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井関農機株式会社6310

東証プライム

機械

目次

冨安司郎氏(以下、冨安):こんにちは。井関農機代表取締役社長の冨安です。本日はお忙しい中、当社説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。また、平素より当社のIR活動に関して、種々ご指導ご鞭撻を賜り、心より御礼申し上げます。本日は、目次の内容に沿って進めます。

ポイント

今回の決算のポイントを整理します。2025年12月期第3四半期の業績は、前年同期比で増収増益でした。国内は引き続き大幅な増収、海外も堅調を維持し増収となっています。国内および海外における売上高の主な内容はスライドのとおりです。詳細は後ほどあらためてお話しします。

利益面では、営業利益は国内外の増収および過年度に実施した価格改定の効果により増益となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益については、固定資産売却益と、前年に実施した構造改革に伴う減損損失がなくなったことで増益幅が拡大しています。

また、私どもが鋭意進めている「プロジェクトZ」については、当期の発現効果は計画どおり進捗しています。

通期の業績予想については、第3四半期までで2025年8月に想定していた予想を上回る増収増益となりました。通期でも売上、利益ともに8月の予想を上回る見込みであることから、今回再度の上方修正を行いました。

加えて、配当予想については、10円増配となる1株あたり40円に修正しました。

連結業績の概要

連結業績の概要です。売上高は前年同期比151億円増の1,437億円で、うち国内は前年同期比144億円の増収、海外は前年同期比6億円の増収です。利益面では、営業利益が前年同期比28億円増益の59億円となり、経常利益および親会社株主に帰属する四半期純利益も増益となっています。

連結業績の推移(四半期別)

四半期別の売上高と営業利益を示しています。棒グラフは売上高を表し、青色が国内売上高、黄色が海外売上高を示しています。折れ線グラフは営業利益を表しています。

今年度の第4四半期は、営業赤字19億円を見込んでいます。2022年の第4四半期は黒字となりましたが、特殊要因がありました。当社の場合、例年第4四半期は、日本国内を中心とした農機の不需要期にあたり、どうしても赤字傾向になります。

さらに、今期については、国内を中心にお客さまとの契約が順調に進んでいる一方で、当社が製造する製品や仕入商品を含む一部の商品で供給が追いついていない状況です。

今期中の売上計上につながらない要素もあり、そのリスクを織り込んでいます。

国内売上高

国内の売上高については、スライドの表の合計欄に記載のとおり、前年同期比で144億円の大幅な増収となりました。

表の上から4段目の農機製品では、米価の回復、上昇を背景に農家のお客さまの購買意欲が回復し、前年同期比69億円の大幅な増収を達成しました。

さらに、メンテナンスについても、前年同期比9億円の増収となり、その下段の作業機では前年同期比50億円の増収となっています。このように、メンテナンスや作業機といった分野が安定収益源として堅調に増加を続けています。

一方、施設工事においては、期間中に大型物件の完工があり、これにより前年同期比24億円の増収となりました。

海外売上高

海外の売上高は、スライド表の合計欄に記載のとおり、前年同期比で6億円の増収となっています。欧州については、引き続きフランスが堅調であることに加え、イギリスの販売子会社PREMIUM TURF-CARE社(PTC社)の連結化効果や円安の影響もありました。

前年にはドイツで仕入商品の特需があり、欧州の売上を押し上げていましたが、これが剥落したことで、ドイツの売上が大きく減少しています。トータルで30億円強の減少がありましたが、それをしっかりとカバーしました。

北米ではコンパクトトラクタ市場の弱含みが続いており、トータルで前年同期比14億円の減収となりました。一方、アジアでは韓国やインドネシアが好調で、前年同期比22億円の増収となっています。

表の最下段に記載されている海外売上高比率は31.7パーセントです。33パーセントを超えていた時期もありましたが、国内が好調の影響もあり、今回は31.7パーセントとなっています。

