2025年第1四半期業績総括
石橋秀一氏(以下、石橋):みなさま、こんにちは。代表執行役 Global CEOの石橋です。本日は2025年第1四半期業績総括と、通期見込みについてご説明します。
まず、第1四半期グローバル総括です。今年に入り、「新たな経営課題」として米国関税影響があり、グローバルで先行き不透明な状況が続いています。各地域、国、市場別に影響が異なりますが、ビジネス構造変化も想定して「変化をチャンスへ」、経営を進めます。
ブリヂストンは2025年を「緊急危機対策年」と位置づけていますが、「新たな経営課題」を受けて、「ビジネス体質強化」として、この意味性がさらに深まると考えています。
第1四半期業績は売上収益約1兆円、調整後営業利益約1,100億円、調整後営業利益率10.5パーセント、対前年減益となりましたが、2025年2月発表計画ベースでは想定どおりです。一過性の要因抜きでは対前年若干の増益となりました。
継続事業からの当期利益は、再編・再構築費用を調整項目に計上しており、対前年減益となりました。
販売面においては、PS(パッセンジャー)高インチタイヤなどの高付加価値商品での拡販が進み、販売MIXを継続的に改善、強固なプレミアムタイヤ事業基盤は維持・強化しています。
また、2024年下期から着手の再編・再構築(第2ステージ)の利益貢献が、欧米を中心にスタートしました。
加えて、グローバルビジネスコストダウンを地道に推進した結果、計画以上の効果を創出し、第1四半期では約170億円の貢献となり、厳しい状況の中で業績を下支えしました。
2025年第1四半期業績総括:欧州
重点経営課題エリア別に詳細をご説明します。課題となっていた欧州事業は、「質にフォーカス」し、まだまだですが、着実に改善しています。対前年で増収増益を達成しました。
プレミアムタイヤ事業は、調整後営業利益率が5パーセントレベルとなり、市販用PSタイヤを中心にプレミアムフォーカスを徹底しています。
TB(トラック・バス用)、小売においても赤字幅を改善し、通期で黒字化を目指します。
また、小売オペレーション改善、組織体制の統合・シンプル化を含む業務プロセスの改善など、早期に着手した事業再構築が業績に貢献しています。
2025年第1四半期業績総括:北米
北米事業は、強固なビジネス基盤を持つ市販用TBビジネスを中心に収益性を確保し、対前年で増益となりました。
一方、消費財においては、ビジネス再構築の加速がスタートしています。後ほど、通期見込みの中で詳細をご説明します。
加えて、組織・人員の最適化など、年初から進めてきた事業再構築についても、徐々に業績へ貢献しています。
2025年第1四半期業績総括:南米
次に、南米事業についてです。アルゼンチンはダメージコントロールにより、調整後営業利益率を11パーセントレベルまで改善できた一方で、ブラジル事業では想定を越える大幅な赤字となりました。
「南米事業の形を変える」再構築をもう一段強化するとともに、ブラジル事業の立て直しを推進するため、チーム経営能力アップを実行しています。
南米事業を熟知するとともに、現物・現場ベースに再構築をリードできる人財をトップに配置し、日本からの各機能の支援も強化することで、米日チームで立て直しを推進し、再スタートしています。
2025年第1四半期業績総括:Specialties プレミアムタイヤ・ソリューション事業
Specialtiesプレミアムタイヤ・ソリューション事業は鉱山、航空機、二輪において堅調な販売を維持しました。
しかしながら、2025年第1四半期の天然ゴムを中心とする鉱山用タイヤの原材料価格高騰、及び農機用タイヤの大幅減益・赤字が足を引っ張り、対前年で減益となりました。
調整後営業利益率20パーセント以上の高収益体質は維持しています。
2025年「緊急危機対策年」から、「強いブリヂストン」、稼ぐ力の強化、2026年「真の次のステージ」 への道筋
次に2025年の活動について進捗をご説明します。2025年は「守り」を最優先に、「攻め」の活動を両輪で回しています。
冒頭にお伝えしたように、米国関税影響などによる大きなビジネス構造変化によって、「緊急危機対策年」の意味性が強化され、「熟慮断行」、やると決めたことをしっかりとやり抜くことがますます重要になっています。
「守り」事業再編・再構築(第2ステージ)進捗:グローバル全体像
「守り」である再編・再構築(第2ステージ)においては、2025年にもう一段強化します。
