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山中康宏氏(以下、山中):代表取締役社長執行役員の山中です。2025年3月期の決算説明にご参加いただき、誠にありがとうございます。本日は、2025年5月9日に公表の2025年3月期決算、2026年3月期業績予想及び「Stage2030 中期経営計画 Phase2 《磨くステージ》」の業績目標と、財務戦略の見直しについてご説明します。
連結業績サマリー
連結業績サマリーについてご説明します。スライドでは、連結経営指標等のうち経営成績を表示しています。
期首繰越工事高は2,398億6,100万円と、2024年3月期期首に比べ30.2パーセント増加で始まりました。
受注工事高は、工場、データセンター、医療関連施設の受注が引き続き好調に推移したことにより、2,812億7,100万円となり、前期に比べ11.1パーセント増加しました。
完成工事高は、前期から繰り越した比較的短工期の産業施設工事や大型の医療関連施設などが進捗した結果、2,627億3,200万円となり、前期に比べ33.1パーセント増加しました。
完成工事総利益は、完成工事高の増加及び採算性が良い手持ち工事案件が順調に進捗した結果、413億4,900万円となり、前期に比べ57.7パーセント増加しました。
営業利益は、完成工事総利益の増加により230億3,700万円となり、前期に比べ111.8パーセント増加しました。
経常利益は営業利益の増加により234億7,900万円となり、前期に比べ97パーセント増加しました。
当期純利益は、経常利益の増加及び賃上げ促進税制の適用による税額控除などにより174億4,300万円となり、前期に比べ92パーセント増加しました。
以上の結果、受注工事高、完成工事高、各段階利益において過去最高を更新しました。
連結業績サマリー
連結営業利益の前期からの変動について、ウォーターフォールチャートにてご説明します。
2025年3月期の連結営業利益は、ベースアップに伴う従業員給料の増加、現場業務効率化・事務作業効率化をはじめとするDX投資により、一般管理費は増加したものの、完成工事高の増加、完成工事総利益率の上昇による利益の獲得で、230億円の営業利益を達成しました。
連結業績サマリー
当社の業容を示す連結部門別工事高についてご説明します。上段が受注工事高、中段が完成工事高、下段が繰越工事高を示しており、内訳として、空調衛生工事、電気工事に区分しています。
全項目(受注工事高、完成工事高、繰越工事高)、各工事部門において、前年と比べ増加しました。詳細については、5月9日公表の資料をご参照ください。
連結業績サマリー
財政状態の概要をご説明します。スライドでは、連結経営指標等のうち、財政状態を表示しています。純資産は1,092億600万円となり、前期末に比べ16.2パーセント増加しました。
総資産は、完成工事高の増加や工事の大型化に伴う現預金・債権の増加などにより、2,153億900万円となり、前期末に比べ34.1パーセント増加しました。
1株当たり純資産は2,495円45銭となり、前期末に比べ14.1パーセント増加しました。3月末に株価が大きく上昇して3,710円となり、株価純資産倍率は1.49倍となりました。
連結業績サマリー
キャッシュ・フローの変動について、ウォーターフォールチャートにてご説明します。
売上債権の回収が順調に進んだことによる営業キャッシュの増加、支払い条件の変更及び大型工事の増加に伴う、運転資金確保のための借入金の増加による財務キャッシュの増加などにより、現金及び現金同等物の期末残高は、期首残高226億6,500万円から278億8,600万円増加し、505億5,200万円となりました。
なお、財務キャッシュの増加要因である借入金は200億円であり、こちらは2025年4月末に返済済みです。連結業績のサマリーに関するご説明は以上となります。
受注工事の状況
2025年3月期の通期決算ハイライトをご説明します。スライドでは、リニューアル・直接工事の状況を表示しています。
受注工事の状況です。リニューアル工事は、工事単価が上昇したことに加え、大型の改修工事受注により増加したことで1,110億円となり、前期と比べ32.1パーセント増加しました。結果、リニューアル比率は39.5パーセントとなりました。
