コマースOneホールディングスの現在地
清水究氏:株式会社コマースOneホールディングス取締役管理本部長の清水です。本日は当社グループの決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。これより、2026年3月期第1四半期の決算説明を始めます。
当社グループは、成長している国内EC市場において、Eコマース支援事業に注力し、EC事業者さまをトータルで支援しています。インターネット上において、安心安全に取引を行える社会インフラとして、国内中堅中小企業のEC運営における課題を解決するソリューションを提供しています。
ECをトータル支援する、当社の強みと展望
当社グループが提供するソリューションの概要をご紹介します。大きく2領域あります。売上を伸ばすことに寄与するEC戦略支援のソリューション群と、事業運営基盤を強化するためのソリューション群です。
このうち、ECサイト構築プラットフォームソリューションである「futureshop(フューチャーショップ)」の収益が、現状、当社グループの収益の大きな部分を占めています。当第1四半期においては、VTuber等を起用してSNSを活用したソーシャルコマースを行う「PINES(パインズ)」を、新規にグループインしています。
また、新規事業として、中堅中小企業の資金繰りの課題を解決する金融サービス「One Credit(ワンクレジット)」をリリースしています。
2026年3月期 第1四半期 サマリー
2026年3月期第1四半期の数値を記載しています。今期業績は連結売上高9.1億円、連結営業利益1.3億円、連結営業利益率14.4パーセント、親会社株主に帰属する四半期純利益は0.9億円となりました。
前年同期比で連結売上高は0.1億円のプラス、連結営業利益は0.2億円のマイナス、連結営業利益率は2.9ポイントのマイナス、親会社株主に帰属する四半期純利益は0.5億円のプラスです。
当第1四半期累計期間における決算概要としては、コア事業である、EC事業者さまの支援サービスを提供しているフューチャーショップにおいて、サービス拡充や前年6月に行った価格改定の影響を受けて増収増益となっています。
一方で、ソフテルにおいては、大手モールの仕様変更に伴う保守工数の増大により、エンジニアコストが想定以上に膨らんだことで減収減益となっています。また、空色では新規プロダクト開発に先行投資が進んでおり、結果として連結営業利益は前年同期比で0.2億円の減益となっています。
2026年3月期 第1四半期 フューチャーショップ サマリー
フューチャーショップ単体の実績です。売上高は前年同期比4,000万円増の7億円、営業利益は前年同期比100万円増の2億円、営業利益率は前年同期比1.7ポイント減の28.7パーセントとなりました。
GMVは前年同期比17億8,000万円増の526億円、契約件数は4月1日時点から10件減少し6月末時点で2,785件、ARPUは前年同期比7,632円増の8万4,616円となっています。
売上高およびARPUの増加要因としては、導入企業さまの成長に伴い、オプション機能やアライアンスサービスの利用が引き続き拡大したこと、ならびに価格改定の影響が挙げられます。
一方で今期は、事業拡大に伴い人員を積極的に採用しており、当第1四半期において採用費が発生している関係で、営業利益率は前年同期比1.7ポイント減となっています。
2026年3月期 第1四半期 ソフテル サマリー
ソフテルの当期実績です。売上高は前年同期比50万円減の2億1,500万円、営業利益は前年同期比で410万円減の1,600万円、営業利益率は前年同期比1.9ポイント減の7.7パーセントとなっています。
開発売上総額は9,100万円と前年同期比で300万円ほど減少していますが、一方で、開発したシステムの保守にかかる売上となるストック売上は1億1,700万円と、前年同期比で340万円増加しています。
経済合理性の高いマルチテナント・ノンカスタマイズのSaaS型プラットフォーム「futureshop」
ここからはビジネス側のサマリーについてご紹介します。まず、「futureshop」のビジネスモデルについてご説明します。
「futureshop」は経済合理性の高いマルチテナント、かつノンカスタマイズのSaaS型ビジネスモデルになっています。また、すべてのお客さまがソフトウェアやサーバー環境を共有するSaaS型モデルとなっており、スタートアップフェーズのお客さまから年商数十億円のお客さままで、すべてのお客さまが同じ環境のソフトウェアで稼働しています。
このようにサーバー環境を共有するSaaS型のビジネスモデルにより「futureshop」は3つの優位性を担保しています。
1つ目は「安心のセキュリティ」です。システムアップデートにより最新のセキュア環境を提供しています。
2つ目は「迅速なバージョンアップ」です。お客さま個別の開発運用がないため、効率的な機能開発とバージョンアップを実現しています。