すでに米欧、BRIDGESTONE WESTでは、ベルギー・ランクラーのリトレッド工場の閉鎖、加えて4月に発表したとおり、スペイン2工場においては、TBタイヤの生産能力縮小に向けた協議を開始、継続しています。また、欧州全域で業務プロセス改善を軸に、組織体制のシンプル化をもう一段進めています。
北米においても、1月にTBタイヤ工場であるラバーン工場閉鎖を発表し、同時にコーポレート、販売、オペレーション機能の人員削減、農機用タイヤを生産するデモイン工場の生産能力及び人員削減を発表しました。南米においても再構築、固定費削減を進めています。
加えて、日本、アジアのBRIDGESTONE EASTにおいては、組織統合、シンプル化、日本タイヤ事業の重構造組織のリーン化、化工品・多角化事業再構築を、スピード感をもって進めていきます。
「攻め」プレミアムタイヤ事業ープレミアムフォーカス&グローバルビジネスコストダウン活動加速 進捗
「攻め」の活動では、プレミアムフォーカスとグローバルビジネスコストダウン活動を加速しています。プレミアム車種・プレステージOE、プレミアムEVへのアプローチを継続強化し、「ENLITEN」商品の新車装着を着実に拡大しています。
その回帰需要を取り込む市販用でも、「ENLITEN」商品の拡大を推進し、「断トツ商品」力を中核に、高インチタイヤ及びプレミアムタイヤブランドの販売比率を継続的に伸長させています。
さらに、地道なグローバルビジネスコストダウン活動を加速させ、2025年通期で約550億円の効果を見込んでいます。2024中期経営計画のターゲットである累計約1,000億円を1年前倒しで達成するレベルです。
BCMAは、開発・生産コストダウンを中心に、通期で15億円の効果を見込んでいます。さらに、2027中期経営計画に向けて、グローバルでモジュールを共有する「グローバルモジュール化」へ挑戦します。これにより、原材料調達など、効果をバリューチェーン全体へ波及させ、2026年以降、業績貢献を加速度的に進めていく計画です。
2025年第1四半期業績総括:事業ポートフォリオ別
事業ポートフォリオ別業績では、コア事業であるプレミアムタイヤにおいて、調整後営業利益率13パーセントレベルを確保しています。成長事業であるソリューション事業は、調整後営業利益額は対前年全体で146パーセント、小売事業では170パーセント、戦略事業である生産財BtoBソリューションでは120パーセントレベルを達成しました。
一方で、化工品・多角化事業は赤字となっており、再構築の強化・加速が急務です。
2025年通期業績見込ー米国関税影響とその緩和策
最後に、2025年通期業績見込みについてご説明します。米国関税の直接的影響はあるものの、通期業績見込み、調整後営業利益額5,050億円は変えません。
1株当たりの配当金額予想としては230円を維持します。加えて、当初の計画どおりに資本政策強化を継続し、自己株式取得及び消却、自己資本比率の適正化を実行化していきます。
米国関税については不確定要素が大きいものの、5月12日時点の前提に基づき、2025年末までの直接的な調整後営業利益インパクトとして、約450億円レベルを想定しています。これらはさまざまな施策の組み合わせで打ち返します。
当社におけるタイヤ単体の米国関税インパクトは、PSタイヤ本数でいえば日本生産品のうち、米国輸出は全体の約1割弱です。また、グローバル販売のうち、米国関税の影響を受ける本数は、メキシコ・カナダ品の関税適用が猶予されている前提で、約4パーセントレベルです。
ただし、業績見込みへ織り込んでいない経営リスクとして、米国内景気減退影響を、調整後営業利益ベースで約200億円レベルと見ています。これは、2月計画対比、米国GDP成長率低下を前提として試算したものですが、不確定要素がさらに大きく、リスク度合いも不透明なため、見込みには織り込んでいません。
しかし、今後米国以外のグローバル各市場における景気減退リスクなども含めて、感度を鋭く持ち、迅速に対策を実施していきます。
2025年通期業績見込ー米国関税影響とその緩和策
約450億円の直接的インパクトを打ち返すために、さまざまな対策を組み合わせます。まずは「守り」と「攻め」の活動をやり抜き、さらに強化していくことです。地道なグローバルビジネスコストダウン活動や、プレミアムフォーカスの徹底を継続し、強化していきます。
次に、グローバルでの「リーン化」と、グローバルカンパニーの強みを活かした緩和策の組み合わせです。再編・再構築については、今後追加施策を実行していきます。また、グローバルSCM、調達などのサプライチェーン最適化を推進していきます。