新築工事は、過去最高となった前期と同水準となり、引き続き好調に推移した結果、1,702億7,000万円となり、前期に比べ0.7パーセント増加しました。
直接工事は、大規模産業施設・小規模改修工事の受注により増加し、1,399億7,700万円となり、前期に比べ20.3パーセント増加しました。結果、直接比率は49.8パーセントとなりました。
受注工事の状況
産業施設工事の受注状況についてご説明します。当社では、工場、研究所、データセンター、物流施設を産業施設工事と区分しています。
産業施設工事は、中期経営計画で目指す産業施設工事の受注強化を継続したことにより大幅に増加し、1,628億200万円となり、前期に比べ12.1パーセント増加しました。なお、産業施設工事の受注工事高は過去最高値を更新しました。
受注工事の状況
海外事業の受注状況についてご説明します。当社の海外事業はシンガポールを中心に、タイ、ベトナム、台湾の4ヶ国で展開しています。
シンガポールは、大型プロジェクトの研究施設の受注及びPresico社を連結子会社化したことにより、全体で大幅な増加となりました。これにより、海外事業の受注工事高は398億7,000万円となり、前期と比べ224億4,300万円、128.8パーセント増加しました。
完成工事の状況
完成工事の状況についてご説明します。当期の完成工事高は、最初にご説明したとおり、2,627億3,200万円となり、前期に比べ33.1パーセント増加しました。
リニューアル工事、産業施設工事、海外工事、各工事区分において増加となり、特に産業施設工事は大幅な増加となりました。
繰越工事の状況
繰越工事の状況についてご説明します。当期の繰越工事高は、期首繰越工事高と完成工事高が過去最高値となった中、受注工事高も完成工事高を上回る受注を確保したことにより、2,584億円となり、前期に比べ7.7パーセント増加し、過去最高値を更新しました。
産業施設工事や医療関連施設などの大規模案件及び海外案件を中心に、繰越工事は引き続き拡大傾向にあります。
四半期ごとの実績状況
四半期ごとの実績状況です。四半期ごとの増減の状況については、5月9日公表の資料をご参照ください。以上、財政状態と2025年3月期の通期決算ハイライトについてご報告しました。
通期業績予想
2026年3月期の通期業績予想についてご説明します。
中期経営計画「Stage2030 Phase2 《磨くステージ》」に基づく事業戦略により、受注工事高及び完成工事高は過去最高水準であった前期と同水準となる見込みで、受注工事高は2,830億円、完成工事高は2,600億円としました。
完成工事総利益については、景気の先行きに不透明感はあるものの、良好な受注環境や利益改善が見込まれるため、41億5,100万円増加の455億円としました。
営業利益については、ベースアップによる従業員給料の増加、DX投資で経費が増加する一方、完成工事総利益の増加を受け、前期に比べ4億6,300万円増加の235億円としました。
株主還元
株主還元についてご説明します。当社の株主還元に対する方針については、利益配当による株主への利益還元を経営上の最重要施策と考え、健全な財務体質の構築に努めています。
また、この後、中期経営計画の業績目標と財務戦略の見直しについてご説明しますが、さらなる利益還元及び、より安定的な配当政策を進めるため、2026年3月期より、「配当性向40パーセント以上かつ純資産配当率(DOE)4.8パーセントを下限とすること」を、新たな配当方針とします。
2026年3月期の配当金は、中間配当82円、期末配当83円の計165円とし、前期比2円の増配となる予定です。以上で、2025年3月期決算と2026年3月期通期業績予想についてのご説明を終わります。
Stage2030 中期経営計画 Phase2 《磨くステージ》業績目標と財務戦略の見直し
現在進行中の中期経営計画の業績目標を見直しましたので、ご説明します。先ほど、2025年3月期の決算説明でご説明しましたが、前事業年度は売上・利益ともに過去最高を更新しました。これに伴い、現中期経営計画の最終年度の各業績目標を初年度に達成したことを踏まえて、連結売上高2,700億円、連結営業利益240億円、ROE12パーセント以上に上方修正しました。
目標見直しの背景