3つ目は「満足度の高いサポートの提供」です。お客さま固有の仕様がないことにより、満足度の高いサポートを可能にしています。
結果として、開発リソースを最大限に利益化することが可能となり、エンジニアがプロダクト開発に集中できることで離職率も低くなっています。さらにすべてのお客さまが同じ環境であるため、成功パターンのナレッジの蓄積や共有が容易になり、顧客の成長の再現性も高くなっています。
顧客と伴走し、堅実に成長に寄り添う「futureshop」
「futureshop」のサービスの特長です。2年以上契約しているお客さまの売上が、平均で22.8パーセント成長しています。これは長く使っているお客さまは、当社グループのサポートによって継続的に成長できるという実績の表れになっています。
お客さまの商材はアパレル・ファッション、食品・スイーツなどさまざまですが、競合他社のSaaS型プラットフォームに比べ、1店舗当たりのGMVが高くなっており、「futureshop」を利用することで、着実に成長できると考えています。
また、課金モデルが月額固定で手数料中心であるため、お客さま目線においてはROIが高いことも大きな特長です。
顧客のGMVを堅実に成長させる「futureshop」
GMVの推移です。当第1四半期においては約526億円と、前年同期比で3.5パーセント増加しています。市場環境としてGMVがなかなか伸びにくくなっている状況ではありますが、一時期よりは緩やかながらも着実に成長を積み上げています。
これは、より商流を持ったお客さまが増えていることに加え、当社グループのサポートとお客さまの努力による成長が要因だと考えています。また、成長に比例して大きくなる手数料収入も確実に積み上げています。
高付加価値戦略でARPU成長を実現する「futureshop」
「futureshop」のARPUの推移です。2026年3月期第1四半期のARPUは8万4,616円と、スライドのグラフにあるとおり、右肩上がりで順調に推移しています。
一方で契約件数は減少傾向にあり、コロナ禍による急増の反動として店舗の統廃合の影響を受けている状況が今も続いています。ただし、今期に入って、減少の傾向は収まりつつあるため、これから契約件数を伸ばすべく、さまざまな施策を講じていきたいと考えています。
VTuberマーケティング事業 PINESを新規M&A
今期、新しくM&Aを実施したPINESという会社についてご説明します。VTuber専門のインフルエンサーマーケティング支援を行っています。SNS総フォロワー2,000万人超の、収益化実績のある個人VTuber2,000名以上が登録するプラットフォームを運営しています。
スライド右側に記載しているとおり、オンラインイベントとして、オンラインゲームのイベントを開催したり、インフルエンサーであるVTuberとコラボしたオンラインガチャでグッズを売ったりしています。さらに、VTuberとのコラボ商品として、「推カン」を販売しています。
SNSマーケティングを行っているため、当社グループとしても今後目指していきたいソーシャルコマースの分野において大きなシナジーが期待できることから、今回のM&Aに至りました。
“推し”の熱量が創る、次世代マーケティング
PINESが強いソーシャルコマースやVTuberのインフルエンサーマーケティングの部分については、新たな消費行動である「推し活」が大きく影響しており、今後も拡大が期待されている状況です。スライド左側のグラフは、VTuberの市場規模を表していますが、かなりの成長速度で伸びていることが見てとれると思います。
また、「推し活」についてスライド右側に記載しています。日本経済新聞のデータによると、5人に1人が年に10万円以上を「推し活」に使うとされています。40代以上では14.4パーセントと比較的少ないですが、30代以下の若い世代になると30パーセント近くが、このような消費活動を行っていることが報じられています。
平均支出額も、約19.2万円とかなりの金額を「推し活」に使っていることがわかっており、市場もこれから非常に伸びていくことが期待されます。
権利を守る信頼関係×コミュニティ主導の拡散力
PINESの企業特長についてご説明します。「権利を守る信頼関係×コミュニティ主導の拡散力」とあるとおり、個人VTuberの権利と表現の自由を守る支援体制を構築しており、VTuberとの信頼度の高い関係ができています。
VTuber同士のつながりやその世界観を共にして、いわゆるファンコミュニティといったものが、ソーシャルコマースを活用した顧客のプロモーションを加速させていくと考えています。
具体的には、企業と個人VTuberをつなぐ「AttendMe(アテンドミー)」というプラットフォーム上に、Vtuberが登録し、そのVTuberを見るファンのコミュニティの中で、グッズの販売などを行っています。
VTuber専門インフルエンサーマーケティング事業 PINESの急成長
