CONTENTS

島津敦好氏(以下、島津):株式会社カウリス代表取締役の島津です。本日は2025年12月期第2四半期決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。管理担当執行役員の上田と2名で進めます。よろしくお願いします。

本日の流れは、スライドに記載のとおりです。

事業内容 | 事業内容と企業理念

当社はマネー・ローンダリング対策およびサイバーセキュリティ対策事業を展開しています。マネー・ローンダリング対策事業では、資金洗浄に関与している可能性のある口座がお客さまの中にないかをチェックし、凍結に至る場合の支援も行っています。

一方、サイバーセキュリティ事業では、今年、証券口座の乗っ取りが大きな問題となりました。不正に使用されている可能性のある口座をリアルタイムにチェックし、リスクが高い場合にはログインを制限することで成りすましを防止しています。

当社は、「情報インフラを共創し、世界をより良くする」をミッションとして掲げています。マネー・ローンダリング対策において、自社に入ってきたキャッシュが資金洗浄によるものかどうか、自社の単体データだけでは見極めるのが非常に困難です。

そこで、不正利用者の端末情報や個人情報を流通させることにより、自社に流入したキャッシュが危険なものであると相互に監視できる仕組みを構築し、ビジネスとして展開しています。

事業内容 | Fraud Alertの特徴 不正利用者情報の共有

セキュリティ会社やシステムインテグレーター、AI企業は、委託契約のため、通常は発注者と受託者の間で、発注者のデータを他の会社に提供してはいけないことになっています。

一方で、当社は、不正利用者の情報を顧客間で共有することを前提とし、第三者提供を行うとして契約を締結しています。この点が他社と異なる当社の最大の強みです。不正利用者のデータを頂戴し、統計解析を行い、AIを活用してラーニングしていくプロセスを繰り返しています。

なお、このビジネスは、法的論点で警察庁および個人情報保護委員会において法的に適法であると回答を得たうえで行われていることが特徴です。

Q2業績 | エグゼクティブサマリー

上田七生美氏:管理担当執行役員の上田です。よろしくお願いします。第2四半期の業績についてご説明します。

第2四半期のエグゼクティブサマリーです。第2四半期は、累計で2025年1月から6月となります。売上高は6億7,055万円、営業利益は2億2,231万円、当期純利益は1億4,562万円となりました。

本日最もお伝えしたいのが、法人口座への展開です。スライド右上に記載のとおり、メガバンクにおいて法人口座へのリアルタイムモニタリングが導入されたことは、当社にとって大きなトピックとなっています。

後ほど戦略面でも触れますが、当社の成長戦略は、メイン顧客である金融機関における当社サービスの利用シーンである設置箇所を増やしていくことを重視しています。

口座の種類は大きく分けて個人口座と法人口座があります。これまで犯罪者による資金洗浄に悪用されるのは主に個人口座でした。そのため、金融機関では個人口座を中心とした金融犯罪対策が行われてきました。

しかし、昨年5月に摘発されたリバトングループが4,000もの法人口座を悪用し、総額700億円もの資金洗浄を行っていたという事案を受け、法人口座への対策が急務となっています。この法人口座へのチャネル展開は、当社にとって将来の収益拡大が見込めるオーガニック成長の機会と位置づけています。

2025年については、将来の収益増に備えた人材育成のため、当初計画では利益が減少する見込みでした。採用計画は若干遅れているものの、特に必要とされるAMLとITに精通した人材の獲得には成功しています。すでにご入社いただき、戦力化できる見通しが立っています。

新規獲得については1社を獲得しており、売上の計上時期は来期となる予定です。また、新規事業については、まもなく市場に出荷できる見通しです。

Q2業績 | 財務ハイライト

財務ハイライトはスライドのとおりです。特徴として、ストック型収益の割合は90パーセントを超えており、非常に高くなっています。また、営業利益率も30パーセントを超える高い水準を維持しています。

Q2業績 | 主要KPI・取組ハイライト

主要KPIについてご説明します。スライド左側の4つをKPIとして設定しています。MRR、契約社数、ARPUは、売上拡大のためのKPIとして設定しています。契約残高は、業績を適切に把握するための指標として設定しています。

各KPIについてご説明します。結果の数字についてはスライドのとおりです。

主な要因として、MRRは前期末比で4.4パーセント増加し、1億550万円から1億1,020万円になりました。4月に集中した契約更新による、口座数およびトランザクション数の増加(当社の定義でアップセル)が寄与しています。

契約社数は47社となりました。累計では2社増加しましたが、解約が2社発生しました。解約理由については、第2四半期の振り返りでご説明します。

ARPUは224万円から234万円となり、前期末比で4.4パーセント増加しました。主な要因は、既存顧客が契約更新時にアップセルとなったことによるものです。

契約残高は主力サービスの「Fraud Alert」に加え、すべての契約獲得が対象です。6億6,400万円から8億7,400万円となり、前期末比で31.6パーセントの増加となりました。

Q2業績 | 2025年12月期 通期業績予想の上方修正

通期業績予想の上方修正についてご説明します。スライドは、2025年8月14日に公表した通期業績予想の修正に関するお知らせに記載した内容です。

売上高と利益は、2月に公表した当初予想を上回る見込みとなりました。売上高については、アップセルの貢献が要因であり、コスト面については一部未消化によるものです。

今後見込まれる売上高もありますが、その時期を正確に予測することが難しいため、今回はレンジ形式で見通しを公表することとしました。

Q2業績 | FY2025業績見通し

修正後売上高の業績見通しの要因別積み上げについての見通しです。スライドは、修正後のレンジでの上限を、売上高の要因別に分解した積み上げ計画比を示しています。

前提として、第2四半期までの実績と、第2四半期に獲得した注文書、そして今後契約更新時期を迎える既存顧客が同額で契約更新したとして、算出しています。前期売上高と当期売上高着地との差額は、1.84億円となっています。