加えて「変化をチャンスへ」として、特に米国において販売・生産の両面から事業強化を図ります。「変化をチャンスへ」は、2020年の第3の創業以降、経営方針として常に意識しています。
今回もこれらの活動にフォーカスすることで、グローバルでビジネス体質をより強化でき、2026年、さらには2027中期経営計画に向けて、質を伴った成長への基盤になると考えています。
「変化をチャンスへ」ーレジリアントな基盤強化:地産地消体制推進/米国事業強化
ブリヂストンは従来、地産地消体制を推進することで、レジリアントな基盤を強化してきました。
現状、米国地産地消率はPSタイヤにおいて約6割、TBタイヤ及びOR(鉱山用)超大型タイヤは約7割です。北米・南米を合わせた米州ではPSタイヤが約9割、TBタイヤが約8割です。今後もこれらの比率を維持・向上していきます。
加えて、高付加価値タイヤ分野においては、日本で生産し、世界で勝つ戦略を実行します。「モノづくりの中核」である日本にて、グローバル地産地消体制を補完します。
また、米国事業強化の一環として、PSタイヤを生産する米国エイケン工場にて、工程間バランスを適正化する小規模な投資を実行し、ウィルソン工場も含めて、生産性向上、既存設備の最大活用を推進しています。2025年より徐々に増産がスタートし、2027年には追加で約200万本の増産体制を構築します。
また、メキシコ・カナダの生産拠点においても、同様に生産性向上、既存設備の最大活用による増産を推進していきます。
原材料においては、天然ゴムを除き、現地調達率が約8割から9割と高いレベルにあります。今後もグローバルカンパニーの強みを活かし、変化や地政学リスクに対応するサプライチェーンのグローバル最適を追求していきます。
「変化をチャンスへ」ー米国事業強化 米国消費財ビジネス再構築:「マルチブランド戦略」
米国事業強化においては、市場構造変化を想定し、消費財ビジネス再構築、マルチブランド戦略をさらに加速させます。
ブリヂストンブランドはプレミアムフォーカスを維持し、「サステナブルなプレミアムブランド」の構築、「ENLITEN」商品の拡大、戦略的カスタマーチャネル拡充を進めていきます。
同時に、市場構造変化をチャンスに変えるため、Firestone ブランドの活用を強化します。米国内の車両の車齢アップによるメンテナンス需要の増加や、Tier 2、Tier 4ゾーンのタイヤ需要の伸びを見据え、Firestoneリバイタライゼーションを前倒しで進めます。
インディアナポリス500マイルレース(インディ500)などとの連動を再強化し、ブランド力を向上させるとともに、新商品を積極的に投入していきます。2026年からはFirestoneブランドにも「ENLITEN」商品を拡大し、「断トツ商品」を強化します。そのため、日本の開発リソースを米国にシフトし、スピードアップを図ります。
加えて、直営小売店網である「Firestone Complete Autocare」の拡大や、サービス拡充のための販売投資を行い、Firestoneクレジットカードビジネスとの連動も強化します。
ブランド、商品、チャネルを包括的に強化していくことで、再構築を加速させていきます。
「変化をチャンスへ」-変化に対応できる「強いブリヂストン」へ 国・地域別市場構造変化に対応した戦略構築・実行
その他の国・地域においても、それぞれの市場の変化に対応し、メリハリのある戦略を構築、実行していきます。
南米は当面、ブラジルを中心に事業再構築にフォーカスします。欧州は「欧州事業の形を変える」再編・再構築をやり抜いた後、次のステージで成長を目指します。
廉価品ゾーン流入が予見される日本、タイ、インドネシアなどの高シェア市場においては、ファミリーチャネルの防衛を強化し、ブリヂストンブランドのBEST領域の「断トツ」強化に加えて、Better、Good領域も強化していきます。
インドは変わらず成長市場として、PSタイヤにおいてプレミアム・マス戦略を推進していきます。
中国は中国内完結を基本に、OE・REP連動でプレミアムPSビジネスの強化を推進します。
鉱山用タイヤビジネスは高い米国地産地消率、グローバル販売における米国輸入品比率が低く、米国においてもレジリアントなビジネス基盤を構築しています。この基盤をベースに、「断トツ商品」である「MASTERCORE」と、ソリューションの拡充を継続し、「質を伴った成長」を続けていきます。
「真の次のステージ」質を伴った成長へ
緊急危機対策年、米国関税影響緩和策を発端として、国別、市場、ビジネス構造変化への対応を徹底し、2025年下期には米国など成長市場から質を伴った成長をスタートさせていきます。
