スターツ出版のビジョン

菊地修一氏(以下、菊地):スターツ出版代表取締役社長の菊地修一です。どうぞよろしくお願いします。

弊社のビジョンは「感動プロデュース企業へ」です。

スターツ出版のミッション

菊地:ミッションとして「文化と笑顔の需要創造」を掲げています。

今期のスローガン

菊地:今期のスローガンは「イノベーションで次なる未来を!」です。世の中はどんどん変化していますので、全社員でイノベーションを起こしていこうということで今期をスタートしています。

スターツ出版の事業領域

菊地:事業領域は大きく2つに分かれています。1つは書籍コンテンツ事業です。後ほど詳しくご説明しますが、小説投稿サイトを起点とした書籍、電子書籍、コミックビジネスを大きく展開しています。

もう1つはメディアソリューション事業で、こちらは2つに分かれています。1つは厳選店舗だけを掲載する施設予約サービス「OZのプレミアム予約」です。

もう1つは、ブランドソリューションです。『オズマガジン』『メトロミニッツ』といった弊社が昔から展開しているメディアを利用して、商業施設や自治体などに送客し、賑わいを起こしていくソリューションビジネスを行っています。

中期経営計画(2025年~2027年)の基本方針

菊地:中期経営計画を発表しています。2025年から3年間の基本方針として、右肩下がりの出版市場に抗うべく、コンテンツの多層化を推進していきます。

具体的な内容は大きく分けて3つあります。1つ目は、IP展開による、収益の最大化です。2つ目は、コミックシフトと新レーベルの創刊ラッシュです。3つ目は、生成AI活用による、生産性の向上です。詳しくは後ほどご説明します。

2025年第1四半期の決算

菊地:すでに発表した第1四半期の決算については減収減益と、久々に厳しい結果に終わりました。売上高は前年同期比12.7パーセント減、営業利益は前年同期比33.9パーセント減です。

ただし、通期計画に変更はありません。通期計画を達成すべく、全員でがんばっているところです。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):質問を挟み込みながら進めたいと思います。後ほど詳しくご説明があるとは思いますが、減収減益の要因について、概要でかまいませんので教えていただけますか?

菊地:まず、昨年の第1四半期は『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』という映画が大ヒットし、原作小説である弊社の本も130万部を突破しました。その前の第4四半期から、第1四半期、第2四半期も含めて何度も重版が続き、その作品だけでも相当な売上・利益を稼ぎました。

井上綾夏氏(以下、井上):すごいですね。私も映画を見ました。

菊地:ありがとうございます。

坂本:私も映画を1回見た後に本を読もうかと思ったのですが、「Amazon」はずっと売り切れでした。そのくらいずっと刷っていたのですね。

菊地:その影響が大きかったことに加えて、大ヒット作である『鬼の花嫁』も昨年の第1四半期に新作を発刊しています。しかし、今年の第1四半期は発刊がありませんでした。この2つの作品が、相当大きな要因となっています。

坂本:書籍部門の影響があったわけですね。

菊地:おっしゃるとおりです。

2025年第1四半期のセグメント別の状況

菊地:セグメント別の状況をご説明します。書籍コンテンツ事業は、昨年の第1四半期の14億円から10億円まで大きく減退しています。

一方で、メディアソリューション事業は増収増益となりました。メディアソリューション事業はコロナ下は赤字の事業でしたが、2023年に黒字化し徐々に利益が出るようになりました。今後は、書籍コンテンツ事業をどのように伸ばしていくかだと思っています。

坂本:先ほど「第1四半期に発刊がなかったことも、減収減益の要因の1つだ」というお話がありましたが、季節性があるのでしょうか?