営業利益

営業利益です。スライド右側のグラフ、左から2列目の増収による売上総利益の増加により、前年同期比23億円増、販売価格の改定効果により前年同期比13億円増となっています。

一方で、原材料価格の高騰、具体的には鉄や銅のような市況製品よりも、取引先の人件費上昇などの影響を受けて、前年同期比10億円減となっています。ネットで前年同期比28億円の増益となり、営業利益は59億円となりました。

スライド右下の表に記載しているように、円安の影響により、売上高はプラス10億円、営業利益でプラス1億円となりました。また、「プロジェクトZ」の施策の効果は、2025年1月から9月までの9ヶ月間でプラス10億円となっています。

一方で、一時費用、具体的には販売会社の統合に伴う費用などがマイナス6億円となっています。いずれも計画どおりの進捗となっています。

経常利益、四半期純利益

経常利益以下の項目についてご説明します。スライドの右側にあるとおり、為替差益が前年同期比で約3億円減少したことなどにより、営業利益から増益幅が縮小しています。

一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は、今期の固定資産売却益や前年に発生した構造改革に伴う減損損失がなくなったことで増益幅が拡大し、前年同期比46億円の増益で41億円となっています。

バランスシート

バランスシートについてです。総資産は前年同期比20億円増の2,162億円です。

当社が最大の課題の1つとして捉えている棚卸資産については、国内販売の好調などを受けて前年同期比97億円の大幅圧縮を図ることができました。これは、一部海外子会社の新規連結による増加要因を含めたうえでの圧縮となっています。

有利子負債は前年同期比で94億円削減しました。棚卸資産と有利子負債の削減は、いずれも当社の期初の想定を上回る進捗となっています。

自己資本比率・有利子負債

第3四半期における自己資本比率および有利子負債残高の推移を示しています。

有利子負債は、バランスシートでご説明したとおり、棚卸資産の圧縮に伴い削減が進み、D/Eレシオは0.97倍と、1倍をなんとか切ることができています。自己資本比率は34パーセントで、まだ低い水準にありますが、多少なりとも改善しています。

なお、12月末の期末に向けて、今後さらに売上債権の回収が進むと見込んでおり、有利子負債のさらなる削減が見込めると考えています。

キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローについてです。

増益や棚卸資産の圧縮により、営業キャッシュ・フローは黒字化を達成しています。先ほどご説明したとおり、第4四半期では売上債権の回収がさらに進みます。通期では、営業キャッシュ・フローはさらに改善していくものと考えています。

また、投資キャッシュ・フローについては、この期間「プロジェクトZ」で進めている設備投資を実行しています。そのような中、フリーキャッシュ・フローは第2四半期に続き黒字を維持しています。

プロジェクトZの進捗

「プロジェクトZ」の進捗状況です。抜本的構造改革である生産拠点の再編や販売会社の統合など、主要施策は概ね計画どおり進捗しています。

先ほどお話ししたように、棚卸資産の圧縮については、国内の売上増加などを要因として計画を上回る成果を上げています。

開発最適化については、設計の仕方をゼロから見直すことが主体となります。今期の効果の発現は計画どおり進んでいます。一方で、来期以降の効果につながる変動費低減活動については一部遅れが生じています。この遅れについては鋭意挽回を図っています。

このような抜本的構造改革と同時並行で進めている成長戦略として、海外では欧州の連結子会社間の連携を強化し、シナジーの創出を推進しています。

国内では成長分野への新商品開発を進めるとともに、新たに草刈事業を立ち上げ、欧州でブランドが定着している乗用草刈機を国内でも展開していく計画を開始しています。

国内市場の動向

国内市場の動向についてです。まず、みなさまが注目されている米の価格などについてお話しします。スライド左側の折れ線グラフは、2020年を100とした米、肥料、農薬の価格指数の推移を示しています。

2021年は、コロナ禍によるインバウンド需要の低下や外食産業の不振の影響で、米価が下落しました。一方で、この期間に円安が進み、肥料、農薬、飼料、さらにはビニールハウス用のビニールなど、農業の生産資材価格が高騰しました。

