック系商材を着実に積み上げ、予算の蓋然性や収益の安定性を高めつつ、着実に収益を上げていきたいと考えています。
ご参考:ASiRO初のAIサービス

中山:年明けには、弊社初のAIサービスとして「Legal Base」をリリースする予定です。市場には競合や同様のAIサービスがすでにリリースされていますので、目新しさを感じないかもしれません。
しかし弊社ならではの売り方や販売戦略を立てており、後発ではあるものの、十分に大きく成長させられると考えています。ぜひご期待ください。
25年10月期4Q(25年8月ー25年10月)決算サマリー

中山:第4四半期の決算については、スライドに記載のとおりです。
質疑応答:資本政策と株主還元方針について
飯村美樹氏(以下、飯村):「資本政策は配当による還元が軸となりますか? 自社株買いと償却でROEとEPSを引き上げて株主を呼び込む戦略もあると思いますが、配当を選択される理由を教えてください」というご質問です。
中山:本日、自社株買いのリリースを発表しましたので、ご期待に沿えたことをうれしく思います。配当に関しては、配当性向30パーセントという方針で毎年実施しています。この方針を永続的に続けることが重要だと考えています。
自社株買いについては、株価やさまざまな要因のバランスを考慮し、自由に実施できるわけではありません。今回のタイミングを含め、還元方針の一環として実施しており、弊社にとっては上場後3回目の自社株買いとなります。弊社は比較的自社株買いを行う企業のため、配当だけでなく、さまざまなかたちで株主還元をできる限り行っていきたいと考えています。
質疑応答:派生メディアの利益率低下要因について
飯村:「派生メディアの利益率低下要因について、詳細な説明をお願いします。第2四半期と同水準の広告費を使って売上が減った理由はなぜでしょうか? 『キャリズム』が伸び悩んだとありましたが、報酬単価が下がったということでしょうか?」というご質問です。
中山:報酬単価が下がったわけではありません。派生メディアについては、四半期によってユーザーの取り込み方が異なります。具体的には、広告を活用した取り込みと、自然検索による流入の2つがあります。この自然検索経由からの流入が減少すると、利益率が低下する傾向があります。
今回、ご質問者の方が、どの四半期、あるいはどのタイミングで利益率の低下が見られたかわかりませんが、比較的弊社の第3四半期や第4四半期は広告主の閑散期にあたり、広告の露出も控えめになります。
一方で第1四半期や第2四半期、特に年明けからは繁忙期に入り、クライアントとの話し合いや予算の調整が比較的行われやすい時期となります。
そのため一見すると利益率が下がっているように見えるかもしれませんが、今年1年の動向を見る限りは回復傾向にあり、第3四半期や第4四半期で特に利益率が下がる要因はありません。
むしろ第3四半期と比較すればかなり改善してきており、年明け以降にはさらにご期待いただけるかと思っています。
飯村:1年の中で季節的な影響を受けるということですね。
中山:おっしゃるとおりです。転職を扱うインターネットサイトのため、年明けから特に4月頃に転職希望者が増えてきます。その時期は繁忙期に入りやすいという特徴があります。
質疑応答:保険事業における販売戦略について
飯村:「保険事業は広告宣伝費を相当額かけないと契約者が伸びないという、大変厳しい業界だと認識しています。リリース後の販売戦略について、概略を共有していただけますか?」というご質問です。
中山:こちらは保険の種類によると考えています。我々が主に取り扱っているのは法人保険です。個人向け保険の場合、認知度を高めるために多額の広告費を投じる必要があると考えられます。一方で法人向け保険については、宣伝よりも直接的な連絡や営業活動にコストがかかると考えています。
そのため、テレビCMやインターネット広告といった大規模な広告手段で認知度を広げるというよりも、一件一件着実に、我々の営業活動を通じて認知を広げることが重要だと考えています。したがって一般の個人向け保険に比べ、広告費が大幅にかかるということは想定していません。
質疑応答:一時休止中の大手クライアントの状況について
飯村:「一時休止となっていた大手クライアントのその後の状況を教えてください。すでに復活しているのか、またはその兆候があるのかどうかをお聞かせください」というご質問です。