菊地:書籍コンテンツ事業で何がヒットするのかは、季節性というよりは、コンテンツの力によるものです。ただし、後ほどご説明しますが、実は下期にかけて発刊点数を増やしていきますので、それによって下期は当然ながら売上が増えていくだろうと考えています。

また、メディアソリューション事業の「OZのプレミアム予約」は、記念日に多く利用されており、特に12月のクリスマスシーズンに驚異的な勢いで毎年予約が入ります。

したがって、メディアソリューション事業に関しては、年末にかけて尻上がりになるという季節性があります。

2025年下期以降3年で16作品が映像化決定

菊地:IPについてです。中期経営計画でも発表していますが、今期以降の3年間で16作品の映像化が決定しています。前回発表した時は15作品でしたが、ドラマが1作品追加になりました。

さらに、2案件から3案件が交渉継続中です。この3年間でおそらく20作品ほど、弊社の小説が原作で、映画化、ドラマ化、アニメ化するのではないかと思っています。

2025年下期より、IP展開本格スタート

菊地:この流れが、具体的にどのように業績に影響するかをご説明します。今年から来年にかけて、もう少しかみ砕いて見てみると、この下期からIP展開が本格スタートします。まず、映画やドラマが始まる数ヶ月前に、映像化の情報解禁が始まります。

坂本:よくティザーと言いますね。宣伝をしたり、バラエティー番組に出演者が出たりといったことですよね。

井上:プロモーション期間と言われているものですね。

菊地:おっしゃるとおりです。情報解禁されたタイミングで、原作である弊社の小説やコミックにその帯が巻かれます。

例えば、6月13日から映画公開されている『青春ゲシュタルト崩壊』という作品には、映画の主人公になった俳優の写っている表紙が巻かれています。

坂本:その映画専用の表紙なのですね。

菊地:「『青春ゲシュタルト崩壊』が映画化して、この方たちが出ますよ」ということで、書店の映画化コーナーでポスターと一緒に大きく展開されます。

映画ももちろんヒットすればありがたいのですが、映画は「当たるも八卦当たらぬも八卦」というところがあります。少なくとも映画化が発表になった段階で全国の書店に大量に本が並びますので、映画を見る方・見ない方も、俳優の写真が表紙の本を記念に購入していくことがあります。

井上:今までと違う層の方が書籍を購入する機会になるわけですね。

菊地:本を読む習慣がなかった人も含めて、ティーンエイジャーが「私の推しが主役になっている本だ。これを読もう」ということで、本を読んで自分の推しの世界に没入するというループになっています。

坂本:もちろん、読んだら「おもしろいではないか」という話にもなりますし、映像を見ると没入できる人もおそらくいますよね。

菊地:また、これからドラマ化決定の情報解禁が2本あります。今年の年末にかけて、テレビドラマが2本スタートしますので、原作もドラマ化決定という表紙や帯がついたかたちで店頭に並ぶことになります。

アニメ化決定の情報解禁については、先日6月10日に『鬼の花嫁』の情報が解禁されました。『鬼の花嫁』は、紙の書籍と電子書籍を合わせて580万部売れている大ヒット作品です。とうとうテレビアニメ化が決定し、かなり大きなニュースではないかと思います。

情報解禁したタイミングで新刊を発売しています。新刊と既刊が、アニメ化決定作品として店頭に並んでいます。

坂本:かなりロングランでの人気が期待できそうですね。

井上:『鬼の花嫁』は、どのような層に人気がある作品ですか?

菊地:30代から50代、60代の女性まで、幅広いです。弊社の社内でも、20代の女性で「私も大好きなのです」という人もいれば、50代くらいの方で「実は私も『鬼の花嫁』が大好き」という人もいます。

文庫本とコミックがあり、電子でも読めますので、かなり幅広い層にリーチしているのではないかと思っています。

さらに、スライドには2026年の第4四半期までスケジュールを掲載しています。だいたいこれくらいのスケジュールで、アニメと映画が放映されていきます。放映する数ヶ月前から半年ほど前に、店頭等でキャンペーンが始まっていくかたちです。

したがって、全国の書店での店頭展示が相当賑わってきます。来年は映画が全部で5本入ってきますので、店頭では常時、なんらかの映画のキャンペーンが展開されている状態になると思います。

坂本:毎年、先の「弾込め」というようなかたちで進めていますが、2024年はいかがでしたか?

菊地:2024年は、残念ながら1本もありませんでした。

坂本:つまり、最近の『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』くらいから見えてきたビジネスなのですね。

菊地:2023年は、3本あります。その中で、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が大ヒット作品になりました。これで一気に弊社の認知度が広がり、「おもしろい作品はありませんか?」と、この業界からの引き合いもいろいろありました。

坂本:以前もお話ししていただきましたが、映画化には時間がかかるため、2023年に映画化すると決まったら、それまでの約5年間で販売数が増えていくのでしょうか?

