会社概要 (2025年3月末現在)
上村正人氏(以下、上村):代表取締役社長の上村正人です。まず、会社概要についてご説明します。当社の設立は1973年、東京都八王子市に本社があります。資本金は1億4,301万円、2025年3月期の売上高は40億2,500万円、経常利益は4億7,500万円、従業員は120名で準社員等を含めると146名が在籍しています。
本社工場のある八王子市だけでなく、東京都荒川区、埼玉県入間市、大阪市東淀川区、さらには中国江蘇省蘇州市には蘇州エブレンがあります。国内4拠点に海外1拠点を加えた全5拠点で活動しています。
事業内容は、産業用電子機器・工業用コンピュータの設計製造販売です。詳しい内容については後ほどご説明します。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社のビジネスを理解するにあたり、創業のきっかけや歴史、また、社長が創業される前のご経験、経歴についても教えてください。
上村:当社の創業は1973年10月です。それ以前、私は大手エレクトロニクスメーカーに勤務する技術者で、コンピュータ関係の開発に従事していました。当時のコンピュータ業界というのは、限られた大企業だけが大型コンピュータを持っているくらいでした。ガラス張りの部屋に、かなりの規模の電子計算機を並べ、専門以外の人は入れない広い敷地を確保するような時代でした。メインフレーム全盛時代です。
その後、米国のDEC社が、この業界に大きな影響を与えたミニコンピュータPDP-8、PDP-11という名機を開発しました。従来のメインフレームに比べると小型で、性能も飛躍的に向上し、かつコストは大きく下がりました。従来はビジネス上の計算で用いられることが多かったのですが、その用途も科学演算から工業用、制御用などへとコンピュータの応用分野は広がりました。
当時、日本にはコンピュータ関連の企業が5社あったと思います。それぞれ超がつくほどの大きな会社で、いずれもアメリカをはじめ、海外のコンピュータメーカーと提携していました。そして日本でも国産化し、販売していこうという流れでした。
そのような時期に、私はコンピュータを担当していましたので、提携しているアメリカのコンピュータ会社に出向し、一定期間現地に滞在して、いろいろなことを学んでから、その製品を日本で作れるようにすることが私に課された使命でした。
当時、米国のコンピュータ業界を見ていると、現在は超大手企業しかコンピュータを作っていませんが、今後はいつか必ず各専門毎に分業化が進み、中小企業がそこに加わり、裾野が大きく広がり発展するに違いないと考えました。当時はまだ若かったこともあり、コンピュータ産業で、その発展の一翼を担えるようになりたいという夢を抱くようになりました。それが創業にいたる原点であり、動機でもあります。
事業内容:産業用コンピュータの設計・製造
上村:通信・電力・鉄道・医療などの社会インフラ系設備と、半導体製造装置や生産自動化機械などの産業インフラ系設備で使われるコントローラーの制御部に産業用コンピュータが使われています。当社の売上の80パーセント近くを占めるのは、産業用コンピュータの受託設計と受託生産です。
また、鉄道・電力・通信といった公共性の高い事業会社向けの設備開発は、大手の装置メーカーが主契約者となっており、当社のビジネスポジションはその下となります。主契約者の装置メーカーは、設備やシステムの開発構想に基づき、当社に委託するコンピュータ製品の要求仕様書を作成して提示します。当社はそれに基づき製品を設計し、試作品を作って装置メーカーに送り、評価と設計検証を受けるという順序です。
量産に入るまでに半年、長いものだと2年、3年も待つこともありますが、量産開始以降は、中長期的に安定した製品供給を要求されることが特徴です。
製品区分(1) ボードコンピュータ
