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山部清明氏(以下、山部):株式会社Fast Fitness Japan代表取締役社長の山部です。本日は当社の個人投資家向けIRセミナーに多数ご参加いただき、誠にありがとうございます。本日はスライドに記載の構成でお話しします。

会社概要

山部:はじめに、株式会社Fast Fitness Japanについてご説明します。

当社はエニタイムフィットネスというジムを、直営店とFC店を含めて全国で1,200店舗近く運営している会社です。東証プライム証券コードは7092、来週(5月21日)には設立から15周年を迎えます。

グループ体制図

山部:当社はもともと株式会社Fast Fitness Japanと直接の子会社であるAFJ Projectの2社体制でしたが、今年4月にドイツとシンガポールの会社、さらにドイツの統括会社であったオランダの会社を買収し、現在は7社体制で運営しています。

企業理念(PMVV)

山部:2025年4月には、当社が目指している存在意義をあらためて明文化した「パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー(PMVV)」を制定しました。

当社の存在意義や価値観をより明確にして全社に浸透させるため、全社員が策定プロセスに関わりました。十数回におよぶワークショップを開催した上で、全社員の意見を反映させて策定しています。

今後も当社のパーパス「ヘルシアプレイスをすべての人々へ」の実現に向けて、成長戦略を加速させていきます。

株主還元 / 配当

山部:配当についてです。連結配当性向40パーセントを配当の目安とし、DOE4.5パーセントを下限に設定することで、より高水準かつ安定的な配当額を決定することを基本方針としています。

2025年3月期の余剰金配当を1株当たり25円とし、中間配当20円と合わせて45円としました。その結果、連結の配当性向は41.6パーセントとなっています。

株主還元 / 株主優待制度

山部:当社は株主優待を導入しています。後ほどご説明しますが、当社はオンラインストア「A PROP(ア プロップ)」にて多数の商品を販売しており、そのお買い物にご利用いただける株主さま限定優待券を保有株式数に応じて進呈しています。

ESG活動 ~社会貢献活動:地域とつながりすべての人に健康と笑顔を~

山部:当社はESG活動にも非常に力を入れています。社会課題の解決と企業価値の向上の両立を目指し、「ヘルシアプレイスをすべての人々へ」の実現に向けて、健康、福祉、地域共生に貢献するための活動を、さまざまな地方において多方面で推進しています。

ESG活動 ~脱炭素社会への対応と取り組み~

山部:脱炭素社会への対応と取り組みも、非常に積極的に展開しています。

事業概要

山部:当社グループの事業概要について、スライドに記載した2つの軸でご説明したいと思います。

まず、中核事業である既存事業については、国内のエニタイムフィットネス事業の一層の拡大と強化による成長の維持と加速という側面があります。

新たな成長領域については、海外のエニタイムフィットネス事業の展開、新ブランドであるThe Bar Method(ザ・バーメソッド)事業、さらにEC・物販事業など、各事業への投資と育成の2つの両輪で持続的成長を実現していきたいと思っています。

中期経営計画:方針

山部:中長期の成長戦略と直近の業績についてご説明します。2024年5月に、中期経営計画を3年間の枠で公表しています。本中期経営計画期間において、国内のエニタイムフィットネスの事業の拡大と強化だけでなく、新しい成長分野を切り開いていくことを目標に掲げています。

新たな成長領域として、エニタイムフィットネスの基盤を通じ、エニタイムフィットネスの会員さま、そしてFCオーナーへの付加価値を提供することを見据えて、EC・物販事業を開始しました。

また、日本でのノウハウを活かしながら、海外でもエニタイムフィットネスの展開を始めることになりました。さらに昨年には、エニタイムとはまったく違うスタジオプログラムである「The Bar Method」という新しいブランドをローンチしました。

このように、スライドに記載のテーマに関して戦略的に投資を行うことで、新たな成長ステージへの変革を目指しています。

中期経営計画:同期間の位置づけと売上成長イメージ

山部:中期経営計画の位置づけと売上の成長イメージです。

持続的な成長を目指すために、既存事業の国内エニタイムフィットネスの一層の強化を図りながら、中期的には成長戦略を推進し、長期的には市場・商圏の拡大を視野に入れながら戦略的な投資を行い、持続的な成長を目指しています。

中期経営計画:数値計画

山部:スライドは2024年5月に発表した中期経営計画の数値目標です。こちらについては後ほど詳しくご説明します。

25/03期 ハイライト:連結業績

山部:2025年3月期ハイライトです。まず、連結業績です。売上高は前期比13.8パーセント増の180億円となりました。営業利益以下の各段階利益は減益となっていますが、こちらは計画どおりであり、減益幅を抑制し、予想レンジ内で着地することができました。