目標見直しの背景についてご説明します。受注環境の大幅な改善等により、本中期経営計画策定時に前提としていた経営環境が大きく変化したことから、これらを中期経営計画最終年度の業績目標に取り込むこととしました。
旺盛な建設需要を背景に、当初の想定を大きく上回る受注環境の改善がなされました。これにより、受注時採算の改善が大きく前進しました。
資機材価格の上昇や人材不足による人件費単価上昇で原価は増加しましたが、これらのコスト増加を価格転嫁できたことも、売上増加に貢献した一因です。一方で、今後も施工能力を見極めながらの受注を継続します。
なお、米国の関税政策や受注下押しの懸念点ですが、現状ではその影響は不透明であり、この見直しには織り込んでいません。
目標見直しの考え方
目標見直しの考え方についてご説明します。プラスマイナスの両面を総合的に勘案し、中期経営計画最終年度の業績目標を上方修正します。
連結売上高の目標は当初の2,600億円から2,700億円としました。米国関税政策の影響といった見通せない要因はあるものの、施工体制を見極めつつ、安定した業容拡大を目指します。
連結営業利益の目標は当初の160億円から240億円としました。適切な受注政策と生産性改善施策を継続し、利益率の向上を目指します。
ROEの目標は、当初の10パーセント以上から12パーセント以上としました。ROEの構成要素である当期純利益率の改善分を目標に上乗せします。
《磨くステージ》までの業績推移
直近までの業績推移の中で、今回の目標の水準感をご説明します。すでにご説明したとおり、前事業年度は各項目とも過去最高の水準となりました。今年度は、売上高を維持するとともに、増益を予想しています。
今回見直した最終年度の目標は、制限が続く施工体制を見ながら売上・利益に貢献する適切な受注に努め、最高業績を達成した前年度を上回る業績を売上・利益で目指すものです。
財務戦略
財務戦略指標の見直しについてご説明します。資本効率を意識し、業容拡大に合わせて自己資本も充実させた上で、さらに安定的な成長を目指していきます。
資本効率について、2024年5月の中期経営計画発表時には、ROE目標を10パーセント以上としていましたが、2025年3月期には17.4パーセントを達成し、目標を大きく超過しました。
今回の見直しでは、当期純利益率の改善を織り込み、業容拡大のための自己資本の充実と、安定したエクイティスプレッド確保を実現するための下限目標として、12パーセント以上としました。
業容拡大に伴い借入を増加させたことで、自己資本比率は49.7パーセントに下がりましたが、今後とも自己資本比率の指標は50パーセント程度を継続し、持続的な業容拡大に備えていきます。政策保有株式の縮減については、後ほどご説明します。
成長投資についてです。3年間累計で300億円の投資を計画していましたが、3年間累計で430億円に増額しました。詳細については、後ほどご説明します。
株主還元についてです。配当性向を40パーセント以上としているため、業績の向上に伴い増配となりました。今回の見直しは、配当性向40パーセントは維持しますが、ROEの見直しに伴い、DOE下限を4.8パーセントとしました。
財務戦略
キャピタルアロケーションの見直しについてご説明します。業績目標の修正に伴い、キャピタルアロケーションを見直し、株主還元と成長投資を引き上げていきます。
キャッシュインについてです。2024年5月の中期経営計画発表時には、3年間合計で440億円を計画していましたが、今回の見直しでは、利益増を主因に3年間合計で660億円としました。
キャッシュアウトについてです。成長投資として、人的資本投資やDX関連投資、建物関連投資など、幅広い分野での投資を強化しています。
業界全体で人手不足が継続する中で、施工能力拡充・生産性改善に資するM&Aや、再生医療領域等でのスポンサー案件では、継続的に模索・検討し、良い案件があれば機動的に対応していきます。
株主還元も140億円から230億円に増額し、配当増加を通じて、株主への利益還元を図っていきます。
財務戦略
政策保有株式の縮減状況について、ご説明します。みなし保有株式を含めた保有比率の縮減を進め、資本効率の向上を目指しています。
2025年の3月期には、みなし保有株式を含めて約38億円の売却を行いました。この結果、政策保有株式の保有比率は連結純資産比で22.6パーセントまで低下しました。2027年3月期までに、みなし保有株式を含む政策保有株式の保有比率を20パーセント未満にすることを目標に、今後も着実に縮減を進めていきます。