上村:スライドは、当社の産業用の電子機器について、イメージをつかんでいただくために用意したものです。一般的に電子回路から成り立っているものを電子機器と呼びますが、プリント基板上に必要な部品を実装し、それを有機的につなぎ、一定の機能が動くものを作っていくことになります。
ICは、シリコンでできた基板上に、トランジスタなどの小さな電子部品を高密度に実装し、それぞれがつながることで一定の働きをします。当社のポジションは、そのようにして作られたICをプリント基板上に並べて実装し、何千本、あるいは1万本近くを配線し、問題なく作動するようにまとめることです。つまり、当社は半導体そのものを作っているわけではなく、作られたものを実装して、電子機器として使えるようにしているのです。
もっとも、半導体だけではなく、いろいろなディスクリート部品や、一定温度を超えないようにファンを回して冷やす部品、通信ポート、USBなどの部品が付いている場合が一般的で、スライドのように基板上に部品が実装されています。このようなものがみなさまが使っているパソコンやノートパソコンの中で動作しているとお考えください。
製品の区分は、大きく分けると2種類あります。スライドの左側は、バックプレーンシステム用のボードコンピュータで、右側はIoT・Edgeシステム用ワンボードコンピュータです。規模の大きな回路だと、部品を並べると1メートル×1メートル、2メートル×2メートルでも入らないこともあります。
当社が携わっている産業用電子機器は規模が大きくなるため、材料を探すことが困難なことに加え、ハンドリングが難しくなることもあり、一定の大きさに分割して作ることが一般的です。分割され、実装された基板の中には名刺サイズくらいのものもありますが、一般的なサイズはB5判、A4判くらいの大きさとなり、スライドの写真でご紹介しているものとほぼ同じです。
分割して切り離してしまうと全体の連結がなくなるため、これを有機的に結合する必要が出てきます。1メートル×1メートル、2メートル×2メートルの大きな回路を分割しても連動して動くようにするのがバックプレーンです。
坂本:パソコンはボード1枚で動いても、大きなものになると分割して動くようにするということですか?
上村:おっしゃるとおりです。スライド右側には、1枚で足りる回路もあります。基本的には、市販されているノートパソコンなどもワンボードです。隙間なく部品が並び、実装密度が高くなっています。最近だとエッジコンピュータがこれくらいです。したがって、「必ずしもバックプレーンにつないで使うことがすべてではなく、1枚で足りるものもあります」という意味で、2つに分けてご紹介しました。
製品区分(2) バックプレーン
上村:スライド左側にいろいろな種類を挙げてみました。分割した回路基板を連結し、大規模な回路を動かすものがバックプレーンです。基板の縁の白い部品はコネクタですが、ボードの回路とバックプレーンとの接続に使うものです。基板は3ミリ、厚いもので4ミリくらいあります。中には8層、10層、20層など、非常に細かい回路が層をなして構成されています。
一番上はバックプレーンですが、これにボードコンピュータを挿入、つまりスロットインすることで、金属の筐体でこれを覆い、外部からの電磁波の影響を受けないようにします。また、一定の温度を超えないようにファンをつけ、温度をコントロールすることが一般的です。
神経を集めるような役割を果たすのがこのバックプレーンです。人間のイラストでも紹介していますが、コンピュータの脊髄ともいえます。
製品区分(3) コンピューターシャーシ
上村:最終的には、このバックプレーンを金属の箱に入れます。前は開いておりますが、前から回路ボードを挿入すると前面も閉まるようになっています。一般的にはボックス型のラックやシャーシなどといわれますが、この中に入れて使います。
坂本:一番多いものは何枚入りますか?
上村:たくさん入ります。データセンターを想像していただくとわかると思いますが、ラックには規格があります。規格の幅以上だと、その後の実装はできません。一般的には1列20スロット程度です。
坂本:20スロット程度がマックスですか?