25/03期 ハイライト:エニタイムフィットネス

山部:続いて、当社の一番中核のビジネスである、国内と海外のエニタイムフィットネスについてご説明します。

国内は売上・会員数ともに非常に順調に推移しており、店舗数は1,194店舗、会員数は97万4,000人で、前期比で13万3,000人ほど増加しています。

海外はドイツとシンガポールの2ヶ国で展開を開始しています。このうちドイツにおいては、日本と同様にマスター権を持っていますので、ドイツでのエニタイムフィットネス事業はすべて当社が行うこととなっています。現時点で海外は3店舗のみですが、後ほど最新の状況についてお話しします。

25/03期 ハイライト

山部:2025年3月期は、2024年5月に公表した中期経営計画の初年度に当たります。

当社では、既存の中核ビジネスである国内エニタイムフィットネスの一層の拡大・強化を図りながら成長を維持することと、新たな成長領域である海外や新ブランド、EC・物販への投資と育成の両輪で、持続的成長を目指しています。

2025年3月期は、新たな成長領域に向けた開拓のための投資を積極的、また戦略的に行っていることから、費用が先行するかたちとなり、減益の計画としていました。

スライドの図は当社の成長戦略に沿った売上のイメージです。2025年3月期は計画に則った成長投資を実行し、海外と新ブランドにおいてEC・物販などの施策をすべて開始することができました。

25/03期 ハイライト

山部:2025年3月期の売上高は、国内エニタイムフィットネス事業の強い成長が全体を牽引し、各四半期において前四半期を上回って推移しています。

営業利益については、成長投資をより多く実行した上半期は前四半期比では減益で推移していますが、第3四半期以降は増益となっています。

25/03期 ハイライト

山部:2025年3月期のハイライトです。スライドには詳細な数字を示しています。

先ほど、既存事業である国内エニタイムフィットネス事業と、新たな成長領域である海外、新ブランドにおけるEC・物販の両輪で回しているとお話ししましたが、中期的に成長戦略を推進し、長期的には市場の商圏の拡大も視野に入れながら投資を行っていきます。

スライドの表では、既存事業と新たな成長領域の状況や、前期実績比、期首計画比を見てご判断いただけるようになっています。

国内エニタイムフィットネス事業は、期初に非常に高い目標を掲げていたことから計画比では99.9パーセントと若干未達でしたが、前期比ではプラス11.9パーセントと引き続き2桁成長が続いています。

新たな成長領域分野ではいずれも計画どおりに開始できたものの、準備期間に時間を要してしまったことからスタートが後ろ倒しになりました。その結果、業績は大きく未達となっています。

スライドからも営業利益の面では、国内エニタイムフィットネス事業が全体を牽引していることがお分かりいただけると思います。

成長に向けて新たに開始したものに関しては、今期以降は成長に向けた育成に重きを置いていく考えです。開始させるだけではなく、しっかりと育成し、大きな柱に育てていく方針にシフトしている段階です。

25/03期 サマリー

山部:2025年3月期のサマリーです。冒頭にお話ししたとおり、中期経営計画に沿ったかたちで成長投資を進めています。そのため費用先行とはなりますが、国内エニタイムフィットネス事業が非常に好調であり、引き続き業績を牽引した結果、売上高は全体として前期比で大きく伸長しました。

一方、利益面では計画どおりの減益となっていますが、減益幅は抑制される結果となりました。

売上高内訳

山部:売上高内訳です。当社はロイヤリティと直営店の会費収入から構成されるストック型の安定的な収益モデルであることが特徴です。全体の85.9パーセントがストック収入となります。

FC売上の一部は前期比で減収となっていますが、これはエニタイムフィットネスアプリのリリースに伴い、「アクセスパス」を選択される方の売上を、商品売上からロイヤリティ収入に変更しているためです。したがって、FC売上全体では前期比プラス11.8パーセント増と引き続き伸びている状況です。

中期経営計画期間内の投資計画と進捗

山部:中期経営計画期間内の投資計画と進捗です。中期経営計画期間の3年間における投資額は96億円を計画しており、2025年3月期の実績は37億円となっています。

内訳としては、国内エニタイムフィットネス事業のさらなる成長に向けた投資が大部分を占めていますが、新たな成長領域への投資も着実に実施しています。

エニタイムフィットネスについて

山部:エニタイムフィットネスについてお話しします。

エニタイムフィットネスは2002年に、アメリカのミネアポリスで始まりました。アメリカ国内だけでも10年間で2,000店舗の出展を達成し、非常に順調に拡大しています。現在は全世界において、店舗数No.1のフィットネスジムブランドとなっています。