その上で、2026年、2027中期経営計画において、グローバルブリヂストン全体における成長を目指します。引き続きご理解、ご支援のほどよろしくお願いします。ご清聴ありがとうございました。
2025年第1四半期 連結業績
菱沼直樹氏(以下、菱沼):Global CFO・G財務統括部門長の菱沼です。2025年第1四半期連結業績からご説明します。
2025年第1四半期の連結業績は、対前年で減収減益、調整後営業利益率は10.5パーセントでの着地となりました。
調整後営業利益の対前年の増減要因は次のスライドでご説明しますが、前年に発生した資産売却益や、昨年第4四半期での生産調整による加工費の一時的な悪化影響の繰り越しなど、一過性の要因を除くと、対前年で若干の増益での着地となります。
親会社の所有者に帰属する当期利益は759億円となりました。北米・南米・欧州等において、将来の収益性改善のため、再編・再構築(第2ステージ)を着実に推進し、関連費用を計上したことにより、対前年比減益での着地となりました。なお、調整項目の内訳については後ほどご説明します。
2025年第1四半期 調整後営業利益増減要因:前年差
調整後営業利益の対前年増減要因についてご説明します。
販売MIXの改善や地道なグローバルビジネスコストダウン活動に加え、再編・再構築によるビジネス体質改善を着実に推進しましたが、原材料価格の上昇や棚卸未実現のネガティブ影響があり、対前年で減益での着地となりました。
2025年第1四半期 セグメント別業績
セグメント別業績です。日本セグメントにおいて、前年に資産売却益の計上があったことに加え、化工品、スポーツ・サイクルでの減益影響があり、前年比減益での着地となりました。
日本以外の海外3セグメントでは、ビジネスコストダウンに加えて、再編・再構築の推進によるビジネス体質改善効果も寄与し、原材料等のインフレが続く事業環境下においても対前年で増益、収益性を改善しました。
2025年第1四半期 財別業績
財別業績についてご説明します。PS/LT(乗用車/ライトトラック用)タイヤは市販用における高インチタイヤの拡販、構成比アップを継続しましたが、原材料高の影響があり、前年比利益率は若干の低下となりました。
TBタイヤは北米市販用を中心に前年比で販売伸長を継続し、収益性も改善しています。
Specialtiesは農機向けタイヤビジネスにおいて需要低迷による販売減少により、対前年で大幅減益、赤字となった影響が大きく、前年比減益での着地となりました。
一方で、ORタイヤ・ソリューションビジネスにおいては、原材料高によるネガティブ影響はあるものの、販売は堅調に推移しています。航空機用タイヤ・ソリューションビジネスの伸長もあり、21.9パーセントと高い収益性を維持しています。
化工品・多角化事業については次のスライドでご説明します。
2025年第1四半期 化工品・多角化事業 事業別業績
化工品事業については、油圧ホース・クローラー事業において、建機・農機需要減を背景に前年比で販売数量が減少し、減収減益です。利益率も低下し、営業赤字での着地となりました。
スポーツ・サイクル事業については、スポーツ事業では国内ゴルフは堅調に推移した一方で、米国での販売減影響が大きく減収減益となりました。サイクル事業においては販売台数ベースでは前年同期を上回るも、為替円安に伴う原価上昇の影響が大きく、営業赤字での着地となりました。
米州多角化事業については、厳しい事業環境は継続していますが、新車向けビジネスの採算が良化し、対前年増益となりました。
2025年第1四半期「調整項目」について
調整項目です。第1四半期は226億円の損方向で着地しており、主な内訳はご覧のとおりとなっています。
今年1月に発表した米国ラバーン工場閉鎖の関連費用の計上等、再編・再構築第2ステージを加速しており、北米・南米・欧州地域を中心に事業再編・再構築関連費用を計上しています。
2025年第1四半期 財政状態計算書及びキャッシュ・フローハイライト
財政状態計算書及びキャッシュ・フローの状況です。資産合計は、為替円高の影響もあり、5兆3,963億円と前年末比で減少しています。
現金及び現金同等物の月商比は1.7ヶ月と、前年末比0.2ヶ月の圧縮、ターゲットの1.5ヶ月レベルに向けて着実に進捗しています。
商品及び製品についてはリーンな在庫管理を継続徹底し、前年同期比除く為替で減少しています。
フリーキャッシュ・フローは913億円の収入となり、営業キャッシュ・フローの前年比改善に加え、厳選した投資を実施した結果、前年比604億円の増加となりました。