上村:おっしゃるとおりです。19インチが規格です。半導体製造装置では、それくらいの規模のものを機械に取り付けて使います。スライドの右側が、ワンボードコンピュータを実装するシャーシの場合です。弁当箱のような小さなサイズの筐体の中にネジで止めて使われることが一般的です。
製品区分(4) 制御用コンピュータ
上村:スライド左下に、CPUスロットや通信ボード、画像処理ボードなど、いろいろな役目を果たす回路があります。バックプレーンが後ろに付いていますが、前は空いているので、そこからスロットインすればボードを自由に着脱できます。スライドは、半導体製造装置に実装されて使われる例を示しています。
坂本:これが分割する利点ですか?
上村:おっしゃるとおりです。
坂本:大きなものを小さくすることができるというお話でしたが、それ以外にもあるということですね?
上村:そのとおりです。なぜバラバラになったり、ワンタッチで取れたりするように作られているのかについてお話しします。1つ目は、一定以上の大きな材料は世界でも作られていません。例えば、畳1枚程度のサイズを希望しても材料がないのです。
2つ目は、それを加工する機械がないということです。アッセンブルする機械がないため、一定のサイズ以上は難しくなります。そのため業界ではデファクトスタンダードとして、基板やラックのサイズは決まっています。
バックプレーン方式が産業用に多用される理由
上村:バックプレーン構造にして、回路ボードをいつでも引き出すことができ、ワンタッチで取れるようにしている理由は、保守のためです。我々が作っているものは、おびただしい数の電子部品をつなげますので、この中の1つでも壊れてしまうと、それが障害となってしまいます。そのような場合に速やかに対応するため、ワンタッチで取れるようにする必要があるのです。
坂本:24時間稼働している機械がほとんどだと思います。
上村:おっしゃるとおりです。例えばネットバンキングが機能しなくなると、私たちは振り込みができなくなってしまいます。そのような場合、症状から見るとだいたいどのボードが原因だとわかります。したがって最少の時間で良いものに入れ替え、ストップする時間を短くし、後ほどゆっくり直すというわけです。
そのためにも、ワンタッチで取り外しできることが大切です。本体からいつでも切り離せる構造にすることが、保守性の確保には欠かせません。産業用機械のほとんどがこのようなバックプレーンを採用しているのは、それしか方法がないからです。
また、拡張性も重要で、メモリ増設や通信回路を増やす空きスロットを確保しておく必要がある場合があります。後で機能を追加するにも便利です。ワンボードでは上手くいきません。
汎用性については、デファクトスタンダードに準拠して作られたCPUボードが世の中に流通しており、とても良いものがあります。また、特殊な回路については、標準規格に準拠したかたちで、インターフェースボードが売られていることがあります。それらを積極的に採用し、そのシステムの中に入れて使うことができるため、汎用性、保守性、拡張性の観点でバックプレーンが多用されるのです。
エブレン製品の用途(応用分野)
上村:スライドは「製品がどのようなところで使われているのか?」を表したものです。右側の円グラフのうち、上側は前期の連結売上高で39億8,700万円です。下側の2025年3月期は40億2,500万円にわずかながら増えました。
左側は、当社製品を応用分野別に示したものです。左上の交通関連のETC、料金収集システムには、当社の製品が使われています。高速道路やITS関連も同様です。また、鉄道車両関係にも多用されています。新幹線だけでなく、山手線のようなローカルな電車でも、事故を避けるために安全装置が設置されており、そこでも使われています。
左端に半導体製造装置とありますが、こちらが応用分野別で最も大きな割合を占めている分野です。FAおよび半導体検査装置、半導体製造装置を含め、計測・制御と呼んでいる分野です。右側の円グラフで示すとおり半分以上を占めています。
また、その下に防衛・セキュリティとありますが、防衛分野も最近増えてきています。護衛艦を曳航するもの、制御するものなど、船の関連が比較的多い印象です。陸上では軍用車両の通信もあります。船の制御や通信については、一般産業用とほとんどテクノロジーが同じですが、軍用は大変厳しい環境で使われます。
医療関係、MRI、CTスキャナー、超音波診断装置などは電子応用のセグメントになります。当社は映像系の医療装置と呼んでいますが、これらにたくさん使われています。また、医療応用セグメントと一緒に取り上げているHPC、つまりスーパーコンピュータは、ディープラーニング用やゲノム解析用としても使われています。