我々は充実した高品質のジム設備とスタッフを配置することにより、サービスの向上や会員満足度向上を図る価値訴求型モデルであることが特徴です。価格ではなく、価値を訴求するモデルを追求しています。

現在、グローバルで5,600店舗近く展開していますが、そのうち21.7パーセントに当たる1,194店舗が日本国内で展開されており、全世界の約2割以上を日本のエニタイムフィットネスが占めています。

また、これも非常に特徴的なのですが、エニタイムフィットネスの会員さまは、世界中のどのエニタイムフィットネスも利用できます。海外の出張先や旅行先でもエニタイムフィットネスを自由に使えるメリットがあります。

国内フィットネスの市場環境

山部:国内フィットネスの市場環境についてです。新型コロナウイルスの影響で一時は2割ほど縮小したものの、その後は健康志向の高まりもあり、順調に回復しています。

我々は国内で一番最初に24時間型ジムを開始しましたが、現在は多くの似たような形態のブランドがたくさん出てきています。中には価格をメインで訴えているようなモデルもありますが、エニタイムフィットネスは徹底した価値訴求型で競合との差別化を図りつつ、優位性を確立できているのではないかと思います。

国内フィットネスの市場規模は約4,886億円といわれています。エニタイムフィットネスブランドの売上を計算すると、そのうち約823億円がエニタイムフィットネスの売上となり、売上高シェアは16.8パーセントとなります。

国内エニタイムフィットネスの店舗ネットワーク

山部:我々は2010年10月、調布に第1号店を出店し、24時間ジムのパイオニアとしてローンチしました。その後FC展開も順調に進み、2025年3月末時点で1,194店舗に到達することができ、1,200店舗までもう間もなくとなっています。現在は47都道府県すべてに展開しています。

国内エニタイムフィットネスのビジネスモデル

山部:国内エニタイムフィットネスのビジネスモデルです。当社はエニタイムフィットネスの日本におけるマスターフランチャイジーとしての権利を保有しています。さらにサブ・フランチャイジーの方々にもFCオーナーとして参画いただいています。

当社はロイヤリティが固定である点が特長です。非常に収益率が高いことから複数店舗の展開につながりやすく、1FCオーナーが5店舗、10店舗、30店舗と展開していくことも非常に多くみられます。

FC展開及び店舗拡大における特長

山部:我々がFCでパートナーを組む場合は法人に限定しています。経営や財務基盤がしっかりしたFCオーナーとともに事業に取り組んでいきたいことがその理由です。FCオーナーに複数店舗を展開していただきますが、ロイヤリティは固定で納めていただきますので、非常に収益が上がりやすい構造になっています。

その収益性の高さの証明にもなりますが、現在1FCオーナー当たり平均5.71店舗を展開しています。10店舗以上経営されているFCオーナーは24社、50店舗や60店舗を展開するFCオーナーも数社あります。

売上高の構成

山部:売上高の構成についてです。先ほどお話ししたとおり、85.9パーセントがストック収入であり、店舗拡大や会員数増加に伴い、安定性とともに非常に高い収益性も高いビジネスモデルを展開しています。

国内エニタイムフィットネス事業の売上高・営業利益の推移

山部:参考資料として国内エニタイムフィットネス事業の売上高と営業利益の推移を掲載しています。

2025年3月期より、新たな成長領域として位置づけている各事業を開始していますが、費用先行となることから、中核の国内エニタイムフィットネス事業の貢献度がわかりづらくなっています。そのため、2025年3月期からは一番肝心な国内エニタイムフィットネス事業だけを切り出した資料を作成しています。

スライドをご覧いただくと、2025年3月期の国内のエニタイム事業は、増収増益かつ過去最高益を叩き出しており、引き続き力強く成長しています。

全国プロモーション展開(CM、web広告、SNSCP)

山部:現在、定期的に全国プロモーションを展開しています。大きな投資ではありましたが、約2年前に全国でTVCMを打った際には非常に大きな反響がありました。

我々は日本中に1,200店舗展開していますが、どの地域にどのようなプロモーションをすればどれだけの反応があるのか、集まったデータを基に分析しています。今後については、そのようなデータを活用しながら、ブランド力と規模感を活用した戦略的なプロモーションを積極的に展開していく予定です。

1店舗当たりの会員数が増加すれば、それに伴いFCオーナーの収入も上がっていきますので、それをベースとしてFCオーナーがさらに店舗を増やすといった、好循環のサイクルを生み出すことに貢献できていると思います。