結果として、農家にとっては厳しい状況が続きました。当然のことながら、私どもの機械に対する購買意欲も減退することとなりました。

昨年6月以降は米価が回復しており、それに伴い農家の購買意欲も回復し、高まってきています。スライド右側のグラフでは米価の推移を示しています。生産者価格については、2025年産の新米の概算金が各地で高値を継続している状況です。

国内市場の動向

主食用米の作付面積を棒グラフで、主食用米の生産量を折れ線グラフで表しています。2025年の主食用米の作付面積は全国的に増加し、約137万ヘクタールとなる見込みです。また、生産量は前年比で69万トン増の748万トンになると予測されています。

2026年は、民間の在庫量を加えた需要に応じた生産により、711万トンとなる見通しです。一方、政府は別途、備蓄用米として21万トン程度を買い取る予定です。この数字は、この表の外側にあると理解していただいてよいかと思います。

市場の動向・当社の状況(日本・欧州)

国内市場の動向については、当社農機製品の1月から9月の売上高は、前年同期比で22パーセント増となり、農家の購買意欲の高まりを捉えた結果、大幅な増収となりました。また、契約レベルは売上以上に伸長し、受注残が拡大している状況です。

今後は好調な需要に応じた商品提供を推進するとともに、農政の後押しを受けながら、「大型・先端・畑作・環境」といった成長市場を中心に推進を強化します。

さらに、先ほどお話しした、欧州で高い評価をいただいている乗用草刈機「モーア」の国内展開も進めていきます。

欧州については、一部地域での補助金の減少や気候の影響により、市場は軟調傾向にありました。しかし、当社のブランド力を活かしたフランスでの堅調な販売や、イギリスのPTC社の連結化効果、加えて為替の円安影響により、ドイツにおける仕入商品の特需剥落をカバーすることができました。

今後は、ISEKIドイツ社の強みである冬作業用にカスタマイズした製品の北欧展開や、ISEKIフランス社とPTC社を通じた中東地域への草刈商品の展開を進めていきます。

市場の動向・当社の状況(北米・アジア)

次に、北米についてです。当社が主に供給している40馬力以下のコンパクトトラクタの市場動向として、足元の1月から9月では前年同期比で5パーセント減となっています。

現地小売販売台数は前年比15パーセント減少しています。旧型在庫の一掃や新商品の投入を通じて、売上の回復を図っていきます。

アジアについては、韓国市場では、現地在庫調整が完了したことにより出荷台数が増加しました。今後は、現地の販売代理店が扱う製品と当社製品との販売シナジーを活用し、販売拡大を狙います。

タイ市場では厳しい環境が続いています。現地のIST社ではトラクタの販促キャンペーンを展開し、販売台数を増加させました。

第4四半期からは、新たな地域展開としてフィリピンへの出荷も計画しています。インドネシアでは、農業機械化政策により政府や地方入札が増加しており、受注獲得や拡販に向けた推進を強化しています。

2025年12月期 連結業績予想

連結の通期業績予想についてです。国内の米価回復、上昇に伴う農家の購買意欲の高まりを背景に、第3四半期累計で大幅な増収となりました。

この結果、売上高、利益ともに前回8月の予想を上回る見込みとなったため、今回、再度の上方修正を行いました。

売上高は、国内が前回予想比プラス55億円の1,255億円、海外は修正せず合計で1,810億円と、連結化後の過去最高の売上を見込んでいます。

営業利益は前回予想比プラス5億円の40億円、親会社株主に帰属する当期純利益も前回予想比プラス5億円の23億円を見込んでいます。また、配当予想は1株あたり10円増配の40円としています。

2025年12月期 連結業績予想

営業利益の増減要因についてご説明します。前年比の増減要因は、グラフの左から2つ目の増収による売上総利益の増加がプラス16億円、販売価格改定効果がプラス20億円となっています。

