内容

矢野浩史氏(以下、矢野):日本精化株式会社代表取締役社長の矢野浩史です。本日は、当社の第14次中期経営計画の見直し説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日は、スライドに記載した5つの項目についてご説明します。第14次中期経営計画は、2023年度から2026年度の4年間となっています。2025年3月で、前半の2年間が終了しました。本日は、前半2年間の振り返りと、後半2年間の活動について、当初計画の見直しも含めてご説明します。

経営理念・パーパス・ビジョン

当社の経営理念・パーパス・ビジョンについてご説明します。当社では、経営理念を普遍的なミッションとして位置づけ、「日本精化は化学を通じて社会に貢献する」「日本精化は我社をとりまく全ての人に貢献する」「日本精化は社員の自己実現に貢献する」を掲げています。

2021年10月に、長期ビジョン「NFC VISION 2030」において「『キレイ』のチカラでみんなを笑顔に」をカンパニーステートメントとして掲げ、2030年のありたい姿として7つのゴールを設定しました。

昨年3月には、現在の存在意義を明確にしたパーパスも新たに策定しました。価値観の多様化や、先行きが不透明で正解のない現代社会において、なぜ当社が存在するのか、どのように社会に貢献するのか、どのような製品やサービスを提供するのかを改めて見つめ直し、「『カガク』と『キレイ』のチカラで笑顔あふれるサステナブル社会創造に貢献し続ける」を掲げています。

当社が長年大切にしてきた経営理念を継承し、それに加えて「NFC VISION 2030」やパーパスを策定するなど、中期経営計画の前半2年間は社員が一丸となるための未来に向けた指針を築いてきました。

中期経営計画 見直し概要

中期経営計画の見直しについてご説明します。概要と経営指標です。2023年5月に公表した第14次中期経営計画について、4月30日に計画の見直しを公表しました。

スライドの表は、当初計画との変更点と、今回見直しのポイントをまとめており、変更点を赤字で示しています。経営目標数値は、売上高、営業利益、EBITDA、ROICを見直しました。設備投資は4年間で40億円増加の160億円に見直し、資本政策/株主還元ではDOEと1株当たりの配当額を見直しています。これら見直しの内容は、後ほど詳細をご説明します。

4年間の基本方針である、「積極的な投資による成長基盤ステージ」の方針に変更はありません。事業ポートフォリオの見直しについては、中期経営計画スタート時にセグメントを再構築しており、今後も継続していきます。

戦略品目の設定については、「化粧品用および医薬品用のリン脂質素材」と、「ペロブスカイト太陽電池用素材」を戦略品目と設定していること、研究開発投資の方針に変更ありません。

中期経営計画 経営指標の見直し

経営指標の見直しについてご説明します。スライド左側の表は、第14次中期経営計画最終年度までの見通しとなります。売上高は当初目標を下回る380億円、営業利益は57億円から1億円増の58億円、EBITDAは3億円減の約75億円となりました。なお、利益率は向上する見込みです。

主な見直しは、環境衛生セグメントにおいて、新型コロナウイルス感染意識の低下により手指消毒剤市場が縮小した影響が大きく、下方修正しています。機能性セグメントにおいては、ビューティケア分野とヘルスケア分野は堅調に推移しており、上方修正しています。また、設備投資は4年間で120億円から160億円へと見直し、基本方針である積極的な投資を加速していきます。

スライド右側の表は、あくまでも参考情報として、現時点での2030年度のありたい姿を示しています。売上高は当初目標を20億円下回る480億円、営業利益は5億円プラスの82億円、EBITDAは据え置き、ROICは9.0パーセントを上回る10.0パーセントを目指していきます。

営業利益の上振れ要因としては、戦略品目である「ペロブスカイト太陽電池用素材」が、2027年頃から数億円の売上を見込んでおり、2030年度に向けて順次拡大していく計画です。

投資計画(ビューティケア分野)の見直し

設備投資計画の見直しについてご説明します。2023年5月に公表した当初計画では、「化粧品用リン脂質素材設備の増設」の投資額は23億円、完成目標は2026年度と公表していました。

今回の見直しにより、化粧品用リン脂質素材については、現有設備を有効活用することで生産能力を増強することに変更しました。化粧品用機能性油剤の新プラントを投資額約86億円にて建設することを優先課題としました。化粧品用機能性油剤プラントは、「Cosmetic Ingredients Plant」の頭文字をとって「CIP」と略します。