Vtuberやインフルエンサーマーケティング事業を行っているPINESは、創業はそれほど古くないものの、着実に成長を遂げています。
2年連続で前年比75パーセント以上成長しており、平均成長率は117.9パーセントと、先ほどお伝えした市場成長と比べても、比較的いい速度で成長できている企業だと考えています。
中小企業の成長ドライバーであるEC
ここからは、事業基盤を支援するソリューションについてご説明します。スライドのデータは、中小企業のみなさまがECを活用することで、平均2パーセント程度の売上増加が確認されていることを示しています。
EC活用が中小企業の収益の底上げに直結しており、構造的な売上成長の手段として、その重要性はまだ高まっていると考えています。流通のオンラインシフトが進む中、販路拡大や収益多角化を図る上で、当社グループを含め、ECのプラットフォームは、不可欠な経営インフラとなりつつあります。
EC支援を拡充。資金課題に応える、ファクタリング事業 One Creditを新規開始。
当社グループは中小企業の課題解決に応えるソリューションを提供しています。スライド左側に記載のとおり、物流や資材コストの増加、ECサイトのセキュリティ対策、各種マーケティング施策、ECに関する専門知識の不足による不安、在庫や発送管理の煩雑さ、さらにはインターネット詐欺や不正への不安を、ECを行う上での課題として挙げる企業さまが多いです。
当社グループとしては、資金調達フェーズからトータルサポートしていくことを考えています。今までなかった事業として、物流や資材コスト増といった資金課題を突破するために、ファクタリング事業である「One Credit(ワンクレジット)」を新しく立ち上げています。
ファクタリングサービス需要の高まり
中小企業の経営においては、物価高や景気変動、為替の影響を受けやすい状況が続いています。特に小規模企業においては、資金調達が大きな課題として挙げられることが多いです。EC事業における攻めの一手を図る上で、柔軟な資金繰りの手段が求められています。
このような背景から、即時性の高いファクタリングへのニーズが高まっているのが現状です。 そこに対して、当社グループは、「One Credit」という将来債権の買い取りサービス事業を展開しています。
この事業では、低コストな審査体制や独自のEC売上分析を活用した与信など、データ利活用の優位性を発揮しています。また、EC事業者の増加と資金ニーズの多様化に対応しています。
在庫・発送管理の煩雑さを解消。一元管理型バックヤード支援事業 通販する蔵
ソフテルの事業内容についてです。「通販する蔵」というソリューションを中心に、Amazonや楽天市場などのモール支店や自社ECにおける商品、在庫、受注、顧客などのフロント側のデータを、基幹システムやPOSシステム、ショップ、実店舗、物流・倉庫、メーカーの仕入れ先などのバックヤード側へ、情報を適切に変換して提供するシステムです。
フロント側のモール支店などの多店舗展開によって複雑化したデータを、基幹システムやPOSシステムなどのバックヤード側に適切に接続することで、業務の効率化を図っています。 お客さまの事業状況に応じた高いカスタマイズ性と豊富な実績を活かし、国内の大手および中堅企業を中心に、収益性の向上を目的とした事業展開を行っています。
EC取引の不安を解消。健全な市場の基盤を支える第三者認証 TradeSafe
TradeSafe(トレードセーフ)についてご説明します。TradeSafeは、安心して取引できるEC市場を作りたいという理念のもと創業した、わたしたちの前身となる会社です。
当時はECの黎明期で、ネット上の取引に関わるトラブルが多い中、弱い立場の消費者が泣き寝入りしてしまうケースが多数ありました。そのような状況をなんとか健全な市場へ変えていきたいという思いで立ち上げたのがTradeSafeです。
わたしたちは、社会にどのように役立つかを考えながら、EC市場の健全な発展を支えるサービスを提供してきました。ECの魅力は、良いものを作りたいという意欲を持つ方が全国を商圏にして成長のチャンスを得られるところにあります。
当社グループは、本気で取り組むEC事業者さまの成長を確信し、そのような方々を裏側でサポートしたい、中小企業のみなさまの成長を支援したいという思いで成長してきました。今後も地方や中小企業のみなさまの成長を支援できるサービスを展開していきたいと考えています。
2026年3月期 第1四半期 決算概要
2026年3月期第1四半期の決算概要についてご説明します。前年同期比の数値はスライドに記載のとおりです。
連結売上高と連結営業利益は先ほどお伝えしたとおりです。前年同期比では、売上高は1.3パーセント増加、連結営業利益は15.5パーセント減少、連結経常利益は50.8パーセント増加、親会社株主に帰属する四半期純利益は129.2パーセントと大幅に増加しています。
前年度同期比 営業利益増減分析
連結営業利益の増減分析です。連結営業利益は1億3,078万円で、前年同期の1億5,468万円に対して2,390万円の減益となりました。