Q2業績 | FY2025業績見通し

コスト面についてです。営業利益計画の修正前と修正後の要因別については、スライドのとおりです。

Q2業績 | 採用計画推移

採用計画推移です。採用については、期初計画の15名に対し、内定承諾を受けた候補者を考慮すると、17名を採用できる予定です。順調に採用が進んでいます。

Q2業績 | 主要KPI・取組ハイライト MRR

KPIであるMRRの推移についてです。

第1四半期の2025年3月時点と比較すると、第2四半期の2025年6月時点は増加しました。第3四半期は、第2四半期を上回る見通しです。

Q2業績 | 主要KPI・取組ハイライト

契約社数の推移は、スライドのグラフのとおりで、現在やや苦戦しています。

第3四半期に解約が3社見込まれていますが、これら3社の合計MRRは110万円と、業績への影響は限定的です。

Q2業績 | 主要KPI ARPU

ARPUの推移はスライドのとおりです。第1四半期では、第2四半期に見込んでいた新規顧客のリリースが、想定時期から遅延したため、スライド右上にある新規ARPUが第3四半期にずれ込みました。

点線部分は予想値ですので、リリースが前後すると数値に影響します。

Q2業績 | 主要KPI 契約残高

契約残高についてです。スライドの左の3本の棒グラフが前期、右の3本が当期を表しています。

前年同期比では、2024年6月時点で6億6,800万円だった契約残高が、2025年6月時点では8億7,400万円となり、今後売上に転化される残高が積み上がっています。

一方で、2024年6月末までに獲得した契約金額は2億1,700万円でしたが、当期の6月末までに獲得した金額は1億9,500万円と減少しました。これは契約更新のタイミングを3月に集中させるため、年間契約の一部期間を変更して契約を更新した影響によるものです。

Q2業績 | 財務ハイライト PL

財務ハイライトのPLについてです。スライド左半分は4月から6月の3ヶ月間、右半分は1月から6月の6ヶ月間の数字を示しています。

経常利益は前年同期比で当期は約2,600万円減少していますが、これは上場関連費用がなくなったことによるものです。

スライド右端の業績予想は、修正した業績予想をを反映しています。レンジで開示しましたが、このスライドではその上限の数字を示しています。

Q2業績 | 財務ハイライト BS

BSの数字については、スライドに記載のとおりです。トピックとして、新規事業の開発分を仮勘定として処理しています。

Q2業績 | 新株予約権の行使状況

新株予約権の行使状況は、スライドに記載のとおりです。権利行使期限が到来し、未行使株数が第1四半期の17万2,400株から20万7,300株となりました。

また、第2四半期後の7月には、9万2,200株の権利行使がなされました。

Q2業績 | 財務ハイライト 販管費と売上原価

販管費と売上原価の主要科目の数字はスライドのとおりです。左半分が4月から6月、右半分が1月から6月の累計を示しています。

前年同期比との差の主な要因は、注記に記載のとおりです。注記の3つ目の補足ですが、新規事業の金融機関向け電力契約情報を活用したKYCサービスの、開発における人件費を仮勘定として、原価の労務費から約410万円を控除しています。

Q2業績 | グロスレベニューチャーンレート

グロスレベニューチャーンレートの推移は、スライドのとおりです。第2四半期では、第1四半期と比べて0.9パーセントから0.7パーセントへと減少しましたが、MRRの増加により吸収できています。

Q2振り返り | 売上高

島津:第2四半期について振り返ります。

1つ目に、売上成長率が鈍化しています。ただし、下期以降は金融機関向け電力サービスのKYCサービスをローンチする予定です。システムインテグレーションが入らないかたちになりますので、リードタイムを短縮できます。これにより、売上成長率を担保していきたいと考えています。

2つ目のアップセルについてです。現在いくつかの契約更新を迎えていますが、ユーザー数においてオンライン化が進んでおり、各社さまがやや微増していくことが予想されます。

3つ目に、今四半期のクロスセルに関するトピックについてお伝えします。メガバンクでは、インターネットバンキングもアプリバンキングも、当局が求めるレベル感でのモニタリングが難しい状況があると言いますか、各社において「法人は乗っ取られることはないだろう」という意識がありました。

しかしながら、法人口座の転売金額が非常に大きく上っている中で、当社は日本で初めてリアルタイムでモニタリングを行い、危険が確認された場合には遮断を実施する実績を作ることができました。これは非常に大きな成果です。

さらに、法人口座の導入事例があるということで、法人のインターネットバンキングやアプリバンキングのモニタリングを拡充していきたいとのお話をいただいています。第3四半期にも、1社に対して法人アプリバンキングのモニタリングをリリースしたところです。これにより、個人のみならず、法人マーケットの規模がますます拡大している状況です。

4つ目に、契約者数は0社純増となりました。銀行ではないため影響範囲は小さかったのですが、残念ながら2社の解約があった一方で、新たに2社が追加される動きがありました。

チャーンリカバリー対策としては、銀行や証券会社におけるオンボーディングプロセスの支援が最も重要であり、導入後のオペレーションへの移行までサポートすることに注力しています。

今後、解約率が低下する可能性がある外的要因も1つ挙げられます。7月28日に証券口座乗っ取り問題を受け、金融庁が管轄するすべての業種に対して要請を出したことです。銀行や証券だけでなく、保険会社や暗号資産事業者など、多様な業種においてモニタリングが必須となったことが、第3四半期の大きな話題となっています。

