2025年6月期第3四半期のハイライト

佐々木大輔氏(以下、佐々木):みなさま、こんにちは。フリー株式会社 代表取締役CEOの佐々木です。2025年6月期第3四半期の決算説明会を始めます。よろしくお願いします。

まず、第3四半期のハイライトです。第3四半期は例年、個人事業主のみなさまの確定申告期に当たるため需要が大きくなりますが、今年度も個人事業主セグメントでの顧客獲得が順調に進みました。

今回、特徴的なのは、上位プランや年額払いのユーザー比率が非常に高まったことです。個人事業主のセグメントは、安定的な収益を獲得できています。

私たちの個人事業主向けのサービスは、長い歴史もあり、クラウド会計業界において強固なポジショニングを築けています。このように堅調に伸びているのは非常に良いことだと思っています。個人事業主セグメントのみで40万社を超え、全体でも62万社を突破するなど、ユーザー規模を拡大できています。

法人セグメントにおいてもARRが順調に伸びています。Midセグメント、あるいは法人セグメント全体でも、前年同期比成長率が前四半期と比べて加速しています。さらに、Midセグメントは今後の見通しも良くなってきており、法人セグメント全体としても順調です。

第3四半期の調整後営業利益は6億5,900万円で着地し、調整前の営業利益も黒字を継続しています。また、通期の調整後フリー・キャッシュ・フローも黒字化に向けて順調に進んでいます。

プロダクトへのAI導入を加速させ、統合体験の飛躍的な進化を目指す

5月14日に、主にMidセグメントの顧客向けのイベント「freee TOGO World 2025」を開催し、大盛況で終えました。freeeは独自のプロダクト開発基盤「統合flow」上で開発していますので、スモールビジネスのみなさまに必要な業務アプリケーションを簡単に作ることができます。

今回のイベントでは、この「統合flow」にAIが搭載されることを発表の目玉としていました。業務の分断をさらに解消し、業務が自動化されることで効率化が進み、リアルタイムで可視化できるといったお話をし、非常に盛り上がりました。

AIエージェントをはじめ、幅広い領域でAI新機能を実用化

具体的には、スライドに記載したように、6つのAIエージェントをクローズドβ版というかたちで提供開始しました。Web上の画面右側に表示されるチャットボックスから操作ができたり、AIアシスタントがアプリに組み込まれるようなかたちを想定しています。

AIエージェントについて、特に好評だったものをいくつかご紹介します。

年末調整をする際に従業員の方はさまざまな書類を提出し、フォームに記入する必要があるのですが、間違いが非常に多い手続きでもあります。「AI年末調整アシスト」は、添付書類をアプリで読み込むと、その添付書類が正しい書類かどうかを判断し、フォームに手入力してきた情報も自動的にAIが読み取るため不備が大きく減ります。

さらに、これを活用した年末調整の代行サービスもリリースしますので、外部委託したいユーザーは、安価にアウトソースを利用できるようになります。

続いて、「まほう経費精算」です。経費精算の申請・承認は、すでに社内のチャットツールで行われていることが非常に多いです。このような会話が行われた時にAIエージェントを呼んでいただければ、自動で購買申請を作成してくれるほか、レシートなどの証憑をアップロードするだけで経費精算を申請してくれるという仕組みです。

また、「AIチャットで請求」では、チャット上で請求書を作れるのはもちろん、複数の納品に対して「まとめて請求書を作って送っておいて」と伝えると、チャットで指示したとおりの操作を行い、請求書を発行できるようになります。

ほかにも、AIが財務情報を分析して経営に示唆を与える「AIクイック解説」や、勤怠情報の不備をチェックして自動的に従業員にリマインドをかける「AI勤怠チェッカー」、工数管理の情報をもとに生産性向上のポイントを提案する「AI工数マネージャー」などがあります。

このようにAIエージェントの具体的な機能のリリースをアナウンスしています。非常にご好評をいただきましたので、このような領域での進化もさらに力を入れていきたいと思っています。

主要KPI及び財務指標

坪井亜美氏(以下、坪井):常務執行役員CFOの坪井亜美です。私からは主に財務実績と成長戦略推進の取り組み、そして通期の見通しについてご説明します。

こちらのスライドでは、主要KPI及び財務指標を示しています。ARRは332億円、うち法人セグメントで246億円、有料課金ユーザー企業数は62万4,000件、うち法人セグメントで22万3,000社、ARPUは5万3,200円、うち法人セグメントは11万200円となりました。第3四半期の売上高は85億9,000万円、調整後営業利益は6億5,900万円、サブスクリプション売上高比率は90パーセント超となっています。