中山:こちらは第3四半期の決算資料における我々の説明や記載方法において、誤解を招くような部分があったかもしれません。事実としては、休止もされておらず解約もされていません。その中で、大手クライアント側の予算調整により、広告期間や予算の調整をした時期があったのは事実です。
ただし第4四半期に入ってから改善傾向が見られ、第3四半期時点よりも状況は良好です。
飯村:ご関係が完全に止まってしまったわけではないということですね。
中山:おっしゃるとおりです。
質疑応答:配当方針について
飯村:「長期投資を前提としているため、配当金の考え方についてお聞きします。保険事業の備金により営業利益が減少したとしても、配当金は売上高に対して営業利益20パーセントを想定して出していく予定でしょうか?」というご質問です。
中山:おっしゃるとおりです。しかしながら自己資本比率や社内の現預金の関係もあるため、それらが圧迫される状況になれば、配当を出し続けることは難しくなるかもしれません。ただし現在の財務体制からは、そのような状況は想定していません。
保険事業の備金によって営業利益が毀損された場合でも、基本的には毀損されなかった時の営業利益率20パーセントを考慮し、可能な限り配当性向30パーセントで配当を出し続けていきたいと考えています。これは上場以来掲げてきた方針ですので、今後も続けていきたいと思っています。
質疑応答:各事業セグメントの売上構成比と成長率について

飯村:「メディア事業、HR事業、保険事業など各事業セグメントの売上構成比と成長率を教えてください。特に注力された事業領域や、想定以上に成長した領域があれば、具体的にお聞かせください」というご質問です。
中山:各事業セグメントの売上構成比に関しては、決算資料のスライドのとおりです。
事業セグメント別の売上収益に係る成長率については、大要、メディア事業は成長率15パーセントから20パーセントを維持したいと考えています。HR事業については、130パーセントから150パーセント程度の成長を目指したいと思います。保険事業についてはまだ開始直後のため、200パーセント以上の成長を目指しており、十分に達成可能であると考えています。
なお、想定を超えたというよりは、計画どおりに成長しているのがHR事業です。通期で黒字化を果たし、2026年10月期には億単位の利益が見えてくる水準に達していますので、期待どおりに成長していると感じています。
質疑応答:「ベンナビ」の成長状況と今後の展開について
飯村:「リーガルメディアの『ベンナビ』シリーズを展開されていますが、2025年10月期における各サービスの成長状況や、新規で立ち上げたサービスがあれば教えてください。また、今後の展開計画についてもお聞かせください」というご質問です。
中山:2025年10月期の成長状況については、決算資料をご覧いただくと期首から期末にかけての売上の伸びがご理解いただけるかと思います。
新規といいますか、準備をしておりまして、ようやく2025年10月期にリリースできたのが、保険事業の「bonobo(ボノボ)」という法人向け保険です。
今後については、冒頭で触れた「Legal Base」というアシロ初のAIサービスを、2026年の年明けにもリリースする予定です。
さらに当該AIサービスだけでなく、さまざまな事業を準備しており、今期中にいくつリリースできて、サービスとしてスタートできるか、私自身も楽しみにしています。ぜひご期待いただければと思います。
質疑応答:AIの普及による成長鈍化の可能性について
飯村:「今期から急に見通しが悪くなったように感じますが、世の中のAIの普及により仕事が奪われている状況でしょうか?」というご質問です。
中山:そのようなことはないと感じています。むしろ人間でなければ、ニュアンスを含めて簡単に変えることは難しいということが浮き彫りになったのではないかと思います。
我々の業界で大きく変化を実感したのは、調べ物の方法です。以前は検索する際に、Google検索でキーワードを調べ、そのサイトに入って、スクロールして一番知りたい部分をさらにクリックするという、3回のクリックが必要でした。
しかし現在はChatGPTにテキストを入力するだけで答えが得られます。この点において、個人の働き方には大きな変化があったと感じています。また、資料作成や簡単なものを作成する作業に関しても、非常に効率化が進んでいると感じます。