5つ目に、POCで3社が継続中です。POCから本契約になっても、当社が提供するサービス内容に変更はありませんが、「永続的に業務の中に組み込む」となった場合に、本契約へと進むことになります。

提供内容自体に変更はありませんが、先方が体制を構築できるかどうかが課題です。ただし、先日、金融庁から強めの要請が出たため、対応せざるを得ない状況になっていると思います。

6つ目に、一過性の取り組みとして、89万円でスポット対応を行いました。当社としては売上高にほとんど影響がないため、詳細は割愛します。

Q2振り返り | 既存顧客のモニタリング範囲拡大

1つの重要なトピックとして、銀行においてインターネット、アプリの「ログイン」と「口座開設」をどんどん拡充していくことで、法人向けサービスの拡充にもつながりました。

また、法人口座のみならず個人口座チャネルにおいても、入出金や送金に関するモニタリングを強化したいというニーズが見受けられます。特に下期には、入出金におけるモニタリングを進めていく企業が増加してきています。

当社の強みである不正利用者情報を預かってシェアをするという点で言いますと、「口座開設」と「ログイン」までは、端末情報を主に活用します。一方で、入出金に関しては、凍結された口座そのものや、その口座がどの銀行にお金を振り込んだのかを活用します。

なぜなら、不正利用者に乗っ取られた口座は、送金先口座も不正利用者の口座になるからです。そこで当社では、送金先口座を連携しながら対応を進めている状況です。

Q2振り返り | 正社員数及び営業利益率

採用に関しては、正直に言うと苦戦しています。例えば、「ChatGPT」に当社の「金融犯罪対策コンサルタント」という職種を入力して「市場に何人いるか?」と尋ねても、「数百人前半です」と返答されてしまうという状況です。

採用は非常に難しいですが、少しずつ進めながら、採用された方と私自身で教育を進めることで、底上げを図る必要があると考えています。また、一部退職したメンバーもいますので、リプレイス採用も同時に進めています。

Q2振り返り | Fraud Alertの地銀

地銀各社のモニタリング導入の動向についてです。2月後半にアンケートが実施され、その結果が6月末に公表されました。当局が求めるレベル感でのモニタリングができている会社はほとんどなく、かなり厳しい状況でした。

さらに、7月下旬に発表された要請文は、内容がさらに厳格化されています。このような要請が出ることで新たなニーズが生まれています。これまで商談が進んでいなかった案件も、4月から6月の人事異動を経て再び引き合いが戻り、定期的に商談を前に進めていっています。

Q2振り返り | 金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービス

電力10社との契約については最終調整段階にありますが、予期せぬ事態が発生しました。当社事案ではなく、電力会社事案で稟議をやり直す必要があるとのことで、スケジュールが数週間ずれています。

現在はほぼ最終調整段階にあり、いつリリースが出るかという段階です。

Q2振り返り | 政府は不正アクセス対策強化を、金融業界全体に要請

最近の動向についてです。7月28日の要請に関しては、スライドにリンクを記載した、日本経済新聞の記事に詳しく書かれていますのでご参照ください。

金融庁管轄の業態は非常に多岐にわたっており、損害保険、生命保険、暗号資産、QRコード決済事業者なども該当します。

銀行代理業の一例としては、楽天銀行がバンキング・アズ・ア・サービスとして銀行のシステムを「JRE BANK」に提供しています。このようなバンキング・アズ・ア・サービスを利用している事業者も、モニタリングのレベル感を強化しなければならないことになっています。

その理由は、証券業における乗っ取りでは、すでに6,300億円の売買が本人になりすましたかたちで行われました。このような状況を受け、金融機関および金融庁が「お金を預かるすべてのインダストリーは、モニタリングレベルを上げなければならない」という号令を発出しており、これにより当社のマーケットチャンスが大きく広がったと考えています。

今回の事案を受け、当社から金融庁や日本証券業協会にも「今回の不正の事案は、結局何だったのか」や「何をして、対策を打つべきなのか」といった提案を行いました。

ただし、「具体的な打ち手、何をすべきなのか」については、犯行グループが把握する可能性を防ぐため、具体的な対策の内容は一般公開されないため、みなさまが検索してもスライドの日本経済新聞の記事しか出てこないと思います。

また、当社のお客さまからは「今回の要請は、さらに具体的、かつわからない」といった話を聞いています。今までのモニタリングとややずれていると言いますか、範囲が広がっているため、「どうすれば要請に応えられるのか、期待値を超えられるか」と、複数の企業からの依頼をいただき、コンサルティングを進めているところです。

今後、案件数の増加や、既存のお客さまからのクロスセルの拡大につながるきっかけになりそうだと考えています。

Q2振り返り | 最近のメディア掲載・出演実績

メディア掲載に関しては、引き続き、さまざまな媒体で取り上げられています。例えばIRセミナーで個人投資家の方々にご説明したところ、今回の証券乗っ取り事案に対する関心が非常に高いと感じました。

「〇〇証券は大丈夫ですか?」と具体的な社名を挙げて質問する方もおり、それにはお答えできなかったのですが、個人投資家の間で、証券の乗っ取り事案が増えており、それに関連した被害が身近でも発生しているという話になりました。

当社が、乗っ取り事案に対してどの程度のプロテクションができているかをご説明しました。「カウリスのお客さまでも、事故が発生しているのではないか」といった質問がSNSでも届いているのですが、「なるほど、そのようなかたちで守っているんだね。安心しました」といった回答をたくさんいただきました。