ARR

それぞれの指標について見ていきます。まずARRは前年同期比で29パーセント進捗し、332億5,000万円となりました。法人セグメントでは、前年同期比32.6パーセントの高成長を継続しています。

法人セグメントはさらにSmallセグメントとMidセグメントに分かれています。Smallセグメントでは、7月に行った「freee会計」のプラン改定が順調に進捗しています。Midセグメントでは、主に既存のユーザーに対するクロスセルが売上のドライバーとなり、前年同期比成長率は26.1パーセントと、前四半期から加速に転じています。

個人事業主セグメントは確定申告期の獲得が順調に進み、ARRの純増は過去最高額の16億5,500万円となり、累積では85億8,900万円に拡大しました。

有料課金ユーザー企業数及びARPU

有料課金ユーザー企業数及びARPUです。有料課金ユーザー企業数は、法人セグメント・個人事業主セグメントどちらも堅調に推移し、合計で前年同期比14.9パーセント増の62万4,538社となりました。セグメントごとの成長率を見ると、法人セグメントで前年同期比20.5パーセント成長、個人事業主セグメントは前年同期比12.0パーセントの成長となります。

スライド右側のグラフは、ARPUの推移を示しています。水色で示した法人セグメントは前年同期比で10.1パーセントの成長となりました。こちらはSmallセグメントにおけるプラン改定や、クロスセルの進捗によるものです。

濃い青で示した個人事業主セグメントは、前年同期比で6.7パーセント上昇しています。こちらは主に「freee会計」の上位プランの比率上昇によるものです。個人事業主セグメントでは3つのプランを提供していますが、中でも上位プランの比率が上昇していることと、昨年12月に行った月額プランの料金改定の影響によりARPUが伸びています。

売上高

売上高は前年同期比29.3パーセント成長の85億9,900万円となりました。

売上総利益

売上総利益は71億1,200万円で、売上総利益率は82.7パーセントと高い水準を維持しています。

調整後営業利益

調整後営業利益は6億5,900万円、調整後営業利益率は7.7パーセントで着地しました。前年は赤字だったものが、今回は黒字に転じています。

こちらは前四半期比で見ると下がっていますが、当初から上半期に比べて下半期は広告宣伝投資等が増額することに伴い、調整後営業利益が低下することを見込んでいたため、おおむね計画どおりの着地であると言えます。

第3四半期は例年どおり、確定申告期向けの広告宣伝投資が増加しました。今年度もこれが主な要因となり、前四半期比で見ると調整後営業利益は下がっていますが、通期の業績予想で掲げた18億円から25億円の達成に向けては着実に進捗しています。

販売費及び一般管理費の対売上高比率

販売費及び一般管理費の内訳です。こちらのスライドは、2025年6月期第3四半期までの累積の販管費及び一般管理費の対売上高比率を示しています。全体的な傾向は、第2四半期にお伝えしたものから大きく変わりはありません。

前年度と比べ、特にR&DとS&Mで対売上高比率が有意に減少しています。S&Mについては前回もお伝えしたように、営業人員のトレーニングや、営業オペレーションへのAI活用による生産性改善、併せて費用対効果を見極めた戦略的マーケティング投資の実施により、前年度と比べて大幅に改善しています。

R&Dについては、投資の絶対額が減っているのではなく、2025年6月期第1四半期から再開したソフトウェア資産化の影響により、減っているように見えています。実際には、このプロダクトについてはAIの活用等も含めて、精力的に開発を行っていきます。

統合体験のさらなる強化に向け、プロダクト改善、新機能開発を今後も継続していきます。

成長戦略の変化:FY24までに確立した高成長モデルをスケールさせるフェーズへ

成長戦略推進の取り組みについて、いくつかピックアップしてご説明します。いつものように、当社の成長戦略の変化として、フェーズに分けてこれまでを軽く振り返りたいと思います。

まず、IPO前は、売上のドライバーは単一プロダクトである「freee会計」の新規顧客獲得に依存していました。IPOを経て、M&Aも積極的に活用しながら、プロダクトポートフォリオを次第に拡大させてきています。併せて、統合型プラットフォームによりシームレスな体験を提供するという、プロダクトの価値に自信を深めたフェーズでもありました。

現在は、高成長モデルのスケール期というフェーズに入っています。売上のドライバーにはクロスセルの推進があります。また、スライドに「自動的ARPU向上」とあるように、ユーザーの利用ID数の増加や、トランザクションに応じて請求する利用料自体が上がっていくことで、既存ユーザーの単価が徐々に上がっていくこともあります。