通信・放送、電力・プラントに赤丸が付いていますが、有線、無線、モバイルなどいろいろなものがあります。ブロードバンド、衛星通信、海底ケーブルまであります。通信分野の構成比は少なくなっているものの、これらのジャンルもカバーしています。
また、最近は少ないですが、放送映像スタジオ装置などもあります。さらに、電力テレメータもこのセグメントに入れていますが、こちらについては、最近順調に伸びており、電力分野では主にテレメータが中心です。
5種類のセグメントごとの構成比は、スライド右側の円グラフのとおりです。交通関連は2024年3月期に全体の16.6パーセントでしたが、2025年3月期は若干増え、18.3パーセントとなりました。また、防衛分野は4.1パーセントから5.7パーセントになりました。一方、通信・放送および電子応用のシェアは減少しました。また、計測・制御は圧倒的な構成比を占めますが、2025年3月期はあまり大きく成長せず、構成比は前期とほぼ同じです。
主要納入先 (直接納入、間接納入を含む)
上村:「エブレンの製品はどこで採用されているのか?」というお話です。スライドは、代表的なお客さまの一部をピックアップしています。産業用の電子機器やシステムを作っている会社に製品を納入し、ご利用いただいています。
井上綾夏氏(以下、井上):スライドにもあるように、エブレンの製品は本当にさまざまな分野の大手企業が使っています。同業他社の中でエブレンが選ばれている理由を教えてください。
上村:なんといっても、どの会社でも手がけている仕事ではなく、ニッチな仕事を行っていることです。また、産業用コンピュータのバックプレーンおよび構造製品専業で50年という期間の長さも理由です。圧倒的に長い時間手がけてきたことで、この業界では比較的知名度が高いです。
井上:やはり信頼と実績につながるのですね。
上村:はい。そこにつながりますね。これは関係する過去の実績、技術情報の蓄積があるということです。それを活用して設計するため、ゼロから設計するよりも設計時間が短くなり、開発コストの安さにつながってきます。
コンピュータバス規格やデファクトスタンダードにも精通しています。「そのあたりについて詳しく説明しなくても、エブレンはよく知っているから大丈夫だよ」という顧客の安心感にもつながります。このあたりはすべて、専業メーカーとしてのトータルでのコストメリットが理由かと考えています。
生産拠点の分散
上村:生産拠点の分散についてです。先ほど国内4拠点と海外拠点についてご説明しましたが、比較的近いところでも拠点を分けている理由の1つは、BCPの観点からです。災害などで生産がストップし、納入できなくなると大変重大な支障が出ると考えられるため、あえて分けています。
主要設備は各工場で保有しています。主要設備はプログラムで動いているため、万が一支障をきたした場合には、データを送れば別の工場の同じ機械で生産できる態勢を整えています。インフラ関係を手がけていると、どうしても「遅れて申し訳ありません」では済まないことがあるため、このように配慮しています。これは中国を含め同じです。
なお、お客さまの近隣で作ることが最も理想的だという観点もあります。
2025年3月期 (第52期)決算実績
上村:通期業績の報告です。第52期にあたる2025年3月期の売上高は40億2,500万円です。前期とほぼ同じでした。
営業利益4億6,400万円で営業利益率が11.5パーセントです。経常利益が4億7,500万円で経常利益率が11.8パーセントです。当期純利益が3億1,300万円で当期純利益率が7.7パーセントでした。昨年ご覧いただいた前期の業績をそっくりそのままコピーして持ってきたかのようで、本当に申し訳ございません。わずかなプラスマイナスが見られる程度の業績でした。
2025年3月期 (第52期)応用分野別概況-1
上村:2025年3月期の応用分野別の概況をご報告します。まず計測・制御です。このセグメントでは、半導体製造装置やFA製品を計上しています。昨年ご報告した時「お客さまが買い込んだ在庫がはけないと売上はなかなか上がらない」とお話ししたかと思います。
坂本:いろいろありましたね。新型コロナウイルス感染症でサプライチェーンも混乱したため、けっこうため込んでいるというお話をうかがいました。
上村:顧客の在庫消化はかなり進んできましたが、「完全に消化し、なくなりました」という報告はまだできません。
坂本:徐々に注文が再開されている状況にはなっていますが、まだ在庫が残っているということですね。
上村:おっしゃるとおりです。
坂本:まだ消化途中だと思われる会社もたくさんあるようです。
上村:はい。
坂本:今後、徐々に新規注文が再開されそうだということでしょうか?