ただ、完全にAIに変わってしまったということは、それほど実感していません。
飯村:今お話をうかがって感じたのは、こうした細かく時間のかかる作業をAIなどに任せることで、受け取れる案件が増えるという印象です。
中山:おっしゃるとおりです。生産性が上がっていくことになると思いますし、AIができることはAIに任せて、本来人間にしかできないことに注力していくべきだと思います。
例えば、「法律相談もAIで回答してくれるのではないか」という話があります。確かに、なんの争いの余地もなく、確定している事実であれば、過去の判例などを基にAIが回答してくれる可能性はあります。
しかしながら法律で係争するケースには基本的に双方の言い分があり、どのケースに当てはまるかは非常に曖昧です。そのため、そう簡単に明確な答えを出せるわけではないというのが1つです。
法律相談がAIに取って代わると考える方は、これまで法律相談をした経験がないのかもしれません。それは非常に幸せなことだと思います。しかしながら、人は危機的な状況や、本当に困った時に、簡単にAIだけに相談して済ませることは難しいと考えます。
やはり専門家にきちんと話を聞いてもらい、解決策を求めたいという人が多いと思います。そのため、弁護士の先生方の仕事をAIが奪っていくことは、そう簡単ではないと思います。
一方で、弁護士の先生たちの数ある仕事の中でも、書類作成は非常に多いです。そのような部分はAIによってかなり代替されることが予想されます。それによって法律相談や相談者の方と向き合う時間を増やせるようになるため、非常に良い傾向になるのではないかと考えています。
飯村:一人ひとり状況がまったく異なるという点もありますし、人間的な部分が関わる場面では、AIに完全に頼るのは難しい部分があると思います。
中山:私も多くの方とお話ししますが、法律相談をする状況というのは、例えば「自身が大きな病気にかかったのではないか」という不安を抱いている時の状況に似ています。
身体のどこかにずっと痛みがあって不安を感じている時に、AIが「左胸が痛いのはこのような理由です」と答えてくれても、それによって「じゃあ病院に行かなくてもいいか」とはならないと思います。
それがファクトベースで、例えば「心電図からどのような病気が読み取れるか」「このMRIの画像を見てどのような病気が疑われるか」といったように、医師をフォローするためのツールとして使うことはあると思います。
ただし、一次診断としてどのような症状なのかについて、医師に話も聞かずに、「AIがそう言っているからそうだ」と判断することは、将来的には可能かもしれませんが、現状では考えにくいです。法律相談についても同様の状況にあるということです。
質疑応答:成長鈍化につながる想定外の要因ついて
飯村:「中山社長の思ったとおりの成長ではないと感じています。想定外のことは何かありますか?」というご質問です。
中山:2025年度は大口顧客が好調すぎたことが、我々にとって想定外でした。大口顧客が想定以上に好調すぎたことにより、中期経営計画において想定していた売上55億円、営業利益11億円という数字を大きく上回った数字で本決算は着地しました。
この好調を維持できなかったのは、我々の対応力不足という側面もありつつも、想定以上に好調過ぎただけであって、ネガティブな要因が生じて成長が鈍化したわけではありません。大口顧客による要因により、2025年度の前半が好調すぎた影響で、その反動が少し現れているのではないかと感じています。
質疑応答:決算時の株価について
飯村:「前回も決算で大幅安、今回も夜間で大幅安です。年越しが厳しいです。来年に向けて一言お願いします」というご質問です。
中山:既存事業は順調に成長しています。弊社の商材の特性上、ストック商材が積み上がっており、業績は着実に伸びています。
株価は短期的には変動することもありますが、会社の価値や業績が成長し続けていれば、その価値が毀損したり、低下することはあり得ないと考えていますので、ご安心いただければ幸いです。
加えて2026年度については、これまで取り組んでこなかったような新規事業を、「LegalBase」以外にも新たなトピックスとしてお示しできればと思っています。
私が株価をコントロールすることはできませんが、低調な部分については申し訳なく思っています。しかしながら事業サイドとしては一生懸命に事業を作り、成長させることで株主のみなさまの期待にお応えしたいと考えています。