また、2月に発表した資本政策については、自己株式の取得、負債の活用を着実に推進しています。
2025年通期見通しについて
続いて、2025年通期見通しについてご説明します。先ほどCEOより説明があったとおり、2月通期業績予想を維持し、米国関税の直接的影響を打ち返すことを目指します。
一方で、関税による景気後退リスクは影響見通しが不透明のため、業績見込みには織り込んでいません。今後、適切なタイミングで業績見込みへ反映します。
配当については景気後退リスクが顕在化した場合でも、230円維持を想定、2月発表済みの資本政策は、予定どおり継続実施します。
私からの説明は以上になります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:エイケン工場への投資について
質問者:ご説明の中でエイケン工場の小規模投資のお話がありましたが、こちらの投資額や時期、増産の規模などの詳細を、言える範囲でけっこうですので、教えてください。
石橋:エイケン工場は、工程間のバランスを良くするために少額の投資を行い、一部要員も採用し、生産性を上げています。3年間かけてエイケン工場とウィルソン工場の生産性を上げていきますが、既存の設備を最大限活用して、200万本の増産を目指すというシナリオです。今年は50万本強の増産ができる予定ですが、徐々に加速させたいと思っています。
質疑応答:化工品・多角化事業について
質問者:化工品・多角化事業についてお聞きします。スライドに、化工品事業の売上収益が376億円、調整後営業利益がマイナス3億円とあります。第1四半期の動きと、あとは通期における化工品・多角化事業全体の需要見通しについて教えてください。
菱沼:通期の化工品業績については、収益性の面では黒字化を想定しています。具体的な数値は、直近の見通しも含めて差し控えたいと考えていますが、通期では着実に黒字化を目指していく想定です。
質問者:黒字化する要因としては、どのようなことをお考えですか?
菱沼:足元ではトップラインが厳しい状況にありますが、固定費の削減や販売MIXの改善といった取り組みを積み重ねることで、改善に向けて取り組んでいます。
第1四半期の内訳としては、油圧ホースやクローラー事業が、農機や建機メーカーの需要減少などにより販売が減少したこともあり、非常に厳しい状況です。
質問者:通期で黒字化を目指すとのことですが、そのような減少した需要が今後回復していく見込みも含まれているのでしょうか?
菱沼:需要回復だけでなく、先ほどお伝えしたようなコスト削減、商品MIXの改善などを重ねていくことで、黒字化を目指す方針です。
質疑応答:関税対策について
質問者:関税対策についてお聞きします。米国での生産強化などが挙げられていますが、タイヤの販売価格の見直しや値上げは検討されていますか?
石橋:関税による直接的な影響額は450億円を見込んでいますが、それを打ち返すためにさまざまな対策を取っていきます。現在、グローバルサプライチェーンの最適化や再編・再構築の強化などを進めています。価格についても検討の土俵には乗っていますが、現時点では決まったものはありません。
質疑応答:グローバルのリーン化について
質問者:関税関連でお聞きします。業績総括のスライドにあるグローバルでのリーン化についてです。再編・再構築(第2ステージ)のところで、「追加施策を検討・実行」とありますが、2月の発表以降で何かアップデートがあれば教えてください。
石橋:第2ステージに関しては、グローバルでの活動は網羅的に情報開示していますが、具体的なアイテムは決定次第、発表している状況です。
第1四半期に決定し、すでに発表した情報としては、スペインの2工場の生産能力縮小、北米ラバーン工場の閉鎖、デモイン工場の生産能力削減などがあります。
他にもEAST・WESTいずれの地域でも、現在計画中のものがありますし、この厳しい状況の中で、追加で議論しているものもありますので、決定次第、開示していきます。
スライドには、定性的にさまざまなアイテムを記載していますが、そちらを順次具体化し、追加でアクションをとっていきます。
質疑応答:航空機部品への関税について
質問者:関税について、自動車関連ではなく、最近、米国が航空機部品への関税を検討しているという報道がありました。ブリヂストン製品がボーイングのタイヤなどに使われているとのお話ですが、関税の影響や、もし現実に発動となった場合の対応策について、お考えがあれば教えてください。
森田泰博氏:代表執行役 Global CAOの森田です。航空機関連については、現在内容を精査しているところです。この450億円の中身の開示は差し控えますが、感度を上げて情報は理解していますし、対策も検討しているところです。