このように継続的に新規ユーザーの獲得に投資していくことで、顧客基盤を継続的に拡大させながら収益性も担保し、売上と利益の同時成長を見込んでいます。

個人事業主セグメントは LTV最大化に向けてロイヤルカスタマー層を拡大

以上のことを念頭に置きながら、第3四半期は確定申告のシーズンですので、特に個人事業主セグメントでの取り組みについてご説明したいと思います。

個人事業主セグメントは、確定申告期の獲得が非常に順調に進みました。現在、有料課金ユーザー企業数は40万社を突破し、クラウド会計ソフト市場の中で、圧倒的な顧客基盤を作れていると思っています。モバイルアプリに対するユーザー評価数もクラウド会計ソフト業界で最多の約9万件を獲得し、評価自体も4.5点と非常に高くなっています。

ここで強調したいのが、「freee会計」は単に顧客数を増やしているだけでなく、より多く、より長く使っていただくロイヤルカスタマーの割合が増えていることです。スライド右側のグラフで示したように、「freee会計」を年額払いで利用するユーザーは約65パーセントとなり、2年前と比べて10ポイント上昇しています。

上位プラン比率を見ると、プレミアムプラン・スタンダードプランといった上位プランを選択しているユーザー比率が、2年前の約40パーセントから今年度は約55パーセントまで上昇してきています。これは確実に「freee会計」が提供しているプロダクトの価値をユーザーにご理解いただき、ご満足いただいている証拠だと捉えています。

このように、個人事業主セグメントは顧客基盤が拡大し、さらに今後も継続的に収益が安定して生み出されていく基盤になっていることを自負しています。

個人事業主の業務効率化に留まらず収益拡大にも貢献するプラットフォームへ

このように強固なポジショニングを築けた背景には、優れたプロダクト力があると考えています。個人事業主向けのプロダクトビジョンとして、バックオフィス業務の効率化にとどまらず、ユーザーの事業が拡大するようなプラットフォームを目指しています。

業務効率化に関しては、今年度新たに電子納税機能をリリースしました。これにより業界で唯一、日々の記帳から納税までをワンストップで完結できるようなプラットフォームを提供できています。

この提供に際しては、ユーザーが受ける体験にもこだわっています。例えばAI-OCRで簡単に領収書から経費データが入力できたり、スライド中央に掲載したスマートフォンのイメージのように、確定申告にあたって「○・×」「はい・いいえ」といった簡単な質問に答えていくことで、自動的に申告書が作成できるようなUXを提供します。これが高い顧客満足度につながっていると考えています。

さらに、業務効率化にとどまらず、「freee予約」という新しいプロダクトをリリースしました。これはM&Aによって拡充したサービスで、美容サロンやマッサージ、パーソナルトレーニング、コーチングなどのパーソナルサービス事業のオーナーを対象としています。

このサービスを利用することで、スマートフォンを使って簡単に予約サイトを作成し、予約の管理を行うことができます。パーソナルサービスの事業形態としては、自身でサービスを提供しながら予約の管理もしているオーナーが多いかと思いますが、「freee予約」を使うことで、さらに多くのユーザーにサービスを提供しながら、簡単に予約管理ができるようなサービスになっています。

今後もバックオフィス業務の効率化にとどまらず、フロント業務の領域までサポートできるようなプラットフォームを目指していきます。

個人事業主だけでなく、法人におけるポジションもより強固に

ここからは、今後の売上をさらにドライブしていく法人セグメントにおける、成長投資の考え方をご説明したいと思います。スライドの図は、下から上に向かって事業の成熟度が伝播していくイメージを持っていただくとよいかと思います。

一番下の個人事業主セグメントは、すでにポジションを確立済みであり、大きな顧客基盤の獲得と強固な収益基盤ができています。こちらはより強固な収益基盤を目指していきます。

その上のSmallセグメントは、従業員規模20名未満のユーザーをターゲットとしています。このセグメントはポジション確立期と捉えています。Smallセグメントはダイレクトチャネルでの認知はかなり向上しており、ダイレクトチャネルの獲得においてはすでに強固なポジションが確立できていると認識しています。

一方で、市場に存在する法人の数に対する浸透率で言うと、10パーセントを上回ったくらいの水準にいますので、さらに顧客基盤を拡大させていきたいと考えています。そのためには、間接チャネルである会計事務所チャネルが非常に重要になっていきますので、こちらへの投資を継続していきたいと思っています。

さらにその上のMidセグメントは、従業員規模20名から1,000名をイメージしています。このMidセグメントは、成長投資フェーズと捉えています。インボイス制度の追い風を受け、一定の顧客基盤拡大が見込めましたが、今後もさらに投資していきたいと考えています。