菊地:おっしゃるとおりです。『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』も、映画化の7年前に発刊された作品です。じわじわと売れて、映画が決まり、映画の情報解禁でブレイクが始まって、映画とともに一気に盛り上がりました。

これからすべてがそのように大ヒットになるかはわかりませんが、これだけの作品の映画、ドラマ、アニメが連続でスタートしていくと、弊社のコンテンツが注目されてくるのではないかと思います。

坂本:このビジネスモデルはこれからということですね。

先ほど「業界から引き合いがある」というお話がありましたが、声がかかるパターンが多いのか、御社からアニメ化、ドラマ化、映画化の売り込みに行くパターンが多いのか、どちらが多いのでしょうか?

菊地:当初は声をかけていただき、「ありがとうございます。本当にいいんですか?」というところから始まりました。

数年前からは弊社にライツチームという専任の部隊を設け、そのチームが日夜、映画業界やテレビ業界、コンテンツ業界の各社を訪問して人脈を作り、ヒット作品もまだ知られていない作品も含めて、積極的に案内している最中です。これによって映像化が決まっています。

井上:能動的にもセールスをかけているところですね。

菊地:そのとおりです。Z世代はなかなか映画館にも書店にも行かないため、すべてのコンテンツ業界でリーチが非常に難しい世代です。うまくフィットした作品がほとんどないものですから、各社からの注目もかなり高いのかと思います。

実際に多くの若い人たちが映画館や書店に足を運ぶという事象が起きていますので、さらに盛り上げていくことができればと思います。

坂本:コミックや小説がすでにできている状況ですので、映画化やドラマ化が増えても、新たにリソースがたくさん必要になるわけではないのでしょうか?

菊地:過去の作品に関してはおっしゃるとおりです。一方で、実はうれしいお話として、各社から「売れる原作を最初から映像化込みで一緒に企画しよう」との声もいただいています。

いくつかの会社とそのようなプロジェクトを動かしており、数年先の映像化に向けた書籍コンテンツの企画を一緒に考えています。

坂本:後ほどお話があると思いますが、御社のライトノベルなどを書いている作家を編集の方が握っているため、「この方にイチからお願いしましょう」というかたちで、提案がいくらでもできる状況にあるところも強みですよね。

菊地:おっしゃるとおりです。

シリーズ累計580万部「鬼の花嫁」TVアニメ化決定!

菊地:『鬼の花嫁』は、シリーズ累計で580万部を突破しており、電子書籍と紙の書籍で販売しています。文庫本も電子コミックも紙のコミックも、まだまだ巻を重ねる予定があり、あと4年から5年ほど続きます。

坂本:週刊誌の漫画のようにストーリーを引き伸ばすのではなく、ストーリーがまだ長いのですね。

菊地:そのとおりです。したがって、これがテレビアニメ化されると、さらにロングランで広がっていく可能性があります。

『鬼の花嫁』は、和風あやかしシンデレラストーリーです。英語版の電子書籍を北米で売り出したところ、ヒットしています。まだ大きくアピールしていませんので、アニメが出来上がったタイミングで「Netflix」や「Amazon Prime Video」も含めて、このコンテンツを世界各国に広げることができるのではないかと考えています。日本の鬼や和装の花嫁などは外国の方がとても興味のあるコンテンツだと聞いています。

井上:このようなテイストが外国人の方は大好きなのでしょうね。

坂本:映画化して世界展開するとなると、ものすごいことになる可能性がありますね。

菊地:グローバルに広がるための大きなステップになるコンテンツになるのではないかと思います。

井上:すごい原石ですね。

2025年下期“新創刊”作品を、積層型に発刊

菊地:中期経営計画で掲げているとおり、新創刊を積極的に出していきます。すでに、スライドに掲載している4つの新創刊レーベルを展開しています。

さらに、今年の10月、11月、12月には、「コミックゼライズ」「OZコミック」「BeLuckコミック」という新しいレーベルを創刊する予定で、今着々と準備しているところです。