全国プロモーション展開 振り返り①

山部:2025年3月期は全国プロモーションを2回実施しました。新規の会員さまも大幅に増加し、非常にインパクトの高い成果を出すことができました。店舗当たり平均会員数もコロナ禍前を超え、現在は818名まで伸びてきています。

全国プロモーション展開 振り返り②

山部:2025年3月期は夏季と冬季で計2回の全国プロモーションを実施し、ノウハウと分析をした結果、さまざまな知見を習得することができました。現在は地域特性に応じて最適化したマーケティングの施策を展開できる状況となっており、マーケティング投資を効果的に投下し、知名度と新規顧客を獲得しています。

スライド右側の円グラフは国内エニタイムフィットネス会員の年齢構成比を示したものです。ここからもお分かりいただけるように、我々のコアターゲット層である20代から40代の方が、相変わらず会員全体の84.1パーセントを占めています。

AFアプリの利活用促進

山部:エニタイムフィットネスアプリの利活用促進についてです。

エニタイムフィットネスアプリ「アクセスパス」は、スマートフォンにダウンロードするとアプリでドアを解錠できる仕組みになっており、利用数も増えてきています。

同時にアプリの中身も充実させており、コミュニケーションの活性化による顧客満足度の向上や退会抑制につながる方向を目指しています。他にも、アプリを通じた予約や、パーソナルトレーニングなどの店舗の有料サービスの促進など、付加価値を提供する使い方をどんどん推し進めていきたいと思います。

会員数100万人突破へ「エニタイム YEAR」スペシャルキャンペーン

山部:足元の会員数については、今年5月下旬に100万人を突破する勢いであり、これを記念した特別キャンペーンも実施する予定です。また、それとは別に今年度を「エニタイム YEAR」として位置づけ、年間を通じてこれまでの感謝の気持ちを込めたスペシャルキャンペーンを展開する予定です。

海外事業:ドイツ

山部:ここからは新たな成長領域についてご説明します。

こちらのスライドには、海外事業のドイツの状況をまとめています。ドイツ国内では、事業を引き継いだ当初は直営店1店舗のみでしたが、人材採用を行った上で店舗開発部隊やFC開拓部隊を新たに作るなど、準備をかなり入念に行ってきました。

2025年3月期は1店舗のみでしたが、今年4月からの2026年3月期には、さっそく2号店がオープンしました。今後も3号店と4号店がそれぞれ今年8月と10月にオープン予定であり、すでに契約を終えて今工事に取りかかっている状況です。

直営店以外にもすでにFC加盟店1社と契約しており、その他にも面接を終えて「では一緒に進めましょう」という会社も6社ほど揃ってきています。このように、ドイツ国内の成長に向けた足場が固まりつつある状況になってきています。

海外事業:ドイツ直営第2号店

山部:スライドは2号店の画像です。前オーナーから引き継いだ店舗ですが、広くて立地も良く、非常に良い物件です。今年4月からスタートし、2,000名を超える会員を獲得していることから、こちらも幸先の良いスタートとなっています。

1階が理学療法のクリニックとなっており、その来院者が健康維持として筋力をつけるために2階にあるエニタイムフィットネスに入会されます。また、すぐ隣が大型スーパーマーケットということもあり、非常に良い物件です。非常に今後が楽しみな店舗です。

海外事業:シンガポール

山部:こちらはシンガポールの状況です。これまで2店舗でしたが、今年7月には新たに大学キャンパス内に大型店舗を展開します。こちらはすでに契約が終わり、着工しています。海外でのビジネスの習得や海外人材の育成を目的として3店舗を展開する予定です。

新ブランド:The Bar Methodの展開

山部:「The Bar Method」についてご説明します。昨年11月、自由が丘に直営第1号店をオープンしました。

「The Bar Method」はバレエのメソッドを利用した高反復・低負荷のトレーニングです。理学療法や解剖学、運動学、ピラティス、ヨガなどさまざまな要素が組み込まれた、非常に洗練されたプログラムが出来上がっています。

近い将来、FC展開も視野に入れており、多店舗運営のためのオペレーションのトライアルも必要であることから、今年6月には二子玉川に第2号店をオープンします。これにより相互利用ができるような仕組みを考えています。

EC・物販事業:公式オンラインストア「A PROP」オープン

山部:EC・物販事業です。公式オンラインストアは昨年10月にオープン予定でしたが、本部側との交渉がずれ込み、昨年12月のオープンとなりました。

それに伴い商品投入のタイミングがずれたことから、売上は初年度としては非常に少ないものでしたが、2026年3月期の上半期中にはプロテインやサプリなども充実させます。