質疑応答:大口顧客の予算調整への対策について
飯村:「大口顧客の予算調整に関するご説明が前回もありましたが、この件について現在の状況と対策について教えてください」というご質問です。
中山:売上全体のボリュームを上げ、大口顧客の比率を下げることが重要と考えています。例えば、みなさまが弊社の株や他のさまざまな金融商品をお持ちの場合、特定の銘柄に集中させると、そのボラティリティが顕著になった場合、大きな影響が生じると思います。
それと同様に、弊社も売上をさまざまなものに分散し、ストック性の高い事業に注力することでボラティリティを軽減するためにも、大口顧客の比率を下げる対策を行うのが必要だと考えています。
また広告事業については、弊社だけでなくお客さまがあってこそ成り立つ部分が大きいため、どれだけ入念に準備をしていても、お客さまの業界や案件そのものが永続的に拡大し続けるわけではありません。そのため、特定の事象にとらわれず、全体を見てカバーしていくという方法が正攻法だと考えています。
質疑応答:今年度のカギとなる事業について
飯村:「今期は始まったばかりですが、キーとなる事業はどれですか?」というご質問です。
中山:全てではありますが、特に挙げるとすれば新規事業です。新規事業は立ち上げに非常に力が必要だと感じていますが、ベンチャー企業らしいスピード感を持ちながら、着実に立ち上げていきたいと考えています。
質疑応答:「ベンナビ」でもっとも引き合いのあるサービスについて
飯村:「ベンナビ」は8つの種類があると思います。その中でもっとも引き合いや相談が多いのはどれでしょうか?
中山:日本全国の法律相談の比率とほぼ同じです。全国各地での民事における法律相談のうち、約35パーセントが離婚に関する相談です。弊社の法律相談も同様に、約35パーセントが離婚の相談を占めています。
質疑応答:「ベンナビIT」について
飯村:「ベンナビIT」というのはどのようなサービスですか?
中山:もしかすると飯村さんも活用されるケースが出てくるかもしれませんが、特に表に出る仕事をしている方の場合、風評被害やSNSでの誹謗中傷がよくあると思います。そのようなものを中心とした、インターネットを活用した法律相談です。特に、風評被害や誹謗中傷が主な相談内容となります。
飯村:嫌な話ですが、今後そのようなメディアが増えることを考えると、この分野も伸びていきそうですね。
中山:おっしゃるとおり、年々この分野の法律相談は増えています。個人からも法人からもかなり増えており、今後も拡大していくと感じています。
質疑応答:リーガルメディアと保険事業の進捗について
飯村:「リーガルメディアと保険事業の進捗および課題についてお聞かせいただけますか?」というご質問です。
中山:比較的リーガルメディアは順調です。ただ、唯一課題として挙げるなら、法人からの法律相談です。
法人の場合、社長同士が仲が良いと、インターネットで相談する前に知り合いの社長から弁護士を紹介してもらうことが多いため、インターネットに流れにくい傾向があります。そのため、法人からの法律相談をうまく取り込めてこなかった点は、課題だと感じています。最近では我々も対策を進め、法人からの相談を集めてきています。
法人からの法律相談は、弁護士からも非常に人気があります。この部分について、今後はインターネット上からも集められるようになることが、我々の喫緊の課題だと思っています。一方で課題であると同時に、期待値を持てる部分でもあると思います。
保険事業に関しては、一件一件、契約を着実に伸ばしていくことが必要です。みなさまもお気づきかと思いますが、先ほど「ベンナビ」で最も集めづらい法律相談は企業からの法律相談であるとお話ししました。
我々が長い時間をかけて、保険を一件一件地道に販売し、例えば契約数が5万件、10万件となる時がくれば、その先の未来として、企業からの法律相談は基本的に「Google」などのプラットフォームには流れずに、我々の保険会社に流れてくるようになります。
我々がこれまで苦戦し、多大なコストをかけてもなかなか取れなかった法律相談が、株式会社アシロ少額短期保険を通じて随時入ってくるようになります。これにより単純に保険の収益が立つだけでなく、保険相談が法律相談を集める装置としても機能することになると考えています。
