目次
尾崎彰氏:中外炉工業株式会社代表取締役社長の尾崎です。株主さま、お客さま、協力会社さまをはじめ、ステークホルダーのみなさまには常日頃から大変お世話になっており、この場をお借りして感謝申し上げます。
まずは、目次の内容についてです。当社グループの2024年度決算概要に加え、2026年度までの5ヶ年の中期経営計画、重要戦略の状況などをご説明します。
1.2024年度連結業績と2025年度予想の概要
2024年度の連結業績と2025年度予想の概要についてご説明します。
2024年度連結業績は、省エネルギー設備、二次電池素材熱処理設備など成長分野への積極的な営業活動により、すべての項目において2年連続で前年度実績を上回ることができました。受注高は前期比102パーセントの394億円となりました。売上高は前期比124パーセントの362億円となりました。
利益面については、営業利益が前期比185パーセントの27億円、経常利益が前期比175パーセントの30億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の一部売却も寄与し、前期比136パーセントの29億円となりました。
期初予想との比較においても、売上高が若干下振れした以外はすべて予想以上となりました。2025年度の業績予想については、利益率を重視しつつ、引き続き増収・営業利益増を見込んでいます。
●株主還元方針に基づく配当金の状況
2024年度は、目標水準である税引後営業利益(NOPAT)の60パーセント以上となる150円配当の予定です。4億円の自己株式取得も実施し、総還元性向50パーセント以上を維持していきます。
2.連結受注残高の推移
受注残高の推移についてご説明します。2024年度期末の受注残高は378億円と、前期から35億円増加しました。2025年度期末の受注残高は、さらに3億円増の381億円を確保できる見通しです。
3. 2024年度 連結 営業利益の増減要因
営業利益の増減要因の分析結果です。2024年度の売上総利益は、増収の影響で14億7,300万円の増加となりました。売上総利益率は、原価上昇などの影響を抑えて前年度の水準を維持することができています。
販管費は増加したものの、販管費率は2.4ポイント改善しました。営業利益率は前年より2.5ポイント改善し、7.5パーセントとなりました。それにより、営業利益を12億5,800万円増やすことができています。
4.連結 資産・負債・資本の状況
バランスシートの状況をご説明します。資産合計は、前期末より1億円減少の487億円となりました。負債合計は9億円減少の201億円、純資産合計は8億円増加の286億円となりました。
財務健全性の基準としている自己資本比率50パーセント以上を、引き続き維持しています。
5.連結 研究開発費・設備投資額・減価償却費
研究開発費・設備投資額・減価償却費の状況は、スライドのとおりです。2023年度は設備投資において、熱技術創造センター立ち上げに関係する投資が多くを占めました。
2024年度以降も成長分野進出に向けた技術開発・設備投資を継続しており、併せて生産性向上のための設計支援や、調達支援システムなどへの投資も積極的に進めていきます。
6.連結 キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況です。2024年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前期比で28億円の減少となりました。これは、資金回収期間が長期であることの影響が、受注増加で大きく現れたものと考えます。今後は取引先と条件変更の交渉を行うなどで改善していきます。
投資活動によるキャッシュ・フローは、今期も投資有価証券の売却により、前期比で1億円の増加となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少により、前期比で51億円の減少となりました。
これらの結果、現金及び現金同等物期末残高は前期比56億円減少の43億円となりました。
7.セグメント情報
セグメント情報です。スライドの表に記載の開発事業は主に開発を行うコストセンターを指しますが、開発完了分の事業も行っているため報告セグメントとしています。その結果、営業利益はマイナスですが、将来につながる前向きな赤字と捉えています。
それ以外の本来の事業分野セグメントは増収増益となっており、当社が全般的に好調を維持していることがおわかりいただけます。
経営理念と中期経営計画
2022年5月13日に発表した5ヶ年の中期経営計画「経営ビジョン2026」の重要戦略の状況についてご説明します。
当社の経営理念は、「熱技術を核として新しい価値を創造し、これを通じて社会に貢献するとともに企業の繁栄と社員の幸福を実現する。」です。この「新しい価値の創造」に着目し、当社を取り巻く環境の変化それぞれの課題に対応する「3つの重要戦略」にて、計画を推進しています。
重要戦略の1つ目は「カーボンニュートラルを中心に新市場の創出」、2つ目は「既存商品のニーズ適合ブラッシュアップで拡販と利益向上」、3つ目は「働きがいのある職場作り」です。ここからは、この3つの重要戦略について現在の状況をご説明します。
中期経営計画の進捗状況:連結業績目標
まずは、連結業績目標と進捗についてご説明します。5ヶ年計画最終年度の目標として、受注高420億円、売上高415億円、営業利益36億円、ROE10パーセントを設定しています。
2024年度は豊富な受注残を効率よく消化することで、前期に停滞していた売上高と営業利益率のペースを大きく戻すことができました。これにより、ROEはすでに目標値を上回る10.7パーセントとなっています。