以上で、「Stage2030 中期経営計画 Phase2《磨くステージ》」における業績目標と財務戦略の見直しに関する説明を終わります。
質疑応答:中期経営計画の修正について
司会者:「今回、御社は中期経営計画を修正されましたが、修正幅が小幅な印象があります。これは、御社の施工能力などを勘案してのものなのか、あるいは事業環境の変化によるものなのか、どちらの要因が大きいのでしょうか?」というご質問です。
山中:今回の修正は、主に完成工事高というよりも営業利益の大幅増に対しての変更であると認識しています。それに伴い、ROEも修正しました。
完成工事高については、もともとの中期経営計画でも、Phase2「磨くステージ」については踊り場を予想していました。これは施工能力の限界を意味しているのかというと、そうではありません。受注残がまだ大きく残っていることに加え、新入社員の採用を中心に人員増を大きく図っている状況にあり、この中期経営計画の売上高に対する踊り場に対しては、次期中期経営計画のPhase3「輝くステージ」の段階で、新入社員の成長と受注残を活かした大きな飛躍があるのではないかと期待しています。
小幅な印象については売上のことだと思いますが、利益については大幅に変更しています。
質疑応答:自社株取得による株主還元について
司会者:「昨今では、自社株取得による株主還元を実施する企業が増えていますが、自社株取得による株主還元について、御社はどのように考えていますか?」というご質問です。
山中:自社株の取得についてですが、現時点では自社株買いの予定はございません。
株主への還元施策は、先ほどもお話ししましたが、昨年度に配当性向40パーセントに引き上げ、DOEを導入し、4.0パーセント、またそのDOEも、本年度はROEの上方修正により4.8パーセント下限というところまで持ってきています。
自社株購入については排除するものではありませんが、継続的に検討し、機を見るに敏として動くということで、機動的に実施する考えです。
質疑応答:今期の完成工事利益率について
司会者:「業績予想において、今期の完成工事総利益率が1.8ポイント改善する前提となっています。従来にも増して不透明感の強い事業環境の中で、御社の期初予想としては強気の数値にも見えますが、どのように理解すればよろしいでしょうか?」というご質問です。
山中:今回、利益率が1.8ポイント改善するという予測で、完成工事総利益率の目標を17パーセント台にしました。
もともと利益率が上昇してきているポイントとしては、需給の逼迫により、設備工事がある程度採算良く受注できていることで、受注時に利益がある程度上がっていることがあります。それがまずベースにあり、利益率についてはまだまだ伸ばしていけると考えています。
その証左ではありませんが、先日来、同業で発表されている数字は、当社が今回目標にした数字をすでに前期において上回られている部分があります。オフサイト施設やサポート面の活用というものを今後はさらに活かして、今回の完成工事総利益率目標17パーセント台を達成したいと思っていますし、達成可能な数字だと考えています。
質疑応答:受注環境の見通しと受注時の採算性について
司会者:「今後の受注環境の見通しについてはどのようにお考えでしょうか? データセンター、半導体、電池工場、再開発などの見通しについてお伺いしたいと思います。また、受注時の採算性については、上げていける余地はあるのでしょうか?」というご質問です。
山中:データセンター、半導体、電池工場、再開発等の受注の見通しということですが、半導体工場や電池工場については、基幹産業である自動車産業におけるEVのこの先の不透明感、再開発については、建築費の高騰による計画の延期・見直しなど、これらのリスクが実際に顕在化してきているのは確かです。
しかしながら、この中期経営計画期間の残り2年に関して言うと、当社は昨年度中に大型工事をある程度受注しています。お客さまの設備投資における今回のトランプ関税の影響は、正直言って我々が見通せるところにはございません。ただし、データセンターにおいては確実に受注していけると考えています。データセンターと半導体関連工事を中心に受注を増やしていきたいと思っています。