我々は保険会社ですので、法律相談に直接回答することはできません。ただし「保険会社として弁護士を紹介してほしい」という依頼が増えることになりますので、弁護士を紹介する機会が増えていくと考えています。
飯村:企業との強固な関係構築が見込めるということですね。
中山:おっしゃるとおりです。
質疑応答:「Legal Base」の軸となるAIサービスについて
飯村:「今回発表されたアシロのAIサービスについて質問です。6つの機能が紹介されていますが、どの機能が『Legal Base』の軸となる機能でしょうか?」というご質問です。
中山:お客さまや業種によっては契約書のチェックが不要な場合もありますし、その一方で、契約書のチェックだけが必要なケースもあるかもしれません。このように、企業ごとにキーとなるサービスは異なってくると思います。
我々のAIの技術が最も多く活用されているのは、契約書のチェックです。契約書をレビューする際にツールを使用すると、AIが気をつけるべき点や漏れている事項について提案してくれます。
契約書のチェックという業務は、書面作成や画像作成といった業務と同様に非常にコストがかかる部分です。人間が全文を読んでチェックする代わりに、AIがチェックしてくれるという点で、我々がこれまで蓄積してきた技術が大いに活用されています。
飯村:それぞれ顧客によって、どれが基本的なサービスとなるかは変わってくるということですね。
中山:おっしゃるとおり、業種によって異なります。例えば、飲食店を経営されている方にとっては、契約書のチェックはそれほど日常的ではないかもしれません。しかし、例えばカスタマーハラスメントの被害に遭ったり、お店に対する悪意ある評判をインターネットで広められたりするようなことがあれば、法律相談を必要とされると思います。このように業種やケースによって、最も利用したい機能は変わると思います。
質疑応答:2四半期連続で減収減益となった要因について
飯村:「2四半期連続でQoQは減収減益です。これは顧客の予算調整というレベルではなく、解約や顧客離れが起きているのではないですか? 資料の説明では今期の見通しについても不透明感があり、足元で何が起きているのか、もう少しご説明いただけると嬉しいです」というご質問です。
中山:冒頭でもお伝えしたように、弊社は売上が下がっているのに無理に予算を出したり、不確実な数字を提示するようなことは一切行いません。非常に保守的な見積もりを行った上で数字を発表していますので、達成が困難な数字を提示することはありません。どうぞご安心ください。
四半期で見ると、大口顧客の予算調整が行われたり、第4四半期においては派生メディアが比較的閑散期であるため、数字が少ない時期となっています。
一方で「ベンナビ」の比率が高まりストック系が強くなるため、第4四半期に派生メディアの売上が下がっても四半期間で大きな変動はなく、むしろやや上がって見えることもあります。
現在は派生メディアが非常に成長しており、四半期ごとのボラティリティの影響を大きく受けやすくなっているため、QoQでは減収の影響が出ています。
一方でストック系は順調に積み上がっているため、YoYでは成長が見られています。したがって来期初めに関してもこの成長傾向を維持すれば、YoYで十分な伸びを達成できる見込みです。
さらに新規事業もリリースを予定していますが、これらの数字を含めずに策定した予算となっています。その点も含め、ご安心いただければと思います。
質疑応答:AIサービスのターゲットについて
飯村:「AIサービスについて質問です。冒頭で『弊社ならではの売り方』というお話がありましたが、顧客は弁護士事務所を想定されているのでしょうか?」というご質問です。
中山:我々のターゲットとなるのは、当期ベースで約400万社といわれる日本の中小企業と、大企業も含めたすべての法人です。したがって、幅広く活用いただけるようなサービスにしたいと考えています。
ポジショニングマップなどを見ないとわかりづらい点もありますが、これまでリーガルテックといわれるツールは、大手企業の法務部や法律事務所といった専門性の高い部署でのみでしか活用されておらず、先行している企業だけが導入している状況でした。
我々の戦略としては、多くの中小企業に導入いただけるプランをきちんと組み立てていきたいと考えています。
飯村:扱いやすく、取り入れやすいサービスということですね。
中山:価格についても、中小企業が扱いやすい価格帯をご用意していきたいと思っています。