今期はさらに生産性を高め、営業利益をはじめとする業績数値の向上に努めます。
重要戦略の指標と達成のための施策(1)
3つの重要戦略の指標と、達成のための施策の進捗状況について説明します。
まずは「カーボンニュートラルを中心に新市場の創出」についてです。カーボンニュートラル、ゼロエミッション、高機能材対応熱技術の3分野を柱とし、この分野での売上高を2030年には100億円、中期経営計画最終年度の2026年度には40億円とすることを目指します。
(1)カーボンニュートラルを中心に新市場の創出
当社の脱炭素目標についてあらためてご説明します。当社は、サプライチェーン排出量の中でも「当社の製品の使用」の部分が大きいことから、当社基準による2050年に向けた脱炭素目標を設定しました。
スライドのグラフの縦軸は、当社の稼働中の製品から排出されるCO2の量を示します。パリ協定の目標基準となる2013年では約1,200万トンで、日本全体の排出量のおよそ1パーセントに相当します。これを2050年までに実質ゼロにする目標を設定しています。
実際に排出をゼロにすることは不可能なため、当社既存商品以外でのCO2削減も含め、2050年にはカーボンニュートラルを達成する所存です。グリーンイノベーション事業の研究成果を活用した電熱・水素・アンモニア関係の脱炭素型工業炉、水素系ガス加熱装置などの社会実装を実現し、目標を達成します。
2024年度の国内における製造工業の能力指数・稼働率指数を加味した、2013年度からの累計削減量は218万トンで、割合にすると18パーセントで順調です。そのため、今年度より削減量の2026年度目標を17パーセントから20パーセントに引き上げ、ペースアップを図ります。
(1)カーボンニュートラルを中心に新市場の創出
このテーマの2024年度実績についてご説明します。主な商品は、NEDOグリーンイノベーション基金事業、水素還元用加熱技術開発、電炉ダストプロセス開発などです。売上高は10億円となりました。
カーボンニュートラルに関するトピックスをご紹介します。1つ目はトヨタ技術開発最優秀賞を受賞したことです。当社の水素燃焼技術が、納入先であるデンソーの技術とともに高く評価されました。
もう1つは、商業用として国内初となる工業用アンモニアバーナを、UBE三菱セメントに納入したことです。今後もテスト設備を拡充し、脱炭素関連技術の開発を加速します。
重要戦略の指標と達成のための施策(2)
重要戦略の2つ目は「既存商品のニーズ適合ブラッシュアップで拡販と利益向上」です。国内外の経済環境が変化していく中で、既存商品のブラッシュアップを行い顧客ニーズを捉え、売上高の増大を図っていく必要があります。
製品の機能改善や応用展開により製品の市場拡大を達成し、2026年度は2021年度から売上高を112億円積上げ、営業利益は約20億円増加させます。
(2)既存商品のニーズ適合ブラッシュアップで拡販と利益向上
このテーマの2024年度実績についてご説明します。売上高の積上げは98億円、研究開発費は投資を含めて2億9,000万円となりました。
前期に引き続き、全固体電池向け熱処理設備の受注が多かったことに加え、鉄鋼関連では電炉シフトなどの脱炭素化に向けた投資が活発なことから、電炉向け排ガス処理設備、省エネ型連続焼鈍設備の大型受注がありました。
重要戦略の指標と達成のための施策(3)
重要戦略の3つ目は「働きがいのある職場作り」です。当社では、「働きがいのある職場」は努力が結果につながる職場と考えます。「結果」とは顧客満足であり、それが営業利益につながります。この結果の最大化を図ります。
一方で、ワークライフバランスの改善は、働き方改革の一環として当社の経営課題になっており、総実労働時間を短縮するための生産性向上は必須となります。中期経営計画における施策により、営業利益増と総実労働時間短縮の両立で当社の生産性を大幅に向上させ、働きがいのある職場の実現を目指します。
(3)働きがいのある職場作り
このテーマの2024年度実績についてご説明します。一人当たりの営業利益は、アウトプットとなる収益の拡大により500万円と前年に比べ増加しました。しかし、一人当たりの総実労働時間は、引き続き効率化に向けた過渡期の中にあり、前年に比べ若干増加となる2,109時間となりました。
2024年度のシステム投資は1億4,000万円となりました。2022年に新設した業務改革推進室が進めている設計支援システムはすでに稼働し、今年度より調達支援システムもテストを開始します。これからさらに効果が出てくると期待しています。
今後も、中期経営計画の指標である一人当たりの営業利益の拡大と実労働時間の短縮を着実に進めます。
9.企業価値向上に向けた取り組みの現況と追加施策
企業価値向上のための施策の現況についてご説明します。昨年10月末の中間期に公表した6項目のうち、第3項の「政策保有株式比率を20パーセント以下に縮減」は、達成時期を1年前倒しして鋭意進めています。
第4項の借入金依存度については、ファイナンスコストを考慮し、目標を10パーセント以下から15パーセント以下へと変更しました。また今回より、ESG経営の観点からカーボンニュートラル目標を追加しており、企業価値向上をさらに加速していきます。
●企業価値向上に関する重要指標の状況
企業価値に関する指標についてご説明します。営業利益率、ROEともに目標に向けて上昇基調にあります。それに伴いPBRも3月末時点では1倍を達成しました。引き続き、目標数値到達に向けて邁進します。
ご説明は以上です。今後とも、なお一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。