見直しの背景として、ポイントが2つあります。

1つ目は、この2年間で、化粧品用リン脂質素材が計画に対して未達であったことです。主な要因として、原発の汚染水問題、中国景気の減速が相まったことが背景にあります。ただし、化粧品用リン脂質素材を戦略品目として継続する方針は変更していません。引き続き、スキンケア用途以外のヘアケア用途やメイクアップ用途など、リン脂質の応用範囲を拡大する研究開発や、海外向けの拡販に注力していきます。

2つ目は、化粧品用機能性油剤の特に海外での販売が拡大し、当初目標を上回る推移で進捗しており、生産設備も高い稼働率が定常化しています。

ビューティケア分野 海外売上高比率推移

スライドは、ビューティケア分野全体の海外売上高比率を時系列で示したグラフです。中期経営計画の前半2年間の2023年度から2024年度の実績を見るとおわかりのように、海外売上高比率が急増し、2022年度実績の24.2パーセントから、2年間で40.2パーセントにまで上昇しています。これを牽引しているのが化粧品用機能性油剤です。

前中期経営計画期間中から、サステナブル対応に重点を置いてきました。原料のRSPO(持続可能なパーム油に関する円卓会議)対応、NON-GMO対応などをいち早く推進したこと、ISO16128における自然由来指数やCOSMOS認証の拡充などが相まって、主に海外顧客からの化粧品用機能性油剤の需要が増加したことが、ビューティケア分野全体の海外比率を向上させている要因となっています。

今後も、さらなる需要拡大を見込んでいます。

グローバル化粧品市場 市場成長率

グローバル化粧品市場の成長についてお話しします。外部公表データですが、2031年までの年平均成長率は7.2パーセントを予測しています。分野別の年平均成長率では、機能性油剤のメインターゲットであるMakeupは、8.1パーセントの成長率が見込まれています。

このように、引き続き海外を中心とした市場成長が予測されることを背景に、今後もさらなる需要増が見込まれます。このような実績や市場環境も鑑みて、約86億円のCIP投資を決定しました。

化粧品用機能性油剤プラント(CIP)概要

CIPの設備について、簡単にご説明します。投資の目的として、将来の需要対応が第一であり、供給安定性の確保と継続的な事業利益の獲得を目指します。高砂事業所の現行設備も老朽化が目立ってきているため、職場環境を整備することで従業員エンゲージメントを高め、最新設備導入による環境負荷の低減を図り、サステナブル生産に対応する狙いもあります。

品質保証体制の整備も重要な課題として考えています。昨今、お客さまである化粧品メーカーからは、原料のサプライチェーンマネジメント強化を求められており、査察対応などの頻度も上がることが予想されます。また、労働人口の低下がますます進行していく中で、自動化や省力化も図っていきます。

スライド下の表は、新設設備のサマリーです。高砂事業所の投資額は約86億円で、新プラントを建設します。投資後の生産力は、現在の2.1倍から2.3倍程度となる見込みです。建設期間は2025年から2029年の完成を目指し、営業稼働は2029年を予定しています。

設備投資

CIP投資も織り込んだ、グループ全体の設備投資の見直しについてご説明します。2023年度から2026年度までの4年間は、約160億円の設備投資を実施していきます。化粧品用リン脂質素材の設備増設は、現有設備の有効活用と改造で対応していく予定です。

CIP投資が最も大きな投資となりますが、2024年度は加古川東工場の事務厚生棟の新設をしました。それ以外に、新基幹システムなどのデジタル化投資を計画しており、予定どおりに進捗しています。

2025年から2026年度の投資額は、CIPの建設費用、実際には建設仮勘定というかたちになると思いますが、こちらの約49億円が含まれています。先ほどもお話ししたとおり、稼働は2029年度中を予定しています。

中期経営計画 サブセグメント別 収益計画 見直し

事業戦略についてご説明します。スライドでは、サブセグメント別の売上高と営業利益、EBITDAについてご説明します。中期最終年度2026年度の全体の売上高は、当初計画410億円から380億円と、減収となる見直しとなりました。市場環境が大きく変化したハイジーン分野で、売上高を119億円から99億円と、20億円の下方修正をしたのが主な要因です。

営業利益は1億円増の58億円で、営業利益率は13.9パーセントから15.3パーセントに向上する計画です。EBITDAは1億9,000万円減の75億1,000万円、EBITDAマージンは19.8パーセントと、利益率は向上する計画となりました。減価償却費については、当初計画に対して約3億円の減少となっています。

営業利益は、1億円程度の増加にとどまる見直し計画となっています。環境衛生製品での市場環境の悪化による3億2,000万円の減少や、ファインケミカル分野での4億3,000万円の減少が主な減少要因として挙げられます。一方で、ビューティケア分野で6億2,000万円、ヘルスケア分野で1億6,000万円増加する見直し計画となっています。