スライド右側に掲載している発刊点数計画とは、新刊の書籍の発刊点数の計画です。第1四半期は110作品、第2四半期は114作品と低調に推移していましたが、第3四半期には130作品、第4四半期には162作品と、尻上がりで発刊点数が増える予定です。

坂本:下期に発刊点数が増える計画になっていますが、この要因を教えてください。

菊地:ここ数年来、新卒の社員を最初から編集部に配属しています。8名ほどを各編集部に入れて育成していますが、昨年の新入社員は、すでに新刊が発刊できる戦力になっています。

坂本:完全な戦力ですね。

菊地:今年4月に入社した方たちも、来春には新創刊ができるだろうと考えています。

坂本:スキルを身につけるスピードが非常に速いと思います。おそらく他社では、相当の実力がないとこれほど早くできないですよね。

菊地:弊社は個人プレーというよりはチームで作りますので、まだまだキャリアが浅いメンバーも、チームあるいは先輩たちに助けられながら、きちんと創刊させていくことができています。

その方たちが育ってきている分、計画している発刊点数は出せるだろうと考えています。

売上計画についても、上期はかなり厳しめでした。下期に向けて現在製作にも取り組んでいますので、今まで以上に発刊点数を多くするためのコストがかかっており、それが営業利益に多少響いているところがあります。

しかし、その果実が第3四半期、第4四半期に大きく広がり、来年のIP展開にあわせて、電子書店とリアル書店が一気に盛り上がってくるのではないかと予測を立てています。

坂本:これに取り組んでおかないと、おそらく2年後、3年後の刈り取りにつながらないため、やはり成長のために継続していくかたちですね。

生成AI活用による、生産性向上施策の事例

菊地:中期経営計画に掲げている、生成AI活用による生産性向上施策の事例です。新聞でも生成AIの記事がない日はないくらい、世の中ではAIが当たり前になってきていると感じています。

弊社では、全事業部で生成AIを活用しようと号令をかけています。例えば、「オズモール」では、新規で掲載するコンテンツの原稿について、今までは外注でライターに依頼していました。

しかし、システムに「生成ボタン」を設置し、ボタンを押すだけでAIが瞬時に原稿を制作してくれる仕組みが出来上がっています。納期の短縮、コストの圧縮を実現しており、コストはほぼゼロです。

また、今開発中ですが、小説投稿サイトで書籍コンテストを開催すると、何百作品という膨大な数の作品が入ってきます。編集者が手分けして夜な夜な読み通す作業が必要ですが、そのうちのわずか数作品しか本になりません。

そこで、AIに読んでもらい、ある程度の作品についてはAIに1次選考してもらいます。もちろん最終選考は編集者が行いますが、このように業務の簡略化に動いています。

さらに、「オズモール」は大きなシステムが動いていますので、データベースの統合作業で生成AIやルールエンジン(RPA)を活用し、一気に効率化することを現場で取り組んでいるところです。

スターツ出版のメディアブランド

菊地:メディアソリューション事業についてお話しします。弊社はもともとメディアの会社で、『オズマガジン』をはじめとして、長く継続する信頼と安心のブランド価値で、お出掛けを支援しています。

とうの昔に雑誌の時代は終わっていますが、『オズマガジン』は隔月で粛々と良いものを発刊しています。

『メトロミニッツ』はフリーマガジンです。東京メトロ駅構内に置いており、毎月10万部を発刊しています。

『アエルデ』は創業からの事業で、スターツグループの非常に強い販促支援にもなっています。地域密着の媒体で、42年間続けています。

女性に人気の「オズモール」もすでに29年が経ち、まもなく30年を迎えます。

OZのプレミアム予約とは?