採算性については、先ほどもお伝えしたとおり、需給の緩みによってかなり上がってきていますので、この2年から3年については上げていけると考えています。その先の受注の環境がどう変わるかは設備投資の行方によると考えています。
質疑応答:足元の受注環境について
司会者:「足元の受注環境について教えてください。製造業の顧客などでは、トランプ関税の影響により、設備投資の延期、中止などの影響は顕在化しつつありますか?」というご質問です。
山中:こちらに関しても不透明なところはありますが、すでに数件、顕在化していることは事実です。トランプ関税の影響は、製造業、中でも半導体やEVにおいては不透明であると考えています。再開発については、内需の関係になるので、建築費の高騰による計画延期が出てきています。
質疑応答:受注時採算性の動向について
司会者:「受注時採算性の動向についてご教示ください。引き続き、前年同期比、前四半期比で改善傾向であれば、どのぐらい改善しているのか、併せてご教示ください」というご質問です。
山中:受注時の採算性の動向は、先ほどからお伝えしているとおり、上がってきています。数字に関しては、物価高に合わせたかたちで上がってきており、この1年で3パーセント程度改善しています。
質疑応答:リニューアル工事、新築工事の内訳について
司会者:「今期受注計画のリニューアル・新築工事の内訳を教えてください。具体的な数値での回答が難しい場合は、『リニューアルは2桁伸びる』など、伸び率のイメージで教えてください」というご質問です。
山中:リニューアル工事については約32パーセントの伸びで、新築工事については受注工事高全体の約半分の金額だったと思います。伸び率としては、リニューアル工事の割合がかなり増えました。
伸びた要因としては、バブル崩壊から30年後の建物のリニューアル工事の需要であると考えています。また、建築費の高騰により、新築工事から大型のリニューアル工事へ移行してきているイメージです。
リニューアル工事全体は伸びていると思っていますが、当社においてどのようなかたちの伸び率を示すかは、年度毎に施工体制を見ながら受注しているため、リニューアル工事だけが伸びていくというイメージではありません。しかしながら、世の中全体の傾向として、リニューアル工事は伸びていくだろうと考えています。具体的な伸び率については、測りかねるという状況です。
質疑応答:DOEの引き上げについて
司会者:「中期経営計画期間において、ROEが低下する計画になります。もちろん今期が良かったというのはあろうかと思います。ROEの持続的な向上のためには、株主還元が配当を中心とした場合、DOEをより高い水準にしていく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか? 例えば、DOEを毎年上げていくようなお考えはありますか?」というご質問です。
内藤健氏(以下、内藤):上席執行役員社長室長兼企画部長の内藤です。ご指摘のとおり、一昨年度のROE10.3パーセントから昨年度のROE17.4パーセントというのは、当社にとっては非常に良い結果となりました。
今後については、社長からも度々申し上げていますが、基本的には良好な受注環境を捉えながら、安定的な成長をしていきたいと考えています。したがって、成長投資とのバランスを図っていくことになります。
また、当社の場合、成長には運転資本がつきものです。この運転資本をしっかり積み上げていかないと、取れる受注も取れなくなってしまいます。キャピタルアロケーションで示したとおり、還元と成長投資のバランスを取りながら、ROEの下限水準を計算した結果が12パーセント以上ということになります。
株主還元等の施策については、毎年度しっかり見直していきたいと考えています。しかしながら、現時点でDOEの切り上げ等については検討していません。
質疑応答:販管費の増加について
司会者:「今期の完成工事総利益率が大きく上昇するのに対して、営業利益が伸び悩む理由について詳しくお伺いしたいと思います。販管費が大きく膨らんでいますが、賃金の上昇やDXへの投資などがどれだけ織り込まれているのかを詳細に教えていただけると幸いです」というご質問です。