事業戦略・収益計画 ビューティケア分野

セグメントごとにご説明します。スライド左側は、上から中期経営計画前半2年間の進捗を記載しています。収益進捗では、前中期経営計画最終年度の2022年度との対比を記載しています。中段の後半2年間の事業戦略および収益計画では、当初計画と見直し計画の差異を示しています。下段は、2030年までの見通しとなっています。

ビューティケア分野においては、前半2年間は、リン脂質素材が主に中国向け販売の影響でやや減速しました。一方、機能性油剤の海外売上高が拡大し、2022年度対比では、売上高は17億7,000万円、営業利益4億7,000万円の増加で、2023年、2024年と増収増益で進捗しています。

後半2年間の事業戦略に変更はなく、引き続きサステナブル対応製品の拡充や、リン脂質素材を戦略品目と位置づけて注力していきます。利益率が高い国内の美白素材の売上が減少し、2025年度は一時的に利益が減少するものの、一過性と考えており、2026年度からは回復する見通しです。

当初目標との比較では、売上高は4億円増加の98億円、営業利益は6億2,000万円増加の24億7,000万円に見直しています。2030年までの見通しとして、売上高は海外を中心に今後も増加していきますが、2030年は新プラントの完成による減価償却費の負担が始まることを織り込んでいますので、一時的な営業利益の減少を見込んでいます。

事業戦略・収益計画 ヘルスケア分野

ヘルスケア分野です。医薬品業界向けのサブセグメントです。前中期経営計画期間中に、53億円の投資により、2つのプラントを新設した医薬品用リン脂質事業も含まれています。1つ目の新設プラントは、ギリアド・サイエンシズ社向けです。計画どおり商業生産を開始し、順調に推移しています。2つ目の新設プラントは、旧設備からの移行を3月に完了させています。

2022年度対比では、売上高は3億9,000万円増の60億5,000万円、営業利益は3億2,000万円増の10億2,000万円で増収増益となりました。医薬用リン脂質事業は、後半2年間の事業戦略に大きな変化はなく、当社独自の技術が発揮できる分野で、新たなテーマ獲得に注力していきます。

特に、独自素材を活用したリポソーム製剤のテーマ獲得や、湘南ラボを起点としたオープンイノベーションでのテーマ獲得、連続合成プロセスの商業化検討などを一層加速していきます。一方で、既存のリン脂質は海外競合の価格攻勢もあるため、新プラントでの効率生産化を目指しています。

2025年は、医薬用リン脂質は一時的に利益が減少しますが、他の医薬中間体の受託品がスポットで増加、ウールグリース誘導体の医薬用途で使用される製品が増加し、利益は増加する見込みです。

最終年度の2026年は、当初目標に対して、売上高は6億円減少して69億円、営業利益は1億6,000万円増の14億2,000万円を見込んでいます。2030年までの見通しとしては、医薬用リン脂質の増加により、営業利益の増収を目指していきます。

事業戦略・収益計画 ファインケミカル分野

ファインケミカル分野です。前中期経営計画の終盤より、過去から収益を下支えした品目の採算性を見直し、選択と集中を推進してきました。

具体的には、販売価格の見直しや終売などを進め、注力品目の選定をしてきました。ウールグリース誘導体、特に飼料用コレステロールにおいては、海外向けにおいて競争激化による販売減少もあった一方で、ペロブスカイト太陽電池用素材は社会実装が順調に進展しています。収益の貢献はまだ先となる見込みですが、量産化検討を着実に進めている段階です。

2022年度との対比では、売上高は14億4,000万円減の56億1,000万円、営業利益は7億3,000万円減の5億1,000万円で進捗しています。「選択と集中」を押し進める中で、過渡期として業績は減収減益となっていますが、一定の目途をつけることができ、今後の事業拡大に向けた土台を構築できた2年間でした。販売減に伴って稼働が低くなりましたが、化粧品原料の増産対応ができたというプラス面もあります。

2025年からの2年間の事業戦略は、引き続きペロブスカイト太陽電池用素材の開発を最注力テーマとして対応していきます。社会実装がますます進展することが予想されるため、スケールアップ検討を着実に進展させて、2030年までの収益化に向けた土台を構築していきます。

化粧品原料事業、医薬品用リン脂質事業に続く、第3のコア事業の探索を進めます。「選択と集中」で選定した注力品目を足がかりに、2030年までの業績貢献を目指していきます。

収益計画としては、売上高はほぼ当初計画どおりで2,000万円増の61億8,000万円、営業利益は4億3,000万円減の7億2,000万円を見込んでいます。中身の構成が悪くなっているために、このような計画で見込んでいます。