菊地:「OZのプレミアム予約」についてご説明します。ほとんど女性にご利用いただいていますので、男性はご存じない方もいるかもしれませんが、利用シーンに合わせて、厳選されたお店に予約送客するという予約サービスです。

ネット上での予約サイトで、レストラン、ホテル、温泉、ヘアサロン、ネイルサロンなどが予約できます。

掲載店舗数、予約組数は順調に拡大

菊地:スライドのグラフのとおり、予約の組数は順調に拡大しています。

世の中には当然、誰もが使っている大手のメジャーなサイトがあります。一方で、「オズモール」は我々のような中堅出版社が運営しているサイトであるにもかかわらず、なくならずにむしろじわじわと利用者数を増やし、レストランやビューティサロンの掲載店舗数も少しずつですが着実に増えています。

坂本:「OZのプレミアム予約」のビジネスモデルは送客手数料をもらうものですが、他社のように月額の固定費はかからないのでしょうか?

菊地:月額の固定費はいただいていません。

坂本:本当に送客した分だけというWin-Winのビジネスなのですね。

スライドの折れ線グラフにおいて飛び出ている部分があるのは季節性で、忘年会シーズンなどにはやはり盛り上がるのでしょうか?

菊地:毎年、第4四半期の11月から12月にかけて急激に予約が入ってきます。スライドでは前期第4四半期の12月が過去最高を記録しています。

OZのプレミアム予約 女性向け高級ラインを強化

菊地:「OZのプレミアム予約」も毎年、いろいろな新サービスを開発しています。現在は女性向けの高級ラインを強化しようと、「大人女子会」をテーマにした高級店ランチとして、1人1万円前後ぐらいのラグジュアリーなエレガンスランチを開始しています。

やはりコロナ禍以降、人間の行動パターンがやや変化し、ディナーや夜遅くまでの2次会、3次会に行くようなパターンがかなり少なくなりました。その一方で、ランチやアフタヌーンティーに行く方が非常に多くなり、そこで利用する単価も上がってきたという傾向があります。

そこで、高級店を中心としたエレガンスランチを開始しました。今、キャンペーン中で、4人で予約すると1名分無料になります。対象のお店は100店舗くらいで、高級店ばかりです。

井上:すごいですね。

坂本:それはうれしいですね。割り勘で安くするといいですよね。昔なら10人ぐらいの宴会でこのようなキャンペーンはよくありましたが、4人で安くなるのはかなりお得ですね。

菊地:ランチの場合は基本的に、1人からせいぜい2人のケースが多いのですが、それが3人以上で来てくれるのがお店としても非常にありがたいのです。

坂本:確かに、4人席に2人で座るパターンもあります。それが3人になると単価が上がるわけですね。非常におもしろいです。

菊地:そして、いろいろなサイトの中で「オズモール」が一番、アフタヌーンティーの送客をしているという実績があります。

そこで、夜のアフタヌーンティーも開始しました。アフタヌーンティーは今まで、ランチが終わってディナーが始まるまでのアイドルタイムにホテルなどで実施していました。

夜も時間をかけてディナーをじっくり召し上がるのではなく、アフタヌーンティーで楽しみたいというニーズが多くありそうだと、マーケティングでわかってきたため、このようなサービスをスタートしました。

坂本:私もよくアフタヌーンティーに行くのですが、意外と単価が高いです。1万円に近づいているため、確かに採算は取れそうに思えます。

菊地:ユーザーとしては、写真が映えてSNSにも上げられますし、ゆっくりお茶やお酒を飲めますので、双方にとても良いサービスではないかと思っています。

成長投資に着手

菊地:今まではなかった成長投資に着手しました。豊富なキャッシュを基に、資本提携・M&Aへの成長投資に舵をきると、宣言しています。

「利益剰余金」は80億円越え(2024年末)

菊地:スライドのグラフは弊社の利益剰余金の推移です。昨年末でとうとう80億円を超えました。コロナ禍前までは20億円から30億円だったのですが、この5年ほどの好業績でキャッシュが増え、このままのペースでいくとあと2年くらいで100億円を超えていくだろうと考えています。

豊富なキャッシュを“成長投資”に活かす

菊地:この豊富なキャッシュを成長投資に活かしていこうと、自社でも毎年、新卒を十数名ずつ採用して新しいサービスをどんどん作っています。

その上でさらに加速しようと、自社にはないノウハウやコンテンツを持つ企業との資本提携やM&Aを推進していきたい考えです。具体的には、デジタルソリューション企業、あるいはコンテンツサービス企業、マーケティング企業に目星をつけてアプローチ中です。