佐々木洋二氏(以下、佐々木):上席執行役員 CIO兼業務本部長の佐々木です。販管費の内訳として、賃金の上昇やDX投資を進めています。スライドの5ページにおいて、昨年度の販管費が約30億円上昇したと報告しました。今後も同程度の増分を見込んでいます。また、社員数も増やしていますので、販管費、一般管理費は上昇傾向にあります。
質疑応答:施工能力見極めの結果について
司会者:「前期第2四半期のIRでは、施工能力を見極めた後、受注量を検討するとのことでしたが、見極めの結果はいかがでしょうか?」というご質問です。
山中:前期の第2四半期のIRでは、前期の第3四半期、第4四半期に大きく施工の完成工事高が伸びるということで、どれだけの人的リソースが賄えるかを見極めるということをずっとお話ししてきました。
残業規制が初年度のため見通しが難しく、最後まで見極めなければいけませんでしたが、結果的には、施工体制を確立した上で、確実に受注を確保できたことで、連結での完成工事高2,600億円を超えることができました。
これについては、6年前から人員増加を図っており、人材教育ということで「人づくり」を継続してきたことによるものだと思っています。今後も「人づくり」の継続ということで、中期経営計画の経営指標を続けていきたいと思っています。
質疑応答:海外事業について
司会者:「2025年3月期に受注工事高が大きく伸びているのは、Presico社の連結子会社化が要因とのことですが、今期以降、どのように海外事業に貢献していくのでしょうか? 中期経営計画においても海外事業の目標数値は見られませんが、何かKPIとしているものはありますか?」というご質問です。
佐々木:当社はシンガポールを中心に、当社の支店、100パーセント子会社であるDAI-DAN INTERNATIONAL ASIA PTE.LTD.、そしてPresico社の3社で事業を進めています。現在、当社の支店とPresico社については客先が競合していないということで、今後さらに大きく伸ばしていけるのではないかと考えています。
また、互いに技術者の交流をすることや、日本からの技術支援などを行うことにより、相互の技術力の向上を図って、より大きく成長させていけると考えています。現時点で、海外事業の特定の目標は外には出していませんが、今後とも10パーセントから15パーセント程度は海外比率を維持していきたいと考えています。
質疑応答:再生医療事業の見通しについて
司会者:「再生医療事業に関して、2025年3月期時点での定量データ、および今後の見通しについて開示していただける範囲でアップデートをお願いいたします。特に、前年比および計画比ではどのような動きとなっているのでしょうか?」というご質問です。
内藤:再生医療事業の全体感としては、当社が当初期待していた市場全体の成長速度よりは、やや鈍化していると見ています。当社は、もともと再生医療に関わる設備からスタートしています。現在は、がん・免疫細胞製品の製造受託等の分野の許可を取り、参入しています。売上全体としては、昨年度は一昨年度に比べて約2倍以上増加していますので、単体の利益の黒字化がやや見え始めてきている状況です。
私どもとしては、請負事業に加わる新たな収益源として、現中期経営計画期間に全力で取り組み、なんとか再生医療事業を収益の柱にしていきたいと考えています。
質疑応答:自己資本比率について
司会者:「自己資本比率を50パーセント程度にする目標ですが、借入金を4月に200億円返済したことを踏まえると、今後自己資本比率が上昇すると思います。どのように自己資本比率をコントロールするのでしょうか?」というご質問です。
佐々木:中期経営計画において、自己資本比率を50パーセント程度にするという目標を立てています。先ほどからのお話にもありましたが、最近は工事の大型化が非常に進んでいます。そうしますと、債権・債務も同時に膨らんでいきます。
そのような中で、昨年度は一時的に手元の現金が不足するということで200億円を借り入れしました。これに関しては返済していますが、今後も工事の大型化が進んでくると一時的に自己資本比率が上昇するとは考えていないため、適切にコントロールし、必要であれば借り入れを行うという方針です。
質疑応答:受注に占めるデータセンターの割合について
司会者:「データセンターが受注のドライバーになっていくことが示されましたが、受注に占めるデータセンターの割合について、2025年3月期と2026年3月期、並びに中期経営計画期間中の比率について、ご教示いただけませんでしょうか?