一方で、原材料価格高騰の影響がマイナス16億円と見込まれており、ネットで前年同期比20億円の増益、合計40億円を見込んでいます。

なお、スライド右上に記載している「プロジェクトZ」の施策の効果は、計画どおり発現されると見込んでいます。

TOPICS:新商品発表会のご案内

トピックスを2つご紹介します。

1つ目は、来月開催する新商品発表会です。農業の生産性向上に向けた取り組みについて、当社のつくばみらい事業所でご紹介します。

なお、当日はZOOMによる同時配信を行いますが、実演や展示は会場限定となりますので、ぜひお越しいただければ幸いです。あらためてご案内をお送りしますので、ぜひご参加いただきますようお願いします。

TOPICS:IR活動の強化

2つ目は、現在進めているIR活動の強化です。

米価回復、上昇による業績への期待や、実際に業績が好調であったことを背景に、機関投資家のみなさまとの面談回数が着実に増加しています。今後は、みなさまとの面談における質問傾向などを踏まえながら、開示内容の改善を図っていきます。

また、個人投資家のみなさまとの対話の機会も積極的に拡充しています。各イベント説明会には、想定を上回る多くの方々にご参加いただいています。当社のアピールができたのではないかと考えています。

いただいたコメントやアンケート結果を基に、引き続きIR活動に活かしていきたいと考えています。

以上で説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:株価下落の要因と今後の株価水準について

司会者:「御社の株価は、上方修正および増配発表にもかかわらず、大きく下落しました。何が要因だと分析されていますでしょうか? また、今後の成長性、収益力などを踏まえて、あるべき株価水準はいくらが適正と考えていらっしゃいますか? 加えて、その実現に向けて、どのようなエクイティストーリーをお考えでしょうか?」というご質問です。

冨安:当社が15時に発表した後、市場が閉まるまでの30分間で株価が下落した件については、なぜ下落したのか、むしろみなさまにおうかがいしたいです。

期待値がもっと高かったのか、あるいは現在の株取引において俗に言うアルゴリズムによるものなのか、私どもなりに分析してみたいと考えています。

引き続き、そのような点についてもご意見をいただければありがたく思います。

今後の成長性や収益力などを踏まえた場合の株価水準については、私から具体的な株価はいくらであるべきかをお伝えするのは難しいところではあります。しかし、PBR1倍というのは当然の水準と考えています。

私は常々、当社の現在の株価水準は過小評価されていると考えています。一方で、昨今の株価の回復は、ある意味急速に進みました。

先ほどもお話ししたように、反動によるものかもしれないと感じつつも、この急速な回復については、私どもの実力や足元の業績回復の評価も含まれるのではないかと思っています。

もし、株価の回復が、米の価格上昇によるものであったとするならば、当社の努力や実績による成果としてしっかりとご評価いただき、回復に至らしめたいと考えています。

ご回答にはなっていない部分もあるかと思いますが、着実に現在進行中の「プロジェクトZ」を完遂し、株価の回復をしっかりと図っていきたいと考えています。

然るべきかたちで経営を進めることで、自己資本比率も向上し、PBR1倍の株価水準が上昇する可能性もあると思います。そのような目標をターゲットとして努力していきます。

質疑応答:生産状況と第4四半期の売上見通しについて

司会者:「生産が追いついていないということは、足元でフル生産ということだと思います。それでも、第4四半期のみで比較した時の売上高は、前年同期比で減少するのでしょうか?」というご質問です。

冨安:「フル生産か」というご質問に対しては、ある意味ではフル生産です。ご案内のとおり、熊本でのコンバイン生産は2025年12月で終了します。それを踏まえ、一部製品の作りだめも進めています。

コンバインの生産は、来年、熊本から松山へ移ります。ただし、コンバイン生産の立ち上がりには時差が生じるため、その点を踏まえ、作りだめを進めているところです。

また、人員が十分に足りていない状況もあります。設備だけでなく人員の確保も含め、現状の目いっぱいの生産を行っているところです。

第4四半期は減少するのかという点については、国内の売上比率がまだ7割弱を占めており、稲刈りが終わると、やはり売上は自然に細る傾向にあります。この点を踏まえた上での状況です。