また、サブスク商品をはじめとした商品ラインナップの構築や、店舗のお客さまにオンラインストアでご購入いただくことでそれをFCオーナーに還元できるような仕組みなど、さらなる強化を図っているところです。

EC・物販事業:公式オンラインストア「A PROP」オープン

山部:商品については、店舗でのポップアップ広告や店頭自動販売機での売れ筋商品の販売、法人向けの卸売販売なども検討しています。

特にFCオーナーの方々には、これらのアイテムを店舗スタッフにユニフォームとして着用させたいとかなりたくさんご購入いただいている状況です。

26/03期 通期業績計画

山部:最後に、2026年3月期の通期業績計画についてご説明します。

2026年3月期は、中期経営計画の2期目に当たります。2025年3月期は、既存事業である国内エニタイムフィットネス事業が引き続き堅調に推移し、海外事業では先ほどお話ししたようにドイツで拡大に向けた手応えも感じています。新たな成長領域に引き続き十分な投資を継続的に行い、各事業も育成に重きを置いた展開を進めていきたいと思います。

また、外的な要因も含めて短期的な業績の変動や影響も考慮すべきだと判断し、目標値をレンジで示しています。レンジ上限が中期経営計画2期目の数値目標となっています。

なお、配当に関しては引き続き45円としており、配当性向は41.7パーセントから42.9パーセントの水準となります。

駆け足となりましたが、ご説明をいったん終了したいと思います。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:海外展開における課題について

1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):まず海外展開についてうかがいます。海外展開していく中での足元の課題や認識について教えてください。 

山部:いろいろと日本と違っていることから、最初はなかなか苦労しました。まず人の採用です。現地の経験豊富な社長とゼネラルマネージャーに良い人材を採用できたため、彼のネットワークで店舗開発のメンバーを揃えたり、フランチャイズ開拓要員を揃えることができました。これによりようやく組織的にきちんとした組織が出来上がっています。

エニタイムフィットネスは、ドイツ以外の国ではもうすでに何年も前から展開されていましたが、ドイツ国内ではまだエニタイムフィットネスの知名度がそこまで高くありません。したがって日本で展開する要領と同じようにいくかというと、なかなかうまくいかない点があります。

例えば新しい物件を発見しても、物件のオーナーと交渉しても知名度の問題から信用がなく、事業を開始した当初は「なんの会社だ?」と言われてしまうこともありました。

しかし、ドイツ国内で1号店、2号店となかなか良いビジネスを展開していることもあり、さらに世界の情勢としてドイツ以外の国でどれだけエニタイムフィットネスが充実したビジネスを行っているかについてもお話ししながら説得しています。これによってようやく「そのような会社ならいいだろう」と店舗物件がどんどん新しく加わっていくサイクルが起こり始めています。

また、我々は今まで国内のみでしかビジネスを展開したことがありませんので、やはり海外人材の育成は急務です。英語のトレーニングに限らず、海外のビジネスに携わったことがある人材の採用など、現地だけではなく国内の本社レベルでも海外要員の育成や採用を行うことが今後の成功の鍵になるかと思います。

質疑応答:日本と海外における損益分岐点の難易度の違いについて

Ken:日本国内では、FCオーナーにとって損益分岐点を超える難易度がかなり低いことが人気だという認識です。海外と日本を比較した場合、損益分岐点を超える難易度は日本よりも高いという感じでしょうか? 

山部:シンガポールはあまり日本と変わらない水準だと思います。一方で、ドイツは不動産コストと建築コストが日本よりかなり安く、日本の8割ぐらいで済みます。そのような面では、初期投資の金額自体はドイツと日本を比べると、ドイツが低くなります。

また、ドイツとシンガポールにも言えることですが、国民の何パーセントの方がフィットネスクラブを利用しているかを示すフィットネス参加率が高い傾向があります。日本では4パーセントほどしかありませんが、特にドイツでは15パーセントほどあります。

したがって、ドイツでは例えば人口1万人の町では1,500人の方がフィットネスクラブを利用しているような状況です。そのため、どのような小さな町にエニタイムフィットネスを出店しても、競合がないエリアであれば1,500人ぐらいは会員が集まることになります。

そのため、現時点では場所をきちんと選びながら進めていくことで比較的早期にお客さまも集まり、なおかつ初期費用が日本より低い分だけ利益が出ることになると予測しています。

Ken:では、ドイツの2号店のようにすでに会員が2,000人程度獲得できていれば、もう十分黒字になるということですね? 