事業戦略・収益計画 ハイジーン分野

ハイジーン分野です。前半2年間は、コロナ禍からの反動で、徐々に平常状態に戻りつつある時期でした。この間、手指消毒剤の流通在庫の積み上がりや、インフルエンザの流行などがありましたが、感染意識の低下も相まって市場環境が悪化し、主力製品の手指消毒剤「アルボナース」の売上が伸び悩みました。

その結果、2022年度対比では、売上高は10億8,000万円の減少、営業利益は2億2,000万円の減少となりました。

後半2年間の事業戦略としては、手指消毒剤の依存から脱却を図るべく、食品向け衛生製品の売上拡大と、病院・介護施設向け製品での新規顧客開拓にリソースを投入していきます。前半2年間で研究開発を進めてきた中性濃縮タイプの洗浄剤など、サステナブル対応の新製品が収益に貢献していく見通しです。

しかしながら、感染意識の低下による市場規模縮小の影響が大きいと見込んでいます。収益計画としては、当初目標に比べ売上高は20億円減少、営業利益は3億2,000万円の減少と、大幅に下方修正しました。

研究開発投資

研究開発投資です。セグメントごとの事業戦略に基づき、研究開発を進めていきます。全体としての研究開発の概要をご説明します。

2024年度の研究開発費は、連結で9億7,000万円となり、過去最大だった2023年度を更新し、売上高に対する比率は2.7パーセントとなっています。2025年度予想は前期からさらに増加して10億円、売上高に対する比率は2.9パーセントを予想し、2026年度には10億2,000万円を見込んでいます。

中期経営計画の注力課題である、「マテリアリティ実行による生産活動のサステナブル化」については、継続して取り組みます。その中でも注力するテーマは、フローリアクターの実用化検討と、プロセスシミュレーターを活用した生産効率の最大化です。

フローリアクターでは、すでに独自の医薬用リン脂質素材において、商業化に向けて検討を進め、2030年までの収益化を目指しています。

また、生産効率の最大化のために生産プロセスシュミレーターを導入しています。化粧品用機能性油剤の製造日数の短縮、医薬品中間体や医薬用リン脂質のスケールアップによるコストダウンといった効果も発現し、今後も新製品の開発だけでなく、商業生産品のサステナブル化に努めます。

資本政策・株主還元

資本政策と株主還元についてご説明します。

当社の配当方針は、2022年度よりDOE3.0パーセントを目安として基準にしてきましたが、2023年から3.5パーセントに変更し、1株当たりの配当は1株当たり70円となりました。2024年度は業績の回復もあり、1株当たり配当額は74円とし、9期連続で増配となります。

2026年度の配当額を見直し、1株当たり配当額を100円としています。配当額については、2030年度のありたい姿として1株当たり配当額100円を目標としていましたが、これを4年間前倒しとする計画です。DOEに換算すると、4.3パーセントを目安とします。これに伴い、2025年度の予想はDOE4.3パーセントを目安に、1株当たり配当額は94円となり、10期連続で増配の予定です。

総還元性向は、2023年度から2026年度の第14次中期経営計画期間内、4年間平均で50パーセント以上を目標とすることに変更ありません。2024年度は自社株買いの実績はありませんが、配当総額は約16億6,000万円で、総還元性向は43パーセントとなりました。

2025年度は、先日公表したとおり、120万株、20億円を上限とした自己株式の取得を実行し、中期経営計画期間内で、総還元性向平均50パーセント以上の達成を目指します。

政策保有株式の縮減については、2026年度までに保有比率17パーセント以下、2030年度までに10パーセント以下を目指し進めており、この計画に変更はありません。2024年度の政策保有株式売却実績は4億6,000万円で、現状21パーセントの水準です。

現預金収支計画

現預金の収支計画についてご説明します。前中期経営計画の最終年度であった2022年度末の残高89億円に対し、2026年度末の残高は20億円減少した68億円を見込んでいます。利益の積み上げや保有株式売却などでキャッシュが増加する一方、設備投資の増加や株主還元の増加により、キャッシュは減少となる見込みです。

事業運用で得た資金については、事業継続に必要な分を確保しつつ、将来の成長に向けた人的資本投資、研究開発投資、設備投資などへの投資、株主還元にバランスよく配分することにより、当社のステークホルダーの期待に応えていきたいと考えています。

私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:ハイジーン分野の成長見込みについて

質問者:ハイジーン分野について教えてください。下方修正と言いながら、現在の計画では、売上高は2年間で平均19パーセント増、利益は2割以上の増益のペースという見込みです。下方修正するほど厳しいという認識を持っているにもかかわらず、よい成長を確保できる見込みであることについて、もう少しご説明ください。

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