Q2振り返り | サステイナブルなマネロン対策について発信

当局のみなさまとも相談を始めていますが、マネー・ローンダリング対策とサイバーセキュリティ対策については「何か事故が起こって乗っ取られたら、証券口座を補償しなければいけないのは事業会社のほうだ」という話になっています。

すると、そもそも期待値に合ったセキュリティレベルが用意できない会社や、何か事故があると全額補償しなければいけないとなると、体力的に非常に厳しい会社も出てきます。

一方で、他国の同業他社を見ると、口座の維持手数料を有償化しています。例えば、カナダでは銀行口座を持つ場合、個人でも月額1,200円程度を支払っています。

この口座維持手数料は、得られた収入をマネー・ローンダリング対策やセキュリティ対策の原資に充てることが可能です。また、不正利用の口座を見つけた場合、対象の口座を凍結した上で没収する措置もとられています。また、モニタリングを行うにあたっては、直接的または間接的に国が助成金を出すケースもあります。

サステイナブルにマネー・ローンダリング対策やサイバーセキュリティを実現していくには、原資を事業会社だけでなく、3つのキャッシュフローがなんらかのかたちで、ユーザーからも、犯罪者からも、政府からの支援というかたちでも、マネー・ローンダリング対策に活用される仕組みが求められます。

それにもかかわらず、日本ではこれら3つの仕組みがまだ整備されていません。このような課題について、現在、政治家や霞が関の関係者の方々に提案を進めています。スライドの「NIKKEI LIVE」では、このような内容を初めて動画を活用してメディアを通じてお話ししています。

Q2振り返り | 国民を詐欺から守るための総合対策

国民を詐欺から守るための総合対策についてです。昨年のデータによると、被害総額は約3,000億円でした。これに加え、今年は6,300億円に及ぶ証券口座の乗っ取りが発生しています。

今年は昨年対比で、特殊詐欺、SNS、ロマンス詐欺、フィッシング詐欺の被害もやや微増している傾向にあります。今年は本人ではない人による売買や、不正に盗まれる金銭が合わせて1兆円近くに達する可能性があると危惧しています。

そのような状況の中で、事業会社に要請が出ているわけですが、事業会社には、できるスタッフがいない会社や、お金がない会社、人もお金もどちらもない会社など、さまざまなケースがあります。

そのため、国民をサステイナブルに守るためには、金融機関にとって事業構造的にサステイナブルに顧客を守る体制を構築することが、国として避けられない課題ではないかと思っています。

Q2振り返り | 金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービスの概要

いよいよリリースする金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービスについてです。すでにご注文いただき、第1号案件として立候補してくださっている企業もあります。また、証券会社でも、残念ながら今年事故があったお客さま1社からは「既存の口座の顧客情報のメンテナンスにKYCサービスを使いたい」というお話をいただいています。

また、クレジットカード事業者からは、「口座開設のところでも事故が起きているが、顧客管理のところは非常にダメージがある」というお話を聞いています。

みなさまもクレジットカードをお手持ちだと思いますが、半導体の需給バランスが崩れたことでICチップの価格が上昇し、クレジットカード1枚あたりの原価は現在1,200円ほどかかっています。

加えて、郵便局も、郵送の金額を30パーセント増しになりましたので、クレジットカード作成の1,200円の原価に加え、消費者へ配送する際の郵送料が400円近くかかり、1枚当たり約1,500円のコストとなっています。

例えば、3,000万枚のクレジットカードを発行している企業の場合、カードは5年で有効期限を迎えるため、年間で600万枚が再発行されることになります。ただし、引っ越し等の理由で届かないケースがあり、1回目や2回目の配送でも届かず、3回目まで試みても届かない場合は、最終的にそのカードを廃棄することになります。

その結果、3回の配送で千数百円の郵送料が発生し、1枚あたり1,200円のカード原価を合わせると、多額の廃棄コストがかかります。残念な事例として、届かないカードが全体の20数パーセントに上り、年間で約17億円分のクレジットカードを廃棄している会社もあります。

このような課題に対して現在、「きちんと顧客管理を行うことで、クレジットカードの廃棄ロスをゼロに近づけよう」という提案をクレジットカード各社に行っています。

日本国内のクレジットカード累計発行枚数は3.4億枚あります。金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービスがこの仕組みに組み込まれることで、その廃棄ロスのコストを当社が吸収し、解決できるサービスになると考えています。

Q2振り返り | 啓蒙セミナー登壇

啓蒙セミナー登壇に関しては、スライドに記載していない協会などでも勉強会を行っています。「何が今回の事故の原因だったのか」や「最近ではどのような事故が同業他社で起きているのか」といった内容についてお話ししています。

不正を最前線で分析し、銀行、証券、クレジットカードなどさまざまな業界でリアルタイムにモニタリングを行い、打ち手を提案している会社は、日本国内では当社のみです。当社が保有する情報を然るべき方々へ情報提供することを繰り返し行っています。

ただし、民間によるセキュリティ対策やマネー・ローンダリング対策だけでは限界があると感じていますので、官民連携のきっかけを作るためにも、引き続き情報提供を進めていく考えです。

中長期戦略 | オーガニック・インオーガニックな戦略方向性

中長期の戦略としては、引き続き、個人向けのインターネットバンキングを主軸に展開していきます。ただし、法人のニーズや地方銀行、信用金庫、信用組合といった需要もあります。特に今年は、証券分野でのニーズが大きく高まってきていますので、それらに対して積極的にアプローチを繰り返していきます。