山部:ドイツ2号店については、初月から非常に高収益の物件になっています。

質疑応答:FCオーナーの出店スパンについて

Ken:FCオーナーの出店スパンについて、特徴や傾向があれば教えてください。 

山部:日本国内の約1,200店舗のうち、約1,000店舗はFCオーナーによる出店です。FCオーナーがどれだけ早いタイミングで多くの店舗を展開していただくかが、まさにビジネスの成功の鍵になると思います。

先ほどもご説明したとおり、非常に高収益であることから、1FCオーナー当たり平均5.71件運営されています。また、1社で10店舗、20店舗、50店舗、60店舗も運営されているFCオーナーが多数いることから、新しくFCオーナーとして参加していただいた方にも「これは短期間でたくさん増やせるぞ」という自信をお持ちいただけるようです。

当然、どの地域を狙うかも重要です。例えば東京都内では、店舗がまだ出ていないホワイトスペースと言われる場所を探すほうが難しくなってきています。そこで時間をかけて探すよりも、地方の都市に出したほうが物件も見つかりやすく、お客さまも集まりやすいという面もあります。

なるべく早く多くの店舗数を出店する傾向は、今すべてのFCオーナーに言えることです。それは場所や状況、経済力、狙う地域などによっては毎年何件も出店されるFCオーナーもいらっしゃいますし、もちろん2、3年に1件しか出店しないFCオーナーもいらっしゃいます。しかし「たくさん出したい、早く出したい」というモチベーションは、どのFCオーナーも強く持っていると思います。

Ken:例えば、東京を中心に展開されているFCオーナーが東海や関西などの他の地域に出店することもあるのでしょうか? 

山部:当然あります。特にエニタイムフィットネスが始まった初期段階で参画いただいたFCオーナーの方々は、すでに全国規模で店舗展開をなさっています。40店舗、50店舗、60店舗と出店されているFCオーナーの方々は、東京に本社がありながら、名古屋や関西、あるいは福岡などにも店舗を出店しています。

質疑応答:会員の継続率について

荒井沙織氏(以下、荒井):「一度会員になった顧客は囲い込めていますか?」というご質問です。

会員の継続率はどのくらいなのでしょうか? 業界の中でも高いほうなのかどうか教えてください。

山部:継続率と退会率は表裏になるかと思いますが、年間では退会される方が月々概ね3パーセントから4パーセントです。平均で14ヶ月程度は在籍期間があります。

最初の入会費や初月費用がゼロといったキャンペーンで一気に多くの会員が集まるのですが、やはり最初から頻繁に通われる方はその後も長く続けていただく傾向があります。一方、続かない方の場合は、「最初が無料だから入会したけれどもあまり行かない」「足が遠のいたからもういいや」と辞めていく方もいらっしゃいます。

そのような方々を総合しても平均して1年を超えていますので、習慣がつけば2年、3年と継続していただける方がかなり多いのではないかと思っています。

質疑応答:中小ジムの買収について

荒井:「インフレによる運営費高騰により、中長期的には中小ジムが淘汰されて、フィットネス業界の寡占化が進むのではないかと考えています。今後、経営難の中小ジムを買収してエニタイムフィットネスにリニューアルしていくことは考えていますでしょうか?」というご質問です。

山部:その可能性は一切排除していません。やはりいろいろな話が舞い込んできますので、その都度検討しています。場所や規模、価格帯、会費のレンジなどを総合的に見て、「これは当社へ参画いただいたほうが絶対に両者ともにハッピーではないか」という場合は、積極的に進めていきたいと思っています。

ただし、今エニタイムフィットネスは全国津々浦々、さまざまな地域に出店されていますので、多くの場合、同じような地域で自社競合しているケースがあります。そのため次から次へと「参画してください」とはなりにくいのですが、常に可能性は模索している状況です。

質疑応答:「The Bar Method」の人材育成について

荒井:「『The Bar Method』はエニタイムフィットネスと異なり、トレーナーの人材確保などが店舗拡大のハードルになるのではないかと感じています。人材育成にも時間がかかりそうですが、フランチャイズで多店舗展開できる業態なのでしょうか?」というご質問です。

山部:みなさまのご指摘のとおり、やはりインストラクターの養成は一番難しく、しかしチャレンジしていかなければならないところです。特に「The Bar Method」の場合は、単に「元気よく、みなさん一緒にがんばりましょう」と声をかけるだけではなく、相当な量の基礎知識を学ぶ必要があります。