質疑応答:成長を支える事業について
飯村:「今後2年間における売上と利益の成長を支える柱となるのは、どの事業になると考えていますか?」というご質問です。
中山:高成長率を維持するためには、すべての事業が伸びている必要があり、加えて新規事業を創出し続ける必要があると思います。
すべての事業において、いつかマーケットのピークが訪れるのは避けられません。このマーケットピークが訪れる前に、新しい事業を生み出せるかどうかが非常に重要だと考えています。すべての既存事業も大事ですが、それ以上に新しい事業をオーガニックに生み出せる力を身につけていく必要があると認識しています。
弊社はメディア事業からスタートして上場を果たし、上場後にHR事業を立ち上げ、億単位の利益を生み出す事業へと成長させました。保険事業は前期から開始したこれからの事業ですが、立ち上げ自体には成功し、新規事業を生み出しています。
このように成長を継続するためには、新規事業を社内からオーガニックに生み出せる力が、グロース市場では強く求められるものだと考えています。単一のプロダクトだけを磨き上げ、自然に成長していくケースがまったくないわけではありませんが、稀有なケースだと思っています。
グロース市場にいる企業に対して、「どのマーケットで戦っているのか」「どのプロダクトを持っているのか」「現在のプロダクトがどれだけ収益を上げる力を持っているのか」といった点に投資家のみなさまは関心を向けられます。
しかし、それ以上に重要なのは、その企業が「オーガニックに新規事業を生み出す力を持っているかどうか」だと思います。投資家のみなさまにも、ぜひその点を注目していただきたいと考えています。
飯村:社員のみなさまも、そのような情熱を共通してお持ちなのでしょうか?
中山:事業の創発に熱量がかかっている状況というのは、あまり良いとは思っていません。より自然発生的に、日常的な動きの中で「これをこう変えると新しい事業になるのではないか」という会話が生まれたり、「このような呼び方をすれば新しいマーケットに活用できるのではないか」という発想が、社員が意識しないレベルで考えられる状況でないと、簡単に事業は生まれませんので、こうしたカルチャーが必要だと考えています。
熱量を持って「考えよう」「考えなければならない」と意識するよりも、普通の会話の中から新規事業の種が次々と生まれる環境を作り上げていくことが重要です。
飯村:自然にアンテナが張れるような状態ということですね。
中山:おっしゃるとおりです。
質疑応答:リーガルメディアの通期予想について
飯村:「リーガルメディアはストック収益と認識しています。第4四半期の売上8億7,800万円を4倍にすると、今期予想を超えると思います。これは今期も解約予定があるのでしょうか?」というご質問です。
中山:特段ございません。今期予想を超えていく可能性は十分にあり、実際に成長している状況です。
質疑応答:新規事業に対する投資について
飯村:「来期予測を拝見すると、2026年度は2025年度と同様、自然体で会社運営される予定の印象です。AIや保険など新規事業に対する投資を積まなかった理由はありますか? 利益率を維持する範囲の投資で十分事業を伸ばせるということでしょうか?」というご質問です。
中山:「金ではなく知恵を出す」ということに尽きると思います。投資というと非常に大きなお金をかけることと思われるかもしれません。もしくは事業を作るための投資と申し上げると「お金」と捉えられることが多いかもしれません。
しかし、お金をかけることだけが投資ではありません。エース級の人材を配置したり、新たなリソースを投入したりすることも投資です。ただし、これらの投入により既存事業の成長が止まってしまうことが懸念されます。リソースを変えずに既存事業を成長させながら、またはリソースを増やしつつもコスト構造を変えずに新たな事業を生み出していきたいと考えています。
非常に難しいチャレンジではありますが、取り組みを進めていきたいと思います。そのため、現在のところコストは特に増加していません。
質疑応答:中山社長へのメッセージについて
飯村:「中山社長、少し元気がないでしょうか? 今期はお願いします」というメッセージです。
中山:非常に元気です。がんばります。
質疑応答:自社株買いの背景について
飯村:「シンプルにうかがいます。自社株買いは、株価に対する怒りの買い付けですか?」というご質問です。