上村:おっしゃるとおりです。お客さまの在庫状況はマル秘事項のため、なかなかわかりません。
坂本:そうですよね、注文が入った分はわかるが、使い切ったかはわからないですね。
上村:おっしゃるとおりです。受注状況を見て「たぶんなくなったのだな」と推測するのがやっとです。
坂本:「あれが再開したぞ」というようなことですね。
上村:そのようなイメージです。2025年3月期は一部のお客さまからの新規注文が再開されました。
AI関連投資は非常に堅調でした。AI関連の半導体製造装置が非常に好調です。
坂本:そのあたりの仕事は在庫があってもなくても新規で注文が入るということですね。
上村:おっしゃるとおりで、新規でどんどん注文が入ります。一方、AI関連以外は低調でした。
坂本:ここはやはりまだですね。
上村:一般産業用では、自動車の低調などの問題を抱えています。マスコミはAI関連ばかり報道するため「半導体業界は全体的に非常に良いのではないか」と思っている人が多いですが、一般産業用は必ずしも良くありません。
期後半には2期ぶりに売上が増加に転じたと思われるようなことがありました。したがって、実績としてはそれほど数字が盛り上がっていないものの、徐々に良くなりそうな方向に入っているようです。なお、売上は前年比0.6パーセント増とほぼ横ばいでした。
続きまして、交通関連です。鉄道関係や高速道路などの分野になります。2025年3月期は鉄道信号関連の新規案件が量産開始されました。売上は前年比11.4パーセント伸びています。
2025年3月期 (第52期)応用分野別概況-2
上村:通信・放送・電力です。このうち、通信・放送分野は既存案件の生産が減少しています。実は2025年3月期に始まったことではなく、何期か同じような状況です。他社はわかりませんが当社は低迷しており、非常に低調です。売上がどんどん減っている印象です。
一方、電力分野は比較的堅調です。将来的な電力需要などを考えると、中長期的には良い印象のため、堅調に推移している程度と考えています。通信・放送・電力の売上は前年比14.2パーセント減でした。
電子応用は医療・生命科学・HPCなどの分野になります。医療分野では、主要顧客の在庫調整による売上減がありました。医療関係市場のトレンドは全体的に堅調ですが、大手顧客の機種変わりなどが関連し、2025年3月期の売上は前年比17.6パーセント減と低調でした。
防衛・セキュリティ・その他は、防衛分野の新規案件が成約になりました。売上は前年比で大きく伸び、40.5パーセント増です。アマウントそのものが低いため40パーセント増でも驚くほどではありません。
2025年3月期 (第52期)応用分野別売上
上村:4期分の応用分野別売上です。スライドのグラフの一番右側が2025年3月期です。全体の売上は前期とほとんど同じです。39億8,700万円から40億2,500万円と、1パーセントほど伸びました。
応用分野別に見ると、一番上の通信・放送がほぼ横ばい、若干減少しています。その下の電子応用も減少しています。
その下が一番大きな割合を占めている計測・制御です。2024年3月期とほぼ横ばいではありますが、24億4,400万円から0.6パーセントほど伸び、24億5,900万円となりました。
伸びているのはその下の交通関連です。鉄道車両などが比較的好調でした。2024年3月期の6億6,000万円から11.5パーセント伸び、7億3,600万円となっています。これは非常に良かったといえそうです。
防衛・その他については、先ほど「アマウントそのものが低いため前年比40パーセント増でも驚くほどではありません」とお話ししましたが、2024年3月期の1億6,100万円から40.5パーセント伸び、2億2,700万円となりました。