海外には体の解剖学や骨格の仕組みなど、さまざまな領域について習得されているトレーナーが多くいます。現在は日本でも時間をかけてそのようなレベルまで持っていくべく取り組んでいます。

そして、当然近い将来FC展開する時には数ヶ月はかかりますので、前もってトレーニングを積んでいただかなくてはなりません。幸い、日本国内の第1号店のスタッフがすでに続々と免許皆伝となっており、そのようなスタッフがまた新しい人たちに教え、免許皆伝まで結びつけるようなサイクルの計画も立てています。

場所があって機械さえ置けば翌日からスタートできるビジネスとは違いますが、違うなりに非常におもしろみもあります。

また、いったん始めたお客さまからは非常に評価が高いブランドです。浸透速度はエニタイムフィットネスほど早くはないかもしれませんが、これは地道に全国に広がっていくだろうという自信と確信のようなものは得ているところです。

質疑応答:公式オンラインストア「A PROP」について

荒井:「公式オンラインストア『A PROP』では、高単価の商品が多いため購入までにハードルがあるのではないでしょうか?」というご質問です。

今後の販促や施策について教えてください。

山部:実際に商品の素材には非常に高価な素材を使っていますので、どうしても原価が高めになっている部分もあると思います。ただし今後多くの量が捌けるようになれば単価も下がっていきますし、さまざまな層の方に販売できるような施策も考えています。

直営店では実際に商品を手に取っていただけるポップアップ展開や、売れ筋のものを自動販売機に置いていつでも気軽に買えるようにすることも検討しています。

また、現在は直営店が中心であり、そのほかはオンラインで登録いただいた方ぐらいにしか広がっていない状況です。しかし、今後はフランチャイズの店舗のお客さまにもリーチできるようなプロモーションを打つことなどによって広がりもできます。したがって、今後はお客さまの数や層が広がっていくのではないかと思います。

品揃えについても、まだ発売前ですが、例えば高品質のプロテインなどをサブスク的にお買い求めいただけるようなものも準備中です。ぜひご期待いただければと思います。

質疑応答:マーケットの飽和懸念について

Ken:「近い将来におけるマーケットの飽和懸念はないですか?」というご質問です。

これに関連して、競合環境について教えてください。chocoZAPやFIT-EASYなどが出てきていることについても、あわせてご回答をお願いします。

山部:これだけいろいろなところにジムができていますので、確かに飽和状態を懸念されるのはよくわかります。我々も「このまま増えたら、コンビニエンスストアと同じようなレベルでそこらじゅうにジムができるんじゃないか」と考えることもあります。

その反面、先ほどドイツやシンガポールに関連して国民のフィットネス参加率についてお話ししましたが、諸外国ではアメリカは約20パーセント、ヨーロッパが約15パーセント、アジアも実は10パーセントぐらいあるのですが、日本だけが5パーセントに到達していません。

そこからジャッジすると、まだ日本はフィットネス後進国という位置付けになります。そのため、さらに多くの方がフィットネスを習慣にして楽しむ世界が、まもなく訪れるのではないかと思います。

もしもフィットネス参加率が諸外国並みになれば、今ある店舗数が2倍ぐらいに増えてもまだ足りず、3倍に増えてちょうどいいような状況だと思います。

一方で、厚生労働省も医療費削減を盛んに後押ししています。また、企業や健康保険組合の予算も、病気になる人や高額医療が増えていることで、非常に逼迫している状況です。医療費をなんとか抑えようという国全体の圧力がある中で、医療費を抑えるために一番効果的なのは日頃の運動です。多くの国民に運動習慣をつけさせることが一番の早道なのです。

それは厚生労働省や企業の人事総務の方も気づいており、「どんどん運動しましょう」と推進しています。例えば70代、80代、90代になっても、運動して筋力をつけたほうが病気にならずに済む、あるいは病気になる確率が低くなることが証明されています。そのため、そのような動きが今後一気に出てくると思います。

このように厚生労働省も企業からの、国民に対する「みなさん運動しましょう」という圧力が非常に高まりつつあります。人口は減少しているものの、日本のフィットネス参加率はあと2倍、3倍と膨らむと見込んでいます。

そのようなことを想定すると、まだ飽和する状況ではないと思います。この業界は市場が膨らんでいる、非常に恵まれた業界ではないかと思います。

競合環境については、chocoZAPやFIT-EASY、そして我々エニタイムフィットネスと、似たような場所に出店される店舗が多いです。ただし、我々にはこれまで積み重ねてきた経験もあり、近くに競合店舗ができても、エニタイムフィットネスの会員はそれほど減りません。

