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スターゼン株式会社8043

東証プライム

卸売業

1. 2026年3月期 中間期決算概要

森上倫輔氏(以下、森上):スターゼン株式会社執行役員財務経理本部の森上です。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。早速ですが、2026年3月期中間期決算の概要をご説明します。

この中間期は、為替相場の乱高下や食肉価格の高騰により、コストが増加しました。また、物価高や市況の不透明感から、比較的安価な商品に需要が移行しました。このため、食肉の消費行動は全体として力強さを欠く、厳しい事業環境となりました。

決算サマリー

決算サマリーです。スライドのとおり、売上高は2,200億円で前期比3.1パーセントの増収、営業利益は28億円で前期比10.8パーセントの減益、経常利益は39億円で前期比8.8パーセントの増益、親会社株主に帰属する中間純利益は27億円で前期比11.6パーセントの増益となりました。

業績のポイントとして、売上面では、仕入コストの上昇分を価格転嫁に努めたこと、和牛を中心とした輸出の好調、加工食品が好調に伸びたことにより増収となりました。

利益面では、和牛の輸出やハンバーグ、一次スライス商品をはじめとした高付加価値商品の販売が堅調で利益に貢献しました。しかし、人件費や運賃などのコスト増加を吸収するには至らず、営業利益は前期比で減益となりました。一方、持分法適用会社の業績が好調であり、経常利益以下では前期比で増益となっています。

次に、2026年3月期の通期業績予想についてです。前期末の決算説明会でもお話ししたとおり、売上高は増収、営業利益・経常利益はともに増益を見込んでいます。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上した特別利益が今期はないことから、80億円の着地となる予定です。詳細は後ほどご説明します。

売上高(品目別)

中間期決算の数値を詳しく見ていきます。売上高は2,200億円で、前期比65億円の増収となりました。

スライドは品目別の売上状況を記載しています。国産食肉は前期比で52億円の増収となりました。国産牛肉の取扱重量は前期比でわずかに減少しましたが、高級部位を中心とした輸出が好調に推移したことで売上高が増加しました。また、国産豚肉は消費者の節約志向を背景に取扱重量が増加し、売上高も増加しました。

輸入食肉の売上高は前期比で400万円の増収となりました。各畜種とも、輸入コストの上昇により、小売り向けをはじめとして販売が苦戦しました。一方、輸入豚肉は比較的安価で需要が堅調だったことに加え、輸入食肉全般の相場高により販売単価が上昇したため、売上高が増加しました。その結果、輸入食肉全体では前期と同水準の売上高となりました。

加工食品は前期比で19億円の増収となりました。ハンバーグやスライス商品、外食向け製品の売上が堅調に伸びたことにより、前期比5.1パーセントの増収となりました。

ハム・ソーセージは前期比で5億円の減収となりました。価格改定や商品構成の見直しを継続して行った結果、取扱量が減少したことが主な要因です。

業績サマリー(前期比較PL)

各段階利益の状況をご説明します。売上総利益は202億円となりました。主な要因として国産豚肉及び加工食品の販売が好調であったことから、前期比で10億円の増益となりました。

営業利益は28億円となりました。人件費や物流費などの事業コストの上昇があり、コストの増加が売上総利益の増加を上回ったことにより、前期比で3億円の減益となりました。

経常利益は39億円となりました。持分法投資利益をはじめとする営業外収益が前期比6億円増加したことにより、前期比で3億円の増益となりました。

最終の親会社株主に帰属する中間純利益は前期比2億円増の27億円となりました。

損益増減概要

スライドは、損益の増減概要を示しています。国産豚肉の取扱高が増加したことや加工食品の販売が好調に推移したことに加え、和牛の輸出が好調であったことから、当期の売上総利益は、前期の192億円に対して10億円増加しました。

販管費は人件費や物流費を中心に13億円増加しました。また、営業外損益は持分法適用会社からの投資利益が6億円増加し、経常利益の押し上げ要因となっています。特別損益については、固定資産売却益の減少により1億円減少しました。結果として、今期の中間純利益は前期比2億円増加の27億円となりました。