観光DXアプリ開発・運営(株)RelyonTripをM&A (6/6)

菊地:そのような中で初めて、6月6日に観光DXアプリを開発・運営するスタートアップ企業のRelyonTripをM&Aしました。

お出掛け&旅行のタイパ計画アプリ「SASSY」は、今のZ世代にとって非常に使いやすい操作性を持っているアプリです。「Google」や「Instagram」と連携して口コミが投稿でき、5言語に対応しており、インバウンドの方も使い始めています。

弊社の中でスタートアップチームを作り、RelyonTripの社長の西村さんと一緒に「SASSY」と「オズモール」の機能を良くしていこうと考えています。また、新たなアプリも開発してもらおうと考えているところです。

SASSYとメディアソリューション事業のシナジー

菊地:「SASSY」とメディアソリューション事業のシナジーについてです。「SASSY」は、「Instagram」「Google マップ」と連動した、行きたいところを簡単に見つけられる5言語対応アプリです。

「SASSY」と、長年続く弊社のブランドメディア、そして「オズモール」の予約送客機能を掛け算しながらシナジー創出に取り組んでいきます。

もともと弊社は、スライドに記載のメディアで観光促進のお出掛け支援のビジネスを展開していました。ここに「SASSY」というプラットフォームをうまく掛け算することで、さらに加速できるのではないかと考えています。

株主還元

菊地:株主のみなさまへの利益還元を重要な経営課題の1つとして認識しており、配当方針を変更しました。そして大幅に増配し、株主の優待を変更しています。

株主還元

菊地:年間配当は2022年が30円、2023年が60円、2024年が110円で、一気に配当を上げてきています。今年は120円を予定しています。配当性向30パーセントを目標として、配当水準の向上に努めていきたい考えです。もちろん安定的、継続的な配当を実施することを基本方針としています。

株主優待については、従来は弊社のヒット作の本をプレゼントしていたのですが、株主さまから「そのヒット作はもう買ったよ」というお声がありました。そこで、「OZのプレミアム予約」で利用できる2,000円、3,000円の電子クーポンをプレゼントするかたちになりました。

坂本:配当については、どちらかというと下期偏重です。御社はヒット作に恵まれれば業績が伸びるところがありますが、経営を安定させるために長期的な目線での種まきや、収益の分散化を図られていると思います。もう少し中間の段階で配当を引き上げる考えはないのでしょうか?

菊地:配分の比率に固執しているわけではまったくありません。ただし、現実として下期の業績のほうが圧倒的に良いため、その比率にあわせているイメージです。今後の状況によっては、等分にする可能性もありえると思います。

今後3年で、売上100億円・営業利益30億円突破へ

菊地:今後3年で売上高100億円、営業利益30億円を突破していきたいと考えています。IP展開、新レーベルの創刊とコミックシフト、そして全事業で生成AIを用いて効率化を進めていきます。

さらに、3ヶ年計画では発表していませんでしたが、成長投資を積極的にかけていきます。3ヶ年、あるいは5ヶ年で大きく伸ばしていけるのではないかと考えています。

企業風土

菊地:企業風土です。こちらは「穏やかで、伸び伸びとした、社員の成長が持続できる企業風土」を掲げています。

女性、若手の多い社員構成

菊地:弊社は女性、若手が多い社員構成です。女性比率は71パーセントで、管理職も女性が増えてきました。ここ数年で新卒、第2新卒を積極採用したため、20代の社員が100人以上にまで増えてきており、平均年齢は34.6歳です。

社員を育成する各種施策

菊地:若い社員を育成する各種施策を設けて実施しています。会社のロイヤリティを高めて早期に活躍できる人材を育て、新卒1年目から活躍できるような仕組みです。

もちろんベテランはより活躍できるようにと、新入社員から中堅、ベテランに至るまで、人材育成に相当力を入れています。

コミュニケーションが活発で、社員同士‘仲の良い’社風を後押しする制度

菊地:育成だけではなく、やはり「みんな仲良く」というのが、私は一番の肝だと思っています。今の世の中は、業績が良くて給与も上がり、自分の力がついたら次はより良い条件のところに転職するという流れになっていると思います。

そうではなく、人生をもっと楽しんでほしいと思っています。コミュニケーションが活発で社員同士が仲の良い雰囲気で、幸せだと思ってもらえるような会社を作っています。業務を離れて仲間を広げることで、刺激し合ってより視野を広げられるように、スライドのような各種施策を行っています。

スライド6番目の「moaジャム」は、全社員対象の1泊2日の懇親旅行イベントで、もう20年以上続けています。

坂本:社長も参加するのですか?