1社との取引が成立した後は、その取引先の先にある別のモニタリングへと広げていきます。具体的には、ログインから始めて口座開設、入出金検知へ、と展開していきます。

また、「Fraud Alert」以外の別のサービスを活用しながら拡販を進めることで、マーケットをさらに開拓していこうと考えています。

中長期戦略 | 金融機関への拡販によるFraud AlertのARRの拡大

「Fraud Alert」以外のサービスを提供している分を間引くと、銀行のシェアは現在、約20パーセントです。ただし、現在進行中の商談や来年のリリース予定案件がいくつか進めば、もう少し前進する見込みです。

2026年中に銀行がモニタリングを導入するかどうかについては、今回の7月28日に金融庁から要請があったこともあり、かなり加熱しています。その反面、システムインテグレーターや、これまでモニタリングをしていなかった企業がこれから取り組むという状況で、社内調整や合意形成に相当な時間がかかっている部分もあります。

そのため、銀行に関しては2026年の50パーセント達成は難しいかもしれませんが、証券会社の分野において、足元の数値を伸ばしていきたいと考えています。また、19.6パーセントの銀行のシェアの中で「モニタリングの設置面を増やしてほしい」という要望が多数寄せられていますので、来期に向けて売上の獲得を目指しています。

再来年には、FATFの書類審査が始まるため、温度感が相当高まることが予想されます。しっかりと事案を作成し、要請対応を完了できる体制の支援を進めていきます。

また、19.6パーセントの銀行、そして9.9パーセントの証券会社が、どのようなモニタリングをしているのかを、先行事例として他の会社に共有するケースが非常に増加しています。

なぜなら、自社が適切に対応している一方で、対応が不十分な会社が存在することで業界全体の規制が強化され、モニタリングやマネー・ローンダリング対策にかかるコストが右肩上がりになる懸念があるからです。

そのため、モニタリングを先行して実施している会社が、他社に「当社はこのように取り組んでいます」「このような体制を組んでいます」と、伝えるケースが非常に増えてきています。その結果、「◯◯さんからご紹介いただいたのですが」といった引き合いも増加しており、これらを粛々と進めていく意向です。

19.6パーセントの銀行、そして9.9パーセントの証券会社のお客さまをしっかりと守り、不正利用者を排除していくことで、インフルエンサーとして動いてくださるお客さまが増加します。それが当社の基本的な営業戦略となっています。

中長期戦略 | 取引データを活用した不正口座の分析

以前からお話ししていることですが、現在、銀行口座の転売と、自分の利用している口座で第三者の資金洗浄をサポートする副業が非常に増加しています。

そのため、どの口座が悪用されているのかをシェアすることが重要です。また、同一口座における本業のキャッシュフローの流れに注目しています。

例えば、スライド右側の図にあるように、1つの口座で、生活用口座でクレジットカードや家賃引き落としに利用されています。また、法人の場合でも、売上の入金や従業員の給与振り込み、家賃の支払いなどが行われます。その中で、それとまったく異なるキャッシュフローを持つ口座を特定する必要があります。

弊社が保有するお客さまデータを見ると、凍結された銀行口座のうち、送金先のおよそ30パーセントから35パーセントが法人口座であることがわかりました。これにより、法人口座が資金洗浄に相当な割合で関与しているという事実が明らかになっています。

この情報を金融庁の関係者に提供しながら、モニタリングの強化が必要であることを、ファクトとデータに基づいてご説明し、対応を進めています。

中長期戦略 | 官民一体となったマネロン対策

この数年間で、グローバル規模でも日本国内でも、不正の被害が発生しています。最先端の不正手口は3ヶ月単位で変化しますので、新しい手口が確認され次第、速やかに解析を行い、関係する省庁および取引先に情報を提供しています。

このサイクルを絶え間なく繰り返していますが、あらゆる業態で同時多発的に、不正利用者が資金を盗む事例が増えており、このままでは日本国民の資金が流出し続ける状況になりかねません。

より多くのお客さまを守りつつ、得られたノウハウを関係当局とも共有しながら対策を進めるべきだと考えています。

以降のスライドは会社概要ですのでご参照ください。第2四半期のご説明は以上となります。

質疑応答:事業計画に対する売上の進捗について

司会者:「MRRの伸びがありましたが、売上全体としては想定より強かったのでしょうか?」というご質問です。

島津:事業計画どおりの進捗となっています。今年については、急激に伸びるという感覚はありませんでしたので、想定どおりの状況です。

ただし、システムインテグレーションが不要なサービスを提供するということで、入出金検知については1社がPOC(概念実証)というかたちになっています。そのため、売上にはすぐ貢献しませんが、結果が良好であれば、一緒に当局に行き、「このような方法もありますよ」「これだけ行うだけでも相当見えますよ」とご報告する予定です。

金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービスについては、電力会社側の足並みがそろっていない状況があり、現在苦戦しています。ただし、これがリリースされれば、顧客の名前、住所、電話番号といったデータをいただきさえすれば、「この人、アウトです」と1時間後にアウトプットを戻せる、新しいサービスとして展開可能です。

このサービスについては、顧客のコンプライアンス部門のみで完結するケースが非常に多いため、リードタイムが大幅に短縮されると考えています。

一方、「Fraud Alert」はコンプライアンス部門やコールセンター、システム部門、経営企画、さらにシステムインテグレーターなど、ステークホルダーが5人ほど関わるため、足並みをそろえるのが難しいのが現状です。そんなところにお金をかけたくないと考える方も多いのが現状です。

ただし、今回の金融庁の要請を受けて「そんなところに金をかけるな」とは言えなくなる半面、ステークホルダーが多く、特にシステムインテグレーターが要件定義に長時間を要する点が影響しています。