また、契約していながら納品が完了していない契約残が残っています。これらの解消も含め、第4四半期もできる限りの生産を進め、売上につなげていく予定ですが、黒字化までは難しい部分があると考えています。

契約残があること自体は強みと捉えていますので、生産を進め、確実に売上につなげていきたいと考えています。

質疑応答:需要対応状況について

司会者:「需要に応えきれていないとのご説明をいただきました。引き渡しまでの期間はどれぐらいなのでしょうか? また、それでも第4四半期は売上が立たないということなのでしょうか?」というご質問です。

冨安:国内の販売会社がどのような状況にあるのかについては、国内営業を担当している石本よりご説明します。だいたい何ヶ月なのかといった点が1つのポイントになるかもしれません。

石本徳秋氏:国内営業本部長の石本です。営業部門では、まずお客さまの需要に合ったものを推進し、届けることを進めています。そのため、まず在庫を販売する形で対応を進めています。

実際に生産待ちの期間は、物によって異なりますが、3ヶ月や半年といったケースも考えられます。その間、お客さまにお待ちいただくかたちで営業展開を行っています。

先ほど冨安がお話ししたとおり、受注残が現在かなり膨らんでいます。こちらについても適時お客さまに納品しながら対応を進めています。

質疑応答:新米の需要動向と農家の設備投資意欲について

司会者:「新米の売れ行きが不調であり、米価が下落するのではないかという新聞記事を見かけます。農家の設備投資意欲はどのようなイメージをお持ちでしょうか?」というご質問です。

冨安:新聞記事の内容は認識していますが、米価が下落するという実感は私にはありません。今年の新米については、JAをはじめとして、昨年よりも高い値段で買い取りが進められていると思います。

そのため、2025年産米の価格が2024年産米に比べて高くなっているため、その価格を見た消費者がどちらを選ぶのか、選択を迫られる状況ではあると考えています。

ただし、新米は当然おいしいので、それを求める引き合いもあり、新米の需要低迷について、私自身は心配していません。したがって引き続き、農家の需要意欲も好調であると考えています。

補足しますと、2025年7月に国内販売会社で製品の価格改定を実施しています。

通常、価格改定を行うと、その後数ヶ月間は非常に厳しい状況が続きます。多くの方が価格改定前に駆け込みで購入されるケースが多いためです。しかし今回は、価格改定の影響を超えて、購買意欲の回復が大きくなっている状況です。

さらに、JAやお米の仲買業者が農家から買い取る価格も昨年以上に上昇しています。

私どもとしては、このような状況から農家の設備投資意欲は引き続き好調であると捉えています。

質疑応答:来期における「プロジェクトZ」の効果について

司会者:「『プロジェクトZ』の効果は、来期いくらぐらい顕在化しそうでしょうか?」というご質問です。

冨安:話が来期のこととなるため、具体的な数字については差し控えます。この「プロジェクトZ」における生産最適化は、投資が中心となります。合計で380億円の生産にかかわる投資を行う予定です。

この効果はむしろ遅れて出てくるもので、当初は効率化の効果よりも償却費の負担が大きくなるため、それほど効果は大きくないと考えています。

大きな効果が見込まれるのは、開発最適化や国内営業深化の部分だと考えています。

開発最適化については、設計をゼロから見直す取り組みを進めています。2025年度については、まだ小幅ではあるものの、来期には間違いなくレベルアップすると考えています。

また、国内営業深化については、販売会社を一本化したことにより効率化を図りました。例えば、人員面だけでなく、物流や在庫においてもさらなる効果が期待されます。在庫については、今期も大きく削減されていますが、さらに効率化を進めていきます。