質疑応答:米国の事業環境と、ブリヂストンのポジションについて
質問者:米国の事業環境と、御社のポジションについて教えてください。
石橋:先ほど、消費財について事業を強化して、再構築をスタートしたとお話ししました。ブリヂストンやミシュランといったTier 1のメーカー群は、相対的に地産地消の比率が高くなっています。一方、Tier 2のメーカー群は一部米国生産を行っていますが、かなりの部分を輸入しています。さらにTier 3・Tier 4のメーカー群は、かなりの部分を輸入しています。米国生産がほとんどないか、まったくないという状況です。
そのような中で、特に最近、Tier 3・Tier 4の需要が伸びてきているというお話をしてきました。そうすると、このTier 3は、非常に中途半端な状況になってきます。
米国において、今後Consumer Price Index(消費者物価指数)がどう推移するかはわかりませんが、ややインフレに向かう中でも、Tier 4のメーカー群は、ある程度関税があっても、もともとの価格が安いため、一定の存在感を確保していくだろうと考えています。ただ、Tier 3・Tier 2のメーカー群がおそらく厳しくなってくるのではないかと思っています。
そのような中で、我々はFirestoneブランドを持っています。Firestoneというのは、「America's Tire Since 1900」で示されているように、まさに米国で生産されている米国のタイヤです。
そのような意味でも、Tier 2の中でFirestoneの価値を高めていくことが重要です。これは商品やコストの面だけでなく、約2,200店舗ある直営店「Firestone Complete Autocare」でのブランド強化など、さまざまな取り組みも含めて、総合的にFirestoneブランドの価値を高めていきます。そして、Tier 3も取り込んでFirestoneの拡売をしていく戦略を今組んでいます。
ブリヂストンはTier 1メーカーで、「断トツ商品」と位置づける商品を展開しています。この戦略は変えず、マーケットをしっかり見ながら、その存在感を着実に高めていきます。OEタイヤを伸ばし、市販用タイヤも回帰需要をとっていく方針です。これは、今までのやり方と基本的には変わりありません。
一方、Firestoneについては、米国マーケットの大きな変化を見据え、積極的に拡販していきます。先ほどお伝えしたとおり、米国にある既存の2つのタイヤ工場、エイケンとウィルソンについても、既存の設備を最大限活用していきます。
先日ウィルソン工場を訪問しましたが、現場の稼働状況が非常に良くなってきており、これをさらに加速させて、あまり新たな投資せずに量を確保していく考えです。当然、稼働率も上がってきますし、米国での増産・増販を進めていきます。
また、日本からの輸出については基本的にHRD、プレミアムにフォーカスした輸出ですが、高付加価値のブリヂストンブランドでしっかりと存在感を強めていきます。この組み合わせの中で、米国マーケットにおける存在感を高めていくアクションを進めていきます。
トラック・バス用タイヤについては、これもカナダやメキシコとのUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の動きによって変わってきます。我々の予見としては、6月まではおそらくフリーの状態が続くだろうと見ていますが、年末まで続く可能性もあります。我々はコンサバティブに見積もって、7月以降は関税がかかるという前提で、先ほどお伝えした450億円という数字を出しています。
以上の先行き不透明な状況によって多少の変化はあるかもしれませんが、トラック・バス用タイヤについてはTier 1の中で非常に強い基盤を持っており、従来と変わらずブリヂストンブランドで着実に展開し、Firestoneはあくまで補完的に行っていくということに変わりはありません。特に大きな変化があるのは、消費財におけるTier 2とTier 3の部分です。
質疑応答:第1四半期の業績予想について
質問者:業績についてお聞きします。まず第1四半期ですが、御社から見て、どの程度上振れたと捉えていますか? コスト面の改善でかなり良くなっているというお話でしたが、そのあたりの感触を教えてください。
また、通期については、関税への対応や外部環境リスクなどについてご説明いただきましたが、どちらかというと、オポチュニティの側面をどのように見ておられるのか、ご解説いただけますか?