菊地:私が始めたため、当然行きます。コロナ禍で2年ほどできなかったものの、今年は7月に半期のキックオフと一緒に行う予定で、これが20回目です。

経営体制の強化(女性役員2名選出)

菊地:経営体制を強化しました。今回、執行役員として女性を2人選出しており、女性が経営にどんどん参加する会社にしていきます。おそらく10年経てば、この半分以上が女性になると思っており、それは世の中の流れだと思っています。

弊社は、ビジョンの「感動プロデュース企業へ」と邁進していきます。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:グループ内の関連性について

坂本:「御社はスターツグループで、たくさんの会社がグループ内にあります。その関連性がないように思えるのですが、実際に関わりはあるのでしょうか? 今後の方針などがあれば教えてください」というご質問です。

菊地:『アエルデ』は弊社の発祥の事業ですが、もともと、不動産のビジネスをしているスターツのお客さまに向けて作った事業です。

不動産業は地域密着産業で、地域の人にいかにその地元で生活するのが便利か、あるいは土地を持っている地主が喜んでくれるかにフィーチャーして地域新聞を作ったことから、スターツ出版がスタートしています。

それから30年、40年と、この雑誌メディアをスターツグループがみんなで利用しています。おそらく不動産業界の中で出版社を持っている会社はスターツだけだと思います。スターツグループには今9,000人おり、その営業部隊はお客さまに対して、『オズマガジン』を持っていっています。

ただ不動産の営業するのではなくて、ご家族向けに弊社の紙メディアを持っていくことが信頼にもつながりますし、ソフトなイメージも持っていただけるのです。しかも、昨今は書籍がヒットしているため、それをお客さま向けに持っていっています。

実際のビジネスの部分では、例えばスターツグループは、地方行政の市街地の再開発事業などにかなり力を入れています。

行政との大規模な開発案件のコンペにもかなり出ています。そこでの他のデベロッパーとの比較の中で、スターツグループはスターツ出版があり、メディアで紹介するだけではなく「オズモール」で送客もできます。つまり、街の賑わいを演出することができます。これからはM&Aした「SASSY」を利用してお出掛け支援もできるという武器も持つことができました。

スターツグループにとっては、弊社のアセットやノウハウをグループシナジーとして利用できる機会がさらに増えてくるのではないかと思っています。

質疑応答:中期経営計画を進める上での課題について

坂本:「中期経営計画を着実に遂行していく上で、現時点の課題やボトルネックを教えてください」というご質問です。ヒット作は出ていますし、中期経営計画期間中の種まきはけっこう終わっているのではないかと思っているのですが、いかがでしょうか?

菊地:おっしゃるとおり、種まきはかなり終わっていますね。弊社単体で考えると、少なくともこの中期経営計画の中では大きなリスクはそこまでないと思っています。

坂本:どんなリスクがあるだろうと私も考えてみましたが、また新型コロナウイルス感染拡大のようなことがあったとしても、Webは厳しいかもしれませんが、今ウェイトが大きい出版で儲かるためリスクはなさそうな気がします。

井上:コロナ禍でみなさまのエンターテインメントに対しての意識も変わってきました。

菊地:IPに対する注目度はさらに高まっていますし、グローバルを見ても海外から日本のIPに対する期待度や注目は以前よりも高まっています。鉄鋼、アルミには関税がかけられていますが、コンテンツにはそのような流れはないように感じます。

インバウンドが増えて、日本の魅力を肌で感じている外国人は世界的に増えています。『鬼の花嫁』のような和服を着て歩いている外国人の女性も多く見かけます。『鬼の花嫁』はそのようなかたちで大きな火付け役になってくると認識しています。