そして、大規模企画室をテコとした「大型」「先端」機械の販売を中心にさらにレベルアップを図っていく計画です。これは一部成長戦略にも関連しています。

今期は「プロジェクトZ」の効果がプラス15億円となり、一時費用が8億円発生する見込みです。この一時費用の内訳は、販売会社ISEKI Japanの合併費用、松山から熊本への製造所の生産移管に関連する各種費用となります。

これらの費用は来期には発生しなくなる見込みです。この点を含め、スライドのグラフで示しています。「プロジェクトZ」の効果については、しっかりと実現できると見ています。

来期の業績予想については来年2月に発表しますので、その際にご説明します。

質疑応答:2026年に期待される業績牽引役と懸念材料について

司会者:「2026年に期待される業績牽引役を2点から3点、また考えられる懸念材料について教えていただけますでしょうか?」というご質問です。

冨安:国内で期待しているのは、成長戦略として掲げている「大型・先端・畑作・環境」です。ISEKI Japan内に設立された大規模企画室が、国内全体を俯瞰して見る役割を担っています。

また、さまざまな施策展開も進み始めており、これらの効果はしっかりと期待できると思っています。

BtoBについては、大型機械を法人向けに提供する取り組みがあります。また、ヨーロッパで定評のある乗用草刈機を国内展開していく予定です。具体的な数字としてはまだ大きなものにはならないと思いますが、確実に手応えを感じています。

また、「アイガモロボ」などのさまざまな機械や、今期進化を見せたドローンなど、「大型・先端・畑作・環境」の戦略に基づいた商品について期待できると考えています。

海外については、欧州では昨年に特需があった一部商品が剥落した影響を受け、増収効果が大きく見えていない状況です。しかし、フランス、ドイツ、イギリスの連結3社による協調を通じて、さらに地域や商品の裾野を広げられるのではないかと期待しています。

懸念材料としては、国内については、現在の勢いを見ると、順調なスタートを切れるのではないかと考えています。

一方で、北米については、いくつかの課題が見えてくると考えています。具体的には、今年はトランプ関税の影響はほとんど見られないとご説明していましたが、来年度には多少の影響が出てくるのではないかと見ています。

このような懸念材料をしっかりと解消し、対応していく方針です。

質疑応答:製品の値上げ動向と今後の見通しについて

司会者:「今後の製品の値上げはどのようにお考えでしょうか?」というご質問です。

冨安:今後の製品の値上げについては、現時点では具体的な回答はご用意していません。先ほどお伝えしたように、国内では今年7月に価格改定を行いました。この具体的な効果がどの程度出ているかについては、現時点ではご説明が難しい部分があります。

ただし、2022年から2024年にかけて、3パーセント、5パーセント、3パーセント、合計で10パーセントを超える価格改定を進めてきました。現在、効果が出ているのは、この3年間の改定分だと考えています。

今年の7月には国内で7パーセントと、これまでよりも大幅な価格改定を行いました。この効果は、少しずつ現れ始めていると思います。

6月までに受注した部分については旧価格での販売が中心となっているため、これらを消化した上でようやく効果が出てくることになります。私個人としては、この収益効果が来期に大きく現れるのではないかと期待しています。

先ほどのご質問で来期の話題が挙がりましたが、こちらも来期の期待要因の1つになるかと思います。

今後の製品値上げについては、冒頭でお話ししたように、現時点では白紙の状況です。一方で、当然ながら人件費、つまり賃金を引き上げて物価上昇に対応するのが、現在の政府や世の中の流れとなっています。

例えば、今期の状況についても、価格改定の効果がある一方で、原材料価格の高騰による収益マイナスが発生しています。スライドをご覧いただくと、価格改定の効果が13億円であるのに対し、原材料仕入れ価格の高騰による影響はマイナス10億円となっています。

鉄鋼や銅などの市況品価格はやや落ち着きつつあると考えていますが、購買先や外注先といった取引先における人件費の上昇に伴い、当社における仕入れ価格も依然として上昇を続けています。