利益の増加要因として、フューチャーショップの取引拡大に伴う粗利の増加が約2,305万円ありました。一方、利益の減少要因としては、グループの事業拡大に伴い、人材採用を強化したことで、採用コストなどの人材関連費が1,472万円増加しています。
さらに、生成AIをはじめとする業務効率化に関連する新規ツールの導入などで1,327万円、新規プロダクトの研究開発費として約900万円が発生するなど、業容拡大を目的とした投資費用が増加しました。その結果、連結営業利益は1億3,078万円となっています。
2026年3月期 第1四半期 営業利益~税金等調整前四半期純利益の増減分析
連結営業利益以下の前年同期比の増減分析です。連結営業利益以下では、営業外収益において、TradeSafeでPoCを行った金融サービス「One Credit」に係る収益が計上されています。
営業外費用については、前年には持分法適用関連会社のエネサイクルにおいて、先行投資による持分法投資損失が発生していましたが、当期はこれが発生していません。その結果、連結経常利益は前年同期比5,454万円増加しています。
2026年3月期 第1四半期 貸借対照表前期末比
連結貸借対照表の前期末比です。大きく変動している点として、現金及び預金が約2億8,000万円減少しています。その要因として、TradeSafeで行っている金融サービスにおいて、合計で約2億円の将来債権を当社グループが買い取ったことが挙げられます。さらに、新規連結により現金及び預金が約8,600万円減少しています。
2026年3月期 第1四半期 キャッシュ・フロー前年度同期比
連結キャッシュ・フローの前年度同期比です。営業活動によるキャッシュ・フローはマイナス8,979万円で、前年同期の1億2,855万円と比較して約2億1,835万円減少しました。要因としては、将来債権の買い取りサービス「One Credit」を開始したことに伴い、約2億円の債権を買い取った点が挙げられます。
さらに、自己株式の取得に係る預け金支出の増加もあり、その結果として営業キャッシュ・フローが減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは約1億1,935万円を投資しました。主な投資内容は、新規連結した子会社の取得に係る約9,000万円の支出と、ソフトウェア開発への投資です。財務活動によるキャッシュ・フローは約9,244万円を支出しました。主な支出項目は、期末の配当と自己株式の取得です。
2026年3月期 第1四半期 連結業績推移
連結業績推移です。売上高は継続的に増加傾向にあり、その要因としてフューチャーショップの好調な業績が挙げられます。
一方、利益面では減益となっています。その理由として、ソフテルの保守工数増大に伴うエンジニアコストの増加、グループ全体としての採用費用の増加、空色の新規プロダクトの開発に伴う研究開発費の増加、さらにホールディングスが今期実施したM&Aに係る支払い報酬の増加などがあります。
その結果、連結営業利益率は前年同期比で2.9ポイント減少し、14.4パーセントとなりました。
2026年3月期 第1四半期 予算進捗
2026年3月期第1四半期累計期間の連結予算進捗です。連結売上高は、通期予算43億8,728万円に対し、予算進捗率20.8パーセントの9億1,097万円となりました。
また、連結営業利益は通期予算6億6,532万円に対して進捗率19.7パーセントの1億3,078万円、連結経常利益は通期予算6億7,309万円に対し進捗率24.1パーセントの1億6,191万円です。結果として、親会社株主に帰属する四半期純利益は通期予算4億8,507万円に対して進捗率19.2パーセントの9,305万円となりました。
売上高を含め、全体的に予算進捗はやや弱く見えます。一部新規事業で進捗が遅れている部分があるため、第1四半期時点で25パーセントに達していない項目もありますが、積み上げ型のストック利益が第2四半期以降に徐々に寄与することや、新規連結したグループ会社の売上が第2四半期以降に反映されることから、現状では想定内の進捗と考えています。
第2四半期以降、着実に売上を積み上げ、予算を達成できるよう経営を進めていきます。
自己株式取得
自己株式取得についてです。今期、株式の取得を進めていますが、財務状況や株価水準を総合的に勘案し、当社グループの観点で株価が割安と考えられる間は、積極的に自己株式の取得を進めていきたいと考えています。
取得に関する事項や内容は、スライドに記載のとおりです。7月末時点での取得株数は3万3,900株、進捗率33.9パーセントです。
質疑応答:「AttendMe」の現状と今後の成長性について
質問者:新規M&Aで取得されたVTuberマーケティング事業「AttendMe」の現状と今後の成長性について教えてください。
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