調査レポートなどによると、2026年以降に特に大きく増加する見込みが示されています。これまでの御社の好調な業績を踏まえれば、すでにデータセンター投資は活況だと思うのですが、御社から見てもまだまだ建設需要が増えていくという手応えでしょうか?
また、2026年から大幅に増える理由などについても、御社から見えているものでかまいませんので、思いつくものがあれば解説いただけますと幸いです」というご質問です。
山中:受注全体に占めるデータセンターの受注比率に関しては、今すぐお答えすることはできません。しかしながら、当社は現在、データセンター、半導体、車載、電池等の産業施設の受注が受注全体の60パーセントを占めています。その中でもデータセンターは大きなシェアを占めています。
2026年以降、データセンターの受注が大幅に増えるという認識については、当社も大きな仕事の情報を持っています。これについては、新たに開発される部分もありますが、データセンターを建てた後にお客さまが入り、サーバーを設置するという実装化に対しての仕事も重なってきますので、2026年以降に大きく増加するという見込みは正しいと考えていますし、手応えもあります。
まだまだAIなどでデータセンターの必要性が高まっていくと思われるので、これからも受注は大きく増加していくと考えています。
質疑応答:M&Aについて
司会者:「今後、日本では人手不足および後継者不足への対応が急務であり、業界を問わずM&Aが活発化していくと思われます。最近では業界を超えたM&Aも活発化しつつあるようです。こうした中、御社のM&Aに対するスタンスを教えてください。また、どのような分野、あるいは事業に対するM&Aが望ましいのでしょうか? また、M&Aに関するリスク対応についてご教示いただければ幸いです」というご質問です。
内藤:M&Aについては、特に次期中期経営計画以降の成長のエンジンということで、積極的に検討を続けています。業界全体では、ご指摘のとおり人手不足が進行しています。今後は建設・設備の業界においても、業界再編の可能性が出てくるのではないかということから、当社もさまざまな業界再編のスタディを常日頃から実施しています。人手不足対応を改善できるような、生産能力を向上することができる企業とのM&Aは、私どもも追求しなければならないと考えています。
また、海外ではシンガポールで買収したPresico社が非常に良い結果を生んでいます。引き続き、海外事業のマザーマーケットであるシンガポールを中心に、良い案件があれば取り組んでいきたいと考えています。
リスクに関しては、特に国内の生産力・生産性改善に資するM&Aについては、非常に競合が多くなっています。正直なところ、価格が異常に高騰している状況のため、高づかみするとシナジー効果が出ないという結果になります。引き続き、機動的に対応できるように常に間口を広げながら、良い案件が出てきた時に果敢にトライできるように取り組んでいかなければいけないと考えています。
質疑応答:政策保有株式の保有比率について
司会者:「政策保有株式の保有比率を連結純資産比20パーセント以下にするという目標は、業界でも多く見られる水準です。建設業界でも、10パーセント以下にするなどの一歩踏み込んだ施策が発表されるなど、政策保有株式に対する注目も高まっています。御社においても早急に10パーセント以下を目標とするなど、財務戦略のアップデートは期待できないのでしょうか?」というご質問です。
佐々木:当社は、現中期経営計画期間中の2027年3月期までに、政策保有株式の保有比率20パーセント未満の早期達成を目指すということで、中期経営計画をスタートさせました。中期経営計画の初年度である昨年度において、22.6パーセントまで縮減しています。今後も継続的に売却を進め、20パーセント未満の目標を達成したとしても、引き続き縮減に努めていく予定です。
質疑応答:時間外労働の上限規制の影響について
司会者:「2024年度から建設業務に時間外労働上限規制が適用されて初の本決算でしたが、施工能力や業績に影響はあったのでしょうか?」というご質問です。
山中:基本的に当社は、受注時に時間外労働の上限規制を守ることができるような施工体制をとっています。しかし、建築工事の遅れや、工事の終盤に多くの作業員が入るという設備工事業の仕事の特性もあり、影響がなかったかと言われると、多少の影響はありました。しかしながら、なんとか乗り切ったというような状況です。