貸借対照表

財務状況をご説明します。連結貸借対照表について、中間期末の総資産は1,819億円で、前期末比100億円増加しました。

主な要因は、たな卸資産及び前渡金、ならびに固定資産の増加です。たな卸資産及び前渡金は前期末比70億円増加しましたが、これは年末向け製品の原料を確保したことや、輸入相場の上昇による単価の上昇が主な要因です。なお、在庫の大部分はすでに売り抜けているため、相場変動の影響を受ける在庫は限定的です。一方、固定資産については、先般発表した豪州の牛肥育農場関連企業の子会社化が主な要因となり、前期末比62億円増加しています。

負債合計は930億円で前期末比98億円の増加、純資産合計は888億円で前期末比1億円の増加となっています。

スライド下段の表に記載しているとおり、中間期末の有利子負債は503億円で、前期末比80億円増加しました。ただし、D/Eレシオは0.56倍、自己資本比率は48.9パーセントであり、財務健全性は維持できていると考えています。

キャッシュフロー

連結キャッシュフローについてです。数値はスライドに記載のとおりです。営業キャッシュフローは19億円のキャッシュインとなりました。これは主に運転資金のコントロールを行った結果です。

投資活動によるキャッシュフローは58億円のキャッシュアウトとなりました。これは前段で述べた豪州企業子会社の影響によるものです。

財務活動によるキャッシュフローは43億円のキャッシュインとなりました。

その結果、現金及び現金同等物の残高は前期末より8億円増加し、164億円となりました。

以上、2026年3月期中間期決算の概要についてご説明しました。

2. 通期業績・配当予想

通期の業績及び配当予想についてです。

通期業績予想

2026年3月期の業績予想は、売上高4,500億円、営業利益94億円、経常利益110億円、親会社株主に帰属する当期純利益80億円を見込んでいます。この予想のポイントとしては、取得した豪州農場ののれん償却、人件費のベースアップ分、物流費の上昇などによる販管費の増加をすでに織り込んでいます。

しかし、加工食品をはじめとする高付加価値商品の拡販や適正価格での販売徹底によって、売上総利益の増加を見込んでいます。これによりコスト増を吸収した上で、営業利益、経常利益ともに前期を上回る見通しです。

親会社株主に帰属する当期純利益については前期を下回る計画となっていますが、前期に計上した固定資産売却による特別利益の反動が要因です。

配当予想

2026年3月期の配当予想についてです。当社はDOE3.0パーセントを目標に掲げています。しかし、成長投資とのバランスや人件費・物流費の上昇といった経営環境の変化を踏まえ、慎重に検討した結果、今期の配当は1株あたり43円、株式分割前で換算すると129円となり、DOEは2.7パーセントを予想しています。

3. 長期ビジョン及び中期経営計画2030

横田和彦氏(以下、横田):代表取締役社長の横田です。本日はお忙しい中、当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

私からは、長期ビジョン及び中期経営計画の内容についてご説明します。

「中期経営計画2025」の振り返り

まず、現行の「中期経営計画2025」の振り返りです。スライドにある「新規事業への挑戦」「国内事業改革」「サステナビリティ経営と経営基盤強化」の3つの方針のもとに取り組みを進め、おおむね順調に進行しています。

「新規事業への挑戦」としては、豪州のフィードロットやシンガポールの販売会社の買収を通じて、海外マーケット拡大の足場を築いています。

「国内事業改革」としては、東西の物流・販売拠点の整備や商品のリブランディングによる付加価値向上を進めています。

「サステナビリティ経営と経営基盤強化」としては、GHG削減をはじめとするサステナビリティ施策やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を行っています。

その結果として、2026年3月期には売上高4,500億円、経常利益110億円、EBITDA126億円、ROE8.8パーセントと、策定時のすべての目標を達成できる見通しです。

スターゼンの強み

スライドは、当社のサプライチェーンの概要です。当社最大の強みは、生産者と顧客を直接つなぐサプライチェーンを自社で構築している点です。和牛などの希少資源を含む安定した調達網、高い衛生水準を誇ると畜場併設工場と肉のプロ集団による加工、お客さまの要望に応じることで磨かれた製造技術、そして全国50ヶ所の営業拠点と自社コールドチェーンによる一貫した営業が一体となり、他社には真似できない商品力とサービスを実現しています。

人手不足が深刻化する中で、当社の持つ商品力と迅速な物流網の強みが、より活きてくると考えています。

長期ビジョン(スターゼンのありたい姿)