このような点も含め、状況を見た上で判断させていただくことが、今後の製品値上げにおける考え方になるかと思います。

繰り返しになりますが、今年行った製品価格の改定分については、今後期待できると考えています。

また、今後の取引先の人件費上昇に伴い、当社の仕入れ価格にも影響が出てくるとも考えており、そのような状況を見極めながら判断します。当然ながら、市場の影響やマーケットの動向も加味して考えざるを得ないと考えています。

海外についても基本的には同様だと考えています。ただし、地域によって状況は大きく異なります。欧州では比較的価格を上げやすい環境があり、当社にとってのプラス要因となっています。

質疑応答:2025年12月期下期の売上構成について

司会者:「値上げは来期から寄与するということですが、2025年12月期下期は6月までの受注分の消化が売上高のほとんどを占めるということでしょうか?」というご質問です。

冨安:今期の価格改定による影響が、今期の売上に反映されている部分はあると考えています。

2025年6月末時点で、私どもがお客さまに引き渡しできていない、社内で「未納残」と呼んでいる分が、おおよそ2ヶ月分ありました。そのため、残りの半年分については一定のカバレッジがある状況です。

これらに順次対応していくことになるため、第4四半期からその影響が出てくると考えています。1年間を通した投影額という点では、来年度のほうが多くなる、というのが先ほどの回答の趣旨です。

質疑応答:第4四半期の営業利益に関する見通しについて

司会者:「第4四半期から値上げが寄与するとのことですが、第4四半期の利益見通しはなぜ赤字拡大するのでしょうか?」というご質問です。

冨安:当社は国内向けが主流であるため、田植機が売れ始める前やコンバインの販売が終了した後、具体的には1月、2月および11月、12月は売上が上がりにくい傾向にありました。その結果、当社では12月決算において、第1四半期から赤字となることがよく見られました。

しかし、最近の傾向として、ここ数年で海外比率が上がり、欧州では第1四半期から売上が計上されるため、第1四半期から営業黒字を出すことができるようになりました。ただし、第4四半期については依然として状況は変わっていません。

このような前提のもと、今年についてはどうかという点については、先ほどお話しした欧州についても国内と同じく、第4四半期は売上が大きく落ちる傾向にあります。

加えて、国内についても前年比でマイナスとなる見込みです。原材料高騰の影響もあり、スライドに記載のとおり前年の第4四半期のマイナス11億円をさらに下回る可能性があります。

しかし、これは最低ラインだと捉えており、このマイナス幅を少しでも圧縮させたいと考えています。国内需要は引き続き好調を維持しており、この幅の圧縮に向けて全力で取り組んでいきます。

冨安氏からのご挨拶

冨安:本日はお忙しい中ご参加いただいただけでなく、さまざまなご意見やご質問を頂戴し、誠にありがとうございます。

「プロジェクトZ」の大きなテーマは、体質改善です。先ほどお話しした、四半期ごとの収益の方向性についても、いろいろと修正が必要ではないかと考えています。

現在は、海外市場を伸ばすことで、第1四半期に見られた赤字体質から脱却しつつある状況だと感じています。引き続き、売上の構成比率について工夫を重ね、変更していくことも検討していきたいと考えています。

また、大きな話として「生産最適化」に取り組んでいます。国内では、松山にトラクタ、田植機、コンバインの生産を集中させる計画です。

従来は、新潟で田植機、熊本でコンバインをそれぞれ単独で生産していました。そのため、それぞれの機械の需要期以外の期間にも生産を維持する必要があり、これまでは全体的な在庫を増やしていました。このような課題についても、体質改善の中で修正していく考えです。

このような体質改善を通じて、四半期ごとの山谷もある程度埋めていけるのではないかと考えています。

今期は米の価格など市場環境の追い風もあり、今回の上方修正が可能となるまでになりましたが、私どもとしては、なによりも「プロジェクトZ」をしっかりとやり遂げることが重要であると考えています。

ぜひ、みなさまにこの取り組みをご評価いただけるよう、引き続きしっかりと努力していきます。引き続きのご支援を何卒よろしくお願いします。本日は誠にありがとうございました。

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