このため、システムインテグレーションが不要なサービスを来期にリリースできれば、売上高成長率は大幅に向上するのではないかと考えています。

質疑応答:他社とのアライアンスや提携の予定について

司会者:「他社とのアライアンスや提携の予定はありますか?」というご質問です。

島津:現在、証券会社では上位の会社が独自システムを構築しています。一方で、中堅クラスの会社は共同システムを利用しており、これは銀行における地方銀行向けの共同センターに似た仕組みです。

その共同センター系の会社からアライアンスのお話をいただいていますので、これが進むと一気にマーケットシェアが広がると考えています。これが最も大きなところです。

アライアンスについては、電力分野に関してはもう少し具体的な進展が見込めそうです。もうしばらくお待ちください。

質疑応答:採用活動についての課題について

司会者:「採用活動についての課題を教えてください」というご質問です。

島津:今回入社いただいた方は、東京在住ではありません。「いいな」と思う人は、だいたい地方出身だと感じました。

その理由として考えられるのは、インターネットバンキングとアプリバンキングのモニタリングでは、ヘッドクォーターは東京都内であるものの、東京都内でモニタリングの人材を雇うのはかなりきついことから、業務が地方へ外注されているからです。正社員も地方に配置され、アウトソース先も地方にあります。

視点を変えると、コールセンターが多いところはどこなのかという話になります。札幌、岐阜、福岡のほか、千葉や神奈川がコールセンターの多い地域です。コールセンターが多い地域では、コールセンターの会社が付加価値向上のために我々のモニタリングを取り入れているケースもあります。

また、それらの地域には、自社の正社員が担当しているコールセンターがある場合も多いため、そこから人材をピックアップするのが採用戦略です。

この採用戦略を突き進めると、当社もヘッドクォーターは東京ですが、地方分散してビジネスを進めていかなければならないと考えています。特に、地方銀行や、地場の証券会社、地場の信用金庫はたいへん多いため、分散を図りながら、お客さまの近くに何人かいる状態を作る上でも、当社としてはポジティブな取り組みになると考えています。

採用戦略としては、マネー・ローンダリング対策のモニタリングを行ってきた方を1人でも多く採用することを目指しています。ただし、マーケットにそもそも人材そのものが少ないという問題があり、採用が難航する場合もあります。

そこで、たとえ現時点で100点満点ではない方、例えば40点程度のスキルレベルの方でも、1年後には80点近くまで成長できるような教育プログラムを整えていくことで、一定の成果が得られるのではないかと考えています。

質疑応答:上方修正における売上面でのポジティブサプライズについて

司会者:「今回の上方修正は主に費用面のコントロールによるものに見えますが、売上面でのポジティブサプライズはどのあたりでしょうか?」というご質問です。

島津:我々としては織り込んでいる売上しかないため、売上面でのポジティブなサプライズとして特筆すべき点はありませんが、法人口座の金融犯罪対策に対する売上が増えたことが挙げられます。

また、短期の売上ではありませんが、中長期のTAMに関連する話として、7月28日に発表された金融庁の要請文が非常に大きなトピックとなっています。こちらが中長期的に我々のビジネスに大きく寄与すると考えています。

質疑応答:要請文発表後の問い合わせ状況について

司会者:「政府、金融庁の要請による導入加速の実感はありますか?」というご質問です。

島津:今回の要請文を受けて、いつもながらですが、「この要請文の意味は何なのかから、説明をお願いします」というお問い合わせがかなり来ています。要請文に対してどこまで対応したらよいのか、既存の取引先だけでなく、新規の取引先からも多くお問い合わせをいただいており、影響が大きいと感じています。

その際には、「最近の金融犯罪の手口は、3ヶ月クールで高度化してしまいます。高度化し続ける、つまり、敵方が常に強くなり続けることを織り込んで体制を整えることも1つの考え方ですよ」といつもお話ししています。

しかしながら、各社からは「社内で旗振り役がいない」「予算がそもそもない」、さらには「ベンダーとの調整に時間かかり、かつ高コストで、なかなかフレキシブルに対応できない」という声が寄せられています。

そこで、「時系列で追いかければ追いかけるほど、対応がまずくなってくることを、まずは社内の関係者に伝えたほうがよいと思います」とお伝えしています。その結果、内製化が難しいため、一部の企業では自社では対応できず、同業他社で実績のある企業に非対面チャネルを任せるアプローチがあれば、「もう非対面は無理だ」と諦めてしまうケースもあります。

これにより、我々のTAMは縮小する可能性もありますが、自前で対応できる企業とそうでない企業に二極化していくと思っています。対応できない企業は、そのまま撤退するか、第三者にアウトソースするかたちになると考えています。

この部分については、TAMが縮小する話なのか、拡大する話なのか明確には読み取れていない部分があります。ただし、二極化が間違いなく進むだろうとは考えています。

質疑応答:顧客単価が上がっている要因について

司会者:「顧客単価が上がっているとのお話でしたが、アップセル、クロスセルの主要なドライバーは何でしょうか?」というご質問です。

島津:大まかに言うと、クロスセルの影響のほうが大きいと考えています。法人口座の金融犯罪対策向けは、メガバンクの領域で、個人口座の犯罪対策向けは引き続き対応していますが、法人口座向けにも進出したことで、現在1社あたりのMRRが1,500万円弱になっています。

法人口座チャネルが導入されたことでクロスセルが向上し、ARPUが増加しています。ただし、中堅企業では設置面が拡大するケースもあり、メガバンクほどの口座数がなくても6面設置を行うことでクロスセルによる単価の上昇が見られると感じています。