長期ビジョンについてです。今後、当社の強みであるサプライチェーンをより強固なものとし、国内外の成長市場へ挑戦するため、10年後のありたい姿として「世界中のお客様ニーズに応えるサプライチェーンの実現」という長期ビジョンを掲げました。これは「食の感動体験を創造することで世界中の人々と食をつなぎ続ける」という経営理念を具体化したものです。

顧客のニーズをサプライチェーンの川上にフィードバックし、商品やサービスを進化させるとともに、生産農家のこだわりや職人の持つ匠の技術とノウハウなどの価値をかたちにして届けるサプライチェーンの構築を目指していきます。

そして、その実現に向けて新たに策定したのが「中期経営計画2030」です。

中期経営計画2030 概要

スライドは「中期経営計画2030」の全体像です。テーマは「強みのさらなる進化とグローバル市場への挑戦」です。「市場シェア拡大へのアプローチ」「事業基盤の強靭化」「持続成長を支えるコーポレート機能強化」という3つの基本方針のもと、顧客視点でサプライチェーンを磨き、国内で培った強みを活かして海外に挑戦します。

中期経営計画2030 位置付け

前回の「中期経営計画2022」では「相場に左右されやすい収益体質からの脱却」を図り、現行の「中期経営計画2025」では「高付加価値事業強化による収益構造の再構築」に取り組んできました。

新しい「中期経営計画2030」はこれらに続く成長フェーズとなり、期間を従来の3年から5年に延長しています。これは、成長投資の成果をしっかり収益に結びつけるまでの期間を見越し、より中長期の視点で競争力を高めるためです。この5年間で事業領域を広げ、当社の強みをさらに進化させることで、グローバル市場での存在感を高めていきます。

中期経営計画2030 経営目標

スライドには経営目標を示しています。投資計画は、5年間で総額700億円を予定しています。内訳は、国内市場で240億円、海外市場で260億円、DX・業務効率化に60億円、維持・更新投資に140億円となります。ROICを6.0パーセント以上に設定し、資本効率を意識して実行します。

また、2031年3月期には、売上高5,500億円、経常利益160億円、EBITDA210億円、ROIC6.0パーセント以上、ROE10.0パーセント以上の達成を目指します。特に、海外事業の経常利益率を2026年3月期見通しの5パーセントから15パーセントへ引き上げ、収益貢献度を高める計画です。

中期経営計画2030 利益計画

全体の利益計画では、経常利益を2026年3月期の110億円から160億円へと50億円増加させる計画です。その内訳として、国内市場で25億円、海外市場で19億円の増加を見込んでいます。これに加えて、既存領域での営業体制の最適化や商品提案力の強化により、6億円を積み増す計画です。

国内市場では、製造・加工機能の強化による商品高付加価値化や、協業・提携を通じた販路拡大を推進します。また、DX推進による業務・物流効率化を通じて利益のさらなる押し上げを図ります。

海外市場では、重点市場に向けた販売機能の強化や、国産・豪州産牛肉の供給力強化によって利益成長を実現します。

これらによって、経常利益160億円の達成を目指します。

グローバルサプライチェーンの構築(海外市場)

個別戦略についてご説明します。海外市場では、各国の食文化や食習慣に合わせて当社の強みを磨き、成長市場に挑戦する方針です。事業環境としては、アジアや北米で和食や和牛の人気が高まり、食肉需要が増加していく中で、日系の外食や小売企業の海外進出が加速しています。これは当社にとって追い風となっています。

当社は、日本産和牛や豪州Wagyuの安定した供給力、食肉の提案力と高い商品化技術に加え、三井物産との連携による海外ネットワークを強みとし、次の3つの取り組みを推進します。

第1に、日本産和牛及び豪州Wagyuなどの輸出能力拡大です。日本産和牛については、先般資本業務提携を行った鹿児島の水迫畜産グループとの連携強化や加工工場の拡充を進めます。一方、豪州Wagyuについては、取得した豪州フィードロットの生産能力と海外事業をともに強化し、輸出拡大を図ります。

第2に、東南アジアにおける食肉加工販売の拡大です。今年完全子会社化したアディレクトシンガポールを起点に、現地のニーズに応じてカット・スライス加工した商品を提供し、販路を広げていきます。