例えば、先ほどのFirestoneの拡売効果や、値上げの効果もあると思いますし、コスト削減による積み増しがどのくらいになるのかも関連すると思います。また、コスト面では原材料価格が下がってきているので、そのような点を踏まえた定量的なオポチュニティについて、数字を交えて教えてください。
菱沼:第1四半期の業績について、社内計画との比較でどうだったかをご説明します。結論から言うと、概ね社内計画対比でインラインという状況です。
項目ごとに見ると、大きな乖離はありませんでしたが、強いて言えば、コスト削減効果などは計画対比でアヘッドでした。為替についても145円の前提に対して実績は153円でしたので、この部分もアヘッドでした。
一方で、南米のブラジル事業のパフォーマンスや化工品・多角化事業などが、想定よりもビハインドでした。これらのポジティブな部分とビハインドした部分を総合すると、概ね社内計画対比でインラインとご理解いただければと思います。
石橋:補足します。先ほど「450億円を打ち返す」というお話をしましたが、オポチュニティの観点で言うと、まず1つ目は「変化をチャンスへ」といった米国事業の強化による増産・増販効果です。
2つ目は、欧州でのプレミアムフォーカスです。これが今リプレイスで好調で、グローバルでのプレミアム強化の中でも我々の想定以上に進むのではないかと期待しています。
3つ目はリーン化、つまり身を削る活動をグローバルで進めていますが、さらに強化していきます。今は具体的にはお伝えできませんが、オントップで進めようとしています。これもコスト面で効いていき、体質が強化される見込みです。
4つ目として、いつもお話ししていますが、ブリヂストンらしいビジネスコストダウン、つまり生産性の向上や調達など、さまざまなものを組み合わせた施策が想定以上に進んでおり、こちらも下支えしてくれるだろうと見ています。
そのような意味で、450億円というネガティブな要素や景気のダウンに対応し、高い位置で打ち返せるよう、さまざまなプランを作っているところです。
質問者:そうすると、今挙げていただいたような施策で450億円を打ち返していくということですが、仮に関税が想定よりも下がってきた場合でも、これらの施策は根付くと考えてもよいでしょうか? その上で値上げなども行うのであれば、それが上乗せされていくという理解でよいですか?
石橋:450億円というのは、例えばUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)なども非常にコンサバティブなアサンプションをしていますが、当然そうならないケースもあります。関税のアップダウンによって、我々の対応が変わるエリアもあります。
それとは別に、体質を良くするような活動はしっかり残していくべきだと思っています。また、米国における消費財事業の強化も同様です。これは構造的な変化を想定しており、関税のアップダウンには多少影響されますが、基本的な流れは変わらないと思います。したがって、これらの活動は確実に残していきたいと考えています。
質問者:非常に細かい質問で恐縮ですが、御社のボトムラインを見た時、第1四半期には再編関連の構造改革費用があまり計上されていないように感じました。米国の工場が閉鎖されたのでもっと費用が出てくるかと思ったのですが、年間1,000億円の構造改革費用について、何か変化が起きているのでしょうか?
石橋:年間1,000億円の調整項目は、使い切ります。したがって、今後はタイミングが明確になるたびに順次開示していきます。また、現時点において追加でさまざまなことを検討しているため、1,000億円よりも増える可能性もあります。
質疑応答:生産フットプリントと関税の影響について
質問者:御社にとって、生産フットプリントにおいて、25パーセントの関税が持つ意味について教えてください。
もともと米国での生産コストは非常に高く、毎年のように労務費も上昇しています。一方で、新興国のコスト優位性が高まるトレンドがあったと思いますが、その中で25パーセントの関税の可能性が出てきました。
今のところ、御社としてはあまり設備投資を行わず、既存工場を最大限に活用するということですが、仮にこの25パーセントの関税が恒久的に続く場合、現地生産を拡大するために設備投資を続けるのか、それとも新興国や今の為替を前提とした時の日本などのほうがコストが安いと判断するのか、拠点間のコスト比較という意味合いでお話をうかがいたいと思います。
石橋:今回、世界中にある当社の生産拠点のコスト、関税、オーシャンフレート(海上輸送費)を工場ごとに比較しています。そして、関税が25パーセントのケースや10パーセントのケースなど、さまざまなシミュレーションを行っています。