例えば、chocoZAPとはまったく客層が違います。chocoZAPは運動初心者をターゲットしていますが、我々はある程度運動を習慣化した方が来ますので、chocoZAPからエニタイムフィットネスにお客さまが流れてくる例が全国的に多数起こっています。そのような意味ではお互いにWin-Winの状況が作れているのではないかと思います。

FIT-EASYについても、店舗数で言えばエニタイムフィットネスのほうが6倍ほど店舗網が広くなっています。海外を含めると、エニタイムフィットネスのほうが何十倍も店舗網は広い状況です。

我々の15年にわたるビジネス展開により、それに伴ったブランド力や利便性、空間演出のためのさまざまな手法、店舗のオペレーションなど、形だけでは真似のできないさまざまなノウハウが蓄積されています。我々は、競合の存在に対して本当にウェルカムだと思っています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:会員が増えると、休眠会員も増えると思います。どういった対策を講じているか教えていただきたいです。

回答:現在、8月にリリースしたAFアプリのコミュニケーション機能を活用することで、継続率や退会抑止に繋げていくことを考えています。

<質問2>

質問:1店舗当たりの会員数の伸びがQoQで鈍化しているように見えます。新規獲得会員数と解約数はどうなっていますでしょうか? 同業他社も増えており、パイの取り合いかと思います。解約数を下げる工夫などはありますか?

回答:退会率は月3パーセントから4パーセント程度となりますが、有人モデルであること、8月にリリースしたAFアプリの活用によって、会員とのコミュニケーションの活性化を図っていくことを考えています。

<質問3>

質問:株主優待でエニタイムフィットネスの割引券を出せばストロングホルダーが増え、会員も増えそうな気がしますが、いかがでしょうか?

回答:貴重なご意見ありがとうございます。

現時点でエニタイムフィットネスの割引券を株主優待とする予定はございません。

しかしながら、株主のみなさまとの関係強化は当社にとって非常に重要なテーマとなりますので、今後の市場環境や株主構成の変化等を見極めながら、他の手法も含めた還元のあり方については引き続き検討していきます。

<質問4>

質問:売上と当期純利益の相関がズレている理由が知りたいです。

回答:2025年3月期は国内エニタイムフィットネス事業の堅調な成長により、当初見込んでいた店舗減損が大幅に抑制されることとなりました。2026年3月期におきましても、引き続き国内エニタイムフィットネス事業の一層の成長を見込みますが、保守的に一定程度の店舗減損を織り込んだ計画としているためです。

<質問5>

質問:中長期の当期純利益の予定が知りたいです。また、特別損失は今後も続くのか知りたいです。

回答:特別損失は主に直営店の運営による店舗減損を見込んでいます。国内エニタイムフィットネス事業は堅調に推移していますので、より一層の成長を見込みますが、保守的に一定程度の店舗減損を計画段階で織り込んだ内容としています。

<質問6>

質問:直営店に不採算店舗はあるのでしょうか? あるとすれば、それが特別損失につながってくると思いますので、割合が知りたいです。

回答:直営店のいわゆる不採算店舗の割合等は公表していませんが、エニタイムフィットネス全体で認知向上、会員獲得を企図する全国プロモーションを戦略的に行っているほか、収益性に課題がある店舗は個店レベルで課題、地域特性等に応じた諸施策を通じて収益力の改善、増強に努めています。

<質問7>

質問:中長期での当期純利益の予定はいかがですか? 売上と営業利益は増えるようですが、配当の原資は当期純利益ですので、そちらについてお教えください。

回答:既存の国内エニタイムフィットネス事業は引き続き一層の成長を目指しつつ、新たな成長領域と位置付ける「海外」「新ブランド」「EC物販」について、投資を進めることで事業開始に至っていますが、今後はより育成に重きを置いた事業運営をしていきます。

この既存と新規の両輪で持続的な成長を目指していますので、収益力の増強により当期純利益も増加していく計画としています。

<質問8>

質問:直営店の状況、特に赤字店舗の状況と、今後の特別損失にどのように影響するのか知りたいです。

回答:直営店は地域・エリアによっては収益性に課題がある店舗もありますが、当社が戦略的に進める全国キャンペーンによる効果に加えて、個店ごとに地域特性等に応じた諸施策を通じて収益力の改善もしくは増強に努めています。

<質問9>

質問:直営店、FC店、新ブランド、ドイツ、シンガポール、それぞれ1店舗当たりの収益力を教えていただけますでしょうか?

回答:直営店、FC店ごとの個別の収益性、各事業ごとの収益性は非公表とさせていただいています。