比率としては防衛分野が伸びており、通信分野と防衛分野が同じレベルになってきています。このように、放送・通信が低調で防衛・その他が上がってきている様子がご覧いただけます。
2025年3月期 (第52期)業績 – 財政状態
上村:2025年3月期の財政状況です。流動資産が46億4,500万円、固定資産が12億5,800万円となり、資産合計は59億400万円です。流動負債が7億600万円、固定負債が4億1,100万円となり、負債合計は11億1,700万円です。純資産が47億8,600万円、負債純資産合計が59億400万円となり、自己資本比率が80パーセントを超えました。
2026年3月期 (第53期)通期予想
上村:すでに進行していますが、2026年3月期の通期予想です。売上高は41億円を予想しており、大幅には伸びません。やはり半導体は、AI関係は良いもののその他がいまひとつです。大言壮語は控え、全体で41億円ぐらいと考えています。
営業利益は5億2,000万円、経常利益は5億2,000万円、当期純利益は3億4,000万円を予想しています。これらを達成すれば、1株当たり48円の配当が可能だと考えています。
2026年3月期(第53期) 通期見通し
上村:応用分野別の見通しです。まず、計測・制御です。SEAJ(日本半導体製造装置協会)では、前年比10パーセント増加すると発表しています。当社では、AI関連投資とそれ以外で明暗が分かれるだろうと考えています。半導体製造装置メーカー各社の生産調整は、第1四半期での終了を見込んでいます。半導体製造装置用途の新型加熱ユニットの納入も2026年3月期に開始されます。
交通関連です。海外向けでは前期で納入が完了した案件が多いため、前期は伸びましたが今期は売上減少を予測しています。国内向けは案件が継続し、好調を維持すると考えています。
2026年3月期 (第53期)通期見通し
上村:通信・放送・電力です。電力分野での新規案件の量産が2026年3月期に開始されます。通信・放送分野は従来と変わらず、低調に推移する見込みです。電力用通信関連分野は堅調です。
電子応用は引き続き低調です。医療機器の一部顧客の生産調整が継続すると見ています。中国生産製品は機種替えにより生産が減少します。
防衛・セキュリティ・その他については、ものがものということもあり、また予算との関連もあり、詳細がわかりません。案件は増加傾向のため、引き続き良いと予想しています。
2026年3月期 (第53期)応用分野別売上予想
上村:2026年3月期の予想についてお話しします。通信・放送はわずかですが、前年比0.9パーセント伸びる見込みです。電子応用は先ほどお話しした理由により、前年比27パーセント程度減少すると考えています。
主力の計測・制御は前年比11.8パーセントほど伸びる見込みです。半導体関係は、まだいろいろと不確定な部分がありますが、復調すると見ています。
交通関連は、前期の反動もあり前年比18パーセントほど減少すると考えています。
防衛・その他は引き続き好調で、前年比10パーセント以上伸びるだろうと考えています。2億5,000万円に達する見込みです。
これらを合計し、全体の売上は41億円を予想しています。
直近10年間の業績推移
上村:次に、現在までの中長期成長についてご説明します。まず「エブレンは成長しているのか?」ということを表しているのがスライドの図です。売上高は10年間で24億1,800万円から40億2,500万円まで増えています。
業績で問題になるのは売上高ではなく利益だと思っています。10年前に1億4,200万円だった経常利益が4億7,500万円に達しているため、成長していると見ることができそうです。
きれいな右肩上がりを描いてくれるとよいのですが、そうもいかないところがあり、よく見るとでこぼこしています。ただし、全体的には売上・利益とも成長路線にありそうです。
当面の目標