坂本:また、他社が勃興してきたとしても、これは時間がかかるビジネスのため、中期経営計画期間中は揺らぐことはないですよね。

菊地:基本的に弊社のビジネスモデルは、仕掛けてから最短でも半年、普通で1年、長いものは3年ぐらいかかっています。この中期経営計画期間中のものは過去1年半くらいで仕掛けて、成果が見えてきているため、よほどのことがない限りはそのまま走ります。

むしろ5年後を見た時にAIの時代になり、まったく違う状態に変わると思います。

坂本:AIがコンテンツを作り始めたらどうなるかわからないということですか?

菊地:おそらくAIで世の中は激変するでしょうから、どのように変化してもその変化に対応していけばよいだけです。そのために今から全事業でAIをどんどん使っていこうと、現場で取り入れてもらっています。

坂本:社長の在任は非常に長いですが、社長がワンマンで全部決めているわけではないのですか? かなり現場に任されているイメージがあります。

菊地:まったくワンマンではありません。重要なことは全部、現場の役員や部長がしてくれています。

井上:加えて、若手が活躍しているイメージがあります。

坂本:そのような組織のため、その点もボトルネックにはならないかと思います。

菊地:私はおかげさまでたまたま長くいるだけです。

坂本:この手の質問では「悪いことを言えなければ駄目だ」という人もいますが、「中期経営計画期間中で」というご質問でしたので、ボトルネックはないのではと個人的には感じて、視点を変えて何度もお尋ねしました。ご回答によりイメージがわいてきました。

菊地:育成についてお話ししましたが、私も永遠にいるわけではないため、若い新入社員から役員までを育成しているのです。

部長クラス以上は私と同じ感覚で発想やジャッジができるような育成もしています。すでに2年前から私が直々にリーダー養成講座を数十人に対して行いました。今日、最後の部長陣に対する講座が終わったところです。

過去の二十数年間の、生々しい良かったことと悪かったことを含めて、その時に何を考えどのように判断をしたのか、これからもリーダーとしては必要なことや、良い時ほど用心しなければいけない、悪い時には速攻で考えて次の手を打つのだといった内容を、徹底的に教え込んでいます。

私に次ぐ人材はもうたくさんいるのではないかと思っています。ある程度の会社になってきたため、私が全部に首を突っ込んでいるわけではなく、私は上のほうのひとつまみだけで、あとは現場でしてくれている状態です。

質疑応答:成長投資額のイメージについて

坂本:成長投資に舵をきるというお話でしたが、どのぐらいの額を投資するイメージでしょうか? 例えば、営業キャッシュフローの何パーセントを成長投資や設備投資に使って、いくらを配当に回すなどと決めている企業もあります。

スライドのグラフでは利益剰余金が増え続けていますが、例えば、どれくらい増えた分を使うのでしょうか? 今後も伸び続けることも予想されます。当然、案件によっても使う金額は違うかと思いますが、どのような使い方をする予定なのか、大まかでけっこうですのでイメージを教えてください。

菊地:イメージとしては数十億円規模です。もちろん無借金で、それだけに耐えられると思っています。機が熟して、お金を一気に使って何倍にも伸びるようなことができれば、それもありえると思います。

M&Aを始めると表明してからようやく第1回目が実現できました。これは短期間で行ったものです。まずはこのRelyonTripで実績を作ります。早期に実績を作る自信は、私にも現場メンバーにもあると思います。

そして、ここで実績を上げながら、もう新たなデジタルソリューション企業やコンテンツマーケティング企業をピックアップして種をまいているかたちです。これからさらにスピードアップしていきたいと思っています。

この中期経営計画で売上高100億円を超えてきますが、そこからは120億円、150億円、200億円とスピードも増していかなければいけません。

今までは30億円、40億円の期間が長すぎました。100億円以上になってから成長させるとなると、自前ではかなり時間がかかってしまい、新入社員を育てているだけでは難しいです。やはり我々とうまくマッチングする企業をM&Aする必要があります。

いろいろな企業の成り立ちを見ると、そのようにしているところが成長しています。弊社もそのような道をたどっていくのだろうと考えています。