先ほど、3つのフェーズで成長戦略を振り返りましたが、まさに3つ目の高成長モデルのスケール期にあたるような取り組みを、Midセグメントにおいても行っていきます。既存のユーザーからの売上で生産的に収益を上げつつ、その収益を継続的に新規ユーザー獲得に投資していきます。具体的にはセールスの体制強化や、マーケティングの質の向上、量の上昇に取り組んでいきたいと考えています。

このように、当社はその事業の成長や成熟度合いに応じ、成長投資のコントロールを行っています。個人事業主セグメントですでに一定の認知を獲得したことで、収益基盤の確立ができていますので、徐々に上のセグメントに伝播させていきながら、全体としては安定的な事業成長、収益成長を目指していきたいと思っています。

強固な収益基盤の確立により、調整後営業利益の黒字を継続

2025年6月期及び中長期見通しについてご説明します。まず、第3四半期の調整後営業利益は6億5,900万円、調整後営業利益率は7.7パーセントで着地しました。こちらは確定申告期向けの広告宣伝投資が増加したため、前四半期比で見ると下がっていますが、おおむね計画どおりの着地です。

第4四半期については、一部、第3四半期からずれ込んだ予算の執行もありますし、次年度以降の成長投資に注力していきたいと思っていますので、今のところブレークイーブン近傍で着地すると見ています。引き続き、通期のターゲットである18億円から25億円のレンジの中で調整後営業利益が着地すると自信を持っています。

各投資項目の対売上高比率見通し

その費用の内訳として、スライドでは各投資項目の対売上高比率見通しを示しています。こちらは第2四半期時点からのアップデートはありません。項目ごとにレンジの中に収まるような予算執行を見込んでいます。

調整後フリー・キャッシュ・フローは通期黒字化に向けてオントラック

調整後フリー・キャッシュ・フローについてです。こちらも第2四半期時点からのアップデートはありません。調整後フリー・キャッシュ・フローの実績は半期ごとに開示していますので、前回の決算説明で示した上半期分の実績をそのまま掲載しています。通期の見通しとしては、2025年度に黒字化を見込んでいます。

季節性を振り返ると、上半期はITツール関連の前払費用が増加することにより、調整後フリー・キャッシュ・フローはマイナスに出る傾向があります。一方で下半期には前受収益として年額のユーザーからのキャッシュインが積み上がっていくため、調整後フリー・キャッシュ・フローは増加傾向になります。

この傾向は毎年見られており、今年度も同様に第3四半期、第4四半期はポジティブな調整後フリー・キャッシュ・フローを見込んでいます。このようにキャッシュ・フローがポジティブになることで、事業からキャッシュを創出し、中長期的な成長にさらに投資できるというフェーズに移行していくため、持続的にビジネスを拡大していけると見込んでいます。

中長期成長戦略における戦略的ターゲットと財務目標値

スライドには中長期成長戦略のターゲットを再掲しています。スライド右側の財務ターゲットについては、売上高は2027年度で500億円超としています。

また、調整後営業利益率については、今年度で黒字を達成するというターゲットに向けて進捗しています。調整後フリー・キャッシュ・フローマージンについても、今年度以降は毎年改善を見込んでいきたいと思っています。

今回はボトムラインを含めて、2027年度以降の中期ターゲットに関して具体的なアップデートはありません。現在アップデート中のため、8月の通期決算にて最新の中期経営計画をお伝えする予定です。

長期財務モデル

こちらのスライドは長期財務モデルの再掲ですが、こちらについても通期の決算説明でアップデートをお伝えする予定です。

今四半期をまとめると、ボトムラインが非常に順調に進捗し、収益体質への自信を深める四半期となりました。トップラインについては確定申告期を経て、個人事業主セグメントで強固なブランドの確立と、収益基盤の確立に自信を持つことができました。

法人セグメントではARRが安定的に伸びており、前年同期比で成長・回復基調であるのは非常に良い兆候であると捉えています。これからプロダクトへのAIの導入も積極的に行っていくことで、ユーザーに高い価値を提供できるよう、プラットフォームの進化を進めていきます。

ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:AIエージェントの導入について

質問者:AIエージェントに関してうかがいます。理想としては、業務フローのバックエンドを全部マルチエージェントで処理して、フロントエンドのUIを簡単にしてしまえば、誰でも使えるようになり、これが究極的な姿であるというのもわかります。

これはMidセグメントのユーザーには比較的入れやすいと思いますが、Smallセグメントや個人事業主セグメントにはこのようなUIやAIがどのように受容され、どの程度のアップセルの可能性があると見ていますでしょうか?

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