上村:当面の目標についてです。スライドのグラフは2025年3月期までは実績、2026年3月期以降は薄網で示し、今後どうなるかを示しています。中期計画では、最終年度の2028年3月期、すなわち第55期に売上高51億円、経常利益8億円を目指します。年率18パーセントほど成長する必要があるため、坂本氏からツッコミがありそうだと震えています。
坂本:いえいえ、市場成長と回復の部分も見込んでの目標だと思います。
上村:なんとかがんばり、ご期待に添いたいと考えています。
成長戦略
上村:成長戦略についてです。成長戦略は従来同様、コア事業の強化、受託範囲の拡大、ボードコンピュータ事業強化、中国子会社の戦略的活用を掲げています。
(1)コア事業の強化
上村:コア事業の強化についてです。先ほど同業他社についての質問もありましたが、どちらかといえば仕事がニッチなため、同業他社すなわち競合はあまりおりません。コネクタをたくさん使うため、コネクタメーカーなどでは関連事業として展開している場合があり、海外メーカーなどが該当しますが、例外的です。コネクタ関連の引き合いは非常に多いため、競合とはとらえていません。
むしろ悩みなのは、設計や量産が大変になっていることです。ここはお客さまも同様で、技術のリソースが大変不足しています。お客さまからの要望が増えてきているため、このようなビジネスモデルは今後もご期待に添えられるよう、しっかりと行っていきたい考えです。
(2)受託範囲の拡大
上村:受託範囲の拡大についてです。「箱だけでいいよ」「バックプレーンアッセンブリーだけで他はいらないよ」というお客さまも中にはいます。しかし、お客さまの本音は、事業を拡大させるために「できれば手のかからない完成品に近いかたちに完成度を上げて納入してほしい」「できればスイッチを入れさえすればコンピュータとして機能するものを納品してほしい」「いずれにせよやらなければならないことなので、そのまま使える完成体が一番良い」というものです。
ただし「ノウハウが漏れたりするといけないので、この部分は自社でやろう」「この部分 はエブレンに対応してもらったほうが早いし、安いので、エブレンに依頼しよう」など、お客さま側でもいろいろなノウハウの問題があります。
当社としてはやはり完成度を上げる、つまり付加価値を上げれば、同じ売上高でも利益を上げることができると考えています。
(3)ボードコンピュータ事業強化
上村:先ほど「バックプレーンやラックを中心に50年間一生懸命行っている」とお話ししました。従来型のビジネスモデルに該当するバックプレーンやラックを中心とする製品以外は、新製品となります。これをスライド右側グラフの黄色で示しています。
従来型のビジネスモデルから、徐々にですがコンスタントに新製品の開発案件が増えており、現在売上の20パーセント弱まで伸びてきていることが、グラフからおわかりいただけると思います。これを戦略的に伸ばしていきたいと考えています。
(4)中国子会社の活用強化
上村:中国子会社についてです。中国も大変な力を持ってきており、良い製品を調達すると大変有益なことになります。戦略的に活用していきたい考えです。
株主還元
上村:配当は前年比20パーセント増ぐらいを維持したいと考えており、5年、6年はこのお約束を守ってきています。
坂本:今期もその予定ですね。
上村:はい。なんとかしてこれを継続させ、ご期待に添っていきたいと考えています。
質疑応答:ボードコンピュータ事業強化による新製品について
坂本:成長戦略のボードコンピュータ事業強化により、新製品が20パーセントほど伸びてきているように見えます。いろいろあると思いますが、この中で一番有益・有望な部分はどのあたりなのかを教えてください。
既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。