第3に、海外進出する日系の取引先との取り組み強化です。当社が持つ国内約5,000社の顧客基盤と、三井物産の海外ネットワークを活用し、取引先とともに新しい市場への挑戦を進めていきます。

これらの取り組みにより、現地の多様なニーズに応えるグローバルサプライチェーンを構築し、海外市場での経常利益比率15パーセントという目標の達成を目指していきます。

市場動向を捉えた販売体制最適化(国内市場)

国内市場では少子高齢化、ライフスタイルの変化、生活防衛意識の高まり、消費の二極化といった環境変化が進んでいます。このような環境変化に対応するため、当社は調達、加工・製造、営業機能の強みを最大限に活かし、商品力と提案力をさらに磨いていきます。具体的には、製造拠点や生産ラインを随時見直して生産性を高め、加工食品の品ぞろえと商品力の向上を図ります。

また、市場動向に応じた営業拠点の効率的な再配置や、地方の有力企業との協業を進めることで、国内全体に漏れなく対応できる体制を構築し、国内市場シェア拡大と収益向上を目指します。

グループ内物流の骨太な改革

スライドは、2つ目の柱である事業基盤の強靭化についてです。サプライチェーンの要でもある物流改革においては、物流コストの上昇や環境負荷の低減といった課題に対応するため、「物流網の整備」「物流ルールの最適化」「物流手段の改善」という3本柱で改革を進めます。拠点配置やオペレーションの見直し、パレット輸送やモーダルシフトの推進、IT活用によるデータ分析を通じて業務の効率化を図り、持続可能な物流運営の実現を目指します。

スターゼン版DX(Zeusプロジェクト)の進化

DXでは、業務が複雑でシステム化が困難とされる食肉事業において、自社のICT部隊がオリジナルの基幹システムを開発し、部門ごとに順次稼働させています。2029年3月期には、主要品目の受注業務のほぼすべてでシステム運用を開始し、AIなどを活用したデータ連動による業務の効率化を図り、年間で約5億円の工数削減を目指します。

さらに、データの可視化を通じてさまざまな分析を行い、グループ全体での収益性の改善を図ります。

経営戦略に連動した未来志向の人材戦略

これまでお話しした戦略を支えるのは、言うまでもなく人材です。経営戦略に連動する未来志向の人材戦略を進め、人的資本の最大化に取り組みます。具体的には、人材ポートフォリオの最適化を目指して、適所適材の人材配置を実現するタレントマネジメント、サプライチェーン全体を理解し知見を活かす人材の育成、ダイバーシティ採用のさらなる拡充を推進します。

また、キャリア自律支援や評価者のマネジメントスキル向上を図りつつ、自律的に運営できる組織づくりを進めます。さらに、評価・報酬体系の見直しや若年層の早期管理職登用を行い、従業員エンゲージメントの向上を目指します。

サステナブルな社会の実現への貢献

サステナビリティの取り組みについてです。「中期経営計画2030」では、特にGHG削減、人権、アニマルウェルフェアを重点課題に設定しています。再生可能エネルギーの活用や物流効率化による温室効果ガス排出量の削減、サプライチェーン全体における人権意識の向上などを通じて、社会課題の解決に貢献し、企業価値の向上を目指していきます。

キャッシュアロケーション計画

財務戦略についてです。キャッシュアロケーション計画では、営業キャッシュフローの拡大を図り、5年間で700億円以上を創出します。

外部からの資金調達も積極的に活用し、新中期経営計画の最大のポイントである成長投資を支えます。また、株主還元として200億円以上を予定しています。先般公表したDOE目標3.0パーセントの早期達成と一層の拡充を図るとともに、機動的な自己株式の取得も検討していきます。

バランスシートマネジメント方針

バランスシートについては、成長投資の実行に加え、DXを活用した在庫管理や非効率資産の圧縮によって資産を抑制しながら、自己資本比率を40パーセント程度にコントロールして財務レバレッジを高めます。

これらの施策を着実に実行し、持続的なROE向上と企業価値向上に努めていきます。

私からの説明は以上です。今後ともスターゼンの挑戦にご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。ありがとうございました。

質疑応答:中計の営業キャッシュフロー計画について

司会者:「『中期経営計画2030』の営業キャッシュフロー計画について

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