その中で、25パーセントの関税がかかった場合の競争優位性については、米国の消費財を扱うエイケン工場、特にウィルソン工場はコストが非常に高い状況です。それでも、関税が25パーセントの場合、分野によっては他の生産拠点とどっこいどっこいになるというレベルです。商品別、あるいは乗用車用タイヤについても、High Rim Diameterの高付加価値品でどうなのかを比較する中で、サプライチェーンをどのように組み合わせていくかが焦点です。したがって、一概には言えません。
例えばトラック・バス用タイヤのラバーン工場はすでに閉鎖が決定していますが、非常にコストが高い、古い工場でした。ここについては、今後ブラジルから北米に輸出する段取りをしています。もし25パーセントの関税がかかったとしても、ブラジルのほうが競争力があるというレベルだったため、ラバーン工場は閉鎖という判断に至りました。
また、ウォーレン工場はトラック・バス用タイヤの工場ですが、人件費は高いものの、非常に現場力があり、生産性も高い工場です。米国で生産していますが、世界で勝てる工場が実は米国に存在しているということです。
一方、ウィルソン工場は消費財を扱う工場で、米国の自動車メーカー向けに非常に難しい商品を生産しています。そのため、苦戦している状況です。現場では生産性向上の取り組みが進められていますが、まだまだ途上なので今後さらに加速させる予定です。
このように、一概には言えないところがあります。拠点別、国別に工場の状況を見える化し、それぞれどこまで生産性を向上できるのか、グローバルの最適なサプライチェーンをどう組み上げていくのか、そのようなことを今毎週のように打ち合わせを行っているというのが現状です。
質疑応答:収益性と再編・再構築の進捗について
質問者:収益性について確認させてください。450億円の関税負担となると、昨年の御社の北米売上の2パーセントから3パーセントにあたります。
現在、グッドイヤーは米国で最大4パーセント、カナダでは6パーセントの値上げを実施すると発表しています。御社もそれと同程度の値上げを行えば、それだけで十分お釣りがくるような状況だと思います。
さらに、景気悪化のリスクも見据えて、再編・再構築を前倒しするというお話もありました。そうすると、先ほどの年間予算である再編コスト1,000億円をもう少し使って、来期にかけてもう少しコストダウン効果が期待できるような動きを今進めているという理解でよいでしょうか? もしそうだとしたら、再編・再構築の追加部分について、詳細は言えないにしても、どの程度の効果を狙って活動を進められているのか確認させてください。
菱沼:来年の再編・再構築に関してですが、2月の決算時に、2025年のメリットとして400億円程度とお伝えしました。現在も精査を続けていますが、細かい改善の積み重ねによってさらに50億円から60億円程度、上積みできている状況です。その部分については、プラスの要素だと捉えています。
石橋:要するに、これはオントップで行います。今、1,000億円規模のものはすでに具体的に計画しており、対外的に発表しているのはその一部にすぎません。これから決定したものから順に公表していきます。そのプランにさらにプラスして何か行っていこうということです。
それは、2026年に向けて、体質をさらに良くしていくことにつながることが大前提です。体質を良くしながらわきを締めて、質を伴った成長につなげていくことはすでにお約束しているとおりです。米国、インドといった地域で、質を伴った成長にシフトしていきます。
まず米国に関しては、今年1月と4月に私自身が現地に行き、現場やお客さまと一緒に動いています。先日、直営店で新たな商用タイヤ開発を一緒に見てきましたが、さまざまな取り組みが進行中です。それを今年の下期から成果が表れるようなかたちにして、来年へとつなげていくというのが米国での基本的な考え方です。インドでも同様です。
欧州に関しては、まずは質を強化しなければならないため、おそらく2026年の後半から成長フェーズに入ってくるのではないかと見ています。このように、各地域でメリハリをつけて取り組んでいます。
米国の関税の影響も地域によって出方がまったく異なるため、グローバル、地域、国ごとに異なるアクションを進めています。2026年については、体質をより強化し、必要な局面でしっかりと打って出られるようにしていく方向性は変わっていません。
先ほどもお伝えしましたが、関税の条件によって値上げなどの対応策は変わってくると思います。ただし、我々の体質強化対策は、関税とは無関係に、かなりの部分を残して来年につなげるというのが基本的な考え方です。
ビジネス構造変化をチャンスに変えるためには、体質を良くすることが最も重要です。そして、米国で拡売を強化していくことが重要であることに変わりはありません。今の段階では、このような状況だとご理解いただけるとありがたいです。