中山:怒ったりはしておりません。商売と一緒で、圧倒的に安かったら買います。私個人がアシロ株を買うのは非常に難しいわけですが、一方で「私だったらこの株を買わない理由はない」と感じています。したがって「怒り」というよりは、「安い」という感じです。
質疑応答:CAGR25パーセントの達成について
飯村:「自社株買いありがとうございます。事業は堅調というご発言はあるものの、1つ懸念があります。売上構成から高単価商品の比率を出していただいた資料もありますが、この高単価商品を除いて計算した場合においても成長率が下がっているように見えます。CAGR25パーセントに大きく届かないように感じます。
先ほど堅調とおっしゃっていましたが、CAGRが25パーセントいかないと、中期経営計画は大きく未達かと思います。今後は、成長率が下がる方向になりそうでしょうか?」というご質問です。
中山:2023年度から2024年度のような150パーセント成長を毎年続けるのは、確かに厳しい時期もあるかと思います。
一方で、中期経営計画の2030年度、もしくは2031年度に売上収益200億円、営業利益40億円を目指すという目標については、既存事業に加え、新規事業の創発やM&Aによって達成可能だと考えています。
さらに、そこからどの程度アップデートできるか、予想を上方修正できるかに着目しており、目標に対する姿勢はまったく変わっていません。
また既存事業の成長率が下がっているように見える点については、全体の母数が増加しているため、成長率を維持できていない部分もあるかと思います。ただしそれを超えられるような事業作りに取り組んでおり、そのような準備も進めていますので、引き続きご期待いただければと思います。
質疑応答:IRの情報開示について
飯村:「マーケットから鑑みて、『この部分がうまく伝わっていない』と感じる部分はありますか?」というご質問です。
中山:こちらについては、ぜひみなさまから教えていただきたいと思います。
飯村:どの部分が伝わりにくいのかという点については、事業を運営する側としてもなかなか把握しにくい部分があるのでしょうか?
中山:開示については取り組んでいますし、50分間休憩なしで話し続ける社長も珍しいかと思います。私としては可能な限り開示を行い、開示できていない点についても回答するよう努めています。
さらにどのような説明や、会社側からの発信を行えばIRがもっと充実するか、アドバイスなどがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
また開示すべきことは多くあると考えているものの、開示しすぎて一喜一憂されるのも違うのではないかと考えており、毎月の開示は控えています。
今後、ストック性の高い契約が増えていくような新しい商材などが数として出てくるようであれば、そのようなデータを月次単位でみなさまに確認していただくといった取り組みはしていきたいと考えています。
ほかにも、充実させるために取り組むべきことがあれば、アドバイスをいただければ幸いです。
質疑応答:成長ストーリーと注力分野について
飯村:「前回の第3四半期決算説明において、『増収増益は続行する』という力強い発言をいただきました。来期予想を踏まえ、あらためてアシロの成長ストーリーと蓋然性、注力事業をお聞かせいただけますか?」というご質問です。
中山:すべての事業が注力事業です。その中でも最も注力すべきと考えているのが、新規事業の創発です。今後もチャレンジを続け、事業創造を実現する必要があると思っています。
それも1つではなく、2つ、3つと事業を創造し、「アシロはさまざまな事業があり、どれも伸びそうで期待できる」と思っていただけるよう、事業創造に尽力していきたいと考えています。
中山氏からのご挨拶
中山:本日は、あらためましてアシロの2025年10月期決算説明会をご覧いただき、誠にありがとうございました。たくさんのご質問をいただきましたが、お答えしきれなかったご質問や、まだ不安が残る場合などは、あらためてIR等にお問い合わせいただき、ご懸念やご不安を払拭していただければと思います。
引き続き成長を維持し、新しい事業を創造し続け、みなさまの期待に応えられるよう努力していきますので、どうぞご期待ください。本日はありがとうございました。
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