当社はデータビジネスを手掛けており、広く情報を提供する方針ですが、すでに先行する上位10パーセントの企業では、「あれもこれもモニタリングして、強固に守りを固めよう」という企業が追加の設置面を増やす動きを見せており、これが売上の向上につながっています。

我々としては、ここまで守れたという情報をお客さまと一緒に、「ここまで守ると、犯罪がこれだけ減りましたよ」と当局に提案することで、「ならば、やらなければ駄目でしょう」と、要請が出されます。その結果、未対応だった層も対応せざるを得ず、新たに顧客となるケースが増えてきます。

そして、顧客化が進むと、約3年から4年でMRRが倍増することが多いです。新規顧客のARPUは低めですが、既存顧客のARPUが継続して向上し、そのナレッジが要請として反映されていきます。すると、取り組んでみようかと考えるお客さまが出てきて、そのお客さまを支えてあげると、だんだん設置面が増えていくという流れになります。

信金、信組、地銀においては、4年後にARPUが向上する見込みですが、現状では高い数字ではありません。しかし、一度取り組みが始まると、徐々にARPUが上昇していく構図となります。

そのため、新規顧客の獲得にも力を注ぐ必要があります。既存顧客のクロスセルだけでは限界がありますので、新規開拓も同時に推進する必要があると考えています。この点が営業戦略の重要な観点です。

質疑応答:今後の売上成長ドライバーについて

司会者:「今後の売上成長ドライバーは、既存サービスの拡張ですか? それとも、新規事業の立ち上げですか? また『Fraud Alert』について、さらなる機能強化や新ラインは予定していますか?」というご質問です。

島津:「Fraud Alert」は現在のラインナップを使っていただくところですが、やはり入出金検知サービスが極めて市場ニーズに適合しているため、この拡販をすることでさらに進めていきます。

また、金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービスについては、クレジットカード、証券、銀行、その他さまざまな分野で活用できるかたちになると考えています。現在、保険会社2社ほどに電力サービスを提案しています。保険業界でも、継続的なお客さまの管理に非常に苦戦されているという話をうかがっています。

どのような課題があるかと言いますと、例えば、私が保険に加入しており、死んでしまったとします。30年、40年と保険を積み立てた結果、保険加入時の電話番号や住所が変更されていることがあります。

その方が亡くなって、遺族にお金を払わなければいけなくなっても、遺族の電話番号や住所も変わっていて、さらに契約者本人の電話番号や住所も変わっていて、どの家族とも連絡が取れないという保険契約が多数存在するそうです。

支払いをしたくても、連絡先がまったくわからないため支払いができない契約が非常に多く、驚くことに、累計で数千億円規模にまで達している会社もあるということです。返金が行われない場合、保険業としては金融庁から「払うべきものを払ってないのは、きちんと顧客管理をしてないからだ」と指導があるようです。

銀行、証券、クレジットカードのような領域に限らず、意外にも保険領域でも同じようなことが起きているのだと、最近発見しました。つまり、電力サービスは「Fraud Alert」などよりも、もしかするとTAMの規模が大きくなる可能性があるのではと考えています。

質疑応答:証券会社の不正取引対策が業績を牽引する時期について

司会者:「証券会社の不正取引対策が、本格的にカウリスの業績を牽引する時期はいつ頃を見ておけばよいですか?」というご質問です。

島津:既存の取引先のクロスセルや設置面が増える点では、今年10月以降、売上はやや増加すると見込んでいます。

また、新規案件についても、大型の商談や中堅規模の商談が複数進行中の状況です。今期中の成果が見込まれるかは現時点では確定していませんが、いくつかは来期以降の数字に反映されると考えています。

現時点での売上構成について、証券会社が占める割合はおおよそ35パーセントです。地方銀行に比べて証券会社のリードタイムは短くなる可能性が高いため、来期には証券会社が占める売上比率がやや上昇するのではないかと思っています。

質疑応答:地銀の停滞が中長期の成長確度に与える影響について

司会者:「地銀において、FATFの審査に伴う駆け込みなどは従来の期待よりも下回りそうな印象を受けました。ここは中長期の成長確度を下げるのでしょうか?」というご質問です。

島津:地銀の意思決定プロセスについては、確かにご指摘のとおり、非常に遅いという現状があります。これについては、私たちとしても想定外の部分が多く、これだけ要請文が出されても、いまだに動かない企業が少なからず存在していることが悩みの種となっています。

また、FATF審査があるはずなのに、「関係ない」と思っているのか「そこにはお金かけない」と意思決定が行われているのかわかりませんが、この状況が日本における金融犯罪が拡大する大きな要因の1つになっています。

取り組まない理由として、「そもそもマネロン対策がコストだから、お金がかかることはしません」というケースもあります。システム導入における固有の理由もありさまざまな状況があります。

しかしながら、それが原因で3,000億円から4,000億円もの被害が続いている現状があります。この事態を食い止めるためには、政府との連携が不可欠であり、地銀単独では非常に厳しいと感じています。

一方で、信金については今後動きが出てきそうです。現在、信金220社のうち200社が共同センターに所属しており、共同センター部門と私たちはコミュニケーションを図っています。

共同センター側から「2028年以降に対応します」と2月の金融庁のアンケートに回答したところ、「それでは遅すぎる」と非常に強い指摘を受けたそうで、「前倒しで使いたいから、いろいろ相談に乗ってほしい」という話にも発展しています。

つまり、220社中200社、すなわち90パーセントが一度に方針転換した場合、我々の信金のマーケットシェアが9割に達するという展開になる可能性が高まります。

そのため、優先順位は上から順に対応していきたいと考えていましたが、現在では銀行や証券会社の動きにも注目しています。特に証券会社が活発化しており、地銀の動きが停滞している分、信金を取り込むことで「信金が対応しているのに、地銀はなぜ対応しないのか?」という流れが確実に生まれ、金融庁としても対応に動く展開が予想されます。

我々としては、マネー・ローンダリング対策を最短で効果的に進めるため、優先順位をフレキシブルに変更しながら対応していきたいと考えています。

また、FATFの勧告を背景に、7月28日の金融庁と警察庁の金融業界全体に対する要請はオープンにはなっていないものの非常に強いものとなっており、これを無視するのはリスクが高いと考えられます。そのため、対応しない会社に対しては当局から厳しい措置が取られるはずで、当局側の圧力次第で状況が大きく変わると予想しています。

そして、圧力のかけ方自体は、国民が盗まれている金額に比例していますので、今年のこの一件は、金融庁が相当強い働きかけを行うだろうと見ています。

さらに、金融庁に対しても、どのような要請文を作ればいいのかを軸に、私たちが定期的に、それぞれの手口に対する打ち手について、情報提供を続けています。このような情報提供はマーケット全体にとって非常に重要な役割を果たしていると考えており、今後も着実に進めていきたいと考えています。

質疑応答:成長戦略において最も成長性がある分野について

司会者:「スライドに、『成長戦略の方向性は大きくわけて、4つ』とあります。この中で最も成長性がある分野は何ですか?」というご質問です。

島津:現時点で個人的に想定しているTAMは、金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービスと、「Fraud Alert」の6面設置の部分が、同じくらいのTAMになるのではないかと考えています。ただし、直近3年の売上に寄与する順番でいうと、「Fraud Alert」の入出金の検知サービスと、金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービスになると思います。

優先順位としては、この2つが金融機関にとって購入しやすいものです。購入しやすい商品は売上に貢献しやすいため、それが売上につながります。

「Fraud Alert」のログインと口座開設の部分については、システムインテグレーションが発生するため、どうしても時間がかかりますが、当局の要請文には「モニタリングしなさい」と記載されています。

このように、時間軸により売りやすさは変動します。例えば、時間軸によってある時点では売りやすい場合もあれば、FATFの要請が影響して別のサービスのほうが売れやすくなる場合もあり、その点は変動すると思います。

質疑応答:信金への導入前倒しについて

司会者:「信金は2028年より前倒しで進めるため、カウリスとしても2026年度、2027年度に導入できるかもしれないと理解してよいでしょうか?」というご質問です。

島津:おっしゃるとおりです。そのつもりで、現在営業しています。信金は、しんきん共同センターと取引するかたちになります。そこと取引すると、200社すべてに対応できるという構造になっているようですので、現在交渉を進めています。

先方で検討しなければならない事項についての情報提供は、ひととおり終えたところです。現在、先方で協議中の段階という状況です。

ただし、このセンターでは6月末に人事異動があり、7月以降はメールの返信もほとんどなくなっているため、引き継ぎ期間中かもしれません。継続的に追っかけていきたいと考えています。

質疑応答:法人口座と個人口座のトランザクション単価の違いについて

司会者:「法人口座のほうが、トランザクション単価は個人口座より高いのでしょうか?」というご質問です。

島津:単価自体は、ログインに関しては個人も法人も同じです。ただし、送金に関しては法人のほうが1口座当たりの送金件数が多く、入出金も多いため、単価は上昇すると思います。

島津氏からのご挨拶

去年には、預金預かり全部をモニタリングしなさいという要請が出て、TAMが大きく拡大しました。そして、今年7月には、金融庁管轄下の業態は、すべてモニタリングしなさいという要請が出たことから、マーケットが一気に拡大しています。

一方で、証券業界ではいまだに事故が発生している会社が存在し、その対応で混乱が続いています。そのため、先行投資になるかもしれませんがフロントの体制を強化するために採用を積極的に行う必要があると考えています。

市場が大きくなっている中で機会を逃すことは避けるべきですので、人員の拡充を計画よりも前倒しする必要性があり、来期は当初計画よりも多めにヘッドカウントを増やす必要があると考えています。

今回、この要請に対応することになった損害保険会社や生命保険会社にお話をうかがう限り、ログインの取引モニタリングを実施している企業がほとんど見られない、あるいは、これまで取り組んだことのない企業が多いと感じています。

これまで実施経験のある企業に対して当社がコンサルティングに入る場合、正直なところ話しを進めやすいのですが、取り組み経験のないマーケット、例えば地方銀行、信用金庫、信用組合、証券会社、そして保険会社向けには、まずは「IPアドレスとは何か」「クッキーとは何か」といった部分から、ご説明する必要があると考えています。

当局の要請文の意味がまったくわからない方たちに向けて、ご説明するところから始まります。つまり、対応コストが大幅に上がるような領域のマーケットに入ったことにより、ヘッドカウントを増やしたり、教育プログラムを作成したりといった対応が必要になります。これらに対して投資を行わなければならないのが、現状の課題だと考えています。

いずれにせよ、FATFは、イギリスやアメリカなど海外と同じ水準で、きちんとマネロン対策を行うことを求めています。その水準に近づけるための支援を提供できる会社は、日本国内では非常に限られています。

FATFが来ても、「カウリスが対策しているから、大丈夫ですね」と言われるような企業となる、当社としては会社の成長の良いチャンスだと捉えています。50パーセント以上の銀行から不正データを集め、日本国内のインフラを担う企業として成長していければと思っています。

引き続き、みなさまのご支援